JPH09270311A - 磁性粉末及び磁気記録媒体 - Google Patents

磁性粉末及び磁気記録媒体

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JPH09270311A
JPH09270311A JP8196415A JP19641596A JPH09270311A JP H09270311 A JPH09270311 A JP H09270311A JP 8196415 A JP8196415 A JP 8196415A JP 19641596 A JP19641596 A JP 19641596A JP H09270311 A JPH09270311 A JP H09270311A
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magnetic powder
magnetic
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acid
surface treatment
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JP8196415A
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Horyu Machida
方隆 町田
Tomoko Izumi
とも子 和泉
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁性粉末の分散性を良好とし経時安定性を確
保して高出力化し、耐久性も向上し、高密度記録化にも
対応可能とする。 【解決手段】 磁性粉末を少なくとも1種類の有機化合
物若しくはその溶液により表面処理し、上記有機化合物
中の少なくとも1種類の官能基が磁性粉末表面に吸着し
ないようにする。また、上記磁性粉末を使用して磁気記
録媒体とする際に、磁性粉末の表面処理に使用される有
機化合物中の磁性粉末表面に吸着していない官能基と結
合剤中の官能基を架橋する。このような有機化合物とし
ては、多価アルコール,多価カルボン酸,オキシ酸,不
飽和結合を有するオキシ酸,不飽和結合を有するアルコ
ール,不飽和結合を有するカルボン酸等が挙げられ、オ
キシ酸としては、ω−ヒドロキシカルボン酸が好まし
く、不飽和結合を有するカルボン酸としては、ω位に不
飽和結合を有する直鎖カルボン酸が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁性粉末及び磁気
記録媒体に関する。詳しくは、特にFeを主体とする金
属磁性粉末の表面改質を行った磁性粉末と、この磁性粉
末を用いて、高出力化し、耐久性を向上させた磁気記録
媒体に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】ビデオテープレコーダー等の磁気記録再
生装置に使用される磁気記録媒体としては、ポリエステ
ルフィルム等の非磁性支持体上に磁性粉末や結合剤、有
機溶剤、各種添加剤等を混合分散して作製される磁性塗
料を塗布することで磁性層が形成される、いわゆる塗布
型の磁気記録媒体や、非磁性支持体上に強磁性金属若し
くは強磁性合金を真空薄膜形成技術によって直接被着成
膜することで磁性層が形成される、いわゆる金属薄膜型
の磁気記録媒体が提案されているが、生産性、汎用性に
優れることから前者の塗布型の磁気記録媒体が主流を占
めている。
【0003】そして、これら磁気記録媒体においては、
高密度記録化への対応が望まれている。そのため、上記
塗布型の磁気記録媒体においては、高出力化のために、
磁性層における磁性粉末を極めて微細な粒子径を有する
ものとし、これを結合剤中に高度に分散させ、該磁性層
の表面を鏡面化して電磁変換特性を向上させること、磁
性粉末の経時安定性を確保すること、これと同時に磁性
塗膜の磁気ヘッドの摺動に対する耐久性を向上させるこ
とが望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このため従来から、高
出力化のために分散性を向上させるための各種分散剤
や、極性基を導入した高分散性結合剤等が開発されてき
た。さらには、高出力化のために磁性粉末の経時安定性
を確保するための様々な手法が採られてきた。また、耐
久性向上を図るために、結合剤相互を架橋するための各
種硬化剤等が検討されてきた。
【0005】しかし、これらの技術では、なかなか高出
力化と耐久性向上とを満足していないのが現状である。
【0006】また、一方では、磁性粉末として、これま
で広く用いられていた酸化物系磁性粉末に代わってFe
を主体とした金属磁性粉末が用いられるようになってき
ており、このような金属磁性粉末を用いた場合における
高出力化のための分散性の向上、経時安定性の確保、耐
久性の向上が望まれている。
【0007】そこで本発明は、従来の実状に鑑みて提案
されたものであり、磁性粉末としてFeを主体とした金
