JP4125851B2 - 能動型消音装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音波伝搬路を伝搬する音波に対して、これと実質的に等大で逆位相の制御音を干渉させることによって、上記音波を能動的に消音する能動型消音装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような能動型消音装置として、例えば船舶や自動車等のエンジンの排気音を消音するものが知られている。その従来例を、図7に示す。同図に示すように、この装置は、排気ダクト1内をその入口側(同図の左側)から出口側(同図の右側)に向かって伝搬する排気音を収音するためのリファレンスマイクロホン2を備えている。このリファレンスマイクロホン2の出力信号は、図示しない増幅器により増幅され、図示しないA/D変換器によりディジタル化された後、騒音信号x(k)(kは、サンプリング時刻を表す所謂タイム・インデックスである。)として、FIR適応型ディジタルフィルタ(以下、単に、適応型フィルタと言う。)3に入力される。適応型フィルタ3は、上記騒音信号x(k)に対して、後述するLMS演算部4により設定されるフィルタ係数Wk(i)(iは、適応型フィルタ3のタップの番号を表わす所謂タップ・インデックスである。)を用いて所定のディジタルフィルタリング処理、例えば次の数1で表されるような畳み込み和演算を施し、その演算結果y(k)を出力する。
【0003】
【数1】
Figure 0004125851
【0004】
ここで、Nは、適応型フィルタ3のタップ数で、Wk(i)は、時刻kにおけるiタップ目のフィルタ係数を表わし、x(k-i)は、時刻k−iにおける騒音信号を表す。
【0005】
排気ダクト1の上記リファレンスマイクロホン2が設けられている位置よりも排気ダクト1の出口側、所謂排気音の伝搬方向における下流側には、排気ダクト1内に音を放出する状態に、二次音源スピーカ(以下、単に、スピーカと言う。)5が設けられている。そして、このスピーカ5に、上記適応型フィルタ3の出力信号y(k)が、加算器6及び図示しないD/A変換器、増幅器を介して入力される。スピーカ5は、この入力信号y(k)に応じた制御音を排気ダクト1内に放出して、排気ダクト1内を伝搬する排気音に干渉させ、これにより排気音を打ち消す。
【0006】
排気ダクト1の上記スピーカ5が設けられている位置よりも更に下流側、例えば排気ダクト1の出口付近には、エラーマイクロホン7が設けられている。このエラーマイクロホン7は、上記制御音により排気音を打ち消した後の音、つまりは排気音のうち制御音によって完全に打ち消されずに残った所謂エラー成分を検出する。そして、このエラーマイクロホン7の出力信号は、図示しない増幅器により増幅され、図示しないA/D変換器によりディジタル化された後、エラー信号e(k)として、上述したLMS演算部4に供給される。このLMS演算部4には、上記エラー信号e(k)の他に、上記騒音信号x(k)を後述するFIRディジタルフィルタ(以下、単に、FIRフィルタと言う。)8によりフィルタリング処理した後の信号(以下、この信号を、フィルタード・リファレンスと言う。)r(k)も供給される。
【0007】
LMS演算部4は、これに供給される上記エラー信号e(k)とフィルタード・リファレンスr(k)とに基づいて、適応型フィルタ3の伝達関数Wと後述する二次音路(error path)の伝達関数(以下、単に、二次音路と言う。)Cとを合成して得られる伝達関数[W×C]が、排気ダクト1内のリファレンスマイクロホン2からエラーマイクロホン7までの間に存在する一次音路(primary path)の伝達関数(以下、単に、一次音路と言う。)Pと相補になるように、例えば次の数2で表されるLMSアルゴリズムに従って、適応型フィルタ3のフィルタ係数Wk(i)を更新し、即ちWk+1(i)を求める。
【0008】
【数2】
Figure 0004125851
【0009】
ここで、μwは、適応型フィルタ3のステップ・サイズ・パラメータである。
【0010】
このように、適応型フィルタ3の伝達関数Wと二次音路Cとの合成伝達関数[W×C]を、一次音路Pと相補にすることによって初めて、排気ダクト1内の排気音をスピーカ5の放出する制御音により打ち消すことができる。また、例えばエンジンの回転数や出力等が変化する等により排気ダクト1内の温度が変化し、これに伴って上記一次音路Pが経時的に変化しても、この一次音路Pの変化に応じて適応型フィルタ3の伝達関数Wも上記フィルタ係数Wk(i)の更新により適宜変化するので、常に安定した消音効果を得ることができる。
【0011】
ところで、図7の構成においては、適応型フィルタ3の出力部分から、加算器6、図示しないD/A変換器、増幅器、スピーカ5及び排気ダクト1の一部(スピーカ5の設置位置から騒音の下流側の部分)を経て、エラーマイクロホン7までの間に、上述した二次音路Cが存在する。従って、上記のようにLMS演算部4により適応型フィルタ3の伝達関数Wを制御することによって、この伝達関数Wと二次音路Cとの合成伝達関数〔W×C〕を一次音路Pと相補にするには、当該適応型フィルタ3の伝達関数Wを制御する際に、二次音路Cを補償する必要がある。そこで、この図7の構成では、リファレンスマイクロホン2とLMS演算部4との間に、二次音路Cと等価な伝達関数Seを有する上述したFIRフィルタ8を設けている。そして、このFIRフィルタ8により騒音信号x(k)を処理して得た上記フィルタード・リファレンスr(k)を、上記LMS演算部4に供給することによって、上記二次音路Cを補償している。このような制御系は、一般に、Filtered-x LMSアルゴリズムの制御系と呼ばれている。なお、フィルタード・リファレンスr(k)は、次の数3で表される。
【0012】
【数3】
Figure 0004125851
【0013】
ここで、Mは、FIRフィルタ8のタップ数で、例えば適応型フィルタ3のタップ数Nと同じ値(即ちM=N)に設定される。そして、Sek(i)は、FIRフィルタ8のフィルタ係数を表わし、具体的には時刻kにおけるiタップ目のフィルタ係数を表す。
【0014】
更に、この消音装置は、上記二次音路Cの変化に応じてFIRフィルタ8のフィルタ係数Sek(i)を更新することにより、当該FIRフィルタ8の伝達関数Seをも適宜変化させるよう構成されている。即ち、上記のようにエンジンの回転数や出力等が変化する等により排気ダクト1内の温度が変化すると、上記一次音路Pのみならず、二次音路Cも当然に変化する。また、この温度変化に伴ってスピーカ5の出力特性等も変化することがあり、これも上記二次音路Cが変化する一つの要因となる。従って、常に安定した消音効果を得るには、この二次音路Cの変化に応じて、上記のようにFIRフィルタ8の伝達関数Sekをも適宜変化させる、所謂二次音路Cを同定する、必要がある。そこで、この消音装置では、例えば一般に知られているM系列信号(MLS)の疑似信号(疑似ランダムノイズ)m(k)を発生する疑似信号発生器9を設け、この疑似信号m(k)を、図7に点線で示す経路で処理することによって、上記二次音路Cを同定している。
【0015】
具体的には、上記FIRフィルタ8を、上述したLMS演算部4とは別のLMS演算部10により適応制御される適応型フィルタ構成とする。そして、このLMS演算部10とFIRフィルタ8とスピーカ5とに、それぞれ上記疑似信号m(k)を入力する(ただし、スピーカ5については、加算器6を介して上記疑似信号m(k)を入力する)と共に、このときのエラーマイクロホン7の出力信号e(k)とFIRフィルタ8の出力信号r(k)とを比較器11により比較して両者の誤差ε(k)を求め、この誤差信号ε(k)を上記LMS演算部10に供給する。LMS演算部10は、これに供給される上記疑似信号m(k)と誤差信号ε(k)とに基づいて、誤差信号ε(k)が極力小さくなるように、即ち疑似信号m(k)を二次音路Cに通過させた後の信号の特性と、疑似信号m(k)をFIRフィルタ8で処理した後の信号の特性とが、互いに近似するように、例えば次の数4で表されるLMSアルゴリズムに従って、FIRフィルタ8のフィルタ係数Sek(i)を更新する。
