JPH09279276A - 印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法

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JPH09279276A
JPH09279276A JP9569896A JP9569896A JPH09279276A JP H09279276 A JPH09279276 A JP H09279276A JP 9569896 A JP9569896 A JP 9569896A JP 9569896 A JP9569896 A JP 9569896A JP H09279276 A JPH09279276 A JP H09279276A
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晋一郎 細野
Masaki Tanigawa
正樹 谷川
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晃三 星野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 短時間の電解粗面化処理であっても、粗面化
ピットが電解粗面に均一に形成されると共に、ピットの
大きさが略一定となる印刷版用アルミニウム合金板及び
その製造方法を提供する。 【解決手段】 印刷版用アルミニウム合金板は、Fe:
0.20乃至0.6重量%、Si:0.03乃至0.1
5重量%、Ti:0.005乃至0.05重量%及びN
i:0.005乃至0.20重量%を含有し、更にI
n、Sn及びPbからなる群から選択された1種以上の
元素を、1元素当たり0.001乃至0.020重量
%、総量で0.001乃至0.020重量%含有し、残
部がAl及び不可避的不純物からなる。この印刷版用ア
ルミニウム合金板は、前述の組成を有するアルミニウム
合金鋳塊に、500乃至630℃の温度で均質化処理を
施し、次いで開始温度を400乃至450℃として熱間
圧延を施すことにより得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オフセット印刷等
の支持体として使用される印刷版用アルミニウム合金板
に関し、特に短時間の電解粗面化処理で、均一な電解粗
面化面を形成することができる印刷版用アルミニウム合
金板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より一般にオフセット印刷において
は、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、総称し
てアルミニウムという)板が支持体として使用されてい
る。この印刷版用アルミニウム板は、感光膜に対する密
着性及び非画像部の保水性を付与するために、アルミニ
ウム板の表面に粗面化処理を施して得られたものであ
る。この粗面化処理方法として、従来から、ボール研磨
法及びブラシ研磨法等の機械的処理法が使用されている
が、最近は、塩酸若しくは塩酸を主体とする電解液又は
硝酸若しくは硝酸を主体とする電解液を使用してアルミ
ニウム板表面を電気化学的に粗面化する電解粗面化処理
法、更に前述の機械的処理法とこの電解粗面化処理法と
を組み合わせた処理方法が主に使用されるようになって
きている。これは、電解粗面化処理法によって得られた
粗面板が製版に適しており、また印刷性能も優れている
からであり、更に電解粗面化処理法では、アルミニウム
合金板をコイル状にして連続処理する場合に適している
からである。
【0003】前述のようにして、粗面化されるアルミニ
ウム合金板には、その粗面化処理によって均一な凹凸
(ピット)が形成されることが要求される。均一な凹凸
が形成された印刷版用アルミニウム合金板においては、
感光膜との密着性及び保水性が向上すると共に、優れた
画像鮮明性及び耐刷性を得ることができる。また、最近
では粗面化処理コストを低減させるため、より短時間又
は低通電量で均一な凹凸を形成することができるアルミ
ニウム合金板の開発が強く求められている。
【0004】このような電気化学的粗面化処理に適する
アルミニウム合金板は、Fe、Cu及びその他の微量元
素を添加することにより得ることができ、例えば、F
e:0.2乃至1.0重量%、Cu:0.1乃至2.0
重量%及びSn、In、Ga及びZnから選択された1
種以上の元素が0.05乃至0.1重量%添加されたア
ルミニウム合金板が提案されている(特開昭58−21
0144号公報)。このアルミニウム合金板は、化学的
なエッチング処理に対して溶解速度が速いという特徴が
ある。
【0005】また、粗面均一性が優れたアルミニウム合
金板として、Fe:0.05乃至0.5重量%、Mg:
0.1乃至0.9重量%、Si:0.2重量%以下及び
Cu:0.05重量%以下を含有し、更にZr、V及び
Niからなる群から選択された1種以上の元素を0.0
1乃至0.3重量%含有し、残部がAl及び不可避的不
純物からなるアルミニウム合金板が提案されている(特
開昭62−230946号公報)。
【0006】更に、強度及びピットの均一性が良好なア
ルミニウム合金板として、Mg:0.30乃至3重量
%、Fe:0.15乃至0.50重量%、Ni:0.0
05乃至0.30重量%及びTi:0.01乃至0.1
0重量%を含有すると共に、Si、Cu及びMnを、夫
々、0.20重量%以下に規制し、残部がAl及び各元
素の含有量が、夫々、0.10重量%以下の不可避的不
純物からなるアルミニウム合金板が提案されている(特
開昭63−30294号公報)。
【0007】更にまた、均一な粗面を形成すると共に、
非画線部の汚れを防止して画線部の調子再現性及び色調
(明度)を良好にするアルミニウム合金板として、F
e:0.1乃至1.0重量%、Si:0.02乃至0.
