JPH09506612A - スクロースエステルc20〜c28アルコール製剤 - Google Patents

スクロースエステルc20〜c28アルコール製剤

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Abstract

(57)【要約】 主要な治療化合物が1種以上のC−20〜C−28長鎖脂肪族アルコール(n−ドコサノールがこの代表例である)であって、スクロースココエート、スクロースステアレート若しくはスクロースジステアレート又はこれらの混合物を含む安定で有効な治療用クリームを開示する。

Description

【発明の詳細な説明】 スクロースエステルC20〜C28アルコール製剤 発明の分野 本発明は、ウイルス性及び炎症性疾患の治療用並びに皮膚及び粘膜の局所炎症 痛軽減用の局所治療用調製物及び方法に関するものである。本発明の調製物の代 表例は20〜28個の炭素の脂肪族アルコールを含有するクリームであり、これらア ルコールの代表例はn−ドコサノールである。 発明の背景 大部分の抗ウイルス治療化合物は、感染標的細胞内での種々の特定のウイルス 遺伝子複製メカニズムを遮断する。この方法は、宿主細胞に対する毒性、医薬耐 性ウイルス亜株の誘発、並びに宿主細胞に対する突然変異誘発物質及び/又は催 奇形物質として作用する可能性を含む欠点を有している。従って、宿主に対して 上記のような有害な影響を有さない有効な治療法を提供する新規な抗ウイルス化 合物の探索は極めて重要なことである。これまで注意を引かなかったレトロウイ ルス属のウイルスに攻撃を受ける新しい時代に我々が入っているように思われる ので、特にそうである。 感染した宿主に対して潜在的に有害でない抗ウイルス活性を発揮する化合物が 同定され、そして将来有望な結果が幾つか示されている。例えば、1970年代後半 に、スナイプス(Snipes)ら(W.Snipes、S.Person、G.Keller、W.Taylor、 A.Keith、Antimicrob.Agents Chemother.11、98〜104(1977年); J.Sands、D .Auperin、W.Snipes、Antimicrob.Agents Chemother.15、67〜73(1979年)) は、中程度の鎖長の飽和及び不飽和の両アルコールに関して上記のような活性を 示す一連の研究を報告した。最適の抗ウイルス活性は10〜12個の炭素長の飽和ア ルコールで観察され、14〜18個の炭素長のアルコールではより低い抗ウイルス活 性が観察され、そしてより長い鎖長のアルコールは試験されなかった。顕著な抗 ウイルス活性はC−10及びC−12アルコールで観察されたが、これらの化合物は 細胞毒性や溶血効果も示した。不飽和アルコールやモノグリセリドでも同様な観 察がなされ、最大の活性は3個の二重結合を有するC−18アルコールで生じた。 その後、クラーク(Clark)ら(L.L.Clark、炎症性皮膚疾患の治療。米国特許 第4,670,471号(1987年)、P.T.McBride、L.L.Clark、G.G.Krueger、J.Inv est.Dermatol.89、380〜383(1987年))は、30個の炭素長の飽和アルコールの トリアコンタノールが抗ヘルペス剤として活性であると結論した。しかしながら 、組織培養試験によってトリアコンタノールは直接的な抗ウイルス活性を欠いて いることが証明されたので、動物試験で観察された明白な抗ヘルペス活性はこの 化合物の推定上の免疫調節効果を反映したのであろうと推測された。 1974年頃の早い時期に、n−ドコサノールは全身的治療の有用性を有している と報告された。例えば、デバット(Debat)、米国特許第4,186,211号は、1−ドコ サノールは経口的に摂取したとき、前立腺肥大の治療で治療的に有効であったと 報告した。同様な研究はヤマモト(Yamamoto)ら、例えば米国特許4,624,966に よってその10年後に報告されたが、彼は化学的命名法に関してn−ドコサノール をポリプレニル化合物と誤って表示しており、そして治療法におけるn−ドコサ ノールの経口的又は非経口的投与を記載した。デバットもまたヤマモトらも、又 は他のどの研究者も、本発明者らが知るところでは、n−ドコサノールが局所療 法における活性物質である可能性を、間接的にでさえ、示唆していなかった。 スナイプスらの結果を検討しそして18個より長い炭素化合物が局所的抗ウイル ス又は炎症活性を示す可能性があるのかどうかを確認する試験はなされていなか ったことを了解した後、本発明者らはC−10又はC−12(これらは最大の抗ウイ ルスを示したが、細胞毒性及び溶血活性も示した)の2倍の長さの分子はウイル スに対する生物学的活性を保持しているが、(多分分子の折り畳みの故に)より 短い分子の溶血性及び細胞毒性特性を有していないだろうと推論した。n−ドコ サノールの抗ウイルス特性を試験した本発明者の実験室での研究は好ましいもの であった(Katz,D.H.、米国特許第4,874,794号)。 しかしながら、安定で有効なn−ドコサノール含有局所製剤の調製には1つの 難問があった。或る種の慣用の製剤のクリームや軟膏は予備的評価で最初は適切 であったが、或る種の賦形剤がn−ドコサノールの活性に有害であることを本発 明者は見い出した。それ故、長期間安定で、生理学的に許容できそして皮膚や膜 への局所適用に適する、n−ドコサノールの再現的に有効な製剤が必要であるこ とが明白になった。安定で有効なn−ドコサノール含有組成物の調製には予期さ れなかった1つの困難な難問があった。殆どの医薬品の担体クリームの製造に完 全に適する慣用のクリーム製剤では十分でなかった。浸透増強化合物は多分望ま しいと考えられたが、浸透増強を高めることは特別の問題ではなかった。多くの 浸透増強剤は利用可能であるが、浸透増強に関してこのような物質を考慮すべき 理由はなく、そして確かに、これら物質のどれであっても、製薬的有効性が高ま っており且つ貯蔵や取扱い中に出会うであろうあらゆる温度及び通常の貯蔵や取 扱いで予想される全期間中に安定で、そして加えて、相変化によって及び/又は クリームの水性成分の凍結点より十分低い温度に暴露されても安定なクリームが 生じ、そしてこれらのクリーム中で本発明の非常に疎水性の長鎖アルコールが薬 理学的活性を保持するであろうと期待すべき理由はなかった。例えば、ラジャダ ヤクシャ(Rajadhyaksha)によって報告されたアゾンは優れた浸透増強剤である がクリーム製剤の安定化成分としては知られていない。ココナツ脂肪酸のスクロ ースエステルは浸透増強剤として処方されてきた(チェン(Cheng)ら、米国特 許第4,865,848号及びその他の特許)。しかしながら、チェンらはこれらの物質 から生じるクリーム安定化は何も示唆しておらず、またチェンらの特許からこの ような安定化を推論すべき理由はない。このような化合物に関する文献はこれら の物質がC−20〜C−28の脂肪族アルコールを含有するクリームの安定化に特に 有効であるとは示唆していないが、本発明はこれらの課題の解決に向けられてい る。特に、本発明は有効で安定で生理学的に許容できる、C−20〜C−28の脂肪 族アルコール、例えばn−ドコサノールの局所適用に適する治療法用クリームに 向けられている。 多様な製剤組成物を、安定性、及び、長鎖アルコールが局所クリーム中で高い 生理学的活性を示すクリームを提供することに関して実験した。製剤のなかには 安定性が劣っているものがあり、そして生理学的活性が劣っているものがある。 本発明の主題の製剤だけが安定性と活性に関して満足できるものであることが見 い出された。 1つの重要な結果は、非常に驚くべきことに、皮膚や粘膜の炎症痛を即座に軽 減しそしてときには完全に緩和することであった。 発明の概要 本発明は、主要な生理学的に活性の治療用組成物が、20〜28個の炭素原子を有 する長鎖脂肪族アルコール、即ち、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n −ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサ ノール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノー ル又はこれらの混合物である、皮膚や膜の炎症痛を緩和するための治療用クリー ムで具体化される。n−ドコサノールは、この直鎖飽和アルコール群の中で最も 容易に入手できるものであり、そして多くの実験における代表的化合物である。 本発明はまた、20〜28個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アル コール、即ち、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコサノール、n −トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール、n−ヘキサ コサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノール又はこれらの混合 物(n−ドコサノール単独又は上記のような他のアルコールとの混合物が代表例 である)を含有するクリームを安定化する独特の能力を有することが見い出され た、スクロース及び同等の糖系エステルを使用する治療用クリームの製造におい ても具体化される。 本発明は、ヒトの治療を含む動物の皮膚又は膜のウイルス誘発性及び炎症性疾 患の治療に使用するのに適する局所クリーム製剤で具体化される。クリームの必 須成分は、20〜28個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコール 、即ち、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコサノール、n−トリ コサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール、n−ヘキサコサノ ール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノール又はこれらの混合物(n −ドコサノール単独又は上記のような他のアルコールとの混合物が代表例である )、生理学的活性成分、水、油、糖と脂肪酸のエステル(このエステルは生理学 的に不活性であるか又は身体で代謝できる)及び皮膚又は膜の患部へのn−ドコ サノールの浸透を助ける皮膚軟化剤である。上記のように、約20〜28個の鎖長を 有す る、n−ドコサノールと同等であるがn−ドコサノールよりはるかに入手し難く そしてはるかに高価な脂肪族アルコールをn−ドコサノールと一緒に又はその代 わりに使用することができる。糖系(sugar-based)エステルは、約150より大きく 、そして好ましくは250を超える分子量を有する糖部分と約150又はそれより大き く、そして好ましくは250を超える分子量を有する脂肪酸エステル部分を含む。 このエステルは約400又はそれより大きい分子量を有する。本明細書で使用され る用語の糖は高級ポリアルコールのケトン又はアルデヒド誘導体である甘いか又 は甘みのある炭水化物であり、そして糖類と二糖類の両者を含み、二糖類系エス テルが好ましい。高分子量多価アルコールを代わりに使用して、最適の結果とは 言えないが満足のいく結果を得ることができ、そしてその程度で、伝統的な糖と 同等である。このようなエステル化した糖系界面活性剤の例は一般的に化学文献 や種々のパンフレット、例えば、マッククッチェオン(McCutcheon)辞典、第1 巻−乳化剤及び洗浄剤、及び、第2巻 −機能的材料(McCutcheon's Division 、The Manufacturing Confectioner Publishing Co.、米国ニュージャージー州 グレンロック、1993年)中に見ることができる。スクロース−脂肪酸エステルが 好ましく、そして以下に示す実施例ではこれらのエステルを使用する。 