JPH0931534A - 加工性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
加工性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法Info
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- JPH0931534A JPH0931534A JP18723795A JP18723795A JPH0931534A JP H0931534 A JPH0931534 A JP H0931534A JP 18723795 A JP18723795 A JP 18723795A JP 18723795 A JP18723795 A JP 18723795A JP H0931534 A JPH0931534 A JP H0931534A
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Abstract
車のホイールディスクに代表されるような部材に好適
な、プレス加工性にすぐれ、耐久強度が大きく、すぐれ
た表面性状を有する、引張強さ 540N/mm2 以上の高強
度熱延鋼板の製造方法の提供。 【構成】重量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.30%以
下、Mn:1.00〜2.00%、P:0.010 〜 0.030%、T
i:0.05〜0.15%、Nb:0.01〜0.06%、N:0.0040%
以下、さらにCr: 0.6%以下、V:0.06%以下、C
a:0.01%以下、Zr:0.10%以下および希土類元素:
0.10%以下で、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼
を、 780〜 950℃で熱間圧延を完了した後、30℃/s以
上の冷却速度で 600〜700 ℃の範囲の温度まで加速冷却
し、その温度から 2〜10s間空冷した後、さらに50℃/
s以上の冷却速度で 400℃以下まで加速冷却し巻取る。
Description
産業機械などの高強度部材用鋼板であって、特に自動車
のホイールディスクに代表されるような、優れた成形性
と構造部材としての耐久強度を有し、さらに外装部材と
しての優れた表面性状を持つ引張強さ 540N/mm2 以上
の高強度熱延鋼板の製造方法に関する。
熱延鋼板は、比較的安価な構造材料として、自動車を始
めとする各種の産業機械に広く使用されている。そして
経済性の観点からプレス加工によって成形される部材が
多く、優れた加工性が要求される。
の燃費向上の規制強化が叫ばれており、リーンバーンエ
ンジンに代表される高燃費型のエンジンの開発が活発に
行われるとともに、部材の高強度・薄肉化による車体重
量の軽減が検討されている。
板には、 590N/mm2 以下の引張強さの高張力鋼板が一
般に使用されているが、このホイールディスクに代表さ
れるような自動車の構造部材は、高い静的強度(引張強
さ)のみならず、優れた耐久強度(疲労強度)が要求さ
れ、加えて、延性や伸びフランジ性(穴拡げ性)などの
プレス成形性も良好である必要がある。
常の平滑試験片による疲労強度は向上するものの、切り
欠き試験片による疲労強度は引張強さが 540N/mm2 以
上でほぼ飽和すると言われている。さらに、加工性は通
常引張強さの増加に伴い低下してくるので、高い静的強
度あるいは高い耐久強度と、優れた加工性とを両立させ
るのは容易なことではない。
して、例えば特公昭61-15128号公報あるいは特公昭61-1
1291号公報に記載されているような Dual-Phase 組織鋼
が知られている。この Dual-Phase 鋼は、フェライト相
とマルテンサイト相の二相混合組織であり、降伏比(降
伏強さと引張強さの比)が低く、均一伸びと破断伸びが
高く、優れた強度延性バランスを示すことを特徴として
いる。しかし、加工性向上に好ましいポリゴナルフェラ
イト(等軸晶のフェライト相)を安定して生成させるた
めに、多量のSiやCrを含有させる必要がある。
立させた鋼材として、例えば特開平3ー264646号公報に記
載されているような Tri-Phase組織鋼が知られている。
このTri-Phase 鋼は、フェライト相、ベイナイト相およ
びマルテンサイト相の三相組織であり、フェライト+ベ
イナイト二相組織鋼の持つ優れた伸びフランジ性と、フ
ェライト+マルテンサイト二相組織鋼の持つ優れた延性
をバランスさせたことを特徴としているが、加工性の向
