JPH09287046A - 高強度で耐食性に優れる熱処理型7000系アルミニウム合金及びその製造方法 - Google Patents

高強度で耐食性に優れる熱処理型7000系アルミニウム合金及びその製造方法

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JPH09287046A
JPH09287046A JP12229796A JP12229796A JPH09287046A JP H09287046 A JPH09287046 A JP H09287046A JP 12229796 A JP12229796 A JP 12229796A JP 12229796 A JP12229796 A JP 12229796A JP H09287046 A JPH09287046 A JP H09287046A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱処理型7000系アルミニウム合金の強度
及び耐食性(耐SCC応力、耐層状腐食特性)をさらに
高くし、且つこれらの特性が工業的にも容易に製造可能
とする。 【解決手段】 熱処理型7000系アルミニウム合金を
均熱処理及び熱間加工後必要により冷間加工を行い所定
の製品サイズに調整後、溶体化熱処理及び焼入れ後必要
に応じて冷間加工を行った後、時効処理を100〜14
5℃で5〜50hr、復元処理を140〜195℃で
0.5〜30hr、再時効処理を100〜145℃で5
〜50hr行うことで、導電率を38〜40IACS%
とし、結晶粒界上のη相の最小間隔が20nm以上で且
つ結晶粒内のη’相の最大サイズが20nm以下である
ミクロ組織を有するアルミニウム合金を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、航空機、鉄道車
両、自動車等の輸送機器及び一般機械部品等の使用に適
する熱処理型7000系アルミニウム合金に関するもの
であり、特に本発明は高強度で耐食性に優れる熱処理型
7000系アルミニウム合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱処理型7000系アルミニウム合金は
溶体化焼入れ後の人工時効により高い強度が得られる析
出型合金であり、大別してAl−Zn−Mg−Cu系合
金とAl−Zn−Mg系合金とに分けられる。代表的な
合金として、Al−Zn−Mg−Cu系合金では707
5(Al−5.9Zn−2.2Mg−1.4Cu−0.
2Cr)、7050(Al−5.9Zn−2.2Mg−
2.2Cu−0.12Zr)、7055(Al−8.0
Zn−2.2Mg−2.2Cu−0.15Zr)が、ま
たAl−Zn−Mg系合金では7003(Al−5.8
Zn−0.8Mg−0.15Zr)等がある。
【0003】代表的な製造方法は、押出形材製品では例
えば溶解鋳造にてビレット等の鋳塊にした後、均質化処
理し、熱間押出を行い、溶体化処理水焼入れを行った
後、必要に応じてストレッチ等で引張加工し、目的に応
じた熱処理を行った後出荷され、加工メーカーで最終製
品に成形加工されている。また、板製品でも同様に、溶
解鋳造にて鋳塊にした後、均質化熱処理し、熱間圧延、
さらには必要に応じて冷間圧延を行った後、溶体化処理
水焼入れを行った後必要に応じて冷間圧延や引張加工
し、目的に応じた熱処理を行った後出荷され、加工メー
カーで最終製品に成形加工されている。
【0004】熱処理型7000系アルミニウム合金にお
いて最高強度はT6調質で得られる。JIS−W110
3及びMIL−6088Fが定める代表的な調質条件
は、7075では、溶体化処理及び焼入れを行った後に
120℃で24hrの熱処理を行うものである。ところ
が、耐食性は極端に低下する。例えば、ASTM−G4
7に従った耐SCC試験において、耐SCC応力(ST
方向)は、48N/mm2以下と極めて低い。また、A
STM−G34に従った剥離試験において、耐層状腐食
特性はランクEC〜EDと極めて低い。
【0005】耐食性を高くするため、T7調質で総称さ
れる過時効処理が一般に用いられている。耐SCC応力
は、例えばT76調質、T74調質及びT73調質でそ
れぞれ117〜172、242及び289N/mm2
高くなり、また耐層状腐食特性もそれぞれ、ランクEB
及びランクEA〜Pと高くなる。しかしながら、強度低
下が著しく、T6調質での強度に対して15〜30%低
くなる。つまり、耐食性を高くするために強度をわざわ
ざ低くして使用されるのが実状であった。