【0016】
【数4】
Figure 0004125851
【0017】
ここで、μsは、FIRフィルタ8のステップ・サイズ・パラメータである。
【0018】
この数4に基づいて、FIRフィルタ8のフィルタ係数Sek(i)を更新することにより、FIRフィルタ8の伝達関数Sekと二次音路Cとが略等価となり、FIRフィルタ8による二次音路Cの同定を実現できる。
【0019】
ただし、図7の構成においては、FIRフィルタ8は、それ自体がLMS演算部10等と共に二次音路Cを同定(推定)するための言わば同定制御手段を構成する一要素であると同時に、排気音を適応消音するための上記Filtered-x LMSアルゴリズム構成の制御系を実現する一要素(二次音路Cを補償する手段)でもある。具体的には、FIRフィルタ8は、上記二次音路Cの同定時(即ちLMS演算部10によるFIRフィルタ8自体の伝達関数Seの適応制御時)には、疑似信号m(k)を処理するが、排気音の適応消音時(即ちLMS演算部4による適応型フィルタ3の伝達関数Wの適応制御時)には、騒音信号x(k)を処理する。従って、この図7の構成では、上記二次音路Cの同定動作と、排気音の適応消音動作とを、同時に実行することはできない。そこで、従来は、図8に示すように、定期的に二次音路Cを同定することにより、この二次音路Cの変動に対応している。
【0020】
即ち、この消音装置の図示しない電源スイッチをONした直後の所謂初期状態においては、まず、適応型フィルタ3のフィルタ係数Wk(i)及びFIRフィルタ8のフィルタ係数Sek(i)を、それぞれクリアし、所謂零(0)とする。この状態で、適応型フィルタ3のフィルタ係数Wk(i)を固定して、この適応型フィルタ3を伝達関数Wが一定の単なるディジタルフィルタとして機能させる。そして、疑似信号発生器9から疑似信号m(k)を出力させると共に、LMS演算部10によりFIRフィルタ8の伝達関数Se(フィルタ係数Sek(t))を適応制御することによる二次音路Cの同定動作を、或る一定期間d、実行する。
【0021】
上記一定期間dにわたる二次音路Cの同定動作終了後、上記LMS演算部10によるFIRフィルタ8の伝達関数Seの適応制御を停止する。そして、このFIRフィルタ8の伝達関数Seを当該適応制御の停止時点での値に固定して、このFIRフィルタ8を伝達関数Seが当該固定値一定の単なるディジタルフィルタとして機能させる。これと同時に、上記疑似信号発生器9による疑似信号m(k)の出力を停止して、今度は、LMS演算部4により適応型フィルタ3の伝達関数W(フィルタ係数Wk(t))を適応制御することによる排気音の適応消音動作を、或る一定期間d実行する。
【0022】
そして、上記一定期間dにわたる適応消音動作終了後、再度、所定期間dにわたって上記二次音路Cの同定動作を実行し、これ以降、上記と同様に、この二次音路Cの同定動作と、所定期間dにわたる上記適応消音動作とを、交互に実行する。このように、適応消音動作を実行しながら定期的に二次音路Cを同定するという所謂オンライン同定を実現することによって、上記のように排気ダクト1内の温度変化等により二次音路Cが経時的に変化しても、常に所期の消音効果が得られるよう対応している。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術によれば、上記二次音路Cに変動を来す排気ダクト1内の温度変化等の環境変化に直接関係することなく、単純に二次音路Cの同定動作を定期的に実行するだけであるので、次のような問題を生じる。即ち、例えば二次音路Cの同定の頻度を高くする(換言すれば、二次音路Cの同定の周期D(D=d+d)を短くする)とする。この場合、二次音路Cを精度良く同定でき、所謂上記オンライン同定の効果が高まるものの、その反面、適応消音動作を実行する期間dが短くなり、十分な適応消音を実現できず、結果的に消音効果が悪化することがある。
【0024】
また、二次音路Cの同定動作時には、スピーカ5から上記疑似信号m(k)に応じた所謂同定音が出力される。従って、上記のように二次音路Cの同定頻度を高くすると、その分、同定音の出力頻度も高くなり、この同定音が聴感的に雑音として作用して、これが上記消音効果の悪化の一要因となることもある。
【0025】
一方、上記とは反対に、二次音路Cの同定の頻度を低くする(換言すれば、上記同定周期Dを長くする)とする。この場合、適応消音動作の実行期間dが長くなるので、例えば二次音路Cの変動が比較的に小さいときには、安定した消音効果を期待できる。しかし、例えば排気ダクト1内の温度が急激に変化する等により二次音路Cが急激に変化した場合には、この急激な変化に応じて即座に二次音路Cを同定できないことがあり、この場合も、十分な消音効果が得られないという問題がある。
【0026】
そこで、本発明は、上記排気ダクト1内の温度変化等の二次音路Cに変動を来す環境の変化に応じて、適切なタイミングで二次音路Cを同定することにより、常に安定した消音効果を得ることのできる能動型消音装置を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、第1の伝達関数を有する音波伝搬路に入力される音波を収音する第1の収音手段と、
上記音波伝搬路から出力される音波を収音する第2の収音手段と、
上記第1の収音手段の出力信号を処理して、この処理結果に応じた制御音をスピーカから上記音波伝搬路中に放出させる適応型フィルタ手段と、
上記第1及び第2の収音手段の各出力信号が入力され、これら各信号に応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、この適応型フィルタ手段の出力側から上記音波伝搬路を経て上記第2の収音手段までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を適応制御する適応型フィルタ制御手段と、
上記第1の収音手段と上記適応型フィルタ制御手段との間に介在する同定フィルタ手段を含み、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御が停止状態にあるときにのみ上記同定フィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数とが略等価となる状態に該同定フィルタ手段の伝達関数を適応制御可能であって、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御が実行されているときには該同定フィルタ手段の伝達関数を固定とする、同定フィルタ制御手段と、
上記第2の伝達関数を決定する各環境要素のうち所定の環境要素を定量的に検出する環境要素検出手段と、
この環境要素検出手段による上記所定の環境要素の検出値を監視して、この監視結果に基づいて、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御を実行させると共に上記同定フィルタ制御手段による上記同定フィルタ手段の伝達関数を固定とする第1の制御状態と、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御を停止して該適応型フィルタ手段の伝達関数を固定とすると共に上記同定フィルタ制御手段による上記同定フィルタ手段の伝達関数の適応制御を実行させる第2の制御状態と、のいずれか一方の状態になるように、上記適応型フィルタ制御手段及び同定フィルタ制御手段の各動作を制御するフィルタ動作制御手段と、
を具備するものである。
そして、上記フィルタ動作制御手段は、或る時点における上記環境要素検出手段による上記所定の環境要素の検出値を基準として、この基準値からの該検出値の変化の度合いを求め、この変化の度合いが所定の基準レベル以下であるとき、上記第1の状態とし、該変化の度合いが上記基準レベルを超えたとき、所定期間にわたって上記第2の状態としたあと上記第1の状態に切り替えるよう構成されている。
【0028】
