JPH09324014A - ポリプロピレン樹脂 - Google Patents

ポリプロピレン樹脂

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JPH09324014A
JPH09324014A JP14127496A JP14127496A JPH09324014A JP H09324014 A JPH09324014 A JP H09324014A JP 14127496 A JP14127496 A JP 14127496A JP 14127496 A JP14127496 A JP 14127496A JP H09324014 A JPH09324014 A JP H09324014A
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elution
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勲 正田
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純一 藤井
Naoki Ueda
直紀 上田
Akira Aoki
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Abstract

(57)【要約】 【課題】延伸フィルム製膜時の延伸性が良好で、かつ得
られる延伸フィルムが耐熱性、剛性に優れるポリプロピ
レン樹脂およびかかるポリプロピレン樹脂を延伸加工し
て得られる延伸フィルムを提供する。 【解決手段】ポリプロピレンを主構成成分とし、メルト
フローレイトが0.1〜10g/10分、室温p−キシ
レン可溶分量が3〜6重量%、好ましくは3.5〜5重
量%、該室温p−キシレン可溶分量と温度上昇溶離分別
法による20℃以下の溶出成分量の差が0.5〜3重量
%、好ましくは1.0〜2.0重量%である二軸延伸フ
ィルムに適したポリプロピレン樹脂および該ポリプロピ
レン樹脂よりなる延伸フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリプロピレン樹
脂および該ポリプロピレン樹脂よりなる延伸フィルムに
関する。詳しくは、一軸または二軸延伸フィルムの製膜
に際して、製膜可能な温度調整範囲が広く、延伸時の機
械負荷が小さく、延伸によるフィルム破れが少なく、熱
収縮率等の耐熱性の良好な一軸または二軸延伸フィルム
に適したポリプロピレン樹脂および該ポリプロピレン樹
脂よりなる延伸フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】延伸ポリプロピレンフィルム、特に二軸
延伸ポリプロピレンフィルムは、その優れた機械的物
性、光学的物性により包装材料等に広く使用されてい
る。その製造方法はテンター方式による逐時二軸延伸法
が一般的である。
【0003】近年では、二軸延伸ポリプロピレンフィル
ムの生産設備の大型化、高速化が進み、一般的な従来の
ポリプロピレン樹脂では製膜時における延伸装置の機械
負荷の上昇、フィルムの厚薄精度の低下、さらにはフィ
ルムの延伸破れが発生する等の問題が生起してきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そのため、二軸延伸ポ
リプロピレンフィルムの生産設備の大型化、高速化に対
応できる延伸性の良好なポリプロピレン樹脂の開発が望
まれていた。従って、本発明の目的は、延伸に際して、
製膜可能な温度調整範囲が広く、機械負荷が小さく、製
膜されたフィルムの厚薄精度が優れ、延伸性が良好で、
延伸破れ等が発生せず安定に生産でき、製膜されたフィ
ルム熱収縮率等の耐熱性の良好な一軸または二軸延伸フ
ィルムに適したポリプロピレン樹脂および該ポリプロピ
レン樹脂よりなる延伸フィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意研究を行ない、その結果、特定範囲のメ
ルトフローレイトで、特定範囲の室温p−キシレン可溶
分量を有し、該室温p−キシレン可溶分量と温度上昇溶
離分別法による20℃以下の溶出成分量の差が特定範囲
であるポリプロピレン樹脂、さらに、温度上昇溶離分別
法による20〜70℃の範囲の溶出成分量が特定範囲で
あるポリプロピレン樹脂が、延伸フィルムの製膜に際し
て、製膜の温度調整範囲が広く、延伸における機械負荷
が低減し、フィルムの延伸破れが少なく、さらに、製膜
された延伸フィルムの厚薄精度が優れ、熱収縮率等の耐
熱性が良好であることを見出し、本発明を完成しここに
提案するに至った。
【0006】すなわち、本発明はポリプロピレンを主な
構成成分とし、メルトフローレイトが0.1〜10g/
10分、室温p−キシレン可溶分量が3〜6重量%、該
室温p−キシレン可溶分量と温度上昇溶離分別法による
20℃以下の溶出成分量の差が0.5〜3重量%である
ポリプロピレン樹脂に関する。
【0007】さらには、温度上昇溶離分別法による20
〜70℃の範囲の溶出成分量が2〜6重量%である上記
のポリプロピレン樹脂に関する。
【0008】さらに、これらのポリプロピレン樹脂を延
伸加工してなるポリプロピレン延伸フィルムに関するも
のである。
【0009】本発明のポリプロピレン樹脂の特徴は、製
膜時の温度調整範囲が広く、延伸における機械負荷が低
減され、フィルムの延伸破れが少なく、さらに、製膜さ
れた延伸フィルムの厚薄精度が優れ、熱収縮率等の耐熱
性が良好である点にある。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のポリプロピレン樹脂のメ
ルトフローレイトは0.1〜10g/10分であり、1
〜5g/10分の範囲であることが好ましい。メルトフ
ローレイトが0.1g/10分未満では溶融状態のポリ
プロピレン樹脂の粘度が高くなり、二軸延伸フィルム製
造時の最初の段階である押し出し成形によるシート成形
の際の押出機の機械負荷が上昇して押し出し成形が困難
になる。また、メルトフローレイトが10g/10分を
越えるとポリプロピレン樹脂の溶融張力が低下するため
に、二軸延伸フィルム製造時の最初の段階である押し出
し成形によるシート成形の際、シートの厚み精度が低下
し、二軸延伸によって製造されたフィルムの厚薄精度が
悪くなる。本発明で用いるポリプロピレン樹脂のメルト
フローレイトの範囲を重量平均分子量で表わすと25
0,000〜800,000、好ましくは300,00
0〜450,000の範囲となる。
【0011】本発明のポリプロピレン樹脂は特定量の室
温p−キシレン可溶分を含む。該ポリプロピレン樹脂の
室温p−キシレン可溶分量は3〜6重量%であり、3.