属磁性粉末を使用しても、磁性粉末の分散性が良好で経
時安定性が確保されて高出力化され、耐久性も向上し、
高密度記録化にも対応可能とされる磁性粉末及び磁気記
録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成せんものと長期に亘り鋭意研究を重ねた結果、磁
性粉末表面に1種類以上の有機化合物を吸着させること
により、この磁性粉末を経時安定性が確保されたものと
することが可能であり、この磁性粉末を使用して塗布型
の磁気記録媒体を形成すれば、磁性層中の磁性粉末の経
時安定性が確保されて高出力化され、且つ耐久性に優
れ、高密度記録化にも対応可能な磁気記録媒体を得るこ
とができることを見出した。
【0009】すなわち、上述のように、磁性粉末に対し
て1種類以上の有機化合物による表面処理を施すと、有
機化合物が磁性粉末表面に吸着し、磁性粉末表面の活性
点がその活性を失うため、磁性粉末の耐候性が向上し、
経時安定性が確保される。
【0010】また、この磁性粉末を使用して塗布型の磁
気記録媒体を形成する際、結合剤中の官能基と磁性粉末
表面に吸着している1種類以上の有機化合物中の磁性粉
末に吸着していない官能基とを反応、架橋させることに
より、磁気記録媒体の耐久性が大幅に向上することも見
い出した。
【0011】すなわち、本発明の磁性粉末は、少なくと
も1種類の有機化合物若しくはその溶液により表面処理
が施されており、上記有機化合物中の少なくとも1種類
の官能基が磁性粉末表面に吸着していないことを特徴と
するものである。
【0012】また、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支
持体上に磁性粉末と結合剤とを主体とする磁性層が形成
されてなるものであり、上記磁性粉末が、少なくとも1
種類の有機化合物若しくはその溶液により表面処理が施
されたものであり、この有機化合物中の少なくとも1種
類の官能基が磁性粉末表面に吸着しておらず、この官能
基と結合剤中の官能基が架橋されていることを特徴とす
るものである。
【0013】上記のような有機化合物としては、多価ア
ルコール、多価カルボン酸、オキシ酸等が例示される。
【0014】そして、有機化合物として多価アルコール
を使用した場合においては、磁気記録媒体としたとき
に、多価アルコール中の磁性粉末表面に吸着していない
水酸基と結合剤中の水酸基とが架橋されていることが好
ましい。
【0015】また、有機化合物として多価カルボン酸を
使用した場合においては、磁気記録媒体としたときに、
多価カルボン酸中の磁性粉末に吸着していないカルボキ
シル基の水酸基と結合剤中の水酸基とが架橋されている
ことが好ましい。
【0016】さらには、有機化合物としてオキシ酸を使
用した場合においては、磁気記録媒体としたときに、オ
キシ酸中の水酸基若しくはカルボキシル基と結合剤中の
水酸基とが架橋されていることが好ましい。
【0017】また、本発明者らは、オキシ酸の中でも、
ω−ヒドロキシカルボン酸(HO(CH2n-1 COO
H)を使用するようにすれば、上述のように経時安定性
を確保する他、当該磁性粉末を結合剤に対して高い分散
性を有するものとすることが可能であることを見い出し
た。さらに、この磁性粉末を使用して塗布型の磁気記録
媒体を形成すれば、上述のように経時安定性が確保され
て高出力化され、且つ耐久性に優れたものとなる他、磁
性層中の磁性粉末の分散性が良好となり、高密度記録化
にも対応可能な磁気記録媒体を得ることができることを
見出した。ここで、nは1分子中に含まれる炭素数を表
す2以上30以下の整数である。
【0018】すなわち、上述のように、磁性粉末に対し
てω−ヒドロキシカルボン酸による表面処理を施すと、
ω−ヒドロキシカルボン酸中のカルボキシル基が磁性粉
末表面に吸着し、磁性粉末表面の活性点がその活性を失
うため、磁性粉末の耐候性が向上し、経時安定性が確保
される。
【0019】また、この磁性粉末を使用して塗布型の磁
気記録媒体を形成すれば、ω−ヒドロキシカルボン酸中
のアルキル鎖と結合剤や有機溶媒との親和性によって磁
性粉末が結合剤に対して高い分散性を得、磁性層中の磁
性粉末の分散性が良好となる。
【0020】さらには、磁性層中の結合剤を水酸基を有
するものとし、磁性層中に硬化剤も含有させ、磁性粉末
に吸着したω−ヒドロキシカルボン酸中の水酸基と結合
剤中の水酸基とを硬化剤で相互に架橋すれば、優れた耐
久性を得ることが可能である。
【0021】すなわち、有機化合物としてω−ヒドロキ
シカルボン酸を使用した場合においては、磁気記録媒体
としたときに、結合剤を当該結合剤中に水酸基を有する
ものとし、ω−ヒドロキシカルボン酸中の水酸基と結合
剤中の水酸基とを硬化剤により架橋することが好まし
い。
【0022】前述の有機化合物としては、不飽和結合を
有するオキシ酸、不飽和結合を有するアルコール、不飽
和結合を有するカルボン酸等が例示される。
【0023】そして、有機化合物として、不飽和結合を
