JPH0978165A - NiTiPd系超弾性合金材とその製造方法及びこの合金材による歯列矯正ワイヤー - Google Patents

NiTiPd系超弾性合金材とその製造方法及びこの合金材による歯列矯正ワイヤー

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JPH0978165A
JPH0978165A JP19550196A JP19550196A JPH0978165A JP H0978165 A JPH0978165 A JP H0978165A JP 19550196 A JP19550196 A JP 19550196A JP 19550196 A JP19550196 A JP 19550196A JP H0978165 A JPH0978165 A JP H0978165A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 従来のNiTi超弾性合金やNiTiCu系
超弾性合金に比べて加工性が優れ且つ応力ヒステリシス
のより小さい超弾性合金の開発。 【解決手段】 合金組成がNi:34〜49at%、Ti:48
〜52at%、Pd:3〜14at%からなるNiTiPd系超
弾性合金材、またはこの合金のNi及び/又はTiの一
部をCr,Fe,Co,V,Mn,B,Cu,Al,N
b,W,Zrの1種もしくは2種以上の元素の合計2at
%以内で置換したNiTiPd系超弾性合金材で、いず
れもAfからAf+5℃の温度範囲での応力負荷及び除
荷時の応力−歪み曲線における応力ヒステリシスが50〜
150MPaと非常に小さい超弾性合金材である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、応力ヒステリシス
の小さいNiTiPd系超弾性合金材とその製造方法及
びこの合金材による歯列矯正ワイヤーに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、金属材料に弾性限を越える応力
を負荷すると、永久変形する。ところがNiTi合金の
ようなある種の合金は、図1に示すごとくマルテンサイ
ト逆変態終了(Af)点の温度(以下Af点温度とい
う)を越える温度において、応力を負荷して歪みを10%
近くまで付与しても、除荷後には完全に元の形状にもど
る機能、即ち超弾性の機能を有しており、超弾性合金と
呼ばれている。
【0003】なお、図1は、代表的な超弾性合金の応力
負荷及び除荷時の応力−ひずみ曲線の一例を示すもので
あり、図1においては、応力負荷時の平坦部a−bの
応力P1 と応力除荷時の平坦部c−dの応力P2 の差
で、応力ヒステリシスという。
【0004】従来よりNiTi合金は、形状記憶特性を
利用してアクチュエーター、玩具、パイプ継ぎ手などに
応用されているが、超弾性特性を利用した用途も近年拡
大してきており、そのゴムのような応力−歪み特性を生
かし、様々な分野で利用されている。具体的には眼鏡フ
レーム、ブラジャーワイヤー、歯列矯正用ワイヤー、携
帯電話用アンテナ等への用途が多い。また、加工性や合
金特性を改善するためNiTi合金に、Cr,Fe,C
o,V,Mn,Bなどの金属元素を微量添加し、使用目
的に適合する組成の合金も製造されている。
【0005】一般に、超弾性合金材は、応力負荷時には
程よい応力で変形し、応力除荷時には大きな力が利用で
きるため、出来るだけ応力負荷時に近い応力で戻るこ
と、即ち応力ヒステリシスが小さいことが望ましい。ま
た、応力を除荷した時に、残留歪み量が0%、若しくは
0%に近いことも要求される。
【0006】図2は、NiTi超弾性合金の応力−ひず
み曲線の一例を示すが、図から明らかなように、応力ヒ
ステリシス(図2の)がおよそ 300〜400MPaと大きい
ため使用用途に限度があった。これに対し、応力ヒステ
リシスの小さい超弾性合金としてNiTiCu系合金が
開発された。図3は、NiTiCu系超弾性合金の応力
−ひずみ曲線の一例を示す。
【0007】NiTiCu合金は、Cu添加量の増加と
ともに応力ヒステリシスが小さくなり、Cuを10at%近
