JP7421373B2 - 浸炭方法及び被処理基材 - Google Patents

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Description

本発明は浸炭法に関わり、その処理方法と本手法により処理された被処理基材に関する。
耐摩耗性を必要とする部品では、硬い表面であるととともにその芯部には、靱性を持たせるために柔らかくする必要がある。具体的には、式(1)に示すように部品表面における塑性指数φの係数(ヤング率E/硬度H)を小さくする必要がある。
ここで,この芯部のヤング率Eを低く保ち、表面硬度Hを高くする手段として浸炭法がある。「浸炭」とは、例えば低炭素鋼の表面から炭素を浸透させて、表面の炭素濃度を高くしてから焼き入れを行うことで表面に硬い層をつくる方法を指す。なぜなら、焼き入れした鋼の硬さは、主に炭素の含有量に依存し、炭素濃度が高いと硬く、低いと柔らかくなるからである(非特許文献参照)。
浸炭法には、古くは固体浸炭,液体浸炭が使われていたが、近年では、ガス浸炭,真空浸炭,プラズマ浸炭が利用されている。
ガス浸炭では、濃度調整可能な炭化水素ガスなどが変成した浸炭性ガス中で被処理品を加熱し浸炭を行うが、大気空間へのガス導入であるため浸炭中には酸素が介在する。従って、鋼表面には粒界酸化が発生し浸炭異常層を形成してしまう。また、浸炭ガスは炭化水素を用いているため被処理品への水素侵入が発生し水素脆化の原因となる。
真空浸炭では、被処理品が設置された真空空間で加熱し、ガスを導入するため粒界酸化が発生することはない。しかしながら、浸炭ガスには炭化水素を用いているため、水素脆化のポンテシャルをなくすことはできていない。
プラズマ浸炭では、真空浸炭と同じく被処理品が設置された真空空間で加熱し、導入したガスに電気的なエネルギーを印加することによってガスをプラズマ化して浸炭処理を行う。この場合、粒界酸化がなく、導入された炭化水素ガスはプラズマ化され、より浸炭性の高い状態で被処理物に導入され高速浸炭,硬質材料への浸炭が可能となる。しかしながら、生成されたプラズマは、水素を含んだ炭化水素イオンと炭化水素ラジカルが支配的であるため水素脆化の発生ポテンシャルは真空浸炭と同様に存在する。
特許文献1においては、浸炭性能を向上させるガス改質装置を備えた浸炭装置及びその方法を提案している。具体的には、減圧雰囲気下の浸炭室に導入される炭化水素ガスをプラズマ化してイオン,ラジカル等の反応活性種を生成して被処理物の浸炭を行う浸炭方法において、少なくとも表面に金属を含有する放電用の陰電極を、浸炭室のガス導入口及び放電用の陽電極と被処理物との間の空間に設け、炭化水素ガスをプラズマ化し、浸炭性能を向上させるとしている。
特許文献2においては、プラズマ浸炭処理を施した純チタンの水素脆性による疲労強度の低下を防止するために、水素含有量を低減させるベーキング処理方法を提案している。具体的には、プラズマ浸炭処理を施した純チタンを、プラズマ浸炭処理後に15Pa以下の真空で200℃以上から前記プラズマ浸炭処理の下限温度の範囲に30分から10時間の範囲の所要時間保持するベーキング処理を実施する。そして、浸炭処理過程でチタン金属内に侵入した水素を除去することで、水素脆性による疲労強度の低下を防止する。即ち、材質劣化を引き起こすことなく、純チタン表層部に形成されたTiCの硬化層により、耐摩耗性及び摺動性が向上し、化学プラントなどの各種産業装置に使用されるねじ部品などの要求特性を満足することができるとしている。
NACHI TECHNICAL REPORT, Vol.28 A1, October (2014)
特開2008-144227 特開2002-348647
しかしながら、特許文献1の技術では、炭化水素を用いることによる水素脆化のポテンシャルを低減することに関しては何ら効果が期待されない。
また、特許文献2の技術では、加熱によって脱水素化を行うと,水素の抜けた結合がダングリングボンドとして構造欠陥になるため,水素脆化の原因は何ら取り除かれていない。