3〜5.5重量%の範囲であることが好ましく、さらに
3.5〜5重量%の範囲であることがより好ましい。室
温p−キシレン可溶分量が3重量%未満では製膜におけ
る延伸の際の延伸性が低下し、機械負荷が上昇してフィ
ルムの延伸破れが多発する。また、6重量%を越えると
二軸延伸フィルムの熱収縮率等の耐熱性や剛性が低下す
る。
【0012】本発明において、温度上昇溶離分別法(以
下、単にTREFと略す。)は、ポリオレフィン(ポリ
プロピレン樹脂)を異なる温度で溶剤に溶解させ、各溶
解温度におけるポリオレフィンの溶出量(濃度)を測定
して、そのポリオレフィンの結晶性分布を評価する方法
である。即ち、硅藻土、シリカビーズ等の不活性担体を
充填剤として用い、そのカラム内に試料のポリオレフィ
ンをオルトジクロルベンゼンよりなる溶剤に溶解した任
意の濃度の試料溶液を注入し、カラムの温度を降下させ
て試料を充填剤表面に付着させた後、該カラム内にオル
トジクロルベンゼンよりなる溶剤を通過させながらカラ
ムの温度を上昇させていき、各温度で溶出してくるポリ
オレフィンの濃度を検出し、ポリオレフィンの溶出量
(重量%)とその時のカラム内の温度(℃)との値よ
り、ポリオレフィンの結晶性分布を測定する方法であ
る。溶出温度は溶出成分がより結晶化しやすくなるにつ
れて高くなるので、溶出温度とポリマーの溶出量(重量
%)との関係を求めることにより、ポリマーの結晶性の
分布を知ることができる。
【0013】上記方法において、カラムの温度の降下速
度は、試料のポリオレフィンに含まれる結晶性部分の所
定温度における結晶化に必要な速度に、また、カラムの
温度の上昇速度は、各温度における試料の溶解が完了し
得る速度に調整されることが必要であり、かかるカラム
の温度の降下速度および上昇速度は予め実験によって決
定すればよい。カラムの温度の降下速度は、2℃/分以
下の範囲で、また、カラムの温度の上昇速度は、4℃/
分以下の範囲で決定される。
【0014】ここで、20℃以下の溶出成分量は、溶出
温度(℃)と溶出量(重量%)の関係(図1)、溶出温
度(℃)と積算溶出量(重量%)の関係(図2)を示す
溶出曲線において、溶出温度20℃での積算溶出量(重
量%)であり、20℃以下において溶剤に可溶のポリマ
ー成分の量である。
【0015】図2は、後述する実施例1で製造したポリ
プロピレン樹脂の溶出温度(℃)と積算溶出量(重量
%)との関係を示す積算溶出曲線であり、ここで、A点
における積算溶出量が20℃以下の溶出成分量であり、
2.5重量%である。
【0016】室温p−キシレン可溶分量とTREFによ
る20℃以下の溶出成分量の差は前記室温p−キシレン
可溶分量(重量%)から該20℃以下の溶出成分量(重
量%)を差し引いた値である。
【0017】本発明のポリプロピレン樹脂の室温p−キ
シレン可溶分量とTREFによる20℃以下の溶出成分
量の差は0.5〜3重量%であり、0.8〜2.5重量
%の範囲であることが好ましく、さらに1.0〜2.0
重量%の範囲であることがより好ましい。室温p−キシ
レン可溶分量とTREFによる20℃以下の溶出成分量
の差が0.5重量%未満では製膜における延伸の際の延
伸性が低下し、機械負荷が上昇してフィルムの延伸破れ
が多発する。また、3重量%を越えると二軸延伸フィル
ムの剛性、耐熱性が低下する。以上の関係を満たすため
には、TREFによる20℃以下の溶出成分量は5.5
重量%以下であることが好ましく、0.5〜4.7重量
%の範囲であることがより好ましく、さらに1.5〜
4.0重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0018】従来の固体三塩化チタン触媒を用い、公知
の方法で得られたポリプロピレン樹脂では該p−キシレ
ン可溶分量が本発明のポリプロピレン樹脂よりも多く、
得られる延伸フィルムの耐熱性に劣る。また、公知のチ
タン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与体を必須成
分とする触媒活性の高い固体チタン触媒を用い、公知の
方法で得られたポリプロピレン樹脂では該室温p−キシ
レン可溶分量とTREFによる20℃以下の溶出成分量
の差が本発明のポリプロピレン樹脂よりも少なく、製膜
における延伸の際の延伸性が低下し、機械負荷が上昇し
てフィルムの延伸破れが多発する。
【0019】本発明のポリプロピレン樹脂は<メルトフ
ローレイト、室温p−キシレン可溶分量および該室温p
−キシレン可溶分量とTREFによる20℃以下の溶出
成分量の差が上記の範囲であれば本発明の効果を十分に
達成することができるが、さらに、本発明のポリプロピ
レン樹脂の製膜性および延伸性と、製膜して得られた延
伸フィルムの剛性および耐熱性を勘案すると、以下の要
件を満足することが好ましい。
【0020】本発明のTREFによる20〜70℃の範
囲の溶出成分量(Y20-70 )とは、溶出温度が20〜7
0℃の範囲における溶出量(重量%)であり、下記式で
求められる。
【0021】Y20-70=X70−X20 但し、X70:70℃以下の溶出成分量(重量%) X20:前記した20℃以下の溶出成分量(重量%) 図2は、後述する実施例1で製造したポリプロピレン樹
脂の溶出温度(℃)と積算溶出量(重量%)との関係を
示す積算溶出曲線であり、ここで、B点における積算溶
出量がX70で6.3重量%であり、A点における積算溶
出量がX20で2.8重量%である。したがって、この場
合の20〜70℃の範囲における溶出量は(5.6−
2.5)で、3.1重量%となる。本発明のポリプロピ
レン樹脂のTREFによる20〜70℃の範囲の溶出成
分量は、製膜時の延伸における機械負荷を低減させ、延
伸性を向上させるために、2〜6重量%であることが好
ましく、2.5〜5.5重量%であることがより好まし
く、さらに3〜5重量%であることが特に好ましい。
【0022】また、TREFによる溶出曲線のピーク温
度は、製膜して得られた延伸フィルムの剛性および耐熱
性を勘案すると、110〜125℃の範囲であり、11
5〜123℃の範囲であることが好ましく、さらに11
8〜121℃の範囲であることがより好ましい。なお、
本発明でいうTREFによる溶出ピーク温度とは、溶出
温度(℃)と溶出量(重量%)の関係を示す溶出曲線に
おいて溶出量が最大となるピーク位置(℃)を示す。図
1は、後述する実施例1で製造したポリプロピレン樹脂
の溶出温度(℃)と溶出量(重量%)との関係を示す溶
出曲線であり、ここで、C点で示されるピーク位置の温
度121.1℃が、溶出ピーク温度となる。
【0023】また、本発明のポリプロピレン樹脂のTR
EFによる溶出曲線より算出される90重量%溶出時と
20重量%溶出時とにおける溶出温度の差は9〜17℃
の範囲であり、特に10〜15℃の範囲であることが、
製膜可能な温度調整範囲を広くするうえでより好まし
い。なお、本発明のTREFによる溶出曲線より算出さ
れる90重量%溶出時と20重量%溶出時とにおける溶
出温度の差(σ)とは、積算溶出量が20重量%と90
重量%とにおける溶出温度差であり、下記式で求められ
る。
【0024】σ=T90%−T20% 但し、T90%:積算溶出量が90重量%となるときの温
度(℃) T20%:積算溶出量が20重量%となるときの温度
(℃) 図2は、後述する実施例1で製造したポリプロピレン樹
脂の溶出温度(℃)と積算溶出量(重量%)との関係を
示す積算溶出曲線であり、ここで、D点における溶出温
度がT90% で121.7℃であり、E点における溶出温
度がT20% で111.3℃である。したがって、この場
合の溶出温度差σは(12.7−111.3)で、1
0.4℃となる。
【0025】本発明のポリプリピレン樹脂のアイソタク
チックペンタッド分率は、製膜時の延伸性と製膜された
フィルムの剛性および耐熱性を勘案すると0.88〜
0.97であることが好ましく、さらに0.91〜0.