本発明によれば、第1の収音手段が、音波伝搬路に入力される言わば消音対象である騒音等の音波を収音する。そして、適応型フィルタ手段が、この第1の収音手段の出力信号を処理して、この処理結果に応じた制御音、例えば上記消音対象である音波と実質的に等大で逆位相の音を、音波伝搬路中に設けられたスピーカから放出させ、この制御音を上記消音対象である音波に干渉させることによって、当該音波を打ち消す。この打ち消された後の音波、換言すれば打ち消されずに残った言わばエラー成分は、第2の収音手段によって収音される。そして、この第2の収音手段の出力信号は、適応型フィルタ制御手段に入力される。適応型フィルタ制御手段は、この第2の収音手段の出力信号と、第1の収音手段の出力信号、厳密にはこの第1の収音手段の出力信号を同定フィルタ手段により処理した後の信号と、に基づいて、上記エラー成分が極力小さくなるように、適応型フィルタ手段の伝達関数を制御する。具体的には、適応型フィルタ制御手段は、適応型フィルタ手段の伝達関数と、この適応型フィルタ手段の出力側から音波伝搬路の一部を経て第2の収音手段までの間に存在する第2の伝達関数、所謂上述した二次音路Cと、の合成による合成伝達関数が、音波伝搬路の第1の伝達関数と相補する状態に、例えばLMSアルゴリズム等の演算式に基づいて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を適応制御する。これによって初めて、スピーカから放出する上記制御音により、消音対象である音波を、打ち消すことができる。
【0029】
なお、上記のように適応型フィルタ制御手段によって適応型フィルタ手段の伝達関数を制御することにより、この伝達関数と上記二次音路Cとの合成伝達関数を第1の伝達関数と相補にするには、当該適応型フィルタ手段の伝達関数を制御する際に、上記二次音路Cを補償する必要がある。そこで、本発明では、第1の収音手段と適応型フィルタ制御手段との間に、二次音路Cと等価な伝達関数を有する上記同定フィルタ手段を設け、所謂上述したFiltered-x LMSアルゴリズム構成の制御系を実現している。そして、第1の収音手段の出力信号を適応型フィルタ制御手段に入力する際、これを同定フィルタ手段で処理することによって、上記二次音路Cを補償する。
【0030】
ところで、上記二次音路Cは、例えば音波伝搬路中の温度が変化したり、この温度変化に伴ってスピーカの出力特性が変化したりする等の環境の変化によって、変動することがある。この二次音路Cの変動に対応すべく、本発明では、この二次音路Cの変化に応じて、この二次音路Cと同定フィルタ手段の伝達関数とが略等価となるように、当該同定フィルタ手段の伝達関数を適応制御し、即ち上記二次音路Cを同定するための、同定フィルタ制御手段を設けている。ただし、この同定フィルタ制御手段には、その一構成要素として上記同定フィルタ手段も含まれる。即ち、同定フィルタ手段は、上記二次音路Cを同定(推定)するための同定フィルタ制御手段の一構成要素であると同時に、消音対象である音波を適応消音するための上記Filtered-x LMSアルゴリズム構成の制御系を実現する一要素(二次音路Cを補償する手段)でもある。従って、同定フィルタ制御手段は、適応型フィルタ制御手段により適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御することによる所謂適応消音動作が停止状態にあるときにのみ、上記二次音路Cの同定動作を実行でき、この適応消音動作を実行している最中には、二次音路Cを同定できない。
【0031】
そこで、本発明では、上記音波伝搬路中の温度変化等の二次音路Cに変動を来す所定の環境要素を検出する環境要素検出手段を設ける。そして、この環境要素検出手段による検出結果に基づいて、同定フィルタ手段の伝達関数を固定とした状態で適応型フィルタ手段の伝達関数を更新制御するという第1の制御状態、即ち上記適応消音動作と、適応型フィルタ手段の伝達関数を固定とした状態で同定フィルタ手段の伝達関数を更新制御するという第2の制御状態、即ち上記二次音路Cの同定動作と、のいずれか一方の動作に切り替えるフィルタ動作制御手段を設ける。
【0032】
例えば、今、上記環境要素検出手段が、音波伝搬路中の温度を検出する温度検出手段であるとする。そして、上記フィルタ動作制御手段の制御により、適応消音動作が実行されている状態(第1の制御状態)にあるとする。この状態において、フィルタ動作制御手段は、或る時点、例えば前回二次音路Cを同定したときの、上記温度検出手段による検出温度を基準として、この基準温度に対する現時点での検出温度の変化の度合い、例えば変化量(温度差)、を監視する。そして、この温度変化量と、所定の基準レベル、例えば当該温度変化量が二次音路Cに比較的に大きな変動を来す程度の変化量であるか否かの判断基準となるレベルと、を比較して、上記温度変化量がこの基準レベル以下であるときは、二次音路Cを同定する必要はないものと判断して、適応消音動作を継続する。
【0033】
一方、音波伝搬路中の温度が変動して、上記基準温度に対する上記検出温度の変化量が所定の基準レベルを超えると、フィルタ動作制御手段は、改めて二次音路Cを同定し直す必要があると判断し、適応消音動作を停止する。ただし、ここでは、この適応消音動作を停止するだけで、適応型フィルタ手段の伝鉄関数を固定とした状態での一定の制御音による能動消音動作は継続する。そして、この状態で、二次音路Cの同定動作(第2の制御状態)を所定期間、実行する。なお、ここで言う所定期間は、例えば予め定めた一定の期間としてもよいし、二次音路Cの同定状況を逐次監視して二次音路Cが十分精度良く同定できたと見なすことのできる時点を当該所定期間の終了時としてもよい。そして、この所定期間にわたる二次音路Cの同定動作を終えた後、フィルタ動作制御手段は、再び適応消音動作を実行する。これと同時に、例えばこの二次音路Cの同定動作を終える時点または当該二次音路Cの同定動作を開始した時点における上記温度検出手段による音波伝搬路中の検出温度を、上記或る時点での基準温度として新たに設定し直す。そして、これ以降、フィルタ動作制御手段は、温度検出手段による検出温度に基づいて、上記と同様の制御を繰り返す。
【0034】
このように、本発明によれば、二次音路Cの変動に大きく影響する音波伝搬路中の温度変化を監視して、この温度変化が比較的に小さく、二次音路Cを同定し直す必要がないときには、適応消音動作を継続する。そして、音波伝搬路中の温度が大きく変化して、二次音路Cを改めて同定する必要が生じたときに初めて、二次音路Cの同定動作を実行する。従って、排気ダクト1内の温度変化等に関係なく単純に二次音路Cの同定動作を定期的に実行するだけの上述した従来技術とは異なり、上記温度変化等の環境の変化による二次音路Cの変動状況に応じて、適切なタイミングで当該二次音路Cを同定できる。
【0035】
なお、本発明における同定フィルタ制御手段は、上述したM系列信号やホワイトノイズ等の疑似信号を生成する疑似信号生成手段を備えたものであってもよい。この場合、上記二次音路Cを同定するには、上記疑似信号を、二次音路C、例えば適応型フィルタ手段の出力部分と、同定フィルタ手段とに、それぞれ入力する。そして、このときの第2の収音手段の出力信号と、疑似信号を同定フィルタ手段により処理して得た信号と、の各特性の差異が小さくなるように、上記同定フィルタ手段の伝達関数を適応制御する。
【0036】
このように疑似信号を利用して二次音路Cを同定する制御系においては、この二次音路Cの同定時に、上記疑似信号に応じてスピーカから放出される所謂同定音が、聴感上、雑音として作用することがある。しかし、本発明によれば、真に二次音路Cを同定する必要があるときにのみ、この二次音路Cの同定動作が実行される。従って、上記同定音が必要以上に出力されることはなく、この同定音による消音効果の悪化を防止できる。
【0037】
また、上記では、音波伝搬路中の温度変化の度合いを捉える態様として、当該温度の変化量を用いた(具体的には、この温度変化量が所定の基準レベルを超えたか否かによって、二次音路Cを同定する必要があるか否かを判断した)が、これに限らない。例えば、音波伝搬路中の温度変化の速度(単位時間における温度変化量)を捉える等の他の態様により、当該温度変化の度合いを捉えてもよい。
【0038】