く添加した組成において応力ヒステリシスは、研究室レ
ベルでは 100〜200MPaにまで減少することが知られてお
り、さらにCuを20at%近くに増やすと応力ヒステリシ
スは40MPa まで減少する。(S.Miyazaki, I.Shiota,K.O
tsuka and H.tamura, Proc. of MRS Int'l. Mtg on Ad
v. Mats., Vol.9(1989)153page、Hiroshi Horikawa and
Tatsuhiko Ueki, Advanced Materials,'93.V/B:Shape
Memory Materials and Hydrides, edited by K. Otsuka
et al,Trans. Mat.Res.Soc.Jpn., Volume 18B 1113pag
e、U.S.P.No.5,044,947)。このようなNiTiCu系
合金は、主に歯列矯正用ワイヤーなどに利用されてい
る。
【0008】しかしながら、NiTiCu系超弾性合金
は、Cu添加量の増加に伴って熱間加工性が著しく低下
する。このため工場レベルではCu添加量の多い合金を
製造することができず、現状では工業的には応力ヒステ
リシス160MPa程度の値までしか減少させることができな
い。そこで加工性が優れ、かつ応力ヒステリシスが飛躍
的に小さい超弾性合金材の開発が待たれている。なお、
超弾性合金材には、前述のごとく荷重を除去した際の残
留歪み量が0%、若しくは0%に近いことも要求され
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
の従来技術の問題点を改善した応力ヒステリシスの小さ
い超弾性合金材を提供することであり、又本発明の他の
目的は、これらの合金材料の製造方法を提供することで
ある。さらに本発明の他の目的は、応力ヒステリシスの
小さい歯列矯正用の超弾性合金ワイヤーを提供すること
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明は、以下のとおりである。即ち本発明の第1
は、合金組成がNi:34〜49at%、Ti:48〜52at%、
Pd:3〜14at%からなる合金であって、かつAfから
Af+5℃の温度範囲での応力負荷及び除荷時の応力−
歪み曲線における応力ヒステリシスが50〜150MPaである
ことを特徴とするNiTiPd系超弾性合金材である。
【0011】また本発明の第2は、上記のNiTiPd
系合金組成において、Ni及び/又はTiの一部をC
r,Fe,Co,V,Mn,B,Cu,Al,Nb,
W,Zrの1種もしくは2種以上の元素の合計2at%以
内で置換した合金であって、かつAfからAf+5℃の
温度範囲での応力負荷及び除荷時の応力−歪み曲線にお
ける応力ヒステリシスが50〜150MPaであることを特徴と
するNiTiPd系超弾性合金材である。
【0012】また本発明の第3は、前記のいずれかの合
金組成のNiTiPd系合金鋳塊を、熱間加工で直径1
〜5mmまでの線材に加工し、次に必要に応じて冷間伸線
と焼鈍を繰り返して所定の線材寸法とした後焼鈍し、続
いてこれを冷間で減面加工率20%以上の加工を施して最
終の線材寸法とし、これを更に 300〜 700℃で最終熱処
理してAfからAf+5℃の温度範囲での応力負荷及び
除荷時の応力−歪み曲線における応力ヒステリシスを50
〜150MPaとすることを特徴とするNiTiPd系超弾性
合金材の製造方法である。
【0013】また本発明の第4は、前記いずれか合金組
成のNiTiPd系合金鋳塊を、熱間加工で厚さ1〜5
mmの条材に加工し、続いて該条材を冷間圧延率20%以上
の圧延加工を施して最終の条材寸法とし、これを更に 3
00〜700 ℃で最終熱処理してAfからAf+5℃の温度
範囲での応力負荷及び除荷時の応力−歪み曲線における
応力ヒステリシスを50〜150MPaとすることを特徴とする
NiTiPd系超弾性合金材の製造方法である。
【0014】更に、本発明の第5は、前記第1発明、第
2発明のいずれかに記載のNiTiPd系超弾性合金材
からなる歯列矯正用ワイヤーである。
