JPH1011076A - 電子消音装置 - Google Patents

電子消音装置

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JPH1011076A
JPH1011076A JP8179906A JP17990696A JPH1011076A JP H1011076 A JPH1011076 A JP H1011076A JP 8179906 A JP8179906 A JP 8179906A JP 17990696 A JP17990696 A JP 17990696A JP H1011076 A JPH1011076 A JP H1011076A
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JP
Japan
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temperature
filter
transfer function
sound wave
identification
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Application number
JP8179906A
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English (en)
Inventor
Toshiyuki Tachibana
敏幸 橘
Yoji Yasuda
陽治 安田
Minoru Okubo
稔 大久保
Shinichiro Ishida
慎一郎 石田
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Toa Corp
Yanmar Co Ltd
Original Assignee
Toa Corp
Yanmar Diesel Engine Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 温度変化があっても、安定した適応動作を実
現する。 【解決手段】 排気ダクト1内を伝搬する騒音を、2次
音源スピーカ10の放射音で打ち消すために、適応型F
IRディジタルフィルタ6の伝達関数Wk と、これとエ
ラーマイクロホン11との間に存在する伝達関数Cとの
合成による伝達関数が、排気ダクト1内の伝達関数Pに
等しくなるように、LMS処理部15によって適応型F
IRディジタルフィルタ6の伝達関数Wk を制御する。
この制御を実現するためには、FIRディジタルフィル
タ16により上記伝達関数Cを同定する必要があるが、
伝達関数Cは、排気ダクト1内の温度変化によって変化
する。そこで、排気ダクト1内の温度を温度検出器17
で計測し、その計測値に応じて、予めフィルタ係数記憶
部19に記憶しておいたフィルタ係数のいずれかをFI
Rディジタルフィルタ16に設定することにより、伝達
関数Cを同定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、音波伝搬路を伝搬
する音波に対して、これと実質的に等大で逆位相の音波
を干渉させることによって、上記音波伝搬路の伝搬音を
能動的に消音する電子消音装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】上記のような電子消音装置を応用したも
のとして、例えばエンジン等から発生する騒音を低減さ
せる装置が知られている。この電子消音装置の従来例を
図6に示す。なお、同図において、1は、排気ダクト
で、この排気ダクト1の左側に上記騒音の発生源となる
エンジン(図示せず)が設けられており、このエンジン
の騒音は、排気ダクト1内を同図の左側から右側に向か
って伝搬しているものとする。
【0003】この電子消音装置は、排気ダクト1の入口
側(同図の左側)において上記騒音をリファレンスマイ
クロホン(第1のマイクロホン)2によって収音し、こ
の収音信号を増幅器3で増幅した後、これに含まれるナ
イキスト周波数以上の成分をロー・パス・フィルタ(L
PF)4で除去し、更にA/Dコンバータ5でディジタ
ル変換して得たディジタル騒音信号x(k) (kは、タイ
ム(サンプリング)・インデックス。)が入力される適
応型FIRディジタルフィルタ6を有している。この適
応型FIRディジタルフィルタ6は、入力されたディジ
タル騒音信号x(k) に対して、後述するLMS処理部1
5により設定されるフィルタ係数を用いて所定のフィル
タリング処理、例えば数1に示すような畳み込み和演算
を施すもので、その演算結果y(k) を出力する。
【0004】
【数1】
【0005】なお、上記数1において、iは、フィルタ
・タップ・インデックス、Nは、この適応型FIRディ
ジタルフィルタのタップ数(フィルタ次数)、Wk (i)
は、iタップ目のフィルタ係数である。また、x(k-i)
は、ディジタル騒音信号で、時刻(サンプリング番号)
kからサンプリング番号がi個前の信号を示す。
【0006】そして、この適応型FIRディジタルフィ
ルタ6の出力y(k) は、D/Aコンバータ7によりアナ
ログ変換され、これに含まれるナイキスト周波数以上の
成分がロー・パス・フィルタ8で除去され、更に増幅器
9で増幅された後、2次音源スピーカ10に供給され
る。2次音源スピーカ10は、排気ダクト1の上記リフ
ァレンスマイクロホン2よりも騒音の下流側に配置され
ており、供給された信号、即ち上記出力y(k) をアナロ
グ化した信号に応じた音波を排気ダクト1内に放射し、
この排気ダクト1内を伝搬している騒音に干渉させ、こ
れによって上記騒音を打ち消している。
【0007】更に、排気ダクト1の2次音源スピーカ1
