JPH10101329A - α−アルミナおよびその製造方法 - Google Patents

α−アルミナおよびその製造方法

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JPH10101329A
JPH10101329A JP8258645A JP25864596A JPH10101329A JP H10101329 A JPH10101329 A JP H10101329A JP 8258645 A JP8258645 A JP 8258645A JP 25864596 A JP25864596 A JP 25864596A JP H10101329 A JPH10101329 A JP H10101329A
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alumina
powder
diaspore
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temperature
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JP8258645A
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English (en)
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Fumiyoshi Saito
文良 齋藤
Yuichi Yoshizawa
友一 吉澤
Junya Kano
純也 加納
Mitsuo Nibu
光雄 丹生
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Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Chemical Co Ltd
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Publication date
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  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 得られるα−アルミナが易焼結性であり、か
つ、アルミニウム水和物粉体を焼成しα−アルミナを得
るに於いて、α化遷移温度の低い焼成方法を提供する。 【解決手段】 アルミニウム水和物粉体に、粒子の一部
分を水和させたα−アルミナ粉体および/またはダイア
スポア粉体を、該アルミニウム水和物粉体に対して0.
01〜100重量%添加、混合した後、約1100℃以
下の温度で焼成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通常の遷移温度よ
りも低温で遷移させたα−アルミナ(α−Al23
以下本明細書中では、α−アルミナと称する場合があ
る)の製造方法及びこれより得られるα−アルミナに関
する。更に詳細には、アルミニウム水和物粉体を焼成し
α−アルミナを製造するに於いて、該アルミニウム水和
物粉体に、一部分を水和させたα−アルミナ粉体やダイ
アスポア粉体を種子として一定量添加することにより、
遷移温度を従来より著しく低下せしめたα−アルミナの
製造方法及びこれより得られるBET比表面積が大き
く、焼結性、反応性等に優れたα−アルミナ粉体に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】現在、最も普遍的に行われている工業的
なα−アルミナの製造方法は、原料であるボーキサイト
から苛性ソーダ等のアルカリ溶液でアルミナ分を抽出
し、アルミニウム水和物(水酸化アルミニウム)を析
出、分離、水洗した後、これを焼成する方法である。上
記のボーキサイトから苛性ソーダ溶液で水酸化アルミニ
ウムを抽出する方法は、バイヤー法と呼ばれ、この方法
によって製造される水酸化アルミニウムは 通常3水和
物であるギプサイト(Al2 3 ・3H2 O)態であ
