JP4367328B2 - ハウリングキャンセラ - Google Patents

ハウリングキャンセラ Download PDF

Info

Publication number
JP4367328B2
JP4367328B2 JP2004358745A JP2004358745A JP4367328B2 JP 4367328 B2 JP4367328 B2 JP 4367328B2 JP 2004358745 A JP2004358745 A JP 2004358745A JP 2004358745 A JP2004358745 A JP 2004358745A JP 4367328 B2 JP4367328 B2 JP 4367328B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
signal
peak
input
input signal
howling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004358745A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006166375A (ja
Inventor
高史 山川
啓 奥村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamaha Corp
Original Assignee
Yamaha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yamaha Corp filed Critical Yamaha Corp
Priority to JP2004358745A priority Critical patent/JP4367328B2/ja
Publication of JP2006166375A publication Critical patent/JP2006166375A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4367328B2 publication Critical patent/JP4367328B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Circuit For Audible Band Transducer (AREA)

Description

本発明は講堂やホール等に設置される拡声システムにおいて、楽音を低減させずにハウリングを抑制するハウリングキャンセラに関する。
一般に講堂やホール等で拡声装置を用いた場合、スピーカから出力された音声は、ある伝達関数をもつ音響経路を経て再びマイクロフォンに入力される。つまり、マイクロフォン−増幅器−スピーカ−音響経路−マイクロフォン、の経路で閉ループが形成される。この閉ループのゲインが1を越えるとスピーカからマイクロフォンに帰還した音声が増大してハウリングの発生となる。
このハウリングを効率的に防止するために、適応フィルタ(アダプティブ・ディジタル・フィルタ)を用いてハウリングの発生を防止するハウリングキャンセラが提案されている(例えば非特許文献1参照)。
図6は上記のハウリングキャンセラを示した図である。マイクロフォン101およびスピーカ104は講堂やホール等、同一の音響空間に設置されている。ここで、マイクロフォン101から入力された音声信号は、フロントエンドのマイクロフォンアンプで増幅されたのちA/Dコンバータによってディジタル信号y(k)に変換される。
信号y(k)は、加算器102を介して増幅器103に供給され、増幅される。G(z)は、増幅器103の伝達関数である。増幅器103から出力された信号x(k)は、D/Aコンバータによって音声信号に変換された後にスピーカ104から発音される。
スピーカ104から発音された音声は音響帰還路105を経てマイクロフォン101に帰還する。音響帰還路105は、スピーカ104からマイクロフォン101に至る音響経路である。H(z)は音響帰還路105の伝達関数である。音響帰還路105を介して帰還される帰還信号d(k)は、話者等の音源が発生する音源信号s(k)とともにマイクロフォン101に入力される。マイクロフォン101は、この入力された音声をディジタル信号に変換してy(k)として出力する。
このような拡声装置では、マイクロフォン101−増幅器103−スピーカ104−音響帰還路105−マイクロフォン101の経路で閉ループが形成される。この閉ループのゲインが1を超えると、帰還信号d(k)が増大されてハウリング発生となる。同図に示す拡声装置では、このようなハウリングの発生を防止するために、ディレイ回路106、適応フィルタ107および加算器102を含むハウリングキャンセラを有している。
