JP2548133B2 - 陰極線管の色選別機構 - Google Patents

陰極線管の色選別機構

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JP2548133B2 JP61091918A JP9191886A JP2548133B2 JP 2548133 B2 JP2548133 B2 JP 2548133B2 JP 61091918 A JP61091918 A JP 61091918A JP 9191886 A JP9191886 A JP 9191886A JP 2548133 B2 JP2548133 B2 JP 2548133B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、陰極線管の色選別機構、特にその色選別電
極構体の組成に関する。
〔発明の概要〕
本発明は、陰極線管の色選別機構における色選別電極
構体の窒素の含有量を所定範囲内に制御することによ
り、黒化処理の際のクリープの発生を抑制し、張力変化
を防止することができるようにしたものである。
〔従来の技術〕
カラー陰極線管に使用される色選別機構としては、例
えば隣り合うグリッド素体間を電子ビームが通過するス
リットとして、多数のグリッド素体が形成された色選別
電極構体(所謂アパーチャグリル構体)が枠状のフレー
ムの相対向する1対の支持部材間に架張して成る色選別
機構が知られている。このアパーチャグリル構体は、例
えば次のようにして製造される。先ず、千分の1%単位
の炭素を含有する極低炭素鋼を板厚0.02〜0.30mmに圧延
した後、エッチングにより多数のグリッド素体を形成し
てアパーチャグリル構体を得る。次に、このアパーチャ
グリル構体を内側に加圧された状態のフレームにシーム
溶接した後、加圧力を除去する。これにより、グリッド
素体にフレームの復元力が加わって張力が生じる。この
後、2次電子の発生、熱輻射、さびの発生等を防止する
ため、450〜470℃、10〜20分間の黒化処理を施してい
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従来、製造中にアパーチャグリル構体のグリッド素体
の張力の低下が生じることがあり、品質管理上問題とな
っていた。これは、上述したアパーチャグリル構体の黒
化処理の際に熱と張力により、グリッド素体にクリープ
現象が発生して伸びるからである。このようにクリープ
現象が大きくて張力の低下したグリッド素体は、テレビ
ジョン受像機を完成した後、動作中に音量を大きくした
際グリッド素体の振動が大きくなって画面の色ずれの原
因となっていた。従来、このような問題点を解決するた
めに、フレームのターンバックルの加圧力を上げる。ア
パーチャグリル構体の剛性を上げて頑丈にする、ターン
バックルの加圧点をずらす、スピーカ部と陰極線管の支
持部にそれぞれクッションを設ける等の対策が考えられ
ていたが、未だ充分な効果は得られなかった。
本発明は、上記問題点を解決することができる陰極線
管の色選別機構を提供するものである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、電子ビームが通過するスリットを介して多
数のグリッド素体が所定ピッチで配列形成された色選別
電極構体がフレーム上に架張されて成る色選別機構にお
いて、色選別電極構体が40ppm〜100ppmの窒素を含有す
る極低炭素鋼板より成ることを特徴とする。
色選別電極構体の化学的成分を分析したところ、黒化
処理時のクリープ現象の発生と色選別電極構体中の窒素
含有量との間に相関があることを見出した。即ち、クリ
ープの起り易いアパーチャグリル構体は、クリープの起
りにくい色選別電極構体と比較して窒素含有量が低く、
27ppm以下であった。また、従来の色選別電極構体の窒
素含有量は、最大でも40ppm未満であった。そして、色
選別電極構体は、その窒素含有量が多くなる程クリープ
しにくくなり、クリープを抑制するためには少くとも40
ppmが必要である。40ppmより低い場合にはクリープの抑
制効果が小さく、30ppmより低い場合には殆んどその効