【0015】以下に本発明について、更に詳細に説明す
る。本発明による前記のNiTiPd系超弾性合金材
は、従来のNiTiCu系合金材よりもさらに応力ヒス
テリシスが小さく、なおかつ熱間加工性が良好な超弾性
合金材を提供することができる。この合金材のAf点を
越える温度での応力負荷及び除荷時の応力−歪み曲線に
おける応力ヒステリシスの値は50〜150MPaであり、Ni
Ti系及びNiTiCu系合金材と比較して著しく小さ
い値であり、応力除荷・負荷に際して可逆的な挙動をと
る。
【0016】なお、図2,図3,図4に、それぞれ代表
的なNiTi,NiTiCu,NiTiPd超弾性合金
材のAf点を越える温度での応力負荷及び除荷時の応力
−歪み曲線の一例を示す。
【0017】本発明の第1のNiTiPd系超弾性合金
材において、Pd量を3〜14at%としたのは、Pd量が
3%未満では応力ヒステリシスを小さくする効果がな
く、Pd量が14%を越えると冷間加工性が悪くなってく
るため実用に適さないからである。
【0018】また、Ni:34〜49at%、Ti:48〜52at
%としたのは、この範囲外の組成になると加工性が低下
するとともに荷重を除去した後に歪みが残留するように
なるからである。
【0019】本発明のNiTiPd系超弾性合金におい
て、応力ヒステリシスを小さくすることと、良好な熱間
加工性を得るための最も望ましい合金組成は、Ti:50
at%、Ni:41〜45at%、Pd: 5〜9at%の範囲であ
る。
【0020】また、本発明の第2の超弾性合金材におい
て、前記のNiTiPd系合金組成のNi及び/又はT
iの一部をCr,Fe,Co,V,Mn,B,Cu,A
l,Nb,W,Zrの1種もしくは2種以上の元素で、
且つこれらの合計を2at%以内で置換するのは、合金材
の加工性やAf点温度等の合金特性を改善するためであ
り、また使用目的に適合するように合金特性を変更する
ためである。
【0021】前記第1,第2発明において、AfからA
f+5℃の温度範囲での応力負荷及び除荷時の応力−歪
み曲線における応力ヒステリシスが50〜150MPaとしたの
は、いうまでもなく、これが本合金材で得らえる範囲で
あり、このように小さい方が使用上好ましいからであ
る。なお、本発明合金材で歪み8%まで応力を負荷し、
次いでこれを除荷した時の残留歪量は、 0.5%以下とな
る。
【0022】本発明の第3及び第4は、NiTiPd系
超弾性合金材の製造方法に関するものである。この合金
材の製造は、まず前記合金組成の鋳塊を熱間加工によ
り、線径1〜5mmの線材とするか、又は板厚1〜5mmの
条材とする。本発明によるNiTiPd系超弾性合金材
は、熱間加工性が良好であるため、前記のごとく細径又
は薄くまで熱間で加工することができ、製造コストを大
きく下げることができる。なお、ここでいう線径1〜5
mmの線材の断面形状は、円形が製造し易く一般的である
が、楕円形、多角形でもよく、この場合の線径1〜5mm
は、楕円形、多角形の最大径を指している。
【0023】以下線材の製造工程について説明するが、
条材についても同様である。このように熱間加工した線
材は、必要に応じて冷間伸線と焼鈍を繰り返して所定の
線材寸法とした後焼鈍し、続いてこれに冷間で減面加工
率20%以上の加工を施して最終の線材寸法とし、これを
更に 300〜 700℃で最終熱処理する。なお、これに限定
されるものではないが、本合金材の熱間加工は、 700〜
900℃で行うのが望ましく、また焼鈍は 600 〜 800℃
で行うのが望ましい。
【0024】前記のごとく熱間加工で線径1〜5mmの線
材とするのは、途中の冷間伸線と焼鈍をできるだけ無く
すか、少なくするためであり、最終の仕上げ寸法近くま
で熱間加工することが望ましい。
【0025】以上のことから、例えば、最終の仕上げ寸
法のワイヤーが線径1mmで、熱間加工材が線径 1.2mmの
場合は、途中の冷間伸線と焼鈍は不要となり、熱間加工
材線径 1.2mmから、冷間伸線により線径1mmまで加工す
ることになる(冷間減面率、約30%)。また、最終の仕
上げ寸法のワイヤーが線径1mmで、熱間加工材が線径3.
