JP2001329341A - カラー受像管用シャドウマスク素材、シャドウマスクおよびカラー受像管 - Google Patents

カラー受像管用シャドウマスク素材、シャドウマスクおよびカラー受像管

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JP2001329341A
JP2001329341A JP2000146280A JP2000146280A JP2001329341A JP 2001329341 A JP2001329341 A JP 2001329341A JP 2000146280 A JP2000146280 A JP 2000146280A JP 2000146280 A JP2000146280 A JP 2000146280A JP 2001329341 A JP2001329341 A JP 2001329341A
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Tsuneyuki Ide
恒幸 井手
Yoshikazu Touno
義和 投野
Susumu Shigemasa
進 重政
Yasuo Tawara
泰夫 田原
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Toyo Kohan Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた引張強度および高温クリープ強度を有
するカラー受像管用シャドウマスク素材、シャドウマス
ク及びそのシャドウマスクを組み込んだカラー受像管を
提供する。 【解決手段】成分において、Mnを0.02〜0.6重
量%、およびNb、Ti、Ta、V、Zrのうち、少な
くとも1種以上を0.001〜0.50重量%含有する
低炭素合金鋼からなることを特徴とするカラー受像管用
シャドウマスク素材、その素材を用いたシャドウマスク
及びそのシャドウマスクを組み込んだカラー受像管。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラー受像管用シ
ャドウマスク素材、シャドウマスクおよびそれを組み込
んだカラー受像管に関する。より詳細には、優れた引張
強度および高温クリープ強度を有するカラー受像管用シ
ャドウマスク素材、シャドウマスクおよびそれを組み込
んだカラー受像管に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シャドウマスク方式のカラー受像
管は、僅かに湾曲したマスク面を有したシャドウマスク
がフレーム枠に溶接取り付けられた、いわゆる湾曲面
(ドーム型)ブラウン管が使用されてきた。このような
従来方式において採用されているシャドウマスク素材
は、ドーム型に成形されるので、プレス成形性、プレス
時の形状をそのまま保つ形状凍結性などが重用視されて
きた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この湾曲面ブラウン管
は照明等の外部光線の乱反射により、目が疲労しやすい
問題点があるので、ブラウン管のフラット化が望まれて
いた。しかし、シャドウマスク方式において、ブラウン
管のフラット面化が進むと、従来のブラウン管が採用し
ていたわずかに湾曲したマスク面では、フラット面化が
図れなくなる恐れがある。
【0004】そこで、従来からあるシャドウマスク方式
のブラウン管において、マスク面を完全にフラット化し
て、これに対応できるシャドウマスク素材の開発が望ま
れている。シャドウマスク方式ブラウン管の場合におい
て、マスク面をフラット化する方法はいくつか提案され
ているが、シャドウマスクの上下方向に張力を負荷する
展張型シャドウマスク方式が工業的に有望な方式のひと
つと言われている。
【0005】展張型シャドウマスクは、エッチングによ
り所定のドット孔パターンを穿孔加工したシャドウマス
ク素材を、展張方向と逆方向にフレーム枠を加圧した状
態で、溶接等の方法によって接合し、次いでフレーム枠
の加圧力を取り除き、フレーム枠の復元力によって張力
を形成している。この後、2次電子の発生、熱輻射、さ
びの発生等を防止するため、450〜470℃、10〜
20分間の黒化処理を施している。
【0006】このような展張型シャドウマスクに求めら
れる、素材の特性としては、エッチング性に優れる他、
張力に耐える強度、特に黒化処理時の高温クリープ特性
に優れる必要がある。すなわち、黒化処理工程では、フ
レーム枠の復元力による張力がシャドウマスクに負荷さ
れた状態で、加熱処理を施すので、熱および張力によ
り、シャドウマスク素体にクリープ現象が発生して伸び
るからである。このようにクリープ伸びが大きくて張力
の低下したシャドウマスク素材を、ブラウン管中に組み
込み、テレビジョン受像機を完成した時、動作時に音量
を大きくした際、シャドウマスク素材の振動が大きくな
って画面の色ずれの原因となっていた。
【0007】従来、このような問題点を解決するため
に、フレーム枠による加圧力を加減する、シャドウマス
ク素材の剛性を上げて頑丈にする、スピーカー部とブラ
ウン管の支持部にそれぞれクッションを設ける等の対策
が考えられていたが、未だ充分な効果は得られていな
い。
【0008】特許第2548133号ではアパーチャグ
リルタイプのマスク用鋼板素材に関する提案であるが、
Nを40〜100ppm含有し、Mnを0.20〜0.
