JPH0987432A - 粘土複合ゴム材料及びその製造方法 - Google Patents

粘土複合ゴム材料及びその製造方法

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JPH0987432A
JPH0987432A JP16394196A JP16394196A JPH0987432A JP H0987432 A JPH0987432 A JP H0987432A JP 16394196 A JP16394196 A JP 16394196A JP 16394196 A JP16394196 A JP 16394196A JP H0987432 A JPH0987432 A JP H0987432A
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Akane Okada
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 極性の低いゴムポリマー中における粘土鉱物
の分散性が高い,粘土複合ゴム材料及びその製造方法を
提供すること。 【解決手段】 第1又は/及び第2粘土複合材料と,ゴ
ム材料とが混練され,且つ上記粘土複合材料の中のゲス
ト分子の少なくとも一が,ゴム材料の分子と架橋結合を
している。第1粘土複合材料100は,有機化された粘
土鉱物7と,分子内の極性基10が粘土鉱物7と水素結
合している第1ゲスト分子1と,極性基を有しない第2
ゲスト分子2とよりなる。第1,第2ゲスト分子1,2
の少なくともその一部は粘土鉱物7の層間に介入してい
る。第2粘土複合材料は,有機化された粘土鉱物と,分
子内の極性基10が粘土鉱物7と水素結合している第3
ゲスト分子とからなり,第3ゲスト分子は少なくともそ
の一部が粘土鉱物の層間に入り込んでいる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,極性の低いゴムポリマー中に粘
土鉱物を分子レベルで分散させた,粘土複合ゴム材料及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】従来より,ゴム材料の機械的特性を改良す
るために,粘土鉱物の添加,混合が検討されている。例
えば,特開平1−198645号公報において,末端又
は側鎖にオニウムイオンを導入したオリゴマーを使用し
て粘土鉱物の有機化を行い,これをゴム材料の中に混合
するという方法が開示されている。
【0003】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の粘
土複合ゴム材料においては,オニウムイオンを導入した
オリゴマーの調製は,必ずしも容易ではなかった。ま
た,粘土層間へオリゴマーを直ちに導入させようとする
ため,粘土層間の膨潤が不十分な場合があった。また,
Giannelisらによれば,極性基のないポリスチ
レンを用いた場合には,層間にはポリスチレン分子が1
層しか入ることができず,層間膨潤にも限界がある
(E.P.Giannelisら,Chem.Mate
r.5,1694−1696(1993))。
【0004】尚,本願の発明者らは,分子内に極性基を
有するオリゴマー又はポリマーを,オニウムイオンによ
り有機化された粘土鉱物の層間に十分に入り込ませる技
術,及び有機化された粘土粘土の層間に極性基を有する
低分子物質を導入した後に極性基を有しないオリゴマー
又はポリマーを粘土層間に導入する技術について,先に
出願している(「粘土複合材料及びその製造方法」平成
7年6月5日出願,「粘土複合材料及びその製造方法,
並びにブレンド材料」平成7年6月30日出願)。しか
し,かかる技術は,プラスチックを主対象としたもので
あり,ゴム材料を対象としたものではない。
【0005】本発明はかかる従来の問題点に鑑み,極性
の低いゴムポリマー中における粘土鉱物の分散性が高
い,粘土複合ゴム材料及びその製造方法を提供しようと
するものである。
【0006】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,炭素数6以上の
有機オニウムイオンがイオン結合することにより有機化
された粘土鉱物と,分子長が上記有機オニウムイオンと
同じかそれよりも小さく,且つその分子内の極性基が上
記粘土鉱物と水素結合している第1ゲスト分子と,分子
長が上記有機オニウムイオンよりも大きく,且つその分
子内に極性基を有しない第2ゲスト分子とよりなり,上
記第1ゲスト分子及び第2ゲスト分子は,少なくともそ
の一部が上記粘土鉱物の層間に入り込んでいる第1粘土
複合材料及び/又は,炭素数6以上の有機オニウムイオ
ンがイオン結合することにより有機化された粘土鉱物
と,分子内に極性基を有し,且つ分子長が上記有機オニ
ウムイオンと同じかそれよりも大きい第3ゲスト分子と
からなり,上記第3ゲスト分子は少なくともその一部が
粘土鉱物の層間に入り込んでおり,上記第3ゲスト分子
の極性基は粘土鉱物と水素結合を形成している第2粘土
複合材料と,ゴム材料とが混練され,且つ上記第2ゲス
ト分子又は第3ゲスト分子の少なくとも一方が,上記ゴ
ム材料の分子と架橋結合していることを特徴とする粘土
複合ゴム材料である。
【0007】本発明において最も注目すべきことは,ゴ
ム材料が,粘土鉱物の層間にゲスト分子を導入させた粘
土複合材料と混練されていること,及び該粘土複合材料
の中のゲスト分子とゴム材料の分子とが架橋結合してい
ることである。
【0008】次に,本発明の粘土複合ゴム材料の作用に
ついて説明する。粘土複合ゴム材料は,上記のごとく有
機化された粘土鉱物の層間にゲスト分子を入り込ませた
各種粘土複合材料のいずれかを,ゴム材料に混練してゲ
スト分子とゴム材料の分子との間に架橋結合を形成した
ものである。そのため,従来粘土鉱物の分散が困難であ
ったゴム分子に対しても粘土鉱物を均一に大きな層間距
離をもって分散させることができる。その理由は以下の
ように考えられる。
【0009】即ち,図1に示すごとく,第1粘土複合材
料100においては,有機オニウムイオン6により有機
化された粘土鉱物7が,空間的に多くのスペースを有す
るため,その層間に一旦は極性の弱いオリゴマー又はポ
リマーを取り込むことができるが,粘土鉱物のシリケー
ト層の極性により直ちに排除される傾向が強かった。し