ディレイ回路106は、増幅器103の出力信号x(k)を音響帰還路105の時間遅延に対応した遅延時間τを付与して信号x(k−τ)として適応フィルタ107に出力するものである。適応フィルタ107は、図7に示すようにフィルタ部107aおよびフィルタ係数推定部107bを有しており、信号x(k−τ)は、フィルタ部107aおよびフィルタ係数推定部107bの両方に入力される。
フィルタ部107aは、音響帰還路105の伝達関数H(z)を模擬した伝達関数F(z)でマイクロフォン101から入力される信号を減衰するようにフィルタ係数が設定されている。したがって、適応フィルタ107から出力された信号do(k)は、音響帰還路105の伝達関数H(z)を模擬した伝達関数F(z)で信号x(k−τ)をフィルタリングした信号であるため、スピーカ104から音響帰還路105を伝達してマイクロフォン101に再入力される帰還信号d(k)を模擬したものとなる。
加算器102は、マイクロフォン101から入力された信号y(k)(ここで、y(k)は音源信号と帰還信号を加算した信号)から、帰還信号d(k)を模擬した信号do(k)を減算する。これにより、入力信号から帰還信号が除去され、ハウリングをキャンセルすることができる。
フィルタ係数推定部107bは、適応アルゴリズムを用いて信号x(k−τ)およびe(k)に基づいて伝達関数F(z)が伝達関数H(z)に一致または近似するようにフィルタ部107aのフィルタ係数を逐次更新する。この結果、信号d(k)を模擬した信号do(k)が得られ、ハウリング発生を防止することができる。
稲積,今井,小西,:"LMSアルゴリズムを用いた拡声系のハウリング防止",日本音響学会講演論文集pp.417−418(1991,3)
ところで、ハウリングは一定周波数の正弦波(純音)の高レベル信号として現れるが、非特許文献1に記載のハウリングキャンセラは、このハウリングに対してフィルタを適応させ、信号の周波数ピークを減衰させるような模擬信号do(k)を生成する。すなわち、ハウリングキャンセラは、マイクロフォンから入力された信号のうち、ディレイ回路106で遅延された信号に類似する成分を帰還信号と判断して、これを減衰させるように適応フィルタのフィルタ係数を更新する。したがって、ハウリングキャンセラは、ハウリングの発生する前の帰還信号をキャンセルしてハウリングを防止することができるとともに、ハウリングが発生した場合のハウリング音も速やかに減衰させることができる。
このように、適応フィルタ内蔵のハウリングキャンセラの場合、マイクロフォンから入力した信号のうち遅延した信号と類似する成分を帰還信号とみなして減衰させる特性を有する。このため、例えばバイオリンやフルートなどの持続音を発する楽器の楽音は、ハウリング信号に類似した一定周波数の純音に近い高レベル信号であるために、マイクロフォンから入力された音源信号(ソース音)であっても、ハウリングキャンセラによってキャンセルされてしまうという問題点があった。
本発明は、上記の事情に鑑み、周波数一定の楽音の持続音とハウリングとを区別して、楽音による入力を減衰させずにハウリングのみ減衰させる適応フィルタを備えたハウリングキャンセラを提供することを目的とする。
請求項に記載の発明は、スピーカからマイクロフォンに至る音響帰還路の伝達関数を推定し、推定した伝達関数でスピーカへの出力信号をフィルタ処理して模擬信号を生成し、当該模擬信号を、入力信号である帰還音声信号からキャンセルする適応フィルタを備えたハウリングキャンセラであって、周波数軸上に所定レベル以上のピーク成分を有するピーク信号が入力信号として入力されたとき、このピーク信号が楽音による入力信号であるか否かを判定する入力信号判定手段と、ピーク信号が入力され、かつ入力信号判定手段が該ピーク信号を楽音による入力信号と判定した場合に、模擬信号を帰還音声信号からキャンセルしないように適応フィルタを制御する制御手段と、を備え、前記入力信号判定手段は、前記ピーク信号をリファレンス波形パターンと比較することで、該ピーク信号が楽音又はハウリングであるか否かを判定することを特徴とする。
この発明では、マイクロフォンから入力された音声信号が楽音による入力信号であるか否かを判定する入力信号判定手段を有している。入力信号判定手段は、一定周波数の持続音を検出したときに、その入力信号が楽音による入力信号であるか否かを判定する。楽音による入力信号であると判定した場合、マイクロフォンから入力された信号をキャンセルしないように適応フィルタに設定する。適応フィルタの処理を停止、または、適応フィルタの適応処理を鈍化させるようにフィルタ係数を更新する。
