JPH093590A - 酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板及びその製造方法 - Google Patents
酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板及びその製造方法Info
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- JPH093590A JPH093590A JP15491795A JP15491795A JPH093590A JP H093590 A JPH093590 A JP H093590A JP 15491795 A JP15491795 A JP 15491795A JP 15491795 A JP15491795 A JP 15491795A JP H093590 A JPH093590 A JP H093590A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は工業的に製造コストがかからない溶
製法において、タンタル及びもしくはニオブのサブミク
ロンサイズの酸化物を多量かつ均一に鋼中に分散させる
ことにより、高温クリープ強度に優れたフェライト系耐
熱鋼板を提供することを目的とする。 【構成】 成分を適正範囲に限定した上で、酸化タンタ
ル、酸化ニオブの1種または2種が鋼中に、平均粒径で
0.002〜3μm、数密度で1平方μmあたり0.0
1個〜10個含むことを特徴とする酸化物分散強化フェ
ライト系耐熱鋼板及びその製造方法。
製法において、タンタル及びもしくはニオブのサブミク
ロンサイズの酸化物を多量かつ均一に鋼中に分散させる
ことにより、高温クリープ強度に優れたフェライト系耐
熱鋼板を提供することを目的とする。 【構成】 成分を適正範囲に限定した上で、酸化タンタ
ル、酸化ニオブの1種または2種が鋼中に、平均粒径で
0.002〜3μm、数密度で1平方μmあたり0.0
1個〜10個含むことを特徴とする酸化物分散強化フェ
ライト系耐熱鋼板及びその製造方法。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐熱構造物に不可欠な高
温強度、特に高温クリープ強度に優れたフェライト系耐
熱鋼板及びその製造方法に関するものである。
温強度、特に高温クリープ強度に優れたフェライト系耐
熱鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高温、高負荷応力下で長時間使用される
構造用鋼材として、高いクリープ強度を有するフェライ
ト系耐熱鋼が強く要望されている。この種の用途に供さ
れる鋼の例として、JIS規格STBA24(2.25
Cr−1Mo鋼)、SCMV4(1.25Cr−0.5
Mo−0.3V鋼)等のCrが添加された鋼が挙げられ
る。
構造用鋼材として、高いクリープ強度を有するフェライ
ト系耐熱鋼が強く要望されている。この種の用途に供さ
れる鋼の例として、JIS規格STBA24(2.25
Cr−1Mo鋼)、SCMV4(1.25Cr−0.5
Mo−0.3V鋼)等のCrが添加された鋼が挙げられ
る。
【0003】高温強度、クリープ強度の向上には、炭化
物による析出強化、Mo等による固溶強化が用いられて
きた。しかしながら、高温に長時間曝されると、析出物
は粗大化し、固溶元素は析出物を形成するようになるた
め、これら冶金因子による強化ではクリープ強度の向上
に対して限界がある。
物による析出強化、Mo等による固溶強化が用いられて
きた。しかしながら、高温に長時間曝されると、析出物
は粗大化し、固溶元素は析出物を形成するようになるた
め、これら冶金因子による強化ではクリープ強度の向上
に対して限界がある。
【0004】新しい技術として、酸化物による分散強化
の利用が注目されている。即ち、酸化物は一般的に高温
での安定性が炭化物や窒化物に比べて大きいことから、
高温長時間の保持によっても安定したクリープ強度が得
られる可能性が高い。
の利用が注目されている。即ち、酸化物は一般的に高温
での安定性が炭化物や窒化物に比べて大きいことから、
高温長時間の保持によっても安定したクリープ強度が得
られる可能性が高い。
【0005】高温強度の向上を目的として酸化物を含有
させた鋼及びその製造方法はいくつか開示されている。
中でも機械的合金化法(Mechanical Alloying 法、以下
MA法と称する)は成分系によらず酸化物の均一で微細
な分散状態が得られるため、研究から実用化まで多くの
検討がなされている。例えば、特開平4−6244号公
報にMA法により粒径1μm以下の酸化物を高Cr系耐
熱鋼中に分散させ、高温クリープ強度を向上させた例が
記載されている。なお、MA法とは以下のようなプロセ
スである。
させた鋼及びその製造方法はいくつか開示されている。
中でも機械的合金化法(Mechanical Alloying 法、以下
MA法と称する)は成分系によらず酸化物の均一で微細
な分散状態が得られるため、研究から実用化まで多くの
検討がなされている。例えば、特開平4−6244号公
報にMA法により粒径1μm以下の酸化物を高Cr系耐
熱鋼中に分散させ、高温クリープ強度を向上させた例が
記載されている。なお、MA法とは以下のようなプロセ
スである。
【0006】所望の合金組成になるように配合された数
種類の金属あるいは合金粉末と酸化物粒子とをボールミ
ルによって不活性雰囲気下で混合し、酸化物含有合金粉
末(以下MA粉末と称する)を得る。次に、該MA粉末
を金属性の缶に真空封入した後、熱間押出しまたは高温
等圧プレス(HIP)によって一体物とし、最後に熱処
理、加工を施して製品とする。
種類の金属あるいは合金粉末と酸化物粒子とをボールミ
ルによって不活性雰囲気下で混合し、酸化物含有合金粉