かし,上記のごとく,第1ゲスト分子1に極性基10を
結合させることにより,極性基10が粘土鉱物7のシリ
ケート層と水素結合を形成して,層間に留まる。このた
め,粘土鉱物7の層間は,疎水化され,極性基を有しな
い第2ゲスト分子2が安定して留まることができる。第
2ゲスト分子2は,有機オニウムイオンよりも分子長が
長いため,層間を著しく膨潤させる。
【0010】また,図2に示すごとく,第2粘土複合材
料200においては,有機オニウムイオン6により有機
化された粘土鉱物7の層間に,極性基30を有する第3
ゲスト分子3を導入して,粘土鉱物7のシリケート層と
水素結合を形成している。そのため,第3ゲスト分子3
は,粘土鉱物7の層間に留まることができる。第3ゲス
ト分子3は,有機オニウムイオン6よりも分子長が長い
ため,層間を著しく膨潤させる。
【0011】上記のごとく,粘土鉱物の層間が十分に膨
潤した第1,第2粘土複合材料の少なくとも一方を,ゴ
ム材料と混練する。すると,ゴム材料中において粘土鉱
物は凝集することなく,分子レベルで均一に分散する。
また,粘土鉱物が均一に分散することにより,ガス等に
対する遮断性が向上する。また,シリケート層近傍のゴ
ム分子の運動が拘束される。そのため,粘土複合ゴム材
料の力学的性質に良好な影響を与える。
【0012】次に,本発明の詳細について説明する。本
発明の粘土複合ゴム材料においては,第1,第2粘土複
合材料の少なくとも一方又は双方が,ゴム材料と混練さ
れている。
【0013】まず,第1粘土複合材料について説明す
る。上記第1粘土複合材料は,有機オニウムイオンによ
り有機化された粘土鉱物と,第1ゲスト分子と,第2ゲ
スト分子とよりなる。
【0014】上記第1粘土複合材料において,上記粘土
鉱物は,炭素数6以上の有機オニウムイオンとイオン結
合して有機化されている。炭素数が6未満の場合には,
有機オニウムイオンの親水性が高まり,第1,第2ゲス
ト分子との相溶性が低下する。上記有機オニウムイオン
としては,例えば,ヘキシルアンモニウムイオン,オク
チルアンモニウムイオン,2−エチルヘキシルアンモニ
ウムイオン,ドデシルアンモニウムイオン,オクタデシ
ルアンモニウムイオン,ジオクチルジメチルアンモニウ
ムイオン,トリオクチルアンモニウムイオン,又はジス
テアリルジメチルアンモニウムイオンを用いることがで
きる。
【0015】また,不飽和有機オニウムイオンとして1
−ヘキセニルアンモニウムイオン,1−ドデセニルアン
モニウムイオン,9−オクタデセニルアンモニウムイオ
ン(オレイルアンモニウムイオン),9,12−オクタ
デカジエニルアンモニウムイオン(リノールアンモニウ
ムイオン),9,12,15−オクタデカトリエニルア
ンモニウムイオン(リノレイルアンモニウムイオン)を
用いることができる。
【0016】これらの有機オニウムイオンのうち,請求
項13に係る溶媒溶解法で粘土複合ゴム材料を製造する
場合には,溶媒に対する膨潤性の点で,2級オニウムイ
オンが特に好ましい。なお,図示する有機オニウムイオ
ンは,いずれも二股状に表記して2級オニウムイオンで
あることを示しているが,2級オニウムイオンに限定す
る趣旨ではない。
【0017】粘土鉱物としては,第1,第2ゲスト分子
との接触面積が大きいものを用いることが好ましい。こ
れにより,粘土鉱物の層間を大きく膨潤させることがで
きる。具体的には,粘土鉱物の陽イオンの交換容量は,
50〜200ミリ等量/100gであることが好まし
い。50ミリ等量/100g未満の場合には,オニウム
イオンの交換が十分に行われず,粘土鉱物の層間を膨潤
させることが困難な場合がある。一方,200ミリ等量
/100gを越える場合には,粘土鉱物の層間の結合力
が強固となり,粘土鉱物の層間を膨潤させることが困難
な場合がある。
【0018】上記粘土鉱物としては,例えば,モンモリ
ロナイト,サポナイト,ヘクトライト,バイデライト,
スティブンサイト,ノントロナイトなどのスメクタイト
系粘土鉱物,バーミキュライト,ハロイサイト,又は膨
潤性マイカがある。天然のものでも,合成されたもので
もよい。
【0019】第1ゲスト分子は,分子内に1つ又は2つ
以上の極性基を有している。極性基は,第1ゲスト分子
の主鎖,側鎖又は末端の少なくともいずれかに結合して
いる。この中,極性基は第1ゲスト分子の末端に結合し
ていることが好ましい。これにより,粘土鉱物の層間を
より大きく膨潤させることができる。
【0020】本発明において,極性基とは,分子内で電
子が局在しており,電荷の偏りが生じたものをいい,完
全に分極したイオンは含まない。よって,オニウムイオ
ンは,上記極性基には含まれない。請求項3の発明のよ
うに,上記第1ゲスト分子及び/又は第3ゲスト分子の
上記極性基は,例えば,水酸基(OH),ハロゲン基
(F,Cl,Br,I),カルボキシル基(COO
H),無水カルボン酸基,チオール基(SH),エポキ
シ基,及びアミノ基のグループから選ばれる1種又は2
種以上である。上記アミノ基は,一級,二級,または三
級のアミン(NH2 ,NH,N)である。
【0021】尚,イミノ基,フォスフォニル基,スルフ
ォニル基等の分極の程度が相対的に強い基は,上記「極
性基」の定義には一応該当するが,これらの基は本発明
においては余り好ましくない。なぜなら,これらの基を
含む第1ゲスト分子は溶媒への溶解性が小さく,また溶
融するための高温安定性に欠けるからである。
【0022】上記第1ゲスト分子の分子長は,有機オニ
ウムイオンと同じかそれよりも小さい。有機オニウムイ
オンの分子長よりも大きい場合には,第1ゲスト分子の
入手が困難となる場合があり,また,極性の低いポリマ
ーの中に相溶化する第1ゲスト分子の種類が限られると
いう問題がある。
【0023】上記第1ゲスト分子は,例えば,直鎖状若
しくは分岐状の構造のオレフィン又はパラフィン,ある
いは,直鎖状若しくは分岐状の構造で且つ主鎖及び/若
しくは側鎖中に芳香環を有するオレフィン又はパラフィ
ンである。即ち,第1ゲスト分子は,例えば,1以上の
極性基を有し,かつ,飽和若しくは不飽和の直鎖状又は
分岐状の構造を有するものである。また,その主鎖及び
/又は側鎖に,芳香環を含むこともある。
【0024】上記の極性基を有する第1ゲスト分子とし
ては,例えば,ラウリルアルコール(炭素数12),ス
テアリルアルコール(炭素数18),ステアリン酸(炭
