JPH0953170A - 鉄系材料の表面処理方法 - Google Patents

鉄系材料の表面処理方法

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JPH0953170A
JPH0953170A JP21026195A JP21026195A JPH0953170A JP H0953170 A JPH0953170 A JP H0953170A JP 21026195 A JP21026195 A JP 21026195A JP 21026195 A JP21026195 A JP 21026195A JP H0953170 A JPH0953170 A JP H0953170A
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nitrogen
iron
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ion beam
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JP21026195A
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Saburo Otani
三郎 大谷
Toshinori Takagi
俊宜 高木
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ION KOGAKU KENKYUSHO KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温でかつ短時間で窒素原子を深さ方向に均
一に添加することができ、改質層の剥離の虞が少ない鉄
系材料の表面処理方法を提供することである。 【解決手段】 Feよりも窒化物生成自由エネルギーが
小さいTi、V、CrまたはBを含む鋼材からなる試料
100を窒素イオン照射装置の試料ホルダ11に取り付
け、真空ポンプ13により真空槽10内を真空状態にし
た後、試料ホルダ11の背面のヒータ12により試料1
00を300℃〜450℃に加熱する。その後、バケッ
ト型イオン源14に窒素ガスを導入し、窒素イオンを5
00V〜10kVの電圧で加速して窒素イオンビームを
試料100の表面に照射する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼材等の鉄系材料
の耐磨耗性を向上させるための表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼材等の鉄系材料は、金型、工具、一般
産業機械の部材等の材料として用いられている。鋼材の
耐磨耗性を向上させるための表面処理方法として、セラ
ミックス皮膜被覆法、拡散処理法およびイオン注入法が
知られている。
【0003】セラミックス皮膜被覆法は、硬質のセラミ
ックスを鋼材の表面に被覆するものであり、セラミック
ス皮膜により優れた耐磨耗性を発揮する。また、拡散処
理法は、熱拡散を利用して鋼材の内部に窒素や炭素を浸
透させることにより改質層を形成するものである。例え
ば、拡散処理法の1つであるイオン窒化法では、鋼材を
窒素イオンを含むガス雰囲気中に配置するとともにその
鋼材に−500V程度の負電圧を印加する。このとき、
鋼材の表面に窒化物層を形成する化学反応を起こすため
に、鋼材を500℃〜600℃に加熱して保持する。ま
た、イオン注入法は、窒素イオンを300kV程度の高
電圧で加速し、鋼材に注入することにより改質層を形成
するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】セラミックス皮膜被覆
法によれば、セラミックス皮膜自体は優れた耐磨耗性を
発揮するが、鋼材を衝撃荷重を受けるような用途で使用
する場合には、セラミックス皮膜が鋼材から剥離する虞
があり、用途が制限される。
【0005】これに対して、拡散処理法によれば、窒素
や炭素の熱拡散により形成された改質層が剥離する虞は
少ないが、窒素や炭素の化合物層を鋼材の表面に形成す
るために鋼材を高温に保持する必要がある。
【0006】一方、イオン注入法によれば、改質層の剥
離の虞が少なく、かつ低温で鋼材に改質層を形成するこ
とができる。しかしながら、注入原子が表層部の薄い領
域に深さ方向に不均一に分布し、改質効果が深さにより
異なる。
【0007】また、イオン注入法により鋼材に改質層を
形成するためには、イオン注入装置を用いる必要があ
る。通常のイオン注入装置は、注入する元素をイオン化
してイオンビームとして引き出すイオン源、所定の質量
のイオンだけを選別する質量分析器、イオンに所定のエ
