JPH09296255A - 陰極線管の色選別機構 - Google Patents

陰極線管の色選別機構

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JPH09296255A JP35364596A JP35364596A JPH09296255A JP H09296255 A JPH09296255 A JP H09296255A JP 35364596 A JP35364596 A JP 35364596A JP 35364596 A JP35364596 A JP 35364596A JP H09296255 A JPH09296255 A JP H09296255A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 アパーチャグリル方式の陰極線管の色選別機
構において、クリープ発生と黒化膜剥離を防止する。 【構成】 アパーチャグリル素材として、Cr:0.1
5〜0.20%、Mo:0.08〜3.0%を含有する
極低炭素鋼板を用いた陰極線管の色選別機構。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、陰極線管の色選別機構
に関し、より詳しくは長時間連続使用しても色ズレが生
じ難く、かつ管内絶縁性に優れた陰極線管の色選別機構
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カラー受像管とも呼ばれるカラー
陰極線管の色選別機構には、多数の小孔もしくはスリッ
トを設けた金属板(一般に鋼板)でなるシャドウマスク
またはアパーチャグリルが用いられている。通常、カラ
ー陰極線管を長時間連続使用すると、シャドウマスクは
加速された電子が衝突するために加熱され、熱膨張によ
って歪み、次第に蛍光面に対する電子のミスランディン
グが生じるようになり、画像に色ズレを惹起する事はよ
く知られている。
【0003】この色ズレを防止するために、素材に熱膨
張率の小さい36%Ni−Fe合金(アンバー)を用い
る事も行われているが、素材価格が高く、マスク製造工
程でエッチングが困難であり、またプレス成形性に劣る
等、コストアップを免れないという欠点がある。
【0004】アパーチャグリルはプレス成形されて形を
保つ一般のシャドウマスクと異なり、強固なフレームに
よって一方向に架張支持された多数のスリットを持つ金
属板であり、カラー陰極線管中でこのスリットに電子ビ
ームを選択的に通過させる色選別電極として機能するも
のである。
【0005】しかし完成時点でテレビジョン画面全体の
一辺にほぼ相当するスパンを架張される多数のグリッド
素体(スリットでない部分)において、スピーカその他
の発生源より生ずる振動の影響を避けようとすると、相
当強力な張力で以てこの多数のグリッド素体を要部とす
るアパーチャグリルを架張支持しなければならない事に
なる。更にグリッド素体は後述するように製造工程(黒
化処理)中の張力低下にも耐えなければならない。
【0006】そこで素材の耐熱クリープ性が無視出来な
い要求特性となって来た訳である。
【0007】また一方で、色選別電極表面には、二次電
子の発生、熱輻射の防止のためと、製造工程中の防錆の
目的でその表面に黒化膜(緻密な酸化鉄層)を付与する
が、この黒化膜の密着性がよくないと陰極線管中に剥片
が散乱して、管内の耐電圧低下を生ずる事があり、また
スリットに付着して画像を悪くすることがあるので、素
材面から、前記耐熱クリープ性と同時に黒化膜密着性の
改善が望まれていた。
【0008】なお、従来の色選別機構の製法の一例は次
のとおりである。
【0009】すなわち、先ず、0.001%単位の炭素
を含有する極低炭素鋼熱延鋼帯を、板厚0.02〜0.
