【発明の詳細な説明】
N−シアノジチオイミノカーボネートおよび3−メルカプト−
5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾールの調製
発明の分野
本発明は、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾー
ルまたは3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール塩
の調製法に関する。
概して、本発明の方法は、式I
(式中、R−S基は適当な脱離基)のアニオンの金属塩をヒドラジンまたはヒド
ラジン水和物と、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリア
ゾール金属塩を生成させるのに必要な時間の間接触させる工程を含む。3−メル
カプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール金属塩は3−メルカ
プト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールに転化させることがで
きる。
本発明は、また、新規化合物N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルナト
リウム塩にも関する。
発明の背景
3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールは有機合
成における中間体として有用である。たとえば、欧州特許出願第142,152
号は、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールから
の有機除草剤化合物の調製を記述している。
米国特許第5,068,347号は、80℃のNaOH水溶液中における2,
5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾールの転移反応を述べている。英国特許
第1,232,838号は、二硫化炭素とアミノグアニジン塩との縮合によりグ
アニジノジチオカルバミン酸を生成させ、それをさらに、沸とうアルカリで処理
するトリアゾールの生成法を述べている。米国特許第4,543,309号は還
流しつつあるカセイ水溶液中でのN−グアニジノチオ尿素塩酸塩の環化に続く酸
性化を記述している。Godfrey氏およびKurzer氏はJ.Chem.Soc.(1960)
3437において、〔アミノ(アミジノ)〕−チオ尿素を酸で処理して、トリア
ゾールならびにアミンおよびケトン副生物を生成させた。
発明の要約
本発明の目的のために、「金属塩」という用語は、塩中のアニオン電荷を相殺
させるだけの一価金属、二価金属および多価金属の一部(fractions of polyval
ant metal)を有する金属塩を含む。混合金属塩も意図している。また、「金属
水酸化物」という用語は一価金属、二価金属および多価金属の水酸化物を含む。
本発明の目的のために、「第1族または第2族の金属」という用語は、周期表
中の第1族および第2族までの金属をすべて含む。
また、本発明の目的のために、「メタノール性溶剤系」という用語は、メタノ
ール、メタノール水溶液、またはメタノールを含有する溶剤混合物を含む。たと
えば、メタノール性溶剤系はメタノールおよび1種以上の他の溶媒たとえば水、
エタノールまたはアセトンのような溶剤を含むことができる。
本発明は、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾー
ルまたは3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール塩
の新規調製法を提供する。本発明は、また、迅速かつ効率的であることができ、
かつ良好な生成物収率および純度をもたらすことができる3−メルカプト−5−
アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールまたは3−メルカプト−5−アミ
ノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール塩の調製法を提供することもできる。
本発明の1つの態様は、式I
(式中、R−S基は適当な脱離基である)のアニオンの第1族または第2族金属
塩をヒドラジンまたはヒドラジン水和物と、3−メルカプト−5−アミノ−(1
H)−1,2,4−トリアゾールの第1族または第2族金属塩を生成させるのに
必要な時間の間接触させる工程を含む方法を提供することである。3−メルカプ
ト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールの第1族または第2族金
属塩は3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールに転
化させることができる。
本発明の別の態様は、
(a)式II
のアニオンの第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な条件下で、シア
ナミド、二硫化炭素、および第1族または第2族金属水酸化物をメタノール性溶
剤系中で接触させ、
(b)式I
(式中、R−S基は適当な脱離基)のアニオンの第1族または第2族金属塩を生
成させるのに必要な条件下で、前記(a)の式IIのアニオンの第1族または第2
族金属塩をR基を含有する化合物と接触させる工程を含む方法による式Iのアニ
オンの第1族または第2族金属塩の調製である。
本発明の1つの態様は、また、新規化合物N−シアノジチオイミノ炭酸メチル
エステルナトリウム塩を提供することでもある。
本発明の他の特徴および利点は以下の説明によって示されようし、一部は説明
から明らかになるであろうし、または本発明の実施によって知ることができよう
。本発明の特徴および利点は添付請求の範囲に示す方法によって理解し、獲得す
ることができる。
本発明は、式I
(式中、R−S基は適当な脱離基)のアニオンの第1族または第2族金属塩をヒ
