【発明の詳細な説明】
WF15604物質
技術分野
この発明は、医薬として有用な新規生物活性化合物であるWF15604A物質およ
びWF15604B物質(以下、簡単のため、合わせてWF15604物質ともいう)またはそ
れらの塩に関する。
発明の開示
本発明は、コレステロール生合成抑制作用ならびに抗真菌作用を有する新規化
合物WF15604A物質およびWF15604B物質、それらの製造法、それらを含有する医
薬組成物、それらの医薬としての使用ならびに高コレステロール血症、高リポ蛋
白血症およびそれらに関連する状態ならびに真菌感染症を処置、治療する方法に
関する。
従って、この発明の一目的は、コレステロール生合成および真菌増殖を抑制し
、それゆえヒトまたは動物における真菌感染症を治療できると同様に血清コレス
テロールレベルおよび血中脂質レベルを低下させることができるWF15604物質(W
F15604A物質および/またはWF15604B物質)またはその医薬として許容される
塩を提供することである。
この発明の他の一目的は、スポロルミエラ・ミニマ(Sporormiella minima)N
o.15604などのWF15604物質生産株の栄養倍地中での醗酵によるWF15604物質(WF1
5604A物質および/またはWF15604B物質)またはその塩の製造法を提供するこ
とである。
この発明の別の一目的は、WF15604物質(WF15604A物質および/またはWF15604
B物質)またはその塩を有効成分として含有する医薬組成物を提供することであ
る。
この発明のさらなる目的は、WF15604物質(WF15604A物質および/またはWF15
604B物質)の医薬としての用途およびヒトまたは動物における高コレステロー
ル血症、高リポ蛋白血症およびこれらに関連した状態ならびに真菌感染症を処置
、治療する方法を提供することである。
高い血中コレステロールレベルおよび血中脂質レベルは、動脈硬化発症に関与
する条件である。コレステロール生合成阻害剤が血漿コレステロール、とくに低
比重リポ蛋白質コレステロール(LDL−C)のレベルを低下させるのに有効なこ
とが知られている。今や、LDL−Cレベルを低下させることが冠状動脈性心疾患
からの保護をもたらすことが確証されている。
WF15604物質またはその塩は、コレステロール生合成および真菌増殖を抑制す
る。それらは、血中コレステロール濃度を低下させる。かくして、それは、高コ
レステロール血症および高リポ蛋白血症(たとえばアテローム性動脈硬化)およ
びそれらと関連する状態(たとえば狭心症、心筋梗塞、脳血管閉塞、動脈瘤、末
梢血管疾患、反復性膵炎、黄色腫)ならびに真菌感染症の処置、治療に有用であ
る。
WF15604物質は、スポロルミエラ・ミニマ(Sporormiella minima)No.15604な
どのWF15604物質生産株の栄養培地中での醗酵により製造できる。
WF15604物質の製造が、単に説明のためにのみ本明細書中に記載した特定の微
生物の使用に限定されるものではないことを、了解されたい。この発明は、自然
変異株ならびにX線照射、紫外線照射、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロ
ソグアニジン、2−アミノプリンなどによる処理などの慣用の手段によって記載
した微生物から生じさせうる人為変異株を含む任意のWF15604物質生産性変異株
の使用をも包含するものである。
スポロルミエラ・ミニマ(Sporormiella minima)No.15604の詳細は次の通り
である:
生産株No.15604の特性
真菌株No.15604は、千葉県の清澄山で採取された土壌からはじめて単離された
ものである。この微生物は、種々の培地で速かに増殖し、暗緑色ないし褐色のコ
ロニーを形成する。No.15604株は、いくつかの寒天培地で、子嚢果からなるテレ
オモルフを形成する。子嚢は二重壁の円筒形であり、子嚢胞子はゼラチン性の鞘
を有し、各子嚢胞子細胞は細長い発芽溝を有する。その形態上の特性によれば、
該株は、子嚢菌属スポロルミエラ・エリス・エト・エヴァーハート
(Sporormiella Ellis et Everhart)1892(1)に属すると考えられる。その菌学
的特性は次の通りである。
種々の寒天培地での培養特性を表1にまとめて示す。エマーソンYpSs上の培養
は広く拡がって成長し、25℃で2週間後には、直径が7.5cmを越える。このコロ
ニーの表面は平坦で、薄く、フェルト状であり、緑色がかった灰色ないし橙色が
かった灰色である。裏面は暗緑色ないし橙白色である。子嚢果が認められる。麦
芽エキス寒天上のコロニーは広く拡がって成長し、同条件下で直径5.5〜6.5cmに
達する。表面は平坦で、薄く、暗緑色である。裏面は暗緑色である。子嚢果は認
められない。
LCA寒天(2)上での4週間の培養に基いて、形態特性を求めた。子嚢殻は散在し