30mmに冷間圧延した後、エッチングにより多数のグリ
ッド素体を形成して色選別電極を得る。次にこのアパー
チャグリルを内側に加圧された状態のフレームにシーム
溶接した後、加圧力を除去する。これにより、グリッド
素体にフレームの復元力が加わって張力が生じる。この
後、二次電子の発生、熱輻射、工程中の錆発生等を防止
するため、酸化性雰囲気中で(450〜470℃)×
(10〜20分間)の黒化処理(加熱処理)を施してい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来、製造中に色選別
電極のグリッド素体の張力の低下が生じることがあり、
品質管理上問題となっていた。これは、前述したアパー
チャグリルの黒化処理の際に熱と張力により、グリッド
素体にクリープ現象が発生して伸びるからである。この
ようにクリープ現象が大きくて張力の低下したグリッド
素体は、テレビジョン受像機を完成した後、動作中に音
量を大きくした際グリッド素体自体の振動が大きくなっ
て画面の色ズレの原因となるという問題点を有してい
た。そしてこの問題点は、アパーチャグリルに限らず、
その他の平面状マスク等の色選別電極において、一方向
または二方向に張力を加えて振動を防止するタイプのも
のに同様に認められた。このような問題点を解決するた
め、フレームのターンバックルの加圧力を上げる、アパ
ーチャグリル支持フレームの剛性を上げて頑丈にする、
ターンバックルの加圧点をずらす、スピーカー部と陰極
線管の支持部にそれぞれクッションを設ける等の対策が
考えられたが、いまだ十分な効果は得られなかった。
【0011】次に黒化処理工程で生成される黒化膜(鉄
酸化膜)は、その密着性が劣ると、剥離した黒化膜剥片
が管内で色選別電極のスリットにおける電子ビーム通過
を妨害し画像に悪影響をもたらす。また、剥片が電子銃
に迄飛来し、耐電圧特性をも劣化させる。
【0012】本発明の目的は、上記のクリープ発生と黒
化膜剥離を防止することが出来る陰極線管の色選別機構
を提供する事にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明により、少なくと
も一方向に架張されてなる色選別電極を有する陰極線管
の色選別機構において、前記色選別電極がCr:0.1
5〜0.20%(重量%、以下同じ)、Mo:0.08
〜3.0%を含有する極低炭素鋼板より形成されてなる
ことを特徴とする陰極線管の色選別機構(請求項1)、
少なくとも一方向に架張されてなる色選別電極を有する
陰極線管の色選別機構において、前記色選別電極がC
r:0.2〜2.0%,Mo:0.08〜0.10%を
含有する極低炭素鋼板より形成されてなることを特徴と
する陰極線管の色選別機構(請求項2)および極低炭素
鋼板の成分が、C:0.08%以下、Si:0.10%
以下、Mn:0.10〜0.60%,P:0.10%以
下、S:0.10%以下、N:100ppm以下、So
l.Al:0.10%以下、その他Fe及び不可避的不
純物でなる請求項1もしくは請求項2の内いずれか1項
に記載の色選別機構(請求項3)が提供される。
【0014】以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】本発明者等は色選別電極を構成する鋼板自
体の化学成分を、前記課題に基づいて仔細に見直した結
果、黒化処理時のクリープ発生および黒化膜密着性とC
r,Moの含有量の間に相関があることを見い出した。
即ちクリープの大きい色選別電極はCr,Moの含有量
が低く、Cr:0.15%未満、Mo:0.08%未満
であった。一方、Cr,Moの含有量が多くなる程黒化
処理工程でのクリープは小さくCrが0.15%以上、
Moが0.08%以上であれば、テレビジョン画面上の
色ズレは改善されることを見い出した。しかし、一方C
rが0.20%,Moが3.0%を超えると素材の冷間
圧延の際、圧延による加工硬化の傾向が強くなり、圧延
がやや困難となる。また工程歩留りもやや低下し、経済
性が必ずしも良くなく、板厚が薄い程その傾向が強いと
いう問題点があった。即ち色選別電極は、冷間圧延によ
って0.02〜0.30mm程度に薄くした極低炭素鋼板
にエッチングを施すことによって得られるが、この際、
板形状および板厚均一性が色選別電極の品質に直接影響
する。実際Crが0.20%超であってしかもMoが
0.10%を超えると形状並びに均一な板厚の確保が可
成り困難となる。従ってCrとMoが複合添加された場
合は、Cr≧0.20%旦つMo≧0.10%の領域を
除くこととした。
【0016】一方、経済性の観点より、Cr乃至Mo単
独添加材についても検討したが効果は少なく、同時添加
により相乗効果があるものと考える。次に黒化膜密着性
についてはMoの効果は認められず、Crのみが黒化膜
密着性改善に効果があった。黒化膜密着性改善の為のC
r含有量としては、Crは0.10%以上で効果が認め
られたが、上述のように、クリープ発生防止の観点より
少なくとも0.15%以上が必要であり、従ってCrの
下限を0.15%とした。
【0017】また、極低炭素鋼板の成分はC:0.08
%以下、Si:0.10%以下、Mn:0.10〜0.