【0006】高強度で且つ高耐食性を狙った熱処理方法
としては、USP3856584が提案されている。こ
れは、溶体化処理焼入れ後に、3段階の熱処理を行うも
のであり、第1段階で時効処理を、第2段階で復元処理
を、第3段階で再時効処理を行う。具体的な熱処理条件
は、時効処理:120℃で24hr(T6調質)、復元
処理:200℃〜260℃で7〜120秒、再時効処
理:115〜125℃(時間は任意)である。しかしな
がら、復元時間は上述したように7〜120秒と極めて
短く、このため厚肉材への適用は極めて困難なものであ
る。また、復元時の熱処理方法もオイルバス等の浴槽型
の熱処理炉に限定されてしまう。
【0007】また、同様な手法は、USP522137
7でも提案されている。これは、遷移元素としてZrを
含有するAl−Zn−Mg−Cu系合金において、時効
処理及び再時効処理を120℃で24hr、復元処理を
182〜246℃の温度範囲内で5分以上保持するもの
である。これより、強度は7X50−T6より10%高
くなり579N/mm2となる。また、耐層状腐食特性
はランクEC〜EBとなり7X50−T76に匹敵する
ものになるとしている。しかしながら、耐SCC特性に
ついては具体的にどのようなミクロ組織にすればこのよ
うな特性が得られるかは全く不明である。
【0008】以上のように、熱処理型7000系アルミ
ニウム合金において、耐食性を高くする熱処理方法とし
てT76、T74、T73等の過時効処理があるが、強
度の低下が著しい。そこで、高強度と高耐食性を同時に
実現する熱処理方法として、溶体化処理及び焼入れ後の
時効、復元及び再時効からなる3段階熱処理が提案され
ているが、復元時間が数十秒と極めて短く、工業的には
実用的でない。また、復元条件を調整することで、熱処
理時間の長時間化が図られているが、耐層状腐食性はT
76調質程度とまだまだ低く、耐SCC性にいたっては
全く不明である。さらに、どのようなミクロ組織にすれ
ば高強度で高耐食性が得られるかは全く分からない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問
題点に鑑みてなされたもので、航空機、鉄道車両、自動
車等の輸送機器及び一般機械部品等の用途において、高
強度でかつ高い耐食性(耐SCC応力、耐層状腐食特
性)が要求されてきた熱処理型7000系アルミニウム
合金において、強度及び耐食性をさらに高くし、且つこ
れらの特性が工業的にも容易に製造可能な熱処理型70
00系アルミニウム合金を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に関わる高強度で
耐食性に優れるアルミニウム合金は、熱処理型7000
系アルミニウム合金において、導電率を38〜40IA
CS%とし、結晶粒界上のη相の最小間隔が20nm以
上で且つ結晶粒内のη’相の最大サイズが20nm以下
であるミクロ組織を有することを特徴とする。
【0011】また、高強度で耐食性に優れるアルミニウ
ム合金の製造方法は、熱処理型7000系アルミニウム
合金を均熱処理及び熱間加工後必要により冷間加工を行
い所定の製品サイズに調整後、溶体化熱処理及び焼入れ
後必要に応じて冷間加工を行った後、時効処理を100
〜145℃で5〜50hr、復元処理を140〜195
℃で0.5〜30hr、再時効処理を100〜145℃
で5〜50hr行うことで、導電率を38〜40IAC
S%とし、結晶粒界上のη相の最小間隔が20nm以上
で且つ結晶粒内のη’相の最大サイズが20nm以下で
あるミクロ組織を有する熱処理型7000系アルミニウ
ム合金を得ることを特徴とする。ここで、時効処理と再
時効処理の望ましい条件は130〜145℃で5〜20
hrの処理である。
【0012】
【発明の実施の形態】さて、熱処理型7000系アルミ
ニウム合金は析出硬化型の合金であり、溶体化処理及び
焼入れ後、例えば120℃で24hr人工時効すると、
粒内にGPゾーンが微細に析出するため強度は高くな
る。また、粒界上には、η相が連続析出する。η相はア
ノディックであり溶出しやすい。このため、耐SCC応
力及び耐層状腐食特性は低い。一方、熱処理型7000
系アルミニウム合金を溶体化処理及び焼入れ後、過時効
処理すると粒内のGPゾーンはη’相へと析出が進行
し、強度は低下する。この際、η’相のサイズ分布は粗
大化側にシフトする。しかしながら、粒界上のη相は粗
大化し、不連続化するため、耐SCC応力及び耐層状腐
食特性等の耐食性は高くなる。
【0013】高強度及び高耐食性を同時に実現すること
を目的とした溶体化焼入れ後の時効処理、復元処理及び