60重量%含有する極低炭素鋼板が有する高強度および
高温クリープ特性により、黒化処理時のクリープ伸びを
低減する提案である。この場合、溶質原子Nは溶媒原子
Feに比べて、原子半径が著しく小さいため、NはFe
結晶格子中において侵入型固溶体を形成し、所謂、コッ
トレル雰囲気を形成する。黒化処理温度のような高温に
おいて、Fe中のNは拡散速度が速いので、クリープ伸
び、すなわち転位クリープのまわりにN原子が集まっ
て、雲のようなコットレル雰囲気を形成し、転位クリー
プの動きを抑制する作用を生じるので、クリープ伸びが
低減される効果を有すると考えられている。
【0009】特開平5−311332号公報は上記の特
許第2548133号と同様の技術的原理に基づくアパ
ーチャグリル用鋼板素材に関する提案で、主にN、Mn
等の元素添加の請求範囲の重複回避によるものである。
素材の強化方法として、Nを100〜1000ppm含
有し、Mnを0.60〜3.00重量%含有する極低炭
素鋼板および/または、これらの元素の他に、Nb、
V、Ti、Zr、TaおよびBのうち少なくとも1種以
上を0.001〜0.5重量%含有する極低炭素鋼板を
提案している。確かに、この提案では鋼板素材中にNを
多量に含有するので、高強度が得られ、高温クリープ伸
びの低減が計れると考えられる。しかしながら、多量の
Nを含有するための補助手段として、Mnを0.6重量
%以上含有するので、エッチング特性を犠牲にしてい
る。つまり、MnはFeに比較して、Nとの親和力が大
であるため、Mnを添加することにより、鋼中の許容N
含有量が増加する。その結果として、1000ppm程
度のN含有も可能となると考えられる。この場合、Nは
主に、MnNのような窒化物を形成するので、同時に、
エッチング特性を劣化する危険性がある。すなわち、M
nは鋼中に固溶することにより、塩化第二鉄によるエッ
チングの際、エッチング速度を速める作用を有してお
り、その結果として、エッチング面の面荒れを生じ、所
謂ガザ孔となる傾向を示す。従って、素材強度を向上す
る目的は達せられるものの、エッチング性を犠牲にして
しまう危険性がある。
【0010】特開平11−222628号公報も上記の
特許第2548133号と同様の技術的原理に基づく提
案であり、Nを100〜170ppm含有し、Mnを
0.10〜0.60重量%含有することにより、特許第
2548133号との請求範囲の重複を回避したものと
なっている。
【0011】ところで、本発明者等は、特許第2548
133号を提案した後においても、エッチング特性を阻
害すること無く、アパーチャグリル用あるいは展張型シ
ャドウマスク素材の強度向上、高温クリープ特性の改善
を計るための研究開発を鋭意継続してきた。
【0012】本発明の課題は、前記のような完全フラッ
ト面ブラウン管に対応できるカラー受像管を提供するこ
とにある。すなわち、シャドウマスク素材の剛性を上げ
ることによって、展張型シャドウマスクのクリープ伸び
を低減する対策を施すことにより、色ずれ等の問題を解
決する方法を提案するものである。こうした、市場ニー
ズに対応可能な材料の開発を急ぐべく、本発明者等は特
願平11−035056においてフラット面化ブラウン
管に対応できる低合金鋼鋼板素材を提案している。
【0013】その技術的内容は、Fe原子より原子半径
の小さいNを0.0001〜0.015重量%(1〜1
50ppm)含有することにより、転位を固着すること
により、転位クリープによる伸びを抑制する効果を有す
る。さらに、Cr、Ni、Cuのようなエッチング性に
有用な元素の添加および、S、C等不純物元素の含有量
の限定により、エッチング性の改善についても同時に提
