JPH09283841A - 分布帰還型半導体レーザ装置及びその製造方法、並びに露光方法 - Google Patents

分布帰還型半導体レーザ装置及びその製造方法、並びに露光方法

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JPH09283841A
JPH09283841A JP8092854A JP9285496A JPH09283841A JP H09283841 A JPH09283841 A JP H09283841A JP 8092854 A JP8092854 A JP 8092854A JP 9285496 A JP9285496 A JP 9285496A JP H09283841 A JPH09283841 A JP H09283841A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 屈折率結合による分布帰還と利得結合による
分布帰還とが混在する分布帰還型半導体レーザ装置10
0において、誘導放出光の高速での直接変調を行った時
にも発振波長を単一波長に保持する。 【解決手段】 誘導放出光を発生する活性層105を含
み、かつ該誘導放出光の導波方向にて該誘導放出光に対
する屈折率及び利得が同一の単一周期でもって周期的に
変動した、屈折率分布及び利得分布を有する素子構造と
して回折格子107を備え、該回折格子107を、その
屈折率及び利得の周期的な変動における位相の不連続部
100aを有し、該位相の不連続部では、0[rad]
より大きくかつπ[rad]より小さい範囲、またはπ
[rad]より大きくかつ2π[rad]より小さい範
囲で位相がシフトした構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、単一波長でレーザ
発振する分布帰還型半導体レーザ装置(DFB−LD:
Distributed Feed Back Laser Diode)に関し、特
に利得の周期分布によって分布帰還をもたらせる機構を
有する利得結合分布帰還型半導体レーザ装置(GC−D
FB−LD:Gain−Coupled DFB−LD)に関す
る。
【0002】
【従来の技術】分布帰還型半導体レーザ装置(以下、D
FB−LDともいう。)は、誘導放出光を発生する活性
層を含み、かつ該誘導放出光の導波方向にて該誘導放出
光に対する屈折率や利得等が周期的に変動した素子構造
を有し、該誘導放出光が該屈折率や利得などの周期的な
変動により光分布帰還を受けて唯一の波長でレーザ発振
が生ずるよう構成したものである。
【0003】ここで、上記DFB−LDのうちの、屈折
率の周期的な変動によって、いわゆる屈折率結合によっ
て分布帰還が生じるものを屈折率結合分布帰還型半導体
レーザ装置(IC−DFB−LD:Index−Coupled
DFB−LD)と呼び、利得の周期的な変動によって、
いわゆる利得結合によって分布帰還が生じるものを利得
結合分布帰還型半導体レーザ装置(GC−DFB−L
D:Gain−Coupled)と呼び、両者を区別する。
【0004】GC−DFB−LDでは、IC−DFB−
LDと比較して、単一波長でレーザ発振が格段に起こり
やすいことが、例えば、Journal of Applied Physics,
1972年,第43巻,2327頁(参考文献1)に示
されている。
【0005】また、実用上重要な点として、GC−DF
B−LDでは、強い戻り光にも雑音を発生しないといっ
た、IC−DFB−LDには見られない優れた特徴を有
している。
【0006】また、半導体レーザの高出力化,高効率化
を図るのに重要な半導体レーザ素子の出射端面の反射率
の設定については、IC−DFB−LDでは実質的に端
面反射率を無くさなければならないのに対し、GC−D
FB−LDでは任意の値に設定することができ、端面反
射に関する設定の自由度が大きく、レーザ素子の構造の
最適化に有利である。
【0007】このように様々な優れた特性を発揮するG
C−DFB−LDは、光計測装置、高速光伝送装置、光
記録装置等における単一波長光源として実用上大変有用
なものである。
【0008】ところで、GC−DFB−LDを実現する
ためには、半導体レーザ素子の内部に利得を周期的に変
化させる構造を導入する必要があり、大別して2つの方
法がある。
【0009】第1の方法は、活性層の形状や物性、さら
には活性層への注入電流の密度等を周期的に変化させた
構造(利得性回折格子)をレーザ素子内部に形成し、活
性層自体をその利得が周期的に変化した構造とするとい
うものである。また、第2の方法は、均一な利得を発生
する活性層の近傍に光を吸収する領域を周期的に配置し
た構造(吸収性回折格子)を形成し、この構造により実
効的に利得の摂動が生じるようにするというものであ
る。ここで述べた後者の構造に関しては、特公平6−7
624号公報に基本となる構造が開示されており、以下
図面を用いて簡単に説明する。
【0010】図9は、上記公報に開示されているGC−
DFB−LDの構造を示す図である。図において、90
0は、誘導放出光を発生する、アンドープのun−Al
GaAs活性層905を有するGC−DFB−LDで、
このGC−DFB−LD900は、該活性層905近傍
に誘導放出光の導波方向に沿って光吸収領域が周期的に
配置され、これによって実効的に利得の周期的摂動が生
じる素子構造となっている。
【0011】すなわち、上記レーザ装置900を構成す
るp−GaAs基板901上には、ストライプ状の開口
902aを有するn−GaAs電流狭窄層902が形成
されている。また、該電流狭窄層902及びその開口9
02a内に露出する基板表面上には、p−AlGaAs
クラッド層904が形成されており、該電流狭窄層90
2の開口902a部分が電流狭窄溝903となってい
る。
【0012】さらに、上記クラッド層904上には、ア
ンドープのun−AlGaAs活性層905が形成され
ており、該活性層905上には、n−AlGaAsバッ
ファ層906を介してn−GaAs光吸収層907が形
成されている。この光吸収層907は、その厚さが上記
ストライプ状開口902aの長手方向に沿ってその厚さ
が周期的に変化した構造となっている。
【0013】この光吸収層907上には、上面が平坦な
n−AlGaAsクラッド層908が形成され、該クラ
ッド層908の表面はn−GaAsキャップ層909に
より覆われている。
【0014】そして、上記p−GaAs基板901の裏
面にはp電極910aが形成され、上記n−GaAsキ
ャップ層909の表面にはn電極910bが形成されて
いる。
【0015】次に製造方法について説明する。まず、p
−GaAs基板901上にn−GaAs電流狭窄層90
2を液相成長法により結晶成長し、その後、該電流狭窄
層902及び基板901の表面領域を選択的にエッチン
グして電流狭窄溝903を形成する。
【0016】次に、上記電流狭窄層902及び電流狭窄
溝903上全面に、p−AlGaAsクラッド層904
をその表面が平坦となるよう液相成長法により結晶成長
し、続いて、un−AlGaAs活性層905、n−A
lGaAsバッファ層906、及びn−GaAs光吸収
層907を液相成長法により順次結晶成長する。
【0017】その後、二光束干渉露光法とウエットエッ
チングにより光吸収層907を選択的にエッチングし
て、周期2400オングストロームの回折格子を光吸収
層907の表面部分に形成する。
【0018】次に、光吸収層907上にn−AlGaA
sクラッド層908及びn−GaAsキャップ層909
を順次結晶成長する。その後基板の裏面側、及び結晶成
長層の表面側にそれぞれp電極910a及びn電極91
0bを付けて、GC−DFB−LD900を完成する。
【0019】このような構成のGC−DFB−LD90
0では、回折格子が形成された光吸収層907によっ
て、活性層で発生する誘導放出光の利得の、実効的な周
期的変化が生ずることとなる。これにより誘導放出光の
利得結合が生じて単一波長でのレーザ発振が生ずる。
【0020】ところが、上記GC−DFB−LD900
の構造においても、GaAs光吸収層907とAlGa
Asクラッド層908との屈折率が異なるため、屈折率
の周期変化に伴う誘導放出光の屈折率結合が利得結合と
同時に発生し、利得結合に基づく優れた特性が弱められ
るという問題があった。
【0021】なお、このように誘導放出光の屈折率結合
と利得結合とが混在したDFB−LDは、部分GC−D
FB−LD(Partial GC−DFB−LD)と呼ば
れ、また、誘導放出光の利得結合のみにより誘導放出光
の分布帰還が生じる純粋なGC−DFB−LDは、真性