ネルギーを与える加速器、イオンビームを整形して走査
するビームライン、試料を設置するエンドステーショ
ン、真空排気系および制御系からなる。このように、イ
オン注入法では、大がかりで高価なイオン注入装置が必
要となる。
【0008】さらに、窒素イオンを高電圧で加速する必
要があるので大きな電力が必要となる。また、高電圧で
加速された窒素イオンは大きな運動エネルギーを有する
ので、窒素イオンの量が多いと試料の温度が上昇し、焼
入れ処理された鋼材が軟化してしまう。そのため、単位
時間当たりに注入する窒素イオンの量を少なくする必要
があり、改質層を形成するために長時間を要することと
なる。特に、改質層の厚さを厚くするためには加速電圧
を高くしなければならないので、さらに大きな電力が必
要となり、かつ処理時間がさらに長くなる。上記の理由
から、イオン注入法による鋼材の表面処理は実用化が困
難である。
【0009】本発明の目的は、低温でかつ短時間で窒素
原子を深さ方向に均一に添加することができ、改質層の
剥離の虞が少ない鉄系材料の表面処理方法を提供するこ
とである。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】本発明
に係る鉄系材料の表面処理方法は、鉄(Fe)よりも窒
化物生成自由エネルギーが小さい元素を含む鉄系材料を
所定の温度範囲内に保持し、鉄系材料に500V以上1
0kV以下の電圧で加速した窒素イオンビームを照射す
るものである。
【0011】本発明に係る鉄系材料の表面処理方法にお
いて、500V以上10kV以下の電圧で加速された窒
素イオンビームを鉄系材料に照射すると、窒素原子が鉄
系材料の表面から数nm程度のごく浅い領域に添加され
る。この窒素原子は、まず鉄系材料の主成分である鉄原
子と結合するが、鉄系材料に鉄よりも窒化物生成自由エ
ネルギーが小さい元素が含まれているので、鉄原子との
結合を離れて、窒化物生成自由エネルギーが小さい元素
と再結合する。
【0012】このとき、鉄系材料は所定の温度範囲内に
保持されているので、窒素原子は鉄系材料内で拡散移動
することが可能となる。したがって、鉄系材料の表面か
ら供給される窒素原子は、窒化物生成自由エネルギーが
小さい元素を求めて次々と内部に向かって拡散移動し、
窒化物生成自由エネルギーが小さい元素と再結合する。
それにより、窒化物生成自由エネルギーが小さい元素の
微細な窒化物が再析出し、鉄系材料の表面から深さ方向
に窒素原子が均一に分布した改質層が形成される。その
改質層が鉄系材料の硬度を高め、摩擦係数を低下させて
改質効果を発揮する。
【0013】本発明に係る表面処理方法では、窒素イオ
ンビームの照射時間または加熱温度を調整することによ
り、鉄系材料の表面から所望の深さまで窒素原子が均一
に分布した改質層を形成することができる。
【0014】特に、窒素イオンビームを500V以上の
電圧で加速することにより、鉄系材料の表層部に窒素原
子を添加するために必要な運動エネルギーが窒素イオン
に与えられる。また、窒素イオンビームを10kV以下
の電圧で加速することにより、電力消費を少なくするこ
とができる。この場合、窒素イオンの運動エネルギーが
小さいため、鉄系材料の温度上昇が抑制される。これに
より、鉄系材料に照射する窒素イオンビームの量を多く
することができ、短時間で鉄系材料の表面に改質層を形
成することが可能となる。
【0015】しかも、窒素イオンビームを500V以上
10kV以下の電圧で加速するためには、大がかりで高
価なイオン注入装置を用いる必要がなく、構造が簡単で
安価なイオン照射装置を用いることができるので、実用
化が容易である。
【0016】特に、窒素イオンビームを500V以上5
kV以下の電圧で加速することにより、窒素イオンが鉄
系材料の表面に衝突した際に生じるスパッタリングを小
さくすることができる。それにより、スパッタリングに
よる表面層の除去現象を少なくすることができる。
【0017】所定の温度範囲は300℃以上450℃以
下であることが好ましい。鉄系材料を300℃以上に保
持することにより、鉄系材料の表層部に添加された窒素
原子が拡散移動できる距離を大きくすることができる。
それにより、鉄系材料の表層部に次々と添加される窒素
原子が狭い領域に集積することが防止され、窒素ガス気
泡が発生する割合および表面から窒素原子が逸散する割
合が減少する。また、鉄系材料を450℃以下に保持す
ることにより、加熱に必要なエネルギーを最小限にする
ことができるとともに、鉄系材料が熱影響を受けて軟化
してしまうことが防止される。
【0018】なお、鉄系材料に鉄よりも窒化物生成自由
エネルギーが小さい元素が含まれていないと、鉄系材料
の表層部に添加された窒素原子が鉄と結合することによ
り形成された鉄窒化物は不安定であるため、300℃以