素数18),又はステアリルクロライド(炭素数18)
を用いることができる。また,両末端にOH,COO
H,Cl,エポキシ基等の極性基を有するポリエチレ
ン,ポリプロピレン,ポリイソプレン,ポリブタジエ
ン,又はこれらの水添物若しくは共重合体でもよい。こ
れらの第1ゲスト分子は,有機オニウムイオンの分子長
と同程度以下となるように選択して用いる。第1ゲスト
分子は,炭素数6以上のものがより好ましい。
【0025】上記第1ゲスト分子は,その混合割合が大
きくなるに連れて,粘土鉱物の層間を広く拡張する傾向
にある。第1ゲスト分子の混合割合は,有機化された粘
土鉱物1重量部に対して,0.1重量部以上であること
が好ましい。0.1重量部未満の場合には,層間の膨潤
が不十分となるおそれがある。
【0026】上記第1ゲスト分子は,その極性基によ
り,粘土鉱物と水素結合を形成している。そして,第1
ゲスト分子は,少なくともその一部が粘土鉱物の層間に
入り込んでいる。第1ゲスト分子の全てが層間に入り込
んでいる必要はない。例えば,請求項6の発明のよう
に,第1粘土複合材料における粘土鉱物の層間には,第
1ゲスト分子全量の中の10重量%以上が入り込んでい
れば,層間は十分に膨潤する。一方,10重量%未満の
場合には,層間の膨潤が不十分となるおそれがある。
【0027】次に,上記第2ゲスト分子は,極性基を有
していない,非極性又は極性の低いオリゴマー又はポリ
マーである。この第2ゲスト分子は,直鎖状又は分岐状
の構造を有しており,飽和又は不飽和であって,また,
芳香環を含む場合もあり,含まない場合もある。そし
て,第2ゲスト分子の分子長は,有機オニウムイオンよ
りも大きい。有機オニウムイオンの分子長と同じか又は
それよりも小さい分子長の場合には,粘土鉱物の層間の
膨潤が不充分となるという問題がある。
【0028】請求項4の発明のように,上記第2ゲスト
分子は,分子量が1000〜500000の,非極性若
しくは極性の低いオリゴマー又はポリマーであることが
好ましい。1000未満の場合には,粘土鉱物の層間の
膨潤が不十分となるおそれがある。一方,500000
を越える場合には,溶媒に難溶となったり,軟化点又は
融点が粘土鉱物の分解点以上となってしまうおそれがあ
る。第2ゲスト分子は,有機オニウムイオンの3〜4倍
程度以上の分子長を有することが,より好ましい。上記
第2ゲスト分子としては,例えば,液状ポリブタジエ
ン,液状ポリイソプレン,液状ブチルゴムを用いること
ができる。
【0029】上記第2ゲスト分子は,その混合割合が大
きくなるに連れて,上記粘土鉱物の層間が膨潤する傾向
にある。第2ゲスト分子の混合割合は,有機化された粘
土鉱物1重量部に対して,0.1重量部以上であること
が好ましい。0.1重量部未満の場合には,粘土鉱物の
層間の膨潤が不十分となるおそれがある。上記第2ゲス
ト分子は,粘土鉱物の層間に,少なくともその一部が入
り込んでいる。第2ゲスト分子のすべてが入り込んでい
る必要はない。
【0030】次に,第2粘土複合材料について説明す
る。上記第2粘土複合材料は,有機オニウムイオンによ
り有機化された粘土鉱物と,第3ゲスト分子とよりな
る。
【0031】上記第2粘土複合材料において,粘土鉱
物,有機オニウムイオンは,上記粘土鉱物,有機オニウ
ムイオンとして列挙したもののいずれかを用いることが
好ましい。また,第3ゲスト分子は,主鎖及び/若しく
は側鎖に1つ又は2つ以上の極性基を有している。該極
性基としては,上記第1ゲスト分子の極性基として列挙
した基のいずれかを用いることが好ましい。第2粘土複
合材料における粘土鉱物,有機オニウムイオン,第3ゲ
スト分子の極性基は,第1粘土複合材料における粘土鉱
物,有機オニウムイオン,第1ゲスト分子の極性基と,
同種又は異種のいずれでもよい。
【0032】上記第3ゲスト分子の分子長は,有機オニ
ウムイオンと同じかそれよりも大きい。有機オニウムイ
オンの分子長よりも小さい場合には,第3ゲスト分子
が,有機オニウムイオンが粘土界面に存在する領域より
も外側へ突出しないため,粘土鉱物が,ゴム材料中に分
散しにくくなる。
【0033】上記第3ゲスト分子は,例えば,直鎖状若
しくは分岐状の構造のオレフィン又はパラフィン,ある
いは,直鎖状若しくは分岐状の構造で且つ主鎖及び/若
しくは側鎖中に芳香環を有するオレフィン又はパラフィ
ンである。即ち,第3ゲスト分子は,例えば,1以上の
極性基を有し,かつ,飽和若しくは不飽和の直鎖状又は
分岐状の構造を有するものである。その主鎖及び/又は
側鎖に芳香環を含むこともある。
【0034】上記第3ゲスト分子としては,例えば,ラ
ウリルアルコール(炭素数12),ステアリルアルコー
ル(炭素数18),ステアリン酸(炭素数18),ステ
アリルクロライド(炭素数18)等が特に好適である。
また,両末端にOH,COOH,Cl,エポキシ基等の
極性基を有するポリエチレン,ポリプロピレン,ポリイ
ソプレン,ポリブタジエン,又はこれらの水添物若しく
は共重合体でもよい。これらの第3ゲスト分子は,有機
オニウムイオンの分子長と同じかそれよりも大きくなる
ように選択して用いる。
【0035】上記第3ゲスト分子は,その混合割合が大
きくなるに連れて,粘土鉱物の層間が広く拡張される傾
向にある。第3ゲスト分子の混合割合は,有機化された
粘土鉱物1重量部に対して,0.5重量部以上であるこ
とが好ましい。0.5重量部未満の場合には,粘土鉱物
の層間の膨潤が不充分となるおそれがある。
【0036】また,請求項5の発明のように,上記第3
ゲスト分子の分子量は,500〜100000であるこ
とが好ましい。500未満の場合には,粘土鉱物の層間
の膨潤が不十分となるおそれがある。一方,10000
0を越える場合には,溶媒に不溶となったり,軟化点又
は融点が粘土鉱物の分解点以上となってしまうおそれが
ある。第3ゲスト分子は,有機オニウムイオンの3〜4
倍程度以上の分子長を有することが,より好ましい。
【0037】上記第3ゲスト分子は,少なくともその一
部が粘土鉱物の層間に入り込んでいる。粘土鉱物の層間
には,第3ゲスト分子のすべてが入り込む必要はない。
例えば,請求項7の発明のように,上記第2粘土複合材
料における粘土鉱物の層間には,第3ゲスト分子全量の
中の10重量%以上が入り込めば,層間は十分に膨張す
る。10重量%未満の場合には,粘土鉱物の層間に膨潤