上に必要なポリゴナルフェライトを安定して生成させる
ために、やはり多量のSiを含有させる必要がある。
熱時にスケール中にFe2 SiO4が生成し、これが圧
延中のデスケーリング性を劣化させて、酸洗後の鋼板表
面を荒したりスケール疵が残ったりするため、ホイール
用など外に現われる部材に適用することは好ましくなか
った。また、鋼板表面が荒れていると有害なヘゲ疵等の
検出が容易でなく、表面検査時の通板速度を落とさねば
ならず、生産性を低下させるという問題もある。
に生成する酸化物は、酸洗性を劣化させて酸洗後も鋼板
表層部にスケールが残りやすく、その上化成処理性を低
下させて、塗装後の耐食性を低下させると言う懸念があ
る。
よりフェライト、ベイナイト、マルテンサイト各相の体
積率が変動し、それによって特性が大きく影響されるた
め、鋼板の長手方向や幅方向の特性のバラツキを生じや
すいという問題点もある。
た延性、伸びフランジ性、疲労強度、および表面性状を
有する、 540N/mm2 以上の高い引張強さの加工用高強
度熱延鋼板を安定して製造できる方法を確立することに
ある。
的を達成すべく低Si鋼にて合金元素と金属組織、ない
しは熱延、冷却、巻取の条件が機械的性質に及ぼす影響
について鋭意検討を重ね、次に示すような知見を得た。
化成処理性の改善が可能である。ただし、Si低減によ
る強度低下は、他の固溶強化型元素を添加したり、熱間
圧延条件や冷却条件を制御し硬質なベイナイトやマルテ
ンサイト量を増して補うことができるが、加工性はやや
劣化する。
熱間圧延時オーステナイトに積極的に加工歪みを導入
し、その後の冷却過程でのフェライト相の生成を促進さ
せ、かつ、NbとTiの適量を複合添加してフェライト
相を強化することで、加工性の向上と共に強度を向上さ
せることができる。さらに、低N化により粗大なTiN
析出物の生成を抑制して延性を大幅に向上させることが
可能である。
Mn− 0.002%Nであって、Nbを添加しない鋼と、N
bを0.02%含有させた鋼とで、それぞれTi含有量を種
々変更した鋼片(スラブ)を溶製した。これらのスラブ
を1220℃に加熱して熱間圧延をおこない、 860℃にて仕
上圧延した後、40℃/sで 670℃まで加速冷却し、 5s
間空冷後、70℃/sで 100℃まで加速冷却し、引き続い
て巻取後の冷却状態を想定して 100℃から室温までを20
℃/hで炉冷することによって 3.2mm厚の熱延鋼板を製
造した。そして、この鋼板から JIS5号引張試験片を採
取し、引張特性を調査した。
影響の調査結果を図1に示す。この図から明らかなよう
に、低NのNb添加鋼に適量のTiを含有させ、仕上げ
圧延後の冷却条件を制御することによって、延性の低下
を小さくして強度を向上させることができ、 540N/mm
2 以上の引張強さと、30%以上の高い破断伸びを両立さ
せることが可能となる。これは、加工フェライトの生成
が抑制されて、加工性を向上させるポリゴナルフェライ
トの生成が促進され、マルテンサイトの生成を適量に抑
制することができたためと考えられる。
変えた鋼により上記条件で圧延した鋼板から、疲労試験
片を採取し、両振り平面曲げ疲労試験を行い、107 回の
繰り返し曲げに耐え得る応力を疲労限度、または疲労強
度とした。
(疲労強度と引張強さの比)はほとんど変化せず、強度
上昇に比例して疲労強度が向上する。ところが、図1と
図2の対比からからわかるように、Ti含有量が増すと
強度上昇とともに疲労限度比が向上しており、疲労強度
が大きく改善されていることがわかる。これは軟質なフ
ェライト相がTiCにより強化されるためと考えられ
る。
−0.01%Si−1.65%Mn−0.10%Ti−0.02%Nb−
0.002%Nの組成を基本とし、C含有量を0.03〜0.13%
の範囲で変えたスラブを溶製した。これらのスラブを12
50℃に加熱してから熱間圧延をおこない、 840℃で仕上
圧延した後、 680℃まで加速冷却してから 3s間空冷
し、さらに 200℃まで加速冷却した後、巻取相当の緩冷
処理を施して、 3.2mm厚の熱延鋼板を製造した。それら
の鋼板から JIS5号引張試験片を採取して引張特性を調
査するとともに、 100mm× 100mmの正方形の試験片を切
り出して10mmφのポンチ穴をクリアランス15%として打
ち抜いた後、60゜の円錐ポンチで穴拡げ試験をおこな
い、限界穴拡げ率を求めた。
界穴拡げ率の変化を図3に示すが、炭素含有量が0.08%
を超えると、穴拡げ性が大きく低下することがわかる。
その要旨は次の通りである。
%以下、Mn:1.00〜2.00%、P:0.010 〜 0.030%、