GC−DFB−LD(Pure GC−DFB−LD)と呼
ばれ、両者は区別される。
【0022】また、特開平5−29705号公報には、
上記のようなGC−DFB−LDにおける利得結合と屈
折率結合との混在により、利得結合によるレーザ発振の
優れた特性が弱められるという問題に対する対策を施し
た分布帰還型半導体レーザ装置が開示されている。
【0023】この公報に記載の分布帰還型半導体レーザ
装置は、屈折率の周期変化を打ち消す構造を導入したも
のであり、以下図10を用いてその主要部の構成を説明
する。
【0024】図10(a)は、活性層近傍に形成された
吸収性回折格子の構造を示している。この構造では、活
性層で発生される誘導放出光に対して透明な下側の透明
層13上に、光吸収層11が導波方向に沿って一定間隔
で繰り返し配置されており、該透明層13の、隣接する
光吸収層11間に対応する表面部分には、溝部13aが
形成されている。そして、上記光吸収層11及び下側の
透明層13の溝部13a上には、上記誘導放出光に対し
て透明な上側の透明層12が形成されている。
【0025】そして、ここでは、上側の透明層12の屈
折率を下側の透明層13の屈折率より大きくし、光吸収
層13の屈折率を該上側の透明層12の屈折率より大き
くしている。
【0026】図10(b)は、図10(a)のA−A’
線部分での屈折率分布、及びB−B’線部分での屈折率
分布を示している。この図10(b)に示すように、上
記光吸収層11が周期的に並ぶ方向では、A−A’線部
分での屈折率の高低変化の位相と、B−B’線部分での
屈折率の高低変化の位相とが逆転している。ここで、光
吸収層11及び下側の透明層13と上側の透明層12と
の界面の形状を精密に調整することによって、全体とし
て屈折率の周期変化分がキャンセルされた吸収性回折格
子を実現することができ、純粋に利得結合による分布帰
還だけが生ずる真性GC−DFB−LDの構造を得るこ
とができる。
【0027】また、特開平4−155987号公報に
は、上記吸収性回折格子における屈折率の周期変化分を
キャンセルする構造を、利得性回折格子に適用したレー
ザ装置が開示されており、このレーザ装置は、屈折率の
周期変動の位相が逆転した領域を近接配置して、全体と
して屈折率の周期変化分がキャンセルされた利得性回折
格子を備えている。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】まず、上述した従来の
部分GC−DFB−LDの素子構造では、IC−DFB
−LDのものと比較して単一波長でレーザ発振する素子
が得られる割合(歩留まり)が格段に良くなるものの、
誘導放出光の高速での直接変調を行った時には、波長の
不連続なシフト(モードホップ)現象や複数の波長の同
時発振(マルチモード化)が生じるという問題があり、
このような問題は実用上の障害となっていた。
【0029】また、従来の屈折率の周期変化を打ち消し
た構造の真性GC−DFB−LDにおいても、回折格子
の形状,深さ等がわずかにずれるだけで、図10(a)
に示すA−A’部分とB−B’部分との間で屈折率の周
期変化のバランスが大きく崩れてしまい、屈折率の周期
変化を完全にキャンセルすることが困難となるという問
題があった。
【0030】言い換えると、屈折率の周期変化をうまく
キャンセルする構造を作るには非常に高い加工精度と再
現性が要求され、作製は非常に困難であるということで
ある。例えば、DFB−LDの回折格子は、ピッチ10
0〜400nmといった極めて小さい格子(凸凹形状)
を多数必要とするものであり、このような多数の凸凹形
状をこれらが狙い通りの形状になるよう処理条件を制御
して形成することは非常に難しい。
【0031】このように真性GC−DFB−LDを作ろ
うとしても、実際に作製されるレーザ素子は、誘導放出
光の分布帰還における屈折率結合の成分を完全に打ち消
すことが実現不可能であることから、部分GC−DFB
−LDになってしまい、事実上、優れた真性GC−DF
B−LDを作製するのは不可能に近い。
【0032】本発明は上記のような問題点を解決するた
めになされたもので、屈折率結合による分布帰還と利得
結合による分布帰還とが混在する素子構造においても、
誘導放出光の高速変調を行った時にも発振波長を単一波
長に保持することができる分布帰還型半導体レーザ装置
及びその製造方法を得ることを目的とする。
【0033】また、本発明は、上記分布帰還型半導体レ
ーザ装置における回折格子を形成するためのマスクパタ
ーンの形成に適した露光方法を得ることを目的とする。
【0034】
【課題を解決するための手段】この発明(請求項1)に
係る分布帰還型半導体レーザ装置は、誘導放出光を発生
する活性層を含み、かつ該誘導放出光の導波方向にて該
誘導放出光に対する屈折率及び利得が同一の単一周期で
もって周期的に変動した、屈折率分布及び利得分布を有
する素子構造を備え、該誘導放出光が該屈折率及び利得
の周期的な変動により光分布帰還を受けてレーザ発振が
生ずるよう構成したものである。
【0035】そして上記素子構造は、その屈折率及び利
得の周期的な変動における位相の不連続部を有し、該位
相の不連続部では、0[rad]より大きくかつπ[r
ad]より小さい範囲、またはπ[rad]より大きく
かつ2π[rad]より小さい範囲で位相がシフトして
いる。そのことにより上記目的が達成される。
【0036】この発明(請求項2)に係る分布帰還型半
導体レーザ装置は、誘導放出光を発生する活性層を含
み、かつ該誘導放出光の導波方向にて該誘導放出光に対
する屈折率及び利得が同一の単一周期でもって周期的に
変動した、屈折率分布及び利得分布を有する素子構造を
備え、該誘導放出光が該屈折率及び利得の周期的な変動
により光分布帰還を受けてレーザ発振が生ずるよう構成
したものである。
【0037】この分布帰還型半導体レーザ装置では、該
素子構造における利得の周期的な変動は、該誘導放出光
の吸収によるものであり、該素子構造は、その屈折率及
び利得の周期的な変動における位相の不連続部を有して
いる。そのことにより上記目的が達成される。
【0038】この発明(請求項3)は、請求項1または
2記載の分布帰還型半導体レーザ装置において、前記素
子構造を、前記誘導放出光の導波経路における屈折率変
動の位相と利得変動の位相とが同位相あるいは逆位相の
関係となっているものとし、前記位相の不連続部での位
相シフト量を、該屈折率変動の位相と利得変動の位相と
が同位相である場合には、π[rad]より大きくかつ
2π[rad]より小さい範囲内に設定し、該屈折率変
動の位相と利得変動の位相とが逆位相である場合には、
0[rad]より大きくかつπ[rad]より小さい範
囲内に設定したものである。
【0039】この発明(請求項4)は、請求項1ないし
3のいずれかに記載の分布帰還型半導体レーザ装置にお
いて、前記位相の不連続部での位相シフト量Ωを、前記
屈折率分布による分布帰還の程度を示す屈折率結合定数
κiと、前記利得分布による分布帰還の程度を示す利得
結合定数κgとに基づいて、前記屈折率変動の位相と利
得変動の位相とが同位相である場合には、下記(1),
(2),(3)式の関係を概ね満たし、 Ω[rad] =π+5.7R−2.6R2 ・・・(1) R=κg/(κg 2+κi 21/2 ・・・(2) 0<R<1 ・・・(3) 前記屈折率変動の位相と利得変動の位相とが逆位相であ
る場合には、上記(2),(3)式及び下記(4)式の
関係を概ね満たすよう Ω[rad] =π−5.7R+2.6R2 ・・・(4) 設定したものである。
【0040】この発明(請求項5)は、請求項1ないし
4のいずれかに記載の分布帰還型半導体レーザ装置にお
いて、前記位相の不連続部での位相シフト量を、前記屈
折率分布による分布帰還の程度を示す屈折率結合定数κ
iと、前記利得分布による分布帰還の程度を示す利得結
合定数κgとが、下記の2つの関係式 0.3≦R<1 R=κg/(κg 2+κi 21/2 を満たすよう設定したものである。
【0041】この発明(請求項6)は、請求項1ないし
4のいずれかに記載の分布帰還型半導体レーザ装置にお
いて、前記素子構造を、その両レーザ出射端面で実質的
な光反射が生じないよう構成し、前記位相の不連続部で
の位相シフト量を、前記屈折率分布による分布帰還の程
度を示す屈折率結合定数κiと、前記利得分布による分
布帰還の程度を示す利得結合定数κgとが、下記の2つ
の関係式 0<R<0.3 R=κg/(κg 2+κi 21/2 を満たすよう設定したものである。
【0042】この発明(請求項7)に係る分布帰還型半
導体レーザ装置の製造方法は、活性層で発生された誘導