末(以下MA粉末と称する)を得る。次に、該MA粉末
を金属性の缶に真空封入した後、熱間押出しまたは高温
等圧プレス(HIP)によって一体物とし、最後に熱処
理、加工を施して製品とする。
【0007】また、MA法によらず溶鋼中に酸化タンタ
ルを添加することによりCr系耐熱鋼に粒径1μm以下
の酸化タンタルを含有させ、高温クリープ強度を向上さ
せた例が特開平6−65690号公報に開示されてい
る。
ルを添加することによりCr系耐熱鋼に粒径1μm以下
の酸化タンタルを含有させ、高温クリープ強度を向上さ
せた例が特開平6−65690号公報に開示されてい
る。
【0008】さらに、酸化物を直接用いる方法以外に、
Tiによる脱酸でTi系の酸化物を鋼中に分散させる技
術が低合金鋼の溶接部靭性向上を目的として開発されて
いる。例えば、特開平1−11977号公報において
は、Tiによる脱酸法により0.1μm〜3μm程度の
粒径を有するTi系酸化物を40〜170個/mm2 程度
鋼中に分散させることに成功している。
Tiによる脱酸でTi系の酸化物を鋼中に分散させる技
術が低合金鋼の溶接部靭性向上を目的として開発されて
いる。例えば、特開平1−11977号公報において
は、Tiによる脱酸法により0.1μm〜3μm程度の
粒径を有するTi系酸化物を40〜170個/mm2 程度
鋼中に分散させることに成功している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術はそれぞ
れ特徴を有するが、以下に示すような課題も有する。M
A法によって酸化物を分散させる方法は酸化物を微細か
つ均一に分散させることが容易であり、数密度も非常に
大きくすることが可能であるため、高温強度、高温クリ
ープ強度の向上には最も有利である。しかしながら、製
造コストが高価であること、構造物に使用するために必
要な大きいサイズに製造することが困難であるため、構
造用鋼には不向きである。
れ特徴を有するが、以下に示すような課題も有する。M
A法によって酸化物を分散させる方法は酸化物を微細か
つ均一に分散させることが容易であり、数密度も非常に
大きくすることが可能であるため、高温強度、高温クリ
ープ強度の向上には最も有利である。しかしながら、製
造コストが高価であること、構造物に使用するために必
要な大きいサイズに製造することが困難であるため、構
造用鋼には不向きである。
【0010】酸化タンタルを溶鋼中に添加する方法では
鋳造歩留まりが悪く、添加量が自ずと多量となる。ま
た、板厚方向での酸化タンタルの数密度の変動、ばらつ
きが大きく、材質が不安定となりやすい。
鋳造歩留まりが悪く、添加量が自ずと多量となる。ま
た、板厚方向での酸化タンタルの数密度の変動、ばらつ
きが大きく、材質が不安定となりやすい。
【0011】Ti脱酸によりTi系酸化物を鋼中に分散
させる方法は耐熱用鋼で適用された例はないが、低合金
鋼における実績によれば、高温クリープ強度を高めるた
めに必要な酸化物の数密度を確保することが困難であ
り、そのまま耐熱鋼の製造に適用することはできないと
考えられる。
させる方法は耐熱用鋼で適用された例はないが、低合金
鋼における実績によれば、高温クリープ強度を高めるた
めに必要な酸化物の数密度を確保することが困難であ
り、そのまま耐熱鋼の製造に適用することはできないと
考えられる。
【0012】従来以上の高温クリープ強度を達成するた
めには、高温で安定な酸化物を有効活用することが必須
であり、そのためには、粒子径が数μm以下のサブミク
ロンオーダーの酸化物を数百個/mm2 以上分散させる必
要がある。また、MA法のように製造コストの高い方法
は構造用鋼の製造方法としては工業的に採用することは
好ましくない。本発明は溶製法を基本とした上で、上記
酸化物分散状態を達成し、高温強度、特に高クリープ強
度に優れたフェライト系耐熱鋼板及びその製造方法を提
供することを目的とする。
めには、高温で安定な酸化物を有効活用することが必須
であり、そのためには、粒子径が数μm以下のサブミク
ロンオーダーの酸化物を数百個/mm2 以上分散させる必
要がある。また、MA法のように製造コストの高い方法
は構造用鋼の製造方法としては工業的に採用することは
好ましくない。本発明は溶製法を基本とした上で、上記
酸化物分散状態を達成し、高温強度、特に高クリープ強
度に優れたフェライト系耐熱鋼板及びその製造方法を提
供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、工業的に製造
コストがかからない溶製法において、タンタル及びもし
くはニオブのサブミクロンサイズの酸化物を多量かつ均
一に鋼中に分散させることに成功したもので、その要旨
とするところは、 (1)重量%で、 C :0.001〜0.30% Si:0.02〜1.0% Mn:0.1〜3.0% P :0.05%以下 S :0.02%以下 Cr:0.5〜13% V :0.02〜0.5% Al:0.0005〜0.05% N :0.002〜0.1%を含有し、 Mo:0.03〜2.0% W :0.05〜4.0% の一種または2種を含有し、さらに、 Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の一種または2種を含有し、残部鉄及び不可避不純物か
らなり、さらに、Ta系酸化物、Nb系酸化物の1種ま
たは2種が鋼中に 平均粒径:0.002〜3μm 数密度:0.01個/μm2 〜10個/μm2 分散することを特徴とする酸化物分散強化フェライト系
耐熱鋼板。
コストがかからない溶製法において、タンタル及びもし
くはニオブのサブミクロンサイズの酸化物を多量かつ均
一に鋼中に分散させることに成功したもので、その要旨