また、この発明では、マイクロフォンから入力された信号をリファレンス波形と比較する。リファレンス波形は、楽音の波形やハウリング波形等である。比較方法は、例えば時間軸において入力された信号とリファレンス波形の相互相関関数を計算し、その計算結果を用いる。所定の時間領域で入力信号波形とリファレンス波形の積和を計算すればよい。相互相関関数の値が大きければリファレンス波形と近似していると判断できる。また、マイクロフォンから入力された音声信号を高速フーリエ変換(以下、FFTと言う。)し、音圧値がピークを示すピーク周波数およびその周波数の倍音周波数を求め、入力信号の波形の周波数スペクトルとリファレンス波形の周波数スペクトルを比較してもよい。比較方法は、HMM(Hidden Marcov Model)等のパターンマッチングの手法を用いる。その結果入力信号が楽音による入力信号であるか否かを判断する。
請求項2に記載の発明は、スピーカからマイクロフォンに至る音響帰還路の伝達関数を推定し、推定した伝達関数でスピーカへの出力信号をフィルタ処理して模擬信号を生成し、当該模擬信号を、入力信号である帰還音声信号からキャンセルする適応フィルタを備えたハウリングキャンセラであって、周波数軸上に所定レベル以上のピーク成分を有するピーク信号が入力信号として入力されたとき、このピーク信号が楽音による入力信号であるか否かを判定する入力信号判定手段と、ピーク信号が入力され、かつ入力信号判定手段が該ピーク信号を楽音による入力信号と判定した場合に、模擬信号を帰還音声信号からキャンセルしないように適応フィルタを制御する制御手段と、を備え、前記入力信号判定手段は、前記ピーク信号のスペクトル形状が急峻であるか否かを判断することにより、該ピーク信号が楽音又はハウリングであるか否かを判定することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、前記入力信号判定手段は、ピーク信号の周波数スペクトルのピーク周波数におけるピーク幅の値に所定の閾値を設定し、ピーク幅の値が所定の閾値以上であれば該ピーク信号のスペクトル形状が急峻でないと判断し、楽音による入力信号であると判定することを特徴とする。
この発明では、マイクロフォンから入力された音声信号をFFTし、ピーク周波数およびその倍音周波数を求め、ピーク幅を求める。ピーク幅に所定の閾値を設定し、その閾値よりもピーク幅が大きければ楽音による入力信号であると判断して入力信号をキャンセルしないようにする。閾値よりもピーク幅が小さければ正弦波に近い信号であるためハウリングとして判断する。
請求項4に記載の発明は、スピーカからマイクロフォンに至る音響帰還路の伝達関数を推定し、推定した伝達関数でスピーカへの出力信号をフィルタ処理して模擬信号を生成し、当該模擬信号を、入力信号である帰還音声信号からキャンセルする適応フィルタを備えたハウリングキャンセラであって、周波数軸上に所定レベル以上のピーク成分を有するピーク信号が入力信号として入力されたとき、このピーク信号が楽音による入力信号であるか否かを判定する入力信号判定手段と、ピーク信号が入力され、かつ入力信号判定手段が該ピーク信号を楽音による入力信号と判定した場合に、模擬信号を帰還音声信号からキャンセルしないように適応フィルタを制御する制御手段と、を備え、前記入力信号判定手段は、前記ピーク信号のスペクトル形状の左右対称性に基づいて、該ピーク信号が楽音又はハウリングであるか否かを判定することを特徴とする。
以上のように、この発明によれば、入力されたピーク信号が楽音であるか否かを判断することでハウリングによる入力信号と区別し、楽音による入力信号であると判断したときは入力信号をキャンセルしないようにすることで、一定周波数の楽音の持続音を抑制せずにハウリングのみ抑制することが可能となる。
以下、本発明の実施形態の適応ハウリングキャンセラ内蔵拡声システムについて図を用いて詳細に説明する。
図1は適応ハウリングキャンセラ内蔵拡声システムのブロック図である。同図に示すように、マイクロフォン1、加算器2、増幅器3、スピーカ4、音響帰還路5、ディレイ回路6、適応フィルタ7、波形分析部8、および波形記憶部9からなり、マイクロフォン1およびスピーカ4は講堂やホール等に配置される。マイクロフォン1を介して入力された音声信号は、A/D変換処理によりディジタル形式の信号y(k)に変換されて加算器2を介して増幅器3に入力される。増幅器3は、入力された信号y(k)を増幅するためのものである。G(z)は増幅器3の伝達関数である。
増幅器3から出力された信号x(k)は、D/A変換処理によりアナログ形式の音声信号に変換されてスピーカ4から音声を発音する。スピーカ4から発音された音声は音響帰還路5を経てマイクロフォン1に帰還する。音響帰還路5は、スピーカ4からマイクロフォン1に至る音響経路である。H(z)は音響帰還路5の伝達関数である。音響帰還路5を介して帰還される帰還信号d(k)は、話者等の音源が発生する音源信号s(k)とともにマイクロフォン1に入力される。マイクロフォン1は、この入力された音声をディジタル信号に変換してy(k)として出力する。