60%、P:0.10%以下、S:0.10%以下、
N:100ppm 以下、Sol.Al:0.10%以下、
残部Fe及び不可避的不純物よりなるものである。
【0018】以下に前記Cr,Mo以外の成分について
限定理由を述べる。
【0019】Cは炭化物を形成し、その量が多くなると
色選別電極製造工程でのエッチング性が阻害されるので
その上限を0.08%とした。
【0020】SiはMnO−Sio、MnO−FeO
−SiOなどの珪酸塩系介在物を形成し、その結果エ
ッチング性を阻害するので0.10%以下とする。Mn
は製鋼工程での脱酸作用と熱間脆性防止の観点から0.
10〜0.60%とした。
【0021】Pは、含有量が増すと鋼が硬化し、圧延性
が悪くなるので0.10%以下とした。
【0022】Sは硫化物系介在物を生成し、エッチング
性を阻害するので上限を0.10%とした。
【0023】Alは製鋼工程で脱酸剤として作用し、介
在物を減少させる。しかし、多すぎるとAl系介
在物が増え且つ製造コストが上昇するので、0.10%
以下とした。
【0024】
【作用】グリッド素体1本当り50〜60Kgf/mm
の張力が掛っている色選別電極に通常(450℃〜47
0℃)×(10〜20分間)の条件で黒化処理を施すこ
とにより、グリッド素体にクリープ現象が生じる。
【0025】このクリープ現象は、転位の運動による塑
性変形である転位クリープと鉄原子自体の拡散による塑
性変形である拡散クリープとの複合した結果である。
【0026】鉄の拡散係数は温度に依存するため、通常
の処理温度で拡散クリープを抑制することは困難であ
る。そこで、クリープによるグリッド素体の伸びを小さ
くするためには、転位クリープを出来るだけ小さくする
ことが必要となる。
【0027】この転位クリープを抑制するためには、
(1)溶質原子(N等)によりコットレル雰囲気を形成
して転位を固着する方法、(2)鉄より原子半径の大き
い元素を添加してクリープによる伸びを抑制する方法な
どが考えられる。後者では、溶質原子による歪と転位の
歪が相互に作用して転位の動きが固着されることによ
り、クリープの抑制効果が得られる。本発明は基本的に
は(2)の考えにもとづくもので、Moによる歪と転位
歪の相互作用および含Mo炭化物、含Cr炭化物の折出
硬化がクリープ発生を抑制しているものと考えられる。
【0028】次に、黒化膜密着性は黒化膜厚が厚くなる
と一般に悪くなる。本発明ではCr添加により含Cr鉄
酸化膜(黒化膜)が色選別電極表面に形成され、これが
黒化膜の成長を抑制し、その結果緻密な薄い黒化膜が得
られ、その密着性が向上するものと考えられる。
【0029】
【実施例】図1はカラー陰極線管に使用される色選別機
構の実施例を示す斜視図である。この色選別機構1は、
相対向する1対の支持部材2とこれらの支持部材2を所
定間隔に保つ弾性部材3より成る枠状のフレーム4及び
対向する支持部材2上に架張された色選別電極5(所謂
アパーチャグリル)を有して構成されている。このアパ
ーチャグリル5は、隣り合うグリッド素体6間が電子ビ
ームの通過するスリット7となるように所定のピッチを
もって多数のグリット素体6が形成されて成る。
【0030】本実施例においては、Cr:0.17%、
Mo:0.15%の極低炭素鋼を使用する。この極低炭
素鋼を厚さ0.02〜0.30mmに圧延して鋼板を作製
する。この鋼板の材料杭張力は、80〜95Kgf/mm
である。次にこの極低炭素鋼板にエッチングを施して
多数のグリッド素体6を形成し、アパーチャグリル5を
得る。次に支持部材2が内側に加圧変形された状態のフ
レーム4にこのアパーチャグリル5をシーム溶接した
後、加圧力を除去する。この際のフレーム4に架張され
たグリッド素体の1本当りの張力は50〜70Kgf/
mmである。
【0031】なお、このグリッド素体6の張力は、共振
周波数を測定し、次の関係式より求めたものである。T
=4qf/G ここにT:グリッド素体1本当りの張力、F:共振周波
数、q:グリッド素体の資量、G:重力加速度、l:グ
リッド素体の長さを夫々表わす。
【0032】次にこのアパーチャグリル5に450〜4
70℃の温度で10〜20分間黒化処理を施す。なお、
この黒化処理は歪取りの目的も有する。
【0033】図2は黒化処理前と黒化処理後のアパーチ
ャグリル5の端部8と中央部9におけるグリッド素体6