本発明の目的は、従来の浸炭技術では払拭できない水素脆化の原因をなくすことが可能な浸炭方法及び被処理基材を提供することにある。
本発明の一つの態様において、固体炭素源から炭素イオンを発生させて浸炭に利用することとした。
本発明によれば、高硬度で、かつ、水素脆化のポテンシャルを大幅に低減した被処理基材を得ることができる。
実施形態1の浸炭方法を用いたプラズマビーム浸炭装置の模式図である。 実施形態1のプラズマビーム浸炭装置を用いて処理を行った場合の被処理基材の表面反応模式図である。 従来の炭化水素ガスを用いたプラズマ浸炭の処理材表面反応模式図である。 炭素イオンのエネルギーに対する鉄鋼材への侵入深さを示すグラフである。 水素イオンのエネルギーに対する鉄鋼材への侵入深さを示すグラフである。 実施例1の炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭装置の概略図である。 浸炭断面方向について、ダイナミック二次イオン質量分析法を用いて測定した炭素濃度を示すグラフである。 浸炭断面方向について、硬度をマイクロビッカース硬度計にて測定した硬度を示すグラフである。 実施例2のプラズマビーム浸炭装置の概略図である。
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の浸炭方法を用いたプラズマビーム浸炭装置の模式図である。本装置は、固体炭素源101から炭素イオン102を生成するための低圧アークプラズマ発生源103と、発生したプラズマ112から少なくとも炭素イオン102と電子111を含むプラズマビーム104を浸炭槽105内に導くための輸送用磁場ダクト106と、その対向する位置に自公転等可能なホルダ108上に配置された被処理基材107と、を有する。また、プラズマビーム104中の炭素イオン102を被処理基材107に注入するため、ホルダ108には、炭素イオン102を加速するためのバイアス電源109が接続され、かつ、被処理基材107中でのイオンの深さ方向の拡散を促進するための加熱機構110を具備している。また、イオン侵入時に発生する応力緩和を効率的に行うために、バイアス電源109はパルス状のバイアスが印加可能な特徴をもつ。
炭素イオン生成方法については、低圧アーク放電時に一切ガスを利用しない方法、あるいは微量のアルゴン等の希ガスを利用する方法、固体炭素源にレーザーを照射して炭素イオンを生成する方法等あるが、基本的には意図して水素、酸素を含有した材料ガス、固体は一切使わないことが重要となる。
図2は、図1に示した炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭装置を用いて処理を行った場合の被処理基材107の表面反応模式図を示す。また、比較のために図3は従来の炭化水素ガスを用いたプラズマ浸炭の処理材表面反応模式図を示している。いずれの手法も被処理基材表面201に粒界酸化が発生せず、硬質材への浸炭が高速に可能であることは同様である。しかしながら水素が介在するか否かが大きく異なる。
図3に示すように、従来のプラズマ浸炭において用いる炭化水素ガス(ここではメタンCH4)用いたプラズマ301中には、炭素イオン102 (C+)はほとんど存在しない。具体的にはCH4+, CH3+がそれぞれ44.5%、CH+が4.5%に対して炭素イオン102(C+)はわずか1%であり、イオン種のほとんどが炭化水素イオンである。炭化水素イオンは、バイアスが印加されれば加速して被処理基材107に侵入するが、水素を含有した状態での打ち込みとなる。さらに、プラズマ中にはH+が4.5%, H2+が1%程度存在するため、水素単独で被処理基材107へ打ち込まれ水素脆化のポテンシャルが増加することとなる。
一方、実施形態1のプラズマビーム浸炭法では、水素を含有した材料ガスは用いないため、水素による脆化を危惧する必要はない。図2に示すように、プラズマビーム105中の生成イオンにおいて、95%が炭素イオン102 (C+)であり、理想的な炭素イオン打ち込みが可能となる。但し、5%のみ二価の炭素イオン203 (C2+)が存在するが、浸炭性能に大きな影響はない。