ているかまたは粗に集合しており、埋没しているかまたは表在性であり、ほぼ球
形ないしほぼ洋梨形であり、130〜200×110〜180μmで、なめらかで、暗褐色な
いし黒色である。子嚢は8個の胞子を含み、円筒形で、60〜90×20〜30μmであ
る。子嚢胞子は斜めに2列または3列をなし、4個の細胞からなり、円筒形で、
23〜30×4〜5μmであり、末端で広く丸まっており、まっすぐまたは曲がって
おり、幼若のときの無色透明から褐色にわたり、横断方向に隔壁を有する。隔壁
部のくびれは広く、深い。分節(セグメント)は中央隔壁のところでたやすく分
離でき、他の隔壁のところでも容易に分離できる。子嚢胞子細胞は互にほぼ同寸
法である。末端の細胞は末端へ向けてごくわずかに狭くなっている。発芽溝は平
行していて、中央部近くでねじれている。ゼラチン鞘は無色透明である。
栄養菌糸は滑面で、隔壁があり、無色透明ないし褐色で、分枝している。菌糸
細胞は円筒形で、直径1〜4μmである。
No.15604株は、6〜36℃の温度範囲で成長でき、成長最適温度は23〜31℃であ
る。これらの温度データは、ジャガイモデキストロース寒天(日水製)を用いて
求めたものである。
スポロルミエラ(Sporormiella)属の分類基準に従えば、No.15604株はスポロ
ルミエラ・ミニマ・アーメッド・エト・ケイン(Sporormiella minima Ahmed et
Cain)1972に類似している。また、上記の特性は、子嚢の寸法以外は、アーメ
ッ
ド(Ahmed)とケイン(Cain)によるこの種の記述(1)と一致する。そこで、No.1
5604株を、スポロルミエラ・ミニマ(Sporormiella minima)であると同定し、
工業技術院生命工学工業技術研究所に、FERM BP-4507として寄託した(寄託日
:1993年12月21日)。
これらの特性は、25℃で14日問のインキュベーションののちに観察したもので
ある。色の記述は、メシューエン・ハンドブック・オブ・カラー(3)に基いてい
る。
参考文献:
(1)S.I.アーメッド(Ahmed)とR.F.ケイン(Cain):スポロルミア(Sp orormia
)およびスポロルミエラ(Sporormiella)属の改訂。カナディアン・ジ
ャーナル・オブ・ボタニー(Canadian Journal of Botany)50巻419〜477頁、19
72年。
(2)K.三浦とM.Y.工藤:水性ヒホミケス類用寒天培地。日本菌学会紀要11
巻116〜118頁、1970年。
(3)A.コーネラップ(Kornerup)とJ.H.ワンシャー(Wanscher):メシュー
エン・ハンドブック・オブ・カラー(Methuen Handbook of Color)(第3版)、5
25頁、メシューエン、ロンドン、1978年。
WF15604物質の製造
同化性炭素源および窒素源を含有する栄養培地中で、好気性条件下(たとえば
振盪培養、液内培養など)でWF15604生産株を培養するとき、WF15604物質が生産
される。
栄養培地中の好ましい炭素源は、グルコース、スクロース、でんぷん、フルク
トース、グリセリンなどの炭水化物である。
好ましい窒素源は、酵母エキス、ペプトン、グルテンミール、綿実粉、大豆か
す、コーンスティープリカー、乾燥酵母、小麦の麦芽などならびにアンモニウム
塩(たとえば硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、燐酸アンモニウムなど)、
尿素、アミノ酸などの無機および有機窒素化合物である。
炭素源および窒素源は、組合わせて用いるのが有利であるが、微量の成長因子
および相当量の無機栄養素を含有する純度の劣る材料も使用に適しているので、
それらの純粋な形で使用する必要はない。
望ましいとあれば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、燐酸ナトリウム、燐酸
カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、沃化ナトリウム、沃化カリウム、マ
グネシウム塩類、銅塩類、亜鉛塩類、コバルト塩類などの無機塩類を培地に加え
てもよい。
必要ならば、とくに培地が著しく泡立つときには、流動パラフィン、脂肪油、
植物油、鉱油、シリコーンなどの消泡剤を加えることもできる。
培養混合物の撹拌、通気は、プロペラまたは類似の機械的撹拌装置による撹拌
、醗酵槽の回転または振盪による撹拌など、種々の方法で達成できる。
醗酵は、通常、約10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の温度で、約50時間〜15
0時間にわたって実施するが、醗酵時間は醗酵の条件および規模に応じて変更す
れはよい。
醗酵が終了すると、培養液をつぎに、WF15604物質回収のために、生物活性物