とするところは、 (1)重量%で、 C :0.001〜0.30% Si:0.02〜1.0% Mn:0.1〜3.0% P :0.05%以下 S :0.02%以下 Cr:0.5〜13% V :0.02〜0.5% Al:0.0005〜0.05% N :0.002〜0.1%を含有し、 Mo:0.03〜2.0% W :0.05〜4.0% の一種または2種を含有し、さらに、 Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の一種または2種を含有し、残部鉄及び不可避不純物か
らなり、さらに、Ta系酸化物、Nb系酸化物の1種ま
たは2種が鋼中に 平均粒径:0.002〜3μm 数密度:0.01個/μm2 〜10個/μm2 分散することを特徴とする酸化物分散強化フェライト系
耐熱鋼板。
【0014】(2)Ni,Cu,Coのうち1種または
2種以上の合計を0.01〜4.0%含有することを特
徴とする前記(1)記載の酸化物分散強化フェライト系
耐熱鋼板。
2種以上の合計を0.01〜4.0%含有することを特
徴とする前記(1)記載の酸化物分散強化フェライト系
耐熱鋼板。
【0015】(3)酸素:0.001〜0.3% を含有することを特徴とする前記(1)または(2)記
載の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板。
載の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板。
【0016】(4)下記(1)式で定義するAが、 A>0 であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか
に記載の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板。 A=(0.01/√Si)−8/9・Al (1) ただし、Si,Alは重量%。
に記載の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板。 A=(0.01/√Si)−8/9・Al (1) ただし、Si,Alは重量%。
【0017】(5)Ti,Zr,Mg,Ca,B,RE
M,Yのうち1種または2種以上の合計を0.0002
〜0.05%含有することを特徴とする前記(1)〜
(4)のいずれかに記載の酸化物分散強化フェライト系
耐熱鋼板。
M,Yのうち1種または2種以上の合計を0.0002
〜0.05%含有することを特徴とする前記(1)〜
(4)のいずれかに記載の酸化物分散強化フェライト系
耐熱鋼板。
【0018】(6)溶存酸素量:0.002%〜0.1
%の溶鋼に Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ前記(1)〜(5)のいずれかに記載の
鋼板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェラ
イト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。
%の溶鋼に Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ前記(1)〜(5)のいずれかに記載の
鋼板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェラ
イト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。
【0019】(7)溶存酸素量:0.002%〜0.1
%の溶鋼に 酸化Ta:0.004〜1.0% 酸化Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ前記(1)〜(5)のいずれかに記載の
鋼板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェラ
イト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。
%の溶鋼に 酸化Ta:0.004〜1.0% 酸化Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ前記(1)〜(5)のいずれかに記載の
鋼板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェラ
イト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。
【0020】(8)溶存酸素量:0.002%〜0.1
%の溶鋼に Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、さらに、 酸化Ta:0.004〜1.0% 酸化Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ前記(1)〜(5)のいずれかに記載の
鋼板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェラ
イト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。
%の溶鋼に Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、さらに、 酸化Ta:0.004〜1.0% 酸化Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ前記(1)〜(5)のいずれかに記載の
鋼板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェラ
イト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。
【0021】(9)連続鋳造することを特徴とする前記
(6)〜(8)のいずれかに記載の酸化物分散強化フェ
ライト系耐熱鋼板の製造方法。
(6)〜(8)のいずれかに記載の酸化物分散強化フェ