案した。本提案による展張型シャドウマスク素材によっ
て、フラット面ブラウン管への適用時における、ブラウ
ン管の張力維持および画質について、一定の改善が認め
られた。
【0014】しかしながら、上記N添加鋼鋼板を工業的
に生産する上で、連続鋳造スラブ中にブロウホールが発
生する問題を生じるロットが一部に見いだされた。薄鋼
板に圧延する工程において、板切れ問題を発生する原因
となっていることに気付いた。
【0015】この現象は、鋼中に溶解可能なN量が、溶
融状態に比較し、凝固後の固体状態では著しく減少する
ために、連続鋳造工程の凝固時に過飽和となり、気体N
ガスに変化し、スラブ中において、気泡を形成するこ
とが、主な原因と判明した。しかも、N含有量が200
ppmを超える含有量において、ブロウホール現象の発
生頻度は増すことを見出した。
【0016】本発明者等は気泡状に生じる、ブロウホー
ルを無くすための対策を懸命に模索した結果、Nb、T
i、Ta、V、Zrから選ばれた元素のうち少なくとも
1種以上を溶鋼中に添加することが著しい効果をもたら
すことを見いだすに至った。その技術的調査は現象を充
分解明したとは言えないが、以下のように推測する。す
なわち、鋼中に溶解したNは、溶解度以内の量が溶存窒
素(N)の形態を呈し、一部はFeN、MnNのような
窒化物として存在すると考えられる。Nb、Ti、T
a、V、ZrはいずれもNと結合親和力が非常に大きい
元素であるから、これら元素のうち少なくとも1種以上
を溶湯中に添加すると、NbN、TiN、TaN、V
N、ZrNのような安定した窒化物を形成し、鋼中に安
定的に残存する。その結果、凝固時においても、Nが過
飽和となって、スラブ中のブロウホールとなるような現
象は皆無となる効果を有することが分かった。
【0017】また、これまでの特願平11−03505
6号公報において開示された、Fe−Mn系低炭素鋼
(Mn含有量範囲は0.02〜0.6重量%)ではN添
加量の範囲は0.0001〜0.015重量%に止まっ
ていたが、Nb,Ti,Ta,V、ZrのようなN親和
性の強い元素を少量添加することにより、N添加量の範
囲は著しく増加することも明らかとなった。より具体的
には、Nb、Ti、Ta、V、Zrの少なくとも1種以
上を0.001〜0.5重量%の範囲で添加することに
より、鋼中のN量は最大0.05重量%(500pp
m)まで安定して残存することも明らかにした。
【0018】すなわち、本発明が開示する最も重要な技
術的課題は、Nb、Ti、Ta、V、Zrのうち少なく
とも1種以上を0.001〜0.5重量%の範囲で低炭
素系低合金鋼から成る、溶湯中に添加することにより、
溶存窒素(N)は最大0.05重量%まで安定して鋼中
に溶存し、スラブ中のブロウホールを発生することはな
い点である。
【0019】連続鋳造他の工程により、溶湯が冷却され
て、凝固した後においても、溶存窒素の多くは、Nb
N、TiNのような安定な窒化物を形成し、鋼中に分散
して、残存するので、気体状のNとなって、スラブ中
にブロウホールを生じることは無い。
【0020】さらに、Nb、Ti、Ta、V、Zrの添
加の効果はこれのみに止まるものでなく、窒化物として
形成されたNbN、TiN他の化合物は高硬度粒子であ
って、かつ鋼中においては極微細に分散する特性を有す
るので、特に高温クリープ伸びに対して、変形抵抗が大
きくなる効果を示すことも明らかになった。
【0021】以上述べたような、溶存窒素の窒化物形成
による固定化、および高温クリープ特性の著しい改善効
果のため、Nb、Ti、Ta、V、Zrの添加はN添加
鋼に無くては成らない元素であることが、明らかとなっ
た。そして、これらの元素の添加量は0.01〜0.5