質の回収、精製に慣用されている種々の操作、たとえば適切な溶媒または溶媒混
合物による抽出、クロマトグラフィーまたは適切な溶媒または溶媒混合物からの
再結晶に付す。
WF15604物質は、酸性物質であるので、塩に転化することができる。WF15604物
質の塩類は、WF15604物質の回収、精製の間に、またはあとで、常法により調製
できる。
WF15604物質の好適な塩は、医薬として許容しうる慣用の塩であって、アルカ
リ金属塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(た
とえばカルシウム塩、マグネシウム塩など)などの金属塩、アンモニウム塩、有
機塩基塩(たとえばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピ
コリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン
塩など)などを包含する。
WF15604A物質は、次の物理化学的性質を有する:
外観:無色柱状晶
分子式:C30H44O7
元素分析:C30H44O7・CH3OHとして、
計算値:C 67.86,H 8.82 (%)
実測値:C 67.81,H 9.15 (%)
分子量:FAB−MS m/z 539 (M+Na)
HRFAB−MS 539.2951
C30H44O7・Na = 539.2984
融点:181〜190℃(分解)
比旋光度:〔α〕D(23℃)+115°(C=1.0,ピリジン溶液)
紫外吸収スペクトル:末端吸収
溶解性:
可溶:ピリジン、ジメチルスルホキシド
僅溶:水
不溶:n−ヘキサン
呈色反応:
陽性:硫酸第二セリウム反応および沃素蒸気反応
陰性:ニンヒドリン反応
薄層クロマトグラフィー(TLC):
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):
条件:
移動相:アセトニトリル−メタノール−水−燐酸=70:15:15:0.1
カラム:YMC ODS−AM−303**(S−5、120Å ODS、内径4.6mm×250mm)
流速:1.0ml/分
検出:UV(210nm)
保持時間:7.3分
**商品名:YMC社
赤外吸収スペクトル:
νmax(KBr):3470,2960,2880,2610,1720,1640,1460,1380,1290,
1270,1240,1190,1140,1080,1020,990,890 cm-1
1H核磁気共鳴スペクトル:
(400MHz、ピリジン-d5)δH
5.26(1H,br d,J=6.5Hz),5.23(1H,s),4.98(1H,dd,J=7 and 9Hz),
4.87(1H,br s),4.83(1H,br s),3.20(1H,dd,J=7 and 17Hz),3.00
(1H,dd,J=9 and 17Hz),2.98(1H,m),2.60(1H,d,J=20Hz),2.54(1H,d,
J=20Hz),2.30-2.11(4H,m),1.95(1H,m),1.88(3H,s),1.90-1.77
(2H,m),1.71(1H,d,J=6Hz),1.61(1H,m),1.49(1H,d,J=6Hz),1.43-
1.13(5H,m),1.08(3H,d,J=7Hz),1.07(3H,d,J=7Hz),0.95(3H,d,
J=6Hz),0.82(3H,s)、図1参照
13C核磁気共鳴スペクトル:
(100MHz、ピリジン-d5)δC
208.5(s),207.2(s),178.7(s),156.6(s),106.7(t),74.0(s),
72.0(d),68.5(d),58.5(d),57.1(d),54.5(d),50.1(s),47.9
(t),47.6(t),47.5(t),41.3(s),40.7(s),35.8(d),34.5(t),
34.1(d),33.9(s),31.2(t),30.7(t),28.3(t),22.1(q),22.0
(q),20.7(t),18.5(q),16.3(q),10.5(q)、図2参照
本性:酸性物質
上記の物理化学的性質から、WF15604A物質は次の平面構造式を有すると結論
される。
WF15604B物質は、次の物理化学的性質を有する:
外観:無色針状晶
分子式:C30H44O5
元素分析:C30H44O5・1/2H2Oとして、
計算値:C 72.99,H 9.19 (%)
実測値:C 73.35,H 9.54 (%)
分子量:FAB−MS m/z 507(M+Na)(484.68:C30H44O5)
融点:218.1〜221.5℃
比旋光度:〔α〕D(23℃)-74°(C=0.54,ピリジン溶液)
紫外吸収スペクトル:
末端吸収
メタノール中で240nm(肩)
酸性メタノール中で240nm(肩)
アルカリ性メタノール中で250nm(肩)