95の範囲であることがより好ましい。なお、本発明で
いうアイソタクチックペンタッド分率とは、A.Zam
belliらによってMacromolecules,
13,267(1980)に発表された13C−NMRス
ペクトルのピークの帰属に基づいて定量されたプロピレ
ンユニット5個が連続して等しい立体配置をとる分率で
ある。
【0026】本発明のポリプロピレン樹脂はプロピレン
の単独重合体、または、共重合成分としてプロピレン以
外のα−オレフィンを含む共重合体であってもよい。該
プロピレン以外のα−オレフィンとしては、エチレン、
ブテン−1、ペンテン−1、3−メチル−1−ブテン、
ヘキセン−1、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル
−1−ペンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン
−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、
ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1
等の炭素数2〜20のα−オレフィンを例示することが
できる。これらのα−オレフィンは、共重合成分として
単独もしくは複数の組み合わせで含まれていてよい。該
α−オレフィンが含有される割合は、その種類により異
なるが、共重合体中に占める割合で5モル%以下の範
囲、さらに2モル%以下の範囲であることが、熱収縮率
等の耐熱性の良好な延伸フィルムを得る上でより好まし
い。
【0027】本発明のポリプロピレン樹脂の中でも、上
記プロピレン以外のα−オレフィンを含む共重合体であ
って、該α−オレフィンがエチレンの場合には、製膜時
の機械負荷を低減し、延伸性を良好にし、さらに熱収縮
率等の耐熱性の良好な延伸フィルムを得るためには、エ
チレン含有量(ECO)が0.8モル%以下であり、か
つ、前記アイソタクチックペンタッド分率(ISO)との
関係が、式:0.4≦{6×(1−ISO)+ECO}≦
1.0を満足することが好ましく、さらにエチレン含有
量(ECO)が0.6モル%以下であり、式:0.5≦
{6×(1−ISO)+ECO}≦0.9を満足することが
より好ましい。
【0028】本発明のポリプロピレン樹脂の重量平均分
子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/M
n)で表される分子量分布は特に制限されるものではな
いが、フィルム成形時の容易さを考えると溶融張力を増
加させ加工性を向上させるためには3〜20であること
が好ましく、さらに6〜10の範囲であることがより好
ましい。なお、分子量分布はo−ジクロルベンゼンを溶
媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフ法(以
下、GPCともいう。)で測定された値で、検量線は標
準ポリスチレンで較正されたものが用いられる。
【0029】本発明のポリプロピレン樹脂の室温p−キ
シレン可溶成分の重量平均分子量は特に制限されるもの
ではないが、フィルム表面へのブリードアウトやフィッ
シュアイの発生等を勘案すると10000〜80000
0であることが好ましく、さらに20000〜4000
00の範囲であることがより好ましい。
【0030】本発明のポリプロピレン樹脂のTREFに
よる20℃以下の溶出成分の分子量は特に制限されるも
のではないが、フィルム表面へのブリードアウトやフィ
ッシュアイの発生等を勘案すると、上記GPC測定によ
る分子量分布曲線のピーク位置における分子量が500
0〜400000であることが好ましく、さらに100
00〜300000の範囲であることがより好ましい。
【0031】本発明のポリプロピレン樹脂中のポリプロ
ピレンの割合は、製膜における延伸性と製膜された延伸
フィルムの熱収縮率等の耐熱性および機械的物性を勘案
すると、75重量%以上であることが好ましく、さらに
90重量%以上であることがより好ましい。
【0032】本発明のポリプロピレン樹脂は立体規則性
の分布が広く、アタクチック成分が少ない特徴を有する
が、その製造方法は特に限定されるものではなく、一般
には次のような方法を採用することが好ましい。例え
ば、アタクチック成分の生成量が少なく、かつ、異なる
立体規則性を与える触媒成分を複数用いる方法、また
は、異なる立体規則性を有するポリプロピレン樹脂のブ
レンド等を挙げることができる。
【0033】特に、固体チタン触媒、ハロゲン化有機ア
ルミニウム化合物、有機ケイ素化合物を接触させて得ら
れる固体チタン化合物成分と有機アルミニウム化合物と
の存在下にα−オレフィンを予備重合して得られる予備
重合触媒と、有機アルミニウム化合物および複数の電子
供与体を用いてプロピレンの重合を行う方法を好適に採
用することができる。この方法において、プロピレンの
重合に用いられることが公知の電子供与体が何等制限な
く使用できるが、中でも複数の有機ケイ素化合物を用い
ることが、本発明の範囲の室温p−キシレン可溶分量お
よび該室温p−キシレン可溶分とTREFによる20℃
以下の溶出成分量の差を達成するために特に好ましい。
【0034】前記した固体チタン触媒は、プロピレンの
重合に使用されることが公知の化合物を何ら制限なく用
いることができる。特に、チタン、マグネシウム、ハロ
ゲン、及び電子供与体を必須成分とする触媒活性の高い
固体チタン触媒が好適である。
【0035】かかる固体チタン触媒の製法は、これまで
に数多くの提案がなされており、本発明においてはこれ
ら公知の方法で得られた固体チタン触媒をなんら制限な
く用いることができる。例えば、四塩化チタンを塩化マ
グネシウム等のマグネシウム化合物とアルコール、エー
テル、エステル、ケトンもしくはアルデヒド等の電子供
与体の存在下に共粉砕する方法、または、溶媒中でハロ
ゲン化チタン、マグネシウム化合物および電子供与体を
接触させる方法があげられる。上記のチタン化合物の製
法は、例えば、特開昭56−155206号公報、同5
6−136806、同57−34103、同58−87
06、同58−83006、同58−138708、同
58−183709、同59−206408、同59−
219311、同60−81208、同60−8120
9、同60−186508、同60−192708、同
61−211309、同61−271304、同62−
15209、同11706、同62−72702、同6
2−104810等に開示されている方法が一般に採用
される。
【0036】前記した固体チタン触媒との接触に使用さ
れるハロゲン化有機アルミニウム化合物は下記の一般式
(I) で示される化合物が何ら制限なく使用される。
【0037】一般式(I) RnAlX3-n (I) (但し、Rは炭素数1〜10の飽和炭化水素基、Xはハ
ロゲン原子であり、nは、0<n<3である。) 上記一般式(I) 中の、炭素数1〜10の飽和炭化水素
基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプ
ロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル
基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオ
ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノ
ニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル
基等の鎖状アルキル基および環状アルキル基が挙げられ
る。好適に使用できるハロゲン化有機アルミニウム化合
物を具体的に例示すると、例えば、エチルアルミニウム
ジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、
ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウ
ムブロマイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジ
イソブチルアルミニウムクロライド、ジ−n−プロピル
アルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジブロマ
イド、エチルアルミニウムジアイオダイド、イソブチル
アルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジ
ブロマイド、イソブチルアルミニウムジアイオダイド等
が挙げられる。中でもジエチルアルミニウムクロライ
ド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアル
ミニウムジクロライド等が好ましい。
【0038】本発明において、接触に用いるハロゲン化
有機アルミニウムの使用量は特に制限されるものではな
いが、固体チタン触媒中のTi原子に対してハロゲン化
有機アルミニウム化合物のAl原子がAl/Ti(モル
比)で0.1〜100であることが好ましく、さらに
0.5〜10であることがより好ましい。
【0039】さらに、前記の固体チタン触媒との接触に
使用される有機ケイ素化合物は下記の一般式(II)で示
される化合物が何ら制限なく採用される。
【0040】一般式(II) R12Si(OR32 (II) (但し、R1、R2およびR3は、それぞれ同種または異
種の炭素数1〜20の炭化水素基であり、R1およびR2
のうち少なくとも一方はSi原子に直結する原子が、3
級炭素である鎖状炭化水素であるか、または2級炭素で
ある環状炭化水素である。) 上記一般式(II)中のR1、R2およびR3で示される炭
素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル
基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチ
ル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル
基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチ
ル基、ノニル基、デシル基、および後述するようなシク
ロペンチル基、アルキル基置換シクロペンチル基、シク
ロヘキシル基、アルキル基置換シクロヘキシル基、t−
ブチル基、t−アミル基等が挙げられる。
【0041】前記一般式(II)中、R1およびR2のうち
少なくとも一方はSi原子に直結する原子が、3級炭素
である鎖状炭化水素であるか、または2級炭素である環
状炭化水素である。ここで、Si原子に直結する原子
が、3級炭素である鎖状炭化水素としては、t−ブチル
基、t−アミル基等が挙げられる。また、Si原子に直
結する原子が、2級炭素である環状炭化水素としては、
シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−
メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル
基、2−n−ブチルシクロペンチル基、2,3−ジメチ
ルシクロペンチル基、2,4−ジメチルシクロペンチル
基、2,5−ジメチルシクロペンチル基、2,3−ジエ
チルシクロペンチル基、2,3,4−トリメチルシクロ
ペンチル基、2,3,5−トリメチルシクロペンチル
基、2,3,4−トリエチルシクロペンチル基、テトラ
メチルシクロペンチル基、テトラエチルシクロペンチル
基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、
3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシ
ル基、2−エチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチル
シクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル
基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメ
チルシクロヘキシル基、2,3−ジエチルシクロヘキシ
ル基、2,3,4−トリメチルシクロヘキシル基、2,