0重量%程度の極微量で大きな効果が期待できるため、
価格面の不安も少ないことが明確になった。本発明者等
は以上、述べたようなNb、Ti、Ta、V、Zr添加
の効果を見いだすことにより、本発明の提案に至った。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明のカラー受像管用
シャドウマスク素材は、Mnを0.02〜0.60重量
%、およびNb、Ti、Ta、V、Zrのうち、少なく
とも1種以上を0.001〜0.50重量%含有する低
炭素合金鋼からなることを特徴とする。本発明のカラー
受像管用シャドウマスク素材は、Cを0.0001〜
0.08重量%、Mnを0.02〜0.60重量%、お
よびNb、Ti、Ta、V、Zrのうち、少なくとも1
種以上を0.001〜0.50重量%含有する低炭素合
金鋼からなることを特徴とする。前記素材は、Sを0.
05重量%以下含有することが望ましく、Alを0.0
01〜0.1重量%含有することが望ましく、Nを0.
0001〜0.040重量%含有することが望ましく、
Cuを0.001〜0.1重量%含有することが望まし
く、Crを0.001〜0.1重量%含有ずることが望
ましく、Niを0.001〜0.1重量%含有する事が
望ましい。本発明のカラー受像管用シャドウマスクは、
前記のいずれかに記載のシャドウマスク素材を用いたも
のであることを特徴とする。本発明のカラー受像管は、
前記シャドウマスクを組み込んだものであることを特徴
とする。本発明のカラー受像管は、前記シャドウマスク
が、上下方向に張力を付与された状態でフレーム枠に取
り付けられたものであることを特徴とする。本発明のカ
ラー受像管は、前記シャドウマスクが、上下方向および
左右方向に張力を付与された状態でフレーム枠に取り付
けられたものであることを特徴とする。このようなカラ
ー受像管においては、前記左右方向の張力が、上下方向
の張力よりも少ないものであることが望ましい。本発明
のシャドウマスク素材は、負荷応力が196N/mm
をかけて、450℃×60分保持した時の伸びが0.3
%以下になるようにしたものであることを特徴とする。
本発明のシャドウマスクは、カラー受像管に組み込んだ
後のシャドウマスクに、196N/mmの負荷応力を
かけて、450℃×60分保持した時の伸びが0.5%
以下になるようにしたものであることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明のシャドウマスクは、含有
させる成分を調整して製造したシャドウマスク素材を、
上下方向に大きな張力を負荷された状態でフレームに固
着(例えば溶接)されるものである。また、本発明のシ
ャドウマスクは、フレームの左右方向にも上下方向より
も少ない若干の張力が負荷された状態のままで熱処理を
行った後においても、シャドウマスク自体が弛んで、し
わなどを発生することの無い状態を保持できるだけの、
充分な高温クリープ強度を有するものである。
【0024】本発明のシャドウマスクの素材として用い
る低炭素鋼としては、真空脱ガス法を用いて脱炭および
脱窒処理し、鋼中の炭化物および窒化物を減少させ、熱
延したものが好ましい。まず、本発明のシャドウマスク
の素材に用いる鋼に含有される元素の種類、およびその
含有量の限定理由について説明する。
【0025】Cは、鋼中に固溶して、材料硬さを増し、
引張強度およびクリープ強度が向上するので、添加する
必要があるが、C量が多いと炭化物が増加し、エッチン
グ特性が妨げられる原因となるので、上限を0.08重
量%の含有量とするのが好ましい。より好ましくは0.
06重量%以下の含有量であり、さらに好ましくは0.