ドラジンまたはヒドラジン水和物と、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−
1,2,4−トリアゾールの第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な
時間の問接触させる工程を含む3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2
,4−トリアゾール塩の調製法に関する。3−メルカプト−5−アミノ−(1H
)−1,2,4−トリアゾール塩は、好ましくは酸性化によって3−メルカプト
−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールに転化させることができる
。
好ましい態様では、この方法は第1族金属(A)を使用し、次のように表わす
ことができる。
式Iのアニオンの第1族または第2族金属塩は、
(a)式II
のアニオンの第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な条件下で、シア
ナミド、二硫化炭素、および第1族または第2族金属水酸化物をメタノール性溶
剤系中で接触させ、
(b)式I
(式中、R−S基は適当な脱離基)のアニオンの第1族または第2族金属塩を生
成させるのに必要な条件下で、前記(a)の式IIのアニオンの第1族または第2
族金属塩をR−基を含有する化合物と接触させる工程を含む方法によって調製す
ることができる。
好ましい態様では、本方法は第1族金属(A)およびR基を含有する化合物(
R−X)を使用する。この方法は次のように表わすことができる。
前記の2つの方法の組合せは
(a)式II
のアニオンの第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な条件下で、シア
ナミド、二硫化炭素、および第1族または第2族金属水酸化物を接触せさ、
(b)式I
(式中、R−S基は適当な脱離基)のアニオンの第1族または第2族金属塩を生
成させるのに必要な条件下で、前記(a)の式IIのアニオンの第1族または第2
族金属塩をR基を含有する化合物と接触させ、さらに
(c)3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールの
第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な条件下で、式Iのアニオンの
第1族または第2族の金属塩をヒドラジンまたはヒドラジン水和物と接触させる
工程を含む。この方法は、さらに、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1
,2,4−トリアゾールの第1族または第2族金属塩を、好ましくは酸性化によ
って3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールに転化
させる工程(d)を含むことができる。
好ましい態様では、本方法は第1族金属(A)およびR基を含有する化合物(
R−X)を使用する。この方法は次のように表わすことができる。
別の好ましい態様では、N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩を調製し、次にそ
れを用いてS置換−N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩を調製し、さらにそれを
ヒドラジンまたはヒドラジン水和物と反応させて、3−メルカプト−5−アミノ
−(1H)−1,2,4−トリアゾールの第1族または第2族金属塩を生成させ
ることによって、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリア
ゾールの第1族または第2族金属塩を高収率かつ高純度で調製することができる
。この3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール金属
塩は、酸性化のような当業者にとっては公知の手段によって、さらに、3−メル
カプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールに転化させることが
できる。
本発明の前記反応ならびにその好ましい反応物および条件を次に詳しく述べる
。N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩の調製
N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩は、エタノール水溶液、水または無水エタ
ノール溶剤中で、シアナミドおよび二硫化炭素を金属水酸化物溶液と接触させる
ような種々の方法によって調製されている。たとえば、Timmons氏および Witten
brook氏はJ.Org.Chem.、32.1566(1967)において、固体シアナ
ミドおよび固体水酸化カリウムをエタノール中で反応させた後沈澱した固体生成
物を単離するN−シアノジチオイミノ炭酸金属塩調製を述べている。
Wieland 氏はWest Virginia Universityの博士論文(1971)で、また D'A
mico氏およびCampbell氏は、J.Org.Chem.、32.2567(1967)にお
いて、85−90%エタノール中でのシアナミド水溶液とKOH水溶液との反応
後に沈澱した固体の単離を含む方法を記述している。ハンガリー特許第181,
743号(Reiter氏)は60%エタノール中でのシアナミド水溶液とKOH水溶
液との反応に続くジカリウム塩生成物の単離を述べている。米国特許第2,81
6,136号(Pera氏)は完全な水性系におけるアルカリ金属水酸化物またはア
ルカリ土金属水酸化物とアルカリ金属シアナミドまたはアルカリ土金属シアナミ
ドとの反応を述べている。
N−シアノジチオイミノ炭酸の第1族または第2族金属塩の調製は、式II
のアニオンの第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な条件下で、シア
ナミド、二硫化炭素、および第1族または第2族金属水酸化物を接触させること
を含むことができる。