ライト系耐熱鋼板の製造方法。
【0022】(10)酸化Ta、酸化Nbの1種もしく
は2種が充填されたワイヤーをモールド内の溶鋼に連続
的に供給して連続鋳造することを特徴とする前記(7)
または(8)に記載の酸化物分散強化フェライト系耐熱
鋼板の製造方法にある。
は2種が充填されたワイヤーをモールド内の溶鋼に連続
的に供給して連続鋳造することを特徴とする前記(7)
または(8)に記載の酸化物分散強化フェライト系耐熱
鋼板の製造方法にある。
【0023】
【作用】先ず、本発明の酸化物分散鋼について説明す
る。本発明の酸化物分散鋼においては、タンタル(T
a)、ニオブ(Nb)の1種または2種を含有し、該元
素の酸化物が鋼中に微細分散していることが最大の特徴
である。合金成分を後述する範囲に適正化した上でな
ら、ほぼ酸化物の種類によらず平均粒径が0.002〜
3μmのものが数密度0.01個/mm2 以上鋼中に分散
すれば明確な分散強化効果が得られ、従来技術での達成
レベルを凌駕する高温クリープ強度が得られる。
る。本発明の酸化物分散鋼においては、タンタル(T
a)、ニオブ(Nb)の1種または2種を含有し、該元
素の酸化物が鋼中に微細分散していることが最大の特徴
である。合金成分を後述する範囲に適正化した上でな
ら、ほぼ酸化物の種類によらず平均粒径が0.002〜
3μmのものが数密度0.01個/mm2 以上鋼中に分散
すれば明確な分散強化効果が得られ、従来技術での達成
レベルを凌駕する高温クリープ強度が得られる。
【0024】上記酸化物の分散状態を得るために適した
酸化物形成元素を探索した結果、Ta及び/またはNb
が歩留まりが良好でかつ得られる酸化物の分散状態が高
温クリープ強度を得るために最も好ましいものになるこ
とが判明した。他の酸化物形成元素、例えば、Al、T
i、等は得られる酸化物の数密度が十分ではない。従っ
て、本発明ではTa及び/またはNbの含有及び該成分
により生成する酸化物の分散が最も重要な要件である。
酸化物形成元素を探索した結果、Ta及び/またはNb
が歩留まりが良好でかつ得られる酸化物の分散状態が高
温クリープ強度を得るために最も好ましいものになるこ
とが判明した。他の酸化物形成元素、例えば、Al、T
i、等は得られる酸化物の数密度が十分ではない。従っ
て、本発明ではTa及び/またはNbの含有及び該成分
により生成する酸化物の分散が最も重要な要件である。
【0025】Ta,Nbは2次脱酸生成物として、X2
O5 ,XO2 ,XO,X2 FeO6,XO6 等のTa,
Nb系酸化物を形成し、鋳片に分散する。なお、Xは、
X=Tay Nb1-y であり、yは0〜1の値である。ま
た、その他の添加元素からSi,Al,Mn,S,C
r,Mo,W,V,Ti,Ca,REM,Mg,Zr等
を含む場合である。Ta,Nbの1種または2種の含有
量が、Ta:0.004〜1.0%,Nb:0.002
〜0.5%の範囲内であれば、Ta,Nb系酸化物の平
均粒径は0.002〜3μmの範囲内に入り、1μm2
あたり0.01個〜10個程度の分散状態が得られる。
O5 ,XO2 ,XO,X2 FeO6,XO6 等のTa,
Nb系酸化物を形成し、鋳片に分散する。なお、Xは、
X=Tay Nb1-y であり、yは0〜1の値である。ま
た、その他の添加元素からSi,Al,Mn,S,C
r,Mo,W,V,Ti,Ca,REM,Mg,Zr等
を含む場合である。Ta,Nbの1種または2種の含有
量が、Ta:0.004〜1.0%,Nb:0.002
〜0.5%の範囲内であれば、Ta,Nb系酸化物の平
均粒径は0.002〜3μmの範囲内に入り、1μm2
あたり0.01個〜10個程度の分散状態が得られる。
【0026】なお、本発明における酸化物の数密度は抽
出レプリカを光学顕微鏡または電子顕微鏡による観察・
撮影によって求めたものである。即ち、倍率1000〜
50000倍の適当な倍率の抽出レプリカ写真の3視野
以上について酸化物100個以上を測定し、平均粒径及
び観察面積あたりの個数を求める。酸化物の形状が円で
はないときは酸化物の面積から円相当径を粒径とする。
出レプリカを光学顕微鏡または電子顕微鏡による観察・
撮影によって求めたものである。即ち、倍率1000〜
50000倍の適当な倍率の抽出レプリカ写真の3視野
以上について酸化物100個以上を測定し、平均粒径及
び観察面積あたりの個数を求める。酸化物の形状が円で
はないときは酸化物の面積から円相当径を粒径とする。
【0027】Ta,Nb系酸化物の平均粒径が0.00
2μm未満では転位が容易に酸化物を乗り越えていくた
め強度の向上が少なく、3μmを超えると酸化物そのも
のが破壊の起点となる傾向にあり靭性が低下するので好
ましくない。また数密度が1μm2 あたり0.01個未
満であると高温クリープ強度が向上しない。また、酸化
物の数密度は大きい程強度は向上するが、10個超の分
散は製鋼上コントロールが困難であることから本発明に
おいては酸化物の数密度は1μm2 あたり0.01個〜
10個に限定する。
2μm未満では転位が容易に酸化物を乗り越えていくた
め強度の向上が少なく、3μmを超えると酸化物そのも
のが破壊の起点となる傾向にあり靭性が低下するので好
ましくない。また数密度が1μm2 あたり0.01個未
満であると高温クリープ強度が向上しない。また、酸化
物の数密度は大きい程強度は向上するが、10個超の分
散は製鋼上コントロールが困難であることから本発明に
おいては酸化物の数密度は1μm2 あたり0.01個〜
10個に限定する。
【0028】Ta含有量が0.004%未満またはNb
含有量が0.002%未満の場合は分散する酸化物の個
数が十分ではない。Ta含有量が1.0%超またはNb
含有量が0.5%超の場合はTa又はNbが過剰となり
不経済であるばかりでなく、酸化物が粗大化し機械的特
性に悪影響を及ぼす。
