JP3560190B2 - 加熱炉の温度制御方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の発熱体を有する加熱炉の温度制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、真空ろう付は、10−5Torr程度の真空中でろう材がクラッドされた例えばアルミニウムからなる芯材(以下、「ワーク」という。)をろう付終了温度まで加熱することにより、ろう材を溶かし芯材を接合する。このろう材は固相点556℃で溶け始め、液相点である570℃に達したとき全て溶解する。そして、ろう付終了温度である595℃に達したとき、ろう付を完了する。
【0003】
ところで、ろう付部分の品質を確保するためには、加熱された芯材上に均一にろう材が流れることが必要になるため、ろう材の固相点に達した以降の溶融工程においては、ワークの均熱性を良好に例えば±3℃に確保することがポイントになる。ここで、均熱性とは、ワークの各部位の温度または各ワークごとの温度のばらつきの幅の大小をいい、ばらつきの幅が小さいほど均熱性が良い。
【0004】
そして、この種の真空ろう付は、一度に多数のワークを炉内に投入し、一室で全てのろう付プロセスを完了するいわゆるバッチ炉により行われ、このバッチ炉の例として、特開平1−228669号公報に開示されるアルミ製品の真空ろう付方法に用いられるものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したバッチ炉によると、ワークを投入するために設けられた入口の扉を開閉する度に加熱された炉内に外気が侵入する。すると、炉内の温度が低下することになり、外気の侵入状態によって例えば上下方向に長い大型ヒータではヒータの上方と下方とにより温度差を生ずるため、再度昇温させるヒータの発熱温度がヒータの部位により異なることになる。そのため、炉内に投入された多数のワークに対して均一な加熱温度を確保することが困難になり、各ワークごとの均熱性が損なわれる。
【0006】
そこで、図10に示すように、炉内にワークを投入した後、各ヒータの発熱温度を徐々に昇温させ、発熱温度が所定温度(図10では560℃程度)に達したとき、ヒータの昇温を一時中断する。そして、全てのワークの温度がろう材の固相点556℃付近に近づくのを待つという「温度追従待ち」を行った後、ろう付終了温度までヒータを徐々に加熱するという温度制御方法を採っている。そのため、この「温度追従待ち」を行うことにより加熱時間の増加を招き、ろう付工程の生産効率を低下させるという問題を生じている。
【0007】
そして、特開平1−228669号公報に開示されるアルミ製品の真空ろう付方法においても、アルミ部材のろう付にバッチ炉を用いることから、同様な問題を生ずる。
本発明の目的は、生産効率を向上させる加熱炉の温度制御方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段・作用・発明の効果】
前記の課題を解決するための本発明による請求項1記載の加熱炉の温度制御方法は、複数の発熱体を有する加熱炉の温度制御方法であって、
前記加熱炉内に被発熱体を搬入した後、前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出し、
前記複数の発熱体の中で最も温度の高い一部発熱体の温度に向かって残部発熱体の温度が収束するようにこの残部発熱体の温度を制御し、
前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体の温度に収束した後、前記複数の発熱体の全てを所定温度に達するように前記複数の発熱体の温度を制御できることを特徴とする。
【0009】
これにより、加熱炉内に被発熱体を搬入することにより複数の発熱体の温度がばらついたとしても、複数の発熱体の中で最も温度の高い一部発熱体の温度に向かって残部発熱体の温度が収束するようにこの残部発熱体の温度を制御するため、複数の発熱体の温度のばらつきを短時間に収束させることができる。したがって、従来の温度制御で行っていた「温度追従待ち」をすることなくして被発熱体を所定温度に加熱できるため加熱時間が短縮され、生産効率を向上させる効果がある。
【0010】
本発明による請求項2記載の加熱炉の温度制御方法は、請求項1記載の加熱炉の温度制御方法において、前記一部発熱体は、前記残部発熱体の温度が収束する前に昇熱または降熱制御されることを特徴とする。
これにより、一部発熱体が所定の目標温度に向かって昇熱または降熱するように制御しながら、この所定の目標温度である一部発熱体の温度に向かって残部発熱体を温度制御することができる。したがって、複数の発熱体の温度を所定の目標温度に向かってさらに短時間に収束させることができるため、生産効率をより向上させる効果がある。
【0011】
本発明による請求項3記載の加熱炉の温度制御方法は、請求項1または2記載の加熱炉の温度制御方法において、前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体の温度に収束したとき、前記被発熱体の温度は、この収束温度より300℃以上低いことを特徴とする。
これにより、複数の発熱体の収束温度と被発熱体の温度との差が300℃以上になることから、請求項1または2記載の加熱炉の温度制御方法により所定の目標温度に向かって被発熱体の温度を短時間に昇温させることができる。したがって、生産効率をさらに向上させる効果がある。