N−シアノジチオイミノ炭酸第1族または第2族金属塩の調製は、適当な溶剤
中で、シアナミド、二硫化炭素および第1族または第2族金属水酸化物を接触さ
せることを含むのが好ましい。溶剤は、メタノール、メタノール水溶液、水、エ
タノール、エタノール水溶液、アセトンまたはこれらの混合物であるのがさらに
好ましい。シアナミド、二硫化炭素および第1族または第2族金属をメタノール
性溶剤系中で接触させるのがもっとも好ましい。
本発明による好ましい態様では、メタノール性溶剤系中で、シアナミド水溶液
と二硫化炭素との溶液を第1族の(アルカリ)金属水酸化物を接触させて、N−
シアノジチオイミノ炭酸ビス−アルカリ金属塩を生成させる。
好ましいメタノール性溶剤系はメタノール、メタノール水溶液、またはメタノ
ールを含む溶剤混合物であることができる。たとえば、メタノール性溶剤系は、
メタノールおよび1種以上の他の溶剤、たとえば水、エタノールまたはアセトン
のような溶剤を含むことができる。反応混合物中のメタノールの量は、二硫化炭
素の容積を除く総容積の少なくとも25%が好ましい。反応混合物中のメタノー
ルの量は、二硫化炭素の容積を除く総容積の約90%がさらに好ましい。反応混
合物中のメタノールの量は、二硫化炭素の容積を除く総容積の約50%がもっと
も好ましい。さらに低い百分率のメタノールを用いることもできる。低百分率の
メタノールを含有する反応混合物は、必ずしも望ましくないわけではないが、若
干緑色または橙色に変色することがある。
本発明のさらに好ましい態様では、シアナミド水溶液(好ましくは50%水溶
液)と二硫化炭素(CS2)とのメタノール(好ましくはCS2の容積を除く総
溶液容積の50容量%)中の混合物を、好ましくは20℃に冷却し、次いで好ま
しくは45分間を要して、金属水酸化物(好ましくは50%水溶液)を添加する
。反応は約2時間で完了させることができる。この反応によって、pHが概ね7
−8.5の中性ないしアルカリ性の黄色溶液が生成する。
N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩の生成におけるメタノール性溶剤系の選択
的使用は、他の溶剤系に比べて著しく勝ることができる。たとえば、N−シアノ
ジチオイミノ炭酸のビス−アルカリ金属塩生成の反応はエタノール中で行うこと
ができる。しかし、メタノール性溶剤系中での反応は、エタノールや他の公知の
溶剤中での反応に比べて、とりわけ、低コスト、再使用のための水からの分離の
容易さ、および高純度生成物等のいくつかの利点を有している。
これらのN−シアノジチオイミノ炭酸金属塩は、次の反応、たとえばモノS置
換−N−シアノジチオイミノ炭酸モノアルカリ金属塩を生成させるのに用いるこ
とができる。N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩はメタノール性溶剤系中に保持
するか、または次の反応の前に単離させることができる。モノS置換−N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩の調製
モノS置換−N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩は、Timmons氏および Witten
brook氏がJ.Org.Chem.、32:1566(1967)に報告した方法によっ
て調製した。Timmons氏および Wittenbrook氏の方法では、約0℃のヨウ化メチ
ルのアセトン溶液をN−シアノジチオイミノ炭酸ジカリウムのアセトン水溶液に
加えることによってN−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩を調
製する。反応混合物を濃縮し、生成物をアセトンに溶解し、濾過してヨウ化カリ
ウム(KI)を除くことによって、生成物をKI副生物から分離する。アセトン
溶液を濃縮して、固体生成物をエーテルで洗う。
モノS置換−N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩の調製は、式II
のアニオンの第1族または第2族金属塩を、式I
(式中、R−S基は適当な脱離基)のアニオンの第1族または第2族金属塩を生
成させるのに必要な条件下で、R基を含有する少なくとも1種の化合物と接触さ
せることを含むことができる。R基を含有する化合物は好ましくは少なくとも1
モル当量で2モル当量よりも少ないR基を与えることが好ましい。
モノS置換−N−シアノジチオイミノ炭酸第1族または第2族金属塩の調製は
適当な溶剤中で式IIのアニオンの第1族または第2族金属塩をR基を含有する少
なくとも1種の化合物と接触させることを含むのが好ましい。溶剤は、メタノー
ル、メタノール水溶液、水、エタノール、エタノール水溶液、アセトンまたはこ
れらの混合物であるのがさらに好ましい。メタノール性溶剤系中で式IIのアニオ
ンの第1族または第2族金属塩およびR基を含有する少なくとも1種の化合物を
接触させるのがもっとも好ましい。
本発明によるメタノール性溶剤系中におけるモノS置換−N−シアノジチオイ
ミノ炭酸金属塩の選択的調製は、従来技術の方法よりも迅速で効率的であること
ができる。メタノール性溶剤系は、前記のように、好ましくは、メタノール、メ
タノール水溶液、またはメタノールを含む溶剤混合物であることができる。モノ
S置換−N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩の調製に好ましいメタノール性溶剤
系はN−シアノジチオイミノ炭酸金属塩の調製の場合に述べたものと同じである
。
Rで表わされる基は、置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝C1−C20ア
ルキル、C2−C20アルケニルまたはC2−C20アルキニル基;単環式または多環
式、縮合または非縮合、炭素環式または複素環式、置換または無置換アリール基
;水素;および非アリール、単環式または多環式、縮合または非縮合、置換また
は無置換複素環式基から選ぶのが好ましいか;またはR−Sをチオスルホネート