溶解性:
可溶:ピリジン、ジメチルスルホキシド、メタノール
僅溶:クロロホルム
不溶:水
呈色反応:
陽性:硫酸第二セリウム反応および沃素蒸気反応
陰性:エールリッヒ反応、モーリッシュ反応およびニンヒドリン反応
薄層クロマトグラフィー(TLC):
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):
条件:
移動相:アセトニトリル−メタノール−水−燐酸=70:15:15:0.1
カラム:YMC ODS−AM−303**(S−5、120Å ODS、内径4.6mm×250mm)
流速:1.0ml/分
検出:UV(210nm)
保持時間:12.3分
**商品名:YMC社
赤外吸収スペクトル:
νmax(KBr):3420,3080,2960,2870,1700,1640,1470,1380,1360,
1340,1300,1280,1260,1130,1090,1060,1010,990,
890 cm-1
1H核磁気共鳴スペクトル:
(400MHz、ピリジン-d5)δH
5.31(1H,m),5.05(1H,m),4.86(1H,br s),4.84(1H,br s),4.74
(1H,m),3.59(1H,m),3.18(1H,dd,J=16 and 7Hz),3.07(1H,dd,J=16
and 10Hz),2.87(1H,m),2.31-2.03(6H,m),2.00-1.90(2H,m),1.76
(1H,m),1.75(3H,s),1.68(1H,d,J=5Hz),1.61(1H,d,J=5Hz),1.64-
1.41(4H,m),1.36-1.18(2H,m),1.07(3H,d,J=7Hz),1.06(3H,d,
J=7Hz),0.99(3H,d,J=6Hz),0.77(3H,s)、図3参照
13C核磁気共鳴スペクトル:
(100MHz、ピリジン-d5)δC
209.5(s),178.8(s),156.7(s),142.6(s),116.3(d),106.6(t),
72.8(d),69.3(d),57.7(d),53.3(s),48.9(d),48.4(t),46.8
(t),42.4(s),38.7(d),38.4(s),36.3(d),36.0(s),34.7(t),
34.1(d),31.3(t),29.0(t),26.8(t),23.8(t),23.6(t),22.1
(q),22.0(q),18.6(q),17.1(q),9.9(q)、図4参照
本性:酸性物質
WF15604物質またはその塩は、コレステロール生合成抑制剤である。それゆえ
、それらは、血清コレステロールレベルおよび血中脂質レベルを低下させること
ができ、高脂血症およびアテローム性動脈硬化の治療に有用である。
WF15604A物質の有用性を証明するために、WF15604Aのコレステロール生合成
抑制作用および抗真菌作用に関する試験テータを以下に示す。
試験1 HepG2細胞におけるコレステロール合成の抑制
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションからHepG2細胞(HB8065、
ヒト肝癌細胞系)を入手した。HepG2細胞内でのコレステロール合成を、ブラ
ウン(Brown)らの方法(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー
(J.Biol.Chem.)253巻1121〜1128頁、1978年)を若干修飾した方法に従って
測定する。ピルビン酸塩(1mM)、ペニシリンG(100単位/ml)、ストレプト
マイシン(100単位/ml)および10%のウシ胎児血清(FBS)を補足した非必須ア
ミノ酸を含有するイーグルの改良最小必須培地を入れたフラスコ中で、HepG2
細胞を、37℃で、加湿インキュベータ(5%CO2)内で培養する。第0日に、6
ウエルの35mmプラスチック製培養皿(2ml/ウエル)に細胞(3×105個/ウエ
ル)を播種する。第4日に、培地を、FBSの代りに10%のヒトリポ蛋白欠失血清
を含有する新鮮培地1mlと取り替え、2μlのジメチルスルホキシド(DMSO)に
溶解させたWF15604物質(WF15604A物質またはWF15604B物質)とともに、37℃
で2時間プレインキュベートする。対照培養には、DMSO(2μl)を加える。つ
ぎに、培地に、1mM[1−14C]酢酸ナトリウム塩(37MBq/ミリモル、デュポ
ン/NENリサーチプロダクツ)を加え、37℃で2時間インキュベートする。イン
キュベーション後、細胞を燐酸緩衝食塩液(PBS)、pH7.4で洗い、つぎに、15%水
酸化カリウム水溶液1mlに溶解させる。各細胞溶解産物液に、15%水酸化カリウ
ム95%エタノール溶液1mlを加え、つぎに、試料を75℃で1時間けん化する。非
けん化性脂質を石油エーテル2mlで2回抽出し、蒸発乾固させ、担体としての0.