放出光の導波方向にて該誘導放出光に対する屈折率及び
利得が同一の単一周期でもって周期的に変動した、屈折
率分布及び利得分布を有する素子構造を形成する工程を
含み、該誘導放出光が該屈折率及び利得の周期的な変動
により光分布帰還を受けてレーザ発振が生ずるよう構成
した分布帰還型半導体レーザ装置を製造する方法であ
る。
【0043】この製造方法では、該素子構造の形成工程
は、該誘導放出光に対する屈折率及び利得の周期的な変
動を発生させるための、位相の不連続部を有する回折格
子を形成する工程を含み、該位相の不連続部での位相シ
フト量は、最も出力が大きな発振波長と2番目に出力が
大きな発振波長との間での出力の差である副モード抑圧
比が最大となるよう設定したものとなっている。そのこ
とにより上記目的が達成される。
【0044】この発明(請求項8)は、上記請求項7記
載の分布帰還型半導体レーザ装置の製造方法において、
該位相の不連続部での位相シフト量を、該屈折率分布に
よる分布帰還の程度を示す屈折率結合定数と、該利得分
布による分布帰還の程度を示す利得結合定数との比率か
ら決まる前記副モード抑圧比の最大値に基づいて設定し
たものである。
【0045】この発明(請求項9)に係る露光方法は、
相対向する第1及び第2の側面を有するプリズムを感光
性材料層上に配置し、該第1及び第2の側面側から該プ
リズムを通して露光光を該感光性材料の表面に照射し
て、位相シフト部を有する回折格子状露光パターンを該
感光性材料層の複数の領域に形成する露光方法である。
【0046】この露光方法では、該プリズムとして、該
第1及び第2の側面の少なくとも一方の面に、該感光性
材料層の各領域に対応する段差部が形成され、該段差部
の両側の側面部分を通過した露光光が、光軸と垂直な面
内で位相がずれたものとなるプリズムを用いる。そのこ
とにより上記目的が達成される。
【0047】この発明(請求項10)は、上記請求項9
記載の露光方法を用いて、半導体ウエハの表面に塗布さ
れたホトレジスト膜の、各チップ領域に対応する部分
に、位相シフト部を有する回折格子状露光パターンを形
成する露光方法である。
【0048】この露光方法では、前記プリズムをその少
なくとも一方の側面に形成された1つまたは隣接する複
数の段差部が、各チップ領域の列に対応するよう該ホト
レジスト膜上に配置し、該プリズムの第1及び第2の側
面側から該プリズムを通して露光光を該ホトレジスト膜
の表面に照射して、該ホトレジスト膜の、各チップ領域
に対応する部分に、1つまたは複数の位相シフト部を有
する回折格子状露光パターンを形成するようにしてい
る。
【0049】以下、本発明の作用について説明する。
【0050】この発明(請求項1,3)においては、活
性層からの誘導放出光に対する屈折率及び利得が、誘導
放出光の導波方向にて同一の単一周期でもって周期的に
変動した、屈折率分布及び利得分布を有する素子構造を
備え、該素子構造を、該屈折率及び利得の周期的な変動
における位相の不連続部を有するものとしたから、光分
布帰還を受ける誘導放出光のうちの唯一の波長を有する
ものだけが位相が揃ってレーザ発振に至るようになる。
これによりレーザ素子における安定な単一波長での発振
を可能とできる。
【0051】つまり、屈折率分布及び利得分布の両方が
存在する素子構造のレーザ装置(部分GC−DFB−L
D)では、誘導放出光に対する屈折率及び利得が周期的
に変動した構造(つまり回折格子部分)に位相シフトが
ない場合、ブラッグ波長での反射波の位相がそろわず、
ブラッグ波長での発振が生じず、レーザ発振が不安定と
なる。これに対し、上記回折格子部分に位相シフト部が
存在している場合には、光分布帰還を受ける誘導放出光
のうち、ブラッグ波長に相当する波長を有するものだけ
が位相が揃ってレーザ発振に至るようになる。
【0052】また、上記位相シフト量を、0[rad]
より大きくかつπ[rad]より小さい範囲、またはπ
[rad]より大きくかつ2π[rad]より小さい範
囲にしているので、位相シフト量の調整により、部分G
C−DFB−LDにおける副モード抑圧比,つまり最も
出力が大きな発振波長(主モード)と、2番目に出力が
大きな発振波長(副モード)との出力の差を最大にする
ことができ、これにより誘導放出光の高速での直接変調
を行った時にも発振波長を単一波長に保持することがで
きる。
【0053】この発明(請求項2,3)においては、屈
折率分布及び利得分布を有する素子構造における利得の
周期的な変動を、該誘導放出光の吸収によるものとし、
該素子構造に、その屈折率及び利得の周期的な変動にお
ける位相の不連続部を設けているので、吸収性回折格子
を有する分布帰還型半導体レーザ装置を、安定な単一波
長での発振が可能なものとできる。
【0054】この発明(請求項4)においては、請求項
1ないし3のいずれかに記載の分布帰還型半導体レーザ
装置において、前記位相の不連続部での位相シフト量Ω
を、前記屈折率変動の位相と利得変動の位相とが同位相
である場合には、下記(1),(2),(3)式の関係
を概ね満たし、 Ω[rad] =π+5.7R−2.6R2 ・・・(1) R=κg/(κg 2+κi 21/2 (κi:屈折率結合定数、κg:利得結合定数) ・・・(2) 0<R<1 ・・・(3) 前記屈折率変動の位相と利得変動の位相とが逆位相であ
る場合には、上記(2),(3)式及び下記(4)式の
関係を概ね満たすよう Ω[rad] =π−5.7R+2.6R2 ・・・(4) 設定するので、分布帰還型半導体レーザ装置を、その屈
折率結合定数と利得結合定数との比率に応じて、安定な
レーザ発振が可能な最適な素子構造とできる。
【0055】この発明(請求項5)においては、上記請
求項1ないし4のいずれかに記載の分布帰還型半導体レ
ーザ装置において、前記位相の不連続部での位相シフト
量を、前記屈折率結合定数κiと前記利得結合定数κg
が、下記の2つの関係式 0.3≦R<1 R=κg/(κg 2+κi 21/2 を満たすよう設定したので、素子端面の反射率に拘わら
ず、高速での直接変調の際にも安定なレーザ発振を保持
することができる。
【0056】この発明(請求項6)において、請求項1
ないし4のいずれかに記載の分布帰還型半導体レーザ装
置において、前記位相の不連続部での位相シフト量を、
前記屈折率結合定数κiと前記利得結合定数κgとが、下
記の2つの関係式 0<R<0.3 R=κg/(κg 2+κi 21/2 を満たすよう設定したので、素子両端面での反射率を小
さく、実質的には端面反射率を零にするすることによ
り、高速での直接変調の際にも安定なレーザ発振を保持
することができる。
【0057】この発明(請求項7)においては、屈折率
分布及び利得分布を有する素子構造を形成する工程で
は、誘導放出光に対する屈折率及び利得の周期的な変動
を発生させるための、位相の不連続部を有する回折格子
を形成し、該位相の不連続部での位相シフト量を、最も
出力が大きな発振波長と2番目に出力が大きな発振波長
との間での出力の差である副モード抑圧比が最大となる
よう設定するので、誘導放出光の高速での直接変調を行
った時にも発振波長を単一波長に保持することができる
部分GC−DFB−LDを、再現性よく製造することが
できる。
【0058】この発明(請求項8)は、上記請求項7記
載の分布帰還型半導体レーザ装置の製造方法において、
該位相の不連続部での位相シフト量を、該屈折率分布に
よる分布帰還の程度を示す屈折率結合定数と、該利得分
布による分布帰還の程度を示す利得結合定数との比率か
ら決まる前記副モード抑圧比の最大値に基づいて設定す
るので、その屈折率結合定数と利得結合定数との比率に
応じた、安定なレーザ発振が可能な最適な素子構造を得
ることができる。
【0059】この発明(請求項9)においては、2光束
干渉露光により、位相シフト部を有する回折格子状露光
パターンを感光性材料層の複数の領域に形成する方法に
おいて、該感光性材料層上に、干渉縞を形成するための
プリズムを配置し、プリズムとして、該第1及び第2の
側面の少なくとも一方の面に、該感光性材料層の各領域
に対応する段差部が形成され、該段差部の両側の側面部
分を通過した露光光が、光軸と垂直な面内で位相がずれ
たものとなるプリズムを用いるので、感光性材料層にお
ける位相シフト部の形成位置を、精度よくしかも再現性
よく決めることができる。
【0060】この発明(請求項10)においては、上記
請求項9記載の露光方法を用いて、半導体ウエハの表面
に塗布されたホトレジスト膜の、各チップ領域に対応す
る部分に、位相シフト部を有する回折格子状露光パター
ンを形成する際、前記プリズムを、その少なくとも一方
の側面に形成された1つまたは隣接する複数の段差部
