JPH0979753A - 加熱炉の温度制御方法 - Google Patents

加熱炉の温度制御方法

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JPH0979753A
JPH0979753A JP23555695A JP23555695A JPH0979753A JP H0979753 A JPH0979753 A JP H0979753A JP 23555695 A JP23555695 A JP 23555695A JP 23555695 A JP23555695 A JP 23555695A JP H0979753 A JPH0979753 A JP H0979753A
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昌宏 塩瀬
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生産効率を向上させる加熱炉の温度制御方法
を提供する。 【解決手段】 ワーク6を加熱するヒータ10は、多点
温度測定部32、温度制御部34および多点ヒータ出力
部36により温度制御される。多点温度測定部32は、
複数の熱電対から構成されており、各ヒータ10の発熱
温度を測定するとともにヒータ10の発熱温度に伴い変
動する電気信号を温度制御部34に出力する。温度制御
部34は、温度分布監視部34a、昇温カーブ監視部3
4b、収束点演算部34c、切替点演算部34dおよび
切替点検出部34eにより構成され、収束点演算部34
cにより演算された収束点に向かって各ヒータ10の発
熱温度が収束するようにヒータ10に電力を供給する多
点ヒータ出力部36を制御する。各ヒータ10の発熱温
度が収束点に達した後、各ヒータ10の発熱温度が所定
温度に達するように温度制御部34等により各ヒータ1
0を温度制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の発熱体を有
する加熱炉の温度制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、真空ろう付は、10-5Torr程度
の真空中でろう材がクラッドされた例えばアルミニウム
からなる芯材(以下、「ワーク」という。)をろう付終
了温度まで加熱することにより、ろう材を溶かし芯材を
接合する。このろう材は固相点556℃で溶け始め、液
相点である570℃に達したとき全て溶解する。そし
て、ろう付終了温度である595℃に達したとき、ろう
付を完了する。
【0003】ところで、ろう付部分の品質を確保するた
めには、加熱された芯材上に均一にろう材が流れること
が必要になるため、ろう材の固相点に達した以降の溶融
工程においては、ワークの均熱性を良好に例えば±3℃
に確保することがポイントになる。ここで、均熱性と
は、ワークの各部位の温度または各ワークごとの温度の
ばらつきの幅の大小をいい、ばらつきの幅が小さいほど
均熱性が良い。
【0004】そして、この種の真空ろう付は、一度に多
数のワークを炉内に投入し、一室で全てのろう付プロセ
スを完了するいわゆるバッチ炉により行われ、このバッ
チ炉の例として、特開平1−228669号公報に開示
されるアルミ製品の真空ろう付方法に用いられるものが
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
たバッチ炉によると、ワークを投入するために設けられ
た入口の扉を開閉する度に加熱された炉内に外気が侵入
する。すると、炉内の温度が低下することになり、外気
の侵入状態によって例えば上下方向に長い大型ヒータで
はヒータの上方と下方とにより温度差を生ずるため、再
度昇温させるヒータの発熱温度がヒータの部位により異
なることになる。そのため、炉内に投入された多数のワ
ークに対して均一な加熱温度を確保することが困難にな
り、各ワークごとの均熱性が損なわれる。
【0006】そこで、図10に示すように、炉内にワー
クを投入した後、各ヒータの発熱温度を徐々に昇温さ
せ、発熱温度が所定温度(図10では560℃程度)に
達したとき、ヒータの昇温を一時中断する。そして、全