1%非放射性コレステロール含有50%アセトン95%エタノール1mlに再懸濁する
。0.5%ジギトニン50%エタノール溶液1mlを加えて、ステロール類を沈殿させ
、ガラスフィルターに濾取する。ジギトニンで沈殿する生成[14C]標識ステロ
ール類の放射能を、液体シンチレーションカウンター(トライカーブ1500、パッ
カードインストルメント社)を用いて計数する。
結果:
試験2 抗真菌作用:
酵母窒素ベースのデキストロースを用い、96ウエルのマルチトレイでのミクロ
ブロス希釈法により、WF15604物質(WF15604A物質またはWF15604B物質)の抗真
菌活性を測定する。2倍系列希釈試料液50μlに、微生物の食塩液懸濁液50μlを
加えて、最終濃度を1×105コロニー形成単位/mlとする。カンジダ(Candida)
およびアスペルギルス(Apergillus)を37℃で22時間インキュベートする。その
後、各ウエルの微生物の成育を濁度測定により求める。結果を、濁度が試料なし
のウエルのそれの半分となる濃度IC50として表わす。
結果:
治療目的での投与には、WF15604物質またはその塩を、該物質を有効成分とし
て、これを、経口投与、非経口投与および外用(局所投与)に適した有機または
無機、固体または液体賦形剤などの製薬上許容しうる担体との混合物として含有
する慣用的医薬製剤の形で使用する。
該医薬製剤は、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、坐剤、液剤、懸濁剤、シロ
ップ剤、乳剤、リモナーデ剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤などの固体形態な
どであってよい。
必要とあれば、上記製剤に、佐剤、補助物質、安定剤、湿潤剤、その他の常用
添加剤、たとえばラクトース、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、白土
、スクロース、コーンスターチ、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、落花生油
、オリーブ油、カカオ脂、エチレングリコール、酒石酸、クエン酸、フマル酸な
どを含有させることもできる。
WF15604物質の用量は、患者の年令、容態、疾患の種類などにより変化し、そ
れらに依存もするであろうが、一般には、1日当り0.1mg〜約1000mgの量または
より多量、好ましくは約1mg〜約200mgを各患者に投与すればよい。高コレステ
ロール血症、高リポ蛋白血症およびこれらに関連した状態の処置に、平均1回量
約0.1mg、1mg、10mg、20mg、30mg、50mg、100mg、200mg、250mgのWF15604物質
を使用すればよい。
以下の実施例は、この発明をより詳細に示すために示すものである。
実施例1
(1)醗酵:
スクロース4%、綿実粉2%、乾燥酵母1%、ペプトン1%、KH2PO4 0.2%、
CaCO3 0.2%およびトウィーン80 0.1%を含有する水性種培地(160ml)を、500m
l三角フラスコに注入し、120℃で30分間滅菌する。スポロルミエラ・ミニマ(Spo rormiella
minima)No.15604(FERM BP-4507)1白金耳を斜面培養からフラスコ
内へ接種する。フラスコを回転振盪機上、25℃で4日間振盪して培養する。得ら
れた種培養を、でんぷん酸加水分解物6%、綿実粉1%、落花生粉1%、乾燥酵
母2%、Na2HPO4・12H2O 0.5%、アデカノールLG-109(消泡剤、旭電化工業)0.0
5%およびシリコーンKM-70(消泡剤、信越化学工業)0.05%からなる30lジャー
ファーメンター中の滅菌生産培地20lに接種する。20l/分の通気、250rpmの撹
拌下、25℃で7日間醗酵を行なう。
(2)単離:
培養液(60l)をアセトン60lで、間欠的混合により、抽出する。アセトン抽
出液を珪藻土を用いて濾過し、水120lを加える。生じたケークをアセトン20l
で再度抽出する。珪藻土を用いて濾過したアセトン抽出液を減圧下で9lにまで
濃縮し、水18lを加える。これらの抽出液を合わせ、ダイヤイオンHP−20(三菱
化学)のカラム(5l)に通す。カラムを水および50%メタノールで洗い、つぎ
にメタノールで溶出する。溶出液(19.5l)に水20lを加え、1N塩酸でpH3.0
