JPH09298131A - 電解コンデンサ駆動用電解液 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 電解コンデンサの高温特性を改善することが
できる電解コンデンサ駆動用電解液を提供する。 【解決手段】 エチレングリコールを主成分とする溶媒
に高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩、及びホウ酸
またはホウ酸アンモニウムを溶解し、部分アセタール化
ポリビニルアルコールまたはポリビニルホルマールを溶
解することを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、電解コンデンサの
駆動用電解液（以下、単に電解液と称す）の改良に関す
るものであり、特に電解コンデンサの高温特性を改善す
ることができる電解液に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、中高圧用アルミ電解コンデンサの
電解液としては主に、エチレングリコールを主成分とす
る溶媒にホウ酸またはホウ酸アンモニウムを溶解した電
解液が用いられている。この電解液はホウ酸とエチレン
グリコールのエステル化反応より、生成した多量の水分
を含有する。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記のエチレングリコ
ール−ホウ酸系電解液が含有する水分によって、陽極箔
の酸化皮膜の水和劣化が起こるため、コンデンサの漏れ
電流が増大し、それによって、高温中で水素ガスの発生
量が増加し、コンデンサの内圧上昇によるケースの膨張
を起こすという問題がある。本発明は上記の欠点を改善
し、高温において電解液の特性を維持し、かつ、電解液
の耐電圧の向上が可能な電解コンデンサ用電解液を提供
するものである。

【０００４】

【課題を解決する手段】本発明は上記の課題を解決する
ために各種検討した結果、見い出されたものである。本
発明者は部分アセタール化ポリビニルアルコールまたは
ポリビニルホルマールがその構造上の特性よりエステル
化反応を抑えることに着目し、その特性を電解液に適用
することにより課題の解決を図った。すなわち、本発明
は、エチレングリコールを主成分とする溶媒に高級二塩
基酸またはそのアンモニウム塩、及びホウ酸またはホウ
酸アンモニウムを溶解し、部分アセタール化ポリビニル
アルコールを０．１〜１．０重量％溶解するか、また
は、ポリビニルホルマールを０．０１〜０．１０重量％
溶解したことを特徴とする電解コンデンサ用電解液であ
る。

【０００５】

【発明の実施の形態】酢酸ビニルモノマーを重合して得
られるポリ酢酸ビニルをケン化、アセタール化すると部
分アセタール化ポリビニルアルコールが得られ、ポリ酢
酸ビニルをケン化、ホルマール化するとポリビニルホル
マールが得られる。部分アセタール化ポリビニルアルコ
ール、及びポリビニルホルマールは耐熱性、耐薬品性に
優れるなど安定な性質を示すため、熱的負荷に対して安
定であり、高温においてコンデンサの特性を維持でき
る。また、１，２−及び１，３−グリコール結合を有す
ることからエステル化反応を低減でき、コンデンサの漏
れ電流の上昇、及び水素ガスの発生を抑制できる。同時
に直鎖の長い構造から耐電圧的にも有利で火花発生電圧
も向上する。電解液中の部分アセタール化ポリビニルア
ルコール、ポリビニルホルマールとも三次元網目構造で
あるため比抵抗の上昇を伴わない。

【０００６】

【実施例】以下、実施例の具体的内容について説明す
る。溶媒には、エチレングリコールを、溶質には７−ビ
ニル−９−ヘキサデセン−１，１６−ジカルボン酸また
はそのアンモニウム塩を用い、添加剤としてはマンニト
ール、オルトリン酸、部分アセタール化ポリビニルアル
コール、ポリビニルホルマール、ｐＨ調整剤としてアン
モニア水を用いた。表１に実施例、従来例の組成および
測定結果を示す。但し、比抵抗は３０℃、火花発生電圧
は８５℃において測定した。従来例に比べ、部分アセタ
ール化ポリビニルアルコールを用いた実施例１〜３及び
部分アセタール化ポリビニルアルコールを用いた実施例
４〜６では、比抵抗は若干上昇するが、火花発生電圧は
３０〜４０Ｖの上昇がみられた。ここで、部分アセター
ル化ポリビニルアルコールが０．１重量％未満の場合、
あるいはポリビニルホルマールが０．０１重量％未満の
場合は、上記の効果がなく、部分アセタール化ポリビニ
ルアルコールが１．０重量％を超える場合、あるいはポ
リビニルホルマールが０．１０重量％を超える場合は溶
解困難となり不適である。

【０００７】

【表１】

【０００８】また、表１に示す従来例及び実施例１〜６
の電解液を用いた定格 ４００Ｖ、１０μＦの電解コン
デンサによる高温負荷試験及び高温無負荷試験を行っ
た。高温負荷試験条件は、温度１０５℃、印加電圧４０
０Ｖ、試験時間２０００ｈとし、高温無負荷試験条件
は、温度１０５℃、試験時間２０００ｈとし、試料数は
それぞれ１０個とした。その結果を表２に示す。

【０００９】

【表２】

【００１０】表２より、初期における静電容量、ｔａｎ
δ、漏れ電流の各値は従来例と実施例１〜６とでは大き
な差はみられない。しかし、２０００時間後の静電容量
変化率は、従来例の負荷試験で−７．０％、無負荷試験
で−８．２％であるのに対し、実施例１〜６で−３．０
％程度に抑えられている。また、２０００時間後のｔａ
ｎδは、従来例の負荷試験で０．０９７、無負荷試験で
０．０８８であるのに対し、実施例１〜６のｔａｎδは
０．０５７〜０．０７０に抑えられている。更に、無負
荷試験２０００時間後の漏れ電流は、従来例７６．０μ
Ａであるのに対し、実施例では３０．５〜４８．９μＡ
と従来例の４０〜６４％に抑えられている。

【００１１】

【発明の効果】上述した通り、部分アセタール化ポリビ
ニルアルコール、あるいはポリビニルホルマールを用い
ることで、耐圧性に優れ、かつ高温下で安定な電解コン
デンサ用電解液が提供でき、高温でのコンデンサ特性の
改善を図ることができる。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エチレングリコールを主成分とする溶媒
   に高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩、及びホウ酸
   またはホウ酸アンモニウムを溶解し、部分アセタール化
   ポリビニルアルコールを０．１〜１．０重量％溶解する
   ことを特徴とする電解コンデンサ駆動用電解液。
2. 【請求項２】 エチレングリコールを主成分とする溶媒
   に高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩、及びホウ酸
   またはホウ酸アンモニウムを溶解し、ポリビニルホルマ
   ールを０．０１〜０．１０重量％溶解することを特徴と
   する電解コンデンサ駆動用電解液。