JPH0948610A - 表面にスルホン酸基を有する無機物質とその製法及び用途 - Google Patents

表面にスルホン酸基を有する無機物質とその製法及び用途

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JPH0948610A
JPH0948610A JP7235348A JP23534895A JPH0948610A JP H0948610 A JPH0948610 A JP H0948610A JP 7235348 A JP7235348 A JP 7235348A JP 23534895 A JP23534895 A JP 23534895A JP H0948610 A JPH0948610 A JP H0948610A
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sulfonic acid
inorganic substance
coating
powder
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JP7235348A
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English (en)
Inventor
Akira Nishihara
明 西原
Yukiya Yamashita
行也 山下
Kyoko Kawamura
京子 川村
Hideaki Sakurai
英章 桜井
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Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 無機粉末 (例、超微粒子シリカ、チタニア
等) の表面に、一般式(I)で示される末端にスルホン酸
エステル基を有するアルコキシシラン化合物の被覆を形
成し、次いで加水分解または熱分解により被覆中のエス
テル基 (−SO3R3)をスルホン酸基 (−SO3H) に分解し
て、粉末表面にスルホン酸基を導入する。 【化8】 式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、R2は炭素数1〜
3のアルキル基またはフェニル基、R3は炭素数1〜18の
アルキル基、Yはフェニレン基、mは1〜3の整数、n
は0〜2の整数 (但し、m+n=3) 、pは2または3
である。 【効果】 粉末表面の親水性が向上し、粉末の水中や水
性樹脂液中での分散性が向上。塩基性捕捉剤、消臭剤、
金属イオン捕捉のためのカチオン交換体として有用。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉末等の無機物質
の表面をスルホン酸基を有する被覆材で被覆した無機物
質とその製造方法および用途に関する。本発明の表面被
覆された無機物質は、表面被覆により高い親水性と塩基
性化合物および金属イオンの捕獲能が付与される。
【0002】
【従来の技術】無機物質の表面に酸性官能基を導入する
方法として、シリカゲルをエポキシ基含有アルコキシシ
ラン化合物で表面処理し、次いでエポキシ基をアミノ基
を有する金属カルボン酸塩やカルボン酸エステル化合物
と開環反応させた後、このカルボン酸塩やエステル部分
をカルボン酸基に変換させてカルボン酸基を導入する方
法が知られており、これにより光学異性体の分割用カラ
ムが作製されている。
【0003】また、分子の末端に各種官能基を有するア
ルコキシシラン化合物はシランカップリング剤と呼ば
れ、ガラス繊維や充填材といった無機物質の表面処理に
用いて、樹脂との密着性を向上させることができること
は周知である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のエポキ
シ基の開環反応を利用したカルボン酸基の導入は、湿式
処理により実施されるため、無機物質が微粉末であると
凝集を生じ、処理後の微粉末の分散性が低下し、使用し
にくくなる。
【0005】また、酸性官能基がカルボン酸基では、酸
性が弱いため、用途によっては酸性官能基の導入による
目的が十分に達成されない。その意味では、カルボン酸