3,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,6−ト
リメチルシクロヘキシル基、2,4,5−トリメチルシ
クロヘキシル基、2,4,6−トリメチルシクロヘキシ
ル基、2,3,4−トリエチルシクロヘキシル基、2,
3,4,5−テトラメチルシクロヘキシル基、2,3,
4,6−テトラメチルシクロヘキシル基、2,3,5,
6−テトラメチルシクロヘキシル基、2,3,4,5−
テトラエチルシクロヘキシル基、ペンタメチルシクロヘ
キシル基、ペンタエチルシクロヘキシル基等が挙げられ
る。
【0042】上記有機ケイ素化合物を具体的に例示する
と次の通りである。例えば、ジt−ブチルジメトキシシ
ラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジt−アミ
ルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラ
ン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジ(2−メチ
ルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(3−メチル
シクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2−エチルシ
クロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,3−ジメチ
ルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,4−ジ
メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,5
−ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ
(2,3−ジエチルシクロペンチル)ジメトキシシラ
ン、ジ(2,3,4−トリメチルシクロペンチル)ジメ
トキシシラン、ジ(2,3,5−トリメチルシクロペン
チル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4−トリエチル
シクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(テトラメチル
シクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(テトラエチル
シクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2−メチルシ
クロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(3−メチルシク
ロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(4−メチルシクロ
ヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2−エチルシクロヘ
キシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3−ジメチルシク
ロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,4−ジメチル
シクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,5−ジメ
チルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,6−
ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,
3−ジエチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ
(2,3,4−トリメチルシクロヘキシル)ジメトキシ
シラン、ジ(2,3,5−トリメチルシクロヘキシル)
ジメトキシシラン、ジ(2,3,6−トリメチルシクロ
ヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,4,5−トリメ
チルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,4,
6−トリメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ
(2,3,4−トリエチルシクロヘキシル)ジメトキシ
シラン、ジ(シ2,3,4,5−テトラメチルクロヘキ
シル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4,6−テトラ
メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,
3,5,6−テトラメチルシクロヘキシル)ジメトキシ
シラン、ジ(2,3,4,5−テトラエチルシクロヘキ
シル)ジメトキシシラン、ジ(ペンタメチルシクロヘキ
シル)ジメトキシシラン、ジ(ペンタエチルシクロヘキ
シル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシ
シラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−アミ
ルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメ
トキシシラン、シクロペンチルエチルジメトキシシラ
ン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シク
ロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエ
チルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメ
トキシシラン等を挙げることができる。中でも、シクロ
ヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジ
メトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン等
が好ましい。
【0043】また、該有機ケイ素化合物の使用量は特に
制限されるものではないが、固体チタン触媒中のTi原
子に対して有機ケイ素化合物中のSi原子がSi/Ti
(モル比)で0.01〜100であることが好ましく、
さらに0.05〜10であることがより好ましい。
【0044】本発明で行われる接触は固体チタン触媒、
ハロゲン化有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化
合物を必須成分として実施されるが、本発明の効果が認
められる限り他の成分を共存させることも可能である。
本発明において、固体チタン触媒、ハロゲン化有機アル
ミニウム化合物および有機ケイ素化合物の成分の接触方
法は、本発明の効果が認められる限り制限されないが、
通常はスラリー中で行うのが好ましい。具体的には、溶
媒としてヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサ
ン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族炭化水素もしく
は芳香族炭化水素を単独または併用した混合溶媒を用い
ることができる。また、接触時の温度は、好ましくは−
20〜100℃、さらには0〜60℃の温度が好まし
い。さらに、接触時間は、特に制限されるものではなく
適宜決定されればよく、通常1〜180分、好ましくは
5〜120分である。さらにまた、接触処理は、回分、
半回分、連続のいずれの方法で行ってもよい。
【0045】本発明において、上記接触により得られる
固体チタン化合物成分は、接触で用いられた固体チタン
触媒以外の成分、すなわちハロゲン化有機アルミニウム
化合物および有機ケイ素化合物を洗浄することなく用い
ることができるが、本発明の特性を有するポリプロピレ
ン樹脂を高い効率で得るために、これらの成分を洗浄に
より除去することが好ましい。かかる洗浄方法として
は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘ
キサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族炭化水素も
しくは芳香族炭化水素を単独または併用した混合溶媒の
形態で用いることができる。また、洗浄回数は、遊離の
固体チタン触媒以外の成分が実質的になくなる程度まで
行えばよく、通常の場合、5〜6回行うことが好まし
い。
【0046】本発明の特性を有するポリプロピレン樹脂
を高効率で得るために、上記接触により得られた固体チ
タン化合物成分と有機アルミニウム化合物の存在下にα
−オレフィンまたはビニルシクロアルカンの予備重合を
行うことがより好ましい。
【0047】本発明で行われる予備重合は、本発明の効
果が認められる限り、特に限定されるものではないが、
一般には下記の方法が好ましい。
【0048】予備重合で使用される有機アルミニウム化
合物は、前記一般式(I) で示されたハロゲン化アルキ
ルアルミニウム類、または、一般式(III) で示される
トリアルキルアルミニウムを用いることができる。
【0049】一般式(III) R3Al (III) (但し、Rは炭素数1〜10の飽和炭化水素基であ
る。) 前記一般式(III) 中、Rは炭素数1〜10の飽和炭化
水素基である。炭素数1〜10の飽和炭化水素基として
は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル
基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−
ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル
基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、
デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の鎖
状アルキル基および環状アルキル基が挙げられる。
【0050】本発明の予備重合において好適に使用でき
るトリアルキルアルミニウム化合物を具体的に例示する
と、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアル
ミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n
−ブチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウ
ム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オク
チルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム等が
挙げられる。
【0051】本発明の予備重合で用いられる有機アルミ
ニウム化合物の好ましい例としては、トリエチルアルミ
ニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリエチ
ルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムとジ
エチルアルミニウムクロライドまたはエチルアルミニウ
ムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド
とを併用することが好ましい態様となる。
【0052】予備重合で用いられる有機アルミニウム化
合物の使用量は特に制限されるものではないが、一般に
固体チタン化合物成分中のTi原子に対して有機アルミ
ニウム化合物中のAl原子がAl/Ti(モル比)で1
〜100であることが好ましく、さらに3〜10である
ことがより好ましい。
【0053】また、本発明の予備重合においては、接触
により得られた固体チタン化合物成分および有機アルミ
ニウム化合物に加え、重合により得られるポリプロピレ
ン樹脂の立体規則性を制御するために、必要に応じて、