Ti:0.05〜0.15%、Nb:0.01〜0.06%、N:0.0040
%以下、さらにCr: 0.6%以下、V:0.06%以下、C
a:0.01%以下、Zr:0.10%以下および希土類元素:
0.10%以下で、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼
を、 780〜 950℃で熱間圧延を完了した後、30℃/s以
上の冷却速度で 600〜700 ℃の範囲の温度まで加速冷却
し、その温度から 2〜10s間空冷した後、さらに50℃/
s以上の冷却速度で 400℃以下まで加速冷却し、巻取る
ことを特徴とする加工性、疲労特性および表面性状に優
れた 540N/mm2 以上の引張強さを有する高強度熱延鋼
板の製造方法。
て詳述する。
強度鋼を製造するためには特に重要な元素である。すな
わち、0.03%未満ではマルテンサイトなどの硬質な第二
相の量を十分に確保できず、 540N/mm2 以上の引張強
さを有する高強度鋼板を容易に製造することができな
い。一方、0.08%を超えて含有させると第二相の量が増
大し過ぎて、穴拡げ性の劣化を招く。したがって、C含
有量を0.03〜0.08%と定めた。なお、とくに加工性を重
視する場合には、C含有量の上限を0.06%とすることが
望ましい。
でなく、ポリゴナルフェライトの生成を促進し延性を向
上させることが可能なので、高い強度とすぐれた加工性
を兼備する熱延鋼板を製造するには好ましい元素であ
る。ことに降伏比の低い二相混合組織を得るためには活
用したい元素である。
よる表面疵の発生や、化成処理性に悪影響をおよぼすこ
となど表面品質を劣化させる点からは含有しない方がよ
い。
視し、大きな影響をおよぼさない限界として多くても
0.3%までとする。より一層優れた性状の表面を安定し
て得るには、0.05%未満にすることが望ましい。
る作用を有する。しかし、 1.0%未満の含有量では所望
の効果が得られず、一方、 2.0%を超えて含有させる
と、マルテンサイト相が増加しすぎ、穴拡げ性を劣化さ
せる。そこでその含有量範囲を 1.0〜 2.0%に定めた。
度を高める作用を有する。また、Siの存在下におい
て、スラブ加熱時にFeOと地鉄との界面に生成するF
e2 SiO4 に固溶してFe2 (Si,P)O4 を形成
し、デスケーリング性を向上させる効果がある。その含
有量が0.01%未満ではこれらの効果が得られず、一方、
0.03%を超えて含有させると、連続鋳造スラブの中心偏
析に基づく溶接性や加工性の低下を来すので、その含有
量を 0.010〜 0.030%に限定する。
P含有量を 0.015%以上にすると、より安定して表面性
状の良好な鋼板を得ることができる。
つである。TiはTiCの析出によってフェライト相を
強化する作用があり、比較的安価な強化元素の一つとし
て一般に使用される。しかしながら、析出強化は大幅な
延性の低下を伴うため、高強度鋼において良好なプレス
成形性が必要な場合には、その含有量を制限する必要が
あった。ところが、とくにNを低下させた鋼において
は、Tiを微量のNbと複合添加すると、延性の大幅な
低下を伴うことなく強度の向上が可能である。
工性に有害な粗大なTiN析出物の生成が防止される。
次に熱延仕上圧延時に、微量のNb添加によってオース
テナイト域での再結晶の進行が遅延され、圧延スタンド
間で再結晶が終了する前に次のスタンドで加工を受け、
オーステナイトの加工歪みの累積量が増加するようにな
る。このため、熱間圧延時のオーステナイト域での析出
が促進されてTiCは均一微細になり、その状態でオー
ステナイトがフェライトに変態することによって、Ti
C析出物は生じたフェライト地との整合性を失ってく
る。このようにして、延性を著しく劣化させるTiCの
整合析出物の生成が防止され、強度は増加するが延性の
劣化が低減される結果になると推定される。
と、上記の歪みの累積量を増加させることにより、熱間
圧延時のTiC析出物生成量を増加させると、熱延後の
加速冷却条件や巻取温度による、TiCの析出物分布の
変動が小さくなる。以上のような理由により、軟質なフ
ェライト相が微細に分散したTiCにより強化され、通
常の疲労強度や切り欠き疲労強度が安定して向上するの
である。
上記作用による所望の効果が得られず、一方、0.15%を
超えて含有させると上記作用が飽和するのみならず、粗
大なTiNの析出を促進し加工性の低下を招くので、そ
の含有量を0.06〜0.15%と定めた。なお、より優れた加
工性を安定して得るための望ましい含有量は、0.08〜0.