が不十分となるおそれがある。特に,第3ゲスト分子が
分子量1000〜10000程度のポリマーの場合に
は,第3ゲスト分子全量の10重量%入り込めば,層間
の膨張は十分である。
【0038】次に,請求項8の発明のように,上記ゴム
材料は,天然ゴム,イソプレンゴム,クロロプレンゴ
ム,スチレンゴム,ニトリルゴム,エチレン−プロピレ
ンゴム,ブタジエンゴム,スチレン−ブタジエンゴム,
ブチルゴム,エピクロルヒドリンゴム,アクリルゴム,
ウレタンゴム,フッ素ゴム,及びシリコーンゴムのグル
ープから選ばれる1種又は2種以上を用いることができ
る。
【0039】上記第1,第2粘土複合材料の中に含まれ
る,第2ゲスト分子又は第3ゲスト分子は,ゴム材料の
分子との間に,例えば,「加硫」と呼ばれる硫黄架橋結
合,又はこれに準ずる架橋結合等を形成している。これ
に準ずる架橋結合としては,例えば,過酸化物架橋結合
を挙げることができる。
【0040】次に,請求項2の発明のように,上記第1
粘土複合材料又は第2粘土複合材料の少なくとも一方の
中の有機オニウムイオンは,上記第2ゲスト分子又は上
記第3ゲスト分子の少なくとも一方と,上記ゴム材料の
分子との間に架橋結合を形成していることが好ましい。
これにより,粘土鉱物のシリケート層とゴムとの界面が
非常に強固に結合する。そのため,さらにシリケート層
近傍のゴム分子の運動が拘束され,力学的性質特に硬さ
や弾性率が向上する。
【0041】本発明の粘土複合ゴム材料は,例えば,プ
レス成形法又は押出成形法により成形される。本発明の
粘土複合ゴム材料は,通常のゴムの各種用途に利用する
ことができる。特に,ガス等に対するバリヤ性や,ゴム
材料の力学的性質の改良が要求されている場合に利用す
ると,本発明の効果を最も有効に発揮させることができ
る。
【0042】次に,上記粘土複合ゴム材料を製造する第
1の方法としては,例えば,請求項9の発明のように,
粘土鉱物を,炭素数6以上の有機オニウムイオンに接触
させることにより,上記粘土鉱物と上記有機オニウムイ
オンとの間にイオン結合を形成して上記粘土鉱物を有機
化し,次に,分子長が上記有機オニウムイオンと同じか
それよりも小さく,且つその分子内に極性基を有する第
1ゲスト分子と,分子長が上記有機オニウムイオンより
も大きく,且つその分子内に不飽和基を有しており,極
性基を有しない第2ゲスト分子とを,上記粘土鉱物に接
触させることにより,上記第1ゲスト分子の極性基を上
記粘土鉱物に水素結合を形成させて上記粘土鉱物の表面
を疎水化すると共に,上記粘土鉱物の層間に第2ゲスト
分子の少なくとも一部を入り込ませることにより第1粘
土複合材料を得た後,該第1粘土複合材料をゴム材料と
混練すると共に,上記第2ゲスト分子の不飽和基とゴム
材料の分子との間に架橋結合を形成させることを特徴と
する粘土複合ゴム材料の製造方法がある。
【0043】上記第1の方法において最も注目すべきこ
とは,有機化された粘土鉱物の表面を極性基を有する第
1ゲスト分子により疎水化すること,不飽和基を有する
第2ゲスト分子を粘土鉱物の層間に入り込ませること,
及び該不飽和基とゴム材料の分子との間に架橋結合を形
成させることである。
【0044】次に,上記第1の方法の作用について説明
する。上記の製造方法においては,先ず,図1に示すご
とく,粘土鉱物7に有機オニウムイオン6を結合させる
ことによって,粘土鉱物を有機化している。これによ
り,粘土鉱物7の層間に,ある程度のスペースが発生す
る。
【0045】次に,有機化された粘土鉱物に,第1,第
2ゲスト分子を接触させると,上記の層間のスペース
に,第1,第2ゲスト分子1,2が入り込む。第1ゲス
ト分子1は極性基10を有する。そのため,粘土鉱物7
と水素結合して,粘土鉱物7の層間に留まり,粘土鉱物
7の層間を疎水化する。そのため,粘土鉱物7の層間に
入り込んだ,極性の低い第2ゲスト分子2は,粘土鉱物
の極性により排除されることはなく,層間に安定して留
まることができる。
【0046】また,第2ゲスト分子2は,その分子長が
有機オニウムイオン6よりも大きく,嵩高である。それ
故,第2ゲスト分子2が粘土鉱物7の層間に留まること
により,層間が無制限に膨潤した無限膨潤状態となる。
従って,上記無限膨潤状態にある第1粘土複合材料10
0をゴム材料中に混練することにより,元来極性物質で
ある粘土鉱物を,極性の低いゴム材料中に分子レベルで
均一に分散させた,粘土複合ゴム材料を得ることができ
る。
【0047】また,第2ゲスト分子は,不飽和基を有し
ている。不飽和基は,ゴム材料との混練の際に,ゴム材
料の分子と架橋結合する。そのため,シリケート層近傍
のゴム分子の運動が拘束され,粘土複合ゴム材料の力学
的性質に良好な影響を与える。
【0048】次に,請求項10の発明のように,上記有
機オニウムイオンは不飽和基を有し,上記第1粘土複合
材料をゴム材料と混練するステップにおいて,上記有機
オニウムイオンの不飽和基と,上記第2ゲスト分子の不
飽和基と,上記ゴム材料の中の不飽和基との間に架橋結
合を形成させることが好ましい。上記有機オニウムイオ
ンを使用すると,第2ゲスト分子とゴム材料とを混練,
架硫するときに,有機オニウムイオンの不飽和基と第2
ゲスト分子の不飽和基とゴム材料の分子との間に架橋結
合が形成される。そのため,粘土鉱物のシリケート層と
ゴムの界面とが非常に強固に結合される。それ故,シリ
ケート層近傍のゴム分子がさらに運動が拘束され,力学
的性質時に硬さ弾性率が向上する。
【0049】先ず,上記粘土鉱物を有機オニウムイオン
と接触させる方法としては,例えば,イオン交換法があ
る。このイオン交換法は,例えば,有機オニウムイオン
を含む水溶液中に粘土鉱物を浸漬した後,該粘土鉱物を
水洗して過剰な有機オニウムイオンを除去する方法であ
る。
【0050】次に,上記第1ゲスト分子としては,上述
したものを用いることができる。上記第2ゲスト分子と
しては,不飽和基を有する,液状ポリブタジエン,液状
ポリイソプレン,液状ブチルゴム等を用いることができ
る。第1,第2ゲスト分子を,有機化された粘土鉱物に
接触させるに当たっては,両者を接触させる順序は問わ
ない。即ち,両者を同時に投与して接触させても良く,
いずれか一者を接触させた後に他者を接触させても良
い。いずれの場合においても,結果的に同じ作用・効果
が得られる。
【0051】そして,第1,第2ゲスト分子の接触法と