0mmの場合は、熱間加工の後、冷間伸線と焼鈍を繰り返
して、線径 1.2mmとした後焼鈍し、これを冷間伸線によ
り線径1mmまで加工することになる(最終冷間減面率、
約30%)。
【0026】以上のようにして冷間で減面加工率20%以
上の加工を行った線材は、最後に300〜 700℃の温度範
囲で熱処理するが、このような加工率の冷間加工と熱処
理を行うのは、この加工率の範囲と熱処理温度の範囲に
おいて、除荷後に歪みが残留せず良好な超弾性特性が得
られるからである。
【0027】なお、線材の最終の断面形状は、円形、楕
円形、多角形あるいは平行四辺形のコーナー部のみ円弧
としたもののいずれでもよい。また、冷間での減面加工
率は20%以上であるが、上限は約60%程度である。これ
以上の加工率では材料が破断してしまうからである。
【0028】本発明の第5は、合金組成が前記第1発
明、第2発明のいずれかに記載のNiTiPd系合金
で、かつAfからAf+5℃の温度範囲での応力負荷及
び除荷時の応力−歪み曲線における応力ヒステリシスが
50〜150MPaの超弾性合金材からなる歯列矯正用ワイヤー
である。超弾性合金材を歯列矯正ワイヤーに使用する場
合、ワイヤーを歯に装着する作業(応力負荷時)では適
度な力で引張り、装着した後に歯を移動せしめるための
応力除荷時の張力はできるだけ大きいこと、即ち応力ヒ
ステリシスが小さいことが望まれている。従って、本発
明のNiTiPd系超弾性合金材は、応力ヒステリシス
が50〜150MPaで小さいため、歯列矯正ワイヤーとしてこ
れまでにない良好な特性を備えているということができ
る。
【0029】
【実施例】実施例1 表1に示す組成の本発明例及び比較例の超弾性合金材を
試作した。即ち、表1に示す組成からなる合金を溶解鋳
造して鋳塊とし、これを 750〜 850℃の熱間で圧延加工
して、直径3mmの線材とし、次にこれを冷間伸線と焼鈍
を繰り返して所定の細径の線材(直径約 1.2mm)として
焼鈍( 700℃)した。これを冷間で30%の減面加工率で
伸線し、線径1mmのワイヤーとした。その後これを 400
℃で60分の最終熱処理をして試験材を製作した。なお、
熱間加工において、NiTiPd系合金材(表1の No.
1〜10)は、線材表面に割れもなく良好であったが、N
iTiCu合金材(表1の No.11〜12)は、線材表面に
割れが発生した。従ってNiTiCu合金材は、熱間加
工材の良好な部分について線材加工を実施して線径1mm
の試験材を製作し、さらに熱処理を行った。これらの線
材について応力負荷時及び除荷時の応力−歪み曲線を求
めた。
【0030】試験温度は各合金のAfからAf+5℃の
範囲とし、歪み4%まで応力を負荷した後除荷する試験
を実施した。応力−歪み曲線から、応力負荷時と除荷時
の応力差(応力ヒシテリシス)を求めて表1に示した。
また、各合金のAf点(マルテンサイト逆変態終了点)
は、熱分析により測定し表1に記した。また、参考まで
に応力除荷時の歪み2%での応力(MPa) も表1に併記し
た。
【0031】
【表1】
【0032】表1から明らかなごとく、No.11 及びNo.1
2 のNiTiCu合金は、熱間加工の際に割れが生じ歩
留まりが著しく低下した。No.12 は応力ヒステリシスが
172MPa で比較的良好な特性を示したが熱間加工性を考
慮すると工場レベルでの製造は難しく、またNiTiC
u合金ではこれ以上の応力ヒステリシスの低下は望めな
い。一方、 No.1〜10のNiTiPd系合金は、熱間加
工性が良好ですなわち熱間圧延性においては、NiTi
Cu合金のように線材の表面に割れは発生せず。線径3
mmまで熱間による加工が可能であった。
【0033】比較例の No.9及び10は、加工性は良好で
あったが、応力ヒステリシスが大きく従来のNiTiC
u系合金と比較して特性上優れる点はない。これに対し
本発明例である No.1〜8は、熱間加工性が良好である
と共に応力ヒステリシスがおよそ50〜150MPaと小さく、
NiTiCu合金と比較して1/2 〜9/10であると同時に
優れた熱間加工性を示した。
【0034】また、 No.5〜8の合金は、NiTiPd
合金のNi,Tiの一部をCr,Fe,Co,Vの元素
により置換した実施例である。Cr,Fe,Co,Vの
添加量が合計で2at%を越えると、加工性が著しく低下