04重量%以下の含有量である。下限は、真空脱ガス処
理あるいは箱形焼鈍炉によるオープンコイル焼鈍(OC
A)で実用的に低減可能な、0.0001重量%の含有
量とするのが好ましい。より好ましくは0.0002重
量%以上の含有量であり、さらに好ましくは0.000
3重量%以上の含有量である。
【0026】Mnに関しては、Mnは鋼中に固溶し、固
溶硬化により、材料硬さを増す元素であるから、引張強
度およびクリープ強度が向上する。さらに、Mnは鋼中
のSと結合して鋼中に含まれているSをMnSとして固
定し、熱間脆性を防止するために添加する必要がある元
素である。この点から0.02重量%以上の含有量とす
ることが好ましく、より好ましくは0.04重量%以上
の含有量である。一方、シャドウマスクとしての磁気特
性を向上させるためにはMnの含有量は少ない程好まし
く、0.6重量%以下の含有量が好ましい。より好まし
くは0.5重量%以下の含有量である。
【0027】Siはエッチング性を阻害するうえ、黒化
膜の密着性を劣化するので、含有量は少ないほど好まし
く、0.3重量%以下の含有量とするのが好ましい。S
は、結晶粒界に偏析し、エッチング特性を著しく阻害す
るうえ、素材の脆化の原因にもなるので、含有量は少な
いほうが好ましく、0.05重量%以下の含有量とする
のが望ましい。
【0028】Alは、脱酸剤として製鋼工程において用い
られ、鋼の清浄度を向上する効果を有する。このため
0.001重量%以上の含有量とすることが好ましい。
より好ましくは0.002重量%以上の含有量である。
さらに好ましくは0.003重量%以上の含有量であ
る。一方、Alを多量に含有すると、固溶硬化による脆
化を生じるうえ、エッチング特性を劣化する。Al含有
量は通常の製鋼工程を経た場合、0.1重量%以下の含
有量とすることが好ましい。より好ましくは0.08重
量%以下の含有量とする。さらに好ましくは0.06重
量%以下の含有量である。
【0029】Nは前記のように、鋼中に固溶して、材料
硬さを増し、引張強度およびクリープ強度が向上するの
で、添加する必要がある。さらには高硬度の窒化物を形
成するうえ、この窒化物が結晶粒内に微細に分散するこ
とにより、転位クリープの移動を阻止する効果を有する
ので、特にクリープ強度を向上する効果を有す。このた
め、0.0001重量%以上の含有量とすることが好ま
しい。より好ましくは0.0002重量%以上の含有量
であり、さらに好ましくは0.0003重量%以上の含
有量である。一方、N量が多いと窒化物が増加し過ぎ
て、材料を脆化しやすいので、0.040重量%以下の
含有量とするのが好ましい。より好ましくは0.039
重量%以下の含有量であり、さらに好ましくは0.03
8重量%以下の含有量である。
【0030】Cuは、鋼中に固溶して、材料硬さを増
し、引張強度およびクリープ強度が向上するので、添加
する必要がある。このため0.001重量%以上の含有
量とすることが好ましい。より好ましくは0.002重
量%以上の含有量であり、さらに好ましくは0.003
重量%以上の含有量である。一方、Cu量が多いとエッ
チング速度を低下し、エッチング液を汚染するので、
0.1重量%以下の含有量とするのが好ましい。さらに
好ましくは0.08重量%以下の含有量である。
【0031】Crは、鋼中に固溶して、材料硬さを増
し、引張強度およびクリープ強度が向上するので、添加
する必要がある。さらに、Crは鋼中に残存する溶存窒
素(N)と反応して、CrNのような窒化物を形成する
性質が強いので、前記のNb、Ti、Ta、V、Zrと
同様な窒化物形成および安定化効果を有する。この結
果、スラブ中のブロウホールを著しく低減するととも
に、微細な窒化物を形成分散することにより、クリープ
強度が著しく増す。これは、転位の移動を伴う、クリー
プ伸びに対する抵抗が増大するためと推測する。このた
め、Cr添加量の下限は、0.001重量%以上の含有
量とすることが好ましい。より好ましくは0.002重
量%以上の含有量であり、さらに好ましくは0.003