含有量が0.002%未満の場合は分散する酸化物の個
数が十分ではない。Ta含有量が1.0%超またはNb
含有量が0.5%超の場合はTa又はNbが過剰となり
不経済であるばかりでなく、酸化物が粗大化し機械的特
性に悪影響を及ぼす。
【0029】その他の元素、C,Si,Mn,Ni,C
u,Co,Cr,Mo,W,V,Al,Ti,N,Z
r,Y,REM,Mg,Ca及び不可避的不純物P,S
については、本発明の含有量の範囲内ではTa系酸化
物、Nb系酸化物の微細分散に悪影響を及ぼさない。
u,Co,Cr,Mo,W,V,Al,Ti,N,Z
r,Y,REM,Mg,Ca及び不可避的不純物P,S
については、本発明の含有量の範囲内ではTa系酸化
物、Nb系酸化物の微細分散に悪影響を及ぼさない。
【0030】次にTa,Nb以外の化学成分範囲の限定
理由を述べる。Cは強度を確保するために0.001%
以上必要であるが、0.30%超の添加は溶接性を損ね
るため0.001〜0.30%に限定した。
理由を述べる。Cは強度を確保するために0.001%
以上必要であるが、0.30%超の添加は溶接性を損ね
るため0.001〜0.30%に限定した。
【0031】Si,AlはTa,Nbに比べて強脱酸元
素であるため、本発明のようにTa,Nbの酸化物を形
成、分散させる目的の鋼ではSi,Alの含有量が重要
である。各々について、Siは0.02〜1.0%、A
lは0.0005〜0.05%とする必要がある。Si
<0.02%またはAl<0.0005%であると溶鋼
のボイリングが激しくなり健全な鋳片が得られず、Si
>1.0%またはAl>0.05%では溶存酸素量の確
保が困難となり、酸化物の個数が不足して強度向上が計
れない。さらに、SiとAl最適範囲の組み合わせが存
在し、その範囲は実験から求めた結果、A=(0.01
/√Si)−8/9・Alで表される指標Aの値が0以
上であれば、本発明で限定した酸化物サイズ、個数範囲
の中でさらに酸化物個数を増加し、サイズをさらに微細
化できることが知見された。ただし、Si,Alは重量
%である。
素であるため、本発明のようにTa,Nbの酸化物を形
成、分散させる目的の鋼ではSi,Alの含有量が重要
である。各々について、Siは0.02〜1.0%、A
lは0.0005〜0.05%とする必要がある。Si
<0.02%またはAl<0.0005%であると溶鋼
のボイリングが激しくなり健全な鋳片が得られず、Si
>1.0%またはAl>0.05%では溶存酸素量の確
保が困難となり、酸化物の個数が不足して強度向上が計
れない。さらに、SiとAl最適範囲の組み合わせが存
在し、その範囲は実験から求めた結果、A=(0.01
/√Si)−8/9・Alで表される指標Aの値が0以
上であれば、本発明で限定した酸化物サイズ、個数範囲
の中でさらに酸化物個数を増加し、サイズをさらに微細
化できることが知見された。ただし、Si,Alは重量
%である。
【0032】Mnは強度を確保するために0.1%以上
必要であるが、3.0%超の添加は溶接性を損ねるため
0.1〜3.0%に限定した。
必要であるが、3.0%超の添加は溶接性を損ねるため
0.1〜3.0%に限定した。
【0033】Pは靭性を低下させるため、0.05%以
下に限定した。Sは延性及び靭性を低下させるため、
0.02%以下に限定した。
下に限定した。Sは延性及び靭性を低下させるため、
0.02%以下に限定した。
【0034】Crはフェライト系耐熱鋼として耐酸化性
を確保するために0.5%以上必要であるが、13%超
の添加は靭性を損ねるため、0.5〜13%に限定し
た。
を確保するために0.5%以上必要であるが、13%超
の添加は靭性を損ねるため、0.5〜13%に限定し
た。
【0035】Mo,Wは1種又は2種の添加によって高
温強度を高める。そのためには、Mo:0.03%以上
またはW:0.05%以上必要であるが、Mo:2.0
%またはW:4.0%を超えると靭性を損ねるため、M
o:0.03〜2.0%、W:0.05〜4.0%に限
定した。
温強度を高める。そのためには、Mo:0.03%以上
またはW:0.05%以上必要であるが、Mo:2.0
%またはW:4.0%を超えると靭性を損ねるため、M
o:0.03〜2.0%、W:0.05〜4.0%に限
定した。
【0036】Vは高温強度を高めるためには0.02%
以上必要であるが、0.5%を超えると靭性を損なうた
め0.02〜0.5%に限定した。
以上必要であるが、0.5%を超えると靭性を損なうた
め0.02〜0.5%に限定した。
【0037】Nは高温強度を高めるためには0.002
%以上必要であるが、0.1%を超えると靭性が低下す
るため0.002〜0.1%に限定した。
%以上必要であるが、0.1%を超えると靭性が低下す
るため0.002〜0.1%に限定した。
【0038】必要に応じて添加するNi,Cu,Coは
焼入れ性を向上させ、かつ靭性に有害なδフェライトの
生成を抑制する点で同様の効果を有する。焼入れ性確
保、靭性確保のために単独または2種以上の合計で0.
01%以上必要であるが、4.0%を超えるとクリープ
強度を低下させるため、0.01〜4.0%に限定し
た。
焼入れ性を向上させ、かつ靭性に有害なδフェライトの
生成を抑制する点で同様の効果を有する。焼入れ性確
保、靭性確保のために単独または2種以上の合計で0.
01%以上必要であるが、4.0%を超えるとクリープ
強度を低下させるため、0.01〜4.0%に限定し
た。
【0039】酸化物分散に関して、より好ましくは酸素
含有量を0.001〜0.3%に限定する。酸素が0.
001%未満ではTa,Nbを必要量含有していても酸
化物数が不足し、強度上昇が計れない。一方、酸素が
0.3%超では酸化物が極端に粗大化して脆性破壊の起
点になるため好ましくない。従って、請求項2では酸素
を0.001〜0.3%に限定した。
含有量を0.001〜0.3%に限定する。酸素が0.