る。
【0003】一方、一般によく知られているように、ダ
イアスポア以外のギプサイト、バイヤライト、ベーマイ
ト等の水酸化アルミニウムやアルミナゲル等の非晶質ア
ルミナ水和物は、焼成により脱水し、η−アルミナ、χ
−アルミナ、γ−アルミナ、κ−アルミナ、θ−アルミ
ナ等々の種々の中間アルミナを経て、最終的には最も安
定なα−アルミナになる。この遷移には、出発物質と焼
成条件や雰囲気に固有の遷移系列があることも知られて
いる。しかし、いずれの遷移系列においても、最終的な
α−アルミナへの遷移温度は略一定で、少なくとも11
00℃以上であり、ほぼ完全にα−アルミナに遷移する
温度は1200℃またはそれ以上である。
【0004】前述のバイヤー法で得られるギプサイトは
通常の大気中での焼成により、χ−アルミナ、κ−アル
ミナを経由して、やはり1150℃〜1250℃でα−
アルミナに遷移する。したがって、α−アルミナを製造
しているアルミナメーカーでは、通常1200℃以上の
高温で焼成し製品とするのが普通である。
【0005】唯一の例外はダイアスポア焼成の場合であ
る。ダイアスポアは600℃前後のかなり低温で直接α
−アルミナに遷移する。しかし、ダイアスポアは通常、
バイヤー法では造ることができず、合成にはオートクレ
ーブ等の圧力設備が必要であり、ダイアスポアを大量に
しかも安価に造る方法は、現在のところ知られていな
い。また、ダイアスポアは、鉱石として天然に産出する
ものの、不純物の除去には限界があり、バイヤー法起源
のα−アルミナと同等の純度を得ることは困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】而して、耐火物、セラ
ミックス等に使用されているα−アルミナは、ロータリ
ーキルンや反射炉等の焼成炉で、1200℃以上の温度
で水酸化アルミニウム(ギプサイト)を焼成したもので
あり、その設備と熱エネルギーは莫大である。アルミナ
製造メーカーでは、熱管理を徹底し、焼成コストの改善
に努力しているがα−アルミナへの遷移温度が略一定し
ている以上、大幅な改善はできていない。
【0007】さらに、バイヤー法起源のα−アルミナの
1次粒子、即ち単一α粒子の大きさは通常の粒子径の水
酸化アルミニウムを使用した場合、前述のように120
0℃程度の高温で焼成するため、大凡直径数μm程度に
成長する。この数μm、例えば2〜5μmという粒子径
は、焼結特性を重視する用途に使用する場合には、粒子
径が大きすぎ、このままの粒子径で焼結すると1600
℃またはそれ以上の焼結温度が必要である。また、5μ
m程度またはそれ以上に粒成長すると、α−アルミナは
六角板状の結晶が発達し、焼結用粉体として使用した場
合に異方性が現れ、焼結体として不具合が生じる場合が
ある。
【0008】したがって、特に焼結性を重視する用途に
使用するα−アルミナ、即ち易焼結性α−アルミナで
は、原料として1次結晶粒の微細な水酸化アルミニウム
(ギプサイト)を使用し、焼成後のα−アルミナの1次
粒子径が可能な限り微粒子となるようにコントロール
し、これを粉砕して易焼結性α−アルミナを造ってい
る。しかし、かかる方法で易焼結性α−アルミナを製造
する場合でも1200℃という遷移温度は変わらず、微
粒水酸化アルミニウムの調整や焼成後の粉砕等のために
コストの上昇をきたし、易焼結性α−アルミナは通常の
α−アルミナの2〜5倍程度のコストを必要とする。ま
た、このような高い温度での焼成により得られるα−ア
ルミナ粉体は、焼結時に粒成長を起こしやすく、異常粒
成長を誘起する等の焼結性への悪影響を及ぼし、焼結体
の機械的特性の向上を阻害するとも言われている。
【0009】かかる事情下に鑑み、本発明者等は従来よ
りもより低温でα−アルミナへの遷移が可能で、かつ得
られるα−アルミナの1次粒子が微細な、易焼結性のα
−アルミナを得ることを目的とし鋭意検討した結果、ア
ルミニウム水和物粉体の焼成時に特定物質を添加し焼成
する場合には、上記目的を全て満足し得ることを見いだ
し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】即ち、本発明はアルミニウム水和物粉体