一般的に最適なクリーム製剤は次のもの(重量パーセント)を含む。 n−ドコサノール* 5〜25%又はそれより多く(もっとも、より多い量はより少 ない量より有益でないであろう)、最適には約10%±5%、 スクロースステアレート 0〜15%、最適には約3〜10%(重量)、 スクロースココエート 0〜15%、最適には約3〜10%、 スクロースジステアレート 0〜15%、最適には約3〜10%、 (但し、少なくとも1種のスクロースエステル又は同等な糖系エステルが存在し そして糖系エステルは組成物全体の約3重量パーセント以上、好ましくは約10± 5重量パーセントである。) 鉱油 NF 3〜15%、最適には約8%±4%、 プロピレングリコールUSP 2〜10%、又は機能的に同等な皮膚軟化剤、最適 には約5%±2%、 ポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテル 0〜5%、最適には約2〜3%、 ベンジルアルコールNF 0〜5%、最適には約2〜3%、 (但し、ポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテル若しくはベンジルアル コール又はこれらの機能的同等物のいずれかが少なくとも1%の量で存在する。 ) 水 40〜70%、最適には約45〜65%。 * 或いは、20〜28個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコー ル、即ち、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコサノール、n−ト リコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール、n−ヘキサコサ ノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノール又はこれらの混合物( n−ドコサノール単独又は上記のような他のアルコールとの混合物が代表例であ る)。 本発明は本発明のクリームを使用して局所ウイルス感染を治療する方法で具体 化される。 更に一般的な意味で、本発明は一般的に炎症組織の局所治療で具体化される。 図面の簡単な説明 図1〜3及び図6A、6Bは単純ヘルペスウイルスタイプ1(HSV−1)に 関する実験であり、一方図4及び5並びに図7〜9は単純ヘルペスウイルスタイ プ2(HSV−2)に関するものである。 図1は、無毛モルモットのHSV−1誘発性皮膚病変の阻止における製剤I( n−ドコサノール10.0%、スクロースステアレート11.0%、スクロースココエー ト5.0%、鉱油8.0%、プロピレングリコール5.0%、2−エチル−1,3−ヘキサン ジオール2.7%及び精製水58.3%)、製剤II(5%のスクロースステアレートがス クロースジステアレートで置き換えられ、そしてエチルヘキサンジオールが等量 のポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテルで置き換えられたことを除い て製剤Iと同じ)の3つの異なる調製物及びゾビラックス(ZOVIRAX)( アシクロビル、Burroughs Wellcome Co.、ノースカロライナ州リサーチトライア ングルパーク、ウイルスDNAポリメラーゼの活性を阻止する、HSV感染を治 療するために選択される現在の薬剤)の比較活性を示す。 図2は、製剤I、製剤II及び製剤IA(n−ドコサノール10.0%、スクロース ステアレート11.0%、スクロースココエート5.0%、鉱油8.0%、プロピレングリ コール5.0%、ベンジルアルコール2.7%及び精製水58.3%)の比較活性を示す。 図3Aは、製剤I対製剤III(n−ドコサノール10.0%、スクロースステアレ ート5.0%、鉱油8.0%、プロピレングリコール5.0%、ベンジルアルコール2.7% 、及び精製水58.3%)の活性の比較を示す。 図3Bは、相対的な界面活性剤濃度が製剤Iの濃度から変更されている、製剤 の或る種の改変物の活性を比較するデータを表す。界面活性剤濃度の改変物は医 薬品の活性に対してかなり有害な影響を有していることが判明した。 図4は、無毛モルモットのHSV−2誘発性皮膚病変の阻止に関する製剤III の投与量−応答関係を示すデータを表す。 図5は、スクロースエステル界面活性剤系に基づくn−ドコサノール含有クリ ーム(製剤III)も無毛モルモットのHSV−2誘発性皮膚病変を阻止すること を示すデータを図示的に表す。 図6Aは、界面活性剤プルロニックF−68を使用して懸濁液として製剤化され たn−ドコサノールも、小庖疹(vesicle)の存在前に適用したとき、HSV−1 誘発性小庖疹を阻止することを示すデータを図示的に表す。この懸濁製剤はベン ジルアルコールを含むn−ドコサノール含有クリームの賦形剤のいずれも含有し ていなかった。 図6Bは、非イオン性界面活性剤プルロニックF−68中の懸濁液として製剤化 されたn−ドコサノールはまた、小庖疹の存在後に適用したときもHSV−1誘 発性小庖疹を阻止することを示すデータを図示的に表す。この懸濁製剤はベンジ ルアルコールを含むn−ドコサノール含有クリームの賦形剤のいずれも含有して いなかった。 図7〜13は、n−ドコサノールの薬理学を明らかにするデータを表す。 図7は、n−ドコサノールがアシクロビル耐性HSV−2を阻止することを示 すデータを表す。ベロ(Vero)細胞を、培地単独(=無し)中、又は、指定され た濃度のアシクロビル、n−ドコサノール−プルロニックF−68懸濁液若しくは 対照懸濁液(プルロニックF−68だけ)の存在下、35mmウエル(ウエル当たり6 ×105個の細胞)中で培養した。24時間後、これらの培養物に、野生タイプHS V −2、又はプラーク精製しそしてその後44時間、20mg/mlのアシクロビル中で継 代培養した野生タイプHSV−2から得られるアシクロビル耐性実験室単離物の どちらかを150PFU接種し、プレートをインキュベートし、固定し、染色し、 そしてプラークの数を記録した。示されたデータはデュプリケート培養物で記録 されたプラークの平均値である。非処理対照培養物に対するアシクロビル又はn −ドコサノール処理培養物中で観察された阻止のパーセントを括弧内に示す。 図8は、モルモットの皮膚HSVに対するn−ドコサノールの局所エマルジョ ン製剤の投与量応答を示すデータを表す。無毛モルモットの背を清浄にしそして 入れ墨器具で皮膚を刺して精製HSV−2を接種した。ウイルス接種して2時間 後に、接種部位をn−ドコサノール含有クリーム若しくは対照媒体100μlを用い て処置したか又は処置しなかった。これらの部位はウイルス接種24、30、48、52 及び56時間後に同様に処置した。部位当たりの小庖疹数は指定された時点で測定 した。データは測定当たりデュプリケートの部位から得られる小庖疹数の平均値 及び標準誤差として表される。括弧内の数は非処置部位と比較した処置部位の小 庖疹数の阻止パーセントを表す。 図9は、HSV−2がn−ドコサノール処置ベロ細胞の表面に長期間とどまる ことを示すデータを表す。ベロ細胞は図7の説明で記載したようにして培養しそ して一夜インキュベートした。次に、培養物を4℃に冷却し、100PFUのHS V−2を接種し、そして4℃で3時間インキュベートした。ゼロ時間で、培養物 を培地で洗浄し、新たな培地(指定されたインヒビターを含有する)を加えそし て37℃でインキュベートした。指定された各時点で、培養物をクエン酸緩衝溶液 (pH 2.5)で洗浄しそして新たな培地(インヒビター不含)を再度加えた。合 計44時間のインキュベーション後に、培養物を染色しそしてHSV−2誘発プラ ークについて記録した。データは、群当たりトリプリケートの培養物から得られ た幾何平均値及び標準誤差として表される。 図10は、n−[14C]−ドコサノールの放射性代謝物がホスファチジルコリン やホスファチジルエタノールアミンの特性を示すことを示すデータを表す。シリ カ脂質分画のメタノール溶出物の一部(0.5ml)を窒素下で蒸発させ、クロロホ ルム:メタノール(3:2;v:v)20mlに再懸濁し、そしてシリカ薄層クロマト グ ラフィー(TLC)シートにスポットした。クロロホルム:メタノール:酢酸: 水(60:50:1:4; v:v:v:v)で展開し、標準物質の位置はヨウ素蒸気で染色 して決定し、そしてフラクション当たりのcpmは、プラスチック裏当てシートを 5mm片に切断した後、シンチレーション分光測定法で測定した。 図11は、n−[14C]−ドコサノールがMDBK細胞によってよりもベロ細胞 によって多く代謝されることを示すデータを表す。ベロ細胞又はMDBK細胞は 本明細書に記載したようにしてプレートした。n−[14C]−ドコサノールを6m M(0.24mM Tetronic 908)になるように加え、そして培養物を37℃/CO2で7 2時間インキュベートした。細胞を抽出し、そして展開溶媒としてヘキサン:ジ エチルエーテル:酢酸(20:30:1; v:v:v)を用いてTLCで分析した。この 溶媒系では、極性のホスファチドが原点に残る。n−ドコサノールの移動位置が 示されている。デュプリケートのプレートを、放射性標識を含んでいない同一の 懸濁液で処理し、そしてこれらのデュプリケートのプレートの細胞数は、血球計 でトリパンブルー排除細胞を計数して測定した。 図12は、n−ドコサノールがインビボでフレンドウイルス誘発白血病及びウ イルス血症を阻止することを示すデータを表す。成熟BALB/cマウスに75脾 臓病巣形成単位のFVを静注した。処置群には、n−ドコサノール又はプルロニ ック媒体単独の指定された投与量をウイルス接種と同じ日こそしてその後の3日 間に1日1回静注した。10日後、各群の動物の半分を屠殺しそして脾臓の白血病 病巣について検査した(パネルA)。残りのマウスは更に10日間維持しそしてウイ ルス血症測定のために飼育した(パネルB)。ウイルス血症はX−Cプラークアッ セイを使用して測定した。簡単に言えば、一次線維芽細胞培養物は14日目のBA LB/c胚をトリプシンで消化して得、そしてDMEM及び10%ウシ胎児血清中 で培養した。72時間後、細胞を16mmの皿に移し(105個/ウエル)、5μg/mlのポ リブレンで前処理し、そしてその後75 X−Cプラーク形成単位のフレンドウイ ルスストックか又は試験血漿希釈物で感染させた。7日間のインキュベーション 後、培養物に照射しそしてX−C細胞(3×105個/ウエル)を上に置いた。3 日後、これらの培養物を洗浄し、染色しそして多核巨細胞のプラークについて記 録した。示したデータは、1群当たり3匹の動物から得た脾臓病巣又はX−Cプ ラーク形 成単位の幾何平均値及び標準誤差である。 図13は、n−ドコサノールがPHA/IL−2刺激ヒト末梢血単核細胞の培 養物におけるHIV−1のインビトロ複製を阻止することを示すデータを表す。 ヒト末梢血単核細胞は、1μg/mlのPHAと5単位/mlのIL−2だけを含有 する培地又は100μg/mlのPFA、指定された用量のn−ドコサノール/プルロ ニック若しくは高用量のn−ドコサノール/プルロニック中に含まれる量のプル ロニックF−68対照媒体も含有する培地中で培養した。一夜インキュベートした 後、培養物にHIV−1を1ビリオン/細胞の感染多重度で接種した。37℃で24 時間のインキュベーション後、培養物を洗浄しそしてPHA及びIL−2は含有 するがインヒビターを含有していない新たな培地を加えた。HIV−1の複製は 、4日後にHIV−1のp24特異的エリザ法によってウイルス抗原を定量して測 定した。 好ましい実施態様の説明 クリームを製造するために、水不溶性化合物であるn−ドコサノール(純度≧ 98%; M.Michel and Co.、ニューヨーク州ニューヨーク)をスクロースココエ ート、スクロースステアレート、スクロースジステアレート、鉱油、プロピレン グリコール及びポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテルと80℃で混合す る。