が、各チップ領域の列に対応するよう該ホトレジスト膜
上に配置するようにしたので、1つのプリズムを用い
て、該ホトレジスト膜の、各チップ領域に対応する部分
に、1つまたは複数の位相シフト部を有する回折格子状
露光パターンを簡単に形成することができる。
【0061】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)図1は本発明の実施形態1による分布
帰還型半導体レーザ装置を説明するための図である。図
において、100は本実施形態1の部分GC−DFB−
LDであり、誘導放出光を発生する、アンドープのun
−Al0.13Ga0.87As活性層103を有し、該活性層
103近傍に誘導放出光の導波方向に沿って周期的に配
置された光吸収領域106によって実効的に利得の周期
的摂動が生じる素子構造となっている。
【0062】すなわち、上記レーザ装置100を構成す
るn−GaAs基板101上には、層厚1μmのn−A
0.6Ga0.4As下クラッド層102が形成されてい
る。また、該下クラッド層102上には、層厚0.08
μmのアンドープのun−Al0.13Ga0.87As活性層
103が形成されており、該活性層103上には、層厚
0.2μmのp−Al0.5Ga0.5Asキャリアバリア層
104を介して層厚0.058μmのp−Al0.3Ga
0.7As第1ガイド層105が形成されている。
【0063】該第1ガイド層105の表面部分は、凸凹
形状を誘導放出光の導波方向に沿って一定周期で繰り返
し配列した構造となっており、該構造における上記導波
方向における中央部は位相が不連続な部分100aとな
っている。そして、該第1ガイド層105の凸部上に
は、厚さ0.012μmのn−GaAs光吸収層106
が配置されている。ここで光吸収層106を構成するG
aAsは、活性層103を構成するA10.13Ga0.87
sよりも禁制帯輻が小さいことから、上記光吸収層10
6は、活性層で発生される誘導放出光の吸収体として機
能する。従って、上記導波方向における中央部が位相の
不連続な部分100aとなっている光吸収層の周期的な
配列により、吸収性回折格子が構成されている。
【0064】また、該第1ガイド層105及び光吸収層
106上には、表面が平坦な層厚0.030μmのp−
Al0.25Ga0.75As第2ガイド層108が形成されて
おり、該第2ガイド層108を構成するAl0.25Ga
0.75Asは、上記光吸収層106を構成するGaAsと
は屈折率が異なっている。従って、本実施形態1のレー
ザ装置は、屈折率の周期的な分布も利得の周期的な分布
とともに存在する、部分GC−DFB−LDとなってい
る。
【0065】そして、該第2ガイド層108の中央部分
には選択的に導波方向に沿って、層厚0.8μmのスト
ライプ状p−Al0.75Ga0.25As上クラッド層109
が形成されており、該上クラッド層109の表面上に
は、層厚0.5μmのp+−GaAsコンタクト層11
0が形成されている。ここで、上クラッド層109及び
コンタクト層110の幅(上記ストライプの幅方向の寸
法)は3μmとなっている。
【0066】上記上クラッド層109及びコンタクト層
110の、導波方向と平行な側面から上記第2ガイド層
108の表面にまたがる領域には、窒化珪素からなる厚
さ0.3μmの絶縁膜111が形成されており、該絶縁
膜111の表面及びコンタクト層109の表面上にはp
電極112が形成されている。また基板101の裏面に
は、n電極113が形成されている。
【0067】次に、製造方法について図2ないし図4を
用いて説明する。図2(a)〜図2(e)は上記半導体
レーザ装置の製造方法を主要工程順に示す断面図であ
り、各工程での図1のII−II線部分の断面構造を示して
いる。図3は、上記半導体レーザ装置における回折格子
を形成するためのレジストマスクの形成工程を説明する
ための図であり、図3(a)は、ウエハ上での各半導体
レーザ装置の形成領域(チップ領域)を示し、図3
(b)は、上記ウエハ上に形成したホトレジストを露光
する工程を示している。なお、図3では、説明の都合
上、ウエハ上には12個のチップ領域が設定されている
とする。図4(a)及び(b)は、上記露光により各チ
ップ領域上のホトレジスト膜に形成された露光パターン
を示す斜視図及び断面図である。
【0068】まず、有機金属気相成長法(MO−CV
D:Metal−Organic Chemical Vapor Depositio
n)を用いた第1回目の結晶成長を行って、3インチ径
のn−GaAs基板101上に半導体レーザ装置を構成
する複数の半導体層を形成する。
【0069】この第1回目の結晶成長では、上記基板上
にn−A10.6Ga0.4As下クラッド層102が1μm
の厚さに、un−Al0.13Ga0.87As活性層103が
0.08μmの厚さに、p−A10.5Ga0.5Asキャリ
アバリア属104が0.2μmの厚さに成長され、さら
にp−Al0.3Ga0.7As第1ガイド属105が0.0
58μm厚さに、n−GaAs層106が0.012μ
mの厚さに形成される(図2(a))。
【0070】続いて、図3(b)に示すように、第1回
目の結晶成長によりその表面上に複数の半導体層を成長
した状態の基板(ウエハ)201を露光用処理台200
上に載置し、希釈したポジ型ホトレジストを、該基板2
01の表面、つまりn−GaAs層106の表面上に約
50nmの厚さに塗布してホトレジスト膜202を形成
し(図2(b))、その後、一方の側面203aに第1
〜第4の段差205a1〜205a4が設けられた直方体
プリズム203をキシレン204を介して、上記ホトレ
ジスト膜202が塗布された基板201上に置く。ここ
で、プリズム203と基板表面のホトレジスト膜202
との間にキシレン204を介在させているのは、プリズ
ム203底面での露光光の反射を抑えるためである。
【0071】また、上記プリズム203の側面203a
に形成された第1〜第4の段差205a1〜205a
4は、ウエハ201上にマトリクス状に配置されている
チップ領域201aの各列201a1〜201a4に対応
している。ここで、最上位置の第1の段差205a1
り上側の側面領域203a1が最も外側に位置し、第
1,第2の段差205a1,205a2間の側面領域20
3a2は上記側面領域203a1より内側に位置し、第
2,第3の段差205a2,205a3間の側面領域20
3a3は上記側面領域203a2より内側に位置してい
る。また、第3,第4の段差205a3,205a4間の
側面領域203a4は上記側面領域203a3より内側に
位置し、最下位置の第4の段差205a4より下側の側
面領域203a5は、側面領域203a4よりさらに内側
に位置している。
【0072】そして、Arガスレーザ(波長351.1
nm)の平行光206をプリズムの、段差が設けられた
側面203aを通してホトレジスト膜202に照射し、
Arガスレーザ(波長351.1nm)の平行光207
を、プリズムの、段差が設けられていない側面203b
を通してホトレジスト膜202に照射すると、ホトレジ
スト膜202には、2つの平行光206及び207が作
る干渉縞に対応した露光パターンが形成される。この露
光後のホトレジスト膜202を適切な現像液により現像
して、ピッチ120nmの回折格子状のレジストマスク
202bを形成する(図2(c))。
【0073】ここで、回折格子状のレジストマスク20
2bを作製する際に、一方の側面203aに上記のよう
に段差205a1〜205a4が設けられたプリズム20
3を用いることにより、このプリズムの各側面領域20
3a1〜203a5を通過する光は、光路長の差に基づい
て一定量づつ位相がずれることとなる。
【0074】このため、上記プリズム203の側面20
3aを通過した、光軸と垂直な面内で位相がずれた部分
を有する平行光206と、上記プリズムの側面203b
を通過した、光軸と垂直な面内では位相が揃っている平
行光207とにより、ホトレジスト202の表面上に形
成される干渉縞は、ウエハ201上の各列201a1
201a4のチップ領域201aの中央位置p1〜p4
位相の不連続部を有するものとなる。
【0075】図4(a)は、1つのチップ領域201a
におけるホトレジスト膜202の立体的な露光パターン
202aを示しており、この立体的な露光パターン20
2aは、基板表面上に線状凸凹形状を一定の周期でもっ
て繰り返し配列した形状となっており、しかもこの露光
パターン202aのチップ領域201aの中央部分に
は、該形状の繰返し変化における位相の不連続部(位相
シフト部)202a0が位置している。この位相シフト