再時効処理からなる3段階の熱処理法では、粒内のGP
ゾーンの割合をできるだけ増やすことで高い強度を、ま
た、粒界上では、η相の間隔を広げることで高耐食性を
実現しようとするものである。3段階の熱処理中のミク
ロ組織の変化は、以下の通りとされている。すなわち、
溶体化処理焼入れ後の時効処理で生じた粒内のGPゾー
ンは、復元処理で再固溶するが、その後の再時効処理で
再びGPゾーンは析出する。一方、粒界上では、時効処
理で生じたη相は復元処理で粗大化し、間隔が広がるた
めに不連続化する。その後の再時効処理ではほとんど変
化しない。
【0014】USP3856584では、復元温度の高
温化で、処理時間を数十秒と短時間化されているが、熱
処理時間が短すぎ、逆に工業化を困難としている。ま
た、たとえ製品サイズに見合ったオイルバスを用意でき
た場合でも、厚肉材では加熱速度が遅く、このような短
時間で復元処理を完全に行うことは不可能である。一
方、USP5221377では、復元処理温度を182
〜246℃と、上記USP3856584の温度範囲2
00〜260℃に比べ低温化することで、処理時間の長
時間化を図っている。しかしながら、復元処理前後での
時効処理及び再時効処理はそれぞれ120℃で24hr
であり、このため3段階熱処理に必要な全熱処理時間は
約50hrときわめて長い。また、得られる材料特性
は、強度は高々579N/mm2であり、耐食性も耐層
状腐食特性がランクEC〜EBとなる程度であり、耐S
CC応力に至っては具体的な記述すらない。また、適用
される7000系合金は遷移元素としてZrを含有する
ものと限定されている。しかも、どのようなミクロ組織
にすればこのような特性が得られるかは、具体的な記述
はなく皆目わからない。
【0015】本発明による溶体化焼入れ後の時効処理、
復元処理及び再時効処理からなる3段階熱処理において
は、復元処理温度を低温化し、望ましくは時効及び再時
効処理温度を高温化することで、高強度と高耐食性を同
時に実現するものである。なお、7000系アルミニウ
ム合金の組成範囲を例示すれば、概略として、Zn:
0.1〜10wt%、Mg:0.1〜5wt%を含むと
ともに、Mn:0.4〜0.8wt%、Cr:0.15
〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.15wt%、S
c:0.01〜0.5wt%、及びCu0.1〜3wt
%よりなる群から選ばれる1種以上を含み、残部がAl
及び他の不純物からなるものである。また、その他必要
に応じて、Ti、V、Hf等の元素を含むこともある。
これらの元素は、鋳塊組織の微細化という作用を発揮す
るものであるが、成形性の劣化という観点から0.3w
t%以下に規制される。Zn、Mg、Cuは、高い強度
を得るために添加される元素であり、0.1wt%未満
では効果はない。また、Zn及びMgにおいては、添加
量がそれぞれ10wt%及び5wt%を越えると、きわ
めて加工性が劣化する。Cuにおいては、添加量が3w
t%を越えると耐食性は低下する。Mn、Cr、Zr及
びScは、主に均熱処理時に分散粒子として析出する。
これら分散粒子のサイズ分布は、添加量と均熱条件とを
組み合わせることで種々変化させることができ、これで
ミクロ組織を亜結晶組織、ファイバー組織、等軸組織等
と製品目的に応じて変化させることができる。但し、添
加量がそれぞれ0.8wt%、0.3wt%、0.15
wt%、0.5wt%を越えると成形性は大幅に低下す
る。また、それぞれ0.4wt%、0.15wt%、
0.05wt%、0.01wt%未満の添加では、上記
の目的で組織制御することは困難となる。また、靱性及
び疲労特性を高くするには、本出願人の出願に係る「破
壊靱性、疲労特性および成形性に優れるアルミニウム合
金」(特願平7−89409号)のごとく、晶出物間距
離及び分散粒子間距離を規制することで得られることは
当然である。
【0016】本発明者らは特にミクロ組織と強度及び耐
食性との関係を鋭意研究した結果、熱処理型7000系
合金において、導電率が38〜40IACS%の範囲に
おいて、結晶粒界上のη相の最小間隔が20nm以上で
あり且つ結晶粒内のη’相の最大サイズが20nm以下
にミクロ組織を制御すれば、高強度と高耐食性(高耐S
CC応力、高耐層状腐食特性)とを同時に実現できるこ
とが分かった。粒界上のη相の最小間隔が20nm未満
であると、各η相が腐食環境下において連続的に溶出す
るため、耐SCC応力及び耐層状腐食特性は劣る。強度
にはGPゾーンが寄与するわけであるが、これは導電率