より酸性がはるかに高いスルホン酸を無機物質の表面に
導入することが望ましいが、これまでスルホン酸を無機
物質の表面に導入する効果的な方法は見出されていなか
った。
【0006】本発明の目的は、各種の無機物質の表面に
スルホン酸基を導入するための手段を確立して、表面に
スルホン酸基を有する被覆が形成された無機物質とその
製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、
このスルホン酸基を有する表面被覆無機物質を用いた各
種の有用材料を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】無機物質の表面にスルホ
ン酸基を導入する手段として、官能基としてスルホン酸
基を有するシランカップリング剤型の有機ケイ素化合物
(アルコキシシラン化合物) で無機物質を表面処理する
ことが考えられる。しかし、このようなスルホン酸基を
有する化合物は、それ自体の酸性が強いため、シランカ
ップリング剤の分解・縮合を生じ、安定には存在できな
いため、スルホン酸基を有するシランカップリング剤が
実際に合成・単離されたことはない。
【0008】本発明者らは、官能基としてスルホン酸エ
ステル基を有するアルコキシシラン化合物で無機物質の
表面を被覆し、次いで被覆を加水分解または熱分解反応
条件下で好ましくは乾式法により処理すると、被覆を保
持したまま、被覆中のスルホン酸エステル基がスルホン
酸基に変化し、無機物質の表面にスルホン酸基を導入す
ることができることを見出した。
【0009】また、こうしてスルホン酸基を表面に導入
した無機物質は、表面被覆が無機物質に強固に結合さ
れ、表面に酸基を有している固体として、塩基をこの固
体に固定して除去するための塩基捕捉剤として有用であ
り、従ってアンモニアやアミンに起因する臭いを除去す
るための消臭剤としても使用できる。その上、無機物質
の表面に導入されたスルホン酸基は金属イオンの捕獲能
が高く、この表面被覆無機物質はカチオン交換体として
も有用である。また、表面被覆を施す無機物質が粉末で
あると、粉末表面のスルホン酸基の親水性により、粉末
の水中または水性樹脂液中での分散性が高まる。
【0010】本発明は以上の知見に基づき完成したもの
であって、その要旨は次の通りである。 無機物質の表面に下記一般式(II)で示される構造部分
を持った被覆を有することを特徴とする、表面被覆無機
物質。
【0011】
【化3】
【0012】式中、Yはフェニレン基、XはH、アルカ
リ金属またはアンモニウム、pは2または3である。
【0013】無機物質の表面に、下記一般式(I) で示
される末端にスルホン酸エステル基を有するアルコキシ
シラン化合物の被覆を形成し、次いで加水分解または熱
分解により被覆中のスルホン酸エステル基をスルホン酸
基に分解することを特徴とする、表面にスルホン酸基を
有する被覆無機物質の製造方法。
【0014】
【化4】
【0015】式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、R2
は炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基、R3は炭
素数1〜18のアルキル基、Yはフェニレン基、mは1〜
3の整数、nは0〜2の整数 (但し、m+n=3) 、p
は2または3である。
【0016】上記の表面被覆 (但し、XはH) を有
する無機物質からなる塩基捕捉剤。 上記の表面被覆 (但し、XはH) を有する無機物質
からなる消臭剤。 上記の表面被覆を有する無機物質からなるカチオン
交換体。 無機粉末の表面に上記の被覆を有する、水または水
性樹脂液中の分散性に優れた表面被覆無機粉末。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明では、無機物質の表面に上
記一般式(I) で示される末端にスルホン酸エステル基を
有するアルコキシシラン化合物を被覆し、次いで加水分
解または熱分解によりスルホン酸エステル基をスルホン
酸基に分解することにより、上記一般式(II)で示される
構造部分を持つ被覆を無機物質の表面に形成する。
【0018】本発明により表面被覆が施される無機物質