また、図2、図3には,各入射イオンの深さ方向分布を模式的に示している。従来の炭化水素を用いたプラズマ浸炭(図3)では、炭化水素の質量によって深さ方向202に大きなバラツキが存在する。一方、本発明の炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭(図2)の場合は、95%のイオン種が一価の炭素イオン102 (C+)であるため、深さ方向202に大きなバラツキは存在しない。
以上のように炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭では、水素が介在しないため浸炭過程に起因する水素脆化の発生ポテンシャルを理論的にはゼロとすることが可能となる。
次に,水素が介在しない本発明の有用性について,炭素イオン(C+)102と水素イオン(H+)302の鉄鋼(Fe)等への侵入深さによって確認する。
ここで、イオン(水素,炭素)が被処理基材(鉄鋼材)に侵入したときの減速過程における遮蔽クーロンポテンシャルを、式(2)に示すトーマス・フェルミポテンシャルと仮定すれば、注入イオンのエネルギーから侵入深さを計算することができる。
図4に炭素イオンのエネルギーに対する鉄鋼材への侵入深さ、図5に水素イオンのエネルギーに対する鉄鋼材への侵入深さの計算結果を示す。これらの結果によれば、イオンエネルギーが100eVにおいて、水素イオンの侵入深さ401は炭素イオンの侵入深さ501の30倍程度深く侵入することがわかる。
つまり、従来の炭化水素を用いたプラズマ301による浸炭処理におうて、水素イオン302は、被処理基材107に非常に深く侵入することになり、水素脆化のポテンシャルが真空浸炭やガス浸炭以上に極めて増加することとなる。一方、本発明の水素レスである炭素イオン102のプラズマビーム105を用いた浸炭は、水素脆化のポテンシャルがなく、極めて有効である。
図6は、実施例1の炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭装置の概略図である。グラファイト製固体炭素101からなる低圧アーク放電にて炭素イオン102と電子111のみを生成させる。具体的には、アーク電源601と接続されたカソードとなる固体炭素101から構成されるターゲット部分にアノード電極602を短絡・開放を繰り返すことによって、50A程度のアーク電流を流入させアーク放電を発生させた。そして、カソードとなる固体炭素101から炭素イオン102や電子111を発生させることでプラズマを持続させた。圧力が10-4Pa以下の減圧下でアーク放電を生じさせた。また、固体炭素101には、アーク放電が発生することで材料の融点に依存するアーク電圧約-25Vが発生した。
次に、低圧アーク放電で発生した炭素イオン102や電子111を中心軸で約0.05Tの磁場となる輸送用磁場ダクト106(トロイダルソレノイドコイルフィルタ)を用いて効率的に浸炭槽105に導く。輸送用磁場ダクト106は、アーク放電によってプラズマを発生させる際、炭素イオン102や電子111以外に発生する電荷を持たない中性の微粒子或いは荷電粒子を除外するために用いた。そして、プラズマビーム走査用電磁石603を用いて被処理基材107に均一に照射し、浸炭層形成を行う。本実施例では、被処理基材107としてSUS420材を用いた。なお、イオン照射中は、被処理基材107をヒータ110によって約900度で加熱した。処理時間は90分とし、被処理基材107全体にイオン照射が行えるように自公転可能なホルダ108に搭載した。
ところで、炭素イオン102が被処理基材107に入射すると、局所的に大きな内部圧力(ローカルストレス)が発生し、圧縮応力が増加すると共に被処理基材107表面の高硬度化が実現する。高硬度化のために最適な炭素イオンのエネルギーは、サブプランテーション理論を仮定すると式(3)によって求めることができる。
本実施例1では、約100eVで内部圧力が最大となる結果を式〔3〕の計算結果より得たので、被処理基材107に100eVのエネルギーを持つ炭素イオンを打ち込むこととした。プロセス条件としては、被処理基材107にホルダ108を介してバイアス電源109から負バイアス電圧-100Vを印加し、炭素イオン102を加速した。