【0012】
本発明による請求項4記載の真空ろう付炉は、炉体と、
前記炉体内に収容される複数の発熱体と、
前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出する温度センサ群と、
前記温度センサ群の検出値により前記複数の発熱体の温度をそれぞれ制御する温度制御手段とを備える真空ろう付炉であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法により前記温度制御手段を制御することを特徴とする。
【0013】
これにより、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法により得られた効果を備えた真空ろう付炉が実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の加熱炉の温度制御方法を適用した真空ろう付炉の一実施例を図1〜図9に示す。
図2に示すように、真空ろう付炉は、後述する構成からなる炉体1、多点温度測定部32、温度制御部34および多点ヒータ出力部36から構成されている。そして、ワーク6を加熱するヒータ10が多点温度測定部32、温度制御部34および多点ヒータ出力部36により温度制御されている。
【0015】
ここで、ワーク6、ヒータ10、多点温度測定部32、温度制御部34は、特許請求の範囲に記載の「被発熱体」、「発熱体」、「温度センサ群」、「温度制御手段」にそれぞれ相当する。
図3および図4に示すように、真空ろう付炉は、水平方向ほぼ円筒状に形成された炉体1と、この炉体1内の空間と連通可能に設けられた真空排気系統の排気口2と、炉体1内上部に設けられヒータモジュールが吊り下げられているレール3と、このヒータモジュールにより形成される加熱室4と、この加熱室4の天井に吊り下げられるキャリアレール5と、このキャリアレール5に複数段吊り下げられワーク6を積層可能なキャリア7等から構成されている。
【0016】
加熱室4は、例えば図1で左右方向に二つに独立して形成されており、各加熱室4の天井と底面とを除く側面の壁8の内部には、熱反射板9およびヒータ10が一対となるように複数組配設されている。そして、図5に示すように、ヒータ10とヒータ10との間にワーク6が位置可能に所定間隔で複数のヒータ10が配設されており、例えば自動車のラジエータがワーク6に相当する。
【0017】
また、図4に示すように、壁8には、その全面を覆うように複数のヒータ10が配設されており、壁8の図4で右方向端部には前扉22が位置し、左方向端部には後扉23が位置している。そして、この前扉22は加熱室4にワーク6を搬入または搬出するときに操作され、後扉23は保守点検時等に操作される。また前扉22および後扉23の各内面にも熱反射板9およびヒータ10が一対となるように配設されている。
【0018】
さらに、図2に示すように、ヒータ10の温度を検出する熱電対11は、ヒータ10とワーク6との間に配設されており、その数はヒータ10の数と対応している。これにより、各ヒータ10の温度を個々に検出することができる。そして、後述する多点温度測定部32は、この複数の熱電対11により構成されている。
【0019】
次に、ヒータ10の発熱温度を制御する温度制御部34等を図1に基づいて説明する。
多点温度測定部32は、前述したように複数の熱電対11から構成されており、各ヒータ10の発熱温度を測定する。そして、測定したヒータ10の発熱温度に伴い変動する電気信号を温度制御部34に出力している。
【0020】
温度制御部34は、複数の機能ブロックより構成されている。すなわち、温度分布監視部34a、昇温カーブ監視部34b、収束点演算部34c、切替点演算部34dおよび切替点検出部34eにより構成されている。
温度分布監視部34aは、前述した多点温度測定部32によって測定した各ヒータ10の発熱温度データにより加熱室4内の温度分布を監視する。これにより、加熱室4を形成するヒータモジュールの中で最高温度にあるヒータ10および最低温度にあるヒータ10を認識することができる。
【0021】
昇温カーブ監視部34bは、各ヒータ10の昇温カーブ、つまり一定時間当たりの上昇温度を監視する。
収束点演算部34cは、各ヒータ10の発熱温度を短時間で収束させる収束点を演算する。この収束点は、各ヒータ10の発熱温度が所定温度に揃ったときの温度であり、図6で点Bにより表されている。
【0022】
切替点検出部34eは、ヒータ10の昇温状態を比較的ゆっくり温度上昇させる減速昇温パターンから急速に温度上昇させる高速昇温パターンに切替えるための切替点を検出する。そしてこの切替点は、図6でA1 、A2 、An により表されている。
多点ヒータ出力部36は、各ヒータ10に電気的に接続されており、各ヒータ10が発熱するために必要な電力を供給する。そしてこの多点ヒータ出力部36が前述した切替点検出部34eにより各ヒータ10に供給する電力の増減を所定値に切替えることで、前述した減速昇温パターンから高速昇温パターンに切替えている。
【0023】
次に、各ヒータ10の発熱温度を温度制御部34等により収束させる温度制御方法を図6〜図8に基づいて説明する。
まず、ヒータ10の加熱を開始すると、多点温度測定部32によりヒータ10の発熱温度を測定し、その測定結果に基づいて温度分布監視部34eによってヒータ10の温度分布データを得る。