水を加えそして混合してクリームを仕上げた。クリームは、n−ドコサノー ル以外の全材料を水に加えてクリーム基剤を形成しそしてこのクリーム基剤にn −ドコサノールを混合することによって形成することもできる。以下の割合が一 般的には最適であることが判明した。 (担し、少なくとも1種のスクロースエステルが存在しそしてスクロースエステ ルは組成物全体の約3%重量パーセント以上、好ましくは約10±5重量を構成す る。) (担し、ポリオキシプロピレンステアリルエーテルか又はベンジルアルコールの どちらかが2%の量で存在する。) * または、20〜28個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコ ール、即ち、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコサノール、n− トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール、n−ヘキサコ サノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノール又はこれらの混合物 (n−ドコサノール単独又は上記のような他のアルコールとの混合物が代表例で ある)。 ポリオキシプロピレンステアリルエーテル又はベンジルアルコールの代わりに 2−エチル−1,3−ヘキサンジオールとスクロースエステル類を含有する製剤も有 効であることが見い出されたが、反復的局所適用が意図されている組成物中に化 合物2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを含めることは望ましくないと考える者 もいると思われた。 有望なリダコル(LIDAKOL)(商標)n−ドコサノールの最初の製剤を 下記表1に記載する。 これは、短期間より長い間十分に安定で、包括的な一連の動物治療試験を実施 できた最初のn−ドコサノールクリームであり、そして試験でn−ドコサノール は動物ヘルペスモデルで常に活性であることが見い出され(図1〜3)、そして初 期のフェーズIヒト臨床試験で使用してこれが安全で且つ許容可能であることが 示された。しかしながら、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールは米国以外の或る 国では反復使用が許容されていない可能性があるので、2−エチル−1,3−ヘキサ ンジオールの代わりに等量(2.7%)のポリオキシプロピレン−15−ステアリル エーテルを使用し、そして5%のスクロースステアレートを5%のスクロースジ ステアレートで置き換えた。得られたn−ドコサノール製剤II組成物を下記表2 に記載する。 この改変製剤IIはエチル−ヘキサンジオールを置換しそして最終医薬品に物理 的安定性を与えるのに成功し、そしてモルモットヘルペス動物モデルで良好な性 能であった(図1及び2)。しかしながら、この製剤は米国薬局方(USP)保存 剤有効性試験に合格しなかったので、ヒト臨床適用には不適切であると思われた 。この微生物学的不安定性は、以下に記載したようにしてポリオキシプロピレン −15−ステアリルエーテルを助溶媒賦形剤としてベンジルアルコールで置き換え ることによって解決された。 記載したクラスの1つ又は2つだけの界面活性剤を使用しそして約5%の量の 界面活性剤を使用することによって安定な組成物が得られることが見い出された 。1つ又は2つのタイプの界面活性剤しか使用せずそしてより少ない量の界面活 性剤を使用して安定なクリームを製造できることは本発明者らの実験室研究の予 期しないそして望ましい結果であった。界面活性剤の量が5%を超えると刺激の 可能性を増大させるので、過剰の界面活性剤は望ましくない。加えて、過剰量の 非イオン界面活性剤を有する製剤はしばしば保存剤の有効性に関する問題を有し ている(これが製剤IIの微生物学的不安定性の問題の一因であると思われる)。 幾つかの界面活性剤混合物を9.0〜13.0の範囲の親水性−疎水性バランス(H LB)値で使用して、種々のn−ドコサノールクリームを製剤化し、そして、最 適のエマルジョン品質、物理的特性、医薬品有効性及び促進物理的安定性につい てスクリーニングした。大部分の製薬エマルジョンはHLBを最適にするために 二元界面活性剤混合物に基づいているが、このプログラムによって、改良された n−ドコサノール製剤中ではスクロースステアレート単独でも任意の界面活性剤 混合物と同等又はより良好な性能を有することが明らかになった。この改良され たn−ドコサノール製剤(製剤III)の組成は次のとおりである。 最初の製剤(製剤I)と比較したとき、改善された製剤IIIにおける変更には2 −エチル−1,3−ヘキサンジオールを、安全な長い使用歴と適切な地位を有する 周知の保存剤であり且つ助溶媒であるベンジルアルコールで置換することが含ま れる。ベンジルアルコールの液体性質や同様な機能によって、ベンシルアルコー ルはエチルヘキサンジオールの合理的で且つ危険性の低い代替物となる。総界面 活性剤の量を5%まで減少させても、製品の製薬特性は変わらず、顕微鏡検査に 基づくエマルジョンの品質に否定的な影響はなくそして促進試験での物理的安定 性の損失はなかった。スクロースココエートは不必要であることが見い出された ので、除いた。 クリームは、成分を最初の順序で加熱し添加して、又は油溶性成分を組み合せ そしてそれらを水溶性成分とは別個に加熱するという好ましい方法によって製造 することができる。次いで、激しく混合しながら熱い油溶性成分を熱水相に加え る。 表4は評価した製剤の最も重要なものをまとめたものである。 改良されたn−ドコサノール製剤IIIは、促進物理的安定性スクリーニング(4 2°での貯蔵、冷凍−解凍サイクル)に合格しそして更にUSP保存有効性試験 にも合格した。モルモットヘルペスモデルにおける医薬品有効性は反復して証明 された。 安定性をモニターするために、n−ドコサノールクリーム製剤はポリプロピレ ン製の瓶中、室温(30℃)で、高温(42℃)でそして冷凍−解凍条件下で様々に 貯蔵した。冷凍−解凍試料は48時間の冷凍−解凍サイクル、即ち冷凍温度(−15 ℃)での24時間及び周囲温度での24時間のサイクルに付した。それぞれの条件下 で貯蔵したクリーム試料は、種々の時点で物理的安定性について視覚的に検査し た。30℃で12ヶ月若しくは42℃で3ヶ月又は24回の冷凍−解凍サイクルの後、試 料は全てオフホワイトのクリームのままであった。シネレシス又は相分離の徴候 は全くなかった。上記の視覚的検査に基づいて、10% n−ドコサノールクリー ムの製剤IIIは、記載された任意の条件下で貯蔵したとき、物理的に安定である と考えられた。 製剤IIIの正確な貯蔵寿命は測定されなかったが、経験から、貯蔵寿命は市販 のn−ドコサノール含有クリーム以上に適切であることが示唆される。 HSV誘発性病変に対するn−ドコサノールクリームの有効性を実験動物モデ ルで確認するために、そして該クリームの活性をゾビラックスの活性と比較する ために、無毛モルモットに1×106PFUのHSV−1を接種し、そして次にn −ドコサノール含有クリームか又は対照クリームのどちらか、或いはゾビラック ス軟膏で処置した。n−ドコサノールクリームは記載されたようにして製造した 。対照クリームは、n−ドコサノールの代わりにステアリン酸を使用したことを 除いて同様な方法で製造した。処置はウイルス接種2時間後か又は48時間後に開 始した。これらの部位は、指定された時点で、膿充満庖疹として特定される小庖 疹(vesicle)形成について評価した。 図1は、製剤I及び製剤IIの3つの異なる調製物並びにゾビラックスの比較活 性を示す。n−ドコサノールクリームの製剤Iと製剤IIは共にゾビラックス軟膏 より大きい阻止力を示した。 図2は、製剤I、製剤IA及び製剤IIの比較活性を示す。HSV−1誘発性病 変の顕著な阻止は3つの全ての製剤で証明された。 図3は、製剤III対製剤Iの活性の比較を示し、そしてまたこれら製剤の或る 種の改変物も表しており、そしてこれらの改変物では相対的な界面活性剤濃度が 製剤Iの濃度から変更されている。界面活性剤濃度の改変物は医薬品の活性に対 してかなり有害な影響を有していることが見い出された。製剤IIIはHSV−1 誘発性病変に対して強力な阻止力を有することが示された。 再発性(recurrent)の口及び陰部HSVI又はII感染を有するボランティア患 者も、急性ヘルペス発症の種々の段階で局所n−ドコサノール含有クリームで処 置 した。処置を前駆段階中に開始したとき、n−ドコサノールクリームは一般的に 感染の更なる進行をくいとめる(即ち、小庖疹形成を阻止する)。小庖疹形成が 既に生起した後に処置を開始したとき、n−ドコサノールクリームはこのような ヘルペス病変の治癒(即ち、完全な上皮再形成)時間を実質的に短縮させる(例 えば、50%又はそれ以上)。これまで治療されてきた100の口及び陰部患者のエピ ソードにおいては、95%以上の治療的有効性が観察された。 かくして、大部分のn−ドコサノール製剤は不安定であるが、特定の製剤(製 剤IIIが好ましい)は安定且つ有効であることが見い出された。 製剤中10%のn−ドコサノールを選択することは無毛モルモットにおける投与 量応答試験によって正当であることが示された。無毛モルモットの背部位に上記 したようにしてHSV−2を接種した。これらの部位は1%、5%、10%及び20 %n−ドコサノール製剤で処置した。n−ドコサノールを含有しない媒体対照も この試験に含めた。図4に示したこれらの結果は、ウイルス接種72時間後に非処 置部位が平均41個の小庖疹を示したことを示す。20%及び10%n−ドコサノール 含有クリームによる処置は、小庖疹数をそれぞれ50%及び60%阻止した。1%及 び5%のn−ドコサノールを含有するクリームは10%製剤より有効性が低かった 。対照媒体は阻止効果が認められなかった。 疎水性及び親水性化合物のクリームを製剤化する当該技術分野の熟練者は、或 る種の置換が可能であることを認めるであろう。例えば、プロピレングリコール の代わりにグリセリン又は別のグリコールを、割合を幾らか調整して使用するこ とができよう。ポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテルの代わりに他の ポリオキシアルキレン系エーテルを使用できることも理解されよう。糖系エステ ルの相対割合は、存在する糖系エステルの総量がn−ドコサノールを安定化する のに十分である限り、かなり変更することができる。この量は、最小及び最大量 は正確には決定されていないが、約5重量%〜約25重量%であると考えられる。 n−ドコサノールクリームの現在好ましい製剤は、10%n−ドコサノール、5 %スクロースステアレート、8%鉱油 NF、5%プロピレングリコール USP 、2.7%ベンジルアルコール NF及び69.3%精製水を含有する製剤IIIである。 ベンジルアルコールは或る状況下で或る抗ウイルス活性を有していることが報 告された(Farah,A.E.等、米国特許第4,200,655号)ので、ベンジルアルコール が製剤中で抗ウイルス剤として作用するかどうかを測定するために本発明の製剤 を試験した。ベンジルアルコール及びn−ドコサノールを含有するクリーム(10 %n−ドコサノールクリーム)及びベンジルアルコールだけを含有するクリーム (プラセボ)を、無毛モルモットのHSV−2誘発性皮膚病変で試験した。モル モットの背部位にHSV−2を接種した。これらの部位を図5に示したようにし て処置し、そしてウイルス接種の48、56、72及び78時間後に小庖疹形成について 評価した。48時間時点で非処置部位には平均44個の小庖疹が存在し、そしてこれ は感染後72時間まで比較的一定であった。78時間時点で、病変の消散が現れ、そ して接種後96時間までに小庖疹はもはや見られなかった。