果が認められない。しかし、100ppmより多くなるとクリ
ープに対する抑制効果が略飽和状態に達する。従って、
窒素含有量は、55ppm〜75ppm位にするのが好ましい。
また、極低炭素鋼板中の成分でC:0.03%(重量%、以
下同じ。)以下、Si:0.03%以下、Mn:0.20〜0.60%、P:
0.10%以下、S:0.10%以下、Sol.Al:0.10%以下、その
他Fe及び不可避的不純物とする。これらの成分におい
て、Cが多いとカーバイドが多くなり、マスク製造工程
でのエッチング性が阻害されるのでその上限を0.03%と
する。SiはMnO−SiO2、MnO−FeO−SiO2などの珪酸塩系
介在物を形成し、その結果エッチング性を阻害するので
0.03%以下とする。Mnは製鋼での脱酸作用と熱間脆性を
防止する観点から0.20〜0.60%とする。Pは、その含有
量が増すと鋼が硬化し、圧延性を損うので上限を0.10%
とする。Sは硫化物系介在物を形成し、エッチング性を
阻害する。したがって出来る限り低い方が望ましく、そ
の上限を0.10%とする。Alは製鋼工程で脱酸剤として添
加され、鋼中の介在物を減少させるが、多すぎるとAl2O
3系介在物が増え且つ製造コストも上昇する。よって、
その上限を0.10%とする。
〔作用〕
グリッド素体1本当り50〜60kg/mm2の張力が掛かって
いる色選別電極構体に通常450〜470℃、10〜20分間の条
件で黒化処理を施すことにより、グリッド素体にクリー
プ現象が生じる。このクリープ現象は、転位の運動によ
る塑性変形である転移クリープと鉄原子自体の拡散によ
る塑性変形である拡散クリープとの複合した結果であ
る。鉄の拡散係数は温度に依存するため、通常の処理温
度で拡散クリープを抑制することは困難である。そこ
で、クリープによるグリッド素体の伸びを小さくするた
めには、転位クリープをできるだけ小さくすることが必
要となる。この転位クリープを抑制するためには、
(i)溶質原子(窒素等)によりコットレル雰囲気を形
成して転位を固着する方法、(ii)鉄より原子半径の大
きい元素(例えばMo)を添加してクリープによる伸びを
抑制する方法などが考えられる。(ii)の方法によれ
ば、溶質原子による歪と転位の歪が相互に作用して転位
の動きが固着されることにより、クリープの抑制効果が
得られる。本発明は、(i)の方法に基づく。一般的に
黒化処理温度のような高温において、窒素等の溶質原子
の拡散素度が速いので運動している転位の回りに溶質原
子が集まって溶質原子の雲のような所謂コットレル雰囲
気を形成する。このため、転位の動きに対して溶椎雰囲
気から引き戻そうとするバックストレスが作用して転位
の動きを抑制するため、クリープによる伸びは比較的小
さくなる。なお、温度が通常の黒化処理温度を越えた場
合には、溶質原子の拡散速度が増すのでバックストレス
が小さくなり、このため転位クリープの抑制効果は小さ
くなる。
従って、本発明によりクリープが抑制される結果、グ
リッド素体の黒化処理後の張力分布は黒化処理前の状態
に近くなる。
〔実施例〕
第1図にカラー陰極線管に使用される色選別機構の1
例を示す。この色識別機構(1)は、相対向する1対の
支持部材(2)とこれらの支持部材(2)を所定間隔に
保つ弾性部材(3)より成る枠状のフレーム(4)及び
対向する支持部材(2)上に架張された色選別電極構体
(5)(所謂アパーチャグリル構体)を有して構成され
ている。このアパーチャグリル構体(5)は、隣り合う
グリッド素体(6)間が電子ビームの通過するスリット
(7)となるように所定のピッチをもって多数のグリッ
ト素体(6)が形成されて成る。
本実施例においては、窒素含有量が55ppmの極低炭素
鋼を使用する。この極低炭素鋼を厚さ0.02〜0.30mmに圧
延して鋼板を作製する。この鋼板の材料抗張力は、70〜
80kg/mm2である。次にこの極低炭素鋼板にエッチングを
施して多数のグリット素体(6)を形成し、アパーチャ
グリル構体(5)を得る。次に支持部材(2)が内側に
加圧変形された状態のフレーム(4)にこのアパーチャ
グリル構体(5)をビーム溶接した後、加圧力を除去す
る。この際のフレーム(4)に架張されたグリッド素体
の1本当りの張力は50〜60kg/mm2である。