エーテル、アミン、アミド、含硫黄化合物、ニトリル、
カルボン酸、酸アミド、酸無水物、酸エステル、有機ケ
イ素化合物等の電子供与体を共存させることができる。
中でも有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。かか
る有機ケイ素化合物としては、上記一般式(II)で示さ
れた化合物と同じものを使用することができる他、ジメ
チルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジ
プロピルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラ
ン、ジアリルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシ
シラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルトリ
エトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルト
リエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチ
ルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラ
ン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキ
シシラン、ドデシルトリエトキシシラン、アリルトリエ
トキシシラン等を用いることができる。また上記化合物
の複数を同時に用いることもできる。
【0054】予備重合で用いられる有機ケイ素化合物の
使用量は特に制限されるものではないが、一般には固体
チタン化合物成分中のTi原子に対して有機ケイ素化合
物中のSi原子がSi/Ti(モル比)で0.1〜10
であることが好ましく、さらに0.5〜5であることが
好ましい。
【0055】また、予備重合でのα−オレフィンまたは
ビニルシクロアルカンの重合量は、チタン化合物1gあ
たり0.1〜1000g、好ましくは1〜100gの範
囲であり、工業的には2〜50gの範囲が好適である。
予備重合で用いられるα−オレフィンとしては、直鎖状
または分岐状α−オレフィンを使用することができる。
予備重合で用いるα−オレフィンとしては、直鎖状のα
−オレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテ
ン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙
げられ、また、分岐状α−オレフィンとしては、3−メ
チル−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4,4−ジ
メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4
−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等
が挙げられる。さらに、ビニルシクロアルカンとして
は、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペンタン、ビ
ニルシクロブタン、3−メチルビニルシクロヘキサン等
が挙げられる。この場合、上記のα−オレフィンを2種
類以上同時に使用することも可能であり、予備重合を段
階的に行うことにより、各段階で異なるα−オレフィン
を用いることもできる。得られる重合体の立体規則性の
制御を勘案すると、特定の1種のα−オレフィンを90
モル%以上用いることが好ましい。さらに、予備重合で
水素を共存させることも可能である 本発明において、予備重合は通常スラリー重合を適用さ
せるのが好ましく、溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、
シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族炭
化水素もしくは芳香族炭化水素を単独で、またはこれら
の混合溶媒を用いることができる。予備重合温度は、一
般に−20〜100℃、特に0〜60℃の温度が好まし
く、予備重合を多段階に行う場合には各段で異なる温度
の条件下で行ってもよい。また、予備重合時間は、予備
重合温度および予備重合での重合量に応じ適宜決定すれ
ばよい。さらに、予備重合における圧力は限定されるも
のではないが、スラリー重合の場合は、一般に大気圧〜
5kg/cm2 程度である。
【0056】上記予備重合は、回分、半回分、連続のい
ずれの方法で行ってもよい。また、予備重合終了時に
は、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、
トルエン等の飽和脂肪族炭化水素もしくは芳香族炭化水
素を単独で、またはこれらの混合溶媒で洗浄することが
好ましく、洗浄回数は通常の場合5〜6回が好ましい。
【0057】本発明の予備重合後には、予備重合で得ら
れた予備重合触媒、有機アルミニウム化合物および有機
ケイ素化合物の存在化に本重合が行われる。本重合で
は、プロピレンの単独重合またはプロピレンとそれ以外
のα−オレフィンとの共重合が実施される。該プロピレ
ン以外のα−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−
1、ペンテン−1、3−メチル−1−ブテン、ヘキセン
−1、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペ
ンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デ
セン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデ
セン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等の炭素
数2〜20のα−オレフィンを例示することができる。
【0058】本発明の本重合における重合条件は、本発
明の効果が認められる限り特に制限されず、公知の方法
を採用することができる。一般には次のような方法を採
用することが好ましい。例えば、前記予備重合で得られ
る予備重合触媒と、有機アルミニウム化合物および複数
の電子供与体を混合してプロピレンを本重合する方法を
好適に採用することができる。
【0059】上記本重合で用いられる有機アルミニウム
化合物は、上記の予備重合で使用することができる化合
物が何ら制限なく使用できる。好ましい化合物を具体的
に例示すると、トリエチルアルミニウム、トリイソブチ
ルアルミニウム、およびトリエチルアルミニウムまたは
トリイソブチルアルミニウムとジエチルアルミニウムク
ロライドまたはエチルアルミニウムセスキクロライド、
エチルアルミニウムジクロライドとを併用することが好
ましい態様となる。
【0060】また、本重合で用いられる有機アルミニウ
ム化合物の使用量は特に制限されるものではないが、一
般には接触処理で得られた固体チタン化合物成分中また
は予備重合で得られた予備重合触媒中のTi原子に対し
て有機アルミニウム化合物中のAl原子がAl/Ti
(モル比)で10〜1000であることが好ましく、さ
らに20〜500であることがより好ましい。
【0061】本発明の本重合に用いられる電子供与体
は、プロピレンの重合において一般に知られているもの
を何等制限なく使用できるが、下記の一般式(IV)およ
び一般式(V) で示される有機ケイ素化合物を併用する
ことが、室温p−キシレン可溶分量および該室温p−キ
シレン可溶分とTREFによる20℃以下の溶出成分量
の差が本発明の範囲であるポリプロピレン樹脂を効率よ
く得るために好ましい。
【0062】一般式(IV) R12 nSi(OCH33-n (IV) 一般式(V) R3 nSi(OC254-n (V) (但し、R1、R2およびR3は同種または異種の炭化水
素基であり、nは0または1である。) 前記一般式(IV)および一般式(V) で示される有機ケ
イ素化合物において、R1、R2および R3で示される炭
化水素基は、鎖状、分枝状、環状の脂肪族炭化水素基、
または芳香族炭化水素基を挙げることができ、その炭素
数は特に制限されない。本発明において好適な炭化水素
基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル
基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s
−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等
の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、プロペニル
基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;エチニ
ル基、プロピニル基等の炭素数2〜6のアルキニル基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル
基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;フェニル基、
トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜12
のアリール基等を挙げることができる。このなかで、R
3は直鎖状のアルキル基、アルケニル基、アリール基で
あることが好ましい。また、nは0または1である。
【0063】本発明において好適に用いられる有機ケイ
素化合物を例示すると次の通りである。一般式(IV)で
示される有機ケイ素化合物としては、例えば、トリメト
キシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメ
トキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジビニル
ジメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジ−1
−プロペニルジメトキシシラン、ジエチニルジメトキシ
シラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニル
ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシ
ラン、ターシャリーブチルエチルジメトキシシラン、エ
チルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジメトキ
シシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ジイソ
プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキ
シシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメ
トキシシラン、アリルトリメトキシシラン等を挙げるこ
とができる。
【0064】一般式(V) で示される有機ケイ素化合物
としては、例えば、トリエトキシシラン、テトラエトキ
シシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエト
キシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ブチルトリエ
トキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、イソプロ
ピルトリエトキシシラン、1−プロペニルトリエトキシ
シラン、イソプロペニルトリエトキシシラン、エチニル
トリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ド
デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラ
ン、アリルトリエトキシシラン等を挙げることができ
る。
【0065】一般式(IV)および一般式(V) で示され
る有機ケイ素化合物の使用量は、それぞれ固体状チタン
触媒成分のTi原子に対しSi/Ti(モル比)で0.