また、増幅器3から出力された信号x(k)は、ディレイ回路6にも入力される。ディレイ回路6は、入力された信号x(k)に対し、時間遅延を付与して出力するもので、ここではスピーカ4からマイクロフォン1に帰還する帰還信号の時間遅延を推定した時間遅延τを付与するものである。ディレイ回路6で時間遅延τを付与されて出力した信号x(k−τ)は適応フィルタ7に入力される。
適応フィルタ7は、図2に示すようにフィルタ部7aおよびフィルタ係数推定部7bからなるもので、フィルタ部7aおよびフィルタ係数推定部7bにはそれぞれディレイ回路6から出力された信号x(k−τ)が入力される。フィルタ部7aはスピーカ4からマイクロフォン1への帰還信号d(k)を模擬した信号do(k)を出力して、マイクロフォン1から再入力される信号y(k)から帰還信号d(k)を模擬した信号do(k)を差し引くようにする。帰還信号d(k)を模擬した信号do(k)は、伝達関数F(z)に従って上記ディレイ回路6から出力された信号x(k−τ)を基に決定される。フィルタ係数推定部7bは、ディレイ回路6から出力された信号x(k−τ)とマイクロフォン1から増幅器3に伝達される信号のうち上記帰還信号d(k)を模擬した信号do(k)を差し引いた信号e(k)とを基にして、適応アルゴリズムを用い、帰還信号を模擬した信号do(k)が実際の帰還信号d(k)に一致もしくは近似するようにフィルタ部7aのフィルタ係数を更新するものである。適応アルゴリズムは、たとえばLMS(Least Mean Square)アルゴリズムが用いられる。信号e(k)の2乗平均値J=E[e(k)](ただし、E[・]は期待値)とすれば、Jを最小にするようなフィルタ係数が演算により推定され、推定されたフィルタ係数を用いてフィルタ部7aのフィルタ係数が更新される。
なお、ディレイ回路6がないと、マイクロフォン1に入力した信号は、加算器2に入力されるとともに遅延なく適応フィルタ7にも入力される。適応フィルタ7は、誤差信号e(k)を小さくするようにフィルタ係数を更新するので、フィルタ係数の更新が進むにつれて、加算器2ではマイクロフォンから入力された信号が適応フィルタ7の出力信号によってキャンセルされるようになってしまう。このため、音源信号s(k)のキャンセルを防止しつつ帰還信号d(k)を信号do(k)によってキャンセルするためにはディレイ回路6が不可欠である。
上述のように適応フィルタ7では、ディレイ回路6から出力された信号x(k−τ)とマイクロフォン1から増幅器3に伝達される信号y(k)のうち上記帰還信号d(k)を模擬した信号do(k)を差し引いた信号e(k)とを基にしてフィルタ係数を更新するので、マイクロフォン1から入力された信号のうち、信号d(k)をキャンセルすることが可能である。マイクロフォン1−増幅器3−スピーカ4−音響帰還路5−マイクロフォン1の経路で形成される閉ループのゲインが1を超えたとき、帰還信号d(k)のうち、ある周波数の音圧値が時間経過とともに増大して周波数スペクトル上でピークを形成し、ハウリング発生となるが、適応フィルタ7は特にこのピークを減衰させるようにフィルタ係数を更新して、生成した模擬信号do(k)を入力信号y(k)から減算する。したがって、マイクロフォンから入力された音源信号s(k)と帰還信号d(k)を加算した信号y(k)が周波数一定の持続音であるときに、フィルタ係数を逐次更新してその持続音を減衰させることができる。
波形分析部8は、マイクロフォン1から入力された信号y(k)をFFTして信号Y(f)を得る。さらに、FFTした信号Y(f)についてピーク周波数を検出する。ピーク周波数検出の手法は例えば、音圧値が所定の閾値以上となる周波数領域のうち極大となる周波数をピーク周波数とすればよい。さらに、検出したピーク周波数のうち最も低いピーク周波数を入力信号の1次ピークとし、1次ピークの整数倍の周波数を倍音ピークとする。
検出したピーク周波数が一定時間以上継続して入力される場合、それぞれのピーク周波数付近のスペクトル形状を解析して信号Y(f)がハウリング発生による信号であるか否かを判断する。ハウリング発生による信号でないと判断した場合は、楽音の持続音であると判断して適応フィルタ7にマイクロフォン1から入力された信号をキャンセルしないよう指示する。ここでは図2に示した適応フィルタ7のフィルタ部7bにフィルタ係数の更新を停止するように設定する。
入力信号の解析方法は以下の2態様で行う。
[第1態様]
図3は、解析方法の第1態様の動作を示したフローチャートである。波形分析部8は、マイクロフォン1に信号が入力されたときにこの動作を開始する。同図のように、波形分析部8は、まずマイクロフォン1から入力された信号y(k)を取り込み、FFTする(s1)。さらにFFTした信号Y(f)の波形を調べ、ピーク周波数を検出する(s2)。その後、ピーク周波数が検出できたか否かを判断し(s3)、ピーク周波数が検出できなければ、入力信号の取り込みから処理を繰り返す(s3→s1)。さらに、そのピーク周波数が所定の時間以上継続して発生しているか否かを判断する(s4)。ピーク周波数が所定の時間以上継続しなければ入力信号の取り込みから処理を繰り返す(s4→s1)。