001%未満ではTa,Nbを必要量含有していても酸
化物数が不足し、強度上昇が計れない。一方、酸素が
0.3%超では酸化物が極端に粗大化して脆性破壊の起
点になるため好ましくない。従って、請求項2では酸素
を0.001〜0.3%に限定した。
【0040】Ti,Zr,Mg,Ca,B,REM,Y
は選択的に添加することで、Ta系酸化物またはNb系
酸化物の数密度を増加させることができる。特に凝固時
冷却速度が遅い鋳片の中心部で数密度を増加させる効果
が大きい。その効果は、選択元素の合計量で0.000
2%以上で現れ、0.05%を超えると逆に酸化物が粗
大になり数密度が減少する。
は選択的に添加することで、Ta系酸化物またはNb系
酸化物の数密度を増加させることができる。特に凝固時
冷却速度が遅い鋳片の中心部で数密度を増加させる効果
が大きい。その効果は、選択元素の合計量で0.000
2%以上で現れ、0.05%を超えると逆に酸化物が粗
大になり数密度が減少する。
【0041】以上が鋼板に関する本発明の限定理由であ
るが、次に本発明の鋼板を得るための製造方法について
説明する。
るが、次に本発明の鋼板を得るための製造方法について
説明する。
【0042】Ta,Nb添加及び/または酸化Ta,酸
化Nb添加により溶鋼中にTa系酸化物,Nb系酸化物
が分散するが、溶鋼での保持時間が長くなると酸化物は
凝集・浮上するため最終的な酸化物は減少する。溶鋼中
での保持時間は凝固時(凝固開始から終了までの温度範
囲)の冷却速度と凝固温度幅(液相線−固相線の温度範
囲)の両者の影響を受ける。実験的に酸化物の分散に適
した条件を求めた結果、下記の(2)式、 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) で規定される冷却速度、R以上で凝固温度域(凝固開始
から終了までの温度範囲)を冷却すれば、凝固中の酸化
物の凝集・浮上を実用的に許容できる範囲に抑制できる
ことが判明した。ただし、C,Si,Mn,P,S,C
r,Ni,V,Wは重量%である。R以上の冷却速度で
あれば、冷却速度は大きいほど酸化物の分散には有効で
あるが、Rが1000℃/分以上になると効果は飽和す
るため、実用的には冷却速度はR〜1000℃/分の範
囲が好ましい。なお、酸化物の分散状態は凝固後は変化
しないため、凝固終了後の冷却速度は何等限定する必要
はない。
化Nb添加により溶鋼中にTa系酸化物,Nb系酸化物
が分散するが、溶鋼での保持時間が長くなると酸化物は
凝集・浮上するため最終的な酸化物は減少する。溶鋼中
での保持時間は凝固時(凝固開始から終了までの温度範
囲)の冷却速度と凝固温度幅(液相線−固相線の温度範
囲)の両者の影響を受ける。実験的に酸化物の分散に適
した条件を求めた結果、下記の(2)式、 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) で規定される冷却速度、R以上で凝固温度域(凝固開始
から終了までの温度範囲)を冷却すれば、凝固中の酸化
物の凝集・浮上を実用的に許容できる範囲に抑制できる
ことが判明した。ただし、C,Si,Mn,P,S,C
r,Ni,V,Wは重量%である。R以上の冷却速度で
あれば、冷却速度は大きいほど酸化物の分散には有効で
あるが、Rが1000℃/分以上になると効果は飽和す
るため、実用的には冷却速度はR〜1000℃/分の範
囲が好ましい。なお、酸化物の分散状態は凝固後は変化
しないため、凝固終了後の冷却速度は何等限定する必要
はない。
【0043】Ta系酸化物及び/またはNb系酸化物の
分散方法としては、Ta,Nbと結びつく溶鋼中の溶存
O量を規定した上でTa,Nbまたは酸化Ta,酸化N
bを添加すると、酸化物の歩留まりが高くなる。酸化物
ではないTa,Nbを添加するのはTa,Nbを脱酸元
素として用いて、溶鋼中あるいは凝固段階でTa系酸化
物,Nb系酸化物を形成させることに意義がある。従っ
て、Ta,Nbを添加する時点での溶鋼中のO量は重要
である。前述したように、鋼中のOは0.001〜0.
3%が好ましいが、溶鋼中の溶存O量としては0.00
2〜0.1%の範囲がTa系酸化物,Nb系酸化物の分
散には好ましい。溶存Oが0.002%未満ではTaま
たはNbを添加した際に該元素と結びつくO量が不足の
ため、酸化物個数が不十分となる。また、酸化Ta,酸
化Nbを添加する場合でも、添加された酸化Ta,酸化
Nbの一部あるいは全量は溶解中に一度溶解してから凝
固時に析出するため、同様に添加前の溶存O量が0.0
02%未満では溶鋼中の全O量が不足し、最終的に残存
するTa系酸化物、Nb系酸化物の個数が不十分とな
る。一方、溶存O量が0.1%超では酸化物の凝集・粗
大化が顕著となるため好ましくない。従って、本発明に
おいては、Ta,Nb及び/またはTa酸化物、Nb酸
化物を添加する前の溶存O量を0.002〜0.1%に
限定する。
分散方法としては、Ta,Nbと結びつく溶鋼中の溶存
O量を規定した上でTa,Nbまたは酸化Ta,酸化N
bを添加すると、酸化物の歩留まりが高くなる。酸化物
ではないTa,Nbを添加するのはTa,Nbを脱酸元
素として用いて、溶鋼中あるいは凝固段階でTa系酸化
物,Nb系酸化物を形成させることに意義がある。従っ
て、Ta,Nbを添加する時点での溶鋼中のO量は重要
である。前述したように、鋼中のOは0.001〜0.
