JP3385165B2 - 撥水膜用塗布液の調製法及び撥水性ガラスの製法並びに撥水性ガラス - Google Patents

撥水膜用塗布液の調製法及び撥水性ガラスの製法並びに撥水性ガラス

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JP3385165B2 JP21751096A JP21751096A JP3385165B2 JP 3385165 B2 JP3385165 B2 JP 3385165B2 JP 21751096 A JP21751096 A JP 21751096A JP 21751096 A JP21751096 A JP 21751096A JP 3385165 B2 JP3385165 B2 JP 3385165B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撥水液の加水分解
反応をより完全に終結せしめ、その後脱水剤等を用いて
含有水分量を調整し、縮重合度を高めるとともに安定す
るよう制御した撥水液とし、制御した被膜環境で成膜す
ることにより、簡便な調合方法でもってより簡便に得る
ことができる優れたコ─ティング溶液でもって、格段に
優れた耐摩耗性(耐トラバ−ス性能)と耐光性能を有す
る撥水性薄膜を備える撥水性ガラスを、光学特性を損な
うことなく高透視性であって、長期的に強固な密着力で
撥水性能、耐摩耗性あるいは耐久性等が優れたものとし
て維持することができ、建築用はもちろん、ことに自動
車用等の窓材、さらには船舶や航空機の窓材などの種々
の分野の各種ガラス物品において有用な撥水性ガラスな
らびにその製法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】最近特に、より優れた耐久性と撥水性を
持ち合わせ、優れた撥水性能をより長く持続する撥水性
ガラスが望まれてきている。
【0003】これらのニ−ズに答えるためには、例えば
高い耐トラバ−ス性能と高い耐光性能を有する撥水性薄
膜を備える撥水性ガラスとする必要がある。そこで、本
出願人が既に出願している例えば特願平8-151965号等に
記載している撥水性のガラスのように、ガラス表面に、
高硬度で高機械的強度、かつ耐久性に優れた、高い比表
面積で制御した特異で微細な凹凸形状表層表面を有する
ベ−ス膜を必要とし、ベ−ス膜に被覆する撥水膜の付着
効率と密着性を高め、耐光性能を向上し、しかも格段に
その性能を発揮し、光学特性を損なうことなく高透視性
であって、長期的に頑丈な密着力で撥水性能、耐摩耗
性、耐久性等が優れたものとして維持することができる
ものである。
【0004】また、本出願人が既に出願している例えば
特願平8-131595号等に記載している撥水性ガラスのよう
に、ガラス基板の表面に撥水膜を形成する際に、ガラス
基板の温度が90〜200 ℃程度にある状態でガラス基板表
面、場合によっては方向性をもつ筋状の疵をつけた微細
な凹凸状ガラス基板表面に撥水膜層を形成することを必
要とし、耐候性、耐摩耗性、耐擦傷性ならびに耐久性に
格段に優れた撥水性能を発揮し、長期にわたりその効果
を持続する撥水膜を、クラック等の欠陥もなく簡便に効
率よく形成することができるものである、等を提案して
いる。
【0005】一方で、例えば特開昭57-181091 号公報に
は環状メチル(1−トリフルオロメチルエチル)ポリシ
ロキサンが記載されており、該特定した一般式で表され
るメチル(1−トリフルオロメチルエチル)ポリシロキ
サンは特定の一般式で表されるシラノ−ル誘導体を脱水
環化させることにより製造することができ、特定の一般
式で表されるシラノ−ル誘導体は3,3,3-トリフルオロプ
ロペンとジクロロメチルシランとをパラジウム触媒の存
在下反応させ、次いで加水分解することにより得る化合
物であって、該特定の一般式で表されるシラノ−ル誘導
体の環化反応はP-トルエンスルホン酸、濃硫酸、濃塩
酸、オキシ塩化リン、ポリリン酸等の酸触媒の存在下、
加熱することにより進行し、この反応では生成する水を
除去する必要があるのでベンゼン、トルエン、キシレン
等の芳香族系炭化水素を溶媒として用い、共沸混合物と
して除去するか、あるいはモレキュラ−シ−ブ、硫酸マ
グネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム等の脱水
乾燥剤の共存下で反応を行うこと、また反応温度は用い