15重量%及び不純物のCu:0.003重量%以下を
含有し、更に残部がAl及びCu以外の不可避的不純物
からなるアルミニウム合金板が提案されている(特公平
1−47545号公報)。
【0008】更にまた、Fe:0.1乃至0.5重量
%、Si:0.03乃至0.30重量%、Cu:0.0
01乃至0.03重量%、Ni:0.001乃至0.0
3重量%、Ti:0.002乃至0.05重量%及びG
a:0.005乃至0.020重量%を含有し、更にG
a及びTiの合計含有量が0.010乃至0.050重
量%であるアルミニウム合金板が提案されている(特開
平3−177528号公報)。このアルミニウム合金板
においては、筋状の粗面化ムラであるストリーク及び不
規則な画質ムラを改善すると共に粗面が均一であるた
め、非画線部の汚れが防止されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近時、
コスト低減のために、電解処理速度の向上が要求されて
おり、短時間の電解粗面化処理で均一なピットが形成さ
れるアルミニウム板が要望されている。即ち、電解粗面
化処理時間が短時間であり、通電量が少ない場合であっ
ても、深い独立ピットが均一に形成され、アルミニウム
板に未エッチング部(アルミニウム板表面のエッチング
されていない部分)が発生しないことが要望されてい
る。しかしながら、従来のアルミニウム板はこのような
要望を満足するものではなかった。
【0010】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、短時間の電解粗面化処理であっても、粗面
化ピットが電解粗面に均一に形成されると共に、ピット
の大きさが略一定となる印刷版用アルミニウム合金板及
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る印刷版用ア
ルミニウム合金板は、Fe:0.20乃至0.6重量
%、Si:0.03乃至0.15重量%、Ti:0.0
05乃至0.05重量%及びNi:0.005乃至0.
20重量%を含有し、更にIn、Sn及びPbからなる
群から選択された1種以上の元素を、1元素当たり0.
001乃至0.020重量%、総量で0.001乃至
0.020重量%含有し、残部がAl及び不可避的不純
物からなることを特徴とする。
【0012】前記Ti含有量は0.010重量%以上で
あることが好ましい。また、更に、B:1乃至50重量
ppmを含有することが好ましい。
【0013】本発明に係る印刷版用アルミニウム合金板
の製造方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
組成を有するアルミニウム合金鋳塊に、500乃至63
0℃の温度で均質化処理を施し、次いで開始温度を40
0乃至450℃として熱間圧延を施すことを特徴とす
る。
【0014】前記熱間圧延工程の後に、冷間圧延工程及
び中間焼鈍工程を有してもよい。また、前記冷間圧延工
程の後に、レベラー矯正工程を有してもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】本願発明者等は、短時間で電解粗
面化処理を実施する場合であっても、均一な粗面化ピッ
トが形成されるアルミニウム合金板を得るために鋭意研
究した結果、以下の事実を見出した。即ち、アルミニウ
ム合金板が含有する合金元素のうち、従来より添加され
ているFe及びSiの含有量を適切に調整することに加
え、適量のNi及びTiを添加し、更にIn、Sn及び
Pbからなる群から選択された1種以上の元素の含有量
を適切に調整すると共に、その総量を適量とすることが
有効であることを究明した。また、必要に応じてBを添
加することにより、アルミニウム合金板のエッチング性
を更に一層向上させることができる。このように各元素
の含有量を適正なものにすることにより、短時間の電解