【0024】
そして、図7に示すステップ51により、ヒータ10の温度分布データからヒータ10の最低温度と最高温度とを抽出し、収束点を収束点演算部34cで演算する。この収束点は時間t1’および温度SP1’で表され、t1’およびSP1’は次の式(1) 、(2) によってそれぞれ求められる。
t1’=(PVOmax−PVOmin)t1 /(SP1 −PVOmin) ・・・(1)
SP1’=PVOmax ・・・(2)
ここで、SPはヒータ10の設定温度を表しており、PVO は加熱開始時のヒータ10の測定温度を表し、またPVOmaxはその最高温度、PVOminはその最低温度をそれぞれ表している。
【0025】
そして、この収束点は、時間t1’温度SP1’として図8に表され、各ヒータ10の発熱温度が収束する時間(以下、「収束時間」という。)である時間t1’が3分以下になるように設定されている。収束時間を3分以下に設定したのは、固相点でのワーク6の温度のばらつきを±3℃以下に抑えるためである。つまり、例えばヒータ10の初期温度を220〜370℃に設定したとき、収束時間に対するろう材固相点でのワーク6の温度のばらつきを計算機シミレーションした結果、収束時間を3.2分以下に設定することでろう材固相点でのワーク6の温度のばらつきを±3℃以下に抑えることが可能であることが判明したため、本実施例では収束時間を3分以下に設定している。
【0026】
次のステップ52では、ステップ51により演算した収束点に対して各ヒータ10の温度プログラムをそれぞれ各ヒータ10ごとに設定する。この温度プログラムは、ヒータ10の発熱温度が時間の経過とともに変動するように設定されており、多点温度測定部32により測定された温度データによるフィードバック制御を逐次行っている。例えば、図8に示す温度PVOAから出発する温度プログラムと温度PVOBから出発する温度プログラムとは、時間経過に対する温度上昇率が異なる。つまり、最も低い温度PVOminを出発点とする温度プログラムでは時間経過に対する温度上昇率が最も高くなるように設定され、最も高い温度PVOmaxでは時間経過に対する温度上昇率が最も低くなるように設定されている。ここでは、最も高い温度PVOmaxのヒータ10の温度プログラムは、出発点の温度を維持するように設定されている。これは、ヒータ10の中で最も発熱温度の高い温度PVOmaxを収束点の温度すなわちSP1’としているためである。
【0027】
ここで、最も高い温度PVOmaxのヒータ10は、特許請求の範囲に記載の「一部発熱体」に相当し、最も高い温度PVOmaxのヒータ10以外のヒータ10は、特許請求の範囲に記載の「残部発熱体」に相当する。
ステップ52の後、ステップ53では減速昇温パターンから高速昇温パターンに切替える切替点を抽出する。温度分布監視部34aでは最も温度の低いヒータ10の測定温度と他の各ヒータ10の測定温度との差、例えば図8でPVOA−PVOminを監視し、昇温カーブ監視部34bでは各ヒータ10の昇温カーブから測定温度の勾配を監視する。そして、切替点検出部34eにより、前述した最も温度の低いヒータ10の測定温度と他の各ヒータ10の測定温度との差および測定温度の勾配によって、各ヒータ10ごとに切替点を検出する。
【0028】
このステップ53により検出した切替点に各ヒータ10の発熱温度が達しているか否かをステップ54でチェックする。各ヒータ10の発熱温度は切替点に達していなければステップ53に処理を再度移行し切替点の検出を行い、また切替点に達していれば次のステップ55に処理を移行する。
ステップ55では、前述した温度プログラムのフィードバック制御のパラメータの設定を変化させる。例えば、PiD制御の場合、比例帯、積分時間および微分時間を立上げ速度の早い制御パラメータに設定を変化させた後、ステップ56に処理を移行する。
【0029】
ステップ56では、各ヒータ10の発熱温度が収束点に達したか否かの判断を行う。収束点に達していなければ前述したステップ53に処理を再度移行し切替点の検出を行い、収束点に達していれば次の目標温度である図8に示す点SP1 に向かって各ヒータ10を昇温させる。この収束点に各ヒータ10の発熱温度が達したとき、各ヒータ10の発熱温度、すなわち収束点の温度と各ワーク6の温度との温度差は、300℃以上であることが望ましい。これは、前述した次の目標温度である点SP1 に向かって各ワーク6の温度を短時間に昇温させるためである。
【0030】
ここで、図6に示す切替点A1 、A2 、An について説明する。
図6に示すように、発熱温度の低いヒータ10の切替点A1 は、他のA2 およびAn より早い時間に位置しており、発熱温度の高いヒータ10の切替点An は、A1 およびA2 より遅い時間に位置している。つまり、ヒータ10の発熱温度が低いほど切替点に達する時間が短く、また発熱温度が高いほど切替点に達する時間が遅い。これは、この切替点の前後でヒータ10の昇温状態を減速昇温パターンから高速昇温パターンに切替えることから、ヒータ10の発熱温度が低いものほど早い時期に高速昇温パターンに切替えることにより、他のヒータ10との温度差を補っているためである。そのため、温度の低いヒータ10ほど高速昇温パターンで昇温される時間が長く、温度の高いヒータ10ほど高速昇温パターンで昇温される時間が短くなる。
【0031】
次に、上述した温度制御方法により加熱制御した真空ろう付炉の実測データを図9に基づいて説明する。