有するオキシ酸を使用した場合においては、磁気記録媒
体としたときに、磁性粉末表面に吸着しているオキシ酸
中の磁性粉末表面に吸着していない不飽和結合と結合剤
中の不飽和結合が架橋されていることが好ましい。
【0024】また、有機化合物として、不飽和結合を有
するアルコールを使用した場合においては、磁気記録媒
体としたときに、磁性粉末表面に吸着しているアルコー
ル中の磁性粉末表面に吸着していない不飽和結合と結合
剤中の不飽和結合が架橋されていることが好ましい。
【0025】さらに、有機化合物として、不飽和結合を
有するカルボン酸を使用した場合においては、磁気記録
媒体としたときに、磁性粉末表面に吸着しているカルボ
ン酸中の磁性粉末表面に吸着していない不飽和結合と結
合剤中の不飽和結合が架橋されていることが好ましい。
【0026】また、本発明者らは、不飽和結合を有する
カルボン酸の中でも。ω位に不飽和結合を有する直鎖カ
ルボン酸(CH2 =CH(CH2n-3 COOH)を使
用するようにすれば、上述のように経時安定性を確保す
る他、当該磁性粉末を結合剤に対して高い分散性を有す
るものとすることが可能であることを見い出した。さら
に、この磁性粉末を使用して塗布型の磁気記録媒体を形
成すれば、上述のように経時安定性が確保されて高出力
化され、且つ耐久性に優れたものとなる他、磁性層中の
磁性粉末の分散性が良好となり、高密度記録化にも対応
可能な磁気記録媒体を得ることができることを見出し
た。ここで、nは1分子中に含まれる炭素数を示し、3
以上31以下の整数である。
【0027】すなわち、上述のように、磁性粉末に対し
てω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸による表面
処理を施すと、ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン
酸中のカルボキシル基が磁性粉末表面に吸着し、磁性粉
末表面の活性点がその活性を失うため、磁性粉末の耐候
性が向上し、経時安定性が確保される。
【0028】また、この磁性粉末を使用して塗布型の磁
気記録媒体を形成すれば、ω位に不飽和結合を有する直
鎖カルボン酸中のアルキル鎖と結合剤や有機溶媒との親
和性によって磁性粉末が結合剤に対して高い分散性を
得、磁性層中の磁性粉末の分散性が良好となる。
【0029】さらには、磁性層中の結合剤を不飽和結合
を有するものとし、磁性粉末に吸着したω位に不飽和結
合を有する直鎖カルボン酸中の不飽和結合と結合剤中の
不飽和結合とを架橋すれば、優れた耐久性を得ることが
可能である。
【0030】すなわち、有機化合物として、ω位に不飽
和結合を有する直鎖カルボン酸を使用する場合には、磁
気記録媒体としたときに、結合剤を当該結合剤中に不飽
和結合を有するものとし、ω位に不飽和結合を有する直
鎖カルボン酸中の不飽和結合と結合剤中の不飽和結合を
架橋することが好ましい。
【0031】なお、有機化合物として、ω−ヒドロキシ
カルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
ン酸を使用し、これらを含む2種類以上の異なる表面処
理剤により、磁性粉末に表面処理を施す場合には、ω−
ヒドロキシカルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する
直鎖カルボン酸以外の表面処理剤が、これが磁性粉末に
吸着したときの高さがω−ヒドロキシカルボン酸或いは
ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸が磁性粉末に
吸着したときの高さと同等か若しくはそれよりも低いも
のであることが好ましい。
【0032】また、有機化合物として、ω−ヒドロキシ
カルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
ン酸を使用し、これらを含む2種類以上の異なる表面処
理剤により、磁性粉末に表面処理を施す場合には、ω−
ヒドロキシカルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する
直鎖カルボン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤の
混合物若しくはその溶液により表面処理を施すようにし
ても良い。
【0033】さらに、有機化合物として、ω−ヒドロキ
シカルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖カル
ボン酸を使用し、これらを含む2種類以上の異なる表面
処理剤により、磁性粉末に表面処理を施す場合には、ω
−ヒドロキシカルボン酸或いはω位に不飽和結合を有す
る直鎖カルボン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤
若しくはその混合物或いはそれらの溶液により、順次、
表面処理を施すようにしても良い。
【0034】さらにまた、この場合、ω−ヒドロキシカ
ルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン
酸、若しくは当該カルボン酸を含有する混合物或いはそ
れらの溶液により表面処理が施された後、これらカルボ
ン酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有す
る混合物或いはそれらの溶液により表面処理が施される
ようにしても良い。
【0035】また、逆に、ω−ヒドロキシカルボン酸或
いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸以外の表
面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混合物或い
はそれらの溶液により表面処理が施された後、ω−ヒド
ロキシカルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖
カルボン酸、若しくは当該カルボン酸を含有する混合物
或いはそれらの溶液により表面処理が施されるようにし
ても良い。
【0036】さらに、有機化合物として、ω−ヒドロキ
シカルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖カル
ボン酸を使用し、これらを含む2種類以上の異なる表面
処理剤により、磁性粉末に表面処理を施す場合には、磁
性粉末が還元状態の磁性粉末に対して有機化合物を予め
被着させたものであっても良い。
【0037】さらにまた、このように磁性粉末が還元状
態の磁性粉末に対して有機化合物を予め被着させたもの
である場合においては、ω−ヒドロキシカルボン酸或い
はω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸以外の表面
処理剤が、これが磁性粉末に吸着したときの高さがω−
ヒドロキシカルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する
直鎖カルボン酸が磁性粉末に吸着したときの高さと同等
か若しくはそれよりも低いものであることが好ましい。
【0038】また、上述の還元状態の磁性粉末に有機化
合物を予め被着させた磁性粉末に、ω−ヒドロキシカル
ボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸
を被着させるときには、ω−ヒドロキシカルボン酸或い
はω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸を含む2種
類以上の異なる表面処理剤の混合物若しくはその溶液に
より表面処理を施すようにしても良い。
【0039】さらに、上述の還元状態の磁性粉末に有機
化合物を予め被着させた磁性粉末に、ω−ヒドロキシカ
ルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン
酸を被着させるときには、ω−ヒドロキシカルボン酸或
いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸を含む2
種類以上の異なる表面処理剤若しくはその混合物或いは
それらの溶液により、順次、表面処理を施すようにして
も良い。
【0040】さらにまた、この場合、ω−ヒドロキシカ
ルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン
酸、若しくは当該カルボン酸を含有する混合物或いはそ
れらの溶液により表面処理が施された後、これらカルボ
ン酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有す
る混合物或いはそれらの溶液により表面処理が施される
ようにしても良い。
【0041】また、逆に、ω−ヒドロキシカルボン酸或
いはω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸以外の表
面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混合物或い
はそれらの溶液により表面処理が施された後、ω−ヒド
ロキシカルボン酸或いはω位に不飽和結合を有する直鎖
カルボン酸、若しくは当該カルボン酸を含有する混合物
或いはそれらの溶液により表面処理が施されるようにし
ても良い。
【0042】なお、上述のような本発明の磁性粉末にお
いては、有機化合物として1種類だけを使用しても良い
し、2種類以上を使用しても良い。1種類のみ使用する
場合には、この有機化合物中に2つ以上の官能基が存在
し、そのうちの一部が磁性粉末表面に吸着し、残りが結
合剤と架橋できることが好ましい。一方、2種類以上の
有機化合物を使用する場合には、これらを混合して磁性
粉末に対し吸着させても良いし、順次、磁性粉末に対し
て吸着させても良い。このように2種類以上の有機化合
物を使用する場合には、これら有機化合物の中、少なく