粗面化時間であっても均一性が良好な粗面化ピットを得
ることができる。
【0016】先ず、請求項1に係る印刷版用アルミニウ
ム合金板の組成限定理由について説明する。
【0017】Fe(鉄):0.20乃至0.6重量% Feは電解粗面化面に均一なピットを形成する作用を有
する。Feはアルミニウム合金中で他の元素と結びつ
き、Al−Fe系の共晶化合物を形成する元素である。
この共晶化合物は、再結晶粒を微細化する効果を有する
と共に、均一な電解粗面を形成する効果がある。Fe含
有量が0.20重量%未満では、電解粗面化ピットの反
応起点数が不足し、未エッチング部を生じる。一方、F
e含有量が0.6重量%を超えると、粗大化合物の形成
により電解粗面化面が不均一になる。従って、Fe含有
量は0.20乃至0.6重量%とする。
【0018】Si(珪素):0.03乃至0.15重量
Siは、Al−Fe−Si系金属間化合物を形成し、熱
間圧延における各パス間での再結晶の核として作用する
ため、熱間圧延時の再結晶粒を微細化する効果を有す
る。Si含有量が0.03重量%未満では、この効果が
少なく、印刷版支持体となった後のストリーク評価が劣
化する。一方、Si含有量が0.15重量%を超える
と、粗大化合物の形成により電解粗面化面が不均一とな
る。従って、Si含有量は0.03乃至0.15重量%
とする。
【0019】Ni(ニッケル):0.005乃至0.2
0重量% Niは電解粗面を均一化する作用を有する。NiはFe
と同様にアルミニウム合金中で他の元素と結合し、Al
−Ni系共晶系化合物を形成しやすい元素である。ま
た、電気化学的にNiはFeにより貴であるため、均一
な独立ピットを形成しやすい。このため、Niを添加す
ることにより、短時間の電解粗面化処理で均一な粗面が
得られる。
【0020】Ni含有量が0.005重量%未満では、
電解粗面に未エッチング部が生じる。一方、Ni含有量
が0.20重量%を超えると、粗大化合物が形成され、
電解粗面が不均一となる。従って、Ni含有量は、0.
005乃至0.20重量%とする。
【0021】Ti(チタン):0.005乃至0.05
重量%、好ましくは0.010重量%以上 Ti−Bの母合金は、鋳塊組織を微細化して結晶粒を微
細化する作用を有する。Ti含有量が、0.005重量
%未満では、この結晶粒微細化が不十分である。また、
Tiには、この微細化効果に加え、上述の他の成分と同
様に、電解粗面を均一にする効果がある。この効果を十
分に得るためには、Ti含有量が0.010重量%以上
であることが好ましい。Ti含有量が0.010重量%
未満では、エッチングが十分に行き亘らず、未エッチン
グ部が残存しやすい。一方、Ti含有量が0.05重量
%を超えると、粗大化合物の形成により、不均一な電解
粗面が形成される。従って、Ti含有量は0.005乃
至0.05重量%とし、好ましくは、0.010重量%
以上とする。
【0022】In(インジウム)、Sn(錫)及びPb
(鉛)からなる群から選択された1種以上の元素:1元
素当たり0.001乃至0.020重量% In、Sn及びPnはアルミニウム合金中に固溶状態で
存在し、アルミニウムマトリクスを電気化学的に卑とし
て、アルミニウムマトリクスと金属間化合物との間の電
位差を調整し、電解粗面を均一化させる効果を有する。
In、Sn及びPbからなる群から選択された1種以上
の元素の含有量が、1元素当たり0.001重量%未満
では、この効果が不十分であり、未エッチング部が生じ
る。一方、In、Sn又はPbの含有量が0.020重
量%を超えると、アルミニウム合金板の表面に全面溶解
面が生じて、不均一な電解粗面が形成される。従って、
In、Sn及びPbからなる群から選択された1種以上
の元素の含有量は、1元素当たり0.001乃至0.0
20重量%とする。
【0023】In、Sn及びPbの含有量:総量で0.