13%である。
つである。NbはNb(C,N)の析出によってフェラ
イト相を強化する作用を有するために、比較的安価な強
化元素として一般に使用されている。しかし、析出強化
にともない延性の低下が避けられないことと、固溶Nb
はポリゴナルフェライトの生成を抑制して鋼板の加工性
を低下させ易いことから、プレス成形性を要求される場
合にはその含有量を制限する必要がある。
イトの未再結晶圧延温度域を拡大して歪みの累積量を増
加させ、これが駆動力となって、フェライト相を安定的
に生成させることが可能になる。したがって、本発明で
は、微量のNbを含有させることとした。
十分得られず、一方、0.06%を超えて含有させると、逆
にポリゴナルフェライトの生成を抑制し、加工性を低下
させる。そこで、Nb含有量の範囲を0.01%〜0.06%と
定めた。なお、加工性を安定して向上させるのに望まし
い含有量範囲は、0.015 %〜0.03%である。
物の1つであり、通常は鋼中のAlやTiなどと結合し
て窒化物を形成する。しかしTiを含む鋼ではN含有量
が高い場合、溶鋼が凝固する過程で粗大なTiNが生成
しやすく、これが割れ発生の起点になって鋼板の加工性
を低下させる恐れがある。また、Nbの炭窒化物の析出
温度が上昇して、粗圧延工程において析出し粗大化して
しまい、仕上圧延工程にてNbが有効に作用しなくなっ
てしまう。したがって、Nの含有量は少なければ少ない
ほどよいが、その影響が顕著でない限界として、含有量
を0.0040%以下と定めた。望ましいのは0.0020%以下で
ある。
の変態強化を通じて強度の向上に有効なので、必要に応
じて含有させる。含有させる場合には、0.02%以上で所
望の効果を得ることができる。一方、 0.6%を超えて含
有させると酸洗性や化成処理性の低下が顕著になるた
め、その含有量は 0.6%以下とする。
る場合には含有させない方がよく、多くてもその含有量
を0.05%以下に抑制することが望ましい。
強化を通じて強度向上に有効な元素であり、必要に応じ
て含有させる。含有させる場合には、 0.001%以上の含
有量で所望の効果を得ることができる。一方、0.06%を
超えて含有させても上記の効果が飽和し、経済性を損な
う。そこで、その含有量を0.06%以下と定めた。
下および希土類元素:0.10%以下 Ca、Zrおよび希土類元素の添加は、いずれも介在物
のMnSの性質を変化させ、熱延時に展伸し難くさせる
効果があり、とくに圧延の幅方向に引張り変形を受ける
ような加工の割れ防止に有効である。
は添加の必要はない。しかし、その効果を期待して添加
する場合、少なければ効果が発揮されないので、それぞ
れCaでは0.0002%以上、Zrでは0.01%以上、希土類
元素では 0.002%以上含有させるのが望ましい。ただ
し、Caは0.01%、Zrは0.10%、希土類元素は0.10%
をそれぞれ超えて含有させると、鋼中の介在物が多くな
りすぎて加工性が劣化する。
%以下、Zr:0.10%以下、希土類元素:0.10%以下と
定めた。なお、S含有量を 0.001%未満に低減できた場
合はMnSの形態変化による加工性の劣化はないので、
S含有量が 0.001%を超える場合に添加すると効果的で
ある。
剤として添加されるが、本発明の製造方法による場合、
鋼板の性質にはほとんど影響をおよぼさず、とくにその
含有量は規制しない。ただし、多量に添加すると加工性
を低下させるので、0.10%以下の含有量とするのが望ま
しい。なお、脱酸作用を得るためには0.03%以下で十分
である。
反応してMnS系の介在物を形成しプレス加工性を低下
させるので、少なければ少ないほどよい。望ましい含有
量の上限は0.02%であるが、好ましくは 0.005%以下
で、特にCa処理などによるMnSの形態制御を行わな
い場合には、 0.001%以下に低減することがより好まし
い。
避不純物」としては、O、Cu、Moなどが挙げられる
が、これら不純物元素の含有は少なければ少ないほど望
ましい。
炉、などでも溶製できるが、とくにN含有量を低く保つ
には転炉による溶製が好ましい。また、熱延のスラブの