しては,例えば,請求項13の発明のように,第1,第
2ゲスト分子を溶媒に溶解した状態で,上記有機化され
た粘土鉱物に接触させる方法がある。また,請求項14
の発明のように,第1,第2ゲスト分子を熱により軟化
又は溶融した状態で,上記有機化された粘土鉱物に接触
させる方法がある。
【0052】前者の請求項13の方法によれば,室温で
第1,第2ゲスト分子を粘土鉱物の層間に入り込ませる
ことができる。この方法において使用し得る溶媒として
は,例えば,トルエン,ベンゼン,キシレン,ヘキサ
ン,オクタン等の極性の低い溶媒がある。一方,後者の
請求項14の方法において,第1,第2ゲスト分子を軟
化又は溶融させるためには,第1,第2ゲスト分子を軟
化温度又は溶融温度と同じか又はそれよりも高い温度に
加熱する。この加熱は,第1,第2ゲスト分子及び粘土
鉱物が分解せず,安定に存在する程度の温度において行
う。例えば,加熱温度は,250℃以下であることが好
ましい。250℃を越える場合には,有機化された粘土
鉱物が分解するおそれがある。
【0053】上記第1粘土複合材料とゴム材料との混練
方法は,ゴムを混練する一般的な方法を用いることがで
きる。特に,100℃以下にしてゴムロールで混練する
方法が好ましい。100℃を越える場合には,混練中に
架橋反応が進行してしまうおそれがあるからである。
【0054】第1粘土複合材料とゴム材料とを混練する
際には,両者間に「加硫」と呼ばれる硫黄架橋結合,又
はこれに準ずる架橋結合を形成させる必要がある。その
ためには,第1粘土複合材料である場合にはその第2ゲ
スト分子が,不飽和基を含んだものである必要がある。
不飽和基とは,炭素間に二重結合又は三重結合を形成し
た基をいう。上記不飽和基を有する第2ゲスト分子とし
ては,例えば,液状ポリブタジエン,液状ポリイソプレ
ン,液状ブチルゴムがある。混練の際には,例えば,硫
黄等の加硫剤,加硫促進剤,過酸化物等の架橋剤,カー
ボン等の充填剤を添加することが好ましい。
【0055】次に,上記粘土複合ゴム材料を製造する第
2の方法としては,例えば,請求項11の発明のよう
に,粘土鉱物を,炭素数6以上の有機オニウムイオンに
接触させることにより,上記粘土鉱物と上記有機オニウ
ムイオンとの間にイオン結合を形成して上記粘土鉱物を
有機化し,次に,上記粘土鉱物を,分子内に極性基と不
飽和基とを有し,且つ分子長が上記有機オニウムイオン
と同じかそれよりも大きい第3ゲスト分子に接触させる
ことにより,上記粘土鉱物の層間に,上記第3ゲスト分
子の少なくとも一部を入り込ませて,粘土鉱物との間に
水素結合を形成して第2粘土複合材料を得た後,該第2
粘土複合材料をゴム材料と混練すると共に,上記第3ゲ
スト分子の不飽和基とゴム材料の分子との間に架橋結合
を形成させることを特徴とする粘土複合ゴム材料の製造
方法がある。
【0056】上記第2の方法において最も注目すべきこ
とは,有機化された粘土鉱物の層間に,極性基と不飽和
基とを有する第3ゲスト分子を入り込ませること,該不
飽和基とゴム材料の分子との間に架橋結合を形成させる
ことである。
【0057】第2の方法は,第3ゲスト分子を用いてい
る点が,第1,第2ゲスト分子を用いている上述の第1
の方法と異なる。第3ゲスト分子は,極性基と不飽和基
とを有しており,その分子長は有機オニウムイオンと同
じか又はそれよりも長い。かかる第3ゲスト分子として
は,例えば,両末端に−OH基を有するポリブタジエ
ン,両末端に−OH基を有するポリイソプレン等を用い
ることができる。その他は,上記第1の方法と同様であ
る。
【0058】次に,上記第2の方法の作用について説明
する。上記の方法においては,まず,図2に示すごと
く,粘土鉱物7に有機オニウムイオン6を結合させるこ
とにより,粘土鉱物7の層間にある程度のスペースが発
生する。次に,有機化された上記粘土鉱物7に,極性基
30を有する第3ゲスト分子3を接触させる。すると,
第3ゲスト分子3は,粘土鉱物7の層間のスペースに入
り込み,その極性基30によって粘土鉱物7のシリケー
ト層と水素結合する。これにより,第3ゲスト分子3
は,粘土鉱物7の表面の極性によって排除されることな
く,層間に留まる。このため,上記の第1の方法と同様
に,粘土鉱物7の層間は,更に膨潤して,無限膨潤状態
となる。従って,この無限膨潤状態にある第2粘土複合
材料200をゴム材料中に混練することにより,元来極
性物質である粘土鉱物を,ゴム材料中で分子レベルで均
一に分散させることができる。
【0059】また,第3ゲスト分子は,不飽和基を有し
ている。そのため,この不飽和基がゴム材料の分子と架
橋結合することによって,上記と同様に,粘土複合ゴム
材料の力学的性質に良好な影響を与える。
【0060】次に,請求項12の発明のように,上記有
機オニウムイオンは不飽和基を有し,上記第2粘土複合
材料をゴム材料と混練するステップにおいて,上記有機
オニウムイオンの不飽和基と,上記第3ゲスト分子の不
飽和基と,上記ゴム材料の不飽和基との間に架橋結合を
形成させることが好ましい。有機オニウムイオンを使用
すると,有機オニウムイオンの不飽和基と第3ゲスト分
子とゴム材料の分子との間に架橋結合を形成し,上記と
同様に,粘土複合ゴム材料の力学的性質に良好な影響を
与える。
【0061】また,上記第1粘土複合材料及び第2粘土
複合材料の両方を,ゴム材料に混練して第2,第3ゲス
ト分子とゴム材料の分子との間に架橋結合を形成させる
こともできる。この場合にも,上記と同様の効果を得る
ことができる。
【0062】また,上述したように,上記第3ゲスト分
子を有機化された粘土鉱物に接触させる方法としては,
請求項13の発明のように,上記第3ゲスト分子を溶媒
に溶解した状態で有機化された粘土鉱物に接触させる方
法がある。また,請求項14の発明のように,第3ゲス
ト分子を熱により軟化又は溶融した状態で,上記有機化
された粘土鉱物に接触させる方法がある。
【0063】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例に係る粘土複合ゴム材料について例
示説明する。本例の粘土複合ゴム材料は,第1粘土複合
材料とゴム材料とが混練され,かつ,上記第1粘土複合
材料中の第2ゲスト分子が,ゴム材料の分子と架橋結合
をしている。
【0064】上記粘土複合材料は,図1に示すごとく,
炭素数6以上の有機オニウムイオン6で有機化された粘