ピーク周波数が検出され、所定の時間以上継続したときは、記憶装置である波形記憶部9から検出されたピーク周波数に対応する正弦波形データを読み出す(s5)。なお、正弦波形データは波形記憶部9から読み出すのではなく、算出するようにしてもよい。その後、マイクロフォン1から入力された信号の波形と相互相関関数を計算する(s6)。相互相関関数は、入力信号に対し検出したピーク周波数に対応する周波数帯域通過フィルタを通した信号に対して計算するようにしてもよい。また検出したピーク周波数の他、その倍音ピーク周波数においても計算するようにしてもよい。なお、波形記憶部9は波形データを記憶できるものであればどのようなものであってもよく、例えばフラッシュメモリ等を用いればよい。なお、正弦波形データを算出する場合にはこの波形記憶部9は無くてもよいものである。
相互相関関数は2信号間の類似度を表すものであり、2つの信号が完全に異なる場合は0に近づく。ハウリングの波形は周波数一定の持続音であるため、正弦波形との相関が高い。したがって正弦波形との相互相関関数の値が大きい場合はハウリングによる信号と判断することができ、相互相関関数の値が小さい場合はハウリングによる信号でないと判断することができる。ここでは相互相関関数の値に所定の閾値を設定し、閾値以上のときにハウリングによる信号と判断して解析動作を停止し、(s7→END)閾値以下のときにハウリングによる信号でないと判断する(s7)。なお、正弦波形との相互相関関数の値を求めるのではなく、楽音の波形との相互相関関数を求めて楽音による信号であるか否かを判定するようにしてもよい。その場合、楽音による信号と判断できるときにはハウリングでないと判断すればよい。
ハウリングによる信号でないと判断したときは、入力された信号をキャンセルしないように適応フィルタ7に設定する(s8)。ここでは検出した1次ピークおよび倍音ピークの周波数成分を低減しないように適応フィルタ7に適応処理を停止するよう指示する。なお、適応フィルタ7の適応処理を鈍化させるように設定するようにしてもよい。
適応フィルタ7の伝達関数はF(z)で表されるが、この伝達関数は忘却係数λやステップサイズαと呼ばれる係数で更新される。忘却係数λはそれまでの伝達関数に乗ずる係数であり、0〜1の範囲に設定する。忘却係数λを小さくするとそれまでの伝達関数を消去して更新を促進することになる。ステップサイズαは修正の大きさを表す係数であり、ステップサイズαを大きくすると修正した伝達関数をより多く利用することとなり、更新を促進することになる。修正後の伝達関数F’(z)はF’(z)=λF(z)+αΔF(z)(ただし、ΔF(z)はフィルタ差分)なる式で表される。
したがって、ハウリングでないと判断したときは、上記の忘却係数λとステップサイズαの値を0付近に設定する。忘却係数λとステップサイズαの値を0に設定すると伝達関数F’(z)は0に近くなり、適応フィルタ7の出力信号do(k)も0に近くなる。したがって、マイクロフォン1からの入力信号y(k)をキャンセルしなくなる。また、忘却係数λの値を大きくし、ステップサイズαの値を小さくしてもよい。忘却係数λの値を大きくし、ステップサイズαの値を小さくすると伝達関数を更新しなくなるため、持続音の入力信号を低減しないようにすることができる。
なお、ある1次ピークが楽音と判定された場合は、その倍音ピークについての判定処理は省略してもよい。なお、2信号間の類似度を算出する手法として、相互相関関数に替えてHMM等のパターンマッチングの手法を用いてもよい。この場合、正弦波形データと比較してハウリングによる信号か否かを判定してもよいし、楽音の波形データと比較して楽音による信号であるか否かを判定するようにしてもよい。
[第2態様]
図4は解析方法の第2態様の動作を示したフローチャートである。波形分析部8は、マイクロフォン1に信号が入力されたときにこの動作を開始する。同図のように、まずマイクロフォン1から入力された信号を取り込み、FFTにより周波数スペクトルを算出する(s9)。算出した周波数スペクトルを調べ、ピーク周波数を検出する(s10)。その後、ピーク周波数が検出できたか否かを判断し(s11)、ピーク周波数が検出できなければ、入力信号の取り込みから処理を繰り返す(s11→s9)。さらに、そのピーク周波数が所定の時間以上継続して発生しているか否かを判断する(s12)。ピーク周波数が所定の時間以上継続しなければ入力信号の取り込みから処理を繰り返す(s12→s9)。