;スルホネート、チオエステルおよびチオカルバメートから選ぶのが好ましい。
さらに好ましい態様では、Rは置換または無置換、分枝または非分枝C1−C6
アルキル基から選ばれる。Rはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルが
より好ましく、Rはメチルであるのがもっとも好ましい。
好ましい態様では、R基を含有する化合物は基R−X(式中、Xは塩化物、ヨ
ウ化物、臭化物)かまたは基R−X−R(式中、Xはサルフェート(SO4 2-)
のような二価の基)である。たとえば、R基を含有する化合物はメチル化剤のC
H3Xおよび(CH3)2Xたとえば塩化メチル、ヨウ化メチル、または硫酸ジメ
チルから選ぶことができる。好ましい態様では、R基を含有する化合物は塩化メ
チルまたは硫酸ジメチルである。
本発明の好ましい態様では、N−シアノジチオイミノ炭酸ビス−アルカリ金属
塩、たとえばN−シアノジチオイミノ炭酸ジナトリウムまたはN−シアノジチオ
イミノ炭酸ジカリウムのメタノール性水溶液を、モノS置換−N−シアノジチオ
イミノカーボネート、たとえばN−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルナト
リウム塩またはN−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩を調製す
る反応が完了する(概して2時間)まで、メタノールに溶解するかまたは希釈せ
ずに、好ましくは希釈せずにR基含有化合物、たとえば塩化メチルで処理する。
反応混合物を濃縮して、メタノールを回収し、かつ反応生成物を単離させること
ができる。
上記の塩がナトリウム塩であるときには、N−シアノジチオイミノ炭酸メチル
エステルナトリウム塩生成物を、粘稠な黄色混合物(NaClを含有することが
ある)として得ることができる。該塩がカリウム塩の場合には、N−シアノジチ
オイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩を黄白色固体として得ることができる。
好ましい態様では、モノS置換−N−シアノジチオイミノカーボネート生成物
を、次の反応の前に、アセトンおよび/またはジクロロメタンのような少なくと
も1種の溶剤で、精製することができる。精製工程は、モノS置換−N−シアノ
ジチオイミノカーボネート生成物から実質的に、または完全に副生物を除くよう
に行うことができる。
固体生成物をアセトンのような適当な溶剤に溶解して、濾過することにより該
生成物からNaClまたはKClのような副生物を除くことができる。溶剤溶液
は、次に、濃縮して、溶剤を回収することができ、また濃厚である場合には、ジ
クロロメタンのような適当な溶剤中に、適当な時間、たとえば30分間、撹拌し
ながら懸濁させることによって生成固体を精製することができる。得られたスラ
リーはさらに濾過して、固形物を乾燥することができる。反応中に形成されたか
もしれないN−シアノジチオイミノ炭酸ジメチルエステルのようなジ置換エステ
ルは濾液から分離することができる。
精製用ジクロロメタンの選択的使用は、ジエチルエーテルとは異なり、ジクロ
ロメタンが不燃性であり、かつ過酸化物を生成しないので、ジエチルエーテルの
使用に比べて優れている。生成物は、次に、空気中で約12時間、または真空下
約50℃で約2時間乾燥することができる。
上記S置換−N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩は、異物および副生物をほと
んど含んでいないのが好ましいが、さらにヒドラジンまたはヒドラジン水和物と
反応させて、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾー
ル金属塩を生成させることができる。3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール金属塩の調 製
モノS置換−N−シアノジチオイミノ炭酸金属塩のヒドラジンまたはヒドラジ
ン水和物との反応は、本発明以前には知られていなかったので、ここで新規な反
応として開示する。
本発明の好ましい態様は、式I
(式中、R−S基は適当な脱離基)のアニオンの第1族または第2族金属塩をヒ
ドラジンまたはヒドラジン水和物と、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−
1,2,4−トリアゾールの第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な
時間の間、接触させる工程を含む方法である。
本発明のさらに好ましい態様は
(a)シアナミド、二硫化炭素および第1族または第2族金属水酸化物を、
式II
のアニオンの第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な条件下で接触さ
せ、
(b)前記(a)の式IIのアニオンの第1族または第2族金属塩をR基を含有
する化合物と、式I
(式中、R−S基は適当な脱離基)のアニオンの第1族または第2族金属塩を生
成させるのに必要な条件下で接触させ、さらに
(c)式Iのアニオンの第1族または第2族金属塩をヒドラジンまたはヒドラ
ジン水和物と、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾ
ールの第1族または第2族金属塩を生成させるのに必要な条件下で接触させる工
程を含む方法である。
3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール金属塩の
各調製法において、基Rおよび基Rの好ましい態様は、モノS置換−N−シアノ
ジチオイミノ炭酸金属塩の場合に既に述べたものと同じである。前記のように、
特に好ましい態様では、Rはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルであ
り、もっとも好ましくはRがメチルである。
3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール金属塩を
生成させる反応は通常、25℃から100℃までの範囲の高温で行うことができ