は特に制限されないが、好ましくは水不溶性のものであ
る。具体例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、
酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウムな
どの金属酸化物、これらの2種以上からなる複合酸化物
(ガラスを含む) 、水酸化アルミニウムなどの金属水酸
化物、硫化亜鉛などの硫化物、炭酸カルシウム、硫酸バ
リウム、硫酸カルシウム等の水不溶性の塩、などが挙げ
られる。好ましい無機粉末は金属酸化物であり、中でも
シリカ、酸化チタン、およびアルミナが特に好ましい。
【0019】無機物質の形態も、粉末、繊維状、粉末焼
結体など任意の形態でよいが、表面積の大きい粉末状が
好ましい。無機粉末としては、平均粒径が1μm未満
(例、0.01〜1μm) の超微粒子状のものも使用でき、
比表面積が大きく多量のスルホン酸基を導入できること
から好ましい材料である。
【0020】無機物質の表面被覆に用いる化合物は、末
端にスルホン酸エステル基を有する上記一般式(I) で示
されるアルコキシシラン化合物である。この化合物は新
規化合物であるが、この末端基を除けば従来よりシラン
カップリング剤として利用されてきたアルコキシシラン
化合物と類似の構造を有している。従って、従来のシラ
ンカップリング剤と同様に、既知の反応を利用して合成
することができる。
【0021】例えば、pが2である一般式(I) の化合物
は、次の式Aに示すように、出発物質のスチレンスルホ
ニルクロライドをエステル化し、得られたスチレンスル
ホン酸エステルをトリクロロシランまたはアルキルクロ
ロシランと反応させ、さらにクロロシリル基をアルコキ
シ化する方法により合成できる。また、一般式(I) にお
いてR1基とR3基が同じアルキル基である場合には、式B
に示すように、スチレンスルホニルクロライドとトリク
ロロシランまたはアルキルトリクロロシランとを直接反
応させ、次いでクロロシリル基のアルコキシ化と同時に
末端のスルホニルクロライド基をエステル化する方法に
より合成できる。pが3である場合には、これらの方法
の出発物質としてアリルベンゼンスルホニルクロライド
を使用すればよい。以上の化合物のハロゲンは、塩素で
はなく臭素であってもよい。
【0022】
【化5】
【0023】トリクロロシランまたはアルキルクロロシ
ラン [HSi(Cl)m(R2)n]の付加反応は、一般に塩化白金酸
等の触媒を必要とする。また、クロロシリル基のアルコ
キシ化反応およびスルホニルクロライド基のエステル化
は、対応するアルコールまたは金属アルコキドを反応さ
せることにより行われる。アルコールを反応させる場合
には、副生する塩化水素を除去するために、第三アミン
等の酸捕捉剤と有機溶媒の存在下で反応を行う。使用す
るアルコールや溶媒に水分が混入すると、生成物の分解
あるいは縮合を生じるので、十分に脱水したものを用い
ることが好ましい。有機溶媒としてはエーテル、ケトン
などの極性溶媒が適当である。
【0024】被覆に用いるアルコキシシラン化合物とし
て好ましいのは、上記一般式(I) において、R1がメチ
ル、エチルまたはプロピルであり、R2がメチルまたはエ
チルであり、pが2であり、R3が炭素数1〜18のアルキ
ル基である化合物である。
【0025】一般式(I) において、R1〜R3の各アルキル
基は直鎖でも分岐鎖でもよい。R2およびYのフェニル基
およびフェニレン基は、ハロゲン、ヒドロキシなどの置
換基を有していてもよい。また、スルホン酸エステル基
(−SO3R3)は、Yのベンゼン環上で、−(CH2)p−鎖に対
して任意の位置に結合しうるが、好ましくはメタ位また
はパラ位、特に好ましくはパラ位に結合する。
【0026】本発明に従って、上記一般式(I) で示され
る、末端にスルホン酸エステル基を有するアルコキシシ
ラン化合物で無機物質で表面処理すると、従来のシラン
カップリング剤と同様に、アルコキシシリル基が無機物
質の表面に存在する水酸基と相互作用し、水分 (例、大
気中の湿気) の存在下で、ケイ素原子に結合したアルコ
キシル基 (R1O-基) が加水分解してヒドロキシル基にな
り、このヒドロキシル基が無機物質の表面の水酸基と縮