本発明における環境要素検出手段としては、二次音路Cの変動状況を検出できるのであれば、上記温度検出手段に限らず、他の環境要素を検出する手段を用いてもよい。ただし、通常は、音波伝搬路中の温度変化が、二次音路Cの変動に最も大きく影響するので、この音波伝搬路中の温度を検出する温度検出手段により上記環境要素検出手段を構成するのが望ましい。更に、この場合、音波伝搬路中において二次音路Cを構成する部分、例えばスピーカの音波放出部分と第2の収音手段との間、の温度を検出するのが、より望ましい。
【0039】
例えば、本発明の消音装置が、例えば船舶や自動車等のエンジンの排気音を打ち消すためのものである場合には、エンジンの回転数を検出する回転数検出手段により、上記環境要素検出手段を構成してもよい。即ち、音波伝搬路中の温度は、排気音の温度に大きく依存し、この排気音の温度は、エンジンの回転数に大きく依存する。従って、この回転数検出手段によりエンジンの回転数を検出し、この回転数の変化の度合い、例えば当該回転数の変化量、に応じて二次音路Cを同定するか否かを判断することによっても、上記と同様の作用及び効果を期待できる。通常、船舶や自動車等においては、このようなエンジンの回転数を検出する手段を備えている場合が多いので、この既存の回転数検出手段を利用すれば、本発明を実現するために、特別に上記環境要素検出手段を設ける必要がなく、その分、本発明の構成を簡素化でき、かつ低コスト化できる。
【0040】
また、上記エンジンの出力(駆動トルク)を検出するエンジン出力検出手段により、上記環境要素検出手段を構成してもよい。即ち、上記音波伝搬路中の温度に大きく影響する排気音の温度は、エンジンの出力にも大きく依存するからである。従って、このエンジン出力検出手段によりエンジン出力を検出し、このエンジン出力の変化の度合い、例えば当該エンジン出力の変化量、に応じて二次音路Cを同定するか否かを判断することによっても、上記と同様の作用及び効果を期待できる。このようなエンジンの出力を検出する手段もまた、上記回転数検出手段と同様、予め船舶や自動車等に備えられている場合が多いので、この既存のエンジン出力検出手段を利用すれば、本発明の構成上及びコスト的に有利である。
【0041】
更に、本発明では、上記環境要素検出手段として、例えば上記温度検出手段や回転数検出手段、或いはエンジン出力検出手段等、それぞれ異なる環境要素を検出する複数の検出手段を同時に用いてもよい。この場合、上記フィルタ動作制御手段は、各検出手段によりそれぞれ検出して得た各環境要素の各検出値の変化の度合いが、全てそれぞれの基準レベル以下であるときに、適応消音動作を実行する。そして、各検出値の変化の度合いのいずれか一つが、その基準レベルを超えたとき、所定期間にわたって二次音路Cの同定動作を実行した後、適応消音動作に戻るよう、構成する。このようにすれば、二次音路Cに変動を来す環境変化を、より確実かつ俊敏に対応でき、この環境変化に対して、より適切なタイミングで二次音路Cの同定動作を実行できる。
【0042】
また、上記フィルタ動作制御手段は、環境要素検出手段による検出値の変化の度合いが所定の基準レベル以下であるとき、例えば音波伝搬路中の温度等の環境が概ね安定しているとき等でも、二次音路Cの同定動作を略定期的に実行するよう構成してもよい。即ち、この構成は、上述した従来技術の構成を兼ね備えたものである。このように構成すれば、音波伝搬路中の温度等の環境が概ね安定しており、二次音路Cの変動が比較的に小さいときには、より安定した消音効果が期待できる。また、万一、環境要素検出手段に故障等の障害が発生した場合でも、少なくとも上記従来技術と同様の効果、即ち温度等の環境に急激な変化が生じなければ安定した消音効果が得られる。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明に係る能動型消音装置の一実施の形態について、図1から図6を参照して説明する。
【0044】
図1は、本実施の形態の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施の形態は、上述した図7に示す従来の消音装置において、排気ダクト1内におけるスピーカ5の設置位置とエラーマイクロホン6の設置位置との間の空間に、この空間内の温度Tを検出する例えば熱電対構成の温度検出器12を設けたものである。そして、この温度検出器12の出力信号(詳しくは、この信号を図示しない増幅器及びA/D変換器により増幅しディジタル化して得た信号)が入力され、この入力された信号に応じて、即ち上記温度検出器12により検出して得た排気ダクト1内の温度Tに応じて、各LMS演算部4、10の各動作を制御する例えばCPU(中央演算処理装置)構成の制御部13を設けたものである。なお、これ以外の構成については、上記図7の従来技術と同様であるので、同等部分には図7と同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0045】
即ち、本実施の形態もまた、上記従来の消音装置と同様に、FIRフィルタ8の伝達関数Seを固定した状態でLMS演算部4により適応型フィルタ3の伝達関数Wを適応制御するという排気音の適応消音動作と、適応型フィルタ3の伝達関数Wを固定した状態でLMS演算部10によりFIRフィルタ8の伝達関数Seを適応制御するという二次音路Cの同定動作とを、交互に切り替えて実行させることを前提とするものである。ただし、本実施の形態は、これら排気音の適応消音動作と二次音路Cの同定動作との切り替えを、排気ダクト1内の温度Tの変化の度合いに応じて実行するところに特徴を有しており、この点が上記従来技術と大きく異なるところである。具体的には、制御部13が、温度検出器12の出力信号に応じて、例えば図2に示すようなタイミングで、各LMS演算部4、10を制御する。
【0046】
例えば、今、図示しないエンジンが或る条件下(例えば或る回転数及び或る出力)で動作しているとする。そして、制御部13が、排気音の適応消音動作を実行するよう各LMS演算部4、10を制御している状態、具体的には、LMS演算部10によるFIRフィルタ8の伝達関数Seの適応制御を停止して当該伝達関数Seを固定としつつ、LMS演算部4による適応型フィルタ3の伝達関数Wの適応制御を実行している状態、にあるとする。
【0047】
この状態において、制御部13は、或る時点、例えば前回二次音路Cの同定動作を開始した時点での、上記温度検出器12による検出温度Tを基準として、この基準温度(例えばこれを符号Tで表わす)と、現時点での上記温度検出器12による検出温度Tと、の温度差ΔT(=T−T)を、逐次導出する。そして、この導出して得た温度差ΔTの絶対値|ΔT|と、所定の基準レベル、例えばこの温度差ΔTが二次音路Cに比較的に大きな変動を来す程度の大きさであるか否かの判断基準となるレベルAと、を逐次比較する。そして、上記温度差ΔTの絶対値|ΔT|が基準レベルA以下(|ΔT|≦A)であるときには、制御部13は、二次音路Cを同定する必要はないものと判断して、上記排気音の適応消音動作を継続する。なお、上記基準レベルAは、例えば図示しない半導体メモリ構成の記憶部に記憶されている。
【0048】
ここで、エンジンの回転数または出力が比較的に大きく変化する等により、排気ダクト1内の温度が比較的に大きく変化したとする。そして、この温度変化により、上記温度差ΔTの絶対値|ΔT|が、上記基準レベルAを超えた(|ΔT|>A)とする。すると、制御部13は、改めて二次音路Cを同定し直す必要があるものと判断して、上記排気音の適応消音動作、即ちLMS演算部4による適応型フィルタ3の伝達関数Wの適応制御、を停止する。ただし、ここでは、このLMS演算部4による適応型フィルタ3の伝達関数Wの適応制御を停止するだけで、当該伝達関数Wを固定とした状態での一定の制御音による能動消音動作は継続する。そして、この状態で、二次音路Cの同定動作、具体的には、LMS演算部4による適応型フィルタ3の伝達関数Wの適応制御を、所定期間d’、実行する。なお、ここでは、所定期間d’として、例えば二次音路Cを比較的に高精度で同定するのに十分であると考えられる一定の期間を設定する。そして、この所定期間d’にわたる二次音路Cの同定動作を終えた後、制御部13は、再度、適応消音動作を実行するよう、各LMS演算部4、10を制御する。そして、これ以降、制御部13は、温度検出器12による検出温度Tに基づいて、上記と同様の制御を繰り返す。