に、粒子の一部分を水和させたα−アルミナ粉体および
/またはダイアスポア粉体を、該アルミニウム水和物粉
体に対して0.01〜100重量%添加した後、焼成す
ることを特徴とするα−アルミナの製造方法を提供する
にある。
【0011】さらには、BET比表面積が10m2 /g
以上で、焼成後の未粉砕状態で平均1次粒子径が3μm
以下、普通には0.1μm〜1μm未満の焼結性に優れ
たα−アルミナ粉体を提供することにある。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明方法を更に詳細に説
明する。本発明は、アルミニウム水和物粉体の焼成に際
し、種子として、粒子の一部分を水和させたα−アル
ミナ粉体および/またはダイアスポア粉体を添加し、
これを充分均一に分散、混合し、焼成して所望とする結
晶構造のアルミナを得るものである。特にα−アルミナ
粉体の製造に於いて、低温で遷移せしめることができる
と共に、得られるα−アルミナ粉体の1次粒子径が微粒
でBET比表面積が大きい、易焼結性のα−アルミナ粒
子を提供し得るものである。
【0013】種子として、粒子の一部分を水和させた
α−アルミナ粉体は、特にその製造方法が制限されるも
のではなく、α−アルミナ粉体に対して約15〜60重
量%、好ましくは約20〜50重量%水和された、平均
粒子径約0.01μm〜10μm、好ましくは約0.0
5〜5μm、より好ましくは約0.1〜1μmの粒子で
ある。種子の平均粒子径が約0.01μm未満の場合に
は製造コストが高く、また作業性が悪くなる。また約1
0μmを越える場合には、アルミニウム水和物との混合
分散が不十分になりやすく、α化遷移温度を効果的に発
現させることができない場合がある。
【0014】このような物性を有するα−アルミナ粉体
としては、α−アルミナ製ボールおよび/またはライナ
ーを使用した湿式粉砕機において、該粉砕機中に水、水
蒸気またはアルコール水溶液等を添加し、そのまま稼働
する方法(この場合には粉砕機中のアルミナボール同志
の摩擦、或いはアルミナボールとライナーの摩擦によ
り、該アルミナボール表面やライナー表面よりアルミナ
粒子が脱離し、脱離、発生したアルミナ粉が、粉砕機器
中で水分と接触し、粒子の一部分が水和された微粒のα
−アルミナ粉体が得られる)、或いは湿式粉砕機中に
水、水蒸気またはアルコール水溶液等を添加し、これに
α−アルミナ粉末および/またはα−アルミナ成形体を
添加し、粉砕処理し、上記物性を有するα−アルミナ粉
体を得る方法が挙げられる。
【0015】アルコール水溶液を用いる場合には、粉砕
粒子の解砕性が改良される。また、粉砕時に加温するこ
とにより粉砕速度、水和速度を促進したりコントロール
することが可能である。熱水蒸気を使用する場合には、
乾式粉砕に近い方法で、水和等の処理を早めることが可
能である。
【0016】また高純度微粒α−アルミナをα−アルミ
ナ製粉砕機や解砕機等で軽度に粉砕〜解砕し、次いでこ
れを熱水や熱水蒸気処理することにより上記種子を得る
こともできる。また、粉砕時に解膠剤、粉砕助剤、その
他粉砕を促進させる薬剤等を添加する等の、従来から公
知の粉砕方法を加味することは、一向に差し支えない。
【0017】かかる一部水和されたα−アルミナを得る
ために用いる粉砕機としては、特に制限されないが、湿
式の転動ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル
等が使用される。これらの処理時間は粉砕原料、使用粉
砕機器、粉砕条件等により一義的ではない。
【0018】水和物の生成はアルミナ純度が高い(例え
ば95重量%以上)ものほど高く、その水和物種はギブ
サイトと非晶質アルミナよりなる。他方、アルミナ純度
が95%未満の場合には、生成する水和物は実質的に非
晶質アルミナである。
【0019】アルミニウム水和物粉体を焼成しα−アル
ミナを得る為の種子としてはアルミナ純度の高いα−ア
ルミナを一部水和物処理したものが、より低温でのα化
遷移効果が高い。それゆえバイヤー法により得られたα
−アルミナを水和処理して種子として用いるよりも、4