合反応することにより、アルコキシシラン化合物が無機
物質の表面に結合する。周囲環境に水分が全く存在しな
い場合、または無機物質が水酸基を有していない場合に
は、アルコキシル基またはその加水分解で生じた水酸基
が無機物質の表面に吸着されることにより被覆が行われ
る。
【0027】それにより、下記一般式(Ia) (式中、R3
Y、pは前記と同じ意味) で示される構造部分を持っ
た、スルホン酸エステル基を末端に有するシラン化合物
の被覆が無機物質の表面に形成される。
【0028】
【化6】
【0029】上記アルコキシシラン化合物による無機物
質の表面処理は湿式と乾式のいずれも可能である。湿式
の表面処理は、使用するアルコキシシラン化合物を適当
な有機溶媒 (例、アルコール、ケトン、エーテル、炭化
水素など) に溶解した溶液に無機物質を浸漬し、次い
で、必要であれば濾過により無機物質を溶液から分離し
た後、過剰の溶媒を蒸発させることにより実施できる。
【0030】乾式の表面処理は、例えば、無機粉末を攪
拌して浮遊状態にさせ、使用するアルコキシシラン化合
物を上記と同様の適当な有機溶媒に溶解した溶液を、こ
の粉末に滴下または噴霧することにより実施できる。無
機物質が平均粒径1μm未満の超微粒子粉末である場合
には、湿式処理では粒子の凝集を生じ、粒子本来が有す
る分散性などの特性を損なう場合があるので、乾式処理
が好ましい。
【0031】その後、この被覆をスルホン酸エステルの
加水分解または熱分解が起こる条件下で処理すると、被
覆物の分子末端に存在するスルホン酸エステル基 (−SO
3R3)がスルホン酸基 (−SO3H) に分解し、無機物質の表
面にスルホン酸が導入される。それにより、被覆の表面
にスルホン酸基による親水性が付与される。この分解反
応も、加水分解の場合には湿式と乾式のいずれでも実施
できるが、無機物質が超微粒子粉末の場合にはやはり乾
式の処理が好ましい。熱分解は乾式で行う。
【0032】湿式の加水分解は、上記のように被覆した
無機物質を、過剰の水の存在下で攪拌しながら加熱する
ことにより実施できる。このとき、加水分解触媒として
酸またはアルカリを用いることができる。触媒の酸は強
酸が好ましく、具体的には硫酸、塩酸等の無機酸、また
はp−トルエンスルホン酸等の有機酸が適当である。ア
ルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等
が挙げられる。
【0033】乾式の加水分解は、上記のように表面被覆
した無機物質に粉末の凝集を生じない程度の少量の水を
添加し、不活性ガス気流下で加熱処理を行うか、或いは
被覆した無機物質に不活性ガス気流下で水蒸気を吹き込
むことにより行うことができる。不活性ガスとしては、
無機物質およびエステル基含有アルコキシシラン化合物
のいずれとも反応しない、非酸化性の任意のガスが使用
でき、具体例としては窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙
げられる。添加する水は、これが酸素を含んでいるとエ
ステル基含有アルコキシシラン化合物の酸化を生じる場
合があるので、十分に脱酸素したものを用いることが好
ましい。水の脱酸素化は、不活性ガスの吹き込みによる
方法が効果的である。
【0034】また、乾式加水分解を迅速に行うため、湿
式の場合と同様に、触媒として酸またはアルカリを水中
に溶解させて添加することも好ましい。乾式加水分解の
場合には、使用した触媒の沸点が高いと、生成物中に触
媒が残留するため、低沸点の酸またはアルカリを使用す
ることが好ましい。具体例としては、酸では塩化水素、
臭化水素等が、アルカリとしてはアンモニアが好まし
い。
【0035】湿式および乾式の加水分解はいずれも加水
分解を促進させるために加熱下で反応を行うのが好まし
い。加熱温度は湿式の場合は60〜100 ℃、乾式の場合は
80〜200 ℃の範囲が好ましい。
【0036】乾式熱分解は、上記のように被覆した無機
物質を不活性ガス気流下で加熱することによって行われ
る。不活性ガスは上記と同様でよい。熱分解に必要な加
熱温度は、被覆に用いたスルホン酸エステル基含有アル
コキシシラン化合物の分子構造によって異なるが、一般
には80〜200 ℃の範囲、好ましくは 100〜150 ℃の範囲