するため加工は不可能であった。また、添加元素の種類
が2種以上であっても添加量が合計で2at%以下であれ
ば、熱間加工性が良好であり、応力ヒステリシスが80〜
150Mpaと小さいNiTiPd系超弾性合金の製造が可能
である。
【0035】実施例2 冷間加工後の最終熱処理温度を変化させた場合の、本発
明例及び比較例を次にに示す。具体的には、表1に示し
た No.2の合金について、前記実施例1と同様にして冷
間加工の減面率が30%で線径が1mmのワイヤーを試作
し、その後表2に示す条件で最終熱処理した。なお本発
明例 No.17は最終の冷間圧延率を30%とすることにより
厚さが1mmで幅3mmの条材について、以下と同様な試験
を行って結果を表2に併記した。
【0036】この線材について、歪み8%まで応力を負
荷した以外は実施例1と同様に試験して、応力負荷時及
び除荷時の応力−歪み曲線を求めた。この場合の応力除
荷後の残留歪み量(%)と応力ヒステリシス(MPa) を求
め、その結果を表2に併記した。
【0037】
【表2】
【0038】表2から明らかなごとく、熱処理温度 250
℃の材料は、歪み7%で破断した。また、熱処理温度 7
50℃の材料は、応力除去後の残留歪み量が大きいため不
適である。これに対し、熱処理温度 300〜 700℃の材料
においては、残留歪みがほぼ0%であるとともに、応力
ヒステリシスは80〜100MPaと小さい数値をとり、優れた
超弾性合金であることがわかる。
【0039】実施例3 表1の No.3の組成の合金について、実施例1と同様に
して直径3mmまで熱間加工を施し、次にこれを冷間伸線
と焼鈍を繰り返して所定の細径の線材とし、続いてこれ
を焼鈍( 700℃)した。次にこれを表3に示す減面加工
率で伸線し、線径1mmのワイヤーを試作した。その後 4
00℃で60分の最終熱処理を施した。なお本発明例 No.24
は板厚3mmまで熱間圧延を施し、その後さらに、焼鈍と
圧延を繰り返して最終の圧延加工時の冷間圧延率を40%
とし、その後 400℃×60分の最終熱処理をした条材であ
る。
【0040】この線材について、歪み8%まで応力を負
荷した以外は実施例1と同様に試験して、応力負荷時及
び削除時の応力−歪み曲線を求めた。この場合の応力除
荷後の残留歪み量(%)と応力ヒステリシス(MPa) を求
め、その結果を表3に併記した。
【0041】
【表3】
【0042】表3から明らかなごとく、減面加工率0
%、10%のサンプルは、残留歪み量が大きいが、減面加
工率20%以上のサンプルでは、いずれも残留歪み量が小
さくほぼ0%である。従って、減面加工率20%以上にお
いて、残留歪みがほぼ0%で、応力ヒステリシスが約80
〜100MPaの優れた超弾性合金を提供することができる。
【0043】実施例4 歯列矯正ワイヤーとしての使用を想定して、次の実験を
行った。表4の合金組成の鋳塊を熱間加工して、線径3
mmの線材とした。これを冷間伸線と焼鈍を繰り返して線
径0.56mmの線材にし、これを 700℃で焼鈍した。次にこ
れを減面加工率35%で最終の冷間伸線し、線径0.45mmの
線材とした。その後、この線材を表4の条件で最終の熱
処理を行い、歯列矯正ワイヤーとした。
【0044】このように作製した歯列矯正ワイヤーにつ
いて、応力負荷時及び除荷時の応力−歪み曲線を求め
た。この場合の試験温度は30℃で、歪み8%まで荷重を
負荷し、更に荷重を除荷して、応力ヒステリシス(MPa)
を求めた。また応力除荷時の歪み2%での応力(MPa) も
表4に併記した。
【0045】
【表4】
【0046】本発明例、比較例ともに応力除荷後の残留
歪み量は、 0.2%以下と小さく、超弾性特性としては良
好であった。また、比較例のNi44.5Ti50Cu5.0
0.5 合金材の応力ヒステリシスは175MPaであるのに対
して、本発明例のNi42.5Ti50Pd7.5 合金材の応力
ヒステリシスは130MPaで、比較例の約 3/4であった。こ
の実験例から明らかなごとく、本発明の超弾性合金材
は、歯列矯正ワイヤーとして使用する場合、ワイヤーを
歯に装着する時には、可能な限り小さい力で引張って歯
に取り付けられ、また治療時には可能な限り大きい力で
歯を移動させることができる。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、組成が