N〜5N等の高純度の有機アルミニウムを加水分解して
得た高純度のα−アルミナを水和処理して種子として用
いる方がより低温でα−アルミナへの遷移が可能であ
る。
【0020】α−アルミナの水和の程度は、処理するα
−アルミナの熱重量変化(TG)測定に於いて、室温か
ら1000℃までの重量減少割合と、この重量減少すべ
てがアルミナの3水和物の脱水によるものと仮定した場
合の水酸化物の割合から求めればよく、α−アルミナ粉
体に対して約15〜約60重量%水和させて用いればよ
い。
【0021】アルミニウム水和物粉体の焼成に際し添加
する種子としての一部水和されたα−アルミナ粉体の添
加量は、アルミニウム水和物粉体に対して約0.01〜
約100重量%、好ましくは約0.1重量%〜10重量
%である。0.01重量%未満では添加効果が現れず、
100重量%を越える場合には経済的でない。
【0022】本発明に適用されるアルミニウム水和物粉
体としては、所謂、水酸化アルミニウム粉末であればよ
く、ギプサイト、バイヤライト、ベーマイトの少なくと
も1種やアルミナゲル等の非晶質アルミナ水和物が挙げ
られる。就中、バイヤー法により得られるギブサイトは
価格が廉価であることより多用し得る。
【0023】これらアルミニウム水和物粉体の平均粒子
径は、約0.01〜100μm、好ましくは約0.01
〜10μm、更に好ましくは約0.01〜5μmであ
る。種子との混合前の粒度はより細かい方が好ましい
が、種子を添加後、上記範囲に粉砕処理する場合には、
粗粒であっても差し支えない。
【0024】また、種子としてのα−アルミナもアルミ
ニウム水和物粉体と混合し、同時に湿式粉砕に供するこ
とにより、該α−アルミナが本発明範囲内で水和される
のであれば、アルミニウム水和物粉体の混合前に予め水
和処理する必要はない。また、種子をアルミニウム水和
物粉体の混合前後に於いて、分割し湿式粉砕に供し水和
処理した後、焼成しα−アルミナを得ることも可能であ
る。
【0025】粉砕処理時間は、もとのアルミニウム水和
物粉体(ギプサイト等)の粒子径により一義的ではない
が、大凡、転動ミルで数時間〜数百時間、振動ミルで数
十分〜数十時間、遊星ミルで数分〜数時間程度である。
【0026】通常、種子無添加の場合、バイヤー法等で
得られるアルミニウム水和物粉体のα化遷移温度は約1
150℃〜1250℃であるが、本発明方法を用いる場
合には、約1100℃未満、普通には約900℃〜10
00℃での焼成温度でα−アルミナを得ることができ
る。
【0027】この様にして得られたα−アルミナ粉末
は、BET比表面積が10m2 /g以上、普通には15
2 /g〜50m2 /gで、未粉砕状態に於いて平均1
次粒子径が5μm以下、普通には3μm以下、最も普通
には0.1μm〜1μm未満の焼結性に優れたα−アル
ミナ粉体である。
【0028】本発明に於いては、アルミニウム水和物粉
体の低温度でのα化遷移効果を付与せしめる種子として
は上記した「粒子の一部を水和させたα−アルミナ粉
体」を用いる以外に、ダイアスポア(アルミナ1水和
物)を用いることができる。
【0029】アルミニウム水和物粉体に対するダイアス
ポア粉体の添加量は、一部分を水和させたα−アルミナ
粉体の場合と同様に約0.01〜100重量%、好まし
くは約0.1重量%〜10重量%である。0.01重量
%未満では添加効果が現れず、100重量%を越える場
合には経済性がない。アルミニウム水和物粉体中へのダ
イアスポア粉体の添加方法は、該粉体中に均一に分散で
きるならば、乾式、湿式のいずれの方法でも良い。ま
た、添加されるダイアスポア粉体の平均粒子径は約0.
01〜50μm、好ましくは0.1〜5μmである。
【0030】ダイアスポアは合成品であっても天然品で
あってもよい。ダイアスポアを人工的に合成すること
は、高純度品が得られるので好ましいが、高価である。
一方大量に産出する天然の礬土頁岩等の中に含まれるダ
イアスポア鉱を精製使用する場合には、コスト上も極め
て有利な添加原料が得られる。本発明で種効果として添
加するダイアスポアの添加量下限は0.01重量%であ
り、少量で効果があるため、種の純度が製品α−アルミ