0が配置された位置よりも騒音の下流側(同図の右
側)、例えば排気ダクト1の出口付近にはエラーマイク
ロホン(第2のマイクロホン)11が配置されており、
このエラーマイクロホン11によって、上記騒音を2次
音源スピーカ10の放射音で打ち消した後の音、つまり
は騒音と2次音源スピーカ10の放射音との誤差成分を
検出している。このエラーマイクロホン11の出力は、
増幅器12で増幅され、これに含まれるナイキスト周波
数以上の成分がロー・パス・フィルタ(LPF)13で
除去され、更にA/Dコンバータ14でディジタル化さ
れた後、エラー信号e(k) として上述したLMS処理部
15に供給される。
【0008】上記のようなアクティブ消音装置において
は、適応型FIRディジタルフィルタ6の出力端子か
ら、D/Aコンバータ7、ロー・パス・フィルタ8、増
幅器9、2次音源スピーカ10、及び排気ダクト1内を
経てエラーマイクロホン11までの間に伝達関数(エラ
ーパス)Cが存在する。リファレンスマイクロホン2と
LMS処理部15との間には、上記伝達関数Cを同定
(モデル化・推定)した伝達関数CIを有するFIRデ
ィジタルフィルタ16を設けている。そして、このFI
Rディジタルフィルタ16によって上記リファレンスマ
イクロホン2からの騒音信号x(k) をフィルタリング処
理し、その処理した信号r(k) を、LMS処理部15に
入力するよう構成されている。この信号r(k) は、次の
数2により求められる。
【0009】
【数2】
【0010】ここで、CI(i) は、このFIRディジタ
ルフィルタ16を構成するタップのうちのi番目のタッ
プのフィルタ係数である。また、Nは、このFIRディ
ジタルフィルタ16のタップ数(フィルタ次数)で、こ
こでは、この制御系による適応制御を容易にするため
に、上述した数1と同じタップ数Nとしている。なお、
このFIRディジタルフィルタ16による上記伝達関数
Cの同定は、例えば、予め伝達関数Cを計測し、これを
逆フーリエ変換して求めた時間領域のデータをこのFI
Rディジタルフィルタ16のフィルタ係数として設定
し、これによりこのFIRディジタルフィルタ16の伝
達関数CIを決定している。
【0011】従って、LMS処理部15は、上記FIR
ディジタルフィルタ係数16の出力r(k) と、エラー信
号e(k) とに応じて、適応型FIRディジタルフィルタ
6のフィルタ係数Wk (i) を更新する。このフィルタ係
数Wk (i) の更新式は、次の数3によって表される。
【0012】
【数3】
【0013】但し、μは、収束係数(ステップサイズパ
ラメータ)で、Wk+1 (i) は、適応型FIRディジタル
フィルタ6に対してそのフィルタ係数Wk (i) として次
に(次回のサンプリング時に)設定するフィルタ係数で
ある。
【0014】なお、上述した適応型FIRディジタルフ
ィルタ6、LMS処理部15、及びFIRディジタルフ
ィルタ16については、例えばDSP(ディジタル信号
処理装置)やCPU(中央演算処理装置)等によって、
構成されている。そして、これらのDSPやCPUは、
図示しないメモリ等の記憶部に記憶されたプログラムに
従って上記適応制御を実行する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
に制御系にFiltered-x LMSアルゴリズムを用いた電子消
音装置において、安定した適応制御を実現するために
は、一般に、上記伝達関数Cと、これを同定したFIR
ディジタルフィルタ16の伝達関数CIとの位相差を、
±90度以内にする必要があることが知られている。し
かし、上記図1に示すようなエンジンの騒音を低減させ
る電子消音装置においては、上記伝達関数Cが、時間の
経過と共に変化する。これは、例えばエンジンを運転さ
せていると排気ダクト1内の温度が徐々に上昇し、この
温度上昇により排気ダクト1内を伝搬する騒音の音速が
変化(増大)することが起因している。これに対して、
FIRディジタルフィルタ16の伝達関数CIは、一定
とされているので、この伝達関数CIと上記伝達関数C
との位相誤差が次第に拡大して、上記±90度という限
界を越えて不一致となる。その結果、適応型FIRディ
ジタルフィルタ6のフィルタ係数Wk (i) の更新制御が
正常に行われず、騒音が消音されないばかりか、逆に2
次音源スピーカ10から不要な騒音が放出されて増音し
たり、或いは制御系が発振してしまうという問題があ
る。この問題は、エンジンの運転時間が長くなればなる
程、起動時からの温度変化が大きくなるので、より顕著
になる。
【0016】本発明は、排気ダクト1内の温度変化によ
って伝達関数Cが変化しても、常に安定した適応制御を
実現することのできる電子消音装置を提供することを目
的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1記載の発明は、第1の伝達関数を有する
音波伝搬路に入力される音波を収音する第1のマイクロ
ホンと、上記音波伝搬路から出力される音波を収音する
第2のマイクロホンと、上記第1のマイクロホンの出力
信号を処理し、この処理結果に応じた音波をスピーカか
ら上記音波伝搬路に放出する適応型フィルタ手段と、上
記第1及び第2のマイクロホンの出力信号を入力し、こ
れらに応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、
該適応型フィルタ手段から上記音波伝搬路を経て上記第
2のマイクロホンまでの間に存在し温度変化によって変
化する第2の伝達関数と、の合成による伝達関数が、上
記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィル
タ手段の伝達関数を制御するフィルタ制御手段と、上記
第1のマイクロホンと上記フィルタ制御手段との間に介
在し、上記第2の伝達関数を同定する同定フィルタ手段
と、上記音波伝搬路に設けられ、該音波伝搬路の温度を
計測する温度計測手段と、予め定めた複数のフィルタ係
数が記憶された係数記憶手段と、上記同定フィルタ手段
の伝達関数が上記第2の伝達関数と略等価となる、即ち
十分な精度で同定する状態に、上記温度計測手段の温度
計測値に応じて上記係数記憶手段から上記複数のフィル
タ係数のうちのいずれかを選択し、これを上記同定フィ
ルタ手段にそのフィルタ係数として設定する同定フィル
タ制御手段と、を具備するものである。
【0018】なお、上記係数記憶手段には、次のような
フィルタ係数が記憶されている。即ち、予め、音波伝搬
路を複数の温度条件下に置き、各条件下において、温度
計測手段により音波伝搬路の温度を計測すると共に、第
2の伝達関数をそれぞれ同定(計測)しておく。このと
きの温度計測手段の各温度計測値に対応するフィルタ係
数が、上記複数のフィルタ係数として係数記憶手段に記
憶されている。
【0019】即ち、第1のマイクロホンの出力信号が同
定フィルタ手段に入力され、この同定フィルタ手段の出
力と第2のマイクロホンの出力信号とがフィルタ制御手
段に入力される。フィルタ制御手段は、これらの信号に
応じて、適応型フィルタ手段の伝達関数と第2の伝達関
数との合成による伝達関数(両者を掛けて得られた伝達
関数)が、第1の伝達関数と等しくなるように、上記適
応型フィルタ手段の伝達関数を制御する。そして、この
適応型フィルタ手段に第1のマイクロホンの出力信号が
入力され、ここでフィルタリング処理された後、この処
理結果に応じた音波がスピーカから音波伝搬路に放出さ
れる。ここで、同定フィルタ手段が、第2の伝達関数に
等しい伝達関数を維持していれば、適応型フィルタ手段
からスピーカを経て音波伝搬路に放出される音波は、音
波伝搬路を入口側から出口側へと伝搬する音波と相補な
特性となり、互いに打ち消し合う。ところが、第2の伝
達関数は、温度変化に応じて変化するので、第2の伝達
関数と同定フィルタ手段の伝達関数とは不一致となる。
そこで、温度計測手段により音波伝搬路の温度を計測
し、この計測値に応じて、予め係数記憶手段に記憶され
ている複数のフィルタ係数のうちのいずれかを選択し、
これを同定フィルタ手段にそのフィルタ係数として設定
することにより、同定フィルタ手段の伝達関数が上記第
2の伝達関数に十分な精度で同定するように制御してい
る。つまり、音波伝搬路の温度に応じて、同定フィルタ
手段のフィルタ係数を切り替えている。
【0020】ところで、上記のように、同定フィルタ手
段の伝達関数を第2の伝達関数に対して同定させるに
は、温度計測手段の温度計測値に対して、適宜、演算を
施すことにより、各温度に対応するフィルタ係数を算出
するという技術も考えられる。ところが、この電子消音
装置を例えばエンジン騒音の消音に応用したような場合
においては、音波伝搬路(排気ダクト)が比較的に長
く、また音波伝搬路、特にスピーカの周辺が高温になる
のを防ぐために空冷や水冷等による強制冷却を行うこと
がある。このため、音波伝搬路が、その場所によって温
度勾配(分布)を有するようになり、この場合、フィル
タ係数を演算で求めるという上記技術によれば、フィル
タ係数を算出するためにどの場所の温度を計測すればよ
いのか非常に不明確になり、同定フィルタ手段の伝達関
数を第2の伝達関数に対して十分な精度で同定させるこ
とができない。
【0021】これに対して、本請求項1に記載の発明に
よれば、予め温度計測手段の各温度計測値に対応する各
フィルタ係数を係数記憶手段に記憶しておき、適応制御
の際に、上記各フィルタ係数の中から、温度計測手段の
温度計測値に応じた係数を選択してこれを同定フィルタ
手段に設定する。従って、この電子消音装置を例えばエ
ンジン騒音の消音に応用したような場合においても、上
記のような音波伝搬路の温度勾配の影響を受けることは
なく、同定フィルタ手段の伝達関数を第2の伝達関数に
対して十分な精度で同定させることができる。
【0022】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の適応フィルタにおいて、上記同定フィルタ制御手段
が、上記温度計測手段による温度計測値が時間の経過と
共に上昇状態にあるとき、該温度計測手段による温度計
測値が、上記複数のフィルタ係数にそれぞれ対応する上
記各温度計測値よりも若干低い温度値に到達した時点
で、上記各フィルタ係数を上記同定フィルタ手段に設定
し、上記温度計測手段による温度計測値が時間の経過と
共に下降状態にあるとき、該温度計測手段による温度計
測値が、上記複数のフィルタ係数にそれぞれ対応する上
記各温度計測値よりも若干高い温度値に到達した時点
で、上記各フィルタ係数を上記同定フィルタ手段に設定
する状態に構成されたことを特徴とするものである。
【0023】即ち、同定フィルタ制御手段は、音波伝搬
路の温度が上昇状態にあるとき、この音波伝搬路の温度
上昇よりも若干早めに、同定フィルタ手段のフィルタ係
数を切り替える。一方、音波伝搬路の温度が下降状態に
あるときには、音波伝搬路の温度下降よりも若干早め
に、同定フィルタ手段のフィルタ係数を切り替える。ま
た、音波伝搬路の温度が上昇状態にあるときと下降状態
にあるときとでは、任意のフィルタ係数に対してその切
り替え温度が異なるので、フィルタ係数は、音波伝搬路
の温度変化に対してヒステリシス的に切り替わる。
【0024】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載
の適応フィルタにおいて、上記同定フィルタ制御手段