部202a0での位相シフト量Ωは、図4(b)に示す
ように上記プリズム203の側面203aに設けられた
段差の高さによって、0〜2πの範囲内で任意に設定す
ることができる。
【0076】このようにして作製した回折格子状のレジ
ストマスク202bを用いて、塩酸,過酸化水素水,及
び純水の混合液によるウエットエッチングを、上記第1
回目の結晶成長で作製した光吸収層106の表面に施し
て、該光吸収層106を、これが該レジストマスク20
2bの立体的な形状に対応した形状となるようパターニ
ングして、位相シフト部100aを有する吸収性回折格
子107を形成する(図2(d))。
【0077】次に、上記回折格子107が形成されてい
る、第1回目の結晶成長層の表面上に、第2回目の結晶
成長を行って複数の半導体層を形成する。この2回目の
結晶成長では、光吸収層106及び第1ガイド層105
上に、表面が平坦になるようp−Al0.25Ga0.75As
第2ガイド層108が0.030μmの厚さに形成さ
れ、さらにその上にp−Al0.75Ga0.25As上クラッ
ド層109が0.8μmの厚さに形成され、最後にp+
−GaAsコンタクト層110が0.5μmに形成され
る(図2(e))。
【0078】次に、ホトリソグラフィーとウエットエッ
チングを用いて、p−GaAsコンタクト層110及び
p−AlGaAs上クラッド層109を選択的にエッチ
ングして、誘導放出光の導波方向と平行な幅3μmのス
トライプ状部分を形成する。これによりリッジ型の光導
波構造を作製する。
【0079】このように光導波構造を作製した後、表面
全面にプラズマCVD法により窒化珪素の絶縁膜111
を約0.3μmの厚さに形成し、その後、リッジ頂上の
絶縁膜だけを除去する。
【0080】そして、基板101をその裏面に研磨処理
を施して厚さ約100μmにまで薄層化し、基板の表面
側にp電極112を、基板の裏面にn電極113を真空
蒸着により形成する。その後、基板を、リッジ部と位相
シフト部とが素子の中央に来るように300μm×30
0μm角のチップ状に劈開により分割して、レーザ装置
を完成する。
【0081】ここでは、レーザ光の出射端面には、特別
なコーティングを施していない。また、AlxGa1-x
s混晶では、混晶比xが小さい方が禁制帯幅が小さくか
つ屈折率が大きくなることから、上記の構造の回折格子
107では、光吸収領域106により利得が小さく抑え
られる部分が屈折率の高い部分に一致する構造であり、
屈折率変動における位相と利得変動における位相とが逆
位相となっている。
【0082】上記の構造の素子について、分布帰還の程
度を示すパラメータである結合定数(以下「κ」と略
す)を測定したところ、屈折率結合による分布帰還の程
度を示す屈折率結合定数(κi)は60[cm-1]、利
得結合による分布帰還の程度を示す利得結合定数
(κg)は20[cm-1]であった。
【0083】また、作製された素子は、屈折率結合と利
得結合とが混在する部分GC−DFB−LDであった。
なお、上記結合係数κに関しては、The Bell System
Technical Journal 1969年,第48巻,290
9貢(参考文献2)に詳しく解説されている。
【0084】次に、作用効果について説明する。
【0085】上記のような吸収性回折格子を有する分布
帰還型半導体レーザ装置として、0〜2π[rad]の
範囲で異なる位相シフト量を有するサンプル素子を複数
作製し、各サンプル素子にDC電流を注入し、片側の端
面からの数mWの出力にてレーザ光を出射させ、各位相
シフト量に対する副モード抑圧比(SMSR:SideMo
de Suppression Ratio)、つまり最も出力が大きな発
振波長(主モード)と次に出力が大きな発振波長(副モ
ード)との出力の差を測定した。
【0086】図5(a)は、サンプル素子の位相シフト
量Ωと、該個々の位相シフト量に対するSMSRの平均
値との相関関係を示しており、SMSRについては最大
値を1.0とした相対値を用いて示している。
【0087】この図5(a)から、位相シフトが全くな
い回折格子を有するサンプル素子でも、利得結合の効果
により20dB以上の十分に大きなSMSRが得られた
が、位相シフト量を約π/2[rad]とすることによ
り、より大きなSMSRが得られて発振波長の単一性が
向上することが分かる。
【0088】例えば、位相シフト量がπ/4[rad]
である位相シフト部を導入したサンプル素子でも、SM
SRは向上するが、このサンプル素子では、高速で直接
変調を行った場合には波長の不連続な飛びが生じたり複
数の波長が出現したりすることとなり、位相シフト量が
π/2[rad]である位相シフト部を導入したサンプ
ル素子だけが最も安定して単一波長で発振した。
【0089】つまり、本件の発明者は、部分GC−DF
B−LDに最適な位相シフトを導入することにより単一
波長での発振が非常に安定することを新たに見い出し
た。また、これらの素子は単一波長での発振特性に優れ
ているのみならず、強い戻り光下でも雑音が生じず、G
C−DFB−LDに特有の優れた特性が観察された。
【0090】また、図1に示す半導体レーザ装置の構造
において、第1ガイド層105,光吸収層106,第2
ガイド層108の組成や層厚を変更して素子を作製する
と、様々な屈折率結合定数κiと利得結合定数κgとの組
み合わせを有する素子を作製することができる。この
際、屈折率変化と利得変化とが位相のそろったものとな
っている素子構造、あるいは屈折率変化と利得変化とが
位相が逆転したものとなっている素子構造を実現するこ
とができる。
【0091】例えば、レーザ素子における利得結合の程
度を、下記の式で定義されるR値で表すと、 R=κg/(κg 2+κi 21/2,0≦R≦1 R=0の素子はIC−DFB−LDであり、Rが0<R
<1の範囲である素子は、部分GC−DFB−LDであ
り、R=1の素子は真性GC−DFB−LDであるとい
うことになる。
【0092】そこで、屈折率結合定数κiと利得結合定
数κgとの組み合わせ及び位相シフト量を変えたサンプ
ル素子を複数作製し、各サンプル素子のSMSRを測定
した。ここでは、サンプル素子は、その光出射端面に無
反射コーティングを施して両端面の反射率を1%以下に
抑え、レーザ出射端面での光の反射が実質的に無い状態
とした。
【0093】図5(b)は、このような端面反射のない
レーザ素子構造についての、最もSMSRが大きくなる
最適な回折格子の位相シフト量ΩとR値との相関関係を
示しており、各点は、作製したサンプル素子のR値に対
する最適位相シフト量を示している。
【0094】ここで、本件の発明者は、0<R<1であ
る部分GC−DFB−LDに対しては、その利得結合の
程度(つまりR値)によって最適な位相シフト量Ωが存
在することを図5(b)の結果から新たに見い出すこと
ができた。
【0095】さらに、屈折率変動と利得変動との位相が
一致している素子構造では、π<0<2πの範囲内に最
適な位相シフト量Ωがあり、屈折率変動と利得変動の位
相が反転している素子構造では、0<Ω<πの範囲内に
最適な位相シフト量Ωが存在することも新たに見い出し
た。
【0096】図5(b)に示す各点を結ぶ曲線を簡単な
2次式で近似し、上記最適位相シフト量とR値との関係
を一般化すると、屈折率と利得の周期変動の位相が一致
している素子構造では、上記最適位相シフト量とR値関
係は、下記(A)式により概ね表される。
【0097】 Ω[rad]=π+5.7R−2.6R2 ・・・(A) また、屈折率と利得の周期変動の位相が反転している素
子構造では、上記最適位相シフト量とR値との関係は、
下記(B)式により概ね表される。
【0098】 Ω[rad]=π−5.7R+2.6R2 ・・・(B) また、図5(b)から、屈折率分布及び利得分布の両方
が存在する素子構造のレーザ装置(部分GC−DFB−
LD)では、位相シフト量が、0[rad]より大きく
かつπ[rad]より小さい範囲、またはπ[rad]
より大きくかつ2π[rad]より小さい範囲にて、言
い換えると実質的の位相シフト量Ωがπ以外の値をとる
時に、部分GC−DFB−LDにおける副モード抑圧比
を最大にすることが可能であることがわかる。
【0099】さらに、図5(c)は、部分GC−DFB
−LDに位相シフト回折格子を導入した素子における端
面反射率の影響を示している。
【0100】利得結合性が弱い素子(R<0.3)で
は、両端面反射率が小さくないと高速での変調時に波長
の不安定性が見られた。それに対し、利得結合性が強い
素子(R≧0.3)では、端面の反射率を低くしなくて
も高速変調で波長が安定であった。また、これらの素子