001乃至0.020重量% 上述のようにIn、Sn及びPbは、電解粗面を均一化
する効果を有する。但し、In、Sn及びPbの含有量
が総量で0.001重量%未満では、この効果が不十分
である。一方、In、Sn及びPbの含有量が総量で
0.020重量%を超えると、全面溶解面が形成され
て、不均一な電解粗面となる。従って、In、Sn及び
Pbの含有量は、総量で0.001乃至0.020重量
%とする。
【0024】請求項3に係る印刷版用アルミニウム合金
板では、上述の化学成分に加え、Bを含有する。
【0025】B(ホウ素):好ましくは、1乃至50重
量ppm 上述のようにTi−B母合金は結晶粒微細化剤として作
用する。この結晶粒微細化作用は、固溶Tiが減少して
Ti−B粒子が増加することによって、微細化核が増加
することに起因する。本願発明者等は、この効果に加え
て、Ti−B粒子数の増加は、電解粗面を均一化する効
果があることを見出した。
【0026】B含有量が1重量ppm未満では、電解不
足によってエッチングピットが不均一となりやすい。一
方、B含有量が50重量ppmを超えると、粗大化合物
が形成され、この粗大化合物が筋状の深いピットを形成
するため、電解粗面化面が不均一となる。従って、Bを
含有させる場合は、その含有量を1乃至50重量ppm
とすることが好ましい。
【0027】なお、本発明において、不可避的不純物と
してCu、Zn及びGa等が考えられ、夫々、0.03
重量%以下であれば、本発明の効果に悪影響を与えな
い。
【0028】本発明に係る印刷版用アルミニウム合金板
の製造方法においては、上述の組成を有するアルミニウ
ム合金鋳塊に500乃至630℃の温度で均質化処理を
施した後、400乃至450℃の開始温度で熱間圧延を
施し、印刷版用アルミニウム合金板を得る。このように
して得られた印刷版用アルミニウム合金板に電解粗面化
処理を施した場合は、未エッチング部が少ないと共に、
ピットの大きさが均一なものとなる。
【0029】印刷版用アルミニウム合金板の製造方法に
おける均質化処理温度及び熱間圧延開始温度の数値限定
理由について説明する。
【0030】均質化処理温度:500乃至630℃ 均質化処理温度が500℃未満では、アルミニウム合金
鋳塊の均質化が不十分となるため、得られたアルミニウ
ム合金板に電解粗面化処理を施した場合に、電解粗面化
面が不均一となる。一方、均質化処理温度が630℃を
超えると、結晶粒径が粗大となるため、マクロ組織が粗
大となって、筋状の粗大化ムラであるストリークが発生
する。従って、均質化処理温度は500乃至630℃と
する。
【0031】熱間圧延開始温度:400乃至450℃ 熱間圧延開始温度を400℃未満とした場合は、組織が
不均一となり、得られたアルミニウム合金板の電解粗面
化面が不均一となる。一方、熱間圧延開始温度が450
℃を超えると、熱間圧延の各パス間で結晶が成長して、
ストリークが発生する。従って、熱間圧延開始温度は4
00乃至450℃とする。
【0032】なお、熱間圧延処理は、上述の均質化処理
後、アルミニウム合金鋳塊を400乃至450℃の温度
まで冷却した後に開始してもよく、また上述の均質化処
理終了後、一旦温度が低下したアルミニウム合金鋳塊
を、400乃至450℃の温度まで、再度加熱した後に
開始してもよい。
【0033】熱間圧延終了後、得られたアルミニウム合
金板に、1又は複数回の冷間圧延を、必要に応じて中間
焼鈍しつつ施して、所定の板厚の印刷版用アルミニウム
合金板を得る。この場合に、レベラー矯正工程を設けて
もよい。
【0034】
【実施例】以下、本発明の実施例について、その特許請
求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。先ず、
請求項1に係る印刷版用アルミニウム合金板の実施例
(第1実施例)について説明する。
【0035】第1実施例 下記表1に示す化学組成を有する各アルミニウム合金の
鋳塊(実施例1〜4及び比較例1〜16)を、面削して
厚さを480mmとし、610℃の温度で4時間の均質
化処理を施し、次いで開始温度を410℃に設定して熱
間圧延し、更に冷間圧延、中間焼鈍及び冷間圧延を順次
施して、板厚が0.3mmのアルミニウム合金板を得
た。
【0036】
【表1】
【0037】次に、上述のようにして製造した各アルミ
ニウム合金板に、下記表2に示す処理条件1又は2にて
脱脂及び中和洗浄を施した後、交流電解粗面化処理を施
し、更に電解により形成された酸化物等を除去するた
め、デスマット処理を施した。このデスマット処理の終
了後、各アルミニウム合金板を水洗及び乾燥させ、一定
の大きさを切り取って、これを切り板とした。なお、表
2中の1dm2は0.01m2である。
【0038】
【表2】
【0039】一連の粗面化処理を終えた各アルミニウム
合金板の切り板を、走査電子顕微鏡(SEM)を使用し
て、350倍の倍率で表面観察し、視野の面積が0.0
2mm2となるように写真を撮影した。得られた写真か
ら、下記数式1より未エッチング率を算出した。
【0040】
【数1】未エッチング率(%)=粗面化されていない部
分の面積/全体の面積×100
【0041】この算出結果から、未エッチング率が5.