1〜500が好ましく、さらには1〜100であること
が好ましい。また、これら二種の有機ケイ素化合物の使
用比率はモル比で(IV):(V) =1:0.1〜1:1
00であること好ましく、さらに1:1〜1:50であ
ることが、室温p−キシレン可溶分量および該室温p−
キシレン可溶分とTREFによる20℃以下の溶出成分
量の差が本発明の範囲であるポリプロピレン樹脂を効率
よく得るうえでより好ましい。
【0066】上記した各成分の添加順序は特に限定され
ず、一般式(IV)および一般式(V)で示される有機ケ
イ素化合物を同時に混合供給しても、または別々に供給
してもよい。またこれらは、予め有機アルミニウム化合
物と接触あるいは混合した後に供給することもできる。
【0067】その他の重合条件は、本発明において特定
するポリプロピレン樹脂の特性が得られる範囲におい
て、任意に変更可能であるが一般には次の条件が好まし
い。即ち、重合温度は20〜200℃、好ましくは50
〜150℃であり、分子量調節剤として水素を共存させ
ることもできる。また、重合は、スラリー重合、無溶媒
重合および気相重合等が適用でき、回分式、半回分式、
連続式のいずれの方法でもよく、更に重合を条件の異な
る2段階に分けて行うこともできる。また、プロピレン
の重合前に、プロピレンや他のモノマーの予備重合を行
なってもよい。さらに、上記した重合を多段に行っても
よい。
【0068】本発明においては、上記した方法で得られ
たポリプロピレン樹脂を単独で使用することが一般的で
あるが、他のポリプロピレン樹脂をブレンドして用いる
こともできる。勿論、上記した方法で得られたポリプロ
ピレン樹脂同士をブレンドすることもできる。
【0069】本発明に用いられるポリプロピレン樹脂に
は、必要に応じて、酸化防止剤、塩素捕捉剤、耐熱安定
剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、滑剤、造核
剤、ブロッキング防止剤、顔料、他の樹脂やフィラー等
の添加剤が効果の阻害されない範囲で配合されていても
よい。
【0070】本発明のポリプロピレン樹脂はあらゆる成
形体の製造に使用することができ、優れた押し出し特
性、延伸性を発揮するが、特に、かかる本発明のポリプ
ロピレン樹脂により延伸フィルムを延伸加工により製膜
した場合に顕著な効果を発揮する。
【0071】本発明のポリプロピレン延伸フィルムとし
ては二軸延伸フィルムおよび一軸延伸フィルムのいずれ
であってもよい。延伸フィルムの厚さは特に制限されな
いが、通常は二軸延伸フィルムの場合3〜150μm、
一軸延伸フィルムの場合10〜254μmの範囲である
ことが好ましい。本発明のポリプロピレン延伸フィルム
は、少なくとも一軸方向に延伸されている。もちろん二
軸方向に延伸されていてもよい。延伸倍率は特に制限さ
れないが、一軸方向に4〜10倍であることが一般的で
あり、二軸延伸の場合はそれに直角な方向に4〜15倍
の範囲で延伸されていることが一般的である。
【0072】本発明のポリプロピレン延伸フィルムの片
面あるいは両面には、必要に応じてコロナ放電処理等の
表面処理が施されてもよい。さらに、ヒートシール性等
の機能を付与する目的で片面あるいは両面に本発明で使
用されるポリプロピレン樹脂よりも融点の低い他の樹脂
よりなる層が積層されてもよい。他の樹脂の積層方法は
特に制限されないが、共押し出し法、ラミネート法等が
好適である。
【0073】本発明のポリプロピレン延伸フィルムの製
造方法は、公知の方法を何等制限なく採用することがで
きる。例えば、テンター法による逐次二軸延伸法によっ
て延伸フィルムを製造する方法としては、上記のポリプ
ロピレン組成物をTダイ法、インフレーション法等でシ
ートあるいはフィルムに成形した後、縦延伸装置に供給
し、加熱ロール温度120〜170℃で3〜10倍縦延
伸し、つづいてテンターを用いてテンター温度130〜
180℃で4〜15倍横延伸する方法が好適である。上
記の成形条件は特に制限されないが、厚薄精度や溶断シ
ール性等の良好な延伸フィルムを得るためには、縦延伸
において145〜170℃で3〜5倍、横延伸において
155〜180℃で4〜12倍延伸することが好まし
い。さらに、必要に応じて横方向に0〜25%の緩和を
許しながら80〜180℃で熱処理する方法を挙げるこ
とができる。もちろん、これらの延伸の後に再び延伸し
てもよく、また縦延伸において多段延伸、圧延等の延伸
法を組み合わせることができる。また、一軸のみの延伸
によっても延伸フィルムとすることができる。
【0074】
【発明の効果】本発明のポリプロピレン樹脂は、延伸フ
ィルムの製膜に際して、従来公知のポリプロピレン樹脂
に比べて製膜可能な温度調整範囲が広く、延伸時の機械
負荷が小さく、製膜されたフィルムの厚薄精度が優れ、
延伸性が良好で延伸破れが発生しにくい、長時間高速
で、安定に連続運転の可能な延伸フィルムの製造に適し
たポリプロピレン樹脂である。さらに、製膜された延伸
フィルムの熱収縮率等の耐熱性が良好である。このよう
な効果は、本研究のポリプロピレン樹脂が延伸フィルム
用ポリプロピレン樹脂として優れており、その工業的な
価値の極めて高いことを示している。
【0075】
【実施例】本発明をさらに具体的に説明するために、以
下に実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明は
これらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の
実施例および比較例で得られたポリプロピレン樹脂およ
び延伸フィルムの評価は次の方法にて行った。
【0076】(1)メルトフローレイト(MFR) ASTM D−790に準じて測定した。
【0077】(2)室温p−キシレン可溶分量(p-Xy.s
ol.) ポリマー1gをp−キシレン100mlに加え、攪拌し
ながら120℃まで昇温した後、さらに30分攪拌を続
け、ポリマーを完全に溶解させ均一な溶液を調製した。
そのp−キシレン溶液を室温(23℃)まで放冷後、室
温(23℃)で24時間放置した。その後、析出したゲ
ル状物は櫨別し、p−キシレン溶液を完全に濃縮するこ
とで可溶分量を求めた。
【0078】室温p−キシレン可溶分量(p-Xy.sol.)