とも1種類は2つ以上の官能基を有し、そのうちの一部
が磁性粉末表面に吸着し、残りが結合剤と架橋できるこ
とが好ましいが、これ以外の有機化合物においては、磁
性粉末表面に吸着するための1つの官能基を有していれ
ば良い。
【0043】なお、本発明の磁性粉末及び磁気記録媒体
においては、磁性粉末を各表面処理剤により予め表面処
理しても良いし、あるいは、磁気記録媒体製造の際の磁
性塗料調整時に各表面処理剤を磁性粉末や結合剤等とと
もに加えて磁性粉末を表面処理しても良い。
【0044】本発明の磁性粉末及び磁気記録媒体におい
て使用される磁性粉末としては、Fe,Co,Ni等の
強磁性金属材料や、Fe−Co,Fe−Ni,Fe−C
o−Ni,Co−Ni,Fe−Mn−Zn,Fe−Ni
−Zn,Fe−Co−Ni−Cr、Fe−Co−Ni−
P,Fe−Co−B,Fe−Co−Cr−B、Fe−C
o−V等のFe,Co,Niを主成分とする各種強磁性
合金材料からなる強磁性金属粉末が挙げられ、さらに、
これらの種々の特性を改善する目的でAl,Si,T
i,Cr,Mn,Cu,Zn,Mg,P、B、V等の元
素が添加されたものなど、従来より公知のものがいずれ
も適用可能である。
【0045】また、これらの磁性粉末の製造段階におい
ては、磁気特性の経時劣化を効果的に抑止する目的で還
元状態の磁性粉末を緩やかに酸化することによって磁性
粉末表面に薄い酸化鉄層(酸化防止層)を設けており、
本発明の磁性粉末及び磁気記録媒体においては、このよ
うな磁性粉末の適用が可能である。
【0046】さらに、本発明の磁性粉末及び磁気記録媒
体においては、前述のように、磁性粉末として還元状態
の磁性粉末に対して有機防錆剤等の有機化合物を予め被
着させた磁性粉末も適用可能であり、このような磁性粉
末においては、より効果的に経時劣化を抑止することが
可能である。これら磁性粉末の比表面積は任意である
が、比表面積25m2 /g以上、特に30m2 /g以上
のものに適用した場合の有効性が大きい。
【0047】ところで、本発明の磁性粉末及び磁気記録
媒体において表面処理剤として使用される有機化合物と
しては、前述のように、多価アルコール、多価カルボン
酸、オキシ酸等が例示される。このオキシ酸の中でもω
−ヒドロキシカルボン酸は特に好ましい。このω−ヒド
ロキシカルボン酸は、HO(CH2n-1 COOHで示
される構造を有するものであり、nは1分子中に含まれ
る炭素数を表す2以上30以下の整数である。
【0048】また、上記有機化合物としては、不飽和結
合を有するオキシ酸、不飽和結合を有するアルコール、
不飽和結合を有するカルボン酸等が例示される。この不
飽和結合を有するカルボン酸の中でもω位に不飽和結合
を有する直鎖カルボン酸は特に好ましい。このω位に不
飽和結合を有する直鎖カルボン酸は、CH2 =CH(C
2n-3 COOHの構造を有するものであり、nは1
分子中に含まれる炭素数を示し、3以上31以下の整数
である。
【0049】そして、これら表面処理剤として使用され
る有機化合物は、従来より公知の表面処理剤、たとえ
ば、各種分散剤や防錆剤と組み合わせて使用してもよ
い。これらの分散剤としてはたとえば、燐酸エステル、
アミン化合物、アルキルサルフェート、脂肪酸アミド、
高級アルコール、ポリエチレンオキサイド、スルホ琥珀
酸、スルホ琥珀酸エステル、公知の界面活性剤等およ
び、これらの塩、また、陰性有機酸(例えば−COO
H)を有する重合体分散剤の塩等を挙げることができ
る。
【0050】また、防錆剤としてはたとえば、クエン酸
およびその誘導体、フタル酸およびその誘導体、フタル
イミドおよびその誘導体、フタルヒドラジドおよびその
誘導体、カテコールおよびその誘導体、シクロヘキサン
ジオールおよびその誘導体、シクロヘキサンジカルボン
酸およびその誘導体、ナフタレンジオールおよびその誘
導体、ナフタレンジカルボン酸およびその誘導体、末端
にカルボキシル基を有する直鎖モノカルボン酸およびそ
の誘導体等を挙げることができる。
【0051】このとき、本発明の磁性粉末及び磁気記録
媒体においては、前述したような表面処理剤として使用
される有機化合物とともに用いる上記各種分散剤や防錆
剤として、該化合物分子が磁性粉末表面に吸着したとき
の磁性粉表面からの高さが前述の有機化合物の場合と同
等か、若しくは、それよりも低いものを用いることが好
ましい。
【0052】また、本発明の磁性粉末及び磁気記録媒体
においては、前述のように磁性粉末をこれら表面処理剤
として使用される有機化合物の混合物若しくはその溶液
によって表面処理する、或いはこれら表面処理剤として
使用される有機化合物若しくはこれらの混合物或いはそ
れらの溶液によって順次表面処理して多段階で処理して
も良く、この場合、前述の表面処理剤として使用される
有機化合物或いはこれを含む混合物及びそれ以外の表面
処理剤或いはこれを含む混合物のどちらを先に使用して
も良い。
【0053】なお、磁性粉末を各種表面処理剤により予
め処理する方法としては、たとえば、常温で液体状態の