上の温度では鉄窒化物が分解して表面から逸散する割合
が大きい。また、鉄系材料の表層部には窒素イオンビー
ムの照射により生じる多量の欠陥および多量の鉄原子が
存在するので、窒素原子が鉄系材料の内部へ移動しにく
く、鉄系材料の表面側ほど窒素原子の濃度が高い不均一
な改質層が形成される。
【0019】これに対して、本発明に係る表面処理方法
では、鉄系材料が鉄よりも窒化物生成自由エネルギーが
小さい元素を含むので、窒素原子の添加時に窒素原子が
主成分の鉄と結合しても、すぐに分解して窒化物生成自
由エネルギーが小さい元素と再結合し、安定な窒化物を
形成する。
【0020】特に、鉄よりも窒化物生成自由エネルギー
が小さい元素が、チタン(Ti)、バナジウム(V)、
クロム(Cr)またはボロン(B)であってもよい。鉄
系材料がチタン、クロムまたはバナジウムを含む場合に
は、硬質の微細なTiN、VN、CrNまたはCr2
が生成され、高い硬度を有する改質層が得られる。鉄系
材料がボロンを含む場合には、潤滑性を有するBNが生
成され、摩擦係数が低下する。いずれの場合にも、鉄系
材料の耐磨耗性が向上する。
【0021】本発明に係る表面処理方法によれば、鉄系
材料の表層部自体が改質されるので、セラミックス皮膜
被覆法のように改質層が剥離する虞が少ない。また、窒
素イオンに運動エネルギーを与えて鉄系材料の表面より
内部に強制的に添加しているので、鉄系材料の表層部で
の化学反応が不要となる。そのため、従来の拡散処理法
に比べて低い温度での処理が可能となる。さらに、低い
電圧で加速した窒素イオンビームの照射により鉄系材料
の表面から深い位置まで均一に窒素原子を再分布させる
ことができるので、イオン注入法に比べて耐磨耗性の効
果が安定して持続する改質層を得ることができる。しか
も、鉄系材料の温度上昇が抑制されるので、短時間で改
質層を形成することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例における
鉄系材料の表面処理方法を図面を参照しながら説明す
る。
【0023】図1は本実施例の表面処理方法に用いる窒
素イオン照射装置の概略図である。真空槽10内に試料
ホルダ11が回転可能に配置されている。試料ホルダ1
1の前面に表面処理されるべき試料100が取り付けら
れ、試料ホルダ12の背面に試料加熱用のヒータ12が
取り付けられている。真空槽10内は真空ポンプ13に
より高真空状態に保たれる。また、真空槽10には、バ
ケット型イオン源14が設けられている。バケット型
(多極磁界大電流型)イオン源14の前面には引き出し
電極15が設けられている。このバケット型イオン源1
4は、直径200mmの窒素イオンビームを引き出すこ
とができる。
【0024】試料100は、Feよりも小さい窒化物生
成自由エネルギーを有する元素を1〜30原子%含む炭
素鋼等の鋼材からなる。Feよりも小さい窒化物生成自
由エネルギーを有する元素としては、Ti、V、Crま
たはBを用いることが好ましい。
【0025】真空ポンプ13により真空槽10内を10
-4Pa以下の真空状態にした後、試料ホルダ11の背面
のヒータ12により試料100を300℃〜450℃に
加熱する。その後、バケット型イオン源14に窒素(N
2 )ガスを導入し、窒素イオンを500V〜5kVの電
圧で加速して窒素イオンビームを試料100の表面に照
射する。この窒素イオンビームは、N+ およびN2 +
含む。このようにして、鋼材からなる試料100の表面
から所定の深さまで窒素原子が均一に分布した改質層が
得られる。
【0026】図2に窒素イオンが鋼材の表面に衝突した
際に生じるスパッタリングの量と加速電圧との関係を示
す。図2に示すように、10kV以下の加速電圧の領域
では、加速電圧が低いほどスパッタ量が少なくなってい
る。したがって、加速電圧を5kV以下にすることによ
りスパッタリングによる表面層の除去現象を少なくする
ことができる。
【0027】本実施例では、以下に示す条件で複数の試
料を作製し、図1の窒素イオン照射装置を用いてそれら
の試料の表面処理を行った。図3は本実施例で作製した
試料を示す図である。図3(a)に示す試料Aは、面方
位が(100)のシリコンウエハ1上にイオンビームス
パッタリング法を用いてTiを9原子%含むFe−Ti
合金層2aを蒸着したものである。図3(b)に示す試
料Bは、同様のシリコンウエハ1上にイオンビームスパ
ッタリング法を用いてTiを19原子%含むFe−Ti
合金層2bを蒸着したものである。図3(c)に示す試
料Cは、同様のシリコンウエハ1上にイオンビームスパ
ッタリング法を用いてFe層2cを蒸着したものであ
る。Fe−Ti合金層2a,2bおよびFe層2cの厚
さは本実施例における窒素の分布深さを十分越える4.