てのワークの温度がろう材の固相点556℃付近に近づ
くのを待つという「温度追従待ち」を行った後、ろう付
終了温度までヒータを徐々に加熱するという温度制御方
法を採っている。そのため、この「温度追従待ち」を行
うことにより加熱時間の増加を招き、ろう付工程の生産
効率を低下させるという問題を生じている。
【0007】そして、特開平1−228669号公報に
開示されるアルミ製品の真空ろう付方法においても、ア
ルミ部材のろう付にバッチ炉を用いることから、同様な
問題を生ずる。本発明の目的は、生産効率を向上させる
加熱炉の温度制御方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段・作用・発明の効果】前記
の課題を解決するための本発明による請求項1記載の加
熱炉の温度制御方法は、複数の発熱体を有する加熱炉の
温度制御方法であって、前記加熱炉内に被発熱体を搬入
した後、前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出し、
前記複数の発熱体の中で最も温度の高い一部発熱体の温
度に向かって残部発熱体の温度が収束するようにこの残
部発熱体の温度を制御し、前記残部発熱体の温度が前記
一部発熱体の温度に収束した後、前記複数の発熱体の全
てを所定温度に達するように前記複数の発熱体の温度を
制御できることを特徴とする。
【0009】これにより、加熱炉内に被発熱体を搬入す
ることにより複数の発熱体の温度がばらついたとして
も、複数の発熱体の中で最も温度の高い一部発熱体の温
度に向かって残部発熱体の温度が収束するようにこの残
部発熱体の温度を制御するため、複数の発熱体の温度の
ばらつきを短時間に収束させることができる。したがっ
て、従来の温度制御で行っていた「温度追従待ち」をす
ることなくして被発熱体を所定温度に加熱できるため加
熱時間が短縮され、生産効率を向上させる効果がある。
【0010】本発明による請求項2記載の加熱炉の温度
制御方法は、請求項1記載の加熱炉の温度制御方法にお
いて、前記一部発熱体は、前記残部発熱体の温度が収束
する前に昇熱または降熱制御されることを特徴とする。
これにより、一部発熱体が所定の目標温度に向かって昇
熱または降熱するように制御しながら、この所定の目標
温度である一部発熱体の温度に向かって残部発熱体を温
度制御することができる。したがって、複数の発熱体の
温度を所定の目標温度に向かってさらに短時間に収束さ
せることができるため、生産効率をより向上させる効果
がある。
【0011】本発明による請求項3記載の加熱炉の温度
制御方法は、請求項1または2記載の加熱炉の温度制御
方法において、前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体
の温度に収束したとき、前記被発熱体の温度は、この収
束温度より300℃以上低いことを特徴とする。これに
より、複数の発熱体の収束温度と被発熱体の温度との差
が300℃以上になることから、請求項1または2記載
の加熱炉の温度制御方法により所定の目標温度に向かっ
て被発熱体の温度を短時間に昇温させることができる。
したがって、生産効率をさらに向上させる効果がある。
【0012】本発明による請求項4記載の真空ろう付炉
は、炉体と、前記炉体内に収容される複数の発熱体と、
前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出する温度セン
サ群と、前記温度センサ群の検出値により前記複数の発
熱体の温度をそれぞれ制御する温度制御手段とを備える
真空ろう付炉であって、請求項1〜3のいずれか一項に
記載の加熱炉の温度制御方法により前記温度制御手段を
制御することを特徴とする。
【0013】これにより、請求項1〜3のいずれか一項
に記載の加熱炉の温度制御方法により得られた効果を備
えた真空ろう付炉が実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基
づいて説明する。本発明の加熱炉の温度制御方法を適用
した真空ろう付炉の一実施例を図1〜図9に示す。図2
に示すように、真空ろう付炉は、後述する構成からなる