るが、ただし該反応はこの範囲には限定されない。好ましい態様では、反応温度
は約50℃から60℃までの範囲にある。
好ましい態様では、N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩や
N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルナトリウム塩のようなモノS置換−
N−シアノジチオイミノ炭酸塩は室温で水に溶解させることができ、さらに1モ
ル当量のヒドラジンまたはヒドラジン水和物を、撹拌しながら、1滴ずつ、少し
ずつ、または一度に全部加えることができる。該塩の重量モル濃度は0.5Mか
ら4Mまでの範囲が好ましく、2Mから4Mまでの範囲の重量モル濃度がさらに
好ましい。反応は発熱的であって、ヒドラジンまたはヒドラジン水和物がすべて
加えられるまで、添加速度を制御して、反応温度を約50℃に保つのが好ましい
。ヒドラジンまたはヒドラジン水和物の添加後、好ましくは1.5時間または反
応が終了するまで、反応混合物を約50℃に保ち、その後は混合物を冷却するの
が好ましい。
3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールを生成さ
せるのに、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール
金属塩を用いることができる。3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールの調製
3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール金属塩は
当業者の公知の手段によって3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,
4−トリアゾールに転化させることができる。
好ましい態様では、酸性化によって、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)
−1,2,4−トリアゾール金属塩を3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−
1,2,4−トリアゾールに転化させることができる。該酸性化は、溶液が約4
〜約7未満のpHに達するまで、充分な量の酸を、3−メルカプト−5−アミノ
−(1H)−1,2,4−トリアゾール金属塩溶液に加えて行うのが好ましい。
溶液が約6のpHに達するまで、充分な量の酸、たとえば塩酸を3−メルカプト
−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール金属塩溶液に加えるのがさ
らに好ましい。
好ましい態様では、固体の3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,
4−トリアゾール生成物を水またはアセトンで洗い、濾過して単離させ、さらに
乾燥することができる。3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−
トリアゾールの収率は75〜100%までの範囲にあるのが好ましく、生成物の
純度は94%を上回るのが好ましい。
下記実施例は本発明を説明するためのものであって、発明の範囲を限定しよう
とするものではない。
実施例
N−シアノジチオイミノ炭酸ジナトリウム
実施例1
温度計、機械式撹拌パドル、添加漏斗および窒素弁を備えた1Lの三つ口丸底
フラスコに、シアナミド(50%水溶液40.5g、482ミリモル、1.0当
量)、95%エタノール(96mL)、および二硫化炭素(36.6g、481ミ
リモル、1.0当量)を充てんした。次に容器を10分間窒素でパージした。混
合物を撹拌して、5℃に冷却した。別に塩基溶液を調製した。550mLの95%
エタノールに1/2時間かけて水酸化ナトリウム(38.6g、965ミリモル
、2.0当量)を溶解し、溶液を室温に冷却した。添加漏斗にこの溶液を入れた
。温度を9℃に保ちながら25分かけて塩基溶液を冷却したシアナミド混合物に
加えた。黄色生成混合物を1時間撹拌した後、濾過して不溶解物質を除いた。こ
のN−シアノジチオイミノ炭酸ジナトリウム溶液を次の反応に直接使用して、N
−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルナトリウム塩を生成させた。
実施例2
温度計、窒素弁、添加漏斗(不平衡装置(non-equalizing))および撹拌棒を備え
た100mLの三つ口丸底フラスコに、シアナミド(50%水溶液10.2g、1
20.5ミリモル、1.0当量)、95%エタノール(60mL)、および二硫化
炭素(9.24g、121.4ミリモル、1.01当量)を充てんした。添加漏
斗に17mLの水に溶解した水酸化ナトリウム(9.64g、241ミリモル、2
.0当量)を入れた。シアナミド混合物を1℃に冷却して、塩基溶液を34分間
にわたり1滴ずつ加えた。最終温度は10℃であって、該温度は1時間経つまで
には15℃に上昇した。混合物を真空濃縮し、残留水分は95%エタノール(2
×50mL)で除去した。黄白色固体をエタノール中に懸濁させ、10分間撹拌し
てから濾過して、5.4g(27%)のN−シアノジチオイミノ炭酸ジナトリウ
ムを白色粉末として得た。濾液を濃縮して、16gのやや湿潤した生成物を
得た。
実施例3
実施例1および2に示した方法以外に、エタノール水溶液(25〜60%水分
、好ましくは50%水分)またはメタノール水溶液(5〜75%水分、好ましく
は50%水分)のような他の溶剤中で、0℃〜30℃の温度においてN−シアノ
ジチオイミノ炭酸ジナトリウムを調製することができる。
N−シアノジチオイミノ炭酸ジカリウム
実施例4
1Lのステンレス鋼製オートクレーブ中にシアナミド(50%水溶液125.
6g、1.496モル、1.0当量)、95%エタノール(350mL)、および
二硫化炭素(123.15g、1.617モル、1.08当量)を充てんした。
該系を密封して、反応温度を30℃未満に保ちながら、水酸化カリウム(14.