土鉱物7と,分子長が上記有機オニウムイオンと同じか
それよりも小さく,且つその分子内の極性基10が粘土
鉱物7と水素結合している第1ゲスト分子1と,分子長
が上記有機オニウムイオンよりも大きく,且つその分子
内に極性基を有しない第2ゲスト分子2とよりなる。第
1ゲスト分子1及び第2ゲスト分子2は,少なくともそ
の一部が粘土鉱物7の層間に入り込んでいる。
【0065】粘土鉱物は,ナトリウム型モンモリロナイ
ト(山形県産,イオン交換容量120meq/100
g)である。有機オニウムイオンは,ジステアリルジメ
チルアンモニウムイオン(以下,DSDMという。)で
あり,その炭素数は38である。第1ゲスト分子はステ
アリン酸であり,その炭素数は18である。第2ゲスト
分子は,液状ブチルゴム(ハードマン社製,商品名カレ
ン800)であり,その分子量は約5000である。
【0066】次に,上記粘土複合ゴム材料の製造方法に
ついて説明する。まず,モンモリロナイト20.0gを
80℃の水2000mlに分散させた。次に,ジステア
リルジメチルアンモニウムクロライド21.0gを80
℃の水1500mlに溶解した。上記の分散液と溶解液
とを一気に混合した。その沈澱物を80℃の水で2回洗
浄して,DSDMで有機化されたモンモリロナイトを得
た。これを,以下,DSDM−モンモリロナイトとい
う。
【0067】灼残法により求めたDSDM−モンモリロ
ナイト中の無機含量は,54.2重量%であった。X線
回折法により,DSDM−モンモリロナイトの層間距離
を測定して,膨潤挙動を観察した。DSDM−モンモリ
ロナイトの層間距離は,32.8Åであった。
【0068】次に,溶媒としてのトルエン20gの中
に,上記DSDM−モンモリロナイト1.0g,ステア
リン酸0.5g,及び液状ブチルゴム(ハードマン社
製,商品名カレン800)1.0gを添加し,6時間混
合した。次に,減圧下においてトルエンを蒸発させた。
これにより,第1粘土複合材料を得た。
【0069】X線回折法により粘土複合材料におけるモ
ンモリロナイトの層間距離を測定したところ,54.8
Åであった。このことから,ステアリン酸と液状ブチル
ゴムとを添加することにより,無添加の場合に比べて,
モンモリロナイトの層間距離が拡大し,膨潤することが
わかる。
【0070】次に,上記第1粘土複合材料とゴム材料と
を,ASTM D 3182に準拠し,ロールで混練し
た。上記ゴム材料は,ブチルゴム(日本合成ゴムBut
yl268)を用いた。粘土複合ゴム材料の配合割合
は,ゴム材料100重量部に対し,第1粘土複合材料2
0重量部(内,粘土鉱物5重量部),カーボン(旭カー
ボン#70)20重量部,亜鉛華1重量部,イオウ1.
75重量部,加硫促進剤1重量部である。
【0071】次に,均一に混練した後,150℃,40
分間加硫で厚み2mmのシートを成形した。シートから
ダンベル3号の試験片を切りだし,引っ張り試験を行っ
た。その結果,18.0MPaの引っ張り強さであっ
た。また,厚み0.5mmのシートも同様に成形し,窒
素でのガス透過性を評価した。その結果,ガス透過率係
数は1.9×10-11 cm3 ・cm・cm-2・sec-1
・cmHg-1であった。
【0072】実施形態例2 本例においては,粘土複合ゴム材料の配合割合を変化さ
せて,シートを成形し(試料1〜16),その力学的性
質を評価した。粘土複合ゴム材料は,表1に示すごと
く,第2粘土複合材料を用いた。第2粘土複合材料は,
有機化された粘土鉱物と第3ゲスト分子とよりなる。有
機化された粘土鉱物としては,DSDM−モンモリロナ
イト(DSDM−Mtと表示する。)を用いた。DSD
M−モンモリロナイトにおいて,DSDMとモンモリロ
ナイトとの重量比は,常に同じとした。第3ゲスト分子
としては,両末端に−OH基を有する液状ポリブタジエ
ン(日本曹達(株) 商品名G2000)(液状ゴムと
表示する。)を用いた。ゴム材料としては,ブチルゴム
(日本合成ゴムButyl 268)を用いた。尚,比
較のために,有機化されていない粘土鉱物として,未処
理モンモリロナイト(Na−Mtと表示する。)を用い
た。
【0073】粘土複合ゴム材料の成形シートの力学的性
質は,ガス透過率係数,貯蔵弾性率,引張り強さ,伸
び,引張り応力により評価した。貯蔵弾性率は,粘弾性
スペクトロメータにより測定した。引張り応力は,引張
り試験により測定した。
【0074】上記力学的特性の測定結果を表1に示し
た。尚,同表中,DSDM−Mtの組成比の数値欄中,
( )内の数値はモンモリロナイトの重量比を,( )
左隣の数値はDSDM−Mtの重量比を,それぞれ重量
部にて示すものである。表1の数値欄中,「−」,
「×」は,測定不能であることを示す。
【0075】表1に示した結果より,まず,モンモリロ
ナイトの有機化の有無について考察する。有機化された
モンモリロナイト(DSDM−Mt)を用いた試料9
と,有機化されていないモンモリロナイト(Na−M
t)を用いた試料12とを比較すると,試料9の方が,
貯蔵弾性率及びガス遮断性に優れていた。このことか
ら,モンモリロナイトを有機化した方が優れた力学的特
性が得られることがわかる。
【0076】その理由は,モンモリロナイトを有機化す
ると,モンモリロナイトの層間に液状ブチルゴムが入り
込み,層間が膨潤して,モンモリロナイトがゴム材料中
において分子レベルで均一に分散する。これにより,モ
ンモリロナイトがゴム材料の分子運動を拘束して,粘土
複合ゴム材料の貯蔵弾性率及びガス遮断性等の力学的特
性に良影響を与えることとなったものと考えられる。
【0077】一方,モンモリロナイトを有機化しない場
合には,その層間に液状ブチルゴムが入り込むことがで
きず,層間は膨潤しない。そのため,モンモリロナイト
がゴム材料中に均一に分散しない。そのため,ゴム材料
の分子運動は拘束を受けにくい状態となる。このため,
粘土複合ゴム材料の力学的特性は改良されなかったもの
と考えられる。
【0078】次に,粘土複合ゴム材料の貯蔵弾性率につ
いて考察する。試料5,6,7より,モンモリロナイト
含量を5,10,15重量部と増加させると,貯蔵弾性
率が著しく向上することがわかる。その理由は,有機化
されたモンモリロナイトの層間に液状ブチルゴムが多く
入り込むほど,層間が大きく膨潤して,モンモリロナイ
トがゴム材料の中に均一に分散しやすい状態となる。そ