n−ドコサノールクリ ームで処置すると、48〜56時間時点で小庖疹数を50〜60%阻止し、そして72〜78 時間の分析時点では僅かにそれより多い量を阻止した。対照媒体による処置では どの時点でも小庖疹数に与える効果は認められなかった。非処置及び処置部位を 摘除しそしてウイルス培養のために処理した。小庖疹の存在は、処置又はアッセ イ時間に関係なく、感染性ウイルスの存在と直接相関関係があった(データは示 していない)。このように、小庖疹数は本明細書に記載した試験における疾病状 態の適切な指標である。更に、クリームとプラセボを、68人の口唇ヘルペス患者 を含むフェーズIIパイロット試験で試験した。二重盲検試験の結果は、n−ドコ サノールクリームを初期に適用するとエピソードの継続をほぼ半分近く減らすこ とを示した。処置群の平均発症期間は3.4日であり、一方プラセボ群は平均6.6日 の発症期間であった。上記結果は、顕著な抗ウイルス作用には製剤中にn−ドコ サノールが存在することが必要であることを示している。 n−ドコサノールの抗ウイルス活性は、ベンジルアルコールを含む10%n−ド コサノールクリーム製剤の賦形剤のいずれも含有していない、n−ドコサノール の非イオン界面活性剤プルロニックF−68中懸濁製剤でも示されている。図6に 要約した結果は2つの重要な要点を示している。第1に、パネルAに示されるよ うに、n−ドコサノールのプルロニックF−68中懸濁製剤も、ウイルス感染2時 間後に適用したとき、クリーム製剤で観察されたように、HSV−1誘発性小庖 疹を阻止した。かくして、非処置部位はウイルス後48時間目に平均74個の小庖疹 を示したが、n−ドコサノール/F−68で処置した部位では僅か28個の小庖疹し か観察されなかった(63%阻止)。ヒトのHSV感染用の現在選択される治療法で あるゾビラックスによる治療も小庖疹数の減少に関係していたが、n−ドコサノ ールよりはるかに低かった。n−ドコサノールによる処置を継続すると72時間時 点でも小庖疹が少ないという結果になった。n−ドコサノール調製物の媒体対照 はいずれの時点でも効果がなかった。 図6から得られる第2の主要な要点は、n−ドコサノールはたとえ小庖疹が発 生した後に投与されたとしても、HSV−1誘発性疾患の消散を速めるというこ とである(パネルB)。種々の部位は48時間時点で概ね同数の小庖疹を示し、そし てこれは、その時点までどの部位も処置されていなかったので、予期されていた ことであった。小庖疹数は、非処置部位で48時間目の平均73個の小庖疹から72時 間目の43個の小庖疹にまで減少した。ゾビラックスによる処置は、72時間目の余 り大きくない疾患消散促進(27個の小庖疹、非処置部位に対して37%の減少)と 関係があり、そしてこれは同様な計画の他の実験と一致している。重要なことは 、n−ドコサノール/F−68の適用は、非処置群と比較したとき小庖疹数の77% 阻止で示されるように、小庖疹消散を顕著に早めたことである。同様な計画の実 験でクリーム製剤を使用して同じ結論が得られた。これは、HSV誘発性疾患経 過を変化させるためにn−ドコサノールを予防的に投与する必要がないことを示 している。 3つの安全性及び寛容性試験は、健常コーカサス人の男性及び女性ボランティ アで実施した。総計78人の健常ボランティアを医薬品に暴露した。安全性試験で は、n−ドコサノール10%クリームは光毒性を生じさせないと認められるが、確 率は低いとはいえアレルギー感作を生じさせる可能性も有する穏和な一次刺激物 であることが示された(暴露された78人のうち1人の被験者が接触皮膚炎を経験 した)。 2つの臨床有効性試験を完了した。試験Aは、63人の再発性口唇ヘルペス患者 (男性及び女性)での無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照フェーズ2試験であ った。口唇ヘルペス試験、即ち試験Aの31人のn−ドコサノール10%クリームで 処置した患者は全て処置を完了した。上記患者31人のうち2人はクリーム適用後 に焼けるような又は刺すように痛い感覚を報告した。どの試験でも、臨床的実験 室値(血液化学、血液学及び尿分析)の臨床的に重要な変化はなかった。試験B は、44人の女性の再発性陰部ヘルペス患者での無作為抽出、二重盲検、プラセボ 対照試験であった。陰部試験、即ち試験Bの22人のn−ドコサノール10%クリー ム処置患者は全て、何らかの医薬品関連副作用を報告することなく処置を完了し た。 試験A 65人の患者(年齢18〜60歳)が試験Aに参加し、32人の患者を最初に無為抽出 して10%n−ドコサノールクリームを与え、そして33人を最初に無作為抽出して プラセボクリームを与えた。処置は患者開始(patient-initiated)であり、そし て処置開始は、処置が前駆又は紅斑段階で開始した場合「初期」とそして丘疹段 階またはそれより後に開始した場合「後期」と定義した。2人の患者は分析から 除外した。63人の評価可能な患者のうち22人はクロスオーバー試験フェイズに入 れた。更に、13人の患者は同じ試験医薬品で1つより多いエピソードを処置した 。それ故、合計98のヘルペスエピソード(48は10%n−ドコサノールクリームで 処置しそして50はプラセボクリームで処置した)を分析した。 試験Aの結果は、最初の処置エピソード、クロスオーバー処置及び全処置エピ ソードに従って表5に一緒にまとめる。 31人の患者は10%のn−ドコサノールでそして32人はプラセボで口唇ヘルペス の最初のエピソードを処置した(パートA)。n−ドコサノール群の10人の患者と プラセボ群の4人は初期処置として分類された。初期処置n−ドコサノール群の 平均治癒時間は2.5日であり、他方の処置様式と比べて平均治癒時間が4.3〜4.8 日短縮された。この差異は、n−ドコサノールに関して統計的に非常に有意(P = 0.0001)であった。後期処置群では、n−ドコサノールは最初のエピソードの平 均治癒時間を0.5日短縮させ、そしてこれは統計的に有意ではなかった。 クロスオーバー試験に入った22人の患者のうち、この試験の両パートで病変を 初期に処置されていた数(クロスオーバーフェイズで7人がn−ドコサノールを 使用しそして1人がプラセボを使用した)は有意義な統計的分析をするには少な すぎた(パートB)。しかしながら、かなりの数の人(クロスオーバーフェイズで 15人がn−ドコサノールを使用しそして21人がプラセボを使用した)が病変を後 期に処置していたので、この点に関して患者内比較をすることができた。後期処 置の結果の変動を分析するとn−ドコサノールに関し有意の差が明らかになった (P=0.03)。 試験Aの98の全処置エピソードから得られたデータを一緒に評価すると(同じ 医薬品投与による単一エピソード、クロスオーバーエピソード及び追加的エピソ ード)、n−ドコサノール処置(5.7日)対プラセボ処置(7.3日)患者で1.6日の 平均全治癒時間の統計的に有意な(P=0.02)短縮が明らかになる(パートC)。 初期処置と分類された合計20のエピソードにおいて、局所n−ドコサノールは平 均治癒時間を3.3日短縮させた(P=0.05)。最後に、n−ドコサノールによる初 期処置の有効性を他の全ての処置様式と比較したとき、初期処置n−ドコサノー ル群の平均治癒時間(3.4日)は他の群の6.5〜7.4日の範囲とは極めて有意に異 なっていた。この差異はn−ドコサノールに関して非常に有意であった(P=0.0 002)。n−ドコサノール10%による後期処置と初期及び後期プラセボ処置との間 の差異は有意でなかった。 表5にまとめたデータで示されるように、10%n−ドコサノールクリームによ る初期処置(前駆又は紅斑段階での)は他の処置で得られたものと比較して治癒 時間を非常に顕著に短縮させた。加えて、病変が現れた後に開始した後期処置は 、他の分析ではそうではないが、この試験のクロスオーバー部分のn−ドコサノ ール処置群で治癒時間の統計的に有意な短縮をもたらした。 試験B 最初の臨床試験で、無症候性であって且つ前駆段階でもない60人の再発性陰部 ヘルペス女性患者が試験に入った。初期段階陰部ヘルペス再発を治療するための 患者開始試験で、30人の被験者を最初に無作為抽出して10%n−ドコサノールク リームを与え、そして30人にプラセボクリームを与えた。44人の患者が処置を開 始しそしてヘルペスエピソードで再度来院した。これらの患者のうち22人にn− ドコサノールが与えられそして22人にプラセボが与えられた。 16人の評価可能なn−ドコサノール患者の平均治癒時間は、1.8〜8.6日の範囲 で、4.7日±1.9であった。18人の評価可能なプラセボ患者では治癒は、1.7〜10. 4日の範囲で、平均値5.1日±2.3以内に完結した。この差異は統計的に有意でな かった(p=0.5827、t検定)。応諾しなかったか若しくは投与を中断したか、観 察可能なエピソードのない前徴を有していたか、或いは同時酵母感染を有してい た陰部病変の無い患者は評価不能であるとした。患者を全て含めたとき、n−ド コサノール群の平均治癒時間は、1.8〜9.8日の範囲で、5.5日±2.5であった。プ ラセボ群では、治癒は平均値4.7日±2.3で達成された。この群の治癒時間は1.7 〜10.4日の範囲であった。2つの処置群間の平均治癒時間には統計的に有意な差 異は存在しなかった(p=0.2703、t検定)。処置を開始したときの病変の段階( 前駆、紅斑又は丘疹)に従って患者を階層化した処置群間にも統計的に有意な差 異はなかった。患者の格付けに基づく平均治癒時間は臨床医のものと同様であっ た(全n−ドコサノール患者の5.6日対全プラセボ患者の4.5日)。 3種の疼痛(pain)分析は、持続した「疼痛なし」までの期間、最初の「疼痛な し」までの期間、及び疼痛の最初の軽減までの期間に関し、患者の疼痛自己評価 に基づいて実施した。持続した「疼痛なし」までの期間は、適用時の最初の疼痛 時から1)疼痛が最低2回連続の記録で「疼痛なし」として評価され、そして2 )エピソードの残りの期間中、更なる疼痛の記録が「軽い」疼痛の2回連続記録 の2つの別個のエピソードより頻繁且つ重篤でなかった時間までを測定した。最 初の「疼痛なし」までの期間は、適用時の最初の疼痛から「疼痛なし」の最初の 記録までの期間として定義された。疼痛の最初の軽減までの期間は、適用時の最 初の疼痛時から、以前の評価に比べて疼痛レベルの低下が認められた最初の時点 までを測定した。数人の患者は、最初の24時間以内に疼痛がないかまたは疼痛報 告に応諾しないかのどちらかの理由によりこれらの分析から除いた。 n−ドコサノールで処置した15人の評価可能な患者は、14人の評価可能なプラ セボ患者より早く「疼痛なし」の持続応答を達成した。プラセボ患者の4.1日±2 .5と比較してn−ドコサノール患者は3.2日±1.9の平均値であった。n−ドコサ ノール患者は「疼痛なし」もプラセボ患者より早く達成した。n−ドコサノール 患者は、疼痛分析開始後平均値2.6日±2.1で「疼痛なし」を初めて記録したが、 プラセボ患者は疼痛分析開始後平均値3.4日±2.1で「疼痛なし」を初めて記録し た。評価可能なn−ドコサノール患者の間で、先行する適用時の疼痛に関連して 、疼痛の最初の軽減は疼痛分析開始後平均値1.2日±1.0で生起した。プラセボ患 者では疼痛の最初の軽減は平均値1.8日±1.4で生起した。これらの差異は統計的 に有意ではなかった(それぞれ、p=0.2775、0.325及び0.1757、t検定)。応諾 しなかったか又は投与中断、観察可能なエピソードのない前徴及び同時酵母感染 を有していた陰部病変の無い患者は評価不能であるとした。 本発明は、有効な局所痛緩和剤であるという驚くべき知見に従って、生理学的 に適合性の担体中に、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコサノー ル、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール、n− ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノール又はこれら の混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子を有する少なくとも1つ の長鎖脂肪族アルコールの組成物(該アルコールは該組成物の約5重量%〜約25 重量%を構成する)を炎症表面に適用することを含む、皮膚又は膜の表面炎症痛 を軽減させる方法を包含する。