である。加熱温度がが80℃より低いと、効果的に熱分解
反応が進行せず、200℃を超えるとエステル結合以外の
結合の分解および粉末の着色を生じる恐れがある。
【0037】この熱分解温度は、スルホン酸エステル基
の種類、即ち、一般式(I) におけるR3基の種類により大
きく変動し、R3基の嵩が大きいと、熱分解温度が低くな
り、有利である。その意味で好ましいR3基はイソプロピ
ル基のような分岐アルキル基である。R3がイソプロピル
基であるアルコキシシラン化合物は、熱分解温度が低
く、熱分解収率も高いため、特に好ましい。
【0038】上記のようにして加水分解または熱分解に
より被覆のスルホン酸エステル基をスルホン酸基に分解
すると、表面にスルホン酸基を有する無機物質が得られ
る。また、スルホン酸エステル基の分解と同時に、アル
コキシシリル基部分のアルコキシル基の加水分解または
熱分解が同時にさらに進行し、被覆のアルコキシシラン
化合物の無機粉末への結合が強化される。そのため、本
発明の方法により形成されたスルホン酸基を有する被覆
は、無機物質の表面に強固に結合しており、耐久性に優
れている。
【0039】こうして得られた表面にスルホン酸基を有
する無機物質は、スルホン酸基の強い酸性により、塩基
性化合物と高い反応性を示し、塩基性化合物を固定化し
て除去するための捕捉剤として有用である。水中に溶解
した塩基性化合物とガス中の塩基性化合物のいずれも捕
捉できる。不快臭を生じるアンモニアやアミン系化合物
の捕捉効果に優れているので、消臭にも有効であり、消
臭剤としても利用できる。単位体積当たりの塩基性化合
物の捕捉能や消臭能は、表面積が大きいほど高くなるの
で、無機物質は粉末、より好ましくは平均粒径10μm以
下の微粉末、特に好ましくは平均粒径1μm未満の超微
粒子状の粉末であることが好ましい。
【0040】本発明の表面にスルホン酸基を有する無機
物質は、表面の親水性が向上している。そのため、無機
物質が粉末である場合には、水または水性樹脂液 (水溶
性樹脂液とエマルジョンなどの水分散性樹脂液を含む)
への粉末の分散性が改善される。例えば、無機粉末とし
て塗料に使用される充填材または顔料を本発明の方法に
より被覆して表面にスルホン酸基を導入すると、水性塗
料中での充填材または顔料の分散安定性が高まる。この
場合、被覆中のスルホン酸基を、中和反応を利用して、
遊離のスルホン酸から塩の形態にしてもよい。塩として
は、例えば、アンモニウム塩、またはナトリウム塩、カ
リウム塩等のアルカリ金属塩が適当である。塩の形成
は、無機粉末を水中に懸濁させ、所定のアルカリ水溶液
を添加することにより実施できる。アンモニウム塩の場
合には、無機粉末をアンモニアガスと接触させることに
よっても塩を形成できる。
【0041】さらに、本発明の表面にスルホン酸 (塩)
基を有する無機物質は、スルホン酸基に特有の金属イオ
ンとのイオン交換能力を示し、それによって金属イオン
を捕捉することができる。即ち、本発明の表面被覆無機
物質は、カチオン交換体としても機能し、特にスルホン
酸型カチオン交換体に特有のNa、K、Liに対する高い捕
捉能を示す。このようなカチオン交換体の応用例として
は、水中に溶解している上記金属イオンの除去等が挙げ
られる。なお、この場合も、表面のスルホン酸基は塩の
形態であってもよく、その場合には複塩交換反応により
他のカチオンとのイオン交換が行われる。
【0042】本発明の無機物質における表面被覆の量
は、この無機物質の使用目的や形態および被覆に用いた
アルコキシシラン化合物の種類に応じて変動するが、無
機物質が粉末状の場合には一般に粉末重量の1〜60重量
%、好ましくは5〜40重量%の範囲である。1重量%未
満であると、表面の被覆量が少なく、十分な効果が得ら
れない。一方、60重量%を超えると、粒子の凝集を生じ
たり、被覆の全部が無機粉末の表面に結合しない等の問
題が生じる恐れがある。
【0043】
【実施例】次に実施例により本発明を具体的に説明す
る。実施例で粉末の表面被覆に用いたスルホン酸エステ
ル基を有するアルコキシシラン化合物の構造を次に示
す。
【0044】