が、上記複数のフィルタ係数にそれぞれ対応する上記各
温度計測値と、上記各フィルタ係数を上記同定フィルタ
手段に設定する時点での上記温度計測手段の各温度計測
値との差が、上記温度計測値が上昇状態にあるときの方
が下降状態にあるときよりも大きくなる状態に構成され
たことを特徴とするものである。
【0025】即ち、音波伝搬路の温度が上昇状態にある
ときの方が、音波伝搬路の温度が下降状態にあるときよ
りも、各フィルタ係数の切り替えが早めに行われる。
【0026】請求項4に記載の発明は、請求項1、2又
は3に記載の適応フィルタにおいて、上記第2のマイク
ロホンと、上記温度計測手段とが、一体に形成されたこ
とを特徴とするものである。
【0027】請求項5に記載の発明は、請求項1、2又
は3に記載の適応フィルタにおいて、上記温度計測手段
が、上記スピーカの音波放出部と上記第2のマイクロホ
ンが配置された位置との間に設けられたことを特徴とす
るものである。
【0028】即ち、温度計測手段は、温度変化によって
変化する第2の伝達関数が存在している位置そのものの
温度を計測する。
【0029】請求項6に記載の発明は、請求項1、2又
は3に記載の適応フィルタにおいて、上記温度計測手段
が複数設けられ、上記同定フィルタ制御手段が、上記複
数の温度計測手段による各温度計測値の平均値に応じて
上記係数記憶手段から上記フィルタ係数を選択してこれ
を上記同定フィルタ手段に設定する状態に構成されたこ
とを特徴とするものである。
【0030】なお、上記複数の温度計測手段は、第2の
伝達関数が存在している位置そのものの温度を計測する
ために、スピーカの音波放出部と第2のマイクロホンが
配置された位置との間に設けるのが好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明に係る電子消音装置を例え
ばエンジン騒音を消音するのに応用した第1の実施の形
態について、図1から図3を参照して説明する。図1に
示すように、この電子消音装置は、上述した図6に示す
従来の電子消音装置に対して、排気ダクト1に設けられ
た温度検出器17と、この温度検出器17の出力信号が
入力される温度範囲判定部18と、この温度範囲判定部
18の出力信号が入力されるフィルタ係数記憶部19
と、を設けたものである。そして、フィルタ係数記憶部
19には、予め複数のフィルタ係数CI1 、CI2 、・
・・、CIn が記憶されており、これら各フィルタ係数
CI1 、CI2 、・・・、CIn のうちのいずれかを、
FIRディジタルフィルタ16のフィルタ係数CI(i)
として設定するよう構成したものである。なお、これ以
外の構成については、上記図6の従来技術と同様であ
り、同等部分には同一符号を付し、その構成についての
詳細な説明を省略する。
【0032】即ち、温度検出器17は、排気ダクト1の
2次音源スピーカ10が配置されている位置とリファレ
ンスマイクロホン11が配置されている位置との間、即
ち上述した伝達関数Cを構成する部分に設けられてお
り、この位置での排気ダクト1内の温度を計測する。
【0033】温度範囲判定部18は、上記温度検出器1
7から出力される信号に基づいて、排気ダクト1内の温
度を検知する。そして、検知した温度計測値に応じて、
後で詳しく説明するフィルタ係数記憶部19に記憶され
ている複数のフィルタ係数CI1 、CI2 、・・・、C
n のうちのいずれかを選択し、これをFIRディジタ
ルフィルタ16にそのフィルタ係数CI(i) として設定
する。なお、この温度範囲判定部18も、適応型FIR
ディジタルフィルタ6や、LMS処理部15、FIRデ
ィジタルフィルタ16と同様に、例えばDSPやCPU
によって構成されており、その動作は、図示しないメモ
リ等の記憶部に記憶されたプログラムにより制御され
る。
【0034】フィルタ係数記憶部19に記憶されている
各フィルタ係数CI1 、CI2 、・・・、CIn は、次
のように決定される。
【0035】即ち、予め、排気ダクト1内を複数の温度
条件下に置き、各温度条件下において、温度検出器17
により排気ダクト1内の温度を計測する。このとき、排
気ダクト1内の温度変化に伴い、上述した伝達関数Cも
変化するが、上記各温度条件下における伝達関数Cをそ
れぞれ計測しておき、これを、上記各温度条件下に対応
する(正しくは上記温度検出器17の各温度計測値に対
応する)フィルタ係数CI1 、CI2 、・・・、CIn
として、フィルタ係数記憶部19に記憶する。なお、こ
のフィルタ係数記憶部19は、上述した図示しないメモ
リ等により構成されている。
【0036】上記のように構成された電子消音装置にお
いて、例えば、今、エンジンを起動し、これにより排気
ダクト1内の温度が次第に上昇し、これに伴い上記伝達
関数Cも変化している状態にあるとする。この状態にお
いて、温度範囲判定部18は、フィルタ係数記憶部19
に記憶されている複数のフィルタ係数CI1 、CI2
・・・、CIn の中から、温度検出器17の温度計測値
に対応する係数を選択し、これをFIRディジタルフィ
ルタ16にそのフィルタ係数CI(i) として設定する。
即ち、排気ダクト1内の温度変化によって上記伝達関数
Cが変化しても、排気ダクト1内の温度変化に応じてF
IRディジタルフィルタ16のフィルタ係数CI(i) が
切り替えられるので、このFIRディジタルフィルタ1
6の伝達関数CIは、常に上記伝達関数Cに対して十分
な精度を保つことができる。従って、この電子消音装置
自体の適応制御も、常に安定する。
【0037】また、上記FIRディジタルフィルタ16
による上記伝達関数Cの同定は、予めフィルタ係数記憶
部19に記憶されている複数のフィルタ係数CI1 、C