重量%以上の含有量である。一方、Cr量が多いと炭化
物を形成し、磁気特性を阻害するので、0.1重量%以
下の含有量とするのが好ましい。より好ましくは0.0
9重量%以下の含有量とするのが好ましい。さらに好ま
しくは0.08重量%以下の含有量である。
【0032】Niは、鋼中に固溶して、材料硬さを増
し、引張強度およびクリープ強度が向上するので、添加
する必要がある。このため0.001重量%以上の含有
量とすることが好ましい。より好ましくは0.002重
量%以上の含有量であり、さらに好ましくは0.003
重量%以上の含有量である。一方、Niは高価な元素で
あるため、0.1重量%以下の含有量とすることが好ま
しい。より好ましくは0.09重量%以下の含有量とす
るのが好ましい。さらに好ましくは0.08重量%以下
の含有量である。
【0033】次に、本発明のシャドウマスク素材として
の薄鋼板の製造方法を説明する。通常の熔解法により、
得られた上記組成の溶湯は真空脱ガスあるいはAl、S
i等による脱酸処理を施し、連続鋳造および熱間圧延工
程を経て、熱延板が得られる。酸洗工程において、脱ス
ケール後、冷間圧延し、0.2〜0.8mmの板厚とす
る。次いで、焼鈍処理により軟化処理後、所定の板厚
0.05〜0.20mmまで、冷間圧延により仕上げ加
工を施す。焼鈍処理は、箱形焼鈍炉、連続焼鈍炉のいず
れかを用いても差し支えない。
【0034】次に、本発明のシャドウマスクを説明す
る。表1に示す、シャドウマスク素材の両面に、水溶性
カゼインレジストを塗布し、乾燥後、素材の両面のレジ
ストを一対の表裏のパターンを描いたガラス乾板を用い
て、レジストをパターンニングした。次いで、露光、硬
膜処理、ベーキング処理を行い、その後、パターンニン
グされたレジストの両面に、液温60℃、比重48°B
eの塩化第二鉄溶液をエッチング液としてスプレイから
噴霧してエッチングを行った。エッチング後、水洗し、
アルカリ溶液によって、レジストを剥離し、洗浄、乾燥
して、シャドウマスクを作製した。
【0035】次に、本発明のシャドウマスクをフレーム
枠に取り付けた状態を説明する。本発明のシャドウマス
クは、張力を負荷させた状態でフレーム枠に固着され
る。この固着方法は、様々の種類があるが、溶接法がも
っともよく用いられている。固着に当たっては、まず、
フレーム枠の上下のフレームの中心部を内側に強制的に
若干たわませておき、この状態でシャドウマスクを固着
する。そして、内側にたわませておいた上下のフレーム
を元に戻す(強制的な力を解放する)と、シャドウマス
クに上下方向の張力が負荷された状態になる。また、上
記のフレーム枠にシャドウマスクを固着するにあたっ
て、上下方向に負荷させる張力よりも少ない張力を左右
方向に負荷させることも好ましい。本発明のカラー受像
管は上下方向には強い張力を負荷させることが望まし
い。上下方向に負荷させるだけでなく、左右方向に張力
を負荷させると、上下方向に張力を付与したことによっ
てシャドウマスクに生じるしわの発生を防止できる。し
かし、あまりにおおきな張力をシャドウマスクの左右方
向に負荷させることは、シャドウマスクに形成されてい
るドット孔の変形を招き好ましくない。上記のシャドウ
マスクに負荷される上下方向の応力は、実機には数百N
/mmの応力がかけられた状態になっているが、試
験的には196N/mmをかけて、450℃×60
分保持した時の伸びが0.5%以下であれば、受像管使
用中シャドウマスクに弛みが生ずるというような問題は
発生しない。また、いわゆる黒化処理前のシャドウマス
ク素材の状態では、素材形成後に黒化処理という熱処理
工程を通過するという点を鑑みて、前記機械的特性評価
を厳しくしておくことが望ましい。従って、シャドウマ
スク素材に、試験的に196N/mmの負荷応力をか
けて、450℃×60分保持した時の伸びが0.3%以
下であれば、受像管使用中シャドウマスクに弛みが生ず
るというような問題は発生しない。
【0036】
【実施例】以下、実施例について本発明をさらに詳細に