表面処理剤中に磁性粉末を浸漬する方法、また、常温で
固体の表面処理剤については、有機溶媒に溶解させた処
理液中に磁性粉末を浸漬する方法や、加熱溶融した後に
磁性粉末を浸漬させる方法等が挙げられる。この場合、
上記表面処理剤の溶媒としては、特に限定されないが、
水、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトンやメチ
ルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン
等のエーテル系溶媒、トルエン等の芳香族系溶媒等がい
ずれも使用可能である。
【0054】また、磁性粉末表面に有機化合物を被着さ
せる方法としては、以下に示すような方法も挙げられ
る。すなわち、磁性粉末の製造工程において、還元状態
の磁性粉末を鎖状或いは環状のケトン類、または鎖状或
いは環状のエーテル類中に浸積し、穏やかに酸化して磁
性粉末表面に薄い酸化鉄層を形成させると同時にこれら
有機化合物の一部を変性させ、磁性粉末表面に吸着させ
る方法が挙げられる。この場合、ケトン類やエーテル類
は2種類以上を混合して使用しても良い。
【0055】さらには、上述の何れかの方法で各種有機
化合物を吸着させた後に他の有機化合物を1種類以上、
追加吸着させることによって合計で2段階以上にわたる
表面処理を行うことも有効である。この場合、磁性粉末
表面に吸着したときの分子の占有面積が大きな化合物か
ら順次吸着させるようにすると、分散性や耐候性を向上
させる上で一層効果的である。
【0056】これら表面処理剤として使用される各有機
化合物の磁性粉末に対するそれぞれの被着量としては、
磁性粉末100重量部に対し、0.03〜30重量部で
あることが望ましく、また、磁性粉末の比表面積と表面
処理剤の分子量と100との積を表面処理剤1モルあた
りの最密吸着面積で除して得られる値の0.01倍から
10倍であることがより好ましい。前記範囲を超えて上
記各表面処理剤が過剰に存在してもその効果は変わら
ず、過剰分が無駄になる。また、あまり過剰に被着して
おくと、磁気記録媒体の磁性塗膜の物性に悪影響を与え
る虞もある。逆に前記範囲を下回ると、すなわち、0.
03重量部以下であると効果が不足して十分な効果は得
られない。
【0057】上記各表面処理剤による表面処理は、前述
のように1回だけ処理を行う1段階表面処理であっても
良いし、2回以上に分けて行う多段階処理であっても良
い。
【0058】なお、1段階処理の場合には、表面処理剤
を直接、あるいは、室温で固体の場合にはこれを融解さ
せて、あるいは、任意の有機溶媒に溶解させて磁性粉末
に施せば良い。
【0059】また、多段階処理を行う場合には、前述の
ように、表面処理剤として使用される前述の有機化合物
以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混
合物或いはそれらの溶液により先に処理を行い、しかる
後に表面処理剤として使用される前述の有機化合物若し
くは上記有機化合物を含有する混合物或いはそれらの溶
液によりそれ以降の処理を行うか、あるいは、表面処理
剤として使用される前述の有機化合物若しくは上記有機
化合物を含有する混合物或いはそれらの溶液により先に
表面処理を行い、しかる後に表面処理剤として使用され
る前述の有機化合物以外の表面処理剤若しくは上記表面
処理剤を含有する混合物或いはそれらの溶液によって後
に表面処理を施すのが有効である。
【0060】上述の磁性粉末は、これら表面処理剤によ
って予め表面処理を施され、しかる後に結合剤や有機溶
剤、さらには上述の表面処理剤として使用される有機化
合物以外の分散剤、潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等とと
もに混練され、磁性塗料とされ、これを非磁性支持体上
に塗布して磁性層とし、所定の処理を施して本発明の磁
気記録媒体が製造される。
【0061】また、磁性粉末を上述のように予め表面処
理せず、当該磁性粉末と上記表面処理剤として使用され
る有機化合物とを結合剤や有機溶剤、各種添加剤と共に
混練して塗料化することによって磁性粉末を各種表面処
理剤により表面処理しても良い。
【0062】そして、これを非磁性支持体上に塗布して
所定の処理を施して本発明の磁気記録媒体が製造され
る。この場合、塗料に添加される表面処理剤の量は上述
の磁性粉末に対する被着量の場合と同様であり、また、
上述の公知の分散剤や防錆剤とともに添加してもよい。
【0063】さらに、磁性粉末を予め表面処理した場
合、磁性塗料調整時に表面処理した場合の何れにおいて
も、結合剤や有機溶剤、各種添加剤としては、通常の磁
気記録媒体に用いられるものがいずれも使用可能であ
る。また、この場合、混合比等も通常の磁気記録媒体の
場合に準じて設定される。
【0064】本発明の磁気記録媒体においては、上述の
ように磁性塗料を製造し、これを非磁性支持体上に塗布
して所定の処理を施して磁性層を形成して製造が行われ
る。そして、本発明の磁気記録媒体のうち、表面処理剤