0%以下の場合を◎(優良)、5.0%を超えて8.0
%以下の場合を○(良好)、未エッチング率が8.0%
を超える場合を×(不良)として、未エッチング部を評
価した。
【0042】また、各切り板の粗面化表面を走査電子顕
微鏡を使用し、倍率を500倍としてその表面を観察
し、写真撮影した。得られた観察写真上に全長が100
cmの線を引き、線の下のピットの大きさ(直径)を測
定した。最小のピットと最大のピットとの大きさの相異
が、5μm以下のものを均一性が○(良好)、5μmよ
りも大きいものを均一性が×(不良)と評価した。
【0043】更に、各アルミニウム合金板(圧延方向1
5cm×圧延垂直方向10cm×2枚=3dm2)の表
面を王水にて化学エッチングし、ストリークの長さを評
価した。圧延方向の筋模様の長さが、1cm未満の場合
を○(ストリーク評価:良好)及び1cm以上の場合を
×(ストリーク評価:不良)とした。下記表3にストリ
ーク、未エッチング部及び均一性に対する評価を示す。
なお、各実施例及び比較例において、処理条件1におけ
る各評価と処理条件2における各評価とはいずれも同一
であった。
【0044】
【表3】
【0045】上記表3に示すように、実施例1〜4にお
いては、各元素の含有量が本発明にて規定した範囲内で
あるため、ストリーク評価、未エッチング部評価及び均
一性評価のいずれもが良好であった。
【0046】一方、比較例1においては、Si含有量が
0.01重量%と本発明にて規定した範囲より少ないた
め、再結晶の微細化が不十分となり、ストリークが長く
なった。比較例2では、Si含有量が0.19重量%と
本発明にて規定した範囲より多いため、粗大化合物が形
成され、ピットの大きさにバラツキが生じた。
【0047】比較例3においては、Fe含有量が0.1
6重量%と少ないため、電解粗面化ピットの反応起点数
が不足して、アルミニウム合金板の表面にエッチングさ
れない部分が生じた。また、比較例4では、Fe含有量
が0.67重量%と多いため、粗大化合物が形成され
て、ピットの大きさにバラツキが生じ、均一性が不良で
あった。
【0048】比較例5では、Ni含有量が0.003重
量%と少ないため、未エッチング部が生じた。一方、比
較例6では、Ni含有量が0.213重量%と多いた
め、粗大化合物が形成されて、均一性が不良であった。
【0049】比較例7では、Ti含有量が0.002重
量%と少ないため、鋳造組織の微細化が不十分となり、
ストリークが長くなった。一方、比較例8ではTi含有
量が0.069重量%と多いため、粗大化合物が形成さ
れてピットの均一性が不良となった。
【0050】比較例9では、In、Sn及びPbのう
ち、Inが添加されているものの、その含有量が0.0
004重量%と少ないため、In、Sn及びPb含有量
が総量で0.0004重量%であった。このため、アル
ミニウムマトリクスと金属間化合物との間の電位差を調
整する効果が不十分であり、未エッチング部が生じた。
また、ストリーク評価が不良であった。一方、比較例1
0では、In含有量が0.0028重量%と多いため、
In、Sn及びPb含有量が総量で0.0028重量%
となり、全面溶解面が生じて、均一性が不良となった。
【0051】比較例11では、Sn含有量並びにIn、
Sn及びPb合計含有量が、0.0004重量%と少な
いため、未エッチング部が生じた。一方、比較例12で
は、Sn含有量並びにIn、Sn及びPb合計含有量
が、0.031重量%と多いため、ピットの大きさがば
らついてしまい、均一性が不良であった。
【0052】比較例13においては、Pb含有量並びに
In、Sn及びPb合計含有量が、0.0003重量%
と少ないため、未エッチング部が発生した。一方、比較
例14では、Pb含有量並びにIn、Sn及びPb合計
含有量が、0.026重量%と多いため、均一性が不良
であった。
【0053】比較例15では、In含有量が0.000
1重量%、Sn含有量が0.0003重量%、Pb含有
量が0.0001重量%といずれも少量であるため、I