2、・・・、CIn の中から、上記伝達関数Cを同定
するためのフィルタ係数CI(i) を選択して、これをF
IRディジタルフィルタ16に設定しているだけなの
で、非常に応答性の速い適応制御を実現できる。
【0038】ところで、本第1の実施の形態において
は、排気ダクト1内の温度が、例えば室温から400℃
弱まで変化する装置に、この電子消音装置を応用してい
る。その詳細について、表1を参照して説明する。
【0039】まず、予め、排気ダクト1内の温度を温度
検出器17で計測した計測値TCIが、例えばTCI=2
4、104、161、218、273、330、387
℃のときの上記伝達関数Cを、FIRディジタルフィル
タ16によりそれぞれ同定する。そして、この同定によ
り得られる上記各温度TCIに対応する各フィルタ係数
を、それぞれCI1 、CI2 、・・・、CI7 としてフ
ィルタ係数記憶部19に記憶しておく。
【0040】温度範囲判定部18は、上記7つのフィル
タ係数CI1 、CI2 、・・・、CI7 の中から、温度
検出器17の温度計測値に応じてFIRディジタルフィ
ルタ16のフィルタ係数CI(i) を選択するが、温度検
出器17の温度計測値が何度のときに、いずれの係数を
選択するかについては、例えば表1に示すように設定さ
れている。
【0041】
【表1】
【0042】即ち、温度検出器17の温度計測値が、例
えば69℃未満の場合、温度TCIがTCI=24℃のとき
に同定したフィルタ係数CI1 が、FIRディジタルフ
ィルタ16のフィルタ係数CI(i) として選択される。
また、温度検出器17の温度計測値が、例えば54℃を
越えて125℃未満の場合、温度TCIがTCI=104℃
のときに同定したフィルタ係数CI2 が選択される。そ
して、温度検出器17の温度計測値が、例えば111℃
を越えて183℃未満の場合、温度TCIがTCI=161
℃のときに同定したフィルタ係数CI3 が選択される。
温度検出器17の温度計測値が、例えば167℃を越え
て240℃未満の場合、温度TCIがTCI=218℃のと
きに同定したフィルタ係数CI4 が選択される。温度検
出器17の温度計測値が、例えば225℃を越えて29
4℃未満の場合、温度TCIがTCI=273℃のときに同
定したフィルタ係数CI5 が選択される。温度検出器1
7の温度計測値が、例えば279℃を越えて354℃未
満の場合、温度TCIがTCI=330℃のときに同定した
フィルタ係数CI6 が選択される。温度検出器17の温
度計測値が、例えば335℃を越えた場合、温度TCI
CI=387℃のときに同定したフィルタ係数CI7
選択される。
【0043】なお、上記によれば、各フィルタ係数CI
1 、CI2 、・・・、CI7 に対して、それぞれに対応
する温度範囲に幅があるが、これは、各フィルタ係数C
1、CI2 、・・・、CI7 により、上記伝達関数C
を十分な精度で同定し得る範囲を示している。なお、上
記各温度範囲内においては、温度検出器17の温度計測
値が上記各同定温度TCIのときに、上記伝達関数Cを最
も高い精度で同定できることについては、言うまでもな
い。
【0044】また、上記によれば、各フィルタ係数CI
1 、CI2 、・・・、CI7 に対応する各温度範囲が、
互いに重複している。これは、排気ダクト1内の温度が
上昇状態にあるときと下降状態にあるときとで、それぞ
れ異なる温度で、各フィルタ係数CI1 、CI2 、・・
・、CI7 を切り替えているからである。
【0045】即ち、排気ダクト1内の温度が時間の経過
と共に上昇している場合は、温度検出器17の温度計測
値が、上記各フィルタ係数CI2 、CI2 、・・・、C
7にそれぞれ対応する各同定温度TCIよりも例えば3
5℃程度低い温度Tup(例えばTup=69、125、1
83、240、294、354℃)に変化(到達)した
ときに、各同定温度TCIにそれぞれ対応するフィルタ係
数CI2 、CI3 、・・・、CI7 に切り替えている。
一方、排気ダクト1内の温度が時間の経過と共に下降し
ている場合には、温度検出器17の温度計測値が、上記
各フィルタ係数CI6 、CI5 、・・・、CI1 にそれ
ぞれ対応する各同定温度TCIよりも例えば6℃前後高い
温度Tdown(例えばTdown=335、279、225、
167、111、54℃(但し、このTdown=54℃に
ついてはTCIよりも30℃高い。))に変化したとき
に、各同定温度TCIにそれぞれ対応するフィルタ係数C
6、CI5 、・・・、CI1 に切り替えている。
【0046】このように、排気ダクト1内の温度が上昇
する場合の切替温度Tupを上記各同定温度TCIよりも低
く設定し、排気ダクト1内の温度が下降する場合の切替
温度Tdownを上記各同定温度TCIよりも高く設定するこ
とにより、排気ダクト1内の温度が上昇状態にあるとき
も下降状態にあるときにも、FIRディジタルフィルタ
16のフィルタ係数CI(i) は、上記排気ダクト1の温
度上昇及び温度下降よりも早めに切り替わる。従って、
排気ダクト1内の温度変化に対して、素早い応答を実現
できる。これは、本第1の実施の形態のように、排気ダ
クト1内の温度変化が非常に大きい装置においては、非
常に有効である。
【0047】また、上記のように、排気ダクト1内の温
度が上昇状態にあるときと下降状態にあるときとで、フ
ィルタ係数CI6 、CI5 、・・・、CI1 に切り替え
る切替温度Tup、Tdownがそれぞれ異なるので、FIR
ディジタルフィルタ16に設定されるフィルタ係数CI
(i) は、排気ダクト1内の温度変化に対してヒステリシ
ス的に切り替わる。従って、温度検出器17の温度計測
値が、例えば排気ダクト1内を流れる排気ガス(風圧)
