JPH09283A - 超臨界二酸化炭素雰囲気下の酵素反応 - Google Patents

超臨界二酸化炭素雰囲気下の酵素反応

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JPH09283A JP4269349A JP26934992A JPH09283A JP H09283 A JPH09283 A JP H09283A JP 4269349 A JP4269349 A JP 4269349A JP 26934992 A JP26934992 A JP 26934992A JP H09283 A JPH09283 A JP H09283A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】超臨界二酸化炭素雰囲気下で、一級テルペンア
ルコールと脂肪酸のエステル化反応を、リパーゼ酵素を
固定化した粉末を充填した反応器内で連続的に行い、超
臨界二酸化炭素の圧力、温度を調節することによりエス
テル生成物を収率良く合成すると共に、ラセミ化合物を
分割し、光学純度の高いエステル生成物を合成する。酵
素としてCandida cylindracea lipase MYを、基質とし
て一級テルペンアルコールと脂肪酸を使用する。 【効果】有機合成の立場から工業的にも重要であるエス
テル化合物を、室温付近の温和な条件下でで収率良く製
造することができる上、超臨界二酸化炭素の温度、圧力
の調節のみによって、立体選択的なエステル合成反応を
実現できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機合成化学工業の立
場から重要であるラセミ分割を目的としたエステル合成
反応を、リパーゼ酵素を触媒として、二酸化炭素の臨界
温度以上及び臨界圧力以上の超臨界二酸化炭素雰囲気下
で行い、収率良く、立体選択的に目的物質を合成する方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、有機溶媒中での生化学反応が注目
され、その利用例が増加している。有機溶媒の使用目的
は、脂溶性化合物を溶解して水溶液中では得られない均
一な反応系を実現するためであるが、一方で有機溶媒と
の接触によるストレスのために酵素が変性し、その特異
性が失われる場合が多々ある。そのため有機溶媒のよう
に脂溶性化合物を速やかに溶解できるが、その接触によ
り酵素の高次構造が破壊されることが無いような媒体の
利用が強く求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、一級テルペ
ンアルコールと脂肪酸のエステル化反応において、エス
テル生成物を収率良く合成すると共に、ラセミ化合物を
分割し、光学純度の高いエステル生成物を合成する方法
を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、超臨界二酸
化炭素雰囲気下で、一級テルペンアルコールと脂肪酸の
エステル化反応を、リパーゼ酵素を固定化した粉末を充
填した反応器内で連続的に行い、超臨界二酸化炭素の圧
力、温度を調節することのみににより、エステル生成物
を収率良く合成すると共に、ラセミ化合物を分割し、光
学純度の高いエステル生成物を合成できることを見いだ
し、本発明に至った。
【0005】一般に、気体と、固体或は液体を接触させ
た場合、常温、常圧下において気相に移行する固体ある
いは液体の量は、極めて僅かである。しかし、その気体
が臨界温度以上及び臨界圧力以上の状態では、気相に移
行する固体或は液体の量は飛躍的に増大するので、超臨
界二酸化炭素は温和な条件下でも高分子量有機化合物を
溶解できる。即ち、超臨界二酸化炭素を反応媒体として
使用すれば、反応物を効果的に系内に拡散させたり、副
生成物を速やかに系外に除去できる利点を有する。これ
により、平衡的にも有利な有機化学反応を構築でき、反
応を効率的に進行できる可能性がある。近年、有機溶媒
中での生化学反応が注目され、その利用例が増加してい
る。有機溶媒の使用目的は、脂溶性化合物を溶解して水
溶液中では得られない均一な反応系を実現するためであ
るが、一方で有機溶媒との接触によるストレスのために
酵素が変性し、その特異性が失われる場合が多々ある。
その点、超臨界二酸化炭素の臨界温度は31゜Cと室温
付近にあり、その接触により酵素の高次構造が破壊され
ることが無い上、超臨界二酸化炭素は脂溶性化合物を速
やかに溶解できるので、酵素反応の反応媒体として使用
することにより、反応速度の向上が期待できる。本発明
は、上述の超臨界二酸化炭素の性質に着目し、当該流体
の温度、圧力を調節することにより、一級テルペンアル
コールと脂肪酸のエステル化反応を、リパーゼを固定化
した粉末を充填した反応器内で行い、エステル生成物を
収率良く合成するに至った。
【0006】最近、超臨界二酸化炭素はその臨界点付近
で温度、圧力によってその溶媒特性が著しく変化するこ
とが知られるようになった。とりわけ、臨界点付近では
溶質分子近傍領域で二酸化炭素分子の凝集作用が起こ
り、クラスターを形成する。即ち、臨界点付近では溶質
−二酸化炭素分子間の相互作用力が著しく増大し、その
作用は温度、圧力に強く依存する。そこで、この臨界点
付近での二酸化炭素分子の強い凝集力を酵素反応プロセ
スに応用することを検討した。酵素は基質に比ベて柔軟
な構造を有しているので、上述した臨界点付近での二酸
化炭素分子の立体圧迫性は酵素の高次構造に対して強い
影響を及ぼし、その特異性を変化させる可能性がある。