して,モンモリロナイトが均一に分散することによっ
て,貯蔵弾性率が高くなったものと考えられる。また,
試料9,10はいずれもカーボンが0であるが,この場
合にも,モンモリロナイトの含量が高い試料10の方が
貯蔵弾性率が向上した。
【0079】次に,成形シートのガス遮断性について考
察する。試料1は,カーボン量が多くモンモリロナイト
が0である。一方,試料9,10は,カーボン量が少な
くモンモリロナイト量が多い。これらを比較すると,モ
ンモリロナイトの多い試料9,10の方がガス透過性が
60〜70%低減した。このことから,モンモリロナイ
トの含量が多いほど,ガス遮断性が高くなることがわか
る。
【0080】
【表1】
【0081】実施形態例3 本例においては,粘土複合ゴム材料の配合割合を変化さ
せて,シートを成形し(試料21〜26),その力学的
性質を評価した。粘土複合ゴム材料は,第2粘土複合材
料とゴム材料とを混練したものである。粘土鉱物として
はナトリウム型モンモリロナイト(山形県産,イオン交
換容量120meq/100g)を用いた。有機オニウ
ムイオンとしては,不飽和基を分子内に持つオレイルア
ンモニウムイオンを用いた。第3ゲスト分子としては水
酸基を持つポリイソプレン(クラレ製:LIR506)
を用いた。
【0082】次に,上記粘土複合材料の製造方法につい
て説明する。まず,モンモリロナイト20.0gを80
℃の水2000mlに分散させた。次に,オレイルアミ
ンの塩酸塩8.8gを80℃の水1500mlに溶解し
た。この両方の水溶液を一気に混合した。その沈澱物を
80℃の水で2回洗浄し,オレイルアンモニウムイオン
で有機化したモンモリロナイトを得た。これを,OL−
モンモリロナイトという。灼残法により求めたOL−モ
ンモリロナイト中の無機含量は,69.4重量%であっ
た。X線回折法により,モンモリロナイトの層間距離を
測定したところ,OL−モンモリロナイトの層間距離
は,22.5Åであった。
【0083】ポリイソプレン100gに対し,上記OL
−モンモリロナイトをそれぞれ70,140,210g
混合し,80℃で4時間混合し,3種の第2粘土複合材
料を得た。X線回折法により粘土複合材料におけるモン
モリロナイトの層間距離を測定したところ,70.0Å
であった。ここへ,硫黄3.0g,亜鉛華5.0g,ス
テアリン酸3.0g,加硫促進剤(大内新興化学工業
(株)製ノクセラーMSA−G)1.5gを添加して混
練した。
【0084】これらの混練物に表2に示す組成でブチル
ゴム及びカーボンを混練し,シートを成形した(試料2
1〜26)。また,比較のために,第2粘土複合材料を
添加しないでシートに成形したものを作製し,これらを
試料21〜23とした。上記試料21〜26の力学的特
質を実施形態例2と同様に測定した。測定結果を表2に
示した。
【0085】上記力学的特性の測定結果を表2に示し
た。尚,同表中,OL−モンモリロナイトの組成比の数
値欄中,( )内の数値はモンモリロナイトの重量比
を,()左隣の数値はOL−モンモリロナイトの重量比
を,それぞれ重量部にて示すものである。表2の数値欄
中,「−」,「×」は,測定不能であることを示す。
【0086】同表より,OL−モンモリロナイトを用い
た試料24〜26は,OL−モンモリロナイトを用いて
いない試料22とを比較すると,試料24〜26の方
が,優れた力学的特性が得られることがわかる。また,
本例の試料24〜26は,前述の実施形態例2における
試料5〜7と比較して,貯蔵弾性率,引張り強さ,伸び
及び引張り応力が高かった。また,ガス遮断性能も高か
った。
【0087】この理由は,以下のように推定される。即
ち,第3ゲスト分子であるポリイソプレン,及び有機オ
ニウムイオンであるオレイルアンモニウムイオンは,い
ずれも分子内に不飽和基を持つ。そのため,両者を混
練,架硫するときに,同時に有機オニウムイオンにも架
橋結合が形成される。それ故,モンモリロナイトのシリ
ケート層とブチルゴムとの界面が非常に強固に結合され
る。故に,シリケート層近傍のゴム分子の運動が拘束さ
れ,力学的性質,特に硬さや弾性率が向上すると考えら
れる。
【0088】
【表2】
【0089】
【発明の効果】以上のごとく,本発明によれば,極性の
低いゴムポリマー中における粘土鉱物の分散性が高く,
且つ力学的特性に優れた,粘土複合ゴム材料及びその製
造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における,第1粘土複合材料の説明図。
【図2】本発明における,第2粘土複合材料の説明図。
【符号の説明】 1...第1ゲスト分子, 10,30...極性基, 100...第1粘土複合材料, 2...第2ゲスト分子, 200...第2粘土複合材料, 3...第3ゲスト分子, 6...有機オニウムイオン, 7...粘土鉱物,

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素数6以上の有機オニウムイオンがイ
    オン結合することにより有機化された粘土鉱物と,分子
    長が上記有機オニウムイオンと同じかそれよりも小さ
    く,且つその分子内の極性基が上記粘土鉱物と水素結合
    している第1ゲスト分子と,分子長が上記有機オニウム
    イオンよりも大きく,且つその分子内に極性基を有しな
    い第2ゲスト分子とよりなり,上記第1ゲスト分子及び
    第2ゲスト分子は,少なくともその一部が上記粘土鉱物
    の層間に入り込んでいる第1粘土複合材料及び/又は,
    炭素数6以上の有機オニウムイオンがイオン結合するこ
    とにより有機化された粘土鉱物と,分子内に極性基を有
    し,且つ分子長が上記有機オニウムイオンと同じかそれ
    よりも大きい第3ゲスト分子とからなり,上記第3ゲス
    ト分子は少なくともその一部が粘土鉱物の層間に入り込
    んでおり,上記第3ゲスト分子の極性基は粘土鉱物と水
    素結合を形成している第2粘土複合材料と,ゴム材料と
    が混練され,且つ上記第2ゲスト分子又は第3ゲスト分
    子の少なくとも一方が,上記ゴム材料の分子と架橋結合
    していることを特徴とする粘土複合ゴム材料。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記第1粘土複合材