説明する。表1には、異なった種類の化学組成を有する
鋼(A〜M)を真空脱ガスして、熔製したスラブを熱間
圧延し、2.5mmの熱延板とした際の化学組成を示
す。これらの熱延板を硫酸酸洗した後冷間圧延し、板厚
が0.35mmの冷延板とした。その後、連続式焼鈍炉
を用いて、焼鈍処理を施し、さらに冷間圧延により板厚
0.10mmとした。
【0037】表2は、このようにして得られた供試材に
ついて特性試験結果をまとめて示す。引張試験はインス
トロンタイプ引張試験機にて、クリープ伸びはクリープ
試験機(東海製作所製)を用い、負荷応力196N/m
をかけて、大気中において450℃×60分保持し
た際の伸び(%)と、負荷応力196N/mmをかけ
て、大気中において450℃×20分保持を3回繰り返
した際の伸び(%)との両者を測定し評価した。このク
リープ強度試験評価は次の基準で定めたものである。す
なわち、表2中に記載の「シャドウマスク素材時の特
性」の欄におけるクリープ伸びを「0.3%以下」に定
めた理由は、シャドウマスクがフレームに溶接された
後、黒化するための熱処理が施されることを想定して、
黒化処理後において張力を負荷させた状態でフレームに
シャドウマスクが取り付けられた後においても、シャド
ウマスクが弛むことなく張力を負荷された状態を保持さ
せうるためのシャドウマスク素材の試験条件を定めたも
のである。この条件として、シャドウマスク素材に負荷
応力196N/mmをかけて、450℃で60分間保
持をした後のクリープ伸びを測定したものである。この
伸びが0.3%以下であれば、シャドウマスクが受像管
に組み込まれた後においても、フラットマスクのシャド
ウマスクに対応できるシャドウマスク素材であるからで
ある。
【0038】さらに、カラー受像管の実機においては、
黒化処理に続き、受像管に組み込んだ後に行うベーキン
グ処理、ガラス封着処理などの加熱処理が行われる。こ
のため、シャドウマスクのクリープ伸びは、前記シャド
ウマスク素材の伸びよりも大きいものと想定される。従
って、本発明では、上記実機の製造工程に鑑み、シャド
ウマスク素材に、196N/mmの負荷応力をかけ
て、常温と450℃で20分間保持の加熱冷却繰り返し
を3回したときの伸びを0.6%以下になるようにした
ものである。この伸びが0.6%以下であれば、シャド
ウマスクが受像管に組み込まれた後においても、フラッ
トマスクのシャドウマスクに対応できるシャドウマスク
素材であるからである。
【0039】さらに、エッチング特性はエッチファクタ
ー値およびエッチング面粗度により評価した。エッチン
グ条件は液温50℃において、液比重1.498に調整
した塩化第二鉄を用い、スプレイ圧29.4N/cm
として、ハーフエッチし、エッチファクター値を求め
た。また、エッチング面粗度は上記のエッチング面をレ
ーザーフォーカス変位計によりRa値を求めて評価し
た。
【0040】表2より、上記いずれの特性においても本
発明品は優れているので、総合評価として、判定の欄に
〇の記号を示してある。一方、本発明の範囲内に入らな
い比較例品は、上記いずれかの特性において劣っている
ので、総合評価として×の記号を示してある。表2中の
比較例I材は全ての特性評価は良好であるにもかかわら
ず、本発明の範囲内に加えられない理由は、N含有量が
限定範囲の上限値を超えた場合、窒化物の増加による強
度向上は、確かに認められるものの、その程度は僅かと
なり、製造コスト面の増加分のほうが多くなるからであ
る。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】本発明のカラー受像管溶シャドウマスク
素材、シャドウマスクおよびそれを組み込んだカラー受
像管は、優れた引張強度および高温クリープ強度を有す
るので、従来からあるシャドウマスク方式のブラウン管