n、Sn及びPb合計含有量が0.0005重量%と本
発明にて規定した範囲より少なくなり、アルミニウム合
金板表面に未エッチング部が生じた。一方、比較例16
では、In含有量が0.009重量%、Sn含有量が
0.009重量%、Pb含有量が0.005重量%と、
いずれも本発明にて規定した範囲内であるものの、I
n、Sn及びPb合計含有量が0.023重量%と本発
明にて規定した範囲より多いため、均一性が不良であっ
た。
【0054】次に、請求項3に係る印刷版用アルミニウ
ム合金板の実施例(第2実施例)について説明する。
【0055】第2実施例 下記表4に示す化学組成を有する各アルミニウム合金の
鋳塊(実施例5〜10及び比較例17、18)に、第1
実施例と同様に、面削、均質化処理、熱間圧延、冷間圧
延、中間焼鈍及び冷間圧延を順次施して、板厚が0.3
mmのアルミニウム合金板を得た。なお、上記第1実施
例の比較例1〜16を第2実施例の比較例とすることが
できる。
【0056】
【表4】
【0057】次に、第1実施例と同様に、各アルミニウ
ム合金板に上記表2に示す処理条件1及び2にて脱脂、
中和洗浄、交流電解粗面化処理及びデスマット処理を施
した。このデスマット処理の終了後、各アルミニウム合
金板を水洗及び乾燥させ、一定の大きさを切り取って切
り板を得、この切り板に第1実施例と同様に各種試験を
実施し、ストリーク評価、未エッチング部評価及び均一
性評価を調査した。得られた結果を下記表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】上記表5に示すように、実施例5〜10に
おいては、各元素の含有量を本発明にて規定した範囲内
としてあることに加え、Bを所定量含有しているため、
エッチングがアルミニウム合金板の表面の隅々まで均一
に施され、未エッチング部評価が第1実施例のものに比
して、極めて良好であった。
【0060】一方、比較例17においては、B含有量が
60重量ppmと本発明にて規定した範囲より多いた
め、電解粗面化面が不均一となり、均一性が不良となっ
た。また、比較例18では、B含有量が0.5重量pp
mと本発明にて規定した範囲より少ないため、ストリー
ク評価、未エッチング部評価及び均一性評価のうち、特
に優れているものはなかった。
【0061】次に、本発明に係る印刷版用アルミニウム
合金板の製造方法の実施例について説明する。上記表1
の実施例1〜4及び上記表4の実施例5と同様の化学組
成を有するアルミニウム合金の鋳塊を、面削して厚さを
480mmとし、次いで下記表6に示す条件で、均質化
処理及び熱間圧延し、更に冷間圧延、中間焼鈍及び冷間
圧延して、板厚が0.3mmのアルミニウム合金板(実
施例11〜15、比較例19〜22)を得た。
【0062】得られたアルミニウム合金板を、上述の第
1実施例と同一条件で、交流電解粗面化処理した後、切
り取って切り板とした。切り板の粗面化表面を走査電子
顕微鏡(SEM)を使用して、350倍の倍率で観察
し、視野の面積が0.02mm2となるように写真を撮
影した。この写真から、上記数式1より未エッチング率
を求めた。未エッチング率が5.0%以下の場合を◎
(優良)、5.0%を超えて8.0%以下の場合を○
(良好)、未エッチング率が8.0%を超える場合を×
(不良)として、未エッチング部を評価した。
【0063】更に、この粗面化表面を走査電子顕微鏡
(SEM)を使用して500倍の倍率で観察し、写真を
撮影した。得られた写真から、第1実施例と同様にし
て、均一性を評価した。即ち、最小のピットと最大のピ
ットとの大きさの相異が、5μmよりも大きいものを均
一性が×(不良)、5μm以下のものを均一性が○(良
好)と評価した。
【0064】また、上述のようにして得たアルミニウム
合金板(圧延方向15cm×圧延垂直方向10cm×2
枚=3dm2)の表面を王水にて化学エッチングし、ス
トリークの長さを評価した。圧延方向の筋模様の長さ
が、1cm未満の場合を○(ストリーク評価:良好)及
び1cm以上の場合を×(ストリーク評価:不良)とし