炉体1、多点温度測定部32、温度制御部34および多
点ヒータ出力部36から構成されている。そして、ワー
ク6を加熱するヒータ10が多点温度測定部32、温度
制御部34および多点ヒータ出力部36により温度制御
されている。
【0015】ここで、ワーク6、ヒータ10、多点温度
測定部32、温度制御部34は、特許請求の範囲に記載
の「被発熱体」、「発熱体」、「温度センサ群」、「温
度制御手段」にそれぞれ相当する。図3および図4に示
すように、真空ろう付炉は、水平方向ほぼ円筒状に形成
された炉体1と、この炉体1内の空間と連通可能に設け
られた真空排気系統の排気口2と、炉体1内上部に設け
られヒータモジュールが吊り下げられているレール3
と、このヒータモジュールにより形成される加熱室4
と、この加熱室4の天井に吊り下げられるキャリアレー
ル5と、このキャリアレール5に複数段吊り下げられワ
ーク6を積層可能なキャリア7等から構成されている。
【0016】加熱室4は、例えば図1で左右方向に二つ
に独立して形成されており、各加熱室4の天井と底面と
を除く側面の壁8の内部には、熱反射板9およびヒータ
10が一対となるように複数組配設されている。そし
て、図5に示すように、ヒータ10とヒータ10との間
にワーク6が位置可能に所定間隔で複数のヒータ10が
配設されており、例えば自動車のラジエータがワーク6
に相当する。
【0017】また、図4に示すように、壁8には、その
全面を覆うように複数のヒータ10が配設されており、
壁8の図4で右方向端部には前扉22が位置し、左方向
端部には後扉23が位置している。そして、この前扉2
2は加熱室4にワーク6を搬入または搬出するときに操
作され、後扉23は保守点検時等に操作される。また前
扉22および後扉23の各内面にも熱反射板9およびヒ
ータ10が一対となるように配設されている。
【0018】さらに、図2に示すように、ヒータ10の
温度を検出する熱電対11は、ヒータ10とワーク6と
の間に配設されており、その数はヒータ10の数と対応
している。これにより、各ヒータ10の温度を個々に検
出することができる。そして、後述する多点温度測定部
32は、この複数の熱電対11により構成されている。
【0019】次に、ヒータ10の発熱温度を制御する温
度制御部34等を図1に基づいて説明する。多点温度測
定部32は、前述したように複数の熱電対11から構成
されており、各ヒータ10の発熱温度を測定する。そし
て、測定したヒータ10の発熱温度に伴い変動する電気
信号を温度制御部34に出力している。
【0020】温度制御部34は、複数の機能ブロックよ
り構成されている。すなわち、温度分布監視部34a、
昇温カーブ監視部34b、収束点演算部34c、切替点
演算部34dおよび切替点検出部34eにより構成され
ている。温度分布監視部34aは、前述した多点温度測
定部32によって測定した各ヒータ10の発熱温度デー
タにより加熱室4内の温度分布を監視する。これによ
り、加熱室4を形成するヒータモジュールの中で最高温
度にあるヒータ10および最低温度にあるヒータ10を
認識することができる。
【0021】昇温カーブ監視部34bは、各ヒータ10
の昇温カーブ、つまり一定時間当たりの上昇温度を監視
する。収束点演算部34cは、各ヒータ10の発熱温度
を短時間で収束させる収束点を演算する。この収束点
は、各ヒータ10の発熱温度が所定温度に揃ったときの
温度であり、図6で点Bにより表されている。
【0022】切替点検出部34eは、ヒータ10の昇温
状態を比較的ゆっくり温度上昇させる減速昇温パターン
から急速に温度上昇させる高速昇温パターンに切替える
ための切替点を検出する。そしてこの切替点は、図6で
1 、A2 、An により表されている。多点ヒータ出力
部36は、各ヒータ10に電気的に接続されており、各
ヒータ10が発熱するために必要な電力を供給する。そ
してこの多点ヒータ出力部36が前述した切替点検出部
34eにより各ヒータ10に供給する電力の増減を所定
値に切替えることで、前述した減速昇温パターンから高
速昇温パターンに切替えている。
【0023】次に、各ヒータ10の発熱温度を温度制御
部34等により収束させる温度制御方法を図6〜図8に