において、マスク面を完全にフラット化できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01J 29/07 H01J 29/07 Z (72)発明者 重政 進 山口県下松市東豊井1296番地の1 東洋鋼 鈑株式会社技術研究所 (72)発明者 田原 泰夫 山口県下松市東豊井1296番地の1 東洋鋼 鈑株式会社技術研究所 Fターム(参考) 5C031 EE05 EF01 EH04 EH06

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mnを0.02〜0.6重量%、および
    Nb、Ti、Ta、V、Zrのうち、少なくとも1種以
    上を0.001〜0.50重量%含有する低炭素合金鋼
    からなることを特徴とするカラー受像管用シャドウマス
    ク素材。
  2. 【請求項2】 Cを0.0001〜0.08重量%、M
    nを0.02〜0.60重量%、およびNb、Ti、T
    a、V、Zrのうち、少なくとも1種以上を0.001
    〜0.50重量%含有する低炭素合金鋼からなることを
    特徴とするカラー受像管用シャドウマスク素材。
  3. 【請求項3】 Sを0.05重量%以下含有する、請求
    項1又は2記載のカラー受像管用シャドウマスク素材。
  4. 【請求項4】 Alを0.001〜0.1重量%含有す
    る、請求項1〜3のいずれかに記載のカラー受像管用シ
    ャドウマスク素材。
  5. 【請求項5】 Nを0.0001〜0.040重量%含
    有する、請求項1〜4のいずれかに記載のカラー受像管
    用シャドウマスク素材。
  6. 【請求項6】 Cuを0.001〜0.1重量%含有す
    る、請求項1〜5のいずれかに記載のカラー受像管用シ
    ャドウマスク素材。
  7. 【請求項7】 Crを0.001〜0.1重量%含有す
    る、請求項1〜6のいずれかに記載のカラー受像管用シ
    ャドウマスク素材。
  8. 【請求項8】 Niを0.001〜0.1重量%含有す
    る、請求項1〜7のいずれかに記載のカラー受像管用シ
    ャドウマスク素材。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載のカラ
    ー受像管用シャドウマスク素材を用いたシャドウマス
    ク。
  10. 【請求項10】 請求項9のシャドウマスクを組み込ん
    だカラー受像管。
  11. 【請求項11】 シャドウマスクが、上下方向に張力を
    付与された状態でフレーム枠に取り付けられたものであ
    るカラー受像管。
  12. 【請求項12】 シャドウマスクが上下方向および左右
    方向に張力を付与された状態でフレーム枠に取り付けら
    れたものであるカラー受像管。
  13. 【請求項13】 前記左右方向の張力が、上下方向の張
    力よりも少ないものである請求項12のカラー受像管。
  14. 【請求項14】 負荷応力が196N/mmをかけ
    て、450℃×60分保持した時の伸びが0.3%以下
    になるようにしたものである請求項1〜8のいずれかに
    記載のカラー受像管用シャドウマスク素材。
  15. 【請求項15】 カラー受像管に組み込んだ後のシャド
    ウマスクに、196N/mmの負荷応力をかけて、4
    50℃×60分保持した時の伸びが0.6%以下になる
    ようにしたものであるシャドウマスク。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100957980B1 (ko) 2002-12-28 2010-05-17 주식회사 포스코 텐션마스크용 냉연강판과 그 제조방법

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JP2008545060A (ja) * 2005-06-30 2008-12-11 宝山鋼鉄股▲分▼有限公司 1次冷延シャドウマスク鋼帯の製造方法

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