た。下記表6に、ストリーク、未エッチング部及び均一
性に対する評価を示す。
【0065】
【表6】
【0066】なお、上記表6中の化学組成1〜5は、夫
々、上述の実施例1〜5と化学組成が同一であること示
す。
【0067】上記表6に示すように、実施例11〜15
においては、ストリーク、未エッチング部及び均一性に
対する評価は、いずれも良好であった。
【0068】一方、比較例19においては、均質化処理
温度が478℃と本発明にて規定した温度よりも低いた
め、均質化が不十分となり、ストリーク評価が不良であ
った。また、比較例20は均質化処理温度が645℃と
本発明にて規定した温度よりも高いため、結晶粒が粗大
となった。このため、マクロ組織が粗大となって、スト
リーク評価が不良であった。
【0069】比較例21では、熱間圧延開始温度が37
3℃と本発明にて規定した温度よりも低いため、組織が
不均一となり、ストリークが長くなった。一方、比較例
22では、熱間開始温度が468℃と本発明にて規定し
た範囲より高いため、熱間圧延における各パス間で結晶
が成長してしまい、ストリークが発生した。
【0070】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る印刷
版用アルミニウム合金板は、所定の化学成分を含有して
いるので、短時間の電解粗面化処理であっても、粗面化
ピットがその表面に均一に分布すると共に、各ピットの
大きさが略一定であり、更にストリークが短尺である。
【0071】本発明に係る印刷版用アルミニウム合金板
の製造方法は、均質化処理温度及び熱間圧延開始温度が
適切であるので、電解粗面化処理後に均一な粗面化ピッ
トが得られると共にストリークの発生が極めて抑制され
る印刷版用アルミニウム合金板を製造することができ
る。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe:0.20乃至0.6重量%、S
    i:0.03乃至0.15重量%、Ti:0.005乃
    至0.05重量%及びNi:0.005乃至0.20重
    量%を含有し、更にIn、Sn及びPbからなる群から
    選択された1種以上の元素を、1元素当たり0.001
    乃至0.020重量%、総量で0.001乃至0.02
    0重量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からな
    ることを特徴とする印刷版用アルミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 前記Ti含有量は0.010重量%以上
    であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版用アル
    ミニウム合金板。
  3. 【請求項3】 更に、B:1乃至50重量ppmを含有
    することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷版用
    アルミニウム合金板。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    組成を有するアルミニウム合金鋳塊に、500乃至63
    0℃の温度で均質化処理を施し、次いで開始温度を40
    0乃至450℃として熱間圧延を施すことを特徴とする
    印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記熱間圧延工程の後に、冷間圧延工程
    及び中間焼鈍工程を有することを特徴とする請求項4に
    記載の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記冷間圧延工程の後に、レベラー矯正
    工程を有することを特徴とする請求項5に記載の印刷版
    用アルミニウム合金板の製造方法。
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