基づいて説明する。まず、ヒータ10の加熱を開始する
と、多点温度測定部32によりヒータ10の発熱温度を
測定し、その測定結果に基づいて温度分布監視部34e
によってヒータ10の温度分布データを得る。
【0024】そして、図7に示すステップ51により、
ヒータ10の温度分布データからヒータ10の最低温度
と最高温度とを抽出し、収束点を収束点演算部34cで
演算する。この収束点は時間t1'および温度SP1'で表
され、t1'およびSP1'は次の式(1) 、(2) によってそ
れぞれ求められる。 t1'=(PVOmax−PVOmin)t1 /(SP1 −PVOmin) ・・・(1) SP1'=PVOmax ・・・(2) ここで、SPはヒータ10の設定温度を表しており、P
O は加熱開始時のヒータ10の測定温度を表し、また
PVOmaxはその最高温度、PVOminはその最低温度をそ
れぞれ表している。
【0025】そして、この収束点は、時間t1'、温度S
1'として図8に表され、各ヒータ10の発熱温度が収
束する時間(以下、「収束時間」という。)である時間
1'が3分以下になるように設定されている。収束時間
を3分以下に設定したのは、固相点でのワーク6の温度
のばらつきを±3℃以下に抑えるためである。つまり、
例えばヒータ10の初期温度を220〜370℃に設定
したとき、収束時間に対するろう材固相点でのワーク6
の温度のばらつきを計算機シュミレーションした結果、
収束時間を3.2分以下に設定することでろう材固相点
でのワーク6の温度のばらつきを±3℃以下に抑えるこ
とが可能であることが判明したため、本実施例では収束
時間を3分以下に設定している。
【0026】次のステップ52では、ステップ51によ
り演算した収束点に対して各ヒータ10の温度プログラ
ムをそれぞれ各ヒータ10ごとに設定する。この温度プ
ログラムは、ヒータ10の発熱温度が時間の経過ととも
に変動するように設定されており、多点温度測定部32
により測定された温度データによるフィードバック制御
を逐次行っている。例えば、図8に示す温度PVOAから
出発する温度プログラムと温度PVOBから出発する温度
プログラムとは、時間経過に対する温度上昇率が異な
る。つまり、最も低い温度PVOminを出発点とする温度
プログラムでは時間経過に対する温度上昇率が最も高く
なるように設定され、最も高い温度PVOm axでは時間経
過に対する温度上昇率が最も低くなるように設定されて
いる。ここでは、最も高い温度PVOmaxのヒータ10の
温度プログラムは、出発点の温度を維持するように設定
されている。これは、ヒータ10の中で最も発熱温度の
高い温度PVOmaxを収束点の温度すなわちSP1'として
いるためである。
【0027】ここで、最も高い温度PVOmaxのヒータ1
0は、特許請求の範囲に記載の「一部発熱体」に相当
し、最も高い温度PVOmaxのヒータ10以外のヒータ1
0は、特許請求の範囲に記載の「残部発熱体」に相当す
る。ステップ52の後、ステップ53では減速昇温パタ
ーンから高速昇温パターンに切替える切替点を抽出す
る。温度分布監視部34aでは最も温度の低いヒータ1
0の測定温度と他の各ヒータ10の測定温度との差、例
えば図8でPVOA−PVOminを監視し、昇温カーブ監視
部34bでは各ヒータ10の昇温カーブから測定温度の
勾配を監視する。そして、切替点検出部34eにより、
前述した最も温度の低いヒータ10の測定温度と他の各
ヒータ10の測定温度との差および測定温度の勾配によ
って、各ヒータ10ごとに切替点を検出する。
【0028】このステップ53により検出した切替点に
各ヒータ10の発熱温度が達しているか否かをステップ
54でチェックする。各ヒータ10の発熱温度は切替点
に達していなければステップ53に処理を再度移行し切
替点の検出を行い、また切替点に達していれば次のステ
ップ55に処理を移行する。ステップ55では、前述し
た温度プログラムのフィードバック制御のパラメータの
設定を変化させる。例えば、PiD制御の場合、比例
帯、積分時間および微分時間を立上げ速度の早い制御パ
ラメータに設定を変化させた後、ステップ56に処理を
移行する。
【0029】ステップ56では、各ヒータ10の発熱温