好ましくは、生理学的に適合性の担体は、スクロ ースココエート、スクロースステアレート及びスクロースジステアレートからな る群から選択される1以上の化合物、並びに、ポリオキシプロピレンステアリル エーテル、エチルヘキサンジオール及びベンジルアルコールからなる群から選択 される1以上の化合物を含むクリーム基剤である。 10%n−ドコサノールクリームを与えた患者とプラセボクリームを与えた患者 間の治癒期間において統計的に有意な差異は試験Bでは認められなかったが、n −ドコサノールで処置した評価可能な患者では治癒時間が短縮される傾向があっ た。3つの異なる疼痛分析は全て、n−ドコサノール10%クリームを与えた被験 者で一層急速な疼痛消散を示したが、これらの差異はどれも統計的に有意でなか った。この試験で統計的有意性を見つけることができないことは、一つには、( 1)試験集団が小さいこと、(2)陰部ヘルペス病変の自然病歴に関して2つの 試験群間の試験加入時の差異、及び(3)2つの試験群間のエピソード及び処置 開始の病変段階の不均一な分布を反映していると思われる。 臨床試験に加えて、n−ドコサノールの薬理学を解明するために幾つかの試験 を実施した。これらの試験によって図7〜13に示したデータが得られ、そして これらは以下で検討する。 n−ドコサノールの生物学的活性を研究するために克服すべき更に困難な障害 の1つは、生物学的系への化合物の許容可能な送達を可能にする適当な製剤を開 発することであった。最初に、これは不活性で非毒性の非イオン界面活性剤、プ ルロニックF−68中の疎水性分子の懸濁液を製剤化することによって達成された 。このような懸濁液は平均0.10ミクロンの大きさの粒子を含有するn−ドコサノ ールからなっており品質が均一であることが証明された。このようにして懸濁さ れたn−ドコサノールは、サルとヒトの両細胞系のタイプ1と2の両方のヘルペ ス単純ウイルス(HSV)感染に対してインビトロで優れた阻止活性を発揮する 。重要なことは、n−ドコサノール/プルロニック懸濁液がHSVの野生型とア シクロビル耐性突然変異株の両方に対して同等に有効なことである。すなわち、 図7、パネルAに示されるように、アシクロビルとn−ドコサノールは共に野生 型HSV−2によるプラーク形成を同等に阻止する。図7、パネルBは、予想さ れたとおりアシクロビル耐性HSV−2突然変異株はアシクロビルには応答しな いが、n−ドコサノールの阻止活性には非常に明白に感受性であることを示して いる。両パネルの最後の棒は、プルロニック界面活性剤単独では抗ウイルス活性 を全く有さないことを示している。宿主細胞毒性は300mMのn−ドコサノールで あっても観察されなかった。 これらの組織培養試験に使用したn−ドコサノールの明らかに非常に高い投与 量は特別のコメントに値する。これは実際には、インビトロ系で作られたもので あり、そして微粒子懸濁液から付着細胞への分子の送達が制限されているためで ある。輸送は幾つかの理由により制限される可能性がある。第1に、このタイプ の懸濁液の密度によって大部分の粒子は上方に浮遊する。その結果、組織培養物 中に恐らく物理化学的アーチファクトが創られ、そしてこれにより、結合標的細 胞単層に生物活性用量を送達するのに必要な流体動力学的傾斜を得るために、懸 濁医薬品の高周囲量が必要となる。第2に、熱動力学的に安定な粒子から培養細 胞へのn−ドコサノールの分子の輸送は効率的な方法であるとは予想されないで あろう。取込み試験で示されるように、これら培養物中のn−ドコサノールの実 際の生物活性用量は図7及び9に示した投与量の1/1000である。事実上、mM で示した数をμMに簡単に変換することができる。 組織培養系の抗ウイルス活性が常に、全体の動物試験又はヒトでの医薬品有効 性に解釈されるわけではない。そのため、本発明者らは、ヒトで使用される局所 用エマルジョン(これは明確に皮膚浸透を最大にしそして可能性のある局所刺激 反応を最小にするように設計された)の活性をモルモットのHSV誘発性皮膚病 変の治療で試験した。HSV−1又は−2は、入れ墨器具を用いて無毛モルモッ トの背の皮膚に接種した。これらの部位は、n−ドコサノール含有クリームの種 々の濃度若しくは対照媒体で処置するか又は処置しないかのどちらかであった。 処置は接種2時間後に適用しそして24、36及び48時間目に再度適用した。小庖疹 形成は、それぞれ該疾患の最大相及び消散相を示す接種後56及び72時間目に接種 部位で数えた。図8で示したデータは、無毛モルモットのHSV−2誘発性病変 の阻止について1%、5%、10%及び20%のn−ドコサノールクリームの濃度を 試験する投与量応答試験を示す。10%n−ドコサノール含有調製物に対応するプ ラセボをこの実験に含め、そしてそのプラセボで得られたデータは折れ線グラフ の頂部に、矢印で示したデータ点と共に水平カラムで示す。72時間の時点のデー タしか示されていないが、より初期の時点でも同様な阻止パターンが観察された 。データに示されているように、このn−ドコサノールの局所製剤は良好な抗ウ イルス活性を発揮し、最適の阻止活性は10%クリームで得られ(60%阻止)そし て20%調製物に本質的に匹敵する活性が観察された。20%のクリームの幾分より 低い阻止活性は一貫して観察され、そしてクリームの皮膚中への消失を達成する にはより長時間が必要であること(データは示していない)によって明らかなよ うに、疎水性n−ドコサノール分子で界面活性剤が飽和されることに多分関係が あると思われる。5%及び1%のn−ドコサノールを含有するクリームは、明ら か に10%調製物より有効でなく、そして10%クリームに対応するプラセボは全く活 性を有していなかった。データは示されていないが、この無毛モルモットモデル のHSV−1誘発性皮膚病変で匹敵する結果が得られた。それ故、10%n−ドコ サノールクリームはモルモットでのHSV誘発性皮膚病変を軽減するのに有効で ある。 n−ドコサノールが抗ウイルス活性を発揮するメカニズムを明らかにするため に設計された広範な試験を実施した。これらの試験結果を集めると、この化合物 によって、ウイルスが細胞に入りそして感染した標的細胞の核に移動する通常の 経路の1以上が妨げられるように思われる。この考えを明らかに支持する主要な 要点は次のようにまとめることができる。(a)ウイルスをn−ドコサノール懸 濁液と混合し、次いで懸濁液から回収すると、通常の感染性を保持していること が示されるので、この化合物は直接的な殺ウイルス活性を有していない、(b) この化合物はヘルペスイウルスと標的細胞上のHSV特異的レセプターとの結合 を妨げないが、n−ドコサノールの存在下で標的細胞レセプターと結合したHS Vビリオンは長期間細胞表面に留まる、そして(c)検出可能なHSVコア及び エンベロープタンパク質アッセイ、即時型早期タンパク質ICP−4発現細胞数 アッセイ及び二次プラークアッセイで測定すると、内在化しているウイルスの細 胞核へのその後の移動が顕著に阻止される。 上記したウイルスの内在化の遅延は、図9にまとめた実験で説明される。この 実験では、ウイルスとレセプターの結合を可能にするために4℃でn−ドコサノ ールの不存在下又は存在下でベロ細胞と共にHSV−2をインキュベートした。 3時間後に、培養物を全て洗浄しそしてその後ウイルス侵入過程を開始させるた めに37℃で再プレートした。その後20分間隔で、表面に結合しているが内在化し ていないHSVビリオンを除去しそして不活性化する条件下で、種々の培養物を pH 3.0のクエン酸緩衝溶液に暴露し、そしてその後最適のHSVプラークを発 生するのに必要な全44時間再度培養した。予想されたように、0時でクエン酸緩 衝溶液に暴露した培養物は全てプラークを発生しなかった。グラフの最上部の線 によって示されるように、HSV−2の内在化は非処置及びプルロニック対照処 置培養物では37℃に変えた後20分以内に事実上完了した。対照的に、n−ドコサ ノール処置培養物におけるHSVの内在化は20分までに40%未満しか完了せず、 そして完了に達するには1時間以上必要であった。これらの結果は、ウイルス融 合及び/又はトランスメンブラン移動の動力学が何らかの方法でn−ドコサノー ルによって遅延されることを明白に示している。 n−ドコサノール処置細胞で内在化が完了した後であっても、その後のウイル スの細胞核への移動は顕著に阻止される。すなわち、エリザ法で検出可能なHS Vコア及びエンベロープの両タンパク質抗原の量、並びに蛍光抗体法による核内 HSV特異的即時型早期タンパク質ICP−4を発現する感染細胞の数は80%以 上減少する。最後に、n−ドコサノール処置細胞では、二次プラークアッセイ培 養物で測定するとき感染性ビリオンの複製が99%以上顕著に消失する。 要約すると、n−ドコサノールの存在はウイルス結合の初期段階では影響を有 していないが、或る未だ決定されていないメカニズムによってウイルスが標的細 胞の細胞質に入るのをかなり遅延させる。加えて、核への移動や核への局在化の 過程は実質的に遮断され、生産的なウイルス複製が顕著に減少するという究極的 な効果を有している。 n−ドコサノールが抗ウイルス活性を発揮する正確なメカニズムをより良く明 確にするために、本発明者らは最近、界面活性剤で安定化した懸濁液からのn− ドコサノールの細胞取り込み、分布及び代謝を研究した。このような研究の結果 は、この化合物の抗ウイルス作用の代謝的根拠への或る興味ある洞察を提供して いる。第1に、本発明者らは、放射性標識したn−ドコサノールが培養ベロ細胞 中に漸進的に取り込まれ、暴露後6〜12時間の間に細胞当たり最大の取り込みに 達することを示すことができた。この過程は、化合物が1度細胞と会合すると、 非特異的に会合した細胞結合粒子を効果的に除去する臭化セシウムで徹底的に洗 浄しても除去できないので、不可逆的である。 第2に、飽和濃度では、培養物に添加した総n−ドコサノールの1%未満が24 時間以内に細胞と会合するようになる。これは1細胞当たりほぼ8×109個の分 子に対応し、これはすごい量であり、血漿膜中に典型的に見られる脂質分子の数 に近い。培養物に添加した懸濁液中のn−ドコサノールのこのように小さいフラ クションが細胞に会合するという事実は、実際の生物活性投与量が培養物に添加 し た医薬品の量未満の大きさの程度であることを示している。 超音波で破壊した細胞の分画遠心で回収されるサブ細胞フラクションを検査す る細胞分布試験によって、暴露12時間後に放射性化合物の75%が細胞膜内に含ま れ、そして1%未満が核フラクションにあり、残りの放射能は可溶性細胞質フラ クションにあることが見い出された。 n−ドコサノールの代謝変換の分析はこの化合物が極性化合物に漸進的に代謝 されることを示しており、そしてこの極性化合物は薄層クロマトグラフィーによ って、同化(エーテル結合)か又は異化(酸化的)反応のどちらかによって生成 されるホスファチドであることが示された。図10は、n−ドコサノール処置ベ ロ細胞の抽出物のシリカゲルカラムから得られるメタノール溶出(ホスファチド 含有)フラクションの薄層クロマトグラフィー分析を示す。代謝されていないn −ドコサノールは、クロロホルムでシリカゲルから予め溶出された。データに示 されているように、カウントの概ね62%がホスファチジルコリンの領域に移動し 、そして38%はホスファチジルエタノールアミンの領域に移動した。本発明者ら の研究はまた、このような代謝変換が適当な代謝インヒビターによって遮断され 得ることを証明している。すなわち、有効なエネルギー毒、アジ化ナトリウム及 び2−デオキシグルコースは、ベロ細胞によるn−ドコサノールの取り込みを90 %そして極性代謝物への代謝変換を80%減少させる。