3%が好ましいが、溶鋼中の溶存O量としては0.00
2〜0.1%の範囲がTa系酸化物,Nb系酸化物の分
散には好ましい。溶存Oが0.002%未満ではTaま
たはNbを添加した際に該元素と結びつくO量が不足の
ため、酸化物個数が不十分となる。また、酸化Ta,酸
化Nbを添加する場合でも、添加された酸化Ta,酸化
Nbの一部あるいは全量は溶解中に一度溶解してから凝
固時に析出するため、同様に添加前の溶存O量が0.0
02%未満では溶鋼中の全O量が不足し、最終的に残存
するTa系酸化物、Nb系酸化物の個数が不十分とな
る。一方、溶存O量が0.1%超では酸化物の凝集・粗
大化が顕著となるため好ましくない。従って、本発明に
おいては、Ta,Nb及び/またはTa酸化物、Nb酸
化物を添加する前の溶存O量を0.002〜0.1%に
限定する。
【0044】溶存O量を0.002〜0.1%とした上
で、Ta及び/またはNbに加えて、または酸化Ta及
び/または酸化Nbを添加することになるが、酸化物で
はない原料(Ta及び/またはNb)と酸化物(酸化T
a及び/または酸化Nb)を複合的に添加する場合は、
酸化物ではないTa,Nb原料を先に添加する方が最終
的な酸化物の歩留まりが良好となり、また、操業上も有
利である。TaとNbの添加順序、あるいは酸化Taと
酸化Nbの添加順序は問わない。さらに、同時に添加し
ても酸化物の分散状態には影響を及ぼさない。
で、Ta及び/またはNbに加えて、または酸化Ta及
び/または酸化Nbを添加することになるが、酸化物で
はない原料(Ta及び/またはNb)と酸化物(酸化T
a及び/または酸化Nb)を複合的に添加する場合は、
酸化物ではないTa,Nb原料を先に添加する方が最終
的な酸化物の歩留まりが良好となり、また、操業上も有
利である。TaとNbの添加順序、あるいは酸化Taと
酸化Nbの添加順序は問わない。さらに、同時に添加し
ても酸化物の分散状態には影響を及ぼさない。
【0045】以上の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼
板の製造方法は、連続鋳造を行うことでより効果的にT
a系酸化物またはNb系酸化物の数密度が増加する。こ
れは、連続鋳造は冷却速度が速く、又鋳片の長手方向で
冷却速度が一定であるためである。
板の製造方法は、連続鋳造を行うことでより効果的にT
a系酸化物またはNb系酸化物の数密度が増加する。こ
れは、連続鋳造は冷却速度が速く、又鋳片の長手方向で
冷却速度が一定であるためである。
【0046】さらに、連続鋳造に際して、酸化Ta,酸
化Nbを添加する方法として、該原料を内部に充填した
ワイヤーをモールド内の溶鋼中に連続的に供給するとよ
り、効果的にTa系酸化物またはNb系酸化物の数密度
が増加する。これは、より凝固部に近い溶鋼中にワイヤ
ー添加で酸化物を供給することにより、酸化物の歩留ま
りが向上し、かつ、板厚中心部での酸化物の数密度が増
加するためと、連続的に供給することにより長手方向に
も均一な酸化物の分散状態が得られるためである。
化Nbを添加する方法として、該原料を内部に充填した
ワイヤーをモールド内の溶鋼中に連続的に供給するとよ
り、効果的にTa系酸化物またはNb系酸化物の数密度
が増加する。これは、より凝固部に近い溶鋼中にワイヤ
ー添加で酸化物を供給することにより、酸化物の歩留ま
りが向上し、かつ、板厚中心部での酸化物の数密度が増
加するためと、連続的に供給することにより長手方向に
も均一な酸化物の分散状態が得られるためである。
【0047】
【実施例】実施例を表1〜表3に示す。表1は表2に示
す製造方法により製造された鋼板の化学成分含有量を示
したものである。表3は製造された鋼板の室温での引張
特性、2mmVノッチシャルピー衝撃特性、クリープ特性
を調査した結果である。機械試験は全て板厚中心部から
圧延方向に直角に採取した試験片により実施した。2mm
Vノッチシャルピー衝撃特性は0℃における吸収エネル
ギー(vE0 )で評価した。また、クリープ特性は62
5℃10000時間の破断応力で評価した。本発明によ
り製造された鋼A1〜A16は625℃10000時間
のクリープ破断強度が約130MPa 〜180MPa と非常
に優れた特性を有する。
す製造方法により製造された鋼板の化学成分含有量を示
したものである。表3は製造された鋼板の室温での引張
特性、2mmVノッチシャルピー衝撃特性、クリープ特性
を調査した結果である。機械試験は全て板厚中心部から
圧延方向に直角に採取した試験片により実施した。2mm
Vノッチシャルピー衝撃特性は0℃における吸収エネル
ギー(vE0 )で評価した。また、クリープ特性は62
5℃10000時間の破断応力で評価した。本発明によ
り製造された鋼A1〜A16は625℃10000時間
のクリープ破断強度が約130MPa 〜180MPa と非常
に優れた特性を有する。
【0048】一方、比較鋼の鋼B1〜B7は本発明を満
足していないため、本発明鋼に比べて特にクリープ特性
が劣る。即ち、鋼B1,B2はどちらも本発明の最も重
要な要件である、Ta,Nbの添加が非酸化物あるいは
酸化物いずれの形態のものもなされていないため、クリ
ープ特性が劣る。鋼B3は逆にTa添加量が過剰であ
り、最終的な鋼中Ta含有量も過剰であるため、酸化T
aが粗大化してクリープ特性も劣り、靭性も他に比べて
劣る。鋼B4はTaは含まれているものの含有量が不十
分であり、その結果、クリープ特性も向上していない。
鋼B5は酸化Taの分散は適正範囲であるが、基本成分
として必要なMoあるいはWが含有されていないため、
クリープ特性が非常に低い。鋼B6,B7は、凝固温度
域での冷却速度が本発明の範囲を逸脱しているために酸
化物の密度が十分ではなく、鋼中のTa,Nb含有量は
適正範囲であるもののクリープ特性は劣る。
足していないため、本発明鋼に比べて特にクリープ特性
が劣る。即ち、鋼B1,B2はどちらも本発明の最も重
要な要件である、Ta,Nbの添加が非酸化物あるいは
酸化物いずれの形態のものもなされていないため、クリ
ープ特性が劣る。鋼B3は逆にTa添加量が過剰であ
り、最終的な鋼中Ta含有量も過剰であるため、酸化T
aが粗大化してクリープ特性も劣り、靭性も他に比べて
劣る。鋼B4はTaは含まれているものの含有量が不十
分であり、その結果、クリープ特性も向上していない。
鋼B5は酸化Taの分散は適正範囲であるが、基本成分
として必要なMoあるいはWが含有されていないため、
クリープ特性が非常に低い。鋼B6,B7は、凝固温度
域での冷却速度が本発明の範囲を逸脱しているために酸
化物の密度が十分ではなく、鋼中のTa,Nb含有量は
適正範囲であるもののクリープ特性は劣る。
【0049】以上、実施例によれば、本発明により製造
されたフェライト系耐熱鋼板は非常に優れたクリープ特
性を有することが明らかである。
されたフェライト系耐熱鋼板は非常に優れたクリープ特
性を有することが明らかである。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は酸化Ta酸
化Nbの分散強化によって高いクリープ強度を有するフ
ェライト系耐熱鋼板を提供するものであり、今後の産業
界に果たす役割は極めて大きい。
化Nbの分散強化によって高いクリープ強度を有するフ
ェライト系耐熱鋼板を提供するものであり、今後の産業
界に果たす役割は極めて大きい。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/52 C22C 38/52 38/58 38/58