本発明者は、これらのことに着目し、超臨界二酸化炭
素雰囲気下で、キラル原子を有する一級テルペンアルコ
ールと脂肪酸の反応を、リパーゼを固定化した粉末を充
填した反応器内で行い、その反応速度及びエステル生成
物の光学純度の温度、圧力依存性について検討した。そ
の結果、当該反応は、臨界点付近で反応速度が著しく増
大し、かつラセミ分割の結果、光学純度の高い(S)−
(−)−エステル生成物を合成できることを見いだし、
本発明に到達したものである。
【0007】反応圧力については、圧力の増加につれて
その収率はよくなるが、その改善の程度は減少する。そ
こで経済性も考慮して圧力の設定値を7.5〜20MP
aとし、条件によって、圧力を20MPa以上に昇圧す
る。温度は二酸化炭素の臨界温度(31.2℃)以上で
あるが、臨界温度及びそれより10℃高い温度範囲を用
いる。
【0008】
【作用】本発明法によって得られるエステル生成物の収
率は、二酸化炭素の臨界圧力を越えると4倍以上に増大
し、水飽和シクロヘキサン溶液中で同温度で当該反応を
行った場合に比べると、6倍以上に向上する。臨界点付
近で生成物の立体選択性も著しく向上し、ほぼ100%
近い光学純度を有する(S)−(−)−エステル化合物
が合成される。以下に、実施例を示すが、本発明は、こ
れらの実施例に限定されるものではない。
【0009】
【実施例】基質として、オレイン酸と(±)−シトロネ
ロールを用い、超臨界二酸化炭素雰囲気下でのリパーゼ
によるエステル化反応を連続的に行う。リパーゼはリン
酸緩衝液に溶解し、グルタルアルデヒドによって前処理
したグラスビーズ上に固定化した後、反応器(長さ:1
30mm、内径4.6mm)に充填する。二酸化炭素の
流量は0.17NL/min(1NLは温度20℃,圧
力101.3kPaでのガス容積が1Lであることを意
味する。)で、高圧ポンプによって送液し、圧力は圧力
調整弁によって行う。オレイン酸と(±)−シトロネロ
ールの供給速度は、それぞれ2.44,3.15μmo
l/minで、両基質を各高圧ポンプによって送液し混
合器中で攪はんした後、反応器に送る。エステル化反応
は圧力7.58−19.30MPa,温度31.2−4
1.2℃で行った。更に、超臨界二酸化炭素中の反応と
比較するため、参照反応として水飽和シクロヘキサン中
で同様な反応を行った。反応生成物のoleic ac
id 3.7−dimethyl−6−octenyl
ester(以下、エステル生成物と記す。)はガス
クロマトグラフィーによって分析した。エステル生成物
の光学純度は、カラムクロマトグラフィ−によって反応
混合物から単離後、ポーラリメーターによって決定し
た。
【0010】表1に35.2℃でのエステル化反応の反
応速度の圧力依存性を示した。超臨界二酸化炭素雰囲気
下でのエステル化反応は、水飽和シクロヘキサン溶液中
での反応に比べて、反応速度が大きい。更に、超臨界二
酸化炭素雰囲気下ではその圧力が増加するにつれて反応
速度が増大し、その傾向は臨界圧力付近で顕著である。
19.3MPaの反応速度は、7.58MPaのそれに
比べて4倍以上に向上する。
【0011】表2にエステル生成物の光学純度の温度、
圧力依存性を示した。相対的に臨界点付近で(S)−
(−)−エステル生成物の光学純度が高い。特に、圧力
8.41MPa,温度31.2℃ではその光学純度が9
8.9%とほぼ立体選択的に(S)−(−)−エステル
生成物を合成できた。同様の反応を水飽和シクロヘキサ
ン溶液中で行っても、上述のラセミ分割はまったく観察
できなかった。また、超臨界二酸化炭素雰囲気下におい
ても、臨界点より高い圧力、温度領域では、その光学純
度は著しく低下し、その光学分割は臨界点付近でのみ生
ずる。
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の効果】本発明によって、有機合成の立場から工
業的にも重要であるエステル化合物を、室温付近で収率
良く製造することができる上、超臨界二酸化炭素の温
度、圧力の調節のみによって、立体選択的なエステル合
成反応を実現できる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12P 41/00 C12R 1:72) C07M 7:00 (72)発明者 伊東 祥太 宮城県仙台市青葉区木町16−10−105

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酵素によるエステル合成反応を、二酸化
    炭素の臨界温度以上及び臨界圧力以上(以下、超臨界二
    酸化炭素と記す。)の雰囲気下で行う方法。
  2. 【請求項2】基質としてキラル原子を有する一級テルペ
    ンアルコールと脂肪酸を用い、そのエステル化反応をざ
    臨界二酸化炭素雰囲気下で行う特許請求の範囲の第
    (1)項記載の方法。
  3. 【請求項3】酵素として、Candida cylindracea lipase
    MY(以下、リパーゼと記す。) を使用する特許請求の
    範囲第(1)項、または第(2)項記載の方法。
  4. 【請求項4】二酸化炭素の臨界温度、またはそれより1
    0℃高い温度範囲で行う特許請求の範囲第(1)項、第
    (2)項、または第(3)項記載の方法。
  5. 【請求項5】二酸化炭素の臨界圧力より0.1〜15M
    Pa高い圧力範囲で行う特許請求の範囲第(1)項、第
    (2)項、第(3)項、または第(4)項記載の方法。
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