に調整する。混合物をダイヤイオンSP−207(三菱化学)のカラムに通す。
50%含水メタノール、水、0.05%の燐酸を含有する40%アセトニトリル水溶液
および0.05%の燐酸を含有する50%アセトニトリル水溶液で洗ったのち、活性
画分を、0.05%の燐酸を含有する60%アセトニトリル水溶液および0.05%の燐酸
を含有する70%アセトニトリル水溶液で溶出する。この溶出液(10l)を1NNaOH
でpH6.0に調整し、等量の水を加える。混合物をYMCゲル(ODS−AM120−S50、YM
C社)のカラム(1l)にかける。ラカムを50%メタノール水および70%メタノ
ール水で洗い、つぎに80%メタノール水で溶出する。活性画分を減圧下で濃縮し
て、水溶液とし、1N塩酸でpH2.0に調整し、等量の酢酸エチルで2回抽出する
。抽出液を水で洗い、減圧下で濃縮乾固する。得られた淡黄色生成物を少量のメ
タノールに溶解させる。4℃で一夜放置すると、WF15604A物質(122mg)が無色
柱状晶として得られる。
実施例2
(1)醗酵:
醗酵プロセスは実施例1に記載したのと同様にして実施する。
(2)単離:
上記と同様の方法で得た培養液(360l)をアセトン360lで、間欠的混合によ
り、抽出する。珪藻土を用いてアセトン抽出液を濾過し、水600lを加える。生
じたケークをアセトン60lで再抽出する。このアセトン抽出液を珪藻土を用いて
濾過し、水180lを加える。
これらの抽出液を合わせ、ダイヤイオンHP−20(三菱化学)のカラム(30l)
に通す。カラムを水、50%メタノール水および70%メタノール水で洗い、つぎに
メタノールで溶出する。
溶出液(260l)に、水260lを加え、ダイヤイオンSP−207(三菱化学)の力
ラム(12l)に通す。50%メタノール水、水ならびに0.05%燐酸含有40%、50%
および60%アセトニトリル水溶液で順次洗ったのち、WF15604A物質およびWF156
04B物質を、それぞれ0.05%燐酸を含有する70%および80%アセトニトリル水溶
液で溶出する。
WF15604A物質(869mg、メタノールから結晶化)を実施例1に記載したのと同
じ方法で精製する。
WF15604B物質含有画分(45l)を1N NaOHでpH6.0に調整し、つぎに減圧下
で13lにまで濃縮する。この溶液をYMCゲル(ODS−AM120−S50、YMC社)のカ
ラム(1l)にかける。カラムをアセトニトリル−メタノール−0.015M(NH4)2H
PO4−H3PO4緩衝液(PH6.0)(40:10:50)で洗い、アセトニトリル−メタノー
ル−0.015M(NH4)2HPO4−H3PO4緩衝液(pH6.0)(50:10:40)で溶出する。
この溶出液(3.3l)に水0.7lを加え、YMCゲル(ODS−AM120−S50、YMC社)
のカラム(1l)にかける。0.05%燐酸含有のアセトニトリル−メタノール−水
(40:.15:45)、0.05%燐酸含有のアセトニトリル−メタノール−水(50:15
:35)および0.05%燐酸含有アセトニトリル−メタノール−水(60:15:25)で
洗ったのち、0.05%燐酸含有のアセトニトリル−メタノール−水(70:15:15)
で活性画分を溶出する。
この活性画分(0.7l)を減圧下で濃縮して水溶液とする。その水溶液を1N
塩酸でpH2.0に調整し、等量の酢酸エチルで2回抽出する。抽出液を水で洗い、
減圧下で濃縮乾固する。得られた淡黄色固体を少量のメタノールに溶解させる。
4℃で一夜放置したのち、WF15604B物質(46mg)を無色針状晶として得る。
図面の簡単な説明
図1はWF15604A物質の1H核磁気共鳴スペクトル図である。
図2はWF15604A物質の13C核磁気共鳴スペクトル図である。
図3はWF15604B物質の1H核磁気共鳴スペクトル図である。
図4はWF15604B物質の13C核磁気共鳴スペクトル図である。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12R 1:645)
(C12N 1/14
C12R 1:645)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),AU,CA,CN,HU,J
P,KR,RU,US
(72)発明者 橋本 正治
茨城県つくば市梅園2―15―3