【化7】 化合物A: (CH3O)3SiCH2CH2(C6H4)SO3CH(CH3)2 化合物B: (CH3CH2O)3SiCH2CH2(C6H4)SO3CH2CH3 化合物C: [(CH3)2CHO]2Si(CH3)CH2CH2(C6H4)SO3CH(CH
3)2 化合物D: (CH3O)Si(CH3)2CH2CH2(C6H4)SO3CH3 化合物E: (CH3O)3SiCH2CH2(C6H4)SO3CH2(CH2)8CH3 なお、これらの化合物の代表例について、その合成法と
同定データを次に示す。残りの化合物も同様に合成でき
る。
【0045】化合物A: イソプロパノールをジイソプ
ロピルエーテル中にてトリエチルアミンの存在下で4-ス
チレンスルホニルクロライド[CH2=CH(C6H4)SO2Clと反応
させてエステル化し、4-スチレンスルホン酸イソプロピ
ルエステル[CH2=CH(C6H4)SO3CH(CH3)2] を得る。次い
で、これを塩化白金酸の存在下トリクロロシラン[HSiCl
3]と反応させてp-イソプロポキシスルホニルフェニルエ
チルトリクロロシラン[Cl3SiCH2CH2(C6H4)SO3CH(CH3)2]
を得る。これをさらにジイソプロピルエーテル中トリエ
チルアミンの存在下でメタノールを反応させてアルコキ
シ化すると、淡黄色油状の化合物Aが得られる。
【0046】 IR:3050〜2880, 1351, 1176, 1080cm-1 1H-NMR:δ(ppm)=0.63(m,2H), 1.33 (d,6H), 1.45 (m,2
H), 3.60 (s,9H),4.91 (m,1H), 7.4-7.8 (m,4H) 同様の方法で化合物Eも合成できる。
【0047】化合物B:4−スチレンスルホニルクロラ
イドを塩化白金酸の存在下でトリクロロシランと反応さ
せて、p-クロロスルホニルフェニルエチルトリクロロシ
ラン [Cl3SiCH2CH2(C6H4)SO2Cl] を得た。これをジイソ
プロピルエーテル中トリエチルアミンの存在下でエタノ
ールと反応させてエステル化とアルコキシ化を行うと、
化合物Bが得られる。
【0048】 IR:3050〜2880, 1351, 1176, 1080cm-1 1H-NMR:δ(ppm)=0.66(m,2H), 1.21 (t,9H), 1.25 (t,3
H), 3.79 (q,6H),3.83 (q,3H), 7.4-7.8 (m,4H) 同じ方法で化合物CおよびDも合成できる。
【0049】(実施例1)無機物質として、平均粒径12 n
m のシリカ粉末 (アエロジル#200 :日本アエロジル社
製) 18gをジューサーミキサーに入れ、浮遊状態になる
ように攪拌しながら、化合物A 4.0gをヘキサン 4.0g
に溶解した溶液を2分間かけて滴下しすることにより乾
式で表面処理を行った。その後、表面処理した粉末を1
リットルセパラブルフラスコに移し、窒素気流下60℃で
2時間、次いで120 ℃で1時間加熱することにより、ス
ルホン酸エステル基の熱分解反応を行って、スルホン酸
基を有するシラン化合物で被覆されたシリカ粉末 (被覆
量18重量%) を得た。
【0050】得られた表面被覆粉末の赤外分光分析 (I
R分析) を行って、表面処理後 (熱分解前) の同じ被覆
粉末におけるIR分析結果と比較した。その結果、熱分
解後は、3050〜2880cm-1の特にCH3 基に由来するピーク
強度の減少および1351cm-1のスルホン酸エステル基に由
来するピーク強度の減少が確認された。また、この粉末
を脱イオン水に懸濁させた5重量%懸濁液の水性媒質の
pHを測定すると、pH2以下の強酸性を示し、この点
からもスルホン酸基の生成が確認された。
【0051】(実施例2)無機物質として平均粒径21 nm
のチタニア (酸化チタン) 粉末 (P-25:日本アエロジル
社製) 20gを使用し、これを実施例1と同様にして化合
物B 2gにより表面処理し、次いで窒素気流下60℃で2
時間、次いで150 ℃で1時間加熱してスルホン酸エステ
ル基の熱分解を行い、スルホン酸基を有するシラン化合
物で被覆されたチタニア粉末 (被覆量9重量%) を得
た。
【0052】IR分析の結果、熱分解後は、3050〜2880
cm-1の特にCH3 基に由来するピーク強度の減少および13
51cm-1のスルホン酸エステル基に由来するピーク強度の
減少が確認された。また、この粉末を脱イオン水に懸濁