ナの純度に与える影響は比較的少ないと思われるが、礬
土頁岩起源のダイアスポアの純度が不十分な場合には、
磁力選鉱や浮遊選鉱等、通常の鉱石精製のプロセッシン
グが利用できる。礬土頁岩は、鉄分は比較的少なく、共
生するカオリン等のシリカ分の分離除去が重要である
が、これには、陽イオン捕収剤である第4級アミンを用
いた逆浮選法(特開平7−47301号公報等)が有効
である。
【0031】種子としてのダイアスポアを添加、混合し
たアルミニウム水和物粉体は、通常公知の焼成法により
大気中で焼成される。この方法に於いても約1100℃
以下の温度で、普通には約900℃〜1000℃でほぼ
完全にα−アルミナに遷移する。この事実は、特にバイ
ヤー工程より得られる廉価なギプサイトからのα−アル
ミナの製造において、エネルギーコストの大幅な削減を
可能とし、工業的に極めて優れた価値を有するものであ
る。
【0032】更に、本発明方法によって得られたα−ア
ルミナは、従来公知の1200℃程度の温度で焼成して
得られたα−アルミナのBET比表面積が数m2 /gで
あるのに対して10m2 /g以上、通常15〜50m2
/gである。この比表面積から計算されるα単位粒子の
大きさは、0.3μm以下であり、粉砕しても高々1μ
m程度の従来法によるα−アルミナに比して極めて微粒
である。それゆえ、本発明方法による得られるα−アル
ミナは、易焼結性を有し、高密度の焼結体を供給するこ
とができる。
【0033】焼結性について、本発明により得られたα
−アルミナでは、1400℃の焼結温度において、理論
密度の96%以上の相対密度を示し、約0.2重量%程
度のα−アルミナ種の混合分散で、無添加の場合より平
均200℃程度の焼結温度の低下が見られる。これに対
し、同程度の粒度の市販品水酸化アルミニウム(ギプサ
イト)やジルコニアボールを用いた粉砕機で同等粒度に
粉砕した水酸化アルミニウム(ギプサイト)を焼成して
得たたα−アルミナでは、同条件の燒結体製造におい
て、1400℃では十分な燒結体が得られず、水を用い
たアルキメデス法による密度測定が不可能である。
【0034】また、本発明で得られたα−アルミナ粉体
(1000℃焼成品)を、1350℃〜1500℃の焼
結温度で焼結体を作製し、それぞれの焼結体の表面を研
磨、エッチングしてSEM像写真で観察すると、135
0℃、1400℃の低温焼結では、焼結粒は立方体状で
細かく均一であり、焼結体として良好であり、上記密度
測定の結果とよく符合している。これに対し、さらに焼
結温度が高くなると、結晶粒成長が生じるとともに、通
常の普通純度アルミナ焼結体で観察される方向性を有す
る板状結晶が見られるようになり、1500℃では、異
常粒成長の多い組織となる。
【0035】本発明によるα−アルミナ粉体は、α結晶
相の単一粒子が極めて微細でBET比表面積が大きい
為、上述の焼結性に優れる他、良好な反応性を利用した
用途、例えば固相反応による複合化合物の合成や比表面
積が大きいことを利用して触媒や触媒担体等としても適
用可能である。
【0036】
【発明の効果】以上詳述した本発明方法によれば、アル
ミニウム水和物粉体に、粒子の一部分を水和させたα−
アルミナ粉体および/またはダイアスポア粉体を添加す
るという極めて簡単な方法で、従来のα−アルミナへの
遷移温度より100〜300℃程度も低い温度でα−ア
ルミナ粉体の製造を可能とするもので、アルミナ焼成コ
ストを大幅に低減させることができる。さらに、本発明
方法によって製造されたα−アルミナは、極めて微細な
α結晶の単位粒子から構成されているため、BET比表
面積が大きく、従来のα−アルミナより低い温度で異常
粒成長の実質的にない、極めて良好な焼結体を製造する
ことが可能である。また、本発明方法によって製造され
たα−アルミナは、焼結体の他に固体反応による合成原
料や触媒、触媒担体等としての応用も期待でき、その産
業上の価値は頗る大である。
【0037】
【実施例】以下、実施例により本発明方法を更に詳細に
説明するが、本発明方法はこれにより制約を受けるもの
ではない。以下の一連の実施例において、物質の同定
は、粉末X線回析により、また熱分析には、熱重量変化