【0049】
なお、制御部13は、上記排気音の適応消音動作から二次音路Cの同定動作に切り替える際、そのときの(即ち温度差ΔTの絶対値|ΔT|が基準レベルAを超えた時点での)温度検出器12による検出温度Tを、上記基準温度Tとして記憶する。また、図示しないが、制御部13は、二次音路Cの同定動作を実行するときにのみ、疑似信号発生器9から上述した疑似信号m(k)を出力させ、排気音の適応消音動作時には、この疑似信号m(k)を非出力とするよう、疑似信号発生器9の動作をも制御する。
【0050】
上記制御を実現するための制御部13の具体的な動作手順を、図3に示す。なお、この図3に示す手順に従って制御部13を動作させるための所謂制御用プログラムは、上記記憶部内に記憶されている。
【0051】
即ち、今、例えば、図示しないエンジンが停止しており、かつ、消音装置自体の図示しない電源スイッチがOFFされている状態にあるとする。そして、この状態で、上記エンジンを起動すると共に、上記電源スイッチをONするとする。すると、制御部13は、まず、初期設定(ステップS2)として、適応型フィルタ3のフィルタ係数Wk(i)及びFIRフィルタ8のフィルタ係数Sek(i)を、それぞれクリアし、所謂零(0)とする。このように、各フィルタ3及び8の各フィルタ係数Wk(i)及びSek(i)がクリアされた状態においては、各フィルタ3及び8の各伝達関数W及びSeは、共に零(0)となる。従って、この状態では、スピーカ5からは何ら制御音が出力されず、よって、エンジンの排気音は消音されずにそのまま排気ダクト1から出力される。
【0052】
上記初期設定の後、制御部13は、温度検出器12による排気ダクト1内の検出温度Tを基準温度Tとして記憶部に記憶すると共に(ステップS4)、上記所定期間d’をカウントするためにソフトウェア的に構成されたカウンタのカウント数dをリセット(d=0)する(ステップS6)。そして、適応型フィルタ3の伝達関数W(フィルタ係数Wk(i))を固定した状態で、上述した数4に基づいてFIRフィルタ8の伝達関数Se(フィルタ係数Sek(t))を適応制御するよう、各LMS演算部4及び10を制御し、即ち二次音路Cの同定動作を実行する(ステップS8)。なお、このとき、制御部13は、上記のように、疑似信号発生器9から疑似信号m(k)を発生させるよう、この疑似信号発生器9をも制御する。
【0053】
制御部13は、上記カウンタによるカウント数、例えば上記数4に基づく演算回数dが、上記所定期間dに相当する所定カウント数に到達するまでの間、二次音路Cの同定動作を繰り返す(ステップS10にいてNOの場合→ステップS12→ステップS8)。そして、上記カウンタによるカウント数dが上記所定カウント数d’に到達すると(ステップS10においてYESの場合)、制御部13は、FIRフィルタ8の伝達関数Seの適応制御を停止する。そして、FIRフィルタ8の伝達関数Seを、この適応制御停止時の値に固定すると共に、上記疑似信号発生器9からの疑似信号m(k)の出力を停止させる(ステップS12)。
【0054】
上記FIRフィルタ8の伝達関数Seを固定とした後、制御部13は、現時点での温度検出部12による検出温度Tと上記ステップS4において記憶しておいた基準温度Tとの差ΔTを求め、その絶対値|ΔT|と上記基準レベルAとを比較する(ステップS14)。ここで、上記温度差ΔTの絶対値|ΔT|が基準レベルA以下である場合(YESの場合)、制御部13は、二次音路Cを改めて同定し直さなければならないほど排気ダクト1内の温度Tは大きく変動していないものと判断する。そして、制御部13は、上述した数2に基づいて適応型フィルタ3の伝達関数Wの適応制御するよう、LMS演算部4を制御し、即ち排気音の適応消音動作を実行する(ステップS16)。この適応消音動作は、上記温度差ΔTの絶対値|ΔT|が基準レベルA以下である限り、継続される。
【0055】
一方、上記温度差ΔTの絶対値|ΔT|が基準レベルAを超えると(ステップS14においてNOの場合)、制御部13は、LMS演算部4により適応型フィルタ3の伝達関数Wを適応制御している最中であるか否かを、判断する(ステップS18)。ここで、当該伝達関数Wの適応制御が実行されている最中である場合(YESの場合)、制御部13は、その伝達関数Wの適応制御を停止して、この伝達関数Wを、その適応制御停止時の値に固定する(ステップS20)。そして、この伝達関数Wを固定した後、制御部13は、上記ステップS4に戻り、このステップS4以降の動作を繰り返す。一方、上記ステップS18において、適応型フィルタ3の伝達関数Wが適応制御されていないと判断した場合(NOの場合)は、この適応動作が実行されてもいない適応型フィルタ3の伝達関数Wを固定する必要はないので、制御部13は、ステップS20を経由せずに、上記ステップS4に直接戻る。
【0056】
このように、本実施の形態によれば、二次音路Cの変動に大きく影響する排気ダクト1内の温度Tを監視して、この温度Tの所謂変化量|ΔT|が比較的に小さく、二次音路Cを同定し直す必要がないときには、排気音の適応消音動作を継続実行する。そして、排気ダクト1内の温度Tが大きく変化して、二次音路Cを改めて同定する必要性が生じたときに初めて、二次音路Cの同定動作を実行する。従って、上記温度Tの変化等に全く関係なく単に一定の周期Dで定期的に二次音路Cを同定するだけの上述した従来技術とは異なり、上記温度Tの変化による二次音路Cの変動状況に応じて、適切なタイミングD’(D’≠一定)で二次音路Cを同定できる。よって、二次音路Cが大きく変動したり急激に変動しても、この変動に応じて、常に、安定した消音効果が得られる。
【0057】
また、排気ダクト1内の温度Tが比較的に安定しており、即ち二次音路Cが概ね安定しているときには、継続して排気音の適応消音動作が実行される。従って、この適応消音期間d’(d’≠一定)が長くなる分だけ、より安定した消音効果を期待できる。
【0058】
更に、二次音路Cの同定動作時においては、上記疑似信号m(k)に基づく同定音がスピーカ5から放出されるが、本実施の形態によれば、この同定音の放出期間(回数)を必要最小限に抑えることができる。従って、この同定音が放出されることによる消音効果の悪化を防止できる。
【0059】
また、この二次音路Cの同定動作中に、例えば温度Tが大きく変化した場合には、当該同定動作が終了した時点(即ち期間dが経過した時点)で、所期の同定精度が得られない可能性がある。そこで、二次音路Cの同定動作中に、温度Tが大きく変化した場合、例えば上記温度差ΔTの絶対値|ΔT|が基準レベルAを超えた(|ΔT|>A)場合には、再度、当該二次音路Cの同定動作を最初から実行し直すよう構成してもよい。具体的には、例えば、図3のフローチャートにおいて、ステップS8の前段(または後段)に、ステップS14と同様のステップを設ける。そして、この新たに設けたステップにおいて、YESの場合には、二次音路Cの同定動作を継続すべくステップS8(またはステップS10)に進み、NOの場合には、当該二次音路Cの同定動作を最初から実行し直すべくステップS4に戻る構成としてもよい。
【0060】
なお、本実施の形態においては、上記基準温度Tと現時点での検出温度Tとの温度差ΔT(厳密にはその絶対値|ΔT|)を監視し、この温度差ΔTに基づいて、排気音の適応消音動作と二次音路Cの同定動作とを切り替えたが、これに限らない。即ち、上記温度差ΔTは、飽くまで排気ダクト1内の温度Tの変化の度合いを表わす一態様であって、この温度差ΔTに限らず、例えば排気ダクト1内の温度Tの変化速度(単位時間tにおける温度の変化量ΔT/t)を検出する等によって、上記温度Tの変化の度合いを捉えてもよい。この場合、当該温度Tの変化速度[ΔT/t]に基づいて、上記排気音の適応消音動作と二次音路Cの同定動作とを切り替えればよい。
【0061】
また、上記基準温度Tとして、上記二次音路Cの同定動作開始時の検出温度Tを用いたが、これに限らない。例えば、二次音路Cの同定動作終了時における検出温度Tを、上記基準温度Tとしてもよい。