5〜6.0μmに設定した。
【0028】これらの試料を図1の窒素イオン照射装置
の試料ホルダ11に取り付け、真空槽10内を6.6×
10-4Pa以下の真空状態にした後に、99.999%
の高純度窒素ガスをバケット型イオン源14に導入し、
約1.0×10-2Paの真空下で試料に窒素イオンの照
射を行った。窒素イオンの照射条件を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】表1に示すように、窒素イオンビームの電
流密度を0.48A/m2 とし、窒素イオンビームの照
射時間を7200秒(=2時間)とした。この条件にお
けるイオン数は2.2×1022個/m2 に相当する。な
お、図1の窒素イオン照射装置は質量分析器を備えてい
ないので、窒素イオン中にはN2 + とN+ とが混在して
おり、注入窒素原子数はイオン数の約1.5倍となる。
【0031】窒素イオンビームの加速電圧は200〜2
000Vの間で変化させた。また、各試料は270〜4
00℃の範囲内の所定温度に加熱して保持した。図4
(a),(b),(c)はそれぞれ試料A、試料Bおよ
び試料Cにおける深さ方向の窒素濃度の分布の測定結果
を示す図である。窒素イオン照射後の窒素濃度の深さ方
向の分布はKratos社製の二次イオン質量分析装置
(SIMS)を用いて分析した。
【0032】図4(a)に示すように、試料Aを270
℃に加熱した場合には、窒素が表面から0.4μm以下
の浅い範囲に存在しているが、試料Aを320℃以上に
加熱すると、窒素が1.5μmを越える深さまで広がる
分布を示した。窒素の分布深さは試料Aの加熱温度の上
昇に伴って増大し、試料Aを400℃に加熱した場合に
は、表面から3μm近くの深さまで達する比較的均一な
窒素分布が得られている。
【0033】また、図4(b)に示すように、試料Bを
270℃に加熱した場合には、試料Aとほぼ同様に高い
窒素濃度で浅い分布を示し、試料Bを320℃に加熱し
た場合には、窒素が表面から約1μmの深さにまで均一
に広がる分布を示すが、窒素イオンビーム照射時の加熱
温度がさらに高くなっても窒素分布の形状に顕著な違い
は認められなかった。この試料Bについては、窒素イオ
ンビームの照射時間を変化させることにより窒素分布の
深さを調整することができる。
【0034】一方、図4(c)に示すように、試料Cを
270℃に加熱した場合には、窒素は表面から0.2μ
m以下のごく表層部にしか分布していないが、試料Cを
320〜350℃に加熱すると、窒素の分布深さは1.