(TG)と示差熱分析(DTA)を用いた。粉体の比表
面積測定には、BET比表面積計を使用した。粉砕試料
等の加熱による相変化を調べるためには、試料をアルミ
ナ製のルツボに挿填後、SiCヒーターを使用した電気
炉で、大気雰囲気中、5℃/minの速度で昇温し、所
定の温度で2時間保持後冷却した。また、焼結試験で
は、バインダーや焼結助剤を一切使用せず、粉体約1g
を10mm×10mmの超硬合金製の金型で仮成形し、
150MPaの圧力でCIP成形を行った後、上記の焼
成条件と同様に、所定温度で2時間の焼結を行った。焼
結体の密度の測定には、水を使用したアルキメデス法に
よる器具を使用したが、焼結密度が低く同法による測定
が困難の場合は、寸法と質量とから密度を計算した。ま
た、焼結体の組織観察は、鏡面研磨、サーマルエッチン
グ、金コーティングをした表面を走査電子顕微鏡(SE
M)を用いて観察した。
【0038】実施例1 湿式粉砕機として、内径80mm、内容積500cm3
のナイロン製樹脂容器の転動ボールミルを2台用意し、
一方には、Al2 3 :99.9重量%のα−アルミナ
製ボール、他方にはジルコニア(PSZ)製ボール(何
れもボール径:5mmφ)を1000g充填した。これ
に、水酸化アルミニウムと蒸留水とを1(50g):5
(250g)となるように調整充填し、116rpmで
128時間粉砕を行った。この水酸化アルミニウムは、
通常のバイヤー法起源のギプサイトであり、不純物とし
て、SiO2 :0.01重量%、Fe2 3 :0.01
重量%、Na2 O:0.42重量%および平均粒子径:
0.6μmであった。
【0039】粉砕処理後、両者の粉砕物と比較のため粉
砕前の水酸化アルミニウム(ギプサイト)の都合3種の
粉体よりなる試料を熱分析した。その結果を図1のDT
A曲線に示す。図1より明らかな如く、3試料共、約3
00℃に脱水を伴う大きな吸熱ピークが観察される。更
にα−アルミナボールで粉砕を行った試料ではこの吸熱
ピークの直後に発熱ピークが観察される。これは、粉砕
によって結晶質のギプサイトの一部が非品質化し、熱分
析の加熱過程で再びα−アルミナに変化したための発熱
ピークと考えられる。
【0040】一方、各DTA曲線の高温部に見られる発
熱ピークは、遷移アルミナがα−アルミナに遷移するさ
いの発熱によるものであるが、3試料の発熱ピークを比
較すると、ジルコニアボールによる粉砕では、未粉砕の
場合よりわずかに低温側へシフトする程度であるが、α
−アルミナボールを使用した粉砕では、その遷移温度は
大きく低下している。これにより、α−アルミナボール
による粉砕によって、α−アルミナへの遷移温度が低下
する理由は、粉砕操作そのものが原因ではなく、粉砕時
にボールより混入するアルミナの磨耗粉がα−アルミナ
の種の役割を果たしていると考えられる。別途、アルミ
ナ純度の低い(Al2 3 :93.0重量%)ボールを
用い、上記方法と同様な条件で水酸化アルミニウムを粉
砕しこれを試料として熱分析したところ、α化遷移温度
の低下は観察されたが、高純度のアルミナボールを用い
たものに比較しα化遷移温度の低下は少なかった。
【0041】実施例2 実施例1で用いたと同様の湿式粉砕機に、Al2 3
99.9重量%のα−アルミナ製ボールを1000g、
実施例1と同種のギプサイトと蒸留水を1(10g):
5(50g)の割合で充填し、実施例1と同様の回転条
件でギプサイトを粉砕し、一定時間毎に試料粉を抜き出
し、その都度熱分析を行いDTA曲線により、α−アル
ミナへの遷移温度を示す吸熱ピークの位置を比較した。
その結果を、図2のDTA曲線に示す。図中、(%)の
数字は、それぞれの試料のTGによって測定された強熱
減量を示す。アルミナのα化による発熱ピークは、混入
するアルミナボールの磨耗粉量に対応し、粉砕時間の増
加と共に、単調に低温側に移行している。粉砕時間が1
0分と極めて短い場合でもα化に伴うピークは低温側へ
移動し、8時間の粉砕では、未粉砕の場合に比べて20
0℃以上、256時間粉砕では300℃以上低下してい
る。
【0042】実施例3 実施例1で用いたと同様の湿式粉砕機を用い、Al2
3 :99.9重量%のα−アルミナボールを1000