多分、アジ化ナトリウムと 2−デオキシグルコースの組合せは、エンドサイトーシスを阻止することによっ て、主としてn−ドコサノールの細胞取り込みを阻止するのであろう。しかしな がら、エネルギー依存性融合メカニズムを含む他の取り込みメカニズム、又はそ の後のn−ドコサノールのエネルギー依存性代謝によって促進される受動的拡散 メカニズムもこれらのエネルギー毒で阻止されることが考えられる。 これらの研究の1つの興味ある面は、n−ドコサノールの抗ウイルス活性にお けるこの化合物の極性代謝物の可能性のある役割を示していることである。ポリ エチレングリコール誘発性融合に対するマウス線維芽細胞の抵抗性が、遊離脂肪 アルコールの増加、及び、上記したn−ドコサノールの代謝変換によって得られ る生成物に類似しているであろうエーテル結合化合物を含むグリセリドの増加の 両方と相関関係があるということが最近証明されている。それ故、本発明者らは 、 n−ドコサノールの酵素的変換がn−ドコサノールの抗ウイルス活性に必要な前 提条件である可能性を調べるために実験を行った。このような研究の結果は、第 1に、細胞取り込みの速度及び程度ではなくて、n−ドコサノールの極性代謝物 への代謝変換の速度及び程度が、この化合物を懸濁するために使用される界面活 性剤の性質によって決定されること、そして実際に、代謝変換の効率がn−ドコ サノールの抗ウイルス活性の大きさと直接相関関係があることを証明している。 このような研究を実施する最初の段階は、n−ドコサノールを懸濁するための 異なる界面活性剤に替えることに関係していた。テトロニック(Tetronic)908 はプルロニックF−68と密接に関係があり、両方共、エチレンオキシドとプロピ レンオキシドのブロックコポリマーである。しかしながら、プルロニックは8,40 0の分子量を有する二官能性ポリマーであるが、テトロニック908はプロピレンオ キシド及びエチレンオキシドをエチレンジアミンに加えて製造されそして25,000 の平均分子量を有する分子が得ることにより製造される四官能性コポリマーであ る。なかでも、テトロニック又はプルロニック中に懸濁したn−ドコサノールの 等用量にベロ細胞を暴露したとき、この化合物の極性代謝物への代謝速度及び程 度はプルロニック懸濁液よりテトロニック懸濁液で顕著に高い。2つの異なる懸 濁製剤からの放射性n−ドコサノールの総取り込みは同等であった。代謝変換だ けが顕著に異なっていた。プルロニック懸濁液よりテトロニック懸濁液からの代 謝変換の方が高いことと相互に関係があるのは、n−ドコサノールによるHSV 複製阻止のED50がテトロニック中では5〜10mMでありそしてこれはプルロニ ックの約3倍であるという知見である。これはテトロニック中のn−ドコサノー ル処置細胞での代謝変換値が3倍高いことに関係があるように思われる。 これらの知見がベロ細胞培養系に特有である可能性をなくすために、本発明者 らは、ベロ細胞に関して、上皮様ウシ腎臓細胞系のMDBKがn−ドコサノール の抗HSV活性に対して興味のある明白な耐性を示すという事実を利用して相互 分析を行った。この差異は、n−ドコサノールがMDBK細胞よりベロ細胞にお いてHSV誘発性プラークを阻止するのに3〜4倍有効であるという点で重要で ある。本発明者らが総細胞取り込みや相対的代謝を比較したとき、結果は極めて 明白であった。第1に、n−ドコサノールの総取り込み量と代謝変換の相対量は 共にMDBK細胞よりベロ細胞中で3〜4倍高かった。MDBKとベロ細胞を対 比した取り込み低下と代謝低下を組み合わせた効果を図11に図示的に示し、そ してこれは、72時間後にベロ細胞が、この溶媒系の出発点に残っているホスファ チド代謝物をほぼ4倍多い量で含有していることを明白に示している。それにも 拘わらず、2つの細胞系で代謝されるカウントのうち、形成されるホスファチド の主要クラス、即ちホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミン 中の相対量は2つの細胞系で異なっていない。更に、パルス−チェイス実験は、 取り込まれた全てのカウントを両細胞系が結局は更に極性の形態に変換すること を示した。このような結果はMDBK細胞が、ベロ細胞ではより有効でないか又 は有効に作用しないフィードバックタイプのメカニズムによってn−ドコサノー ルの取り込み及び/又は代謝を効果的に調整し得ることを示唆している。 上記で要約したメカニズム的観察と一致して、本発明者らはn−ドコサノール が、多様な種々のウイルス、特に外部エンベロープに脂質を含有しそして受容性 標的細胞に入るために融合メカニズムを使用するウイルスを妨げる能力を有して いるであろうと予測した。表5は、今日までに、n−ドコサノールの抗ウイルス 活性に感受性が示されているヒト及びネズミ脂質エンベロープウイルスをまとめ たものである。 試験した全ての脂質エンベロープウイルスはこの医薬品によって有効に阻止す ることができる。脂質エンベロープウイルスに対するこの医薬品の一様な有効性 とは対照的に、この化合物に対する感受性を本発明者が試験したポリオウイルス 又はレオウイルス、即ち非エンベロープウイルスに対してはこの医薬品は検出可 能な活性を全く発揮しなかった。 n−ドコサノールはインビボとインビトロの両方で抗レトロウイルス活性を有 している。抗レトロウイルス活性を有しそして毒性のない製剤はヒト及び家畜の 多様なレトロウイルス疾患の治療にかなりの有用性を有しているであろう。エイ ズ(AIDS)の治療に拘わらず、ネコ白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、 並びにHTLV−1及び2のようなレトロウイルスによって引き起こされる疾患 の治療レジメに利用できることは人道的な面で実質的な利益を有しているであろ う。本発明者らの研究によって、n−ドコサノールはインビトロとインビボでネ ズミレトロウイルスの複製を阻止することが確立された。 初期の研究はネズミフレンド白血病ウイルス(FV、8)に焦点を当てていた 。成熟マウスにFVを接種すると赤血球前駆細胞、特に好塩基性赤芽球の白血病 を誘発させる。この赤白血病は、ウイルス感染赤血球系細胞の急速な増殖、ウイ ルス血症、免疫抑制及び最終的には動物の死亡によって特徴付けられる。静脈内 に注射したFVは脾臓のような造血器官を通って循環し、そして赤血球系細胞を 感染させる。このような感染脾臓をウイルス注射後10日目に固定した場合、この 器官の表面に明確な肉眼で見える結節を見ることができる。これらは白血病細胞 のクローンを表し、そして脾臓病巣アッセイの根拠の基礎となる。 図12にまとめた実験は、n−ドコサノールが75病巣形成単位のフレンドウイ ルスを静注した成熟マウスでフレンドウイルス誘発性白血病及びウイルス病を阻 止することを示している。処置群には、ウイルス接種と同日及びその後の3日間 に1日1回種々の投与量のn−ドコサノール又はプルロニック媒体単独を静注し た。10日後、各群の動物の半分を屠殺しそしてこれら動物の脾臓の白血病病巣の 存在について試験し、一方残りの動物はウイルス病を監視するために更に10日間 維持した。n−ドコサノールによる処置は、パネルAで示される白血病病巣の進 展とパネルBで示されるウイルス病の進展の両方に対して非常に明白な投与量に 関連した阻止作用を発揮した。対照的に、対照としてのプルロニック媒体単独の 同様な量による処置は識別できる効果を全く発揮しなかった。本発明者らは、イ ンビトロ系試験によって初期胚線維芽細胞培養物中でのフレンドウイルスの複製 に対するこの医薬品の非常に強力な活性が証明されているので、これらの結果は ウイルス複製に対するn−ドコサノールの阻止活性を反映していると考える。 n−ドコサノールはHIV−1及びヒトヘルペスウイルス6のインビトロ複製 を阻止する。HIVに関する本発明者らの初期の研究は米国国立衛生研究所(U. S.National Institutes of Health)の研究室と共同して実施され、そしてこの タイプの幾つかの実験のうちの1つを図13にまとめる。正常なヒト末梢血単核 細胞は、培地単独又はn−ドコサノール、プルロニックF−68対照媒体、若しく はホスホノギ酸(PFA)の存在下で1mg/mlのPHA及び5単位/mlのIL− 2で活性化させた。翌日、培養物にHIV−1を接種しそしてその4日後p24ウ イルス抗原を検出してウイルス複製の徴候について試験した。対照処置培養物中 でかなりの値のHIV−1複製が生起し、非処置群で観察されたものに匹敵した 。データに示されているように、n−ドコサノールはPHA/IL−2刺激ヒト 末梢血単核細胞の培養物中のHIV−1に対して用量に関連した阻止活性を示し た。最高用量での活性は、非常に強力な抗ウイルス化合物のホスホノギ酸(PF A)で観察されたものに匹敵した。これらの初期実験が行われたので、本発明者 らはこれらの観察を本発明者らの実験室で再現し、テトロニック中に懸濁したn −ドコサノールの更に強力な製剤を使用すると更に一層高い抗ウイルスHIV活 性値が示された。n−ドコサノールに対するHIV−1の用量応答は約6〜9mM のED50を示す。 要約すると、有効量のC−20〜C−28の直鎖の脂肪族アルコール(最も好まし くはn−ドコサノール単独又は上記のような他のアルコールとの混合物から実質 的に成る)を含有する長期間安定なクリーム調製物の製造で経験した初期の困難 は克服されそしてこれらの化合物の薬理学が解明された。組成物については、本 発明は、ヒトの治療を含む、動物の皮膚又は膜のウイルス誘発性及び炎症性疾患 の治療での使用に適し、通常の取り扱い条件下で1年以上の貯蔵寿命を有し、即 ち室温で1年以上安定であり、そして冷凍−解凍サイクルに耐える長期間安定な 局所クリーム製剤で具体化される。このクリームの必須成分はn−ドコサノール 単独又は他の直鎖の長鎖(C−20〜C−28)脂肪族アルコールとの混合物、生理 学的に活性な成分、水、油、糖と脂肪酸のエステル(このエステルは生理学的に 不活性であるか又は身体で代謝できる)及び皮膚又は膜の患部へのn−ドコサノ ールの浸透を助けそして上記の生理学的に活性なアルコール(1つ又は複数)用 の安定な担体を形成するのに上記エステルと共同して作用する皮膚軟化剤である 。糖系エステルは、約150より大きい、そして好ましくは250を超える分子量を有 する糖部分及び約150またはそれより大きい、そして好ましくは250を超える分子 量を有する脂肪酸エステル部分を含んでいる。このエステルは約400又はそれよ り大きい分子量を有している。本明細書で使用する用語の糖は高級ポリアルコー ルのケトン又はアルデヒド誘導体である甘いか又は甘みのある炭水化物であり、 そして糖類と二糖類の双方を含み、二糖類系エステルが好ましい。高分子量多価 アルコールはあまり望ましくない均等物であるがより伝統的な糖の代わりに使用 してもよい。 読者には多分明白であろうが、薬理学的研究は、これらの研究で使用した細胞 と一層適合性であるが、有効な局所治療に必要な基材や安定性を欠いているため に局所医薬調製物としては適当でない懸濁液を使用して実施した。 一般的に最適のクリーム製剤は、最終クリーム製剤の総重量に基づく重量で、 n−ドコサノール 5〜25%更に最適には約10%±5%、スクロースステアレート 0〜15%最適には約3〜10%、及び/又はスクロースココエート 0〜15%最適に は約3〜10%、及び/又はスクロースジステアレート 0〜15%最適には約3〜10 %(総組成物の少なくとも約3重量パーセント、好ましくは約10±5重量パーセン ト を構成する少なくとも1つのスクロースエステル若しくは同等の糖系エステル) 、油例えば鉱油 NF 3〜15%最適には約8%±4%、グリコール例えばプロピ レングリコール USP又は同等物 2〜10%最適には約5%±2%、皮膚軟化剤 グリコールエーテル例えばポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテル又は ベンジルアルコール 0〜5%最適には約2〜3%、並びに水40〜70%最適には 約45〜65%を含んでいる。この一般的な組成内で、上記で示したデータ、本明細 書の教示及び本明細書に提示した指針に基づいて安定で且つ記載した治療効果を 示す多数の特定の製剤を調製することができる。治療的に活性の物質が本質的に n−ドコサノール単独又は直鎖の長鎖(C−20〜C−28)脂肪族アルコールとの 混合物からなっている最初の有効な局所治療用組成物が基礎となっている。 産業上の有用性 本発明は、医薬品の製造に、そして更にまたヒト及び動物の患者の治療に有用 である。