加熱室4内に搬入される前のワーク6は常温環境下に置かれているため、搬入直後のワーク6の温度はほぼ20℃になっていることが図9で時間軸0分から読取れる。一方、ワーク6を搬入した直後の加熱室4内のヒータ10の発熱温度は、低いもので220℃程度、高いもので370℃程度になっていることが時間軸0分から読取れる。
【0032】
このように、各ヒータ10の発熱温度にばらつきが生ずるのは、ワーク6の搬入前、各ヒータ10の発熱温度がほぼ600℃を維持するように温度制御されても、ワーク6の搬入時の前扉22の開閉により加熱室4内に侵入した外気により各ヒータ10がそれぞれ異なった条件で冷却されるためである。つまり、前扉22に近い位置に配設されるヒータ10ほど外気に触れ易いため発熱温度が低下が助長され、前扉22に遠い位置に配設されるヒータ10ほど外気に触れ難いため発熱温度の低下が抑制されることから、各ヒータ10の発熱温度にばらつきが生ずる。
【0033】
昇温開始から3分経過すると、前述したように各ヒータ10の発熱温度が収束する。このときの収束温度は430℃程度である。まだこの時点では、各ワーク6の温度がばらついており、低温側ワークが94℃程度、高温側ワークが127℃程度に加熱されている。
昇温開始から12.5分経過すると、各ワーク6の温度がろう材固相点付近(557℃)に達する。すると、各ワーク6に塗布されたろう材の溶解が始まる。このとき、ろう材固相点でのワーク6の温度のばらつきは、±3℃以下に抑えられ、ろう材固相点以降では各ワーク6の温度を示す曲線が同一線上に重なっていることが判る。また各ヒータ10の発熱温度は、620℃程度に達している。
【0034】
昇温開始から27.5分経過すると、各ワーク6がろう付終了温度(595℃)に達するため、ワーク6に塗布されたろう材はろう材液相点(570℃)以降で全て溶解しろう付工程が完了する。これにより、昇温開始から27.5分でろう付工程が完了する。
この本実施例の温度制御方法による加熱時間の短縮化を明確にするため、従来の比較例による「温度追従待ち」を行う温度制御方法により加熱制御した真空ろう付炉の実測データを図10に示す。
【0035】
図9に示す本実施例の温度特性と図10に示す従来の比較例の温度特性とを比較すると、本実施例の温度制御方法では各ワーク6の収束時間が12.5分であるのに対し、比較例の温度制御方法ではその時間が21分になっている。つまり、本実施例の温度制御方法によると、各ワーク6の収束時間が8.5分程度の時間短縮ができる。
【0036】
また、各ワーク6の均熱性を±3℃以内に保ちながら、ろう付終了温度(595℃)に達するまでの時間は、本実施例の温度制御方法では27.5分であるのに対し、比較例の温度制御方法では44分であることが図9および図10より判る。これにより、本実施例の温度制御方法によると、16.5分程度の時間短縮ができ、約1.6倍の高速化を図ることができる。
【0037】
なお、本実施例では、真空ろう付炉の温度制御方法について説明したが、本発明ではこれに限られることはなく、複数のヒータからなる加熱手段を有する加熱炉であれば同様に短時間にヒータの発熱温度のばらつきを収束することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加熱炉の温度制御方法を適用した一実施例による真空ろう付炉の温度制御部の構成等を示すブロック図である。
【図2】本実施例による真空ろう付炉のシステム構成図である。
【図3】本実施例による真空ろう付炉の内部を示す正面図である。
【図4】本実施例による真空ろう付炉の内部を示す側面図である。
【図5】本実施例による真空ろう付炉のヒータとワークとの位置関係を示す模式的説明図である。
【図6】本実施例による真空ろう付炉の加熱初期段階における加熱時間に対するヒータの発熱温度を示す特性図である。
【図7】本実施例による真空ろう付炉のヒータの発熱温度を収束させる温度制御処理を示すフローチャート図である。
【図8】本実施例による真空ろう付炉のヒータの温度収束の演算方法を示す説明図である。
【図9】本実施例による真空ろう付炉の加熱時間に対するヒータおよびワークの温度を示す特性図である。
【図10】従来の比較例による真空ろう付炉の加熱時間に対するヒータおよびワークの温度を示す特性図である。
【符号の説明】
1 炉体
4 加熱室
6 ワーク (被発熱体)
10 ヒータ (発熱体)
11 熱電対
32 多点温度測定部(温度センサ群)
34 温度制御部 (温度制御手段)
34a 温度分布監視部
34b 昇温カーブ監視部
34c 収束点演算部
34d 切替点演算部
34e 切替点検出部
36 多点ヒータ出力部
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の発熱体を有する加熱炉の温度制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、真空ろう付は、10−5Torr程度の真空中でろう材がクラッドされた例えばアルミニウムからなる芯材(以下、「ワーク」という。)をろう付終了温度まで加熱することにより、ろう材を溶かし芯材を接合する。このろう材は固相点556℃で溶け始め、液相点である570℃に達したとき全て溶解する。そして、ろう付終了温度である595℃に達したとき、ろう付を完了する。
【0003】