38〜40IACS%の範囲内において、粒内のη’相
の最大サイズを20nm以下にすることで高い強度が得
られる。たとえ導電率38〜40IACS%の範囲内に
おいても粒内のη’相の最大サイズが20nmを越える
ような時効状態では、強度に寄与すべきGPゾーンは
η’相へと析出が進行している。このため、GPゾーン
の析出量が減少し、高い強度は得られない。また、この
ような時効状態では、一部のη’相がη相へと析出が進
行しているため、ますますGPゾーンの析出量は減少す
る。一方、導電率が40IACS%を越える領域では、
粒内中のη相の割合が顕著に増加する時効段階にあり、
高い強度は得られない。また、導電率が38IACS%
以下では、粒界上のη相は粗大化しないため、η相の間
隔を大きくすることができず、このため耐食性は低下す
る。
【0017】また、これらのミクロ組織は、熱処理型7
000系アルミニウム合金において、常法に則り均熱処
理及び熱間加工後必要により冷間加工を行い所定の製品
サイズに調整後、常法に則り溶体化熱処理及び焼入れ
後、必要に応じて冷間加工を行った後、時効処理を10
0〜145℃で5〜50hr望ましくは130〜145
℃で5〜20hr、復元処理を140〜195℃で0.
5〜30hr、再時効処理を100〜145℃で5〜5
0hr望ましくは130〜145℃で5〜20hr行う
ことで容易に得られる。
【0018】特に、復元処理においては温度が高すぎた
り、あるいは低温でも処理時間が長すぎるとGPゾーン
の復元が進行するとともに、η相及び粗大なη’相が析
出してしまい、その後の再時効処理を行っても高い強度
を得ることは困難である。復元処理でη相及び粗大な
η’相の析出を防止するには、195℃を越えると処理
時間が0.5hr未満とする必要がある。また、140
℃未満では、処理時間が30hrを越えてしまう。それ
ぞれ工業的に実用的条件ではない。従って、復元処理条
件は140〜195℃で0.5〜30hrとする。
【0019】時効処理においては、粒内にη相及び粗大
なη’相が析出する状態にまで時効析出を進行させては
ならず、そのような状態まで時効析出が進行すると、復
元処理時に復元するGPゾーンの量が減るため、再時効
処理時に最終的に析出するGPゾーンの量が減る。この
ため、十分な強度は得られない。また、逆に時効処理が
不十分でGPゾーンが僅かに析出する場合、この状態で
次の復元処理を行っても、上述したように復元処理時に
復元するGPゾーンの量が減るため、再時効処理時に最
終的に析出するGPゾーンが減る。このため、十分な強
度は得られない。このように時効処理時には、復元処理
時に復元するGPゾーンを十分に析出させる必要があ
る。
【0020】時効処理温度が145℃を越えると短時間
でη相及び粗大なη’相が析出しやすくなり、その分G
Pゾーンの量が減る。また、100℃未満では、十分な
GPゾーンを析出させるには50hrを越える処理時間
を必要とする。従って、時効処理条件は100〜145
℃で5〜50hrとする。なお、時効処理を130〜1
45℃で高温化すると十分なGPゾーンが析出し易く、
また、時効処理時間を短縮化できるため、工業的にも有
利である。さらに、粒界上では、η相が130℃未満で
時効処理した場合に比べ間隔を広げて析出する。時効処
理後の復元処理時には、これらのη相が粗大化するわけ
であり、時効処理時に既にη相の間隔を広げておくこと
で、復元処理が終わった時点でもη相の間隔を広げる事
ができる。η相の間隔を広げる事で耐食性も高くするこ
とができる。
【0021】再時効処理においても、粒内にη相及び粗
大なη’相が析出する状態にまで時効析出を進行させて
はならず、そのような状態にまで時効析出が進行する
と、当然のことながら高い強度は得られない。また、逆
に時効処理が不十分でGPゾーンが僅かに析出する場合
でも、当然のことながら、十分な強度は得られない。こ
のため、再時効条件は、時効条件と同様に100〜14
5℃で5〜50hrとする。なお、時効処理は溶体化処
理及び焼入れ後に行うため、空孔濃度が高くZn、Mg
等の溶質原子が拡散し易い。一方、再時効処理は時効処
理及び復元処理を行った後に行うため空孔濃度は低下し
ており、高い強度が得られる程にZn、Mgを拡散させ
るには、時効処理に比べて時間を要する。従って、再時
効処理は、100〜145℃で5〜50hrの条件中で
も130〜145℃で5〜20hrで行うことがなお望
ましい。
【0022】なお、時効処理、復元処理及び再時効処理
の各条件は、製品サイズによって熱処理時間が前後する
ことは当然であるが、要するに導電率が38〜40IA