度が収束点に達したか否かの判断を行う。収束点に達し
ていなければ前述したステップ53に処理を再度移行し
切替点の検出を行い、収束点に達していれば次の目標温
度である図8に示す点SP1に向かって各ヒータ10を
昇温させる。この収束点に各ヒータ10の発熱温度が達
したとき、各ヒータ10の発熱温度、すなわち収束点の
温度と各ワーク6の温度との温度差は、300℃以上で
あることが望ましい。これは、前述した次の目標温度で
ある点SP1 に向かって各ワーク6の温度を短時間に昇
温させるためである。
【0030】ここで、図6に示す切替点A1 、A2 、A
n について説明する。図6に示すように、発熱温度の低
いヒータ10の切替点A1 は、他のA2 およびAn より
早い時間に位置しており、発熱温度の高いヒータ10の
切替点An は、A1 およびA2 より遅い時間に位置して
いる。つまり、ヒータ10の発熱温度が低いほど切替点
に達する時間が短く、また発熱温度が高いほど切替点に
達する時間が遅い。これは、この切替点の前後でヒータ
10の昇温状態を減速昇温パターンから高速昇温パター
ンに切替えることから、ヒータ10の発熱温度が低いも
のほど早い時期に高速昇温パターンに切替えることによ
り、他のヒータ10との温度差を補っているためであ
る。そのため、温度の低いヒータ10ほど高速昇温パタ
ーンで昇温される時間が長く、温度の高いヒータ10ほ
ど高速昇温パターンで昇温される時間が短くなる。
【0031】次に、上述した温度制御方法により加熱制
御した真空ろう付炉の実測データを図9に基づいて説明
する。加熱室4内に搬入される前のワーク6は常温環境
下に置かれているため、搬入直後のワーク6の温度はほ
ぼ20℃になっていることが図9で時間軸0分から読取
れる。一方、ワーク6を搬入した直後の加熱室4内のヒ
ータ10の発熱温度は、低いもので220℃程度、高い
もので370℃程度になっていることが時間軸0分から
読取れる。
【0032】このように、各ヒータ10の発熱温度にば
らつきが生ずるのは、ワーク6の搬入前、各ヒータ10
の発熱温度がほぼ600℃を維持するように温度制御さ
れても、ワーク6の搬入時の前扉22の開閉により加熱
室4内に侵入した外気により各ヒータ10がそれぞれ異
なった条件で冷却されるためである。つまり、前扉22
に近い位置に配設されるヒータ10ほど外気に触れ易い
ため発熱温度が低下が助長され、前扉22に遠い位置に
配設されるヒータ10ほど外気に触れ難いため発熱温度
の低下が抑制されることから、各ヒータ10の発熱温度
にばらつきが生ずる。
【0033】昇温開始から3分経過すると、前述したよ
うに各ヒータ10の発熱温度が収束する。このときの収
束温度は430℃程度である。まだこの時点では、各ワ
ーク6の温度がばらついており、低温側ワークが94℃
程度、高温側ワークが127℃程度に加熱されている。
昇温開始から12.5分経過すると、各ワーク6の温度
がろう材固相点付近(557℃)に達する。すると、各
ワーク6に塗布されたろう材の溶解が始まる。このと
き、ろう材固相点でのワーク6の温度のばらつきは、±
3℃以下に抑えられ、ろう材固相点以降では各ワーク6
の温度を示す曲線が同一線上に重なっていることが判
る。また各ヒータ10の発熱温度は、620℃程度に達
している。
【0034】昇温開始から27.5分経過すると、各ワ
ーク6がろう付終了温度(595℃)に達するため、ワ
ーク6に塗布されたろう材はろう材液相点(570℃)
以降で全て溶解しろう付工程が完了する。これにより、
昇温開始から27.5分でろう付工程が完了する。この
本実施例の温度制御方法による加熱時間の短縮化を明確
にするため、従来の比較例による「温度追従待ち」を行
う温度制御方法により加熱制御した真空ろう付炉の実測
データを図10に示す。
【0035】図9に示す本実施例の温度特性と図10に
示す従来の比較例の温度特性とを比較すると、本実施例
の温度制御方法では各ワーク6の収束時間が12.5分
であるのに対し、比較例の温度制御方法ではその時間が
21分になっている。つまり、本実施例の温度制御方法
によると、各ワーク6の収束時間が8.5分程度の時間
短縮ができる。
【0036】また、各ワーク6の均熱性を±3℃以内に