Claims (10)
- 【請求項1】 重量%で、 C :0.001〜0.30% Si:0.02〜1.0% Mn:0.1〜3.0% P :0.05%以下 S :0.02%以下 Cr:0.5〜13% V :0.02〜0.5% Al:0.0005〜0.05% N :0.002〜0.1%を含有し、 Mo:0.03〜2.0% W :0.05〜4.0% の1種または2種を含有し、さらに、 Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を含有し、残部鉄及び不可避不純物か
らなり、さらに、Ta系酸化物、Nb系酸化物の1種ま
たは2種が鋼中に 平均粒径:0.002〜3μm 数密度:0.01個/μm2 〜10個/μm2 分散することを特徴とする酸化物分散強化フェライト系
耐熱鋼板。 - 【請求項2】 Ni,Cu,Coのうち1種または2種
以上の合計を0.01〜4.0%含有することを特徴と
する請求項1記載の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼
板。 - 【請求項3】 酸素:0.001〜0.3% を含有することを特徴とする請求項1または2記載の酸
化物分散強化フェライト系耐熱鋼板。 - 【請求項4】 下記(1)式で定義するAが、 A>0 であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に
記載の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板。 A=(0.01/√Si)−8/9・Al (1) ただし、Si,Alは重量%。 - 【請求項5】 Ti,Zr,Mg,Ca,B,REM,
Yのうち1種または2種以上の合計を 0.0002〜0.05% 含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項
に記載の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板。 - 【請求項6】 溶存酸素量:0.002%〜0.1% の溶鋼に Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼
板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェライ
ト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。 - 【請求項7】 溶存酸素量:0.002%〜0.1% の溶鋼に 酸化Ta:0.004〜1.0% 酸化Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼
板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェライ
ト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。 - 【請求項8】 溶存酸素量:0.002%〜0.1% の溶鋼に Ta:0.004〜1.0% Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、さらに、 酸化Ta:0.004〜1.0% 酸化Nb:0.002〜0.5% の1種または2種を添加した後、鋳造し、凝固開始温度
から凝固終了温度までを下記(2)式に示す冷却速度R
以上で凝固させ請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼
板を製造することを特徴とする酸化物分散強化フェライ
ト系耐熱鋼板の製造方法。 R(℃/分)=42C−0.8C2 +0.75Si+0.17Mn+50P+ 70S−0.05Cr+0.84Ni−0.2V−0.02W (2) ただし、C,Si,Mn,P,S,Cr,Ni,V,W
は重量%。 - 【請求項9】 連続鋳造することを特徴とする請求項6
〜8のいずれか1項に記載の酸化物分散強化フェライト
系耐熱鋼板の製造方法。 - 【請求項10】 酸化Ta、酸化Nbの1種もしくは2
種が充填されたワイヤーをモールド内の溶鋼に連続的に
供給して連続鋳造することを特徴とする請求項7または
8に記載の酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板の製造
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15491795A JPH093590A (ja) | 1995-06-21 | 1995-06-21 | 酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15491795A JPH093590A (ja) | 1995-06-21 | 1995-06-21 | 酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH093590A true JPH093590A (ja) | 1997-01-07 |
Family
ID=15594787
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP15491795A Withdrawn JPH093590A (ja) | 1995-06-21 | 1995-06-21 | 酸化物分散強化フェライト系耐熱鋼板及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH093590A (ja) |
Cited By (8)
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US6821360B2 (en) * | 2000-07-27 | 2004-11-23 | Kabushiki Kaisha Toshiba | Heat-resisting steel, method for thermally treating heat-resisting steel, and components made of heat-resisting steel |
CN102191426A (zh) * | 2011-04-14 | 2011-09-21 | 山西太钢不锈钢股份有限公司 | 焊接用不锈钢线材及其线材用钢的冶炼方法 |
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US8920713B2 (en) | 2009-05-21 | 2014-12-30 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Steel for welded structure and producing method thereof |
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CN114892099A (zh) * | 2022-05-31 | 2022-08-12 | 北京科技大学 | 一种高强度耐高温腐蚀含硅ods钢及其制备方法和应用 |
-
1995
- 1995-06-21 JP JP15491795A patent/JPH093590A/ja not_active Withdrawn
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