の張力を測定した結果を、比較例と併せて示すグラフで
ある。図2において、曲線1は黒化処理前のグリッド素
体6の張力、曲線2は本実施例に係るグリッド素体6の
黒化処理後の張力、曲線3は比較例であるグリッド素体
の黒化処理後の張力をそれぞれ示す。このグラフは、ア
パーチャグリル5の端部8において、黒化処理後の張力
の低下の割合が比較例(曲線3)と比べて本実施例に係
るアパーチャグリル5(曲線2)の方が小さく、従っ
て、クリープの発生が抑制されていることを示してい
る。
【0034】この結果、本発明実施例であるグリッド素
体の黒化処理後の張力は黒化処理前と余り変わっていな
い。画面の色ズレは、特にアパーチャグリル5の端部8
におけるグリッド素体6の伸びが大きく影響するため、
端部8にあるグリッド素体6の張力低下を小さく抑える
ことが重要である。
【0035】次に、表1に代表的実施例と、従来使用し
ている比較例の成分を、又表2に黒化処理前後のグリッ
ド素体に加わっている張力を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】 表2より、Cr,Moの成分を増加させたことにより黒
化処理における張力低下が小さくなり、クリープが抑制
されていることがわかる。この結果グリッド素体の黒化
処理後の張力は、黒化処理前の張力との差が比較例に比
して小さいことが明らかである。
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、アパーチャグリル、平
面状マスク等のような一方向もしくは二方向に張力を付
して架張する色選別電極(マスクの孔は丸孔、多角形孔
または矩形状長孔を含む)を構成する鋼板中のCr,M
oの成分を所定範囲に制御することにより黒化処理後の
クリープの発生を抑制することができ、従ってグリッド
素体等の架橋部の張力の低下を低く抑えることが出来
る。しかも同時に黒化膜密着性も向上出来るので陰極線
管内の耐電圧特性を確保できる。
【0040】これにより従来のようにクリープ現象が原
因となって発生していた画面の色ズレの防止を図ること
が可能になる。また、そのための従来のようなフレーム
の設計変更、更にそれに伴う関連設備の変更は必要なく
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】色選別機構の実施例斜視図
【図2】黒化処理の前後におけるアパーチャグリルの端
部と中央部におけるグリッド素体の張力を測定したグラ
【符号の説明】
1 色選別機構 2 支持部材 3 弾性部材 4 フレーム 5 色選別電極(アパーチャグリル) 6 グリッド素体 7 スリット 9 アパーチャグリル中央部
【外1】
フロントページの続き (72)発明者 久米 尚雄 愛知県稲沢市大矢町茨島30番地 ソニー稲 沢株式会社内 (72)発明者 桑島 秀一 愛知県稲沢市大矢町茨島30番地 ソニー稲 沢株式会社内 (72)発明者 ▲桑▼山 清保 愛知県稲沢市大矢町茨島30番地 ソニー稲 沢株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも一方向に架張されてなる色選別
    電極を有する陰極線管の色選別機構において、前記色選
    別電極がCr:0.15〜0.20%(重量%、以下同
    じ)、Mo:0.08〜3.0%を含有する極低炭素鋼
    板より形成されてなることを特徴とする陰極線管の色選
    別機構。
  2. 【請求項2】少なくとも一方向に架張されてなる色選別
    電極を有する陰極線管の色選別機構において、前記色選
    別電極がCr:0.2〜2.0%,Mo:0.08〜
    0.10%を含有する極低炭素鋼板より形成されてなる
    ことを特徴とする陰極線管の色選別機構。
  3. 【請求項3】極低炭素鋼板の成分が、C:0.08%以
    下、Si:0.10%以下、Mn:0.10〜0.60
    %,P:0.10%以下、S:0.10%以下、N:1
    00ppm以下、Sol.Al:0.10%以下、その
    他Fe及び不可避的不純物でなる請求項1もしくは請求
    項2の内いずれか1項に記載の色選別機構。
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