0M、213.7mL、2.992モル、2.0当量)を20分かけて送り込んだ
。水酸化カリウムを洗い落すのに水(30mL)および95%エタノール(30mL
)を使用した。混合物を2時間撹拌し、得られた黄色スラリーは、次の反応に直
接使用して、N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩を得た。
実施例5
撹拌棒、温度計および添加漏斗を備えた100mLの三つ口丸底フラスコにシア
ナミド(50%水溶液15.16g、180ミリモル、1.0当量)、メタノー
ル(40mL)および二硫化炭素(13.7g、180ミリモル、1.0当量)を
充てんした。該系を密封し、反応温度を20℃未満に保ちながら、18分を要し
て水酸化カリウム(14.0M、25.7mL、360ミリモル、2.0当量)を
加えた。混合物を2時間撹拌し、得られた黄色スラリーについて、残留シアナミ
ドがないかどうか調べ、かつpHを測定した。シアナミドが残留し(TLC)か
つpHが12を上回ったので、二硫化炭素(3mL)を加えて、15分後に反応混
合物のpHを9とした。このスラリーを次の反応に直接使用して、N−シアノジ
チオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩を得た。
N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルナトリウム塩
実施例6
N−シアノジチオイミノ炭酸ジナトリウム水溶液(米国特許第2,816,1
36号−参考資料として本明細書に収録−により調製)(32重量%水溶液;1
00mL、197ミリモル)をアセトン(160mL)および水(79mL)で希釈し
た。溶液を5℃に冷却して、ヨウ化メチル(28.0g、197.3ミリモル、
1.00当量)のアセトン(80mL)溶液を45分間にわたり1滴ずつ加えた。
混合物を濃縮して、57gの塊(理論収量30g)を有する黄色スラリーを得た
。95%転化物をSメチル付加物と仮定すれば、このスラリーを次の反応にその
まま使用して、3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾ
ールかまたはN−シアノジチオイミノ炭酸ジメチルエステルを生成させることが
できうる。もしくは、この化合物を、業界では周知の方法によって、単離して同
定することができる。
実施例7
ヨウ化メチルの別の同等物との次の反応で生成物N−シアノジチオイミノ炭酸
メチルエステルナトリウム塩(黄色スラリーとして57g)をN−シアノジチオ
イミノ炭酸ジメチルエステルに転化させた以外は、メチル化剤として、ヨウ化メ
チルの代わりに硫酸ジメチルを用いて実施例6を繰返した。
実施例8
N−シアノジチオイミノ炭酸ジナトリウム水溶液(米国特許第2,816,1
36号一本明細書に参照資料として収録−により調製)(32重量%水溶液;2
50mL、493ミリモル)をアセトン(250mL)で希釈した。硫酸ジメチル(
62.2g、493ミリモル、1.0当量)を、12分間かけて1滴ずつ添加し
て、反応温度を50℃に高めた。温度を徐々に25℃に下げながら、混合物を1
時間撹拌した。1時間後、混合物を濃縮して、容積250mLの黄色スラリーを得
た。該スラリーをアセトン(1L)で希釈し、濾過して硫酸メチルエステルナト
リウム塩を除き、濃縮して、150mLの容積にした。このスラリーは、95%転
化物をSメチル付加物と仮定すれば、次の反応にそのまま使用して、3−メルカ
プト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾールかまたはN−シアノジ
チオイミノ炭酸ジメチルエステルを生成させることができよう。もしくはこの
化合物を、業界で公知の方法を用いて単離し、同定することができる。
実施例9
硫酸ジメチルの添加に50分を要した以外は反応温度として5℃を用いて実施
例8を繰返した。このスラリーをそのまま次の反応に用いて、N−シアノジチオ
イミノ炭酸ジメチルを生成させた。95%転化物をSメチル付加物と仮定すれば
、該スラリーは高収率の3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−
トリアゾールを生成させるのにも使用することができよう。もしくは、この化合
物を業界で公知の方法によって単離し、同定することができる。
実施例10
実施例6−9に示した方法以外に、エタノール水溶液(5〜75%水分、好ま
しくは50%水分)のような溶剤中で、0℃〜50℃の間の温度において、N−
シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルナトリウム塩を調製することができる。
さらに、ヨウ化メチルの代りに硫酸ジメチルや塩化メチルのような他のメチル化
剤を使用することもできうる。
N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩
実施例11
機械式撹拌機、温度計、フリットガラス製送り込み管および排出管を備えた5
Lの三つ口丸底フラスコにN−シアノジチオイミノ炭酸ジカリウム(348.2
g、1.794モル、1.0当量)、水(1.575L)、およびアセトン(1
.450L)を充てんした。溶液を3℃に冷却し、温度を7℃未満に保ちながら
70分間を要して、塩化メチル(102.8g、2.036モル、1.13当量
)を添加した。反応混合物を一夜間撹拌した後、濃縮して、湿潤黄白色ペースト
を得、それをアセトン(1.25L;生成物の4mL/g)中に懸濁させて、5分
間撹拌した。混合物を濾過して、124g(93%)の白色塩化カリウムを得た
。この固体の試料を水に溶解すると無色透明な溶液を得、これは出発ジカリウム
塩がすべて消費されたことを示すものであった。濾液を50℃において真空濃縮
して、黄白色固体を得、これを塩化メチレン(900mL;生成物の3mL/g)中
に懸濁させて(N−シアノジチオイミノ炭酸ジメチル副生物を除くため)約30
分撹拌した。濾過して固体を集め、塩化メチレン(100mL)で洗
い、乾燥して235g(77%)の白色結晶性固体(融点:212−217℃)
を得た。1H NMRは構造と一致した。塩化メチレン濾液を水(100mL)で
洗い、乾燥し(MgSO4)、濾過し濃縮して7.6g(5.8%)のN−シア
ノジチオイミノ炭酸ジメチルを得た。
実施例12
撹拌棒、温度計、および添加漏斗を備えた250mLの三つ口丸底フラスコ中に
シアナミド(50%水溶液15.1g、180ミリモル、1.0当量)、95%
エタノール(36mL)、および二硫化炭素(13.7g、180ミリモル、1.
0当量)を充てんした。水酸化カリウム(23.74g、360ミリモル、2.