g、実施例1と同様のギプサイトと蒸留水とを1(50
g):5(250g)を充填し、実施例1と同様の回転
条件とし、2つの異なる粉砕時間により2種の粉砕試料
(BおよびC)をつくった。これらの試料の全粉砕物量
に対する磨耗粉混入率はBが0.2重量%以下、Cが
2.2重量%であった。これらの試料(B、C)と、比
較のため未粉砕ギプサイト(A)の合計3種の試料をそ
れぞれに分取し、電気炉中各温度で焼成し、加熱過程に
おけるアルミナへの相変化を粉末X線回析法により調べ
た。その結果を図3の(A)、(B)および(C)のX
線回析図に示す。図から明らかな如く、A試料の未粉砕
ギプサイトでは、加熱によりまずχ−アルミナとなり、
約1000℃でκ−アルミナ、さらに1100℃でκ−
アルミナ相中にα−アルミナ相が現れ、1300℃でほ
ぼα−アルミナ相となる。
【0043】一方、B試料では、800℃までは、未粉
砕試料とほぼ同様の相構成であり、磨耗粉の混入が少な
いため、磨耗粉の起因するα−アルミナの回析ピークは
見られない。900℃の加熱においてα相が出現し、1
000℃ではα相とκ相の混合相となり、1100℃で
κ相は消失しほぼ完全にα−アルミナ単一相となる。更
に磨耗粉の多いC試料では、650℃で加熱した試料に
磨耗粉と思われる少量のα相が見られ、800℃および
900℃でα相の量が増加し、1000℃でα−アルミ
ナ単相となる。この場合、途中でκ相は出現しない。さ
らに磨耗粉混入率を上げた本発明者らの実験によれば
(未記載)α化遷移温度は900℃以下にまで低下し
た。
【0044】実施例4 実施例3における試料(BおよびC)および未粉砕ギプ
サイト(A)の3種の試料について、実施例3のX線回
析の結果から、それぞれがほぼ完全にα−アルミナに遷
移する温度、即ち、A:1300℃、B:1100℃お
よびC:1000℃を設定し、電気炉により、それぞれ
をこれらの温度で焼成した。次いで電気炉で焼成した3
試料のBET比表面積を測定した。更にC試料について
は1300℃まで昇温して焼成し、試料(D)としてB
ET比表面積を測定した。また、この比表面積から形状
計数を6とし比表面積径を計算した。その結果をまとめ
て表1に示す。
【0045】
【表1】 ──────────────────────────────────── 転移温度(℃) BET比表面積 SSAの中心 試料名──────────────── (m2 /g) 粒子径 DTA ルツボ中での焼成温度 (nm) ──────────────────────────────────── A 1340 1300 7.3 210 B 1111 1100 16.4 92 C 1051 1000 21.7 70 D 1051 1300 6.4 240 ────────────────────────────────────
【0046】実施例5 実施例4におけるA、B、CおよびDの4試料と試料E
(市販品α−アルミナ、Al2 3 :99.7重量%、
平均粒度:0.6μm)の5試料について実施例の冒頭
部に述べた方法で各焼結温度における焼結試験を行っ
た。各焼結ピースの密度を測定した結果を表2に示す。
表2中の各数値は、α−アルミナの理論密度に対する相
対密度である。4種の試料の内、A、DおよびEは、本
実施例の範囲の焼結温度範囲においては、十分な密度に
達せず、水を用いたアルキメデス法による密度測定は不
可能であった。一方、BおよびCは、1400℃におい
て、理論密度の96%以上に達しており、Bの磨耗粉混
入率:0.2%以下の微量の混入でも十分に低温で緻密
化しているのが確認できる。特にCは、1350℃です
でに理論密度の96%以上である。
【0047】
【表2】
%TD ─────────────────────────────────── 焼結温度(℃) 試料名 焼成温度 ─────────────────────── (℃) 1300 1350 1400 1450 1500 1550 ─────────────────────────────────── A 1300 70 87 90 B 1100 73 86 96.3 98.5 98.1 99.3 C 1000 88 96.2 98.8 97.5 97.9 D 1300 76 88 E 63 75 77 ───────────────────────────────────