ピーク周波数が検出され、所定の時間以上継続したときは、周波数スペクトルにおいて、検出したピーク周波数に対応するピーク形状から、ピーク音圧値に対して所定の値だけ低い音圧値におけるピーク形状の周波数の幅であるピーク幅を計算する(s13)。
図5は、周波数スペクトルを説明する図である。同図(A)のように、検出したピーク周波数の音圧値を取得し、そのピーク音圧値に対して所定の値だけ低い音圧値であるピーク幅算出音圧値を算出する。このピーク幅算出音圧値はどのように設定してもよいが、例えばピーク音圧値の半値等であってもよい。この音圧値におけるピーク形状の周波数幅を計算し、この周波数幅をピーク幅とする。
計算したピーク幅が小さいほどピークのスペクトル形状は急峻であることになる。ハウリングの波形は正弦波形に近いのでピーク幅が小さく、ピーク周波数における周波数スペクトルのピーク形状は急峻となる。したがって、ピーク幅に所定の閾値を設定し、閾値以下のときにハウリングと判断して解析動作を停止し(s14→END)、閾値以上のときにハウリングでない、すなわち楽音による信号が入力されていると判断する(s14)。
ハウリングでないと判断したときは、入力された信号をキャンセルしないように適応フィルタ7を修正する(s15)。この例においても検出したピーク周波数の周波数成分を低減しないように適応フィルタ7に適応処理を停止するよう指示する。なお、適応フィルタ7の適応処理を鈍化させるように設定するようにしてもよい。上述のように忘却係数λとステップサイズαの値を0に近くするか、伝達関数を更新しないように忘却係数λの値を大きくし、ステップサイズαの値を小さく設定すればよい。これにより持続音の入力信号を低減しないようにすることができる。
なお、上述の2態様以外にも、例えば周波数スペクトルのピーク波形の左右対称性を基準にハウリングか否かを判断してもよい。ハウリング波形はピーク周波数を中心に左右対称性が高いため、これによりハウリングであるか否かを判断することもできる。また、偏差の分布を調査してもよい。図5(B)に示すように、ピーク周波数を中心とする所定の周波数幅において、各周波数におけるピーク周波数からの偏差の2乗値に音圧値を乗じた値の合計値をばらつき値として判断する。ハウリング波形は周波数スペクトルのピーク形状が急峻であるため、ばらつき値が小さい。したがってばらつき値が小さければハウリングと判断できる。ハウリング波形と楽音の波形とを区別できる解析方法であればどのようなものであってもよい。
なお、本実施形態ではピーク周波数を検出し、ハウリングでないと判断したときは、適応フィルタの適応処理を停止したり適応処理を遅らせたりして、入力信号をキャンセルしない方法を示したが、これに限るものではない。適応フィルタと加算器の間に、任意周波数帯域の信号を減衰させるバンドカットフィルタ等を備え、検出したピーク周波数に応じて、適応フィルタの出力信号を減衰するように制御してもよい。このようにすれば、入力される楽音信号の帯域は適応フィルタを動作させないようにできる。
以上のように本発明における適応ハウリングキャンセラ内蔵拡声システムは、マイクロフォンから入力された音声信号をFFTして、そのピーク周波数および倍音周波数付近の波形から、マイクロフォンから入力された信号がハウリングであるか否かを判断し、ハウリングでないと判断したときは、適応フィルタにその音声信号をキャンセルしないように指示する。これにより、バイオリン等のように周波数一定の楽音の持続音が入力された時にその楽音をキャンセルせずに、ハウリングのみを抑制することが可能となる。
また、入力信号はマイクロフォンからの入力に限らず、振動センサ等、話者等の音源信号を集音するものであればどのようなものであってもよい。また、周波数分析の手法は上述したFFTに限らず、周波数ピークを算出できる手法であればどのようなものであってもよい。例えば帯域通過フィルタ等を用いてもよい。
本実施形態における適応ハウリングキャンセラ内蔵拡声システムの構成を示すブロック図 本実施形態における適応フィルタの構成を詳細に示す図 解析方法の第1態様の動作を示すフローチャート 解析方法の第2態様の動作を示すフローチャート 周波数スペクトルを説明する図 従来の拡声システムの構成を示すブロック図 従来の適応フィルタの構成を詳細に示す図
符号の説明
1−マイクロフォン
2−加算器
3−増幅器
4−スピーカ
5−音響帰還路
6−ディレイ回路
7−適応フィルタ
7a−フィルタ部
7b−フィルタ係数推定部
8−波形分析部
9−波形記憶部
101−従来の拡声システムにおけるマイクロフォン
102−従来の拡声システムにおける加算器
103−従来の拡声システムにおける増幅器
104−従来の拡声システムにおけるスピーカ
105−従来の拡声システムにおける音響帰還路
106−従来の拡声システムにおけるディレイ回路
107−従来の拡声システムにおける適応フィルタ