やノイズ等の影響を受けて多少不安定になっても(ふら
ついても)、FIRディジタルフィルタ16のフィルタ
係数CI(i) が頻繁に切り替わり、ひいてはFIRディ
ジタルフィルタ16の伝達関数CIが頻繁に変化するの
を防ぐことができる。
【0048】更に、上述したように、各同定温度TCI
対する各切替温度Tup、Tdownの差(絶対値)ΔT
up(=|TCI−Tup|)、ΔTdown(=|TCI−Tdown
|)が、排気ダクト1内の温度が上昇状態にあるとき
は、ΔTup=35℃程度で、排気ダクト1内の温度が下
降状態にあるときには、ΔTdown=6℃程度(但し、T
down=54℃のときを除く。)とされており、即ち排気
ダクト1内の温度が上昇状態にあるときの方が下降状態
にあるときよりも大きい(ΔTup>ΔTdown)とされて
いる。これは、排気ダクト1内の温度変化に対するFI
Rディジタルフィルタ16のフィルタ係数CI(i) の切
り替えが、排気ダクト1内の温度が上昇状態にあるとき
の方が下降状態にあるときよりも早めに行われることを
意味する。一般に、エンジンの排気ダクト1の温度は、
上昇するときの方が、下降するときよりも速く変化する
ことが知られている。よって、この温度の上昇及び下降
の性質(速度)に合わせた適応動作を実現できる。
【0049】また、温度検出器17については、排気ダ
クト1の2次音源スピーカ10が配置されている位置と
リファレンスマイクロホン11が配置されている位置と
の間、即ち上述した伝達関数Cを構成する部分に設けて
いるので、この伝達関数Cが存在している位置そのもの
の温度を計測することができる。従って、FIRディジ
タルフィルタ16の伝達関数CIを、上記伝達関数Cに
対してより高い精度で同定させることができ、ひいては
より高精度な適応制御を実現できる。
【0050】ところで、本第1の実施の形態のように、
FIRディジタルフィルタ16の伝達関数CIを、上記
伝達関数Cに同定させるには、温度検出器17の温度計
測値に対して、適宜、演算を施すことにより、各温度に
対応するフィルタ係数CI(i) を算出するという技術も
考えられる。
【0051】ところが、本第1の実施の形態のように、
この電子消音装置をエンジンの騒音を消音するのに応用
する場合には、高温かつ腐食性の強い排気ガスから2次
音源スピーカ10を保護するために、通常、例えば図2
に示すように、排気ダクト1と2次音源スピーカ10と
の間に枝管1aを設け、この枝管1aを介して2次音源
スピーカ10の放射音を排気ダクト1内の騒音に干渉さ
せている。また、2次音源スピーカ10の温度上昇を更
に抑えるために、2次音源スピーカ10の周辺に対し
て、例えば空冷や水冷等による強制冷却を行うこともあ
る。このため、枝管1a及び排気ダクト1の内部、即ち
上述した伝達関数Cを構成する部分(要素)が、温度勾
配(分布)を有するようになる。図2に示す各ポイント
乃至の温度を実際に計測した結果を、図3のグラフ
に示す。
【0052】図3において、グラフXは、エンジンを停
止しているとき、グラフYは、エンジンを無負荷状態で
運転しているとき、グラフZは、エンジンをこれに所定
の負荷を掛けた状態で運転しているときの、上記各ポイ
ント乃至における温度計測値を示す。同図に示すよ
うに、エンジンの運転時においては、上記各ポイント
乃至の温度差が大きく、この温度差は、エンジンの負
荷が大きくなるほど顕著になる。
【0053】このように、上記伝達関数Cを構成する枝
管1a内及び排気ダクト1内に温度勾配が生じた場合、
上述のフィルタ係数CI(i) を演算で求めるという技術
によれば、このフィルタ係数CI(i) を算出するため
に、枝管1a内及び排気ダクト1内のどの場所の温度を
計測すればよいのか非常に不明確になる。従って、正確
なフィルタ係数CI(i) を算出することができず、FI
Rディジタルフィルタ16の伝達関数CIを上記伝達関
数Cに対して十分な精度で同定させることができない。
【0054】これに対して、本第1の実施の形態によれ
ば、予め温度検出器17の各温度計測値に対応する各フ
ィルタ係数CI1 、CI2 、・・・、CIn をフィルタ
係数記憶部19に記憶しておき、適応制御の際に、上記
各フィルタ係数CI1 、CI2 、・・・、CIn の中か
ら、温度検出器17の温度計測値に応じた係数を選択し
てこれをFIRディジタルフィルタ16のフィルタ係数
CI(i) として設定している。従って、上記のような枝
管1a内及び排気ダクト1内に温度勾配が生じても、そ
の影響を受けることなく、FIRディジタルフィルタ1
6の伝達関数CIを上記伝達関数Cに対して十分な精度
で同定させることができる。
【0055】なお、本第1の実施の形態においては、電
子消音装置を、エンジンの騒音を消音する装置に応用し
たが、これ以外の装置についても、本技術を適用でき
る。
【0056】また、予めフィルタ係数記憶部19に記憶
しておくフィルタ係数CI1 、CI 2 、・・・、CIn
の数を7つとしたが、この数に限らない。例えば、FI
Rディジタルフィルタ16の伝達関数CIをより高い精
度で伝達関数Cに同定させるには、記憶するフィルタ係
数の数を増やして、各フィルタ係数に対応する温度範囲
をより狭くすればよい。これとは逆に、例えばFIRデ
ィジタルフィルタ16が、伝達関数Cに対して、それほ
ど高い精度で同定する必要の無い場合には、記憶するフ
ィルタ係数を少なくしてもよい。
【0057】図4は、本発明の第2の実施の形態を示す
ものである。同図に示すように、この第2の実施の形態
は、上述した図1に示す第1の実施形態における装置の
温度検出器17を、エラーマイクロホン11と一体化し
たものである。これにより、エラーマイクロホン11と
温度検出器17とを、それぞれ別個に設ける手間を省く