る酸、溶媒、脱水乾燥剤の種類により異なるが、室温か
ら150 ℃の範囲を使用することができることが記載され
ている。
【0006】また例えば特開平5-96679 号公報に記載の
吸着単分子膜及びその製造方法が記載されており、水酸
基、アミノ基、イミノ基等の活性水素基を表面に有する
か又は表面に付加した基材表面に、フッ素基を含み分子
鎖長の異なる2種類以上のハロゲン化シラン系界面吸着
剤又はアルコキシシラン系界面吸着剤の非水溶液を接触
させ、未反応モノマを洗浄し、水又は空気中の水分と反
応させ、次いで分子間の脱水反応により撥水撥油防曇防
汚性の吸着単分子膜を記載している、等が知られてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した例えば、本出
願人が既に出願提案している特願平8-151965号に記載の
撥水性のガラス等では、前述したニ−ズに充分に答えう
るものであるが、特異なベ−ス膜と撥水膜の2層の膜構
成であり、例えば種々の場所においてできるような簡便
さの単層膜で、より本撥水性のガラスに近い性能を有す
る撥水性ガラスも望まれているところである。
【0008】また例えば、本出願人が既に出願している
例えば特願平8-131595号等に記載している撥水性ガラス
では、単層膜でその性能が向上し前記撥水性のガラスに
より近づくような性能を有する撥水性ガラスであるもの
の、製造時における作業性、特にその取り扱いが充分に
簡便で高効率であるとは言い難い場合がある。
【0009】また一方で、例えば特開昭57-181091 号公
報に記載の環状メチル(1−トリフルオロメチルエチ
ル)ポリシロキサンでは、それを合成する方法として、
特定の一般式で表されるシラノ−ル誘導体を環化反応し
て得るものであり、この反応は水を生成する反応であっ
て、反応系外へ有効に水を除去することが反応を進める
上で有効であることが補足的に記述されているに過ぎな
いものである。
【0010】また例えば、特開平5-96679 号公報に記載
の吸着単分子膜及びその製造方法では、撥水撥油性を付
与するために、水酸基、アミノ基、イミノ基等の活性水
素基を表面に有するか又は表面に付加した基材表面に、
含フッ素基を導入するために、ハロゲン化シラン系又は
アルコキシシラン系の化合物を用いることにあり、例え
ば、フルオロアルキルアルコキシシランの加水分解物と
基板上のシラノ−ル基との反応(シロキサン結合を形
成)の効率を向上させるという内容には全く触れられて
はいない。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来のかかる
課題に鑑みてなしたものであって、撥水液の加水分解反
応をより完全に終結せしめ、その後脱水剤等を用いて含
有水分量を調整し、縮重合度を高めるとともに安定する
よう制御した撥水液とし調製することでコーティング溶
液とし、制御した被膜環境下でガラス基板に被膜し薄膜
を成膜することで、その性能が優れるコーティング溶液
を簡便に得ることができるとともに、得られた撥水性膜
が格段に優れた耐トラバ−ス性能と耐光性能を有する撥
水性薄膜であって、高硬度かつ高密着性であって耐久性
や耐摩耗性とを併せ持ち、制御性よく極めて安定して発
現し、しかも高安全で厄介な工程もなく、簡便に効率よ
く被膜することができ、より長期的に優れた撥水性能を
維持することができ、かつそのバラツキ幅をよりコント
ロ−ルよく低減することができ、より確実でかつ安定し
た品質のものとなる等、有用な撥水性ガラス及びその製
法を提供するものである。
【0012】すなわち、本発明は、ガラス基板の表面上
に出発原料を加水分解ならびに脱水縮重合させた撥水膜
用塗布液を塗布し撥水膜層を形成した撥水性ガラスにお
いて、該撥水膜用塗布液を調製する際における撥水膜用
塗布液中の含有水分量を調整した撥水膜用塗布液を、ガ
ラス基板の表面上に調温調湿するなかで塗布成膜し、撥
水膜層を形成して成ることを特徴とする撥水性ガラス。
【0013】ならびに、前記した出発原料が、フルオロ
アルキルアルコキシシラン系化合物もしくはアルキルア
ルコキシシラン系化合物であることを特徴とする上述し
た撥水性ガラス。
【0014】また、前記撥水膜用塗布液が、g表示で、
出発原料量:希釈溶媒量:酸触媒による水分量=1:5
〜40:0.09〜1.0 で成ることを特徴とする上述した撥水
性ガラス。
【0015】また、前記撥水膜用塗布液中の含有水分量
の調整が、撥水膜用塗布液中の余剰な含有水分を脱水に
よって除去する調整であることを特徴とする上述した撥
水性ガラス。
【0016】さらに、ガラス基板の表面上に出発原料を
加水分解ならびに脱水縮重合させた撥水膜用塗布液を塗
布し撥水膜層を形成する撥水性ガラスの製法において、
該撥水膜用塗布液を調製する際、出発原料の加水分解反
応を終結した後、撥水膜用塗布液中の含有水分量を調整
し、縮重合度を制御した撥水膜用塗布液を調製し、該調
製済撥水膜用塗布液をガラス基板の表面上に調温調湿す
るなかで塗布し、50℃以上350 ℃以下で1分間乃至60分
間の乾燥とキュアリングを行い成膜し、撥水膜層を形成
したことを特徴とする撥水性ガラスの製法。
【0017】また、前記した出発原料が、フルオロアル
キルアルコキシシラン系化合物もしくはアルキルアルコ
キシシラン系化合物であることを特徴とする上述した撥
水性ガラスの製法。
【0018】また、前記撥水膜用塗布液が、g表示で、
出発原料量:希釈溶媒量:酸触媒による水分量=1:5
〜40:0.09〜1.0 で成ることを特徴とする上述した撥水
性ガラスの製法。
【0019】またさらに、前記撥水膜用塗布液中の含有
水分量の調整が、撥水膜用塗布液中の余剰な含有水分を
脱水によって除去する調整であることを特徴とする上述
した撥水性ガラスの製法。
【0020】またさらに、前記塗布する際の環境が、室
温で湿度が75%RH以下であることを特徴とする上述した
撥水性ガラスの製法を提供するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】ここで、上述したような、ガラス
基板の表面上に出発原料を加水分解ならびに脱水縮重合
させた撥水膜用塗布液を塗布し撥水膜層を形成した撥水
性ガラスを、撥水膜用塗布液を調製する際、出発原料の
加水分解反応を終結した後、撥水膜用塗布液中の含有水
分量を調整し、縮重合度を制御した撥水膜用塗布液を調
製し、該調製済撥水膜用塗布液をガラス基板の表面上に
調温調湿するなかで塗布し、50℃以上350 ℃以下で1分
間乃至60分間の乾燥とキュアリングを行い、撥水膜層を
形成して成る撥水性ガラスの作製は次のようにする。
【0022】先ず、前記ガラス基板としては、建築用窓
ガラスや自動車用窓ガラス等に使用されているフロ−ト
ガラス等各種無機質の透明性がある板ガラスが好ましい
ものであって、無色または着色、ならびにその種類ある
いは色調、シリカなどの薄膜面上または他の機能性膜と
の別面での組み合わせ、形状等に特に限定されるもので
はなく、さらに曲げ板ガラスとしてはもちろん、各種強
化ガラスや強度アップガラス、平板や単板で使用できる
とともに、複層ガラスあるいは合せガラスとしても使用
できる。
【0023】また、出発原料としては、フルオロアルキ
ルアルコキシシラン系化合物(以下、FAS という。)も
しくはアルキルアルコキシシラン系化合物(以下、ASと
いう。)であり、フルオロアルキルアルコキシシラン系
化合物としては、例えばCF3CH2CH2Si(OMe)3 、CF3(CF2)
5CH2CH2Si(OMe)3 、CF3(CF2)5CH2CH2SiMe(OMe)2 、CF
3(CF2)7CH2CH2Si(OMe)3 、CF3(CF2)7CH2CH2SiMe(OMe)2
等が挙げられる。さらにアルキルアルコキシシラン系化
合物としては、例えば[(CH3)3Si-O]3Si-CH2CH2-Si(OC
H3)3{トリストリメチルシロキシ・エチル・トリメトキ
シシラン}、CH3(CH 2)17Si(OCH3)3 、CH3(CH2)17Si(C
H3)(OCH3)2等が挙げられる。
【0024】また、希釈溶媒としては、イソプロピルア
ルコ−ル(以下、i-PAという。)の他に、メタノ−ル、
エタノ−ルなど炭素数が5以下の低級アルコ−ル溶媒で
あってもよく、アルコ−ル以外にエ−テル類やケトン類
を用いることができ、ことにイソプロピルアルコールを
主成分としてなるアルコールがコ−ティング溶液の調製
における希釈溶媒として好ましい。
【0025】また、酸触媒としては、0.01N 以上、好ま
しくは0.1N〜13N 程度の濃度の硝酸以外に、酢酸などの
有機酸、塩酸、硫酸等でもよい。肝心なことは酸触媒に
よる水分量であって、その水分量は酸触媒中の酸濃度
と、酸触媒自体の量によって決まる。
【0026】また、撥水膜用塗布液としては、表1およ
び2に示すような結果から、g表示で、出発原料量:希
釈溶媒量:酸触媒による水分量=1:5〜40:0.09〜1.
0 の割合で成る組成である。
【0027】すなわち、表1は、出発原料としてFAS 、
希釈溶媒としてi-PA、酸触媒として0.1N-HNO3 を用い、
撥水膜用塗布液がFAS :i-PA:0.1N-HNO3 による水分量
=1:5〜50:0.3 (g=表示)、脱水剤がモレキュラ
−シ−ブ4A(脱水時間:2〜24h、浸漬量:5g)、
塗布環境が室温で55%RH以下の湿度の条件下で塗布液の
調製と被膜をし、トラバ−ス摺動試験(後述する実施例
1を参照)における摺動回数3,500 回での接触角(°)
を求め耐トラバ−ス性能を評価し、撥水膜用塗布液の調
合における、FAS 濃度(希釈倍率)と耐トラバ−ス性能
への影響を示すものである。その結果、撥水剤の希釈倍
率(希釈溶媒量)が出発原料量1gに対し5〜50gで
も、トラバ−ス摺動回数3,500 回後の接触角が95°程度
のものもあるが、出発原料量1gに対し5〜45もしくは
50gでもものによってはあり、自動車用等車両用または
これに属するものとして好ましくは撥水剤の希釈倍率希
(釈溶媒量)が出発原料量1gに対し5〜40g、より好
ましくは5〜35g、最適には5〜30gである。
【0028】
【表1】
【0029】また、表2は、出発原料としてFAS 、希釈
溶媒としてi-PA、酸触媒として0.1N-HNO3 を用い、撥水
膜用塗布液がFAS :i-PA:0.1N-HNO3 による水分量=
1:25:0.03〜1.0 (g=表示)、脱水剤がモレキュラ
−シ−ブ4A(脱水時間:24h、浸漬量:5g)、塗布
環境が室温で55%RHの湿度の条件下で塗布液の調製と被
膜をし、摺動回数3,500 回での接触角(°)を求め耐ト
ラバ−ス性能を評価し、撥水膜用塗布液の調合におけ
る、酸触媒による水分量(g)と耐トラバ−ス性能への
影響を示すものである。その結果、酸触媒による水分量
(g)が出発原料量1gに対し0.1 gでも、トラバ−ス
摺動回数3,500 回後の接触角が80°以上で106 °程度の
ものもあって、出発原料量1gに対し0.09g程度であ
り、好ましくは酸触媒による水分量が出発原料量1gに
対し0.1 g以上、より好ましくは0.13g以上、最適には
0.2 g以上1.0 g以下である。なお、上限を1.0 g以下
としたのは、1.0 g以上でもよいが増加しても次第に経
済的でなくなるからである。
【0030】
【表2】
【0031】また、出発原料の加水分解反応の終結につ
いては、図1に示すように、出発原料としてFAS 、希釈
溶媒としてi-PA、酸触媒として0.01N と13N のHNO3を用
い、撥水膜用塗布液がFAS :i-PA:酸触媒=1:25:1.
0 (g=表示)で、加水分解反応時間(min )と生成Me
OHの量(FAS に対するMeOHのモル比)の関係を、ガスク
ロマトグラフィ−(GC)〔(株)島津製作所製、カラ
ム;PRAPK-Q 、カラム温度;150℃一定、内部標準; ベン
ゼン、検出器;TCD〕の内部標準法によって求めた結果、
酸触媒として0.01N (図中△印)と13N (図中○印)の
HNO3により、初期の加水分解反応速度には比較的大きな
差異があるが、約60分程度以上の加水分解反応時間では
差異がなくなり、約90分程度で加水分解反応がほぼ完了
し、約120分程度でMeOHのモル比が約3.0 程度で一定と
なり完全に加水分解反応が終了していることが確認で
き、加水分解反応(攪拌)の終結を得るには約90分程
度、好ましくは約120 分程度の時間が必要である。
【0032】さらに、撥水膜用塗布液中の含有水分量の
調整については、図2に示すように、出発原料としてFA
S 、希釈溶媒としてi-PA、酸触媒として0.1N-HNO3 を用
い、撥水膜用塗布液がFAS :i-PA:0.1N-HNO3 による水
分量=1:25:0.3 (g=表示)、脱水剤の種類(モレ
キュラ−シ−ブ4Aと3A)および量(1g、2.5 g、
5g)と脱水時間(h )後の水分量(ppm )の経時変化
を求めた結果、図中、モレ3A;5g 浸漬(モレキュラ−シ
−ブ3A)を○印、モレ3A;2.5g 浸漬(モレキュラ−シ−
ブ3A)を△印、モレ4A;5g 浸漬(モレキュラ−シ−ブ4
A)を◇印、モレ4A;2.5g 浸漬(モレキュラ−シ−ブ4
A)を口印、モレ4A;1g 浸漬(モレキュラ−シ−ブ4A)
を▽印の各種について、中黒塗りは耐トラバ−ス試験
(トラバ−ス摺動回数3,500 回)後の接触角が約95°以
上となるものであり、脱水時間1〜2h以上で水分量が
約4000ppm 以下、好ましくは水分量が約3000ppm 以下、
より好ましくは水分量が約2000ppm 以下である。また、
脱水剤としては、例えばモレキュラ−シ−ブ、塩化カル
シウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等である。
【0033】なお、撥水膜用塗布液中の含有水分量は、
カ−ルフィッシャ−電量滴定法を用いることによって測
定し求めた。なお、シラノ−ル基の存在は水分量として
測定される。
【0034】さらに、調製済撥水膜用塗布液をガラス基
板の表面上に調温調湿するなかで塗布することとしたの
は、表3に示すように、出発原料としてFAS 、希釈溶媒
としてi-PA、酸触媒として0.1N-HNO3 を用い、撥水膜用
塗布液がFAS :i-PA:0.1N-HNO3 による水分量=1:2
5:0.3 (g=表示)、脱水剤がモレキュラ−シ−ブ4
A(脱水時間:16h、浸漬量:5 g)の条件下で塗布液
の調製、塗布環境が室温で15%RH〜>90%RHの湿度の条
件下で塗布液の被膜をし、約140 ℃で約5分間の乾燥と
キュアリングを行った後、摺動回数3,500 回での接触角
(°)を求め耐トラバ−ス性能を評価し、撥水膜用塗布
液の被膜時における、雰囲気湿度(%RH)と耐トラバ−
ス性能への影響を示すものである。その結果、雰囲気湿
度が約80%RH程度でも、トラバ−ス摺動回数3,500 回後
の接触角が80°以上で101 °以下程度のものもあって、
雰囲気湿度が70〜80%RHでも場合によってはよいもの
の、確実には約75%RH程度以下であり、好ましくは雰囲
気湿度が約60%RH程度以下、より好ましくは約60%RH以
下15%RH以上程度、最適には約55%RH以下15%RH以上程
度である。
【0035】
【表3】
【0036】さらに、ガラス基板の表面状態について、
図3に示すように、出発原料としてFAS 、希釈溶媒とし
てi-PA、酸触媒として0.1N-HNO3 を用い、撥水膜用塗布
液がFAS :i-PA:0.1N-HNO3 による水分量=1:25:0.
3 (g=表示)、脱水剤がモレキュラ−シ−ブ4A(浸
漬量:5g)、脱水条件が室温で約24時間浸漬後NO.7濾
紙で濾過、塗布環境が室温で45%RHの湿度、合紙焼けも
しくはこれに類する火造り面からの変化がなく、撥水膜
用塗布液を被膜後、中型熱風循環炉(板温約140 ℃、昇
温5分間、キ−プ5分間)でキュアリングした条件下
で、フロ−トガラスのトップ面(水洗浄のみ)とボトム
面(セリア研磨と水洗浄)に成膜処理し、耐光性試験
(後述する実施例1を参照)におけるS-UV照射時間
(h)と接触角(°)の関係を評価し、フロ−トガラス
のトップ面とボトム面におけるS-UV照射時間への影響を
求めた。その結果、S-UV照射時間約600 時間(h )にお
いてトップ面では約70°であるのに対しボトム面では約
50°程度であってフロ−トガラスのトップ面とボトム面
において明らかに差異があり、フロ−トガラスの火造り
面であるトップ面に被膜することがよい。
【0037】さらに一方、摺動回数3,500 回後での接触
角(°)を求めた結果、フロ−トガラスのトップ面では
接触角が>100 °であり、ボトム面では50〜100 °とな
った。よってフロ−トガラスのトップ面に被膜すること
がよい。
【0038】なお、トップ面とボトム面についても、合
紙焼けがなく、しかもセリアやアルミナとブラシやスポ
ンジによる研磨、さらに水洗浄等を充分行うことで接触
角が>100 °を確保できることは言うまでもない。
【0039】またさらに、ガラス基板への膜付け法とし
ては、手塗り、ノズルフロ−コ−ト法、ディッピング
法、スプレー法、リバ−スコ−ト法、フレキソ法、印刷
法、フローコート法あるいはスピンコート法、ならびに
それらの併用等既知の塗布手段、さらに本出願人が出願
提案した各種塗布法等が適宜採用し得るものである。
【0040】また、80℃以上350 ℃以下で1分間乃至60
分間の乾燥とキュアリングを行い成膜することとしたの
は、図4に示すように、キュアリング温度約80℃(図中
○印)、約140 ℃(図中△印)、約250 ℃(図中口印)
について、S-UV照射時間(h)と接触角(°)の関係を
評価した。その結果、いずれもS-UV照射時間が約600時
間(h )においても接触角が約70°程度以上、70〜80°
程度であり、耐光性が良好なものである。したがって乾
燥とキュアリングとしては50℃以上350 ℃以下で1分間
乃至60分間である。好ましくは約80℃以上300 ℃以下程
度である。
【0041】前述したとおり、本発明の撥水性ガラス及
びその製法により、撥水膜用塗布液の加水分解反応をよ
り完全に終結せしめ、その後脱水剤等を用いて含有水分
量を調整し、縮重合度を高めるとともに安定するよう制
御した撥水膜用塗布液とし調製することでコ−ティング
溶液とし、制御した被膜環境下でガラス基板表面に被膜
し薄膜を成膜することにより、その性能が優れるコ−テ
ィング溶液を簡便に得ることができるとともに、得られ
た撥水性膜が格段に優れた耐摩耗性である耐トラバ−ス
性能および耐光性能を有する撥水性薄膜であって、高硬
度かつ高密着性であって耐久性を併せ持ち、制御性よく
極めて安定して発現し、しかも高安全で厄介な工程もな
く、簡便に効率よく被膜することができ、より長期的に
優れた撥水性能、例えば接触角が約70°〜80°程度以
上、好ましくは約80°〜90°程度以上、より好ましくは
約90°〜100 °程度以上を維持することができ、かつそ
のバラツキ幅をよりコントロ−ルよく低減することがで
き、より確実でかつ安定した品質のものとすることがで
きる等、建築用はもちろん、ことに自動車用等の窓材、
さらには船舶や航空機の窓材、電子機器などの種々の分
野の各種ガラス物品において有用な撥水性ガラス及びそ
の製法を提供するものである。
【0042】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。ただし本発明は係る実施例に限定されるものではな
い。
【0043】実施例1 撥水膜層を形成するための撥水剤溶液組成の原料とし
て、フルオロアルキルアルコキシシラン〔FAS :CF3(CF
2)7CH2CH2Si(OCH3)3、東芝シリコ−ン製;TSL8233 〕
と、イソプロピルアルコ−ル〔iPA ;キシダ化学製〕
と、0.1N- 硝酸〔キシダ化学製〕を用い、その配合割合
をFAS :iPA :0.1N-HNO3 =1:25:0.3 (単位:g)と
し、室温で約2時間攪拌し加水分解反応をした。
【0044】次いで、該加水分解反応をさせた溶液にモ
レキュラ−シ−ブ4A〔キシダ化学製〕を約5g 添加浸
漬して約16時間放置し縮重合反応させつつ脱水し完了し
た後、濾紙(NO.7)を用いて濾過しモレキュラ−シ−ブ
4Aを分離除去して塗布溶液とした。
【0045】次に、予めセリア研磨、上水で水洗、蒸留
水でリンス処理した大きさ約100mm×200mm 、厚さ約3.5
mm のフロ−トガラス基板のトップ面側表面に、前記塗
布溶液を室温で湿度約55%RH程度の環境において手塗り
で塗布した。
【0046】続いて、塗布後風冷乾燥してから、約140
℃程度で約5分間程度の乾燥とキュアリングをすること
で成膜を行い、F-SiOx膜付きガラスを得た。得られたF-
SiOx膜付きガラスのF-SiOx薄膜の評価を下記のように行
った。 〔耐トラバ−ス性試験〕 試験機 :トラバ−ス式摺動試験機(図5) 試料サイズ :約100mm ×200mm 摩擦布への荷重 :キャンバス布に0.1kg /cm2(JIS L 3102-1961-1206) ストロ−ク :100mm の往復摺動(摺動回数は往復の回数) 摺動速度 :30往復/分 評価 :各条件での摺動回数、例えば約3500回等に対する接触角θ (°)の挙動。 〔撥水性試験〕 測定機器 :協和界面科学製CA-A型 測定環境 :大気中(約25℃) 水 :純水( 2μl )の水滴 測定値 :接触角θ(°)〔各試験前の初期接触角θ0 °と各試験後 の接触角θ°を求めた。〕 (なお、転落角は45μl の水滴を採用。) 〔耐光性試験〕 測定機器 :スーパーUV(S-UV)耐光促進試験機〔イワキエレクトリッ ク製、EYE SUPER UV TESTER 、SVU-W11 型〕。
【0047】 条件 :約75〜76mW/cm2 、ランプとサンプル間距離約25mm、パネ ル温度約50℃、SUV 照射時間約 300時間、約 600時間、約 750 時、約900 時の耐久性試験を行った。
【0048】 測定値 :各SUV 照射時間に対する接触角θ(°)の挙動。 〔耐薬品性試験〕 対象物 :エンジン油、ギア油、25%硫酸、ウオッシャ液、50%CaCl 2 水溶液(pH=7)、石灰水(pH=11 )、海水、不凍液(LL C )。
【0049】 条件 :上記対象物を撥水性ガラスの撥水膜表面に滴下し、室温、 65%RHの環境内、ならびに80℃の温度内で約24時間放置し た後洗浄乾燥する。
【0050】 測定値 :該撥水膜表面の接触角θ°を測定した。 その結果、例えば初期接触角θ0 が約109 °程度(初期
転落角は約30°程度)のものが、耐トラバ−ス性試験で
は3千5百回摺動後の接触角θは約103°〜108°程度に
なり、また耐光性試験においても、S-UV照射時間(hr)
が例えば約600時間後の接触角θは初期接触角θ0 約109
°程度に対し約75°〜80°程度以上になる等、格段の
耐トラバ−ス性(耐摩耗性)と耐光性を示し、長期的に
撥水性能を維持し耐久性が高いものであった。
【0051】なお、市販品の耐光性試験では、S-UV照射
時間約200 時間程度で接触角θが約65°程度と極めて短
寿命であると言えるものであった。
【0052】さらに、耐薬品性試験においても、初期接
触角θ0 約109 °程度に対し試験後の接触角θが約104
°〜108 °程度であり、充分接触角θを約100 °以上に
維持できるものであった。
【0053】したがって、自動車用各種窓ガラスに対し
ても極めて優れた耐摩耗性と耐光性を有する有用な撥水
性ガラスとなる。
【0054】
【発明の効果】以上前述したように、本発明によれば、
撥水膜用塗布液の加水分解反応をより完全に終結せし
め、その後脱水剤等で含有水分量を調整して縮重合度を
高めるとともに安定するよう制御・調製した撥水膜用塗
布液をコ−ティング溶液として、制御した被膜環境下で
ガラス基板表面に成膜することとしたことにより、極め
て優れた耐トラバ−ス性(耐摩耗性)と耐光性を示し、
長期的に優れた撥水性能を維持し耐久性が高いものとな
り、簡便に効率よく得られ、制御性よく品質の均質化を
向上し得て管理でき、光学特性を損なうことなく、建築
用はもとより自動車用窓材に格段に安定した品質で供給
でき、船舶や航空機の窓材、種々のミラ−等各種ガラス
物品等、種々の分野に広く採用できる利用価値の高い、
有用な撥水性ガラス及びその製法を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の撥水性ガラスにおいて、撥水膜用塗布
液中の酸触媒の濃度差(水分量差)での、加水分解の反
応時間(min )とFAS に対するMeOHのモル比(生成MeOH
の量)の関係を示す説明図であり、酸触媒が0.01N-HNO3
の場合を△印、13N-HNO3の場合を○印でそれぞれ示す。
【図2】本発明の撥水性ガラスにおいて、モレキュラ−
シ−ブの種類とその量に対する水分量の経時変化を示す
説明図であり、中黒塗りはトラバ−ス摺動試験後の接触
角θが全て95°以上であることを示す図である。図中、
モレ(モレキュラ−シ−ブ)3A,5g 浸漬を○印、モレ3
A,2.5g 浸漬を△印、モレ4A,5g 浸漬を◇印、モレ4A,2.
5g 浸漬を口印、モレ4A,1g 浸漬を▽印でそれぞれ示
す。
【図3】本発明の撥水性ガラスにおいて、フロ−トガラ
スのトップ面またはボトム面に撥水膜を成膜した際にお
ける、S-UV照射時間(h )と接触角(°)の関係を示す
説明図であり、トップ面を○印、ボトム面を△印でそれ
ぞれ示す。
【図4】本発明の撥水性ガラスにおいて、キュアリング
温度について、S-UV照射時間(h )と接触角(°)の関
係を示す説明図であり、キュアリング温度が約80℃を○
印、約140 ℃を△印、約250 ℃を口印でそれぞれ示す。
【図5】本発明の撥水性ガラスにおける撥水膜層の長期
的な撥水性能について評価する一つとして、耐トラバ−
ス性試験(耐摩耗性)を実施したトラバ−ス式摺動試験
機を示す図である。
【符号の説明】 トラバ−ス式摺動試験機 2 台 3 モ−タ 4 減速機 5 クランクディスク 6 摩擦布 7 荷重 8 ガラス基板 9 撥水膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−291666(JP,A) 特開 平7−157336(JP,A) 特開 平7−157749(JP,A) 特開 平5−319867(JP,A) 特開 平8−319110(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03C 15/00 - 23/00 B05D 1/00 - 7/26 B32B 1/00 - 35/00 B60J 1/00 C09K 3/18

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス基板の表面上に撥水層を形成させる
    ための塗布液の調製法であって、出発原料のフルオロア
    ルキルアルコキシシラン系化合物又はアルキルアルコキ
    シシラン系化合物を希釈溶媒中で酸触媒により完全に加
    水分解後に塗布液の含有水分量を調整し、出発原料の縮
    重合度を高めることを特徴とする撥水膜用塗布液の調製
  2. 【請求項2】脱水剤を用いて含有水分量を調整すること
    を特徴とする請求項1に記載の撥水膜用塗布液の調製
  3. 【請求項3】前記撥水膜用塗布液が、g表示で、出発原
    料量:希釈溶媒量:酸触媒による水分量=1:5〜4
    0:0.09〜1.0で成ることを特徴とする請求項1
    又は2記載の撥水膜用塗布液の調製法。
  4. 【請求項4】ガラス基板の表面上に撥水膜層を形成する
    撥水性ガラスの製法において、請求項1乃至3のいずれ
    かに記載の撥水膜用塗布液の調製法で調製された撥水膜
    用塗布液をガラス基板の表面上に調温調湿するなかで塗
    布し、50℃以上350℃以下で1分間乃至60分間の
    乾燥とキュアリングを行い、撥水膜層を形成したことを
    特徴とする撥水性ガラスの製法。
  5. 【請求項5】前記塗布する際の環境が、室温で湿度75
    %RH以下であることを特徴とする請求項4記載の撥水
    性ガラスの製法。
  6. 【請求項6】請求項4又は5記載の撥水性ガラスの製法
    で作製されたガラス基板上に撥水膜が成膜された撥水性
    ガラス
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