Claims (4)

  1. スピーカからマイクロフォンに至る音響帰還路の伝達関数を推定し、推定した伝達関数でスピーカへの出力信号をフィルタ処理して模擬信号を生成し、当該模擬信号を、入力信号である帰還音声信号からキャンセルする適応フィルタを備えたハウリングキャンセラであって、
    周波数軸上に所定レベル以上のピーク成分を有するピーク信号が入力信号として入力されたとき、このピーク信号が楽音による入力信号であるか否かを判定する入力信号判定手段と、
    ピーク信号が入力され、かつ入力信号判定手段が該ピーク信号を楽音による入力信号と判定した場合に、模擬信号を帰還音声信号からキャンセルしないように適応フィルタを制御する制御手段と、
    を備え
    前記入力信号判定手段は、前記ピーク信号をリファレンス波形パターンと比較することで、該ピーク信号が楽音又はハウリングであるか否かを判定することを特徴とするハウリングキャンセラ。
  2. スピーカからマイクロフォンに至る音響帰還路の伝達関数を推定し、推定した伝達関数でスピーカへの出力信号をフィルタ処理して模擬信号を生成し、当該模擬信号を、入力信号である帰還音声信号からキャンセルする適応フィルタを備えたハウリングキャンセラであって、
    周波数軸上に所定レベル以上のピーク成分を有するピーク信号が入力信号として入力されたとき、このピーク信号が楽音による入力信号であるか否かを判定する入力信号判定手段と、
    ピーク信号が入力され、かつ入力信号判定手段が該ピーク信号を楽音による入力信号と判定した場合に、模擬信号を帰還音声信号からキャンセルしないように適応フィルタを制御する制御手段と、
    を備え、
    前記入力信号判定手段は、前記ピーク信号のスペクトル形状が急峻であるか否かを判断することにより、該ピーク信号が楽音又はハウリングであるか否かを判定することを特徴とするハウリングキャンセラ。
  3. 前記入力信号判定手段は、ピーク信号の周波数スペクトルのピーク周波数におけるピーク幅の値に所定の閾値を設定し、ピーク幅の値が所定の閾値以上であれば該ピーク信号のスペクトル形状が急峻でないと判断し、楽音による入力信号であると判定することを特徴とする請求項2に記載のハウリングキャンセラ。
  4. スピーカからマイクロフォンに至る音響帰還路の伝達関数を推定し、推定した伝達関数でスピーカへの出力信号をフィルタ処理して模擬信号を生成し、当該模擬信号を、入力信号である帰還音声信号からキャンセルする適応フィルタを備えたハウリングキャンセラであって、
    周波数軸上に所定レベル以上のピーク成分を有するピーク信号が入力信号として入力されたとき、このピーク信号が楽音による入力信号であるか否かを判定する入力信号判定手段と、
    ピーク信号が入力され、かつ入力信号判定手段が該ピーク信号を楽音による入力信号と判定した場合に、模擬信号を帰還音声信号からキャンセルしないように適応フィルタを制御する制御手段と、
    を備え、
    前記入力信号判定手段は、前記ピーク信号のスペクトル形状の左右対称性に基づいて、該ピーク信号が楽音又はハウリングであるか否かを判定することを特徴とするハウリングキャンセラ。
JP2004358745A 2004-12-10 2004-12-10 ハウリングキャンセラ Expired - Fee Related JP4367328B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004358745A JP4367328B2 (ja) 2004-12-10 2004-12-10 ハウリングキャンセラ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004358745A JP4367328B2 (ja) 2004-12-10 2004-12-10 ハウリングキャンセラ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006166375A JP2006166375A (ja) 2006-06-22
JP4367328B2 true JP4367328B2 (ja) 2009-11-18