ことができ、また、装置構成を簡略化し、かつ小型化で
きるという効果がある。
【0058】図5は、本発明の第3の実施の形態を示す
ものである。同図に示すように、この第3の実施の形態
は、温度検出器17、17を複数、例えば2台設けたも
ので、そのうちの1台については、上記図2に示す第2
の実施形態と同様に、エラーマイクロホン11と一体化
したものである。そして、上記2つの温度検出器17、
17による温度計測値を平均し、この平均値に応じてF
IRディジタルフィルタ16のフィルタ係数CI(i) を
選択するよう構成されている。
【0059】従って、本第3の実施の形態によれば、排
気ダクト1内の温度をより高い精度で計測することがで
きるので、FIRディジタルフィルタ16の伝達関数C
Iを上記伝達関数Cに対してより高い精度で同定させる
ことができる。
【0060】なお、ここでは、排気ダクト1内における
騒音と2次音源スピーカ10の放射音との干渉位置(2
次音源スピーカ10が設けられている位置)、及びエラ
ーマイクロホン11内に、上記各温度検出器17、17
を配置している。これら各温度検出器17、17の各配
置位置は、排気ダクト1内において上記伝達関数Cを構
成する部分の両端に相当する。従って、このように2台
の温度検出器17、17を用いて排気ダクト1内の温度
を計測する場合には、上記2箇所の温度を計測してその
平均を取ることにより、上記伝達関数Cが存在する位置
そのものの温度をより高い精度で計測することができ
る。なお、温度検出器17、17の数については、2台
に限らない。
【0061】また、上述した図2に示すように、排気ダ
クト1と2次音源スピーカ10との間に枝管1aを設け
ている場合には、排気ダクト1内と枝管1aとの温度差
が大きいので、このような場合には、排気ダクト1内に
のみ各温度検出器17、17を設けるのが好ましい。例
えば、排気ダクト1内の騒音と2次音源スピーカ10か
らの放射音との干渉点Q、及びエラーマイクロホン11
が設けられた位置(例えば図2のの位置)に、各温度
検出器17、17を設ければよい。
【0062】
【発明の効果】以上のように、請求項1に記載の発明に
よれば、音波伝搬路の温度変化によって第2の伝達関数
が変化しても、音波伝搬路の温度を計測し、この温度計
測値に応じて同定フィルタ手段のフィルタ係数を切り替
えることにより、同定フィルタ手段の伝達関数が第2の
伝達関数に対して十分な精度で同定するように制御して
いる。従って、常に安定した適応制御を実現できるとい
う効果がある。また、同定フィルタ手段のフィルタ係数
を切り替えるだけなので、非常に応答性の速い適応制御
を実現できるという効果もある。
【0063】更に、予め温度計測手段の各温度計測値に
対応する各フィルタ係数を係数記憶手段に記憶してお
き、適応制御の際に、上記各フィルタ係数の中から、温
度計測手段の温度計測値に応じた係数を選択してこれを
同定フィルタ手段に設定している。従って、この電子消
音装置を例えばエンジン騒音の消音に応用した場合のよ
うに、音波伝搬路が温度勾配を有し、これにより温度計
測手段を配置する場所によってその温度計測値が大きく
変わる場合でも、上記温度勾配の影響を受けることな
く、十分な精度で適応制御を行うことができるという効
果もある。
【0064】請求項2に記載の発明によれば、音波伝搬
路の温度が上昇状態及び下降状態にあるとき、同定フィ
ルタ手段のフィルタ係数は、音波伝搬路の温度変化より
も若干早めに切り替わる。従って、音波伝搬路の温度の
変化に対して、素早い応答を実現できるという効果があ
る。
【0065】また、フィルタ係数は、音波伝搬路の温度
変化に対してヒステリシス的に切り替わるので、温度計
測手段の温度計測値が、例えばエンジンの排気ガス(風
圧)やノイズ等の影響を受けて多少不安定になっても
(ふらついても)、上記フィルタ係数が頻繁に切り替わ
るのを防ぐことができる。
【0066】請求項3に記載の発明によれば、音波伝搬
路の温度が上昇状態にあるときの方が、音波伝搬路の温
度が下降状態にあるときよりも、フィルタ係数が早めに
切り替わる。ここで、一般に、温度は、上昇するときの
速度の方が、下降するときの速度よりも速いことが知ら
れている。従って、この温度の上昇及び下降の性質に合
わせた適応動作を実現できるという効果がある。
【0067】請求項4に記載の発明によれば、第2のマ
イクロホンと温度計測手段とが、一体に形成されている
ので、第2のマイクロホンと温度計測手段とを別々に設
ける手間を省くことができ、また、装置を小型化できる
という効果がある。
【0068】請求項5に記載の発明によれば、同定フィ
ルタ手段による同定の対象としている第2の伝達関数が
存在している位置そのものの温度を計測することができ
るので、同定フィルタ手段の伝達関数を上記第2の伝達
関数に対してより高い精度で同定させることができ、ひ
いてはより高精度な適応制御を実現できるという効果が
ある。
【0069】請求項6に記載の発明によれば、温度計測
手段を複数設け、これら複数の温度計測手段による各温
度計測値の平均値に応じて同定フィルタ手段のフィルタ
係数を切り替えているので、より高い精度で音波伝搬路
の温度を計測することができる。従って、同定フィルタ
手段のフィルタ係数を、第2の伝達関数に対してより高
い精度で同定させることができ、ひいてはより高精度な
適応制御を実現できるという効果がある。なお、この効
果は、上記複数の温度計測手段を、スピーカの音波放出
部と第2のマイクロホンが配置された位置との間にそれ
ぞれ設けることにより、更に顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子消音装置をエンジン騒音の消