は単一波長特性に優れているのみならず、強い戻り光下
でも雑音が生じず、GC−DFB−LDに特有の優れた
特性が観察された。
【0101】つまり、真性GC−DFB−LDは事実上
作製困難であるのに対し、本発明の部分GC−DFB−
LDに最適な位相シフト部を有する回折格子を導入した
レーザ素子は、現実的に作製可能なものであり、真性G
C−DFB−LDの有する様々な長所を最も効果的に発
揮できるものである。特にR≧0.3である素子は、端
面コートの有無の制約を受けない点でより優れた素子で
あると言える。
【0102】また、この実施形態1では、2光束干渉露
光法により、半導体ウエハの表面に塗布されたホトレジ
スト膜の、各チップ領域に対応する部分に、位相シフト
部を有する回折格子状露光パターンを形成する際、第1
及び第2の側面の少なくとも一方の面に該ホトレジスト
膜の各チップ領域に対応する段差部が形成されたプリズ
ムを、ホトレジスト膜上に載置し、該プリズムの両側面
を通して露光光をホトレジスト膜に照射するようにして
いるので、一方の露光光をホトレジスト膜上に直接照射
し、他方の露光光を、ホトレジスト膜の上方位置に配置
した位相板を通過させてホトレジスト膜に照射する方法
等と比べて、位相シフト部の形成位置を、精度よくしか
も再現性よく決めることができる。
【0103】なお、上記実施形態1では、上記部分GC
−DFB−LDとして、位相シフト部が1つである回折
格子107を有するものを示したが、回折格子は位相シ
フト部を複数有するものでもよい。
【0104】図6には、上記実施形態1の変形例とし
て、位相シフト部を複数有する部分GC−DFB−LD
600を示している。なお、図中、図1と同一符号は実
施形態1の部分GC−DFB−LD100と同一のもの
を示している。
【0105】そして、この部分GC−DFB−LD60
0は、位相シフト部600aが3箇所に形成された吸収
性回折格子607を有している。
【0106】このようなGC−DFB−LD600にお
いても、各位相シフト部での位相シフト量を、素子全体
として上記(A)式または(B)式を満たすよう設定す
ることにより、SMSRを最大値に設定することがで
き、誘導放出光の直接変調を行った時にも、発振波長を
単一波長に保持することができる。
【0107】(実施形態2)図7は本発明の実施形態2
によるGC−DFB−LDの構造を示す図である。図に
おいて、700は本実施形態2の部分GC−DFB−L
Dであり、この部分GC−DFB−LD700は、誘導
放出光を発生する、アンドープのun−InGaAsP
活性層703を有し、該活性層703の表面領域に誘導
放出光の導波方向に沿って凸凹形状が周期的に形成さ
れ、これによって実効的に利得の周期的摂動が生じる素
子構造となっている。ここで、上記活性層703の表面
領域には、その複数の凸凹形状からなる利得性回折格子
704が形成されており、該回折格子704は、位相シ
フト部700aを有している。
【0108】すなわち、上記レーザ装置700を構成す
るn−InP基板701上には、層厚1.0μmのn−
InP下クラッド層702が形成されている。また、該
下クラッド層702上には、層厚0.1μmのアンドー
プのun−InGaAsP活性層703が形成されてお
り、該活性層703の表面上には、中央にストライプ状
凸部705aを有するp−InP上クラッド層705が
形成されている。
【0109】該上クラッド層705のストライプ状凸部
705aの表面上には、p+−InGaAsコンタクト
層706が形成されている。
【0110】上記上クラッド層705のストライプ状凸
部705a及びコンタクト層706の、導波方向と平行
な側面から上記上クラッド層705の両側表面にまたが
る領域には、窒化珪素からなる厚さ0.3μmの絶縁膜
707が形成されており、該絶縁膜707の表面及びコ
ンタクト層706の表面上にはp電極709が形成され
ている。また基板701の裏面には、n電極708が形
成されている。
【0111】次に製造方法について説明する。まず、M
O−CVDを用いた第1回目の結晶成長により、n−I
nP基板701上にn−InP下クラッド層702を
1.0μmの厚さに、un−InGaAsP(λ=1.
3μm)活性層703を0.1μmの厚さに順次形成す
る。
【0112】続いて、成長層の最上層である活性層70
3上に、電子ビーム露光用のネガ型レジストを約100
nmの厚さに塗布してホトレジスト膜を形成した後、位
相シフト部を有するピッチ240nmの回折格子のパタ
ーンを電子ビーム露光装置により該ホトレジスト膜に直
接描画する。このようにして露光されたホトレジスト膜
を適切な現像液により現像すると、図4に示すものと同
様の回折格子状のレジストマスクが形成される。
【0113】引き続いてウェットエッチングにより第1
回目の結晶成長で作製した活性層703を部分的にエッ
チング除去し、さらに該ホトレジスト膜を除去する。こ
れにより、該活性層703の表面に複数のV溝が形成さ
れて回折格子704が作製される。
【0114】次に、第2回目のエピタキシャル成長によ
り、該活性層703上に、p−InP上クラッド層70
5を1μmの厚さに、p+−InGaAsコンタクト層
706を0.5μmの厚さに順次形成する。
【0115】次に、ホトリソグラフィーとウエットエッ
チングを用いて、コンタクト層706と上クラッド層7
05を、幅2μmのストライプ状部分が残るよう選択的
に除去し、リッジ型光導波構造を作製する。ここで、該
ストライプ状の光導波構造は、回折格子と直交する方向
に平行となるよう形成されている。
【0116】そして、該光導波構造を作製した後、表面
全面にプラズマCVD法により酸化珪素の絶縁膜707
を約0.3μmの厚さに形成し、その後、該絶縁膜のリ
ッジ頂上の部分だけを除去する。最後に基板701をそ
の裏面側に研削処理を施して厚さ約100μmにまで薄
層化し、その後、基板の表面側にp電極709を、基板
の裏面にn電極708を真空蒸着により形成する。
【0117】そして、リッジ部705aと位相シフト部
700aとが素子の中央に来るように基板を250μm
×250μm角のチップ状に劈開により分割して、素子
を完成する。
【0118】なお、図7では図示していないが、該レー
ザ素子の両端のレーザ光出射端面の一方には、反射率9
0%の高反射膜が、その他方には10%の低反射膜がコ
ーティングされている。
【0119】上記の構造の回折格子では、屈折率が高い
部分の利得が大きくなる構造であり、誘導放出光の導波
方向における屈折率の変動と利得の変動とが同位相とな
っており、この素子のκを測定したところ、屈折率結合
係数κiは35[cm-1]、利得結合係数κgは20[c
-1]であり、これは上記Rの値に換算すると、R=
0.5に相当している。
【0120】次に作用効果について説明する。上記のよ
うな利得性回折格子704を有する部分GC−DFB−
LDとして、0〜2π[rad]の範囲で異なる位相シ
フト量を有するサンプル素子を複数作製し、各サンプル
素子にDC電流を注入し、片側の端面からの数mWの出
力にてレーザ光を出射させ、各位相シフト量に対する副
モード抑圧比(SMSR)を測定した。
【0121】図8は、サンプル素子の位相シフト量Ω
と、各位相シフト量に対するSMSRの平均値との相関
関係を示しており、SMSRについては最大値を1.0
とした相対値を用いて示している。
【0122】この図8から、位相シフトが全くない場合
でも利得結合の効果により25[dB]以上の十分に大
きなSMSRが得られたが、約5.3[rad]の位相
シフトを導入することにより、より大きなSMSRが得
られて単一波長発振特性が向上することが分かる。
【0123】上記サンプル素子について高速での直接変
調を行った場合、5.3〔rad]の位相シフトを導入
した素子だけが、波長の不連続なホップ現象が生じたり
複数の波長が出現したりすることがなく、最も安定して
単一波長で発振した。
【0124】また、図5(b)に示したRと位相シフト
量Ωの関係は、周期的に配置された光吸収層からなる光
吸収型回折格子を有する構造のみならず、図7に示す活
性層の利得そのものを周期的に変化させた利得性回折格
子を有する素子構造にも当てはまるものである。
【0125】なお、半導体レーザを構成する材料系は上
記実施形態で示したものに限定されるものではなく、I
II族元素としてAl,Ga,Inを、V族元素として
P,As,Nを含む半導体材料系、また、II族元素と
してZn,Mg,Cdを、VI元素としてS,Se,T
eを含む半導体材料系からなる半導体レーザに対しても
本発明を適用することができることは言うまでもない。