0当量、20%エタノール水溶液120mL中)を添加漏斗に入れ、反応温度を約
8℃に保ちながら38分を要して添加した。混合物を2.5時間撹拌し、得られ
たスラリーに、温度を45℃に上げながら1時間を要して塩化メチル(12.6
g、249ミリモル、1.38当量)を添加した。反応混合物を1時間撹拌して
から濃縮して、黄白色ペーストを得た。ペーストにアセトン(125mL;生成物
の4mL/g)を加えて、混合物を30分撹拌した。混合物を濾過して、16.2
gの湿潤白色塩化カリウムを得た。この固体の試料を水に溶解すると無色透明の
溶液を得、これは出発ジカリウム塩がすべて消費されたことを示すものであった
。濾液を50℃で濃縮して、黄白色の固体を得、これを塩化メチレン(200mL
;生成物の3mL/g)中に懸濁させて(N−シアノジチオイミノ炭酸ジメチル副
生成を除くため)、約30分撹拌した。濾過して固体を集め、塩化メチレン(1
0mL)で洗い、乾燥して26.0g(85%)のN−シアノジチオイミノ炭酸メ
チルエステルカリウム塩である薄桃色の結晶性固体を得た。塩化メチレンの濾過
を濃縮して、1.7g(9%)のN−シアノジチオイミノ炭酸ジメチルを得た。
実施例13
1Lのステンレス鋼製オートクレーブ中にシアナミド(50%水溶液125.
4g、1.491モル、1.0当量)、95%エタノール(350mL)、および
二硫化炭素(120g、1.576モル、1.05当量)を充てんした。該系を
密封して、反応温度を30℃未満に保ちながら、20分を要して、水酸化
カリウム(14.0M、214.8mL、3.007モル、2.0当量)を送り込
んだ。水酸化カリウムをすべて反応混合物に確実に到達させるために、水(30
mL)を使用して、送り込み管を洗い流した。混合物を3時間撹拌後、反応温度を
40℃に保ちながら、1.75時間を要して塩化メチル(91.7g、1.82
モル、1.21当量)を添加した。45分後に、反応混合物を2/3の容積に濃
縮して、3つの220mLの部分に分けた。A部分を濃縮して、黄白色ペーストと
し、それをアセトン(340mL;生成物の4mL/g)中に懸濁させ、30分撹拌
して濾過した。湿潤塩化カリウムを得(約40g)、濾液を濃縮し、真空オープ
ンにて2時間乾燥後、75.3g(88.6%)のN−シアノジチオイミノ炭酸
メチルエステルカリウム塩を得た。B部分は一夜間貯蔵後濃縮して、黄白色ペー
ストとした。95%エタノール(50mL)により水分を除去し、ペーストをアセ
トン(320mL)中に懸濁させて、0.5時間撹拌した。混合物を濾過して湿潤
塩化カリウムを得、黄色濾液は乾燥し(Na2SO4)、濾過して濃縮した。粒状
黄色固体としての乾燥物の収量は73.3g(86%)であった。生成物のこの
処理は反応混合物を約12時間貯蔵してもメチルカリウム付加物がほとんど分解
しなかったことを示すものであった。C部分は実施例18に述べるようにヒドラ
ジンで処理した。
実施例14
1Lのステンレス鋼製オートクレーブ中に、シアナミド(50%水溶液125
.4g、1.491モル、1.0当量)、メタノール(350mL)、および二硫
化炭素(127.6g、1.676モル、1.12当量)を充てんした。該シス
テムを密封し、反応温度を25℃未満に保ちながら、20分を要して水酸化カリ
ウム(14.0M、210mL、2.982モル、2.0当量)を送り込んだ。水
酸化カリウムがすべて反応混合物に確実に到達するように、送入管を水(30mL
)を用いて洗い流した。混合物を2時間撹拌し、反応混合物を分析して、シアナ
ミドが完全に消費され、pHが7.5であることが判明した。反応温度を35℃
に保ちながら、15分を要して塩化メチル(75g、1.485モル、1.04
当量)を添加した。1.25時間後に、反応混合物を濃縮して、黄白色ペースト
を得た。95%エタノール(100mL)を用いて水分を除去し、ペース
トをメタノール(500mL)中に懸濁させ、0.5時間撹拌した。混合物を濾過
して、塩化カリウムを得(真空乾燥、105g、95%)、濾過ケースをメタノ
ール(2×100mL)で洗い、黄色の濾液を濃縮した。得られた黄色ペーストを
塩化メチレン(750mL)で洗って濾過した。
塩化カリウム固形物および塩化メチレン濾液の分析結果(TLC)から生成物
が両方に存在することが判明した。したがって、生成物を塩化カリウムから分離
、精製するのにメタノールを使用することはできない。
該塩化カリウムをアセトン(100mL)で洗って、濾過した。塩化メチレン濾
液を濃縮して、黄白色ペーストをアセトン(375mL)に溶解し、濾過して、少
量の塩化カリウムを除いた。
アセトン層を合わせて濃縮し、黄白色ペーストを塩化メチレン(300mL)中
に0.5時間懸濁させた。混合物を濾過し、濾過ケークを塩化メチレン(100
mL)で洗って、106gのKCl(95%)および232g(91%)の目的の
メチルカリウム生成物を黄白色粉末(融点;207℃)として得た。生成物は1
Hおよび13C NMRスペクトルで固定された。
3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール
前記実施例6〜14に示した方法によって調製したN−シアノジチオイミノ炭
酸メチルエステルナトリウム塩またはN−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステ
ルカリウム塩のようなモノS置換−N−シアノジチオイミノカーボネートから目
的生成物の3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール
を調製することができる。
実施例15
N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩(170g、1.0モ
ル:実施例13のAおよびB部分)の水(250mL;40重量%)溶液を重力濾
過により不溶固形物を除去して45℃に加温した。温度を60℃未満に保ちなが
ら20分を要して、ヒドラジン水和物(54.4%水溶液、32.09g、1.