保ちながら、ろう付終了温度(595℃)に達するまで
の時間は、本実施例の温度制御方法では27.5分であ
るのに対し、比較例の温度制御方法では44分であるこ
とが図9および図10より判る。これにより、本実施例
の温度制御方法によると、16.5分程度の時間短縮が
でき、約1.6倍の高速化を図ることができる。
【0037】なお、本実施例では、真空ろう付炉の温度
制御方法について説明したが、本発明ではこれに限られ
ることはなく、複数のヒータからなる加熱手段を有する
加熱炉であれば同様に短時間にヒータの発熱温度のばら
つきを収束することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加熱炉の温度制御方法を適用した一実
施例による真空ろう付炉の温度制御部の構成等を示すブ
ロック図である。
【図2】本実施例による真空ろう付炉のシステム構成図
である。
【図3】本実施例による真空ろう付炉の内部を示す正面
図である。
【図4】本実施例による真空ろう付炉の内部を示す側面
図である。
【図5】本実施例による真空ろう付炉のヒータとワーク
との位置関係を示す模式的説明図である。
【図6】本実施例による真空ろう付炉の加熱初期段階に
おける加熱時間に対するヒータの発熱温度を示す特性図
である。
【図7】本実施例による真空ろう付炉のヒータの発熱温
度を収束させる温度制御処理を示すフローチャート図で
ある。
【図8】本実施例による真空ろう付炉のヒータの温度収
束の演算方法を示す説明図である。
【図9】本実施例による真空ろう付炉の加熱時間に対す
るヒータおよびワークの温度を示す特性図である。
【図10】従来の比較例による真空ろう付炉の加熱時間
に対するヒータおよびワークの温度を示す特性図であ
る。
【符号の説明】
1 炉体 4 加熱室 6 ワーク (被発熱体) 10 ヒータ (発熱体) 11 熱電対 32 多点温度測定部(温度センサ群) 34 温度制御部 (温度制御手段) 34a 温度分布監視部 34b 昇温カーブ監視部 34c 収束点演算部 34d 切替点演算部 34e 切替点検出部 36 多点ヒータ出力部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の発熱体を有する加熱炉の温度制御
    方法であって、 前記加熱炉内に被発熱体を搬入した後、前記複数の発熱
    体のそれぞれの温度を検出し、 前記複数の発熱体の中で最も温度の高い一部発熱体の温
    度に向かって残部発熱体の温度が収束するようにこの残
    部発熱体の温度を制御し、 前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体の温度に収束し
    た後、前記複数の発熱体の全てを所定温度に達するよう
    に前記複数の発熱体の温度を制御できることを特徴とす
    る加熱炉の温度制御方法。
  2. 【請求項2】 前記一部発熱体は、前記残部発熱体の温
    度が収束する前に昇熱または降熱制御されることを特徴
    とする請求項1記載の加熱炉の温度制御方法。
  3. 【請求項3】 前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体
    の温度に収束したとき、前記被発熱体の温度は、この収
    束温度より300℃以上低いことを特徴とする請求項1
    または2記載の加熱炉の温度制御方法。
  4. 【請求項4】 炉体と、 前記炉体内に収容される複数の発熱体と、 前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出する温度セン
    サ群と、 前記温度センサ群の検出値により前記複数の発熱体の温
    度をそれぞれ制御する温度制御手段とを備える真空ろう
    付炉であって、 請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御
    方法により前記温度制御手段を制御することを特徴とす
    る真空ろう付炉。
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