【0062】
そして、上記基準レベルAは、スピーカ5の音波放射面からエラーマイクロホン7の収音部までの間の距離Lに応じて、決定するのが望ましい。この距離Lが、排気ダクト1内の温度Tの変化に対する二次音路Cの変動量に大きく影響するからである。具体的には、上記距離Lが大きい場合、排気ダクト1内の温度Tの変化に対して二次音路Cが大きく変動するので、上記基準レベルAを大き目に設定する。一方、上記距離Lが小さい場合には、排気ダクト1内の温度Tの変化が二次音路Cの変動に与える影響は比較的に小さいので、上記基準レベルAを小さ目に設定する。
【0063】
なお、本実施の形態のような消音装置においては、排気ダクト1内を流通する排気ガスに対して、スピーカ5の音波放射面の耐熱性及び耐腐食性等を確保するために、例えば図4に示すように、排気ダクト1に対してこれと分岐する状態に枝管14を設け、この枝管14を介してスピーカ5の放出する制御音を排気ダクト1内に供給するよう構成する場合がある。このような場合には、スピーカ5の音波放射面から枝管14及び排気ダクト1の下流側一部を介してエラーマイクロホン7の収音部までに至る距離L’に応じて、上記基準レベルAを設定する。
【0064】
また、上記耐熱性及び耐腐食性等をより向上させるために、スピーカ5の音波放射面の前面部分に所謂エアーカーテンを形成すべく、当該音波放射面に近接した側の枝管14の周壁に、外部から冷却空気を取り込むための1以上の空気吸入孔15を設けることがある。この場合、上記冷却空気による冷却作用により、上記距離L’に係る空間内の温度Tに、場所によって大きな差が生じ、即ち大きな温度勾配が形成される。よって、上記基準レベルAを設定するには、この温度勾配をも考慮する。
【0065】
更に、本実施の形態では、上記排気ダクト1内の温度Tを検出するための温度検出器12を、排気ダクト1内におけるスピーカ5の設置位置とエラーマイクロホン7の設置位置との間(上記距離L)の空間内に設けたが、これに限らない。例えば、排気ダクト1内におけるリファレンスマイクロホン2の設置位置とスピーカ5の設置位置との間等の他の空間内に、上記温度検出器12を設けてもよい。ただし、本実施の形態では、温度検出器12を、二次音路Cの変動状況を捉えるための一手段として用いているので、この点を鑑みると、温度検出器12は、上記のように排気ダクト1内のスピーカ5の設置位置とエラーマイクロホン7の設置位置との間の空間に設けるのが望ましい。なお、上記図4に示すように枝管14を設けた場合には、同図に点Qで示すように、この枝管14内に温度検出器12を設置してもよい。また、枝管14に上記空気吸入孔15が設けられている場合には、この空気吸入孔15を介して取り込まれる上記冷却空気の冷却作用による上記温度勾配をも考慮して、温度検出器12の設置位置を決定する必要がある。
【0066】
また、例えば排気ダクト1の内壁の近傍に温度検出器12を取り付けると、この温度検出器12による上記検出温度Tが、排気ダクト1の内壁自体の温度の影響を受ける場合がある。よって、この影響を回避するためには、温度検出器12を、排気ダクト1の内壁から離れた位置、例えば排気ダクト1内の中央付近の空間に、設けるのが望ましい。
【0067】
ところで、上記排気ダクト1内の温度Tは、エンジンの回転数または出力(駆動トルク)に大きく依存することが知られている。例えば、エンジンの回転数または出力が上昇すると、排気ダクト1内を流通する排気ガスの温度が上昇し、これに伴い、排気ダクト1内の温度Tも上昇する。一方、エンジンの回転数または出力が低下すると、上記排気ガスの温度が低下し、これに伴い、排気ダクト1内の温度Tも低下する。従って、上記温度検出器12による検出温度Tに代えて、エンジンの回転数または出力の変化に応じて、二次音路Cを同定する必要があるか否かを判断するよう構成しても、本実施の形態における上記と同様の作用及び効果を期待できる。
【0068】
具体的には、エンジンの回転数を検出するための所謂回転数検出手段、またはエンジン出力を検出するための所謂エンジン出力検出手段を、設ける。そして、これら各検出手段の出力信号を、制御部13に入力する。制御部13は、これに入力される信号、即ちエンジンの回転数または出力、を監視して、これらエンジンの回転数または出力の変化の度合いに応じて、二次音路Cを改めて同定する必要があるか否かを判断する。例えば、上記基準レベルAに対応する所定のしきい値を予め定めておき、上記エンジンの回転数または出力の変化量がこのしきい値以下である場合には、排気音の適応消音動作を継続し、エンジンの回転数または出力の変化量が上記しきい値を超えたときに、上記所定期間d’だけ二次音路Cの同定動作を実行した後、適応消音動作に戻るよう、制御部13を構成(プログラム)すればよい。
【0069】
なお、一般の船舶や自動車等においては、エンジンの回転数を検出するための装置やエンジン出力を検出するための装置等を備えている場合が多い。従って、これら既存の装置を、上記回転数検出手段またはエンジン出力検出手段として利用すれば、その分、消音装置全体の構成を簡素化でき、低コスト化できる。
【0070】
また、上記温度検出器12、回転数検出手段及びエンジン出力検出手段等の複数の検出手段による各検出結果、即ち排気ダクト1内の温度T、エンジンの回転数及び出力等に応じて、二次音路Cを同定する必要があるか否かを判断するよう構成してもよい。具体的には、各検出手段の出力信号を、制御部13に入力する。制御部は、これら各出力信号、即ち上記排気ダクト1内の温度T、エンジンの回転数及び出力等、を監視して、これら各値の変化の度合いが、全てそれぞれの上記基準レベルAに対応する所定のしきい値以下であるときに、排気音の適応消音動作を継続する。そして、上記温度T、エンジンの回転数及び出力等のうちのいずれか一つが、そのしきい値を超えたときに、上記所定期間d’だけ二次音路Cの同定動作を実行した後、適応消音動作に戻るよう、制御部13を構成する。このようにすれば、上記温度T、エンジンの回転数及びエンジン出力等の様々な要因による二次音路Cの変動に対して、より確実かつ俊敏に対応できる。このことは、上記排気ダクト1内の温度T、エンジンの回転数及び出力に限らず、二次音路Cに変動を来す他の要因に応じて、二次音路Cを同定する必要があるか否かを判断する場合も、同様である。
【0071】
本実施の形態では、二次音路Cの同定期間d’を一定としたが、これに限らない。例えば、二次音路Cの同定状況を逐次監視して、この二次音路Cが十分精度良く同定できたと見なすことのできる時点で、当該二次音路Cの同定動作を終了するよう構成してもよい。このようにすれば、二次音路Cの変動状況、例えば変動幅や変動速度等、に応じて、当該二次音路Cを適切に同定できる。なお、上記二次音路Cの同定精度は、例えばエラーマイクロホン7から出力されるエラー信号e(k)の信号レベル、または、この信号レベルの単位時間当たりの変化量(即ち変化速度)等から、推測できる。
【0072】
また、図5に示すように、排気ダクト1内の温度Tの変化量|ΔT|が、上記基準レベルA以下であっても、例えば上述した従来技術における二次音路Cの同定周期Dと同程度の周期D”(D”≒D=一定)で定期的に二次音路Cの同定動作を実行するよう、制御部13を構成してもよい。この構成は、言わば、本実施の形態に上記従来技術の構成を兼ねあわせたものと言える。このようにすれば、排気ダクト1内の温度Tが概ね安定しており、二次音路Cの変動が比較的に小さいときに、より安定した消音効果が期待できる。また、万一、温度検出器12に故障等の障害が発生した場合でも、少なくとも上述した従来技術と同様の効果、即ち温度Tに急激な変化が生じなければ安定した消音効果が得られる。
【0073】