【0126】さらに、回折格子の作製方法や位相シフト
部の作製方法も、上記実施形態で示したものに限定され
るものではない。例えば、特にDFB−LDを光集積回
路のモノリシック光源として利用する場合には、電子ビ
ーム露光法によって、位相シフト部を有する回折格子状
レジストマスクを直接描画する手法が有効である。
【0127】また、位相シフト部を回折格子の構造も、
上記実施形態1やその変形例で示した、素子中央部に位
相シフト部を1つ有するものや、位相シフト部を複数有
するマルチシフト型のものに限らず、位相が徐々にシフ
トするクレーデッドシフト型のものや、ストライプ状の
屈折率導波路の幅を変えることによって実効的な位相シ
フトを実現するストライプ幅シフト型のものなど、IC
−DFB−LDに対して公知となっている様々な、位相
シフト部を有する回折格子の構造を用いることができ
る。
【0128】さらに、レーザ素子の端面反射率は、公知
である様々な材料を用いた薄膜のコーティングにより制
御可能であり、また、上述したようにR値が小さい素子
に対しては、上記実施形態で示した、薄膜による無反射
コーティングにより端面反射率を低くした構造の他に、
端面を粗面にしたもの、端面を斜めにカットしたもの、
端面部分に窓構造を採用したものなど、公知である様々
な端面構造を、位相シフト部を有する回折格子に組み合
わせることができる。
【0129】また、ストライプ状の導波路の構造や作製
方法は、上記各実施形態で挙げたリッジ導波路型の構造
及びその作製方法の他に、電極ストライプ型、埋め込み
へテロ型(BH:Buried Heterostructure)などの様
々な導波構造及びその作製方法を用いることができる。
【0130】
【発明の効果】以上のようにこの発明(請求項1,3)
に係る分布帰還型半導体レーザ装置によれば、屈折率分
布及び利得分布を有する素子構造を、該屈折率及び利得
の周期的な変動における位相の不連続部を有するものと
したので、光分布帰還を受ける誘導放出光のうちの唯一
の波長を有するものだけが位相が揃ってレーザ発振する
ようになり、これによりレーザ素子における高速での直
接変調時にも安定な単一波長での発振を可能とできる効
果がある。
【0131】また、上記位相シフト量を、0[rad]
より大きくかつπ[rad]より小さい範囲、またはπ
[rad]より大きくかつ2π[rad]より小さい範
囲にしているので、位相シフト量の調整により、部分G
C−DFB−LDにおける副モード抑圧比を最大にし
て、誘導放出光の高速での直接変調を行った時にも発振
波長を単一波長に保持することができる効果がある。
【0132】この発明(請求項2,3)に係る分布帰還
型半導体レーザ装置によれば、光吸収性回折格子の構造
に、屈折率及び利得の周期的な変動における位相の不連
続部を設けているので、安定な単一波長での発振が可能
な光吸収性回折格子を有する分布帰還型半導体レーザ装
置を得ることができる。
【0133】この発明(請求項4)によれば、請求項1
ないし3のいずれかに記載の分布帰還型半導体レーザ装
置において、前記位相の不連続部での位相シフト量Ω
を、屈折率結合定数κi及び利得結合定数κgをパラメー
タとする所定の関係式を満たすよう設定するので、分布
帰還型半導体レーザ装置を、その屈折率結合定数と利得
結合定数との比率に応じて、安定なレーザ発振が可能な
最適な素子構造とできる。
【0134】この発明(請求項5)によれば、上記請求
項1ないし4のいずれかに記載の分布帰還型半導体レー
ザ装置において、素子構造を、利得結合性が所定値以上
に強い構造としたので、素子端面の反射率に拘わらず、
高速変調での安定なレーザ発振を実現できる。
【0135】この発明(請求項6)によれば、請求項1
ないし4のいずれかに記載の分布帰還型半導体レーザ装
置において、素子構造を、利得結合性が所定値以上に弱
い構造としているので、素子両端面での反射率を小さ
く、実質的には端面反射率を零にすることにより、高速
変調での安定なレーザ発振を実現できる。
【0136】つまり、上記本発明によれば、容易に作製
することができ、しかも単一波長での発振が安定した、
GC−DFB−LDの様々な特徴を最も効果的に発揮で
きる部分GC−DFB−LDの素子構造を提供すること
ができる。
【0137】この発明(請求項7)に係る分布帰還型半
導体レーザ装置によれば、屈折率分布及び利得分布を有
する素子構造を形成する工程では、誘導放出光に対する
屈折率及び利得の周期的な変動を発生させるための、位
相の不連続部を有する回折格子を形成し、該位相の不連
続部での位相シフト量を副モード抑圧比が最大となるよ
う設定するので、誘導放出光の高速変調を行った時にも
発振波長を単一波長に保持することができる部分GC−
DFB−LDを、再現性よく製造することができる効果
がある。
【0138】この発明(請求項8)によれば、上記請求
項7記載の分布帰還型半導体レーザ装置の製造方法にお
いて、該位相の不連続部での位相シフト量を、該屈折率
分布による分布帰還の程度を示す屈折率結合定数と、該
利得分布による分布帰還の程度を示す利得結合定数との
比率から決まる前記副モード抑圧比の最大値に基づいて
設定するので、その屈折率結合定数と利得結合定数との
比率に応じた、安定なレーザ発振が可能な最適な素子構
造を得ることができる。
【0139】この発明(請求項9)に係る露光方法によ
れば、2光束干渉露光により、位相シフト部を有する回
折格子状露光パターンを感光性材料層の複数の領域に形
成する際、該感光性材料層上に、干渉縞を形成するため
のプリズムを配置し、プリズムとして、該第1及び第2
の側面の少なくとも一方の面に、該感光性材料層の各領
域に対応する段差部が形成され、該段差部の両側の側面
部分を通過した露光光が、光軸と垂直な面内で位相がず
れたものとなるプリズムを用いるので、感光性材料層に
おける位相シフト部の形成位置を、精度よくしかも再現
性よく決めることができる効果がある。
【0140】この発明(請求項10)によれば、上記請
求項9記載の露光方法を用いて、半導体ウエハの表面に
塗布されたホトレジスト膜の、各チップ領域に対応する
部分に、位相シフト部を有する回折格子状露光パターン
を形成する際、前記プリズムを、その少なくとも一方の
側面に形成された1つまたは隣接する複数の段差部が、
各チップ領域の列に対応するよう該ホトレジスト膜上に
配置するようにしたので、1つのプリズムを用いて、該
ホトレジスト膜の、各チップ領域に対応する部分に、1
つまたは複数の位相シフト部を有する回折格子状露光パ
ターンを簡単に形成することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1による分布帰還型半導体レ
ーザ装置(GC−DFB−LD)の構造を示す斜視図で
ある。
【図2】図2(a)〜図2(e)は上記半導体レーザ装
置の製造方法を主要工程順に示す断面図であり、各工程
での図1のII−II線部分の断面構造を示している。
【図3】上記実施形態1の半導体レーザ装置を構成す
る、位相シフト部を有する回折格子の作製プロセスを説
明するための図であり、図3(a)は、ウエハ上での各
半導体レーザ装置の形成領域(チップ領域)を示し、図
3(b)は、上記ウエハ上に形成したホトレジスト膜を
露光する工程を示している。
【図4】図4(a)及び(b)は、上記露光により各チ
ップ領域上のホトレジスト膜に形成された露光パターン
を示す斜視図及び断面図である。
【図5】図5(a)は上記実施形態1のGC−DFB−
LDにおけるSMSRと位相シフト量Ωとの関係を示す
図、図5(b)は、上記実施形態1のGC−DFB−L
DにおけるR値と最適位相シフト量Ωとの関係を示す
図、図5(c)は、上記実施形態1実施ののGC−DF
B−LDにおける端面反射率と単一波長発振特性との関
係を示す図である。
【図6】上記実施形態1の変形例による分布帰還型半導
体レーザ装置(GC−DFB−LD)の構造を示す斜視
図である。
【図7】本発明の実施形態2による分布帰還型半導体レ
ーザ装置(GC−DFB−LD)の構造を示す斜視図で
ある。
【図8】上記実施形態2のGC−DFB−LDにおける
SMSRと位相シフト量Ωとの関係を示す図である。
【図9】特公平6−7624号公報に開示されているG
C−DFB−LDの構造を示す斜視図である。
【図10】特開平5−29705号公報に記載の分布帰
還型半導体レーザ装置(真性GC−DFB−LD)の主
要部の構成を説明するための図であり、図10(a)
は、活性層近傍に形成された吸収性回折格子の構造を示
し、図10(b)は、図10(a)のA−A’線部分で
の屈折率分布、及びB−B’線部分での屈折率分布を示
している。