は下記式で求められる。
【0079】(p-Xy.sol.)={p-キシレン可溶分(g)/ホ゜リ
マー1(g)}×100 (重量%) (3)温度上昇溶離分別法による20℃以下の溶出成分
量(X20C)、 20〜70℃の範囲の溶出成分量(Y
20-70)、 ピーク温度(Tp)、90重量%溶出時と2
0重量%溶出時とにおける溶出温度の差(σ) センシュー科学社製の自動TREF装置SSC−730
0ATREFを用い、次の条件で測定した。
【0080】溶媒 : オルトジクロルベンゼン 流速 : 150ml/時間 昇温速度: 4℃/時間 検出機 : 赤外検出器 測定波数: 3.41μm カラム : センシュー化学社製「パックドカラム30
φ」、30mmφ×300mm 濃度 : 1g/120ml 注入量 : 100ml この場合、カラム内に試量溶液を145℃で導入した
後、2℃/時間の速度で10℃まで徐冷して試料ポリマ
ーを充填剤表面に吸着させた後、カラム温度を上記条件
で昇温することにより、各温度で溶出してきたポリマー
濃度を赤外検出器で測定した。
【0081】(4)アイソタクチックペンタッド分率
(ISO)、α−オレフィン含有量(エチレン含有量(E
CO)) 日本電子社製のJNM−GSX−270(13C−核共鳴
周波数67.8MHz)を用い、次の条件で測定した。
【0082】測定モード: 1H−完全デカップリング パルス幅 : 7.0マイクロ秒(C45度) パルス繰り返し時間: 3秒 積算回数 : 10000回 溶媒 : オルトジクロルベンゼン/重ベンゼンの
混合溶媒(90/10容量%) 試料濃度 : 120mg/2.5ml溶媒 測定温度 : 120℃ この場合、アイソタクチックペンタッド分率は13C−N
MRスペクトルのメチル基領域における分裂ピークの測
定により求めた。また、メチル基領域のピークの帰属は
A.Zambelli et al[Macromol
ecules13, 267(1980)]によった。
【0083】(5)重量平均分子量(Mw)、分子量分
布(Mw/Mn) センシュー科学社製の高温GPC装置SSC−7100
を用い、次の条件で測定した。
【0084】溶媒 :オルトジクロルベンゼン 流速 :1.0ml/分 カラム温度:145℃ 検出機 :高温示差屈折検出器 カラム :昭和電工社製「SHODEX UT」 8
07,806M,806M,802.5の4本を直列に
つないで使用 試料濃度 :0.1重量% 注入量 :0.50ml 実施例1 (固体チタン触媒の調整)固体チタン触媒の調整法は、
特開昭58−83006号公報の実施例1の方法に準じ
て行なった。すなわち、無水塩化マグネシウム9.5g
(100mmol)、デカン100ml及び2−エチル
ヘキシルアルコール47ml(300mmol)を12
5℃で2時間加熱攪拌した後、この溶媒中に無水フタル
酸5.5g(37.5mmol)を添加し、125℃に
てさらに1時間攪拌混合を行ない、均一溶液とした。室
温まで冷却した後、−20℃に保持された四塩化チタン
400ml(3.6mmol)中に1時間にわたって全
量滴下装入した。その後、この混合液の温度を2時間か
けて110℃に昇温し、110℃に達したところでジイ
ソブチルフタレート5.4ml(25mmol)を添加
し、これより2時間、110℃にて攪拌下に保持した。
2時間の反応終了後、熱時濾過にて固体部を採取し、こ
の固体部を2000mlの四塩化チタンにて再懸濁させ
た後、再び110℃で2時間、加熱反応を行なった。反
応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、デカン及び
ヘキサンにて、洗液中に遊離のチタン化合物が検出され
なくなるまで、充分洗浄した。以上の製造方法にて調整
された固体チタン触媒は、ヘプタンスラリーとして保存
した。固体チタン触媒の組成はチタン2.1重量%、塩
素57.0重量%、マグネシウム18.0重量%及びジ
イソブチルフタレート21.9重量%であった。
【0085】(接触処理)窒素置換を施した内容量10
Lのオートクレーブに、精製n−ヘキサン2000m
l、ジエチルアルミニウムクロライド500mmol、
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン25mmol、
および固体チタン触媒をTi原子換算で50mmol装
入した後、温度を30℃に保持して30分間攪拌を行っ
た。得られたスラリーの固体部分を精製n−ヘキサンで
4回洗浄し、接触処理を施した固体チタン化合物を得
た。
【0086】(予備重合)窒素置換を施した10L重合
器中に精製n−ヘキサン2000ml、トリエチルアル
ミニウム500mmol、シクロヘキシルメチルジメト
キシシラン25mmol、および接触処理の施された固
体チタン化合物成分をチタン原子換算で50mmol装
入した後、プロピレンを固体チタン触媒成分1gに対し
2gとなるように1時間連続的に重合器に導入した。
尚、この間の温度は15℃に保持した。1時間後に反応
を停止し、反応器内を窒素で充分に置換した。得られた
スラリーの固体部分を精製n−ヘキサンで5回洗浄し、
予備重合触媒(チタン含有ポリプロピレン)を得た。分
析の結果、固体チタン触媒1gに対し1.7gのプロピ
レンが重合されていた。
【0087】(本重合)窒素置換を施した内容量200
0Lの重合器に、プロピレン500kgを装入し、トリ
エチルアルミニウム1752mmol、シクロヘキシル
メチルジメトキシシラン17.5mmol、テトラエト
キシシラン350mmol、さらに水素10Lを装入し
た後、重合器の内温を65℃に昇温した。上記予備重合
で得られた予備重合触媒をチタン原子で4.38mmo
l装入し、続いて重合器の内温を70℃まで昇温し、2
時間のプロピレン重合を行なった。重合終了後、未反応
のプロピレンをパージし、得られた白色顆粒状の重合体
は、70℃で1時間の減圧乾燥を行なった。
【0088】得られたポリプロピレン樹脂のメルトフロ
ーレイト(MFR)、室温p−キシレン可溶分量(p-X
y.sol.)、室温p−キシレン可溶分量とTREFによる
20℃以下の溶出成分量(ΔXy-20C)、TREFによる
20℃以下の溶出成分量(X20C)、20〜70℃の範
囲の溶出成分量(Y20-70)、ピーク温度(Tp)、9
0重量%溶出時と20重量%溶出時とにおける溶出温度
の差(σ)、アイソタクチックペンタッド分率
(ISO)、α−オレフィン含有量、関係式:{6×(1
−ISO)+ECO}の値、重量平均分子量(Mw)、分子
量分布(Mw/Mn)を表1に示した。また、図1に溶
出温度(℃)と溶出量(重量%)との関係を示す溶出曲
線を、図2に溶出温度(℃)と積算溶出量(重量%)と
の関係を示す溶出曲線を示した。
【0089】(造粒)上記(プロピレンの本重合)で得
たポリプロピレン樹脂パウダー100重量部に、酸化防
止剤として2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン
を0.1重量部、塩素補足剤としてステアリン酸カルシ
ウムを0.1重量部添加し、ヘンシェルミキサーで5分
間混合した後、スクリュー径65mmφの押出造粒機を
用いて230℃で押し出し、ペレットを造粒し原料ペレ
ットを得た。
【0090】(二軸延伸フィルムの製膜)得られたポリ
プロピレン樹脂ペレットを用いて以下の方法で二軸延伸
フィルムの製膜実験を行なった。ポリプロピレン樹脂ペ
レットを、スクリュー径90mmφのTダイシート押出
機を用い、280℃で押し出し、30℃の冷却ロールで
厚さ1mmのシートを成形した。次いで、この原反シー
トをテンター方式の逐次二軸延伸装置を用いて、縦方向
(MD)に4.6倍ロール間延伸し、引き続いて165
℃のテンター内で横方向(TD)に機械倍率で10倍延
伸した後、8%緩和させて熱処理を行い、厚さ20μm
の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを50m/分の速度
で製膜した。
【0091】製膜の際、縦延伸のロール加熱温度を変化
させ、フィルムの白化、厚薄ムラ、フィルム破れ等が起
こらずに10分間の安定製膜が可能な温度範囲(下限温
度〜上限温度)、また、該温度範囲の中心温度における
縦延伸及び横延伸にかかる機械負荷(電流値、単位アン
ペア)により製膜性(延伸性)を評価した。また、延伸
ムラの厚薄精度への影響は、テンターと巻取り機の間に
設置した横河電機社製の赤外線厚み測定機WEB GA
GEを用いて測定したフィルムの厚みパターンにより下
記の基準で評価した。
【0092】 ◎: ±0.5μm未満 ○: ±0.5μm以上1.0μ未満 △: ±1.0μm以上1.5μ未満 ×: ±1.5μm以上 さらに、5時間、連続運転を行ない、テンターでのフィ
ルムの延伸破れの回数を評価した。また、成形されたフ
ィルムの片面には常法に従い30W 分/m2のコロナ放
電処理を施し、巻取った。得られた延伸フィルムは40
℃で3日間エージングした後、JIS C 2318に
準じて熱収縮率(耐熱性)の測定を行なった。製膜可能
な温度範囲、縦および横延伸における機械負荷、厚薄精