ところで、ろう付部分の品質を確保するためには、加熱された芯材上に均一にろう材が流れることが必要になるため、ろう材の固相点に達した以降の溶融工程においては、ワークの均熱性を良好に例えば±3℃に確保することがポイントになる。ここで、均熱性とは、ワークの各部位の温度または各ワークごとの温度のばらつきの幅の大小をいい、ばらつきの幅が小さいほど均熱性が良い。
【0004】
そして、この種の真空ろう付は、一度に多数のワークを炉内に投入し、一室で全てのろう付プロセスを完了するいわゆるバッチ炉により行われ、このバッチ炉の例として、特開平1−228669号公報に開示されるアルミ製品の真空ろう付方法に用いられるものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したバッチ炉によると、ワークを投入するために設けられた入口の扉を開閉する度に加熱された炉内に外気が侵入する。すると、炉内の温度が低下することになり、外気の侵入状態によって例えば上下方向に長い大型ヒータではヒータの上方と下方とにより温度差を生ずるため、再度昇温させるヒータの発熱温度がヒータの部位により異なることになる。そのため、炉内に投入された多数のワークに対して均一な加熱温度を確保することが困難になり、各ワークごとの均熱性が損なわれる。
【0006】
そこで、図10に示すように、炉内にワークを投入した後、各ヒータの発熱温度を徐々に昇温させ、発熱温度が所定温度(図10では560℃程度)に達したとき、ヒータの昇温を一時中断する。そして、全てのワークの温度がろう材の固相点556℃付近に近づくのを待つという「温度追従待ち」を行った後、ろう付終了温度までヒータを徐々に加熱するという温度制御方法を採っている。そのため、この「温度追従待ち」を行うことにより加熱時間の増加を招き、ろう付工程の生産効率を低下させるという問題を生じている。
【0007】
そして、特開平1−228669号公報に開示されるアルミ製品の真空ろう付方法においても、アルミ部材のろう付にバッチ炉を用いることから、同様な問題を生ずる。
本発明の目的は、生産効率を向上させる加熱炉の温度制御方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段・作用・発明の効果】
前記の課題を解決するための本発明による請求項1記載の加熱炉の温度制御方法は、複数の発熱体を有する加熱炉の温度制御方法であって、
前記加熱炉内に被発熱体を搬入した後、前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出し、
前記複数の発熱体の中で最も温度の高い一部発熱体の温度に向かって残部発熱体の温度が収束するようにこの残部発熱体の温度を制御し、
前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体の温度に収束した後、前記複数の発熱体の全てを所定温度に達するように前記複数の発熱体の温度を制御できることを特徴とする。
【0009】
これにより、加熱炉内に被発熱体を搬入することにより複数の発熱体の温度がばらついたとしても、複数の発熱体の中で最も温度の高い一部発熱体の温度に向かって残部発熱体の温度が収束するようにこの残部発熱体の温度を制御するため、複数の発熱体の温度のばらつきを短時間に収束させることができる。したがって、従来の温度制御で行っていた「温度追従待ち」をすることなくして被発熱体を所定温度に加熱できるため加熱時間が短縮され、生産効率を向上させる効果がある。
【0010】
本発明による請求項2記載の加熱炉の温度制御方法は、請求項1記載の加熱炉の温度制御方法において、前記一部発熱体は、前記残部発熱体の温度が収束する前に昇熱または降熱制御されることを特徴とする。
これにより、一部発熱体が所定の目標温度に向かって昇熱または降熱するように制御しながら、この所定の目標温度である一部発熱体の温度に向かって残部発熱体を温度制御することができる。したがって、複数の発熱体の温度を所定の目標温度に向かってさらに短時間に収束させることができるため、生産効率をより向上させる効果がある。
【0011】
本発明による請求項3記載の加熱炉の温度制御方法は、請求項1または2記載の加熱炉の温度制御方法において、前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体の温度に収束したとき、前記被発熱体の温度は、この収束温度より300℃以上低いことを特徴とする。
これにより、複数の発熱体の収束温度と被発熱体の温度との差が300℃以上になることから、請求項1または2記載の加熱炉の温度制御方法により所定の目標温度に向かって被発熱体の温度を短時間に昇温させることができる。したがって、生産効率をさらに向上させる効果がある。
【0012】
本発明による請求項4記載の真空ろう付炉は、炉体と、
前記炉体内に収容される複数の発熱体と、
前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出する温度センサ群と、
前記温度センサ群の検出値により前記複数の発熱体の温度をそれぞれ制御する温度制御手段とを備える真空ろう付炉であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法により前記温度制御手段を制御することを特徴とする。
【0013】