【手続補正書】特許法第184条の8 【提出日】1995年12月12日 【補正内容】 請求の範囲 1.糖系エステル界面活性剤、約5重量パーセントより多いn−ドコサノール 、鉱油、皮膚軟化助溶媒及び水から実質的に成る、少なくとも40℃の温度で少な くとも3ヶ月の期間安定で且つ冷凍−解凍サイクル反復後にも安定な、ウイルス 性及び炎症性疾患の治療のための皮膚及び膜への適用用の治療用クリーム。 2.前記糖系エステル界面活性剤が、スクロースココエート、スクロースステ アレート及びスクロースジステアレートからなる群から選択される請求項1に記 載の治療用クリーム。 3.前記皮膚軟化助溶媒が、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、エチ ルヘキサンジオール及びベンジルアルコール又はこれらの組合せからなる群から 選択される請求項2に記載の治療用クリーム。 4.糖系エステル界面活性剤と、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n −ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサ ノール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノー ル又はこれらの混合物からなる群から選択される約5重量パーセントより多い20 〜28個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコールと、鉱油と、 皮膚軟化助溶媒と、水とから実質的に成る、少なくとも40℃の温度で少なくとも 3ヶ月の期間安定で且つ冷凍−解凍サイクル反復後にも安定な、ウイルス性及び 炎症性疾患の治療のための皮膚及び膜への適用用の治療用クリーム。 5.前記糖系エステル界面活性剤が、スクロースココエート、スクロースステ アレート及びスクロースジステアレートからなるスクロースエステルの群から選 択される少なくとも1つの化合物を含み、前記スクロースエステルは前記クリー ムの約3重量パーセント以上を構成する請求項4に記載の治療用クリーム。 6.前記スクロースエステルが前記クリームの約10±5重量パーセント以上を 構成する請求項4に記載の治療用クリーム。 7.前記皮膚軟化助溶媒が、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、エチ ルヘキサンジオール及びベンジルアルコール又はこれらの組合せからなる群から 選択される請求項6に記載の治療用クリーム。 8.前記長鎖脂肪族アルコールが前記クリームの少なくとも約10重量パーセン トを構成する請求項7に記載の治療用クリーム。 9.主要な治療組成物が、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコ サノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール 、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノール又は これらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子を有する少なくと も1つの長鎖脂肪族アルコールから実質的に成り、そして、クリーム基剤が、ス クロースココエート、スクロースステアレート及びスクロースジステアレートか らなる群から選択される1以上の化合物、並びに、ポリオキシプロピレンステア リルエーテル、エチルヘキサンジオール及びベンジルアルコールからなる群から 選択される1以上の化合物を含む治療用クリーム。 10.スクロースココエート、スクロースステアレート及びスクロースジステ アレートからなる群から選択される1つ以上が前記クリームの約10±5重量パー セント以上である請求項9に記載の治療用クリーム。 11.(削除) 12.前記の20〜28個の炭素原子を有する長鎖脂肪族アルコールが前記クリー ムの少なくとも約10重量パーセントを構成する請求項10に記載の治療用クリー ム。 13.前記治療用組成物がn−ドコサノールから実質的になる請求項12に記 載の治療用クリーム。 14.前記クリームの5〜15重量%を構成する、n−イコサノール、n−ヘニ コサノール、n−ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、 n−ペンタコサノール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn− オクタコサノール又はこれらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素 原子を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコール、前記クリームの0〜15重 量%を構成するスクロースステアレート、前記クリームの0〜10重量%を構成す るスクロースココエート、前記クリームの0〜10重量%を構成するスクロースジ ステアレート(但し、少なくとも1つのスクロースエステルが存在しそして組成 物全体の少なくとも約3重量パーセントを構成する)、前記クリームの3〜15重 量%を構成する鉱油、前記クリームの0.5〜10重量%を構成するベンジルアルコ ール、及び、前記クリームの45〜70重量%を構成する水、の組成を有する請求項 12に記載の治療用クリーム。 15.n−ドコサノールから実質的に成る治療的に活性の組成物、並びに、糖 系エステル界面活性剤と、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコサ ノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール、 n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノール又はこ れらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子を有する少なくとも 1つの長鎖脂肪族アルコールと、鉱油と、皮膚軟化助溶媒と、水とから実質的に 成るクリーム基材を含む安定な治療用局所クリームを治療の必要な患者に適用す ることを含む、皮膚及び粘膜のウイルス感染及び炎症を治療する方法。 16.n−ドコサノールが長鎖脂肪族アルコールの半分より多くを構成する請 求項15に記載の方法。 17.下記の組成を有する局所クリームを適用することを含む、皮膚及び粘膜 のウイルス感染及び炎症を治療する方法。 n−ドコサノール 5〜20% スクロースステアレート 0〜15% スクロースココエート 0〜10% スクロースジステアレート 0〜10% (但し、少なくとも1つのスクロースエステルが存在し、そしてスクロ ースエステルは局所クリームの約3重量パーセント又はそれより多くを構成する 。) 鉱油 3〜15% プロピレングリコール 2〜10% ポリオキシプロピレン−15− ステアリルエーテル 0〜5% ベンジルアルコール 0.5〜5% (但し、ポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテルか又はベンジ ルアルコールのどちらかが少なくとも1%の量で存在する。) 水 40〜70% 18.スクロースエステルが前記クリームの約10±5重量パーセント以上を構 成する請求項17に記載の方法。 19.下記の組成を有する、炎症又はウイルス感染の治療又は予防用クリーム 。 n−ドコサノール 5〜20% スクロースステアレート 0〜15% スクロースココエート 0〜10% スクロースジステアレート 0〜10% (但し、少なくとも1つのスクロースエステルが存在しそしてスクロー スエステルは抗炎症及び抗ウイルスクリームの約3重量パーセント以上を構成す る。) 鉱油 3〜15% プロピレングリコール 2〜10% ポリオキシプロピレン ステアリルエーテル 0〜5% ベンジルアルコール 0〜5% (但し、ポリオキシプロピレンステアリルエーテルか又はベンジルアル コールのどちらかが約1%以上の量で存在する。) 水 40〜70% 20.スクロースエステルが前記クリームの約10±5重量パーセント以上を構 成する請求項19に記載のクリーム。 21.生理学的に適合性の担体中の、n−イコサノール、n−ヘニコサノール 、n−ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタ コサノール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサ ノール又はこれらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子を有す る少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコールの組成物であって、前記アルコールは 前記組成物の約5〜約25重量%を構成する前記組成物を炎症表面に適用すること を含む皮膚又は膜の表面炎症痛を軽減させる方法。 22.前記生理学的に適合性の担体が、スクロースココエート、スクロースス テアレート及びスクロースジステアレートからなる群から選択される1以上の化 合物、並びに、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、エチルヘキサンジオ ール及びベンジルアルコールからなる群から選択される1以上の化合物を含むク リーム基剤である請求項21に記載の方法。 23.前記長鎖アルコールがn−ドコサノールから実質的に成る請求項21に 記載の方法。 24.皮膚及び粘膜のウイルス感染及び炎症の治療用医薬品の調製における、 糖系エステル界面活性剤と、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコ サノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール 、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール、n−オクタコサノール又はこ れらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子を有する少なくとも 1つの長鎖脂肪族アルコールと、鉱油と、皮膚軟化助溶媒と、水とから実質的に 成るクリーム基剤及びn−ドコサノールから実質的に成る治療的に活性な組成物 の使用。 25.n−ドコサノールが前記長鎖脂肪族アルコールの半分より多くを構成す る請求項24に記載の使用。 26.皮膚及び粘膜のウイルス感染及び炎症を治療するための下記の組成を有 する局所用クリームの使用。 n−ドコサノール 5〜20% スクロースステアレート 0〜15% スクロースココエート 0〜10% スクロースジステアレート 0〜10% (但し、少なくとも1つのスクロースエステルが存在しそしてスクロースエステ ルは局所用クリームの約3重量パーセント以上を構成する。) 鉱油 3〜15% プロピレングリコール 2〜10% ポリオキシプロピレン− 15−ステアリルエーテル 0〜5% ベンジルアルコール 0.5〜5% (但し、ポリオキシプロピレンステアリルエーテルか又はベンジルアルコールの どちらかが少なくとも1%の量で存在する。) 