    料又は第2粘土複合材料の少なくとも一方の中の有機オ
    ニウムイオンは,上記第2ゲスト分子又は上記第3ゲス
    ト分子の少なくとも一方と,上記ゴム材料の分子との間
    に架橋結合を形成していることを特徴とする粘土複合ゴ
    ム材料。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記第1ゲス
    ト分子及び/又は第3ゲスト分子の極性基は,水酸基,
    ハロゲン基,カルボキシル基,無水カルボン酸基,チオ
    ール基,エポキシ基,及びアミノ基のグループから選ば
    れる1種又は2種以上であることを特徴とする粘土複合
    ゴム材料。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項において,
    上記第2ゲスト分子は,分子量が1000〜50000
    0の非極性のオリゴマー又はポリマーであることを特徴
    とする粘土複合ゴム材料。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一項において,
    上記第3ゲスト分子は,分子量が500〜100000
    の非極性のオリゴマー又はポリマーであることを特徴と
    する粘土複合ゴム材料。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項において,
    上記第1粘土複合材料における粘土鉱物の層間には,上
    記第1ゲスト分子全量の中の10重量%以上が入り込ん
    でいることを特徴とする粘土複合ゴム材料。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか一項において,
    上記第2粘土複合材料における粘土鉱物の層間には,上
    記第3ゲスト分子全量の中の10重量%以上が入り込ん
    でいることを特徴とする粘土複合ゴム材料。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか一項において,
    上記ゴム材料は,天然ゴム,イソプレンゴム,クロロプ
    レンゴム,スチレンゴム,ニトリルゴム,エチレン−プ
    ロピレンゴム,ブタジエンゴム,スチレン−ブタジエン
    ゴム,ブチルゴム,エピクロルヒドリンゴム,アクリル
    ゴム,ウレタンゴム,フッ素ゴム,及びシリコーンゴム
    のグループから選ばれる1種又は2種以上であることを
    特徴とする粘土複合ゴム材料。
  9. 【請求項9】 粘土鉱物を,炭素数6以上の有機オニウ
    ムイオンに接触させることにより,上記粘土鉱物と上記
    有機オニウムイオンとの間にイオン結合を形成して上記
    粘土鉱物を有機化し,次に,分子長が上記有機オニウム
    イオンと同じかそれよりも小さく,且つその分子内に極
    性基を有する第1ゲスト分子と,分子長が上記有機オニ
    ウムイオンよりも大きく,且つその分子内に不飽和基を
    有しており,極性基を有しない第2ゲスト分子とを,上
    記粘土鉱物に接触させることにより,上記第1ゲスト分
    子の極性基を上記粘土鉱物に水素結合を形成させて上記
    粘土鉱物の表面を疎水化すると共に,上記粘土鉱物の層
    間に第2ゲスト分子の少なくとも一部を入り込ませるこ
    とにより第1粘土複合材料を得た後,該第1粘土複合材
    料をゴム材料と混練すると共に,上記第2ゲスト分子の
    不飽和基とゴム材料の分子との間に架橋結合を形成させ
    ることを特徴とする粘土複合ゴム材料の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項9において,上記有機オニウム
    イオンは不飽和基を有し,上記第1粘土複合材料をゴム
    材料と混練するステップにおいて,上記有機オニウムイ
    オンの不飽和基と,上記第2ゲスト分子の不飽和基と,
    上記ゴム材料の中の不飽和基との間に架橋結合を形成さ
    せることを特徴とする粘土複合ゴム材料の製造方法。
  11. 【請求項11】 粘土鉱物を,炭素数6以上の有機オニ
    ウムイオンに接触させることにより,上記粘土鉱物と上
    記有機オニウムイオンとの間にイオン結合を形成して上
    記粘土鉱物を有機化し,次に,上記粘土鉱物を,分子内
    に極性基と不飽和基とを有し,且つ分子長が上記有機オ
    ニウムイオンと同じかそれよりも大きい第3ゲスト分子
    に接触させることにより,上記粘土鉱物の層間に,上記
    第3ゲスト分子の少なくとも一部を入り込ませて,粘土
    鉱物との間に水素結合を形成して第2粘土複合材料を得
    た後,該第2粘土複合材料をゴム材料と混練すると共
    に,上記第3ゲスト分子の不飽和基とゴム材料の分子と
    の間に架橋結合を形成させることを特徴とする粘土複合
    ゴム材料の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項11において,上記有機オニウ
    ムイオンは不飽和基を有し,上記第2粘土複合材料をゴ
    ム材料と混練するステップにおいて,上記有機オニウム
    イオンの不飽和基と,上記第3ゲスト分子の不飽和基
    と,上記ゴム材料の中の不飽和基との間に架橋結合を形
    成させることを特徴とする粘土複合ゴム材料の製造方
    法。
  13. 【請求項13】 請求項9〜12のいずれか一項におい
    て,上記第1ゲスト分子及び/若しくは第2ゲスト分
    子,又は第3ゲスト分子は,溶媒に溶解した状態で,上
    記有機化された粘土鉱物に接触させることを特徴とする
    粘土複合ゴム材料の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項9〜12のいずれか一項におい
    て,上記第1ゲスト分子及び/若しくは第2ゲスト分
    子,又は第3ゲスト分子は,熱により軟化又は溶融した
    状態で,上記有機化された粘土鉱物に接触させることを
    特徴とする粘土複合ゴム材料の製造方法。
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