なお、このグリッド素体(6)の張力は、共振周波数
を測定し、次の関係式により求めたものである。
T=4qf2l2/G T:グリッド素体1本当りの張力、f:共振周波数、q:グリ
ッド素体の質量、G:重力加速度、l:グリッド素体の長
さ、 次にこのアパーチャグリル構体(5)に450〜470℃の
温度で10〜20分間黒化処理を施す。なお、この黒化処理
には歪取りの目的も有する。
第2図に黒化処理前と黒化処理後のアパーチャグリル
構体(5)の端部(8)と中央部(9)におけるグリッ
ド素体(6)の張力を測定した結果を、比較例(窒素含
有量は従来のように40ppm未満)と併せて示す。同図に
おいて、曲線Iは黒化処理前のグリッド素体(6)の張
力、曲線IIは本実施例に係るグリッド素体(6)の黒化
処理後の張力、曲線IIIは比較例に係るグリッド素体の
黒化処理後の張力をそれぞれ示す。このグラフから、ア
パーチャグリル構体(5)の端部(8)において、黒化
処理後の張力の低下の割合が比較例(曲線III)と比べ
て本実施例に係るアパーチャグリル構体(5)(曲線I
I)の方が小さく、従って、クリープの発生が抑制され
ていることがわかる。この結果、グリット素体の黒化処
理後の張力は黒化処理前の状態に近くなっている。両面
の色ずれは、特にアパーチャグリル構体(5)の端部
(8)におけるグリッド素体(6)の伸びが大きく影響
するため、端部(8)にあるグリッド素体(6)の張力
低下を小さく抑えることが重要である。
次に表1に、陰極線管の管種を変え、13インチ、14イ
ンチ及び18インチの陰極線管のアパーチャグリルについ
て、端部と中央部における黒化処理後のグリッド素体の
張力を測定した結果を示す。比較例の窒素含有量は、上
記比較例の場合と同じである。表中、効果は、実施例の
比較例に対する割合であり、↑は上昇、↓は下降をそれ
ぞれ示す。この表から、本発明により端部において、管
種によって割合は異なるが、黒化処理後のグリッド素体
の張力の低下を防止する効果、即ちクリープの抑制効果
が得られることがわかる。
〔発明の効果〕 本発明によれば、色選別電極のアパーチャグリル構体
中の窒素含有量を所定範囲に制御することにより、黒化
処理後のクリープの発生を抑制することができ、従って
グリッド素体の張力の低下を低く抑えることができる。
これにより従来のクリープ現象が原因となって発生して
いた画面の色ずれの改善を図ることが可能になる。ま
た、従来のようなフレームの設計変更、更にそれに伴う
関連設備の変更は必要なくなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は色選別機構の斜視図、第2図は黒化処理の前後
におけるアパーチャグリル構体の端部と中央部における
グリッド素体の張力を測定したグラフである。 (1)は色選別機構、(4)はフレーム、(5)はアパ
ーチャグリル構体、(6)はグリッド素体である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池田 章 下松市東豊井1302番地 東洋鋼鈑株式会 社下松工場内 (72)発明者 渡辺 喜和 下松市東豊井1302番地 東洋鋼鈑株式会 社下松工場内 (56)参考文献 特開 昭60−181252(JP,A) 特開 昭58−136714(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定ピッチで配列された多数のグリッド素
    体からなる色選別電極構体をフレーム上に架張して成る
    色選別機構において、 前記色選別電極構体が400ppm〜100ppmの窒素(N)を含
    有する極低炭素鋼板より形成されて成る陰極線管の色選
    別機構。
  2. 【請求項2】極低炭素鋼板の成分が、C:0.03%(重量
    %、以下同じ。)以下、Si:0.03%以下、Mn:0.20〜0.60
    %、P:0.10%以下、S:0.10%以下、Sol.Al:0.10%以
    下、その他Fe及び不可避的不純物である特許請求の範囲
    第1項記載の色選別機構。
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