【符号の説明】
100,600,700 分布帰還型半導体レーザ装置
(GC−DFB−LD) 100a,600a,700a 位相シフト部 101 n−GaAs基板 102 n−AlGaAs下クラッド層 103 un−AlGaAs活性層 104 p−AlGaAsキャリアバリア層 105 p−AlGaAs第1ガイド層 106 n−GaAs光吸収層 107,607 回折格子 108 p−AlGaAs第2ガイド層 109 p−AlGaAs上クラッド層 110 p+−GaAsコンタクト層 111,707 窒化硅素絶縁膜 112,709 p型用電極 1l3,708 n型用電極 201 基板 202 ホトレジスト膜 203 プリズム 204 キシレン 205a1〜205a4 段差部 206,207 平行光線 70l n−InP基板 702 n−InP下クラッド層 703 un−InGaAsP活性層 704 回折格子 705 p−InP上クラッド層 706 p+−InGaAsコンタクト層

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 誘導放出光を発生する活性層を含み、か
    つ該誘導放出光の導波方向にて該誘導放出光に対する屈
    折率及び利得が同一の単一周期でもって周期的に変動し
    た、屈折率分布及び利得分布を有する素子構造を備え、
    該誘導放出光が該屈折率及び利得の周期的な変動により
    光分布帰還を受けてレーザ発振が生ずるよう構成した分
    布帰還型半導体レーザ装置であって、 該素子構造は、その屈折率及び利得の周期的な変動にお
    ける位相の不連続部を有し、該位相の不連続部では、0
    [rad]より大きくかつπ[rad]より小さい範
    囲、またはπ[rad]より大きくかつ2π[rad]
    より小さい範囲で位相がシフトしている分布帰還型半導
    体レーザ装置。
  2. 【請求項2】 誘導放出光を発生する活性層を含み、か
    つ該誘導放出光の導波方向にて該誘導放出光に対する屈
    折率及び利得が同一の単一周期でもって周期的に変動し
    た、屈折率分布及び利得分布を有する素子構造を備え、
    該誘導放出光が該屈折率及び利得の周期的な変動により
    光分布帰還を受けてレーザ発振が生ずるよう構成した分
    布帰還型半導体レーザ装置であって、 該素子構造における利得の周期的な変動は、該誘導放出
    光の吸収によるものであり、 該素子構造は、その屈折率及び利得の周期的な変動にお
    ける位相の不連続部を有している分布帰還型半導体レー
    ザ装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の分布帰還型半導
    体レーザ装置において、 前記素子構造は、前記誘導放出光の導波経路における屈
    折率変動の位相と利得変動の位相とが同位相あるいは逆
    位相の関係となっているものであり、 前記位相の不連続部での位相シフト量は、該屈折率変動
    の位相と利得変動の位相とが同位相である場合には、π
    [rad]より大きくかつ2π[rad]より小さい範
    囲内に設定され、該屈折率変動の位相と利得変動の位相
    とが逆位相である場合には、0[rad]より大きくか
    つπ[rad]より小さい範囲内に設定されている分布
    帰還型半導体レーザ装置。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の分
    布帰還型半導体レーザ装置において、 前記位相の不連続部での位相シフト量Ωは、 前記屈折率分布による分布帰還の程度を示す屈折率結合
    定数κiと、前記利得分布による分布帰還の程度を示す
    利得結合定数κgとに基づいて、 該屈折率変動の位相と利得変動の位相とが同位相である
    場合には、下記(1),(2),(3)式の関係を概ね
    満たし、 Ω[rad] =π+5.7R−2.6R2 ・・・(1) R=κg/(κg 2+κi 21/2 ・・・(2) 0<R<1 ・・・(3) 前記屈折率変動の位相と利得変動の位相とが逆位相であ
    る場合には、上記(2),(3)式及び下記(4)式の
    関係を概ね満たすよう Ω[rad] =π−5.7R+2.6R2 ・・・(4) 設定されている分布帰還型半導体レーザ装置。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の分
    布帰還型半導体レーザ装置において、 前記位相の不連続部での位相シフト量は、 前記屈折率分布による分布帰還の程度を示す屈折率結合
    定数κiと、前記利得分布による分布帰還の程度を示す
    利得結合定数κgとが、 下記の2つの関係式 0.3≦R<1 R=κg/(κg 2+κi 21/2 を満たすよう設定したものである分布帰還型半導体レー
    ザ装置。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし4のいずれかに記載の分
    布帰還型半導体レーザ装置において、 前記素子構造を、その両レーザ出射端面で実質的な光反
    射が生じないよう構成し、 前記位相の不連続部での位相シフト量を、 前記屈折率分布による分布帰還の程度を示す屈折率結合
    定数κiと、前記利得分布による分布帰還の程度を示す
    利得結合定数κgとが、 下記の2つの関係式 0<R<0.3 R=κg/(κg 2+κi 21/2 を満たすよう設定した分布帰還型半導体レーザ装置。
  7. 【請求項7】 活性層で発生された誘導放出光の導波方
    向にて該誘導放出光に対する屈折率及び利得が同一の単
    一周期でもって周期的に変動した、屈折率分布及び利得
    分布を有する素子構造を形成する工程を含み、該誘導放
    出光が該屈折率及び利得の周期的な変動により光分布帰
    還を受けてレーザ発振が生ずるよう構成した分布帰還型
    半導体レーザ装置を製造する方法であって、 該素子構造の形成工程は、該誘導放出光に対する屈折率
    及び利得の周期的な変動を発生させるための、位相の不
    連続部を有する回折格子を形成する工程を含み、 該位相の不連続部での位相シフト量は、最も出力が大き
    な発振波長と2番目に出力が大きな発振波長との間での
    出力の差である副モード抑圧比が最大となるよう設定し
    たものである分布帰還型半導体レーザ装置の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の分布帰還型半導体レーザ
    装置の製造方法において、 前記位相の不連続部での位相シフト量は、前記屈折率分
    布による分布帰還の程度を示す屈折率結合定数と、前記
    利得分布による分布帰還の程度を示す利得結合定数との
    比率から決まる前記副モード抑圧比の最大値に基づいて
    設定したものである分布帰還型半導体レーザ装置の製造
    方法。
  9. 【請求項9】 相対向する第1及び第2の側面を有する
    プリズムを感光性材料層上に配置し、該第1及び第2の
    側面側から該プリズムを通して露光光を該感光性材料の
    表面に照射して、位相シフト部を有する回折格子状露光
    パターンを該感光性材料層の複数の領域に形成する露光
    方法であって、 該プリズムとして、該第1及び第2の側面の少なくとも
    一方の面に、該感光性材料層の各領域に対応する段差部
    が形成され、該段差部の両側の側面部分を通過した露光
    光が、光軸と垂直な面内で位相がずれたものとなるプリ
    ズムを用いる露光方法。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の露光方法を用いて、半
    導体ウエハの表面に塗布されたホトレジスト膜の、各チ
    ップ領域に対応する部分に、位相シフト部を有する回折
    格子状露光パターンを形成する露光方法であって、 前記プリズムをその少なくとも一方の側面に形成された
    1つまたは隣接する複数の段差部が、各チップ領域の列
    に対応するよう該ホトレジスト膜上に配置し、 該プリズムの第1及び第2の側面側から該プリズムを通
    して露光光を該ホトレジスト膜の表面に照射して、該ホ
    トレジスト膜の、各チップ領域に対応する部分に、1つ
    または複数の位相シフト部を有する回折格子状露光パタ
    ーンを形成する露光方法。
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