水 40〜70% 27.スクロースエステルが前記クリームの約10±5重量パーセント以上を構 成する請求項26に記載の使用。 28.炎症表面に医薬品を適用することによって皮膚又は膜の表面炎症痛を軽 減させる医薬品の調製における、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n− ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノ ール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール、n−オクタコサノール又 はこれらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子を有する少なく とも1つの長鎖脂肪族アルコールを生理学的に適合性の担体中に含む組成物であ って、前記アルコールは前記組成物の約5〜約25重量%を構成する前記組成物の 使用。 29.前記生理学的に適合性の担体が、スクロースココエート、スクロースス テアレート及びスクロースジステアレートからなる群から選択される1以上の化 合物、並びに、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、エチルヘキサンジオ ール及びベンジルアルコールからなる群から選択される1以上の化合物を含むク リーム基剤である請求項28に記載の使用。 30.前記長鎖アルコールがn−ドコサノールから実質的に成る請求項28に 記載の使用。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),AU,BG,BY,CA,C N,CZ,FI,GE,HU,JP,KG,KR,KZ ,LT,LV,MD,NO,NZ,PL,RO,RU, SI,SK,TJ,UA,UZ,VN (72)発明者 マーセレッティ,ジョン,エフ. アメリカ合衆国,92120 カリフォルニア, サン ディエゴ,ラムダ ドライブ,6358 番地 (72)発明者 ポープ,ローラ,イー. アメリカ合衆国,92009 カリフォルニア, カールスバッド,カーレ マドリッド, 7967番地 (72)発明者 カッツ,リー,アール. アメリカ合衆国,92037 カリフォルニア, ラ ジョラ,ラ ジョラ ランチョ ロー ド,1775番地

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.糖系エステル界面活性剤、約5重量パーセントより多いn−ドコサノール 、鉱油、皮膚軟化助溶媒及び水から実質的に成る、少なくとも40℃の温度で少な くとも3ヶ月の期間安定で且つ冷凍−解凍サイクル反復後にも安定な、ウイルス 性及び炎症性疾患の治療で皮膚及び膜に適用するための治療用クリーム。 2.前記糖系エステル界面活性剤が、スクロースココエート、スクロースステ アレート及びスクロースジステアレートからなる群から選択される請求項1に記 載の治療用クリーム。 3.前記皮膚軟化助溶媒が、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、エチ ルヘキサンジオール及びベンジルアルコール又はこれらの組合せからなる群から 選択される請求項2に記載の治療用クリーム。 4.糖系エステル界面活性剤と、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n −ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサ ノール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノー ル又はこれらの混合物からなる群から選択される約5重量パーセントより多い20 〜28個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコールと、鉱油と、 皮膚軟化助溶媒と、水とから実質的に成る、少なくとも40℃の温度で少なくとも 3ヶ月の期間安定で且つ冷凍−解凍サイクル反復後にも安定な、ウイルス性及び 炎症性疾患の治療で皮膚及び膜に適用するための治療用クリーム。 5.前記糖系エステル界面活性剤が、スクロースココエート、スクロースステ アレート及びスクロースジステアレートからなるスクロースエステルの群から選 択される少なくとも1つの化合物を含み、前記スクロースエステルは前記クリー ムの約3重量パーセント以上を構成する請求項4に記載の治療用クリーム。 6.前記スクロースエステルが前記クリームの約10±5重量パーセント以上を 構成する請求項4に記載の治療用クリーム。 7.前記皮膚軟化助溶媒が、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、エチ ルヘキサンジオール及びベンジルアルコール又はこれらの組合せからなる群から 選択される請求項6に記載の治療用クリーム。 8.前記の直鎖の長鎖脂肪族アルコールが前記クリームの少なくとも約10重量 パーセントを構成する請求項7に記載の治療用クリーム。 9.主要な治療組成物が、n−イコサノール、n−ヘニコサノール、n−ドコ サノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタコサノール 、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサノール又は これらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子を有する少なくと も1つの長鎖脂肪族アルコールから実質的に成り、そして、クリーム基剤が、ス クロースココエート、スクロースステアレート及びスクロースジステアレートか らなる群から選択される1以上の化合物、並びに、ポリオキシプロピレンステア リルエーテル、エチルヘキサンジオール及びベンジルアルコールからなる群から 選択される1以上の化合物を含む、安定で有効な治療用クリーム。 10.スクロースエステルが前記クリームの約10±5重量パーセント以上を構 成する請求項9に記載の治療用クリーム。 11.前記皮膚軟化助溶媒が、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、エ チルヘキサンジオール及びベンジルアルコール又はこれらの組合せからなる群か ら選択される請求項10に記載の治療用クリーム。 12.前記の20〜28個の炭素を有する直鎖の長鎖脂肪族アルコールが前記クリ ームの少なくとも約10重量パーセントを構成する請求項11に記載の治療用クリ ーム。 13.前記治療用組成物がn−ドコサノールから実質的になる請求項12に記 載の治療用クリーム。 14.前記治療用クリーム全体の5〜15重量%を構成する、n−イコサノール 、n−ヘニコサノール、n−ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコ サノール、n−ペンタコサノール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノー ル及びn−オクタコサノール又はこれらの混合物からなる群から選択される20〜 28個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコール、該クリーム全 体の0〜15重量%を構成するスクロースステアレート、該クリーム全体の0〜10 重量%を構成するスクロースココエート、該クリーム全体の0〜10重量%を構成 するスクロースジステアレート(但し、少なくとも1つのスクロースエステルが 存 在しそして組成物全体の少なくとも約3重量パーセントを構成する)、該クリー ム全体の3〜15重量%を構成する鉱油、該クリーム全体の0.5〜10重量%を構成 するベンジルアルコール、及び、該クリーム全体の40〜70重量%を構成する水、 の組成を有する請求項12に記載の治療用クリーム。 15.治療的に活性の組成物がn−ドコサノールから実質的に成り、そして、 クリーム基剤が、糖系エステル界面活性剤と、n−イコサノール、n−ヘニコサ ノール、n−ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n− ペンタコサノール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オク タコサノール又はこれらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子 を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコールと、鉱油と、皮膚軟化助溶媒と 、水とから実質的に成る、安定な治療用局所クリームを適用することを含む、皮 膚及び粘膜のウイルス感染及び炎症を治療する方法。 16.n−ドコサノールが長鎖脂肪族アルコールの半分より多くを構成する請 求項15に記載の方法。 17.下記の組成を有する局所クリームを適用することを含む、皮膚及び粘膜 のウイルス感染及び炎症を治療する方法。 n−ドコサノール 5〜20% スクロースステアレート 0〜15% スクロースココエート 0〜10% スクロースジステアレート 0〜10% (但し、少なくとも1つのスクロースエステルが存在し、そしてスクロ ースエステルは局所クリームの約3重量パーセント又はそれより多くを構成する 。) 鉱油 3〜15% プロピレングリコール 2〜10% ポリオキシプロピレン−15− ステアリルエーテル 0〜5% ベンジルアルコール 0.5〜5% (但し、ポリオキシプロピレンステアリルエーテルか又はベンジルアル コールのどちらかが少なくとも1%の量で存在する。) 水 40〜70% 18.スクロースエステルが前記クリームの約10±5重量パーセント以上を構 成する請求項17に記載の方法。 19.下記の組成を有する抗炎症及び抗ウイルスクリーム。 n−ドコサノール 5〜20% スクロースステアレート 0〜15% スクロースココエート 0〜10% スクロースジステアレート 0〜10% (但し、少なくとも1つのスクロースエステルが存在しそしてスクロー スエステルは抗炎症及び抗ウイルスクリームの約3重量パーセント以上を構成す る。) 鉱油 3〜15% プロピレングリコール 2〜10% ポリオキシプロピレン ステアリルエーテル 0〜5% ベンジルアルコール 0〜5% (但し、ポリオキシプロピレンステアリルエーテルか又はベンジルアル コールのどちらかが約1%以上の量で存在する。) 水 40〜70% 20.スクロースエステルが前記クリームの約10±5重量パーセント以上を構 成する請求項19に記載の抗炎症クリーム。 21.生理学的に適合性の担体中の、n−イコサノール、n−ヘニコサノール 、n−ドコサノール、n−トリコサノール、n−テトラコサノール、n−ペンタ コサノール、n−ヘキサコサノール、n−ヘプタコサノール及びn−オクタコサ ノール又はこれらの混合物からなる群から選択される20〜28個の炭素原子を有す る少なくとも1つの長鎖脂肪族アルコールの組成物であって、前記アルコールは 前記組成物の約5〜約25重量%を構成する前記組成物を炎症表面に適用すること を含む皮膚又は膜の表面炎症痛を軽減させる方法。 22.前記生理学的に適合性の担体が、スクロースココエート、スクロースス テアレート及びスクロースジステアレートからなる群から選択される1以上の化 合物、並びに、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、エチルヘキサンジオ ール及びベンジルアルコールからなる群から選択される1以上の化合物を含むク リーム基剤である請求項21に記載の方法。 23.前記長鎖アルコールがn−ドコサノールから実質的に成る請求項21に 記載の方法。
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