0モル)を1滴ずつ加えた。窒素気流を用いて反応容器から生成したメタンチオ
ールを除去した。反応混合物を約50℃で1・2時間撹拌した後、混合物を一夜
間で室温に冷却させた。溶液を濾過して、不溶物を除き、氷冷した。pHが
6になるまで濃塩酸を加えた(約65mL)。濾過して白色固体を集め、水洗(2
00mL)し、乾燥して、92g(79%)の目的の3−メルカプト−5−アミノ
−(1H)−1,2,4−トリアゾール(純度;96.7%(HPLC))を得
た。
実施例16
実施例13により、1.25モルのシアナミド、ならびにほぼ同じ反応時間お
よび温度を用いて、N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩溶液
を調製した。モノメチル付加物を含有する反応混合物をアスピレーターで真空に
しながら50℃で濃縮して、エタノールを除去した。残留物を水(300mL)で
希釈して、N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩の25重量%
水溶液を得た。添加に45分を要した以外は実施例15に示したと同じように、
該溶液を、ヒドラジン水和物(54.4重量%水溶液約74g、1.255モル
、1.0当量)で処理した。反応混合物をpH5に酸性化することによって、3
−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4−トリアゾール生成物を沈澱
させ、濾過して単離した。3−メルカプト−5−アミノ−(1H)−1,2,4
−トリアゾールの収量は96g(66%)で、純度は96.5%であった。
実施例17
1.496モルのシアナミドを用い、エタノールを除去して、水で希釈した後
のN−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩の百分率濃度が30重
量%であった以外は実施例16の実験を繰返した。反応混合物のpHを6に調節
した以外は実施例16と同様にして生成物トリアゾールを得た。トリアゾールの
収量は118g(68%)で純度は97.3%であった。
実施例18
水で希釈後N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩の25重量
%水溶液であった実施例13のC部分を45℃に加温し、33分を要してヒドラ
ジン(54.4重量%水溶液、29.44g、0.500モル、約1当量)を添
加し、得られた溶液を45℃で、2.25時間撹拌した。溶液を25℃に冷却し
て、pH6が得られるまで、濃塩酸を加えた(濃塩酸約36mL)。混合物を1時
間撹拌して、濾過した。濾過ケークを水(100mL)およびアセトン(100mL
)
で洗い、真空乾燥して、38g(65.5%)のトリアゾールを96.7%の純
度で得た。
実施例19
実施例16に従い、N−シアノジチオイミノ炭酸ジカリウム溶液を一夜間保持
した以外はほぼ同じ時間および温度を用いかつ1.499モルのシアナミドを使
用してN−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩溶液を調製した。
反応混合物を濃縮して、モノメチル付加物の30重量%の百分率濃度の水溶液を
得た。この水溶液を4つの部分に分けて、各部分を、実施例15の方法により、
表に示したパラメータを用いてヒドラジン水和物で処理した。ただし、トリアゾ
ールカリウム塩の4つの溶液は一夜間貯蔵した。
これらの結果から、実施例15の方法において、満足すべき生成物の収率およ
び純度を得るには、1当量を上回るヒドラジンの使用は不必要なことがわかる。
実施例20
N−シアノジチオイミノ炭酸メチルエステルカリウム塩(10.0g、58.
7ミリモル、1.0当量;実施例14による)を水(15mL、40重量%)に溶
解し、30℃においてヒドラジン水和物(54.4重量%水溶液、3.5mL、1
.90g、59.4ミリモル、1.01当量)を加えて、溶液を1時間撹拌した
。溶液を、さらに、55℃に加熱して、0.5mL以上のヒドラジン(54.5%
水溶液)を加えた。溶液をこの温度に1時間保持し、さらに一夜間撹拌して、漸
次室温に冷却した。濃塩酸を用いて溶液をpH4.6に酸性化し、固形物を吸
引捕集し、水、アセトンで洗って乾燥した。目的のトリアゾールの収量は5.3
g(77%)で、純度は98,5%であった。この実施例から、トリアゾールの
純度はメチルカリウム塩を精製するのに用いた洗液の純度および種類に直接関係
することがわかる。
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TD,TG),AM,AT,AU,BB,BG,BR,
BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,F
I,GB,GE,HU,JP,KG,KP,KR,KZ
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NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,S
I,SK,TJ,TT,UA,UZ,VN