Family

ID=36667824

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004358745A Expired - Fee Related JP4367328B2 (ja) 2004-12-10 2004-12-10 ハウリングキャンセラ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4367328B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4656010B2 (ja) * 2006-07-07 2011-03-23 ヤマハ株式会社 ハウリングキャンセラおよびプログラム
KR100842681B1 (ko) 2006-08-11 2008-07-01 주식회사유비와이즈 오디오 증폭 장치 및 오디오 증폭 방법
JP5664431B2 (ja) * 2011-04-22 2015-02-04 ヤマハ株式会社 スピーカの自己診断装置
WO2013054459A1 (ja) 2011-10-14 2013-04-18 パナソニック株式会社 ハウリング抑圧装置、補聴器、ハウリング抑圧方法、及び集積回路
CN105308985B (zh) * 2013-06-19 2019-09-10 创新科技有限公司 一种声反馈消除模块、用于抑制不期望的啸叫声音的方法及音频系统
CN109218957B (zh) * 2018-10-23 2020-11-27 北京达佳互联信息技术有限公司 啸叫检测方法、装置、电子设备及存储介质
CN116405836B (zh) * 2023-06-08 2023-09-08 安徽声讯信息技术有限公司 一种基于互联网的麦克风调音方法及系统

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006166375A (ja) 2006-06-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10566008B2 (en) Method and apparatus for acoustic echo suppression
JP4767166B2 (ja) ハウリング抑圧装置、プログラム、集積回路、およびハウリング抑圧方法
CN102422346B (zh) 音频噪声消除
JP4186932B2 (ja) ハウリング抑制装置および拡声装置
JP2955855B1 (ja) 能動型雑音除去装置
JP2007093962A (ja) 能動消音制御装置及び方法
JP2019519819A (ja) 能動型ノイズ制御システムにおける不安定状態の緩和
CN112037816B (zh) 语音信号频域频率的校正、啸叫检测、抑制方法及装置
JPWO2016178309A1 (ja) 信号処理装置、信号処理方法、プログラム、レンジフード装置
JP5003419B2 (ja) 音処理装置およびプログラム
JP4367328B2 (ja) ハウリングキャンセラ
JP2009188724A (ja) エコー抑圧ゲイン推定方法とそれを用いたエコー消去装置と、装置プログラムと記録媒体
JP4690243B2 (ja) デジタルフィルタ、周期性騒音低減装置および騒音低減装置
JP2009276365A (ja) 処理装置、音声認識装置、音声認識システム、音声認識方法
JP4438632B2 (ja) ハウリングキャンセラ
JP4239993B2 (ja) ハウリングキャンセラ
JP4462080B2 (ja) 拡声装置
JP6116300B2 (ja) 能動型消音システム
JP2003167584A (ja) 能動型消音装置
JPH07219559A (ja) 適応形能動消音装置
JP6361360B2 (ja) 残響判定装置及びプログラム
Puder et al. Decorrelation measures for stabilizing adaptive feedback cancellation in hearing aids
JPH10198386A (ja) 音響再生装置
Guo A Method for Determining Periodically Time-Varying Bias and Its Applications in Acoustic Feedback Cancellation
van Waterschoot et al. Adaptive feedback cancellation for audio signals using a warped all-pole near-end signal model

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071023

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090421

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090511

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090629

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20090629

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090804

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090817

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120904

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130904

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees