JPH09278490A - 撥水性ガラスコート及びその製造方法 - Google Patents

撥水性ガラスコート及びその製造方法

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JPH09278490A
JPH09278490A JP8922496A JP8922496A JPH09278490A JP H09278490 A JPH09278490 A JP H09278490A JP 8922496 A JP8922496 A JP 8922496A JP 8922496 A JP8922496 A JP 8922496A JP H09278490 A JPH09278490 A JP H09278490A
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water
glass
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coat
repellent
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JP8922496A
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Toru Nakagawa
徹 中川
Sanemori Soga
眞守 曽我
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガラスと同等な硬度とフッ素樹脂並みの撥水
性を持つ従来の撥水性ガラス内のフッ素分子はガラスと
共有結合していないため、耐熱性が低いという問題点が
あった。 【解決手段】 ガラスと同等な硬度とフッ素樹脂並みの
撥水性を持つ、300℃以上の雰囲気に長時間曝しても
撥水性が保持される撥水性ガラスコート及びその製造方
法を提供するため、酸化珪素を主成分とするガラス中に
フッ化炭素鎖を含む分子が含有され、さらに、前記分子
が前記ガラスとSi−O結合によって共有結合した構造
となっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撥水性ガラスコー
ト及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】撥水性ガラスコートとは、一般に酸化珪
素ガラス並みの硬度と透明性、及び、テフロン加工等に
代表されるフッ素樹脂並みの撥水性を有するコートのこ
とを言い、その膜厚は1ミクロン以下のものである。
【0003】上記した撥水性ガラスコートに関しては、
「東京都立工業技術センター研究報告第22号、199
3年」において、その技術内容が報告されており、以下
では、上記した従来の撥水性ガラスコートの製造方法に
ついて、図面を参照しながら説明する。
【0004】図7は、第1の従来の撥水性ガラスコート
の製造工程図を示したものであり、以下では図7にそっ
てその製造工程を説明する。
【0005】まず最初に、2つの溶液を作成する。2つ
の溶液とは、テトラエトキシシラン(Si(OCH3)
4:以下TEOSと略記する)及びパーフルオロアルキ
ルメトキシシラン(CF3(CF2)7C2H4Si(OC
H3)3)を溶解したエタノール溶液(以下A溶液と称す
る)と、水及び塩酸を溶解したエタノール溶液(以下溶
液Bと称する)のことである。ここで、上記のA溶液
は、撥水性のガラスコートの本体となる溶液であり、基
本的には、フッ素(このフッ素が撥水性の性質を与える
根幹となる)及びガラスの原材料を含有しているもので
ある。また、上記のB溶液は、上記のA溶液を撥水性ガ
ラスコート用のコート溶液に変換し、シラノール化を行
なうための溶液である。
【0006】そして次に、上記のA溶液及びB溶液を混
合して、上記のTEOS及びパーフルオロアルキルメト
キシシランの加水分解反応(言い換えればシラノール
化、下記に示す)を起こし、撥水性ガラスコート膜形成
用のコート溶液を作成する。
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】さらに上記のように形成されたコート溶液
を、基体としてのガラス上に塗布する。
【0010】最後に、コート溶液の形成された基体を4
00℃にて焼成し、撥水性ガラスコート膜を形成する。
この焼成の工程では、2種類の反応が進行する。1つ目
は、基体上に形成されたコート溶液中に含有されている
不要な水及びエタノールを除去する反応であり、2つ目
は、シラノール化されたTEOS及びパーフルオロアル
キルメトキシシラン((化1)及び(化2)の右辺)を
脱水反応させる反応である。この2つ目の反応を下記に
示す。
【0011】
【化3】
【0012】上記のように形成された従来の撥水性ガラ
スコートは、その膜内部にも撥水性を有するフッ素を有
する成分を有しているが、上記の第1の従来例とは異な
り、予めポーラス(言い換えれば表面に微小な凹凸が存
在する)なガラス基板を作成し、この微小な凹凸上に撥
水性を有するコートを形成するという撥水性ガラスコー
トが存在し、以下ではそれを第2の従来の撥水性ガラス
コート(セラミックス、29巻6号533ペーシ、19
94年)として図8を参照しながら説明する。
【0013】まず、テトラエトキシシラン(Si(OC
H3)4)のエタノール溶液に水と塩酸触媒を加えたの
ち、これにポリエチレングリコールを加え、ガラス形成
用溶液を作成する。次に、上記の工程において形成され
たガラス形成用溶液を基体としてのガラスにコートす
る。そして、ガラス形成用溶液の形成された基体を25
0〜350℃で焼成してテトラエトキシシランを重合さ
せると同時に、ポリエリレングリコールを燃焼させるこ
とによりポーラスなシリカガラスをガラス上に形成す
る。
【0014】次に、フルオロアルキルトリメトキシシラ
ンをメタノールで希釈した後、この溶液に水を加えて部
分的に加水分解したコート溶液を上記のガラスに塗布し
た後400〜600℃で焼成して上記のポーラスなシリ
カガラス上に撥水膜を形成し、結果として撥水ガラスコ
ートを作製する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】まず上記の第1の従来
の方法で形成された撥水性ガラスコートは、予め撥水性
を有するフッ素成分を含有するガラスコート溶液を作成
した後に、このガラスコート溶液を塗布、焼成して撥水
性ガラスコートを形成しているため、形成されたガラス
コートの表面だけでなく、内部にまでフッ素を含有して
いることになり、表面がなんらかの影響で摩耗したとし
ても、フッ素が残存して撥水性を維持できるという耐摩
耗性に優れたコートとなり、フッ素樹脂に較べても耐熱
性に優れたコート膜となる。
【0016】しかしながら、この撥水性コートは、30
0℃以上の雰囲気に曝すと、徐々に撥水性が無くなって
しまうという問題がある。一般に、水との接触角度が8
0度以下になると著しく撥水性が低下してしまうと言わ
れているが、上記の第1の従来の方法で形成された撥水
性コートでは、例えば320℃で15時間程度の時間で
水との接触角度が80度以下になってしまう。
【0017】また、上記の第2の従来の撥水性ガラスコ
ートは、ポーラスな細孔の中にのみフッ素分子が含有さ
れているため、表面が凹凸を有するぶん撥水性コートの
形成される表面積を多くすることができるという利点が
あるものの、その製造工程は2回の焼成を必要とし、工
程数的には複雑になり、上記の第1の従来例と比較して
劣る。また、フッ素分子は、ガラスの表面にしか存在せ
ず、ガラス分子に均一に含まれているわけではないた
め、ガラス内に均一にフッ素分子が含まれている第1の
従来の方法で作製された撥水性ガラスに較べて耐摩耗性
において劣るという問題点も存在する。
【0018】本発明は上記の問題点を解決すべくなされ
たものであり、撥水性がフッ素樹脂コート並みあり、耐
摩耗性に優れるとともに、さらに300℃以上の雰囲気
でも撥水性が保たれる耐久性の高い撥水ガラスコート、
及びその製造方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した従
来の撥水性コートが300℃以上の温度においての耐久
性に乏しいことの原因が、第1の従来の撥水性ガラスコ
ートにおいて、フッ素化合物のガラスとの共有結合が不
十分であることに基づくものであることを見いだし、こ
の点を解決することにより、撥水性がフッ素コート並み
あり、耐摩耗性に優れるとともに、さらに300℃以上
の雰囲気でも撥水性が保たれる撥水ガラスコートを提供
することが可能となった。
【0020】その具体的な手段として本発明の撥水性ガ
ラスコートは、酸化珪素を主成分とするガラス中にフッ
化炭素鎖を含む分子が含有され、さらに、前記分子が前
記ガラスとSi−O結合によって共有結合している構造
となっている。
【0021】また、本発明の撥水性ガラスコートは、フ
ッ化炭素鎖を含む分子の両末端がガラスとSi−O結合
によって共有結合していることが望ましい。
【0022】また、本発明の撥水性ガラスコートの作製
法は、フッ化炭素鎖とメトキシシリル基、または、フッ
化炭素鎖とエトキシシリル基を含む分子の加水分解物を
含む溶液と、酸化珪素を主成分とするガラスの前駆体で
あるメトキシシラン化合物または、エトキシシラン化合
物を含む溶液の2種類を用意し、前記加水分解物を含む
溶液と前記メトキシシラン化合物または、エトキシシラ
ン化合物を含む溶液を混合させてコーティング液を作製
し、前記コーティング液を基材に塗布することを特徴と
する。
【0023】
【発明の実施の形態】以下では本発明の実施の形態にお
ける撥水性ガラスコートについて図面を参照しながら説
明する。
【0024】図1は本発明の実施の形態における撥水性
ガラスコートの製造工程図を示したものである。
【0025】図1に示すように、まずパーフルオロアル
キルメトキシシラン(CF3(CF2)7C2H4Si(O
CH3)3)を溶解したエタノール溶液(以下α溶液と称
する)と、酸化珪素を主成分とするガラスとしてのテト
ラエトキシシラン(Si(OCH3)4:以下TEOSと
略記する)を溶解したエタノール溶液(以下β溶液と称
する)と、水及び塩酸を溶解したエタノール溶液(以下
γ溶液と称する)との3つの溶液を作成する。
【0026】次に上記のα溶液に対してγ溶液の一部を
添加してα溶液中のパーフルオロアルキルメトキシシラ
ンを加水分解(上記の(化2)と同様な反応)し、パー
フルオロアルキルメトキシシランをシラノール化する。
【0027】その後、上記のようにシラノール化された
パーフルオロアルキルメトキシシランを含有する溶液に
対してβ溶液を添加し、さらにγ溶液の残りを添加して
今度はTEOSを加水分解(上記の(化1)と同様な反
応)し、TEOSをシラノール化することによりコート
溶液の作成を完了する。
【0028】次に上記のようにして形成されたコート溶
液を基体としてのガラス上に塗布した後、焼成を施して
撥水性ガラスコートを形成する。なお、この焼成工程
は、上記した従来の場合と同様に、基体上に形成された
コート溶液中に含有されている不要な水及びエタノール
を除去するとともに、シラノール化されたTEOS及び
パーフルオロアルキルメトキシシランを脱水反応させ
る。なお、図2にTEOSが加水分解・重合してガラス
のできる過程の模式図を示す。
【0029】本発明の最大の特徴は、上記で説明したよ
うに、パーフルオロアルキルメトキシシランとTEOS
のシラノール化を別々に行なう点である。従来は、パー
フルオロアルキルメトキシシラン及びTEOSの両方を
含有する溶液を予め作成した後に同時にパーフルオロア
ルキルメトキシシラン及びTEOSをシラノール化して
いたわけであるが、この従来の方法と比較すると、本発
明は下記に示すような利点が生じる。
【0030】すなわち、パーフルオロアルキルメトキシ
シランとTEOSでは塩酸を触媒とした加水分解反応の
活性化エネルギーに差がある。具体的には、TEOSの
ほうがパーフルオロアルキルメトキシシランよりもシラ
ノール化する活性化エネルギーが低く、TEOSのほう
がシラノール化しやすいことになる。ここで、上記のパ
ーフルオロアルキルメトキシシランとTEOSとを同時
に含有する溶液に加水分解(言い換えればシラノール化
処理)を施そうとすると、TEOSの加水分解のほうが
優先的に生じてしまい、パーフルオロアルキルメトキシ
シランは十分にシラノール化されなくなってしまう。こ
のように、十分にパーフルオロアルキルメトキシシラン
がシラノール化されなかった場合、その後の焼成工程に
おいて、パーフルオロアルキルメトキシシランが、ガラ
ス骨格中に共有結合されないことになり、結果的には、
撥水性ガラスコートを形成したとしても、この撥水性ガ
ラスコートが高い温度(300℃以上)に保持された場
合、パーフルオロアルキルメトキシシランが蒸発してし
まい、撥水性が失われてしまう。
【0031】これに対して本発明では、パーフルオロア
ルキルメトキシシランの加水分解(言い換えればシラノ
ール化)をTEOSのシラノール化と別々に行なってい
るため、パーフルオロアルキルメトキシシランのシラノ
ール化は十分に行え、結果として、その後の焼成工程に
おいて、ガラス骨格とほぼ完全に共有結合することが可
能となる。従って、300℃以上の熱を撥水性ガラスコ
ートに与えたところで、パーフルオロアルキルメトキシ
シランは蒸発することはなく、熱により撥水性が失われ
るという問題点は発生しない。
【0032】なお、本実施の形態では、酸化珪素を主成
分とするガラスとして、TEOSを用いたが、本発明は
特にこれに限られるものではなく、例えば(CH30)3
SiOSi(OCH3)3、または、(C2H50)3Si
OSi(OC2H5)3を加水分解した後、熱処理によっ
て重合させることによってガラスを形成してもよい。ま
た、ガラスと共有結合するフッ化炭素鎖を含む分子は、
メトキシシリル基(−OCH3)やエトキシシリル基
(−OC2H5)とフッ化炭素鎖(CF3(CF2)n−:
nは0または1以上の整数)を持つ化合物の加水分解物
から形成することができる。
【0033】次に以下では、上記した本発明の撥水性ガ
ラスコートの具体的な実施例について説明する。
【0034】(実施例1)アルカリガラスに撥水性ガラ
スコートを作製するために以下の3溶液をあらかじめ作
製した。
【0035】 溶液1 エタノール 20g CF3(CF2)7C2H4Si(OCH3)3 10g (以下フッ素化合物1と略記する) 溶液2 エタノール 20g TEOS 37g 溶液3 エタノール 40g 水 10g 塩酸 1g まず、溶液1をスターラーで撹拌しながら溶液3を1g
加えて30分撹拌し、フッ素化合物を加水分解した。そ
の後、この混合溶液をスターラーで撹拌されている溶液
2に加えた後、さらに残っている溶液3を加えて30分
撹拌し、TEOSを加水分解した。
【0036】次に、5cm×5cm×2mmのガラス板
を5cm×5cmの面が溶液に垂直になるようにしてこ
の溶液に浸漬した後、約0.2mm/sの速度で引き上
げた。なお、本実施例では、引き上げ法により撥水性ガ
ラスコートを作製したが、必ずしも、引き上げ法により
形成する必要性はなく、回転塗布法などにより作製して
やっても構わない。
【0037】そしてその後、引き上げられたガラス板を
室温で乾燥し、さらに100℃で10分間加熱後、35
0℃で30分焼成してガラス板に撥水性ガラスコートを
作製した。
【0038】ここで、本発明の撥水性ガラスコートの特
性を明らかにするために、2種類の比較実験を行なっ
た。第1の比較実験としては、上記した第1の従来法に
より形成された撥水性ガラスコートであり、以下の2溶
液を用いてガラスに撥水性ガラスコートを作製した。
【0039】 溶液4 エタノール 40g TEOS 37g CF3(CF2)7C2H4Si(OCH3)3 10g 溶液5 エタノール 40g 水 10g 塩酸 1g 従来の撥水性ガラスコートの作製法としては、まず、溶
液4をスターラーで撹拌しながら溶液5を滴下し、60
分撹拌した。次に、5cm×5cm×2mmのガラス板
を5cm×5cmの面が溶液に垂直になるようにして垂
直にこの溶液に浸漬した後約0.2mm/sの速度で引
き上げた。これを室温で乾燥し、さらに100℃で10
分間加熱後、350℃で30分焼成し、ガラス板に撥水
性ガラスコートを作製した。
【0040】次に第2の比較実験として、CF3(CF
2)7C2H4Si(OCH3)3分子の耐熱性を調べるため
に、この分子単独のコート(単分子コート)を作製し
た。なお、この単分子コートはガラスの表面に上記の分
子を共有結合させることにより形成されるもので、共有
結合を完全に行なっているために、耐熱性は高いと考え
られるものの、ガラスコートではなく、表面にしか形成
されていない撥水性コートであるため、耐摩耗性という
点では劣っているものである。
【0041】第2の比較実験としては、CF3(CF2)
7C2H4Si(OCH3)3が体積比で5%溶解したエタ
ノール溶液200ミリリットルを撹拌しながら、エタノ
ール40g、水10g、及び、塩酸1gの混合溶液を滴
下し、60分撹拌した。その後、上記と同様な方法で、
5cm×5cm×2mmのガラス板を5cm×5cmの
面が溶液に垂直になるようにして垂直にこの溶液に浸漬
した後約0.2mm/sの速度で引き上げた。これを室
温乾燥し、さらに100℃で10分間加熱後、350℃
で30分焼成することにより撥水性コートを形成した。
【0042】以上のようにして形成された、本発明の撥
水性ガラスコート、第1の比較例としてのガラスコート
及び第2の比較例としての撥水性コートの特性として、
特に耐熱性に関する結果を図3に示す。図3は各々のコ
ートに対して320℃での温度雰囲気中に曝した後でい
かに水に対する撥水性(具体的は水に対する静的接触
角)が維持できるかを示したものであり、一般的には水
に対する接触角が80度を下回ると撥水性が不十分であ
るということになる。
【0043】図3の結果から明らかなように、従来の方
法(第1の比較実験)で作製された撥水性ガラスコート
は約15時間で撥水性が失われてしまうが、本発明の撥
水性ガラスコートはガラス基板と完全に共有結合してい
る単分子撥水性コートとほぼ同様の耐熱性を示してい
る。
【0044】一方で、CF3(CF2)7C2H4Si(O
CH3)3単独のコートに耐熱性があるにも関わらず、同
じCF3(CF2)7C2H4Si(OCH3)3の含まれた
従来法のコートには耐熱性がなかった。これは、第1の
比較実験(従来法)で形成されたフッ素化合物がTEO
Sから形成されるガラスと共有結合していないことの証
明となる。なお、TEOSとCF3(CF2)7C2H4
(OCH3)3の混合溶液に水と塩酸を加えるという方法
では、溶液4や溶液5の組成、焼成温度を色々変えて
も、本発明のコート膜以上の耐熱性は得られなかった。
【0045】そこで以下では、本発明と従来の方法で形
成された撥水性ガラスコートが、上記のようにして耐熱
性という観点から撥水特性において大きく異なることの
メカニズムについて詳細に説明する。
【0046】TEOSとフッ素化合物1の混合溶液に水
と塩酸を加えると反応性の高いTEOSが先に加水分解
するため、水を消費してしまい、フッ素化合物1がほぼ
完全には加水分解できなくなる(図6(a)で示された
溶液が図6(b)に示された溶液になる)。ここで、T
EOSが必要とする以上の水を加え、フッ素化合物1を
加水分解するという方法が考えられるが、この場合は、
TEOSの加水分解が過剰に起こり、コート液が白濁し
てしまい、コート膜の透明性が損なわれてしまう。
【0047】また、上記のようにして過剰な水を加えて
作製されたコート液を基材にコートして焼成すると、T
EOSは重合してガラスとなりTEOSの水酸基はほど
んど無くなってしまう。焼成時にCF3(CF2)7C2H
4(OCH3)3はシラノール化してCF3(CF2)7C2
H4(OH)3となるが、すでにこの分子の周りのガラス
には水酸基が無いため、大部分の分子はガラスと共有結
合することができなくなる(図6(c)参照)。
【0048】これに対して、本発明の方法では、反応性
の低いフッ素化合物1を先に加水分解し(図4(a)で
示された溶液が図4(b)で示された溶液になる)、こ
れをTEOS溶液に滴下しているため、フッ素化合物1
及び、TEOSの両方が加水分解したコート液が作製さ
れる(図4(c)参照)。このコート液を基材にコート
して焼成すると、フッ素化合物1がガラスと共有結合し
た撥水性ガラスが形成される(図4(d)参照)。
【0049】(実施例2)次に以下では、上記の実施例
1における撥水性ガラスコートに対して、撥水性を有す
る成分を別のものとした場合の実施例について説明す
る。本実施例の特徴は、上記した実施例1の場合と比較
して、フッ素化合物がその両末端にSiを有している点
である。
【0050】アルカリガラスに撥水性ガラスコートを作
製するために以下の3溶液をあらかじめ作製した。し
た。
【0051】 溶液6 エタノール 20g Si(OCH3)3(CH2)2(CF2)6(CH2)2Si(OCH3)3 10g (以下フッ素化合物2と略記する) 溶液7 エタノール 20g TEOS 37g 溶液8 エタノール 40g 水 10g 塩酸 1g まず、溶液6をスターラーで撹拌しながら溶液8を1g
加えて30分撹拌し、フッ素分子を加水分解した。その
後、この溶液をスターラーで撹拌されている溶液7に加
えた後、さらに残っている溶液8を加えて30分撹拌
し、TEOSを加水分解した。
【0052】次に、実施例1と同様な方法でこの溶液を
ガラス板に塗布焼成することにより、撥水性ガラスコー
ト膜を形成した。
【0053】図5に、本実施例の方法により作製したコ
ート膜の320℃の耐熱試験の結果を示す。なお、コー
ト膜の撥水性は、所定時間耐熱試験に曝した後の試料上
の水の静的接触角を室温で測定することより求めた。
【0054】本実施例では、フッ素化合物2が両末端に
Siを有しているため、塩酸を触媒とした加水分解反応
の際に、フッ素化合物の両末端がシラノール化され、結
果としてその後の焼成による脱水反応がより発生しやす
く、より強固に共有結合を形成することができる。従っ
て、実施例1の撥水性ガラスコートと比較してより耐熱
性に優れた撥水性ガラスコートを得ることが可能とな
る。
【0055】以上のように、実施例2では、フッ素化合
物として両末端にSiを有するものを用いたが、このよ
うな材料を使用してやれば、たとえ図7に示す従来の方
法により撥水性ガラスコートを形成しても、従来よりは
共有結合を十分に行なうことが可能となるため、耐熱性
に優れた撥水性ガラスコートを得ることができる。
【0056】そこで、その実験結果を以下に示す。アル
カリガラスに撥水性ガラスコートを作製するために以下
の3溶液をあらかじめ作製した。
【0057】 溶液9 エタノール 40g TEOS 37g (SiOCH3)3(CH2)2(CF2)8(CH2)2Si(OCH3) 10g 溶液10 エタノール 40g 水 10g 塩酸 1g まず、溶液9をスターラーで撹拌しながら溶液10を滴
下し、60分撹拌した。
【0058】次に、実施例1と同様な方法でこの溶液を
ガラス板に塗布焼成することにより、撥水性ガラスコー
ト膜を形成した。
【0059】本実験においても、従来と比較すると、撥
水性の耐久性が従来よりは向上することが認められた。
これは、本実験では、作製された撥水性ガラスが従来法
で作製しているにもかかわらず耐熱性が良いのは、コー
ト液調整段階では、加水分解しているものの割合が低い
が、ガラスと共有結合できる結合サイトが分子の両末端
にあるからであると考えられる。
【0060】なお、本発明の実施例においては、フッ化
炭素鎖を含む分子として、CF3(CF2)7C2H4Si
(OCH3)3や(SiOCH3)3(CH2)2(CF2)8
(CH2)2Si(OCH3)を用いたが、これに限定さ
れることはなく、フッ化炭素鎖のCの数が9以上、また
は、7以下のものを用いても可能であることは言うまで
もない。また、本実施例では、トリエトキシシラン化合
物を用いたが、これに限定されることはなく、ジメトキ
シシラン、モノメトキシシラン、または、ジエトキシシ
ラン、モノエトキシシランを用いても良いことは言うま
でもない。
【0061】
【発明の効果】本発明において用いられている撥水性ガ
ラスは、透明で、ガラス並みの硬度と耐摩耗性、さらに
フッ素樹脂と同等な撥水性を有するので、フッ素樹脂の
代替として使用できる。
【0062】また、本発明による撥水性ガラスコートの
作製法では、フッ化炭素鎖を持つ分子がガラスとSi−
O結合しているので、基材にコートする溶液のフッ化炭
素鎖を含む分子の割合を従来法に比べて低くしても、耐
熱性の高い撥水性ガラスコート膜が得られ、ガラスコー
トを作製するときのコストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の撥水性ガラスコートの製造工程図
【図2】TEOSからガラスのできる反応の模式図
【図3】本発明の撥水性ガラスコートの320℃耐熱試
験の結果を示す図
【図4】本発明の撥水性ガラスコートの模式図
【図5】本発明の撥水性ガラスコートの320℃耐熱試
験の結果を示す図
【図6】従来の撥水性ガラスコートの模式図
【図7】従来の撥水性ガラスコートの製造工程図
【図8】従来の撥水性ガラスコートの製造工程図
【符号の説明】
1 フッ素化合物のフッ素を含有する部分 2 容器 3 溶媒 4 ガラス板 20 TEOSから形成されたガラス

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化珪素を主成分とするガラス中にフッ化
    炭素鎖を含む分子が含有されている撥水性ガラスコート
    であって、前記分子が前記酸化硅素とSi−O結合によ
    って共有結合していることを特徴とする撥水性ガラスコ
    ート。
  2. 【請求項2】フッ化炭素鎖を含む分子の両末端でガラス
    がSi−O結合によって共有結合していることを特徴と
    する請求項1記載の撥水性ガラスコート。
  3. 【請求項3】フッ化炭素鎖とメトキシシリル基、また
    は、フッ化炭素鎖とエトキシシリル基を含有するフッ化
    化合物を加水分解したフッ化化合物を含有する溶液を作
    製する工程と、前記フッ化化合物を含有する溶液に酸化
    珪素を主成分とするガラスの前駆体であるメトキシシラ
    ン化合物または、エトキシシラン化合物を含有する含む
    溶液を混合してコート溶液を作製する工程と、前記コー
    ト溶液を基体に塗布するとともに焼成を施す工程とを有
    する撥水性ガラスコートの製造方法。
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