これにより、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法により得られた効果を備えた真空ろう付炉が実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の加熱炉の温度制御方法を適用した真空ろう付炉の一実施例を図1〜図9に示す。
図2に示すように、真空ろう付炉は、後述する構成からなる炉体1、多点温度測定部32、温度制御部34および多点ヒータ出力部36から構成されている。そして、ワーク6を加熱するヒータ10が多点温度測定部32、温度制御部34および多点ヒータ出力部36により温度制御されている。
【0015】
ここで、ワーク6、ヒータ10、多点温度測定部32、温度制御部34は、特許請求の範囲に記載の「被発熱体」、「発熱体」、「温度センサ群」、「温度制御手段」にそれぞれ相当する。
図3および図4に示すように、真空ろう付炉は、水平方向ほぼ円筒状に形成された炉体1と、この炉体1内の空間と連通可能に設けられた真空排気系統の排気口2と、炉体1内上部に設けられヒータモジュールが吊り下げられているレール3と、このヒータモジュールにより形成される加熱室4と、この加熱室4の天井に吊り下げられるキャリアレール5と、このキャリアレール5に複数段吊り下げられワーク6を積層可能なキャリア7等から構成されている。
【0016】
加熱室4は、例えば図1で左右方向に二つに独立して形成されており、各加熱室4の天井と底面とを除く側面の壁8の内部には、熱反射板9およびヒータ10が一対となるように複数組配設されている。そして、図5に示すように、ヒータ10とヒータ10との間にワーク6が位置可能に所定間隔で複数のヒータ10が配設されており、例えば自動車のラジエータがワーク6に相当する。
【0017】
また、図4に示すように、壁8には、その全面を覆うように複数のヒータ10が配設されており、壁8の図4で右方向端部には前扉22が位置し、左方向端部には後扉23が位置している。そして、この前扉22は加熱室4にワーク6を搬入または搬出するときに操作され、後扉23は保守点検時等に操作される。また前扉22および後扉23の各内面にも熱反射板9およびヒータ10が一対となるように配設されている。
【0018】
さらに、図2に示すように、ヒータ10の温度を検出する熱電対11は、ヒータ10とワーク6との間に配設されており、その数はヒータ10の数と対応している。これにより、各ヒータ10の温度を個々に検出することができる。そして、後述する多点温度測定部32は、この複数の熱電対11により構成されている。
【0019】
次に、ヒータ10の発熱温度を制御する温度制御部34等を図1に基づいて説明する。
多点温度測定部32は、前述したように複数の熱電対11から構成されており、各ヒータ10の発熱温度を測定する。そして、測定したヒータ10の発熱温度に伴い変動する電気信号を温度制御部34に出力している。
【0020】
温度制御部34は、複数の機能ブロックより構成されている。すなわち、温度分布監視部34a、昇温カーブ監視部34b、収束点演算部34c、切替点演算部34dおよび切替点検出部34eにより構成されている。
温度分布監視部34aは、前述した多点温度測定部32によって測定した各ヒータ10の発熱温度データにより加熱室4内の温度分布を監視する。これにより、加熱室4を形成するヒータモジュールの中で最高温度にあるヒータ10および最低温度にあるヒータ10を認識することができる。
【0021】
昇温カーブ監視部34bは、各ヒータ10の昇温カーブ、つまり一定時間当たりの上昇温度を監視する。
収束点演算部34cは、各ヒータ10の発熱温度を短時間で収束させる収束点を演算する。この収束点は、各ヒータ10の発熱温度が所定温度に揃ったときの温度であり、図6で点Bにより表されている。
【0022】
切替点検出部34eは、ヒータ10の昇温状態を比較的ゆっくり温度上昇させる減速昇温パターンから急速に温度上昇させる高速昇温パターンに切替えるための切替点を検出する。そしてこの切替点は、図6でA1 、A2 、An により表されている。
多点ヒータ出力部36は、各ヒータ10に電気的に接続されており、各ヒータ10が発熱するために必要な電力を供給する。そしてこの多点ヒータ出力部36が前述した切替点検出部34eにより各ヒータ10に供給する電力の増減を所定値に切替えることで、前述した減速昇温パターンから高速昇温パターンに切替えている。
【0023】
次に、各ヒータ10の発熱温度を温度制御部34等により収束させる温度制御方法を図6〜図8に基づいて説明する。
まず、ヒータ10の加熱を開始すると、多点温度測定部32によりヒータ10の発熱温度を測定し、その測定結果に基づいて温度分布監視部34eによってヒータ10の温度分布データを得る。
【0024】
そして、図7に示すステップ51により、ヒータ10の温度分布データからヒータ10の最低温度と最高温度とを抽出し、収束点を収束点演算部34cで演算する。この収束点は時間t1’および温度SP1’で表され、t1’およびSP1’は次の式(1) 、(2) によってそれぞれ求められる。
t1’=(PVOmax−PVOmin)t1 /(SP1 −PVOmin) ・・・(1)
SP1’=PVOmax ・・・(2)
ここで、SPはヒータ10の設定温度を表しており、PVO は加熱開始時のヒータ10の測定温度を表し、またPVOmaxはその最高温度、PVOminはその最低温度をそれぞれ表している。
【0025】