また、負バイアス電圧は、パルス周波数1500Hz, パルス幅25μsにパルス化して用いた。パルス状で電圧を印加する目的は、炭素イオン102の被処理基材107への単位時間当たりのイオン注入量をコントロールするためである。以下にそのメカニズム概要を説明する。
前述したとおり、最大の高硬度化が達成される100eVの炭素イオン102を打ち込むと、炭素は被処理基材表面から1nm程度侵入して停止する。しかしながら、連続してさらに次々とイオンを入射させると、該当炭素が後続の炭素イオンからエネルギー供与をうけるため最適値から外れてしまう。そこで、より効果的な高硬度化を図るために、本実施例では、パルス状にして負バイアス電圧を印加した。
具体的には,少なくとも1原子層相当が入射する毎に、一時的に炭素イオンの注入を停止して応力緩和の機会を与え、被処理基材に侵入した炭素群を、より安定な構造に変化させる。1原子層の厚さaは式(4)から0.2nmとなるため、毎秒1 nm相当の炭素イオン侵入速度であれば、5Hz以上の周期で応力緩和の時間を設けることが望ましいことになる。
ここで,Nは原子数密度で,式(5)で与えられる。
ここで、ρは質量密度、Naはアボガドロ数、mは炭素の質量である。
上記メカニズムを考慮し、本実施例では、十分な緩和時間となるように1原子層相当のさらに1/300となるパルス周波数1500Hz毎に応力緩和時間を設けた。緩和時間は25μsとした。尚、前述の通りイオン照射中は加熱しているため、最適化された炭素構造は深部方向に熱拡散する。
浸炭処理後、被処理基材107の一部を切り出し拡散水素量の確認を行った。具体的には、試料を真空炉内で加熱(室温~600度)し、発生した水素ガスを昇温温度毎に四重極型質量分析計で検出した。その結果、本発明の炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭を適用した鉄鋼材の積算水素量は0.02wt.ppmであった。すなわち、使用した四重極型質量分析計の検出限界に近い値となり、ほぼ水素を含有していないことを確認した。尚、比較のために、従来の炭化水素を用いたプラズマ浸炭基材についても評価したところ、室温から200度において大量の拡散性水素が観測され、その積算水素量は約100倍以上となる>2.0wt.ppmであった。
次に、浸炭処理後の被処理基材107に通常の冷却,焼き戻しを行い、浸炭断面方向について、D-SIMS(ダイナミック二次イオン質量分析法)を用いて炭素濃度測定を行った。その結果を図7に示す。なお、比較のために、通常の炭化水素を用いたプラズマ浸炭の結果も示す。実施例1の浸炭方法と、通常の炭化水素を用いたプラズマ浸炭とを比較すると、深さ方向の炭素濃度に大きな差を確認することができた。すなわち本発明の炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭を適用した場合、鉄鋼材の表面からの炭素濃度分布701は、従来の炭化水素を用いたプラズマ浸炭濃度分布702に比較して表面から約2mmの深さ方向において高濃度に浸炭されていることが確認できた。特に、表面から1.2mm近傍までは最表面濃度の30%程度の低減にて推移しており、本発明における水素脆化対策条件(炭素イオンのみの浸炭方法による水素レス化)と最適な炭素イオン打ち込み条件(適正バイアス電圧による高硬度化,パルスバイアス化による炭素構造最適化)による効果が確認された。
次に、同サンプルに関して、浸炭断面方向の硬度をマイクロビッカース硬度計にて測定を行った結果を図8に示す。その結果、硬度についても、図7と同様な傾向を確認することができた。即ち、従来のプラズマ浸炭による深さ方向硬度分布802に比較して、表面から約2mmの深さ方向において本発明の深さ方向硬度分布801は、常に高く確認された。特に、表面から1.2mm近傍までは、最表面硬度の20%程度の低減にて推移しており、本発明の効果が確認できた。