ただし、上記図5に示すタイミングによれば、排気ダクト1内の温度Tの変化に応じて二次音路Cの同定動作が実行されたか否かに関係なく、上記一定の周期D”で定期的に二次音路Cの同定動作が実行される。従って、例えば、上記温度Tの変化に基づく二次音路Cの同定動作が実行された直後に、上記一定の周期D”に基づく定期的な二次音路Cの同定動作が実行される場合がある。このような場合、特に後の方に実行される上記定期的な二次音路Cの同定動作は、言わば無駄な動作とも言える。そこで、このような無駄な同定動作を防止するには、例えば図6に示すように、排気ダクト1内の温度Tの変化に応じて二次音路Cの同定動作を実行したとき、この同定動作時(例えば同定開始時)から、新たに上記周期D”を計測(カウント)し直すよう、制御部13を構成すればよい。このようにすれば、上記温度Tの変化に基づく二次音路Cの同定動作が実行された直後に、連続して、上記定期的な二次音路Cの同定動作が実行されるのを防止できる。
【0074】
更に、本実施の形態では、図3のフローチャートに示す手順に従って、制御部13を動作させたが、本実施の形態と同様の作用及び効果を奏するのであれば、これ以外の手順に従って、制御部13を動作させてもよい。また、この制御部13は、各LMS演算部4、10に内蔵させた構成としてもよい。更に、この制御部13は、CPUに限らず、純粋なハードウェア回路によって、実現してもよい。
【0075】
また、FIRフィルタ8の伝達関数Seを適応制御して二次音路Cを同定するのにLMSアルゴリズムを用いたが、これ以外のアルゴリズムを用いてもよいし、これらのアルゴリズムを用いない他の方法によって、上記二次音路Cを同定してもよい。例えば、疑似信号m(k)と誤差信号ε(k)との相関によって二次音路Cを同定(推定)するという、所謂M系列信号を用いた相関法により上記二次音路Cを同定してもよい。また、二次音路Cの出力(二次音路Cを通過させた後の疑似信号m(k))を、この二次音路Cの入力信号(即ち疑似信号m(k))で除算する(詳しくは、これら各入出力信号を周波数領域に変換した上で上記除算を行う)ことによっても、上記二次音路Cを求めることができる。更に、一般に知られているクロススペクトル法を用いて、上記二次音路Cを求めてもよい。
【0076】
そして、温度検出部12の出力信号を、例えば積分する等により時間的に平均化する手段を設け、この平均化した後の信号を制御部13に入力するよう構成してもよい。このようにすれば、排気ダクト1内の温度Tの所謂雑音的な変動を抑制でき、本実施の形態における作用及び効果をより安定かつ確実に奏することができる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、エンジンの排気音を消音対象とする場合について説明したが、当該排気音以外の音を消音対象とする場合にも、本発明を応用できることは言うまでもない。
【0078】
本実施の形態における排気ダクト1が、特許請求の範囲に記載の音波伝搬路に対応し、リファレンスマイクロホン2及びエラーマイクロホン7が、それぞれ特許請求の範囲に記載の第1及び第2の各収音手段に対応する。そして、適応型フィルタ3及びLMS演算部4が、それぞれ特許請求の範囲に記載の適応型フィルタ手段及び適応型フィルタ制御手段に対応する。更に、FIRフィルタ8が、特許請求の範囲に記載の同定フィルタ手段に対応し、このFIRフィルタ8、疑似信号発生器9、LMS演算部10及び比較器11から成る部分が、特許請求の範囲に記載の同定フィルタ制御手段に対応する。そして、温度検出器12が特許請求の範囲に記載の環境要素検出手段に対応し、制御部13が、特許請求の範囲に記載のフィルタ動作制御手段に対応する。そして、制御部13により、排気音の適応消音動作を実行させている状態が、特許請求の範囲に記載の第1の制御状態に対応し、二次音路Cの同定動作を実行させている状態が、特許請求の範囲に記載の第2の制御状態に対応する。
【0079】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、音波伝搬路中の温度変化等のように二次音路Cに変動を来す環境の変化を捉え、この変化の度合いに応じて、真に二次音路Cを同定する必要性が生じたときにのみ、当該二次音路Cの同定動作を実行する。従って、排気ダクト1内の温度変化等に全く関係なく単に定期的に二次音路Cを同定するだけの上述した従来技術とは異なり、二次音路Cの変動状況に即した適切なタイミングで当該二次音路Cを同定できる。よって、上記従来技術に比べて、より安定した消音効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る能動型消音装置の一実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】同実施の形態における各フィルタの動作タイミングを表わす図である。
【図3】図2の動作を実現するための制御手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態における排気ダクトに枝管を設けた場合の説明図である。
【図5】図2とは別のタイミングで各フィルタの動作を制御する場合の一例を表わす図である。
【図6】更に図5とは別のタイミングで各フィルタの動作を制御する場合の一例を表わす図である。
【図7】従来の能動型消音装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】図7の装置における各フィルタの動作タイミングを表わす図である。
【符号の説明】
1 排気ダクト
2 リファレンスマイクロホン
3 適応型フィルタ
4 LMS演算部
5 二次音源スピーカ
7 エラーマイクロホン
8 FIRディジタルフィルタ
9 疑似信号発生器
10 LMS演算部
12 温度検出器
13 制御部

Claims (7)

  1. 第1の伝達関数を有する音波伝搬路に入力される音波を収音する第1の収音手段と、
    上記音波伝搬路から出力される音波を収音する第2の収音手段と、
    上記第1の収音手段の出力信号を処理して、この処理結果に応じた制御音をスピーカから上記音波伝搬路中に放出させる適応型フィルタ手段と、
    上記第1及び第2の収音手段の各出力信号が入力され、これら各信号に応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、この適応型フィルタ手段の出力側から上記音波伝搬路を経て上記第2の収音手段までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を適応制御する適応型フィルタ制御手段と、
    上記第1の収音手段と上記適応型フィルタ制御手段との間に介在する同定フィルタ手段を含み、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御が停止状態にあるときにのみ上記同定フィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数とが略等価となる状態に該同定フィルタ手段の伝達関数を適応制御可能であって、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御が実行されているときには該同定フィルタ手段の伝達関数を固定とする、同定フィルタ制御手段と、
    上記第2の伝達関数を決定する各環境要素のうち所定の環境要素を定量的に検出する環境要素検出手段と、
    この環境要素検出手段による上記所定の環境要素の検出値を監視して、この監視結果に基づいて、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御を実行させると共に上記同定フィルタ制御手段による上記同定フィルタ手段の伝達関数を固定とする第1の制御状態と、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御を停止して該適応型フィルタ手段の伝達関数を固定とすると共に上記同定フィルタ制御手段による上記同定フィルタ手段の伝達関数の適応制御を実行させる第2の制御状態と、のいずれか一方の状態になるように、上記適応型フィルタ制御手段及び同定フィルタ制御手段の各動作を制御するフィルタ動作制御手段と、
    を具備し、
    上記環境要素検出手段は、上記所定の環境要素として上記音波伝搬路内の温度を検出する温度検出手段を含み、