そして、この収束点は、時間t1’温度SP1’として図8に表され、各ヒータ10の発熱温度が収束する時間(以下、「収束時間」という。)である時間t1’が3分以下になるように設定されている。収束時間を3分以下に設定したのは、固相点でのワーク6の温度のばらつきを±3℃以下に抑えるためである。つまり、例えばヒータ10の初期温度を220〜370℃に設定したとき、収束時間に対するろう材固相点でのワーク6の温度のばらつきを計算機シミレーションした結果、収束時間を3.2分以下に設定することでろう材固相点でのワーク6の温度のばらつきを±3℃以下に抑えることが可能であることが判明したため、本実施例では収束時間を3分以下に設定している。
【0026】
次のステップ52では、ステップ51により演算した収束点に対して各ヒータ10の温度プログラムをそれぞれ各ヒータ10ごとに設定する。この温度プログラムは、ヒータ10の発熱温度が時間の経過とともに変動するように設定されており、多点温度測定部32により測定された温度データによるフィードバック制御を逐次行っている。例えば、図8に示す温度PVOAから出発する温度プログラムと温度PVOBから出発する温度プログラムとは、時間経過に対する温度上昇率が異なる。つまり、最も低い温度PVOminを出発点とする温度プログラムでは時間経過に対する温度上昇率が最も高くなるように設定され、最も高い温度PVOmaxでは時間経過に対する温度上昇率が最も低くなるように設定されている。ここでは、最も高い温度PVOmaxのヒータ10の温度プログラムは、出発点の温度を維持するように設定されている。これは、ヒータ10の中で最も発熱温度の高い温度PVOmaxを収束点の温度すなわちSP1’としているためである。
【0027】
ここで、最も高い温度PVOmaxのヒータ10は、特許請求の範囲に記載の「一部発熱体」に相当し、最も高い温度PVOmaxのヒータ10以外のヒータ10は、特許請求の範囲に記載の「残部発熱体」に相当する。
ステップ52の後、ステップ53では減速昇温パターンから高速昇温パターンに切替える切替点を抽出する。温度分布監視部34aでは最も温度の低いヒータ10の測定温度と他の各ヒータ10の測定温度との差、例えば図8でPVOA−PVOminを監視し、昇温カーブ監視部34bでは各ヒータ10の昇温カーブから測定温度の勾配を監視する。そして、切替点検出部34eにより、前述した最も温度の低いヒータ10の測定温度と他の各ヒータ10の測定温度との差および測定温度の勾配によって、各ヒータ10ごとに切替点を検出する。
【0028】
このステップ53により検出した切替点に各ヒータ10の発熱温度が達しているか否かをステップ54でチェックする。各ヒータ10の発熱温度は切替点に達していなければステップ53に処理を再度移行し切替点の検出を行い、また切替点に達していれば次のステップ55に処理を移行する。
ステップ55では、前述した温度プログラムのフィードバック制御のパラメータの設定を変化させる。例えば、PiD制御の場合、比例帯、積分時間および微分時間を立上げ速度の早い制御パラメータに設定を変化させた後、ステップ56に処理を移行する。
【0029】
ステップ56では、各ヒータ10の発熱温度が収束点に達したか否かの判断を行う。収束点に達していなければ前述したステップ53に処理を再度移行し切替点の検出を行い、収束点に達していれば次の目標温度である図8に示す点SP1 に向かって各ヒータ10を昇温させる。この収束点に各ヒータ10の発熱温度が達したとき、各ヒータ10の発熱温度、すなわち収束点の温度と各ワーク6の温度との温度差は、300℃以上であることが望ましい。これは、前述した次の目標温度である点SP1 に向かって各ワーク6の温度を短時間に昇温させるためである。
【0030】
ここで、図6に示す切替点A1 、A2 、An について説明する。
図6に示すように、発熱温度の低いヒータ10の切替点A1 は、他のA2 およびAn より早い時間に位置しており、発熱温度の高いヒータ10の切替点An は、A1 およびA2 より遅い時間に位置している。つまり、ヒータ10の発熱温度が低いほど切替点に達する時間が短く、また発熱温度が高いほど切替点に達する時間が遅い。これは、この切替点の前後でヒータ10の昇温状態を減速昇温パターンから高速昇温パターンに切替えることから、ヒータ10の発熱温度が低いものほど早い時期に高速昇温パターンに切替えることにより、他のヒータ10との温度差を補っているためである。そのため、温度の低いヒータ10ほど高速昇温パターンで昇温される時間が長く、温度の高いヒータ10ほど高速昇温パターンで昇温される時間が短くなる。
【0031】
次に、上述した温度制御方法により加熱制御した真空ろう付炉の実測データを図9に基づいて説明する。
加熱室4内に搬入される前のワーク6は常温環境下に置かれているため、搬入直後のワーク6の温度はほぼ20℃になっていることが図9で時間軸0分から読取れる。一方、ワーク6を搬入した直後の加熱室4内のヒータ10の発熱温度は、低いもので220℃程度、高いもので370℃程度になっていることが時間軸0分から読取れる。
【0032】
このように、各ヒータ10の発熱温度にばらつきが生ずるのは、ワーク6の搬入前、各ヒータ10の発熱温度がほぼ600℃を維持するように温度制御されても、ワーク6の搬入時の前扉22の開閉により加熱室4内に侵入した外気により各ヒータ10がそれぞれ異なった条件で冷却されるためである。つまり、前扉22に近い位置に配設されるヒータ10ほど外気に触れ易いため発熱温度が低下が助長され、前扉22に遠い位置に配設されるヒータ10ほど外気に触れ難いため発熱温度の低下が抑制されることから、各ヒータ10の発熱温度にばらつきが生ずる。