Ni:34〜49at%、Ti:48〜52at%、Pd:3〜14at
%からなるNiTiPd系超弾性合金材、またはこの合
金のNi及び/又はTiの一部をCr,Fe,Co,
V,Mn,B,Cu,Al,Nb,W,Zrの1種もし
くは2種以上の元素の合計2at%以内で置換したNiT
iPd系超弾性合金材であって、応力ヒステリシスが50
〜150MPaと非常に小さい超弾性合金材である。上記組成
のNiTiPd系超弾性合金材は、熱間加工性に優れる
ため直径1〜5mmの細径まで熱間加工が可能であり低い
コストでの製造が可能である。そして熱間加工後に減面
加工率にして20%以上の最終の冷間伸線後、300〜 700
℃で最終熱処理することにより、応力ヒステリシスが50
〜150MPaとなり、且つ応力除荷後の残留歪み量も0%、
若しくは0%に近い優れた超弾性合金材を提供できる。
また、本発明の超弾性合金材を歯列矯正ワイヤーとして
使用する場合も、歯に装着、治療時に優れた特性がえら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】代表的な超弾性合金の応力負荷及び除荷時の応
力と歪みとの関係の一例を示す応力−歪み曲線図であ
る。
【図2】NiTi超弾性合金の応力負荷及び除荷時の応
力と歪みの関係の一例を示す応力−歪み曲線図である。
【図3】NiTiCu系超弾性合金(NiTiCuCr合金)の
応力負荷及び除荷時の応力と歪みの関係の一例を示す応
力−歪み曲線図である。
【図4】本発明に係わるNiTiPd超弾性合金の応力
負荷及び除荷時の応力と歪みの関係の一例を示す応力−
歪み曲線図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金組成がNi:34〜49at%、Ti:48
    〜52at%、Pd:3〜14at%からなる合金であって、か
    つAfからAf+5℃の温度範囲での応力負荷及び除荷
    時の応力−歪み曲線における応力ヒステリシスが50〜15
    0MPaであることを特徴とするNiTiPd系超弾性合金
    材。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のNiTiPd系合金組
    成のNi及び/又はTiの一部をCr,Fe,Co,
    V,Mn,B,Cu,Al,Nb,W,Zrの1種もし
    くは2種以上の元素の合計2at%以内で置換した合金で
    あって、かつAfからAf+5℃の温度範囲での応力負
    荷及び除荷時の応力−歪み曲線における応力ヒステリシ
    スが50〜150MPaであることを特徴とするNiTiPd系
    超弾性合金材。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2のいずれかに記載
    の合金組成の鋳塊を、熱間加工で直径1〜5mmまでの線
    材に加工し、次に必要に応じて冷間伸線と焼鈍を繰り返
    して所定の線材寸法とした後焼鈍し、続いてこれを冷間
    で減面加工率20%以上の加工を施して最終の線材寸法と
    し、これを更に 300〜 700℃で最終熱処理してAfから
    Af+5℃の温度範囲での応力負荷及び除荷時の応力−
    歪み曲線における応力ヒステリシスを50〜150MPaとする
    ことを特徴とするNiTiPd系超弾性合金材の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は請求項2のいずれかに記載
    の合金組成の鋳塊を、熱間加工で厚さ1〜5mmの条材に
    加工し、続いて該条材を冷間圧延率20%以上の圧延加工
    を施して最終の条材寸法とし、これを更に 300〜700 ℃
    で最終熱処理してAfからAf+5℃の温度範囲での応
    力負荷及び除荷時の応力−歪み曲線における応力ヒステ
    リシスを50〜150MPaとすることを特徴とするNiTiP
    d系超弾性合金材の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1又は請求項2のいずれかに記載
    のNiTiPd系超弾性合金材からなる歯列矯正用のワ
    イヤー。
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