させた5重量%懸濁液の水性媒質のpHを測定すると、
pH2以下の強酸性を示し、この点からもスルホン酸基
の生成が確認された。
【0053】(実施例3)無機物質として平均粒径13 nm
のアルミナ粉末 (Aluminum Oxide C:日本アエロジル社
製) 20gを使用し、これを実施例1と同様にして化合物
C 3.0gにより表面処理し、次いでセパラブルフラスコ
に移した後、窒素ガスの吹き込みにより十分に脱酸素し
た水20gを、窒素気流下150 ℃で2時間かけて滴下し、
滴下終了後、同じ条件下でさらに1時間攪拌して、スル
ホン酸エステル基の加水分解を行い、スルホン酸基を有
するシラン化合物で被覆されたアルミナ粉末 (被覆量13
重量%) を得た。
【0054】IR分析の結果、熱分解後は、3050〜2880
cm-1の特にCH3 基に由来するピーク強度の減少および13
51cm-1のスルホン酸エステル基に由来するピーク強度の
減少が確認された。また、この粉末を脱イオン水に懸濁
させた5重量%懸濁液の水性媒質のpHを測定すると、
pH2以下の強酸性を示し、この点からもスルホン酸基
の生成が確認された。
【0055】(実施例4)アルコキシ化合物して化合物D
4.0gを用いた以外は実施例2と同様に操作して、表面
にスルホン酸基を有するチタニア粉末 (被覆量18重量
%) を得た。IR分析の結果、熱分解後は、3050〜2880
cm-1の特にCH3 基に由来するピーク強度の減少および13
51cm-1のスルホン酸エステル基に由来するピーク強度の
減少が確認された。また、この粉末を脱イオン水に懸濁
させた5重量%懸濁液の水性媒質のpHを測定すると、
pH2以下の強酸性を示し、この点からもスルホン酸基
の生成が確認された。
【0056】(実施例5)アルコキシ化合物して化合物E
5.0gを用いた以外は実施例2と同様に操作して、表面
にスルホン酸基を有するチタニア粉末 (被覆量22重量
%) を得た。IR分析の結果、熱分解後は、3050〜2880
cm-1の特にCH3 基に由来するピーク強度の減少および13
51cm-1のスルホン酸エステル基に由来するピーク強度の
減少が確認された。また、この粉末を脱イオン水に懸濁
させた5重量%懸濁液の水性媒質のpHを測定すると、
pH2以下の強酸性を示し、この点からもスルホン酸基
の生成が確認された。
【0057】(実施例6〜8)実施例1〜3で得られた表
面にスルホン酸基を有する無機粉末5gを脱イオン水95
ml に懸濁させ、得られた懸濁液を10分間放置し、その
分散性を評価した。結果を表1に示す。
【0058】(比較例1〜3)未処理の粉末を用いて実施
例6〜8と同様の操作を行った。結果を表1に併せて示
す。表1からわかるように、未処理の超微粒子無機粉末
は水中で凝集して沈降するが、本発明によりスルホン酸
基を有する表面被覆を施すと、親水性が高まり、水中に
分散可能となった。
【0059】
【表1】
【0060】(実施例9〜11)実施例1〜3で得られた表
面にスルホン酸基を有する無機粉末5gをジイソプロピ
ルエーテル95 ml と混合し、これにn−プロピルアミン
200 mgを添加し、室温で1時間攪拌した。その後、上澄
みを加圧濾過して無機粉末を分離し、溶液中に残留する
n−プロピルアミンの量をガスクロマトグラフを用いて
定量した。結果を表2に示す。
【0061】(比較例4〜6)未処理の無機粉末を用い
て実施例9〜11と同様の操作を行った。結果を表2に示
す。表2からわかるように、未処理の無機粉末は塩基性
化合物の捕捉能が非常に低いのに対し、本発明により表
面にスルホン酸基を導入した無機粉末は、いずれも塩基
性化合物の高い捕捉能を示した。
【0062】
【表2】
【0063】(実施例12〜14)実施例1〜3で得られた、
表面にスルホン酸基を有する無機粉末1gを、1000ppm
の塩化カルシウムを含有する水溶液50 ml に分散させ、
室温で1時間攪拌した。その後、上澄みを加圧濾過して
無機粉末を分離し、得られた溶液中のカルシウム量をキ
レート滴定法により定量した。結果を表3に示す。
【0064】(比較例7〜9)未処理の無機粉末を用いて
実施例12〜14と同様の操作を行った。結果を表3に示
す。表3からわかるように、未処理の無機粉末は金属イ