CS%の範囲において、結晶粒界上のη相の最小間隔を
20nm以上で且つ結晶粒内のη’相の最大サイズを2
0nm以下に制御することが重要である。
【0023】本発明の高強度で耐食性に優れる熱処理型
7000系アルミニウム合金は、押出形材製品では例え
ば溶解鋳造にて鋳塊にした後、均質化熱処理及び熱間押
出後、溶体化処理及び焼入れが行われ、その後必要に応
じて行われる冷間加工(例えば、ストレッチ加工)後、
時効処理を100〜145℃で5〜50hr望ましくは
130〜145℃で5〜20hr、復元処理を140〜
195℃で0.5〜30hr、再時効処理を100〜1
45℃で5〜50hr望ましくは130〜145℃で5
〜20hr行うことにより製造される。溶解鋳造、均質
化熱処理、熱間押出、溶体化処理及び焼入れ、ストレッ
チ等の各製造工程での条件は常法に則り行われればよ
く、溶解鋳造は半連続鋳造法、連続鋳造圧延法であって
もよい。
【0024】溶体化処理及び焼入れ条件は金属間化合物
を再固溶し且つ冷却中の再析出を十分に抑制するため、
特に本発明材を航空機材に適用する場合はJIS−W−
1103、MIL−H−6088Fに規定された条件内
にて行うことが望ましい。溶体化処理及び焼入れ後の結
晶粒径は熱間押出あるいは熱間圧延時の温度、加工率等
の条件とその後必要に応じて行われる冷間加工での圧下
率さらには溶体化処理中の昇温速度との組合せにより任
意に調整できる。溶体化処理に使用される熱処理炉はバ
ッチ炉、連続焼鈍炉、溶融塩浴炉のいずれを用いてもよ
いが、結晶粒径を微細にするには5℃/分以上の昇温速
度で加熱することがなお望ましい。また焼入れは水浸
漬、水噴射、空気噴射のいずれを用いてもよい。溶体化
処理及び焼入れ後に行われる時効処理、復元処理及び再
時効処理はバッチ炉、連続焼鈍炉、熱風ファン、オイル
バス、温湯浴槽等のいずれを用いてもよい。
【0025】なお、本発明は熱処理型7000系アルミ
ニウム合金展伸材に適用できるものであり板材、形材及
び鍛造材を問わないことは当然のことである。
【0026】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳述す
る。 (実施例1)Zn5.9wt%、Mg2.3wt%、C
u1.4wt%、Cr0.19wt%、Fe0.23w
t%、Si0.08wt%を含み残部不純物とアルミニ
ウムとからなるアルミニウム合金を、溶湯中水素濃度
0.02cc/100mlAlまで脱ガス後溶解鋳造
し、φ400mmの鋳塊とした。次に450℃で24h
rの均熱処理を施した後、φ380mmまで面削し、4
50℃に再加熱し、t25×w120mmサイズに押し
出した。これを475℃に加熱した塩浴炉中で40分間
溶体化処理した後水焼入れし、0.5%のストレッチ引
張を行った後に、下記表1に示す時効処理、復元処理及
び再時効処理からなる3段階の熱処理を行い、それぞれ
供試材とした。
【0027】
【表1】
【0028】続いて、この供試材につき、導電率、粒内
η’相最大サイズ、粒界η相の最小間隔、強度、耐SC
C応力、耐層状腐食特性を調べた。その結果を表2に示
す。なお、導電率はJIS−H0505の導電率測定方
法に従い、強度は押出方向に採取したJIS14A号試
験片を用いてJIS−Z2241の引張試験方法に従
い、耐SCC応力はASTM−G47の耐SCC試験に
従い、耐層状腐食特性はASTM−G34の剥離試験に
従って求めた。粒内η’相最大サイズ及び粒界η相最小
間隔はTEMによるミクロ組織観察の結果である。粒内
η’相最大サイズは5万倍の倍率で20視野(視野:5
cm×3.5cm)以上観察し、全視野中の最大サイズ
を示す。また、粒界η相間隔も5万倍の倍率で20視野
以上観察し、全視野中の最小間隔を示す。
【0029】
【表2】
【0030】表2よりわかるように、導電率、粒内η’
相最大サイズ及び粒界η相最小間隔が本発明の規定を満
たす発明例1〜4は、そのいずれをも満たさない比較例
1、2に比べ、強度及び耐食性が向上している。粒内
η’相最大サイズがより小さく、粒界η相間隔がより大
きくなっている発明例1〜3、なかでも発明例1の強度
及び耐食性が向上している。製造法の面からみると、発
明例4の製造法のように比較例に比べ復元温度を低温化
することで強度及び耐食性は向上している。時効処理及
び再時効処理温度を高温化した発明例1〜3では、強度
及び耐食性はさらに向上する。特に、発明例1では強度
と耐食性が優れ、総熱処理時間は約23hrと、比較例
1と2に比べて半減している。
【0031】(実施例2)Zn5.9wt%、Mg2.