音に応用した第1の実施の形態を示すブロック図であ
る。
【図2】同実施の形態において、排気ダクトとスピーカ
との間に枝管を設けた状態を示す図である。
【図3】図3の各箇所における温度計測値を示すグラフ
である。
【図4】本発明に係る電子消音装置をエンジン騒音の消
音に応用した第2の実施の形態を示すブロック図であ
る。
【図5】本発明に係る電子消音装置をエンジン騒音の消
音に応用した第3の実施の形態を示すブロック図であ
る。
【図6】従来の電子消音装置をエンジン騒音の消音に応
用した状態を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 排気ダクト 2 リファレンスマイクロホン(第1のマイクロホン) 6 適応型FIRディジタルフィルタ(適応型フィルタ
手段) 10 2次音源スピーカ 11 エラーマイクロホン(第2のマイクロホン) 15 LMS処理部(係数制御手段) 16 FIRディジタルフィルタ(同定フィルタ手段) 17 温度検出器(温度計測手段) 18 温度範囲判定部(同定フィルタ制御手段) 19 フィルタ係数記憶部(係数記憶手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大久保 稔 大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマ ーディーゼル株式会社内 (72)発明者 石田 慎一郎 大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマ ーディーゼル株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の伝達関数を有する音波伝搬路に入
    力される音波を収音する第1のマイクロホンと、 上記音波伝搬路から出力される音波を収音する第2のマ
    イクロホンと、 上記第1のマイクロホンの出力信号を処理し、この処理
    結果に応じた音波をスピーカから上記音波伝搬路に放出
    する適応型フィルタ手段と、 上記第1及び第2のマイクロホンの出力信号を入力し、
    これらに応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数
    と、該適応型フィルタ手段から上記音波伝搬路を経て上
    記第2のマイクロホンまでの間に存在し温度変化によっ
    て変化する第2の伝達関数と、の合成による伝達関数
    が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型
    フィルタ手段の伝達関数を制御するフィルタ制御手段
    と、 上記第1のマイクロホンと上記フィルタ制御手段との間
    に介在し、上記第2の伝達関数を同定する同定フィルタ
    手段と、 上記音波伝搬路に設けられ、該音波伝搬路の温度を計測
    する温度計測手段と、 予め定めた複数のフィルタ係数が記憶された係数記憶手
    段と、 上記同定フィルタ手段の伝達関数が上記第2の伝達関数
    と略等価となる状態に、上記温度計測手段の温度計測値
    に応じて上記係数記憶手段から上記複数のフィルタ係数
    のうちのいずれかを選択し、これを上記同定フィルタ手
    段にそのフィルタ係数として設定する同定フィルタ制御
    手段と、を具備する電子消音装置。
  2. 【請求項2】 上記同定フィルタ制御手段は、上記温度
    計測手段による温度計測値が時間の経過と共に上昇状態
    にあるとき、該温度計測手段による温度計測値が、上記
    複数のフィルタ係数にそれぞれ対応する上記各温度計測
    値よりも若干低い温度値に到達した時点で、上記各フィ
    ルタ係数を上記同定フィルタ手段に設定し、上記温度計
    測手段による温度計測値が時間の経過と共に下降状態に
    あるとき、該温度計測手段による温度計測値が、上記複
    数のフィルタ係数にそれぞれ対応する上記各温度計測値
    よりも若干高い温度値に到達した時点で、上記各フィル
    タ係数を上記同定フィルタ手段に設定する状態に構成さ
    れたことを特徴とする請求項1に記載の電子消音装置。
  3. 【請求項3】 上記同定フィルタ制御手段は、上記複数
    のフィルタ係数にそれぞれ対応する上記各温度計測値
    と、上記各フィルタ係数を上記同定フィルタ手段に設定
    する時点での上記温度計測手段の各温度計測値との差
    が、上記温度計測値が上昇状態にあるときの方が下降状
    態にあるときよりも大きくなる状態に構成されたことを
    特徴とする請求項2に記載の電子消音装置。
  4. 【請求項4】 上記第2のマイクロホンと、上記温度計
    測手段とが、一体に形成されたことを特徴とする請求項
    1、2又は3に記載の電子消音装置。
  5. 【請求項5】 上記温度計測手段が、上記スピーカの音
    波放出部と上記第2のマイクロホンが配置された位置と
    の間に設けられたことを特徴とする請求項1、2又は3
    に記載の電子消音装置。
  6. 【請求項6】 上記温度計測手段が複数設けられ、 上記同定フィルタ制御手段は、上記複数の温度計測手段
    による各温度計測値の平均値に応じて上記係数記憶手段
    から上記フィルタ係数を選択してこれを上記同定フィル
    タ手段に設定する状態に構成されたことを特徴とする請
    求項1、2又は3に記載の電子消音装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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