オンの捕捉能が非常に低いのに対し、アミノ基とスルホ
ン酸基を有する被覆を施した本発明の無機粉末は、高い
金属イオンの捕捉能を示した。
【0065】
【表3】
【0066】(実施例15)実施例3で得られたスルホン酸
基を有するシラン化合物で被覆されたアルミナ粉末5g
を1L のナスフラスコに入れ、これにトリメチルアミン
300 ppm を含んだ空気を入れて密栓し、2日間放置し
た。放置後、開栓してフラスコの内部の臭いをかいだと
ころ、アミン臭を感じなかった。
【0067】(比較例10)未処理のアルミナ粉末を用い
て、上記実施例15と同様の操作を行った。2日間放置後
に開栓したところ、アミン臭は残ったままであった。
【0068】
【発明の効果】本発明によれば、無機物質の表面に強固
に結合したスルホン酸基を有する被覆を形成することに
よって、その表面に十分な量のスルホン酸基を付与する
ことができる。その結果、得られた表面被覆無機物質
は、微粉末状であれば、水中および水性樹脂液中で容易
に分散可能となる。従って、本発明は、例えば水性塗料
において、各種の無機粉末成分の分散安定性の向上に利
用することができる。
【0069】また、本発明の無機物質は、表面に導入さ
れたスルホン酸基により強い酸性を示し、塩基性化合物
の捕捉剤、消臭剤、および金属イオンを捕捉するための
カチオン交換体として有効であり、ごく低濃度の塩基性
化合物や金属イオンを捕捉して除去できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桜井 英章 埼玉県大宮市北袋町1丁目297番地 三菱 マテリアル株式会社総合研究所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機物質の表面に下記一般式で示される
    構造部分を持った被覆を有することを特徴とする、表面
    被覆無機物質。 【化1】 式中、Yはフェニレン基、XはH、アルカリ金属または
    アンモニウム、pは2または3である。
  2. 【請求項2】 無機物質の表面に、下記一般式(I) で示
    される末端にスルホン酸エステル基を有するアルコキシ
    シラン化合物の被覆を形成し、次いで加水分解または熱
    分解により被覆中のスルホン酸エステル基をスルホン酸
    基に分解することを特徴とする、表面にスルホン酸基を
    有する被覆無機物質の製造方法。 【化2】 式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、R2は炭素数1〜
    3のアルキル基またはフェニル基、R3は炭素数1〜18の
    アルキル基、Yはフェニレン基、mは1〜3の整数、n
    は0〜2の整数 (但し、m+n=3) 、pは2または3
    である。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の製造方法において、無機
    物質が平均粒径1μm未満の粉末であり、加水分解また
    は熱分解を乾式で行う方法。
  4. 【請求項4】 請求項2または3記載の製造方法におい
    て、加水分解または熱分解により生成したスルホン酸基
    をさらにアルカリ金属塩またはアンモニウム塩に変化す
    る工程を包含する、表面にスルホン酸塩型の基を有する
    被覆無機物質の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の表面被覆 (但し、Xは
    H) を有する無機物質からなる塩基捕捉剤。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の表面被覆 (但し、Xは
    H) を有する無機物質からなる消臭剤。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の表面被覆を有する無機物
    質からなるカチオン交換体。
  8. 【請求項8】 無機粉末の表面に請求項1記載の被覆を
    有する、水または水性樹脂液中の分散性に優れた表面被
    覆無機粉末。
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