製造についても、造塊−分塊圧延、あるいは連続鋳造の
いずれの手段によってもかまわない。
を圧延して仕上温度を780 〜 950℃にて圧延を完了した
後、 600〜 700℃の範囲の温度まで30℃/s以上の冷却
速度で加速冷却し、その温度から 2〜10s間空冷後、50
℃/s以上の冷却速度で 400℃以下まで加速冷却して巻
取ることからなる。以下各工程の条件について説明す
る。
スラブを用いてもよいし、直送圧延スラブをまたは一旦
冷却されたスラブを再加熱して用いてもよい。
bの炭窒化物やTiCなどを完全に再固溶させるために
再加熱温度は1150℃以上とするのが好ましい。加熱温度
が1150℃未満の加熱では、一旦析出したNbの炭窒
化物の再溶解が不十分となり、仕上圧延時に作用するN
b量が不足してオーステナイトの加工硬化が促進され
ず、オーステナイト域でのTiCの析出が不十分にな
る。また、仕上圧延後の加速冷却時に生成するフェライ
ト量が減少し、延性の低下を招く。
ことによってオーステナイト粒を微細化するとともにオ
ーステナイトを加工硬化させ、その後の冷却過程でのポ
リゴナルフェライトの生成を促進させることができる。
この場合、仕上圧延温度が 780℃未満になると、熱間圧
延中にフェライトが生成し加工フェライトとなるため、
熱延鋼板の加工性が低下してしまう。一方、仕上温度が
950℃を超えると、オーステナイトの加工硬化が不十分
となり、その後の冷却過程でポリゴナルフェライトが十
分に生成せず、加工性の低下を招く。したがって熱間圧
延の仕上温度を 780〜 950℃とする。より望ましいのは
780〜 860℃で仕上圧延を行うことで、ポリゴナルフェ
ライトをさらに安定して生成させ得る。
内に入る温度まで加速冷却しその温度から 2〜10s間空
冷することにより、さらに多くの量のポリゴナルフェラ
イトを安定して生成させることができる。これにより、
加工性、とくにに延性にすぐれた高強度熱延鋼板が得ら
れる。
空冷時間が 2s未満であるとポリゴナルフェライトの生
成が不十分であり、空冷開始温度が 700℃を上回るか、
あるいは所定温度範囲内でも空冷時間が10sを超える
と、パーライトが生成して鋼板の強度と延性が低下す
る。したがって冷却過程途中での空冷条件を 600〜 700
℃の温度域で 2〜10s間の空冷とした。空冷時の冷却速
度は、鋼板の板厚や通板速度によって変化するが、 2〜
4mm 厚の場合 6〜12℃/s程度である。
冷却を、30℃/s以上の冷却速度とするのは、一つには
フェライトを微細に生成させるためであり、さらには 2
〜10秒の空冷時間の確保を容易にするためである。
とするのは、50℃/s未満の冷却速度ではベイナイトが
生成し、降伏比が増大して、延性が低下するためであ
り、ベイナイトの生成がなければそれ以上に冷却速度を
大きくする必要はない。
延条件と同様、 400℃を超えると巻取後にベイナイトが
生成して降伏比が上昇し、伸びが低下する。そこで、巻
取温度を 400℃以下とした。巻取り温度は 400℃を下回
るなら過剰に冷却する必要はない。
を、表2に示す条件で熱間圧延と圧延後冷却処理を行な
い、板厚 3.2mmの熱延鋼板とした。
後の鋼板表面を目視観察し、スケール残りが全くないも
のを◎(極めて良好)、ぼぼ完全にスケールが除去され
ているものを○(ほぼ良好)、部分的にスケール残りが
あるものを△、スケール疵があるものを×とした。この
結果も合せて表2に示す。
JIS5号引張試験片を採取し、引張試験をおこなった。
また、100mm 幅×100mm 長さの鋼片を採取し、10mmφの
穴を打ち抜いた後、頂角60゜の円錐ポンチで穴拡げ試験
をおこなった。疲労試験は、両振り平面曲げと、切欠き
試験片による片振り引張りとをおこなった。図4に示す
ように平面曲げは幅20mmの1号試験片をもちい、切欠き
試験片は、12mmφの穴をクリアランス10%で打ち抜いた
試験片をもちいて、107 回の繰り返しに耐える応力、す
なわち疲労限度を求め、これを疲労強度とした。これら
の結果を合せて表3に示す。なお表には疲労限度比(疲
労強度/引張り強度)も示してある。