    上記フィルタ動作制御手段は、或る時点における上記環境要素検出手段による上記所定の環境要素の検出値を基準として、この基準値からの該検出値の変化の度合いを求め、この変化の度合いが所定の基準レベル以下であるとき、上記第1の状態とし、該変化の度合いが上記基準レベルを超えたとき、所定期間にわたって上記第2の状態としたあと上記第1の状態に切り替えるよう構成された、能動型消音装置。
  2. 上記温度検出手段は、上記スピーカの音波放出部と上記第2の収音手段との間の温度を検出する、請求項1に記載の能動型消音装置。
  3. 第1の伝達関数を有する音波伝搬路に入力される音波を収音する第1の収音手段と、
    上記音波伝搬路から出力される音波を収音する第2の収音手段と、
    上記第1の収音手段の出力信号を処理して、この処理結果に応じた制御音をスピーカから上記音波伝搬路中に放出させる適応型フィルタ手段と、
    上記第1及び第2の収音手段の各出力信号が入力され、これら各信号に応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、この適応型フィルタ手段の出力側から上記音波伝搬路を経て上記第2の収音手段までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を適応制御する適応型フィルタ制御手段と、
    上記第1の収音手段と上記適応型フィルタ制御手段との間に介在する同定フィルタ手段を含み、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御が停止状態にあるときにのみ上記同定フィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数と が略等価となる状態に該同定フィルタ手段の伝達関数を適応制御可能であって、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御が実行されているときには該同定フィルタ手段の伝達関数を固定とする、同定フィルタ制御手段と、
    上記第2の伝達関数を決定する各環境要素のうち所定の環境要素を定量的に検出する環境要素検出手段と、
    この環境要素検出手段による上記所定の環境要素の検出値を監視して、この監視結果に基づいて、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御を実行させると共に上記同定フィルタ制御手段による上記同定フィルタ手段の伝達関数を固定とする第1の制御状態と、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御を停止して該適応型フィルタ手段の伝達関数を固定とすると共に上記同定フィルタ制御手段による上記同定フィルタ手段の伝達関数の適応制御を実行させる第2の制御状態と、のいずれか一方の状態になるように、上記適応型フィルタ制御手段及び同定フィルタ制御手段の各動作を制御するフィルタ動作制御手段と、
    を具備し、
    上記音波伝搬路に入力される上記音波は、エンジンの排気音であり、
    上記環境要素検出手段は、上記所定の環境要素として上記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段を含み、
    上記フィルタ動作制御手段は、或る時点における上記環境要素検出手段による上記所定の環境要素の検出値を基準として、この基準値からの該検出値の変化の度合いを求め、この変化の度合いが所定の基準レベル以下であるとき、上記第1の状態とし、該変化の度合いが上記基準レベルを超えたとき、所定期間にわたって上記第2の状態としたあと上記第1の状態に切り替えるよう構成された、能動型消音装置。
  4. 第1の伝達関数を有する音波伝搬路に入力される音波を収音する第1の収音手段と、
    上記音波伝搬路から出力される音波を収音する第2の収音手段と、
    上記第1の収音手段の出力信号を処理して、この処理結果に応じた制御音をスピーカから上記音波伝搬路中に放出させる適応型フィルタ手段と、
    上記第1及び第2の収音手段の各出力信号が入力され、これら各信号に応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、この適応型フィルタ手段の出力側から上記音波伝搬路を経て上記第2の収音手段までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を適応制御する適応型フィルタ制御手段と、
    上記第1の収音手段と上記適応型フィルタ制御手段との間に介在する同定フィルタ手段を含み、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御が停止状態にあるときにのみ上記同定フィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数とが略等価となる状態に該同定フィルタ手段の伝達関数を適応制御可能であって、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御が実行されているときには該同定フィルタ手段の伝達関数を固定とする、同定フィルタ制御手段と、
    上記第2の伝達関数を決定する各環境要素のうち所定の環境要素を定量的に検出する環境要素検出手段と、
    この環境要素検出手段による上記所定の環境要素の検出値を監視して、この監視結果に基づいて、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御を実行させると共に上記同定フィルタ制御手段による上記同定フィルタ手段の伝達関数を固定とする第1の制御状態と、上記適応型フィルタ制御手段による上記適応型フィルタ手段の伝達関数の適応制御を停止して該適応型フィルタ手段の伝達関数を固定とすると共に上記同定フィルタ制御手段による上記同定フィルタ手段の伝達関数の適応制御を実行させる第2の制御状態と、のいずれか一方の状態になるように、上記適応型フィルタ制御手段及び同定フィルタ制御手段の各動作を制御するフィルタ動作制御手段と、
    を具備し、
    上記音波伝搬路に入力される上記音波は、エンジンの排気音であり、
    上記環境要素検出手段は、上記所定の環境要素として上記エンジンの出力を検出するエンジン出力検出手段を含み、
    上記フィルタ動作制御手段は、或る時点における上記環境要素検出手段による上記所定の環境要素の検出値を基準として、この基準値からの該検出値の変化の度合いを求め、この変化の度合いが所定の基準レベル以下であるとき、上記第1の状態とし、該変化の度合いが上記基準レベルを超えたとき、所定期間にわたって上記第2の状態としたあと上記第1の状態に切り替えるよう構成された、能動型消音装置。
  5. 上記同定フィルタ制御手段は、疑似信号を生成する疑似信号生成手段を有し、上記第2の状態にあるとき、上記疑似信号を上記第2の伝達関数と上記同定フィルタ手段とにそれぞれ入力し、このときの上記第2の収音手段の出力信号と上記疑似信号を上記同定フィルタ手段により処理して得た信号との各特性の差異が小さくなるように上記同定フィルタ手段の伝達関数を適応制御する、請求項1ないし4のいずれかに記載の能動型消音装置。
  6. 上記環境要素検出手段は、上記所定の環境要素としてそれぞれ異なる複数の環境要素を検出し、
    上記フィルタ動作制御手段は、上記環境要素検出手段による上記複数の環境要素の各検出値についての上記変化の度合いの全てがそれぞれの上記基準レベル以下であるときに、上記第1の状態とし、これら各検出値についての変化の度合いのいずれかがその上記基準レベルを超えたとき、上記所定期間にわたって上記第2の状態としたあと上記第1の状態に切り替えるよう構成された、請求項1ないし5のいずれかに記載の能動型消音装置。
  7. 上記フィルタ動作制御手段は、上記環境要素検出手段による上記検出値についての上記変化の度合いが上記基準レベル以下であるときでも、略定期的に上記所定期間にわたって上記第2の状態としたあと上記第1の状態に切り替えるよう構成された、請求項1ないし5のいずれかに記載の能動型消音装置。
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