【0048】実施例6 実施例3で作成したB試料の粉体に関し、1350℃、
1400℃、1450℃および1500℃の各温度での
焼結体ピースを作成し、実施例の冒頭部に述べた方法に
より、電子顕微鏡観察(SEM)を行った。これらの焼
結体のSEM像写真を観察すると、何れも緻密な焼結組
織であるが、1350℃および1400℃の低温域で
は、ほぼ球状の結晶粒から構成されており、結晶粒子も
十分に細かい。結晶温度が上昇し1450℃程度になる
と、結晶粒成長が生じるとともに、通常の普通純度アル
ミナの結晶体で観察される方向性を有する板状結晶が見
られるようになり、さらに、1500℃では、異常粒成
長の多い組織となっていた。
【0049】実施例7 X線回折による同定で、それぞれダイアスポアおよびギ
プサイトであることを確認した標本用ダイアスポア鉱石
粉末(中国、遼寧省産)と水酸化アルミニウム粉末(ギ
プサイト、和光純薬製、中心粒径:0.6μm)とを、
重量比で1(1g):1(1g)の割合で混合し、瑪瑙
の乳鉢で乾式により十分に粉砕した。この粉砕物(c)
と、比較のため同様の条件で粉砕した、水酸化アルミニ
ウム粉末のみ(a)およびダイアスポア粉末のみ(b)
の3種類の試料について、熱分析(TG/DTA)をお
こなった。その結果を、図4の(a)、(b)および
(c)に示す。このチャートに見られるように、ギプサ
イト粉末のみの(a)では、1300℃付近に観察され
る発熱ピーク(図中の↓印)が、ダイアスポア粉末を添
加した粉砕物(c)では1150℃付近に観察され、単
に乳鉢粉砕でも150℃程度の遷移温度の低下が観測で
きる。さらに、別途実施した粉砕混合を十分に加えた場
合には、α−アルミナへの遷移温度は1080℃にまで
低下した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1に関するDTA曲線である。
【図2】 実施例2に関するDTA曲線である。
【図3】 実施例3に関するX線回析図である。
【図4】 実施例7に関する粉末の熱分析(TG/DT
A)曲線である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 BET比表面積が10m2 /g以上で、
    平均1次粒子径が3μm以下であるα−アルミナ。
  2. 【請求項2】 アルミニウム水和物粉体に、粒子の一部
    分を水和させたα−アルミナ粉体および/またはダイア
    スポア粉体を、該アルミニウム水和物粉体に対して0.
    01〜100重量%添加した後、1100℃以下の温度
    で焼成してなるBET比表面積が10m2 /g以上で、
    平均1次粒子径が3μm以下であるα−アルミナ。
  3. 【請求項3】 アルミニウム水和物粉体に、粒子の一部
    分を水和させたα−アルミナ粉体および/またはダイア
    スポア粉体を、該アルミニウム水和物粉体に対して0.
    01〜100重量%添加した後、焼成することを特徴と
    するα−アルミナの製造方法。
  4. 【請求項4】 アルミニウム水和物粉体がギプサイト、
    バイヤライト、ベーマイトおよび非晶質アルミナ水和物
    の少なくとも1種である請求項3記載のα−アルミナの
    製造方法。
  5. 【請求項5】 粒子の一部分を水和させたα−アルミナ
    粉体の平均一次粒子径が0.01〜10μmであること
    を特徴とする請求項3記載のα−アルミナの製造方法。
  6. 【請求項6】 ダイアスポア粉体の平均一次粒子径が
    0.01〜50μmであることを特徴とする請求項3記
    載のα−アルミナの製造方法。
  7. 【請求項7】 粒子の一部分を水和させたα−アルミナ
    粉体のアルミナ純度が、Al2 3 で95重量%以上の
    品質である請求項3記載の方法。
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