以上のように、本発明である炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭を適用した鉄鋼材は、水素脆化の可能性がなくなるとともに、従来の炭化水素を用いたプラズマ浸炭材料に比較し、大幅な高濃度浸炭化と高硬度化を達成していることがわかる。
次に、作用効果を説明する。実施形態1及び実施例1の浸炭方法により、以下に列挙する作用効果を奏する。
(1)固体炭素源101から炭素イオン102を発生させ、炭素イオン102を被処理基材107に浸炭させることとした。
よって、高硬度で、かつ、水素脆化のポテンシャルを大幅に低減した被処理基材107を得ることができる。
(2)炭素イオン102は、大気圧より低い圧力の空間において固体炭素源101に対するアーク放電により発生させることとした。
よって、水素や酸素による粒界酸化や水素脆化を回避できる。
尚、炭素イオン102は、個体炭素源101にレーザーを照射することにより発生させてもよい。これにより、アーク放電と同様の作用効果が得られる。
(3)炭素イオン102を被処理基材107に浸炭させるときに、被処理基材107にバイアス電圧を印加することとした。
よって、炭素イオン102を被処理基材表面に入射させることができる。
(4)被処理基材107に印加するバイアス電圧を、被処理基材107に注入された炭素イオン102近傍で内部圧力が最大となるように電圧値を設定することとした。
よって、局所的に大きな内部圧力が発生し、圧縮応力が増加すると共に被処理基材107表面の高硬度化を実現できる。
(5)被処理基材107に印加するバイアス電圧を、任意の周波数でパルス状に印加することとした。
よって、炭素イオン102の被処理基材107への単位時間あたりのイオン注入量をコントロールし、構造最適化を達成できる。
(6)被処理基材の材質、必要とする浸炭深さに応じて加熱処理を行うこととした。
よって、熱拡散を利用して炭素イオン102の深さ方向の拡散を促進できる。
(7)炭素イオン102を浸炭させた被処理基材107であって、表面から2mmの深さにおける拡散水素積算量が、0.02wt.ppm以下である。
よって、高硬度で、かつ、水素脆化のポテンシャルを大幅に低減した被処理基材107を得ることができる。
(8)被処理基材107の表面から深さ1.2mmの炭素濃度が、表面付近の炭素濃度の70%以上を保持している。
よって、高硬度で、かつ、水素脆化のポテンシャルを大幅に低減した被処理基材107を得ることができる。
(9)被処理基材107の表面から深さ1.2mmの硬度が、表面付近の硬度の80%以上を保持している。
よって、高硬度で、かつ、水素脆化のポテンシャルを大幅に低減した被処理基材107を得ることができる。
次に、実施例2について説明する。実施例1においては、水素レス化のため、炭素イオンのみを用いたプラズマビーム浸炭法を適用した。これに対し、本実施例2では、炭素イオン102と交互に窒素イオン901も導入した浸炭窒化を行った。図9に、実施例2で用いた装置の概略図を示す。ここで、窒素イオン901を生成する方法は、窒素ガスをブロッキングコンデンサ904と、高周波電源905によって励起したグロー放電プラズマ902によって窒素イオン901を生成し、注入を行った。目的は、窒素注入により焼入れ性を良くするためである。具体的には、炭素鋼でも焼入れが容易になるため、合金鋼の代わりに安価な炭素鋼で十分な硬さを得ることが可能となる。
本実施例2では、窒素を封入した高周波放電により窒素イオン901を含んだプラズマ902を生成し、グリッド906(G1, G2, G3, G4)に加速電圧を印加してイオン注入を行う。具体的なプロセス条件は、加速電圧+10kVに印加されたG1グリッドとイオンビームソース903に囲まれた領域に窒素を10sccm導入し、200Wに印加した高周波放電でプラズマ902を生成する。次に生成されたプラズマ中で支配的な窒素イオン901を+8kVの電位を持つ引き出しG2グリッドによって一次加速し、さらに+6kVの電位を持つG3グリッドによって二次加速し、一旦負電位とした後、接地電位のG4グリッドを介して被処理基材107に照射する。ここで、G3とG4における逆電位を発生させることで電子111がイオンビームソースへ逆流することを防いだ。これにより、電子111は、より効率よく被処理基材107へ照射されることとなり、注入される窒素の正イオン(N2+)901によるチャージアップを防止する。本実施例ではこの窒素イオンの注入を、「炭素イオン注入時間30分毎に20分窒素イオン注入」として3回繰り返した。但し、窒素イオンの注入時には、被処理基材107の加熱温度は約500度程度とした。