【0033】
昇温開始から3分経過すると、前述したように各ヒータ10の発熱温度が収束する。このときの収束温度は430℃程度である。まだこの時点では、各ワーク6の温度がばらついており、低温側ワークが94℃程度、高温側ワークが127℃程度に加熱されている。
昇温開始から12.5分経過すると、各ワーク6の温度がろう材固相点付近(557℃)に達する。すると、各ワーク6に塗布されたろう材の溶解が始まる。このとき、ろう材固相点でのワーク6の温度のばらつきは、±3℃以下に抑えられ、ろう材固相点以降では各ワーク6の温度を示す曲線が同一線上に重なっていることが判る。また各ヒータ10の発熱温度は、620℃程度に達している。
【0034】
昇温開始から27.5分経過すると、各ワーク6がろう付終了温度(595℃)に達するため、ワーク6に塗布されたろう材はろう材液相点(570℃)以降で全て溶解しろう付工程が完了する。これにより、昇温開始から27.5分でろう付工程が完了する。
この本実施例の温度制御方法による加熱時間の短縮化を明確にするため、従来の比較例による「温度追従待ち」を行う温度制御方法により加熱制御した真空ろう付炉の実測データを図10に示す。
【0035】
図9に示す本実施例の温度特性と図10に示す従来の比較例の温度特性とを比較すると、本実施例の温度制御方法では各ワーク6の収束時間が12.5分であるのに対し、比較例の温度制御方法ではその時間が21分になっている。つまり、本実施例の温度制御方法によると、各ワーク6の収束時間が8.5分程度の時間短縮ができる。
【0036】
また、各ワーク6の均熱性を±3℃以内に保ちながら、ろう付終了温度(595℃)に達するまでの時間は、本実施例の温度制御方法では27.5分であるのに対し、比較例の温度制御方法では44分であることが図9および図10より判る。これにより、本実施例の温度制御方法によると、16.5分程度の時間短縮ができ、約1.6倍の高速化を図ることができる。
【0037】
なお、本実施例では、真空ろう付炉の温度制御方法について説明したが、本発明ではこれに限られることはなく、複数のヒータからなる加熱手段を有する加熱炉であれば同様に短時間にヒータの発熱温度のばらつきを収束することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加熱炉の温度制御方法を適用した一実施例による真空ろう付炉の温度制御部の構成等を示すブロック図である。
【図2】本実施例による真空ろう付炉のシステム構成図である。
【図3】本実施例による真空ろう付炉の内部を示す正面図である。
【図4】本実施例による真空ろう付炉の内部を示す側面図である。
【図5】本実施例による真空ろう付炉のヒータとワークとの位置関係を示す模式的説明図である。
【図6】本実施例による真空ろう付炉の加熱初期段階における加熱時間に対するヒータの発熱温度を示す特性図である。
【図7】本実施例による真空ろう付炉のヒータの発熱温度を収束させる温度制御処理を示すフローチャート図である。
【図8】本実施例による真空ろう付炉のヒータの温度収束の演算方法を示す説明図である。
【図9】本実施例による真空ろう付炉の加熱時間に対するヒータおよびワークの温度を示す特性図である。
【図10】従来の比較例による真空ろう付炉の加熱時間に対するヒータおよびワークの温度を示す特性図である。
【符号の説明】
1 炉体
4 加熱室
6 ワーク (被発熱体)
10 ヒータ (発熱体)
11 熱電対
32 多点温度測定部(温度センサ群)
34 温度制御部 (温度制御手段)
34a 温度分布監視部
34b 昇温カーブ監視部
34c 収束点演算部
34d 切替点演算部
34e 切替点検出部
36 多点ヒータ出力部
Claims (4)
- 複数の発熱体を有する加熱炉の温度制御方法であって、
前記加熱炉内に被発熱体を搬入した後、前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出し、
前記複数の発熱体の中で最も温度の高い一部発熱体の温度に向かって残部発熱体の温度が収束するようにこの残部発熱体の温度を制御し、
前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体の温度に収束した後、前記複数の発熱体の全てを所定温度に達するように前記複数の発熱体の温度を制御できることを特徴とする加熱炉の温度制御方法。 - 前記一部発熱体は、前記残部発熱体の温度が収束する前に昇熱または降熱制御されることを特徴とする請求項1記載の加熱炉の温度制御方法。
- 前記残部発熱体の温度が前記一部発熱体の温度に収束したとき、前記被発熱体の温度は、この収束温度より300℃以上低いことを特徴とする請求項1または2記載の加熱炉の温度制御方法。
- 炉体と、
前記炉体内に収容される複数の発熱体と、
前記複数の発熱体のそれぞれの温度を検出する温度センサ群と、
前記温度センサ群の検出値により前記複数の発熱体の温度をそれぞれ制御する温度制御手段とを備える真空ろう付炉であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法により前記温度制御手段を制御することを特徴とする真空ろう付炉。
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