明で定める化学組成範囲に入る鋼では良好である(試験
番号 1〜21)。さらに、これらの鋼により、本発明で定
める条件で圧延冷却して製造された熱延鋼板(試験番号
1〜15)は、表3に示すように、いずれも 540N/mm2
以上の引張強さを満足すると同時に、同じ強度の比較例
の鋼に対し、より大きい伸び、より高い穴拡げ率、およ
びより高い疲労強度が得られる。
るが、仕上温度が規定値の下限を外れた試験番号16で
は、強度、延性、穴拡げ性および疲労限度比が改善され
ていない。これは加工フェライトとパーライトが生成し
たためである。空冷時間が規定値の上限を外れた試験番
号19と、空冷後の冷却速度が規定値の下限を外れた試験
番号20では、パーライトが生成して強度、穴拡げ性が向
上しないとともに疲労限度比もよくない。一方、空冷温
度が規定値の上限を外れた試験番号17および下限を外れ
た試験番号21では、ポリゴナルフェライトの生成量が不
十分で、延性と穴拡げ性が改善されず、切欠き疲労の疲
労限度比も向上しない。さらに、巻取温度が規定値の上
限を外れた試験番号18では、マルテンサイトが生成せ
ず、強度と延性が不足するとともに切欠き疲労の疲労限
度比もよくない。
試験番号22、31では、伸びと穴拡げ性が改善されない。
Si量が規定値の上限を外れた試験番号23、Cr量が規
定値の上限を超えた試験番号27、Si量とCr量が規定
値の上限を外れた試験番号28およびP量が規定値の下限
を外れた試験番号29では、表面性状が劣っている。さら
に、Ti量が規定値の下限を外れた試験番号24、30で
は、引張強さないしは疲労強度が不十分であり、疲労限
度比が低い。これは析出強化が不十分なためと考えられ
る。Mn量が規定値の下限を外れた試験番号26では、引
張強さと疲労強度が低く、切欠き疲労の疲労限度比が低
いが、これはマルテンサイトが生成しないためである。
Nb量が規定値の下限を外れた試験番号25、30、31、お
よびN量が規定値の上限を外れた試験番号27、29では、
伸びが劣っている。
にて製造された鋼板は、範囲外の製造条件の鋼板に比較
して、すぐれた性能を有していることがわかる。
ば、 540N/mm2 以上の引張強さで、伸びや穴拡げ性、
疲労強度にすぐれ、かつ表面性状の良好な熱延鋼板を安
定して量産することが可能になる。この熱延鋼板は自動
車用あるいは産業機械用の、高強度部材、特にホイール
用材料として好適であり、産業上極めて有用な効果がも
たらされる。
量の影響を示した図である。
した図である。
およぼすC含有量の影響を示した図である。
た図である。
Claims (1)
- 【請求項1】重量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.30
%以下、Mn:1.00〜2.00%、P:0.010 〜 0.030%、
Ti:0.05〜0.15%、Nb:0.01〜0.06%、N:0.0040
%以下、さらにCr: 0.6%以下、V:0.06%以下、C
a:0.01%以下、Zr:0.10%以下および希土類元素:
0.10%以下で、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼
を、 780〜 950℃で熱間圧延を完了した後、30℃/s以
上の冷却速度で 600〜700 ℃の範囲内の温度まで加速冷
却し、その温度から 2〜10s間空冷した後さらに50℃/
s以上の冷却速度で 400℃以下まで加速冷却し、巻取る
ことを特徴とする加工性、疲労特性および表面性状に優
れた 540N/mm2 以上の引張強さを有する高強度熱延鋼
板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18723795A JP3235416B2 (ja) | 1995-07-24 | 1995-07-24 | 加工性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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