度、5時間連続運転の際のフィルムの延伸破れの回数、
延伸フィルムのMDおよびTDの熱収縮率の結果を表2
に示した。
【0093】実施例2,3 本重合において、有機ケイ素化合物としてシクロヘキシ
ルメチルジメトキシシラン35mmolとテトラエトキ
シシラン350mmolを用いた(実施例2)こと、ま
た、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン17.5m
molとテトラエトキシシラン525mmolを用いた
(実施例3)こと以外は実施例1と同様に行った。その
結果を表1、表2に示した。
【0094】実施例4 本重合において、エチレンとプロピレンのランダム共重
合を行ったこと以外は実施例1と同様に行った。得られ
たポリプロピレン樹脂のエチレン含有量は0.28モル
%であった。結果を表1、表2に示した。
【0095】実施例5 本重合において、エチレン含有量0.52モル%のエチ
レンとプロピレンのランダムコポリマーを重合したこと
以外は実施例4と同様に行った。その結果を表1、表2
に示した。
【0096】比較例1 本重合において、有機ケイ素化合物としてシクロヘキシ
ルメチルジメトキシシラン350mmolを単独で用い
たこと以外は実施例4と同様に行った。その結果を表
1、表2に示した。
【0097】比較例2 本重合において、有機ケイ素化合物としてテトラエトキ
シシラン350mmolを単独で用いたこと以外は実施
例4と同様に行った。その結果を表1、表2に示した。
【0098】実施例6,7 本重合において、有機ケイ素化合物としてシクロヘキシ
ルメチルジメトキシシラン8.2mmolとエチルトリ
エトキシシラン164mmolを用いた(実施例6)こ
と、また、有機ケイ素化合物としてジイソプロピルジメ
トキシシラン16.4mmolとペンチルトリエトキシ
シラン164mmolを用いた(実施例7)こと以外は
実施例4と同様に行った。その結果を表1、表2に示し
た。
【0099】実施例8〜10 本重合において、有機ケイ素化合物としてシクロヘキシ
ルメチルジメトキシシラン44mmolとエチルトリエ
トキシシラン656mmolを用いた(実施例8)こ
と、また、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン13
mmolとエチルトリエトキシシラン325mmolを
用いた(実施例9)こと、また、シクロヘキシルメチル
ジメトキシシラン66mmolとエチルトリエトキシシ
ラン330mmolを用いた(実施例10)こと以外は
実施例1と同様に行った。その結果を表1、表2に示し
た。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】実施例11,12 接触処理において、ハロゲン化有機アルミニウム化合物
としてエチルアルミニウムジクロライド500mmol
を用いた(実施例11)こと、有機ケイ素化合物として
ジシクロペンチルジメトキシシラン25mmolを用い
た(実施例12)こと以外は実施例4と同様に行った。
その結果を表3、表4に示した。
【0103】実施例13 接触処理において、有機ケイ素化合物としてジシクロペ
ンチルジメトキシシラン10mmolを用い、さらに、
本重合において、有機ケイ素化合物としてシクロヘキシ
ルメチルジメトキシシラン65.6mmolとエチルト
リエトキシシラン328mmolを用いたこと以外は実
施例4と同様に行った。その結果を表3、表4に示し
た。
【0104】実施例14 本重合において、ブテン−1含有量0.33モル%のブ
テン−1とプロピレンのランダムコポリマーを重合した
こと以外は実施例4と同様に行った。その結果を表3、
表4に示した。
【0105】実施例15 実施例1で得たプロピレンホモポリマーと、実施例5で
得たエチレン含有量0.52モル%のエチレンとプロピ
レンのランダムコポリマーの重合パウダーをそれぞれ5
0重量%ずつブレンドし、造粒して原料ペレットを得、
以下、実施例1と同様に行った。結果を表3、表4に示
した。
【0106】比較例3 (固体チタン触媒の調整)四塩化チタン不活性溶媒中で
ジエチルアルミニウムクロライドにより還元して得た褐
色三塩化チタンを約等モルのジイソアミルエーテルで常
温下に処理した後、該褐色三塩化チタンを四塩化チタン
の65℃ヘキサン溶媒で化学処理して三塩化チタンとし
た。
【0107】(予備重合)窒素置換を施した10L重合
器中に、n−ヘプタン3.5lを装入し、上記で得た三
塩化チタン50gおよび三塩化チタンに対して1倍モル
のジエチルアルミニウムクロライドを添加した。次いで
50℃に昇温し、続いて重合速度が10g−重合体/g
−触媒/時間になるようプロピレンガスを一定速度で1
時間供給した。重合停止は未反応プロピレンをパージす
ることにより実施した。得られた予備重合触媒(チタン
含有ポリプロピレン)スラリーを本重合の触媒とした。
【0108】(本重合)プロピレンガスで置換された内
容量2000Lの重合器に、液体プロピレン1000l
および水素1000Nlを仕込み、ジエチルアルミニウ
ムクロライドを三塩化チタンに対し10倍モル仕込んだ
後、65℃に昇温し、予備重合触媒スラリーを35g−
三塩化チタン相当量添加することにより本重合を開始し
た。本重合を3時間行った後、未反応プロピレンをパー
ジし重合を停止した。生成した重合体とメタノール50
lを65℃下で1時間攪拌混合し触媒を分解した。つい
で濾別乾燥して重合パウダーを得た。
【0109】上記で得た重合パウダーを用いたこと以外
は実施例1と同様に行った。その結果を表3、表4に示
した。
【0110】比較例4 比較例3で得た重合パウダーを500lのn−ヘプタン
で60℃、30分間洗浄し、十分に乾燥して用いたこと
以外は比較例3と同様に行った。その結果を表3、表4
に示した。
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】実施例16、17 実施例4で得たポリプロピレン樹脂90重量%と、低密
度ポリエチレン(メルトフローレイト1.0g/10分
(190℃)、密度0.920g/cm3 )10重量%
とをブレンドして用いた(実施例16)こと、また、実
施例2で得たポリプロピレン樹脂90重量%と、高密度
ポリエチレン(メルトフローレイト4.0g/10分
(190℃)、密度0.963g/cm3 )10重量%
とをブレンドして用いた(実施例17)こと以外は実施
例1と同様に造粒、製膜を行った。その結果を表5に示
した。
【0114】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1のポリプロピレン樹脂の溶出
温度(℃)と溶出量(重量%)との関係を示す溶出曲線
である。
【図2】図2は、実施例1のポリプロピレン樹脂の溶出
温度(℃)と積算溶出量(重量%)との関係を示す溶出
曲線である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青木 明良 山口県徳山市御影町1番1号 株式会社ト クヤマ内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリプロピレンを主な構成成分とし、メル
    トフローレイトが0.1〜10g/10分、室温p−キ
    シレン可溶分量が3〜6重量%、該室温p−キシレン可
    溶分量と温度上昇溶離分別法による20℃以下の溶出成
    分量の差が0.5〜3重量%であることを特徴とするポ
    リプロピレン樹脂。
  2. 【請求項2】温度上昇溶離分別法による20〜70℃の
    範囲の溶出成分量が2〜6重量%であることを特徴とす
    る請求項1記載のポリプロピレン樹脂。
  3. 【請求項3】請求項1または2のいずれか1項に記載の
    ポリプロピレン樹脂を延伸加工してなることを特徴とす
    るポリプロピレン延伸フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000248080A (ja) * 1998-12-16 2000-09-12 Tokuyama Corp 二軸延伸ポリオレフィンフィルムおよびその製造方法
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US6489426B1 (en) 1999-09-10 2002-12-03 Chisso Corporation Propylene base polymer and a polypropylene film using the same
US9548160B2 (en) 2005-11-17 2017-01-17 Oji Holdings Corporation Raw sheet for capacitor film and capacitor film
WO2022201741A1 (ja) * 2021-03-25 2022-09-29 住友化学株式会社 オレフィン系重合体組成物、および、フィルム

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