3wt%、Cu2.2wt%、Zr0.12wt%、F
e0.09wt%、Si0.08wt%を含み残部不純
物とアルミニウムとからなるアルミニウム合金を、溶湯
中水素濃度0.015cc/100mlAlまで脱ガス
後溶解鋳造し、φ400mmの鋳塊とした。次に450
℃で24hrの均熱処理を施した後、φ380mmまで
面削し、450℃に再加熱し、t25×w120mmサ
イズに押し出した。これを475℃に加熱した塩浴炉中
で40分間溶体化処理した後、水焼入れし、0.5%の
ストレッチ引張を行った後に、下記表3に示す時効処
理、復元処理及び再時効処理からなる3段階の熱処理を
行い、それぞれ供試材とし、この供試材につき、実施例
1と同様に導電率、粒内η’相最大サイズ、粒界η相最
小間隔、強度、耐SCC応力、耐層状腐食特性を調べ
た。その結果を表4に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】表4よりわかるように、導電率、粒内η’
相最大サイズ及び粒界η相最小間隔が本発明の規定を満
たす発明例5〜7は、そのいずれか又はいずれをも満た
さない比較例3、4に比べ、強度及び耐食性が向上して
いる。なかでも、粒内η’相最大サイズがより小さく、
粒界η相間隔がより大きくなっている発明例6、7の強
度及び耐食性が向上している。製造法の面からみると、
本発明例7の製造法のように比較例に比べ復元温度を低
温化することで強度及び耐食性は向上している。さら
に、時効処理及び再時効処理温度を高温化した発明例5
と6では、強度及び耐食性はさらに向上し、総熱処理時
間は約23hrと、比較例3と4に比べて半減する。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、熱処理型7000系ア
ルミニウム合金の強度及び耐食性をさらに高くすること
ができ、且つこれを工業的にも容易に製造可能となる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱処理型7000系アルミニウム合金に
    おいて、導電率を38〜40IACS%とし、結晶粒界
    上のη相の最小間隔が20nm以上で且つ結晶粒内の
    η’相の最大サイズが20nm以下であるミクロ組織を
    有することを特徴とする高強度で耐食性に優れるアルミ
    ニウム合金。
  2. 【請求項2】 熱処理型7000系アルミニウム合金を
    均熱処理及び熱間加工後必要により冷間加工を行い所定
    の製品サイズに調整後、溶体化熱処理及び焼入れ後必要
    に応じて冷間加工を行った後、時効処理を100〜14
    5℃で5〜50hr、復元処理を140〜195℃で
    0.5〜30hr、再時効処理を100〜145℃で5
    〜50hr行うことで、導電率を38〜40IACS%
    とし、結晶粒界上のη相の最小間隔が20nm以上で且
    つ結晶粒内のη’相の最大サイズが20nm以下である
    ミクロ組織を有する熱処理型7000系アルミニウム合
    金を得ることを特徴とする高強度で耐食性に優れるアル
    ミニウム合金の製造方法。
  3. 【請求項3】 時効処理と再時効処理を130〜145
    ℃で5〜20hr行うことを特徴とする請求項2に記載
    された高強度で耐食性に優れるアルミニウム合金の製造
    方法。
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