浸窒炭処理後、被処理基材107を通常の冷却,焼き戻しを行い、同サンプルに関して、浸炭断面方向の硬度をマイクロビッカース硬度計にて測定を行った。その結果、図8に示す炭素イオン102のみを用いて形成した硬度分布801の約5%増加で推移することを確認した。
(10)炭素イオン102の被処理基材107への浸炭と同時、あるいは交互に窒素イオンを被処理基材107に注入することとした。
よって、被処理基材107を更に高硬度化することができる。
以上、本発明を実施形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明の範囲内にある限り上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態1では、被処理基材にバイアス電圧を印加したが、印加せずに適切な性能が得られる場合は、必ずしもバイアス電圧の印加をしなくてもよい。また、バイアス電圧を印加する際に、パルス状に印加した例を示したが、パルス状以外に所定電圧を印加してもよい。また、被処理基材に加熱処理を実施したが、加熱処理をせずに適切な性能が得られる場合は、必ずしも加熱しなくてもよい。また、バイアス電圧の印加、もしくは加熱処理の一方のみを採用してもよい。
101 固体炭素源
102 炭素イオン
103 低圧アークプラズマ発生源
104 プラズマビーム
105 浸炭槽
106 輸送用磁場ダクト
107 被処理基材
108 ホルダ
109 バイアス電源
110 加熱機構
111 電子
112 アークプラズマ
201 被処理基材表面
202 深さ方向
203 二価の炭素イオン
301 炭化水素ガスを用いたプラズマ
302 水素イオン
401 水素イオン(100eV)の侵入深さ
501 炭素イオン(100eV)の侵入深さ
601 アーク電源
602 アノード電極
603 プラズマビーム走査用電磁石
701 本発明のプラズマビーム浸炭を用いた場合のプラズマ浸炭濃度分布
702 従来の炭化水素を用いた場合のプラズマ浸炭濃度分布
801 本発明のプラズマビーム浸炭を用いた場合の深さ方向硬度分布
802 従来プラズマ浸炭による深さ方向硬度分布
901 窒素イオン
902 窒素プラズマ
903 イオンビームソース
904 ブロッキングコンデンサ
905 高周波電源
906 グリッド(G1,G2,G3,G4)

Claims (5)

  1. 固体炭素源からアーク放電により炭素イオンを発生させ、被処理基材に注入された前記炭素イオン近傍で内部圧力が最大となるように電圧値を設定したバイアス電圧を印加することで、前記炭素イオンを前記被処理基材に浸炭させることを特徴とする浸炭方法。
  2. 請求項1に記載の浸炭方法であって、
    前記炭素イオンの前記被処理基材への浸炭と同時、あるいは交互に窒素イオンを前記被処理基材に注入することを特徴とする浸炭方法。
  3. 請求項1乃至2に記載の浸炭方法であって、
    前記被処理基材の表面から2mmの深さにおける拡散水素積算量が、0.02wt.ppm以下であることを特徴とする浸炭方法。
  4. 請求項1乃至3に記載の浸炭方法であって、
    前記被処理基材の表面から深さ1.2mmの炭素濃度が、前記表面付近の炭素濃度の70%以上を保持していることを特徴とする浸炭方法。
  5. 請求項1乃至4に記載の浸炭方法であって、
    前記被処理基材の表面から深さ1.2mmの硬度が、前記表面付近の硬度の80%以上を保持していることを特徴とする浸炭方法。
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