0μm近くに達する。しかしながら、表層部と内部とで
濃度の異なる不均一な分布を示している。
【0035】これらの結果から、Tiを含むFe−Ti
合金層を300℃程度〜400℃程度に加熱して窒素イ
オンビームを照射した場合には、深さ方向に均一な窒素
分布を有する改質層が形成されることがわかる。
【0036】図5は試料A,B,Cにおいて窒素イオン
ビームの加速電圧と窒素の分布深さとの関係の測定結果
を示す図である。この測定では、窒素イオンビームの電
流密度を0.48A/m2 とし、試料の加熱温度を35
0℃とし、窒素イオンビームの照射時間を7200秒と
し、窒素イオンビームの加速電圧を200V〜2kVの
間で変化させた。なお、窒素の分布深さは、窒素濃度が
表面部の半分となる深さで表わしている。
【0037】図5に示すように、試料A,B,Cにおい
て、加速電圧が500V以下では窒素の浅い分布しか得
られないが、加速電圧が500Vを越えると、窒素の分
布深さが増加している。特に、試料Aでは、加速電圧の
増加に従って窒素の分布深さが増大している。この結果
から、500Vから2kV程度の加速電圧によって十分
広い深さ領域の窒素分布を得ることが可能であることが
わかる。
【0038】また、別の実験において、試料Aを270
℃に加熱して1kVの電圧で加速した窒素イオンビーム
を照射した場合には、表面硬さが650Hv(10g荷
重)となったのに対して、試料Aを320℃に加熱して
1kVの電圧で加速した窒素イオンビームを照射した場
合には、1250Hv(10g荷重)の表面硬さが得ら
れた。また、試料Aを320℃に加熱して2kVの電圧
で加速した窒素イオンビームを照射した場合には、12
00Hv(10g荷重)の表面硬さが得られた。一方、
試料Cを350℃に加熱して1kVの電圧で加速した窒
素イオンビームを照射した場合には、550Hv(10
g荷重)の表面硬さが得られた。いずれの場合も、窒素
イオンビームの電流密度は0.48A/m2 であり、窒
素イオンビームの照射時間は7200秒である。
【0039】このように、Tiを含むFe−Ti合金層
を300℃以上に加熱した場合には、300℃よりも低
い温度に加熱した場合に比べて表面硬さが硬くなってい
る。また、Tiを含むFe−Ti合金層の場合には、F
e層の場合に比べて表面硬さが硬くなっている。
【0040】また、Tiを含むFe−Ti合金層を30
0℃〜450℃の範囲内の温度に加熱して1kVの電圧
で加速した窒素イオンビームを照射した場合には、30
0℃よりも低い温度に加熱した場合およびTiを含まな
いFe層に窒素イオンビームを照射した場合に比べて摩
擦係数および磨耗深さが小さくなることを別の実験によ
り確認している。
【0041】以上のように、本実施例の表面処理方法に
よれば、低温でかつ短時間で鋼材に窒素原子を深さ方向
に均一に添加することができ、耐磨耗性が向上した改質
層が得られる。
【0042】なお、上記実施例では、Tiを含むFe−
Ti合金層に窒素イオンビームを照射しているが、Vを
含むFe−V合金層、Crを含むFe−Cr合金層また
はBを含むFe−B合金層に窒素イオンビームを照射し
ても同様の結果が得られる。
【0043】また、主成分のFeに加えて炭素(C)お
よびマンガン(Mn)を含有する炭素鋼を用いても同様
の結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における表面処理方法に用い
るイオン照射装置の概略図である。
【図2】加速電圧とスパッタ量との関係を示す図であ
る。
【図3】本発明の一実施例において用いた試料を示す図
である。
【図4】図3の試料における窒素濃度の深さ方向の分布
の測定結果を示す図である。
【図5】図3の試料における窒素イオンビームの加速電
圧と窒素の分布深さとの関係の測定結果を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 シリコンウエハ 2a,2b Fe−Ti合金層 2c Fe層 10 真空槽 11 試料ホルダ 12 ヒータ 13 真空ポンプ 14 バケット型イオン源 15 引き出し電極 100 試料

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄よりも窒化物生成自由エネルギーが小
    さい元素を含む鉄系材料を所定の温度範囲内に保持し、
    前記鉄系材料に500V以上10kV以下の電圧で加速
    した窒素イオンビームを照射することを特徴とする鉄系
    材料の表面処理方法。
  2. 【請求項2】 前記所定の温度範囲は300℃以上45
    0℃以下であることを特徴とする請求項1記載の表面処
    理方法。
  3. 【請求項3】 鉄よりも窒化物生成自由エネルギーが小
    さい前記元素は、チタン、バナジウム、クロムまたはボ
    ロンであることを特徴とする請求項1または2記載の鉄
    系材料の表面処理方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002256967A (ja) * 2001-02-26 2002-09-11 Teikoku Piston Ring Co Ltd 摺動部材及びその製造方法

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