として使用される有機化合物として各種オキシ酸、多価
カルボン酸類、多価アルコール類を使用している場合の
磁性塗料中の結合剤としては、平均分子量が10000
〜200000のものが好適であり、たとえば、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデ
ン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ポリビニルアル
コール共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合
体、ポリウレタン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル
共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セ
ルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セ
ルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、
セルロースプロピオネート、ニトロセルロース等)、ス
チレン−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、各種
の合成ゴム系、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹
脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、ア
クリル系樹脂、高分子量ポリエステル樹脂とイソシアネ
ートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールと
ポリイソシアネートの混合物、尿素ホルムアルデヒド樹
脂、低分子量グリコールと高分子量ジオールとイソシア
ネートの混合物および、これらの混合物等が例示され
る。
【0065】また、これらの結合剤は、−SO3 M、−
COOM、−PO(OM’)2 (但し、Mは水素、又は、
リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、
M’は水素、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアル
カリ金属または炭化水素残基を示す。)等の親水性極性
基を含有した樹脂であってもよい。
【0066】なお、上記結合剤のうち、塩化ビニル系の
共重合体は、塩化ビニルモノマ、スルホン酸若しくはリ
ン酸アルカリ塩を含有した共重合性モノマ、及び必要に
応じて他の種々の共重合性モノマをビニル重合により共
重合させて容易に得ることができる。これにより共重合
体の極性を任意にコントロールすることが可能である。
【0067】一方、本発明の磁気記録媒体において、表
面処理剤として使用される有機化合物として一分子中に
不飽和結合と水酸基(カルボキシル基を含む)とを有す
る有機化合物を使用している場合の磁性塗料中の結合剤
としては、α線、β線、γ線、X線、紫外線等の放射線
によって架橋する官能基を有し、平均分子量が1000
0〜200000のものが好適である。この官能基とし
ては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリ
ロイル基、アクリル基、メタクリル基等の不飽和二重結
合等を挙げることができ、これらの官能基を有する樹脂
としてはたとえば、不飽和ポリエステル系やアクリレー
ト系、メタクリレート系等のラジカル重合型樹脂、ポリ
エン−ポリオール系等のラジカル付加型樹脂、エポキシ
樹脂等のカチオン重合型樹脂、さらに、不飽和結合を導
入した塩ビ系結合剤やウレタン系結合剤等を挙げること
ができる。
【0068】また、上記結合剤のほかに不飽和結合をも
たない各種、公知の結合剤を用いることもできるが、こ
の場合には、磁性塗料中に上記の官能基を有するモノマ
ーを添加することによって同様の効果を得ることができ
る。このモノマーとしては、ジクリル酸エステル類、ア
クリル酸類、アクリルアミド類、アクリル酸アミド類、
アクリル酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルエス
テル類、ビニル異節環化合物、N−ビニル化合物、メタ
クリル酸類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸ア
ミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、スチレン
類、オレフィン類、クロトン酸類、イタコン酸類等、公
知のもの、および、これらの混合物等が例示される。な
お、もちろんのことながら、これらのモノマーは不飽和
結合を有する結合剤とともに用いられても、何ら差し支
えはない。これらのモノマーの添加量は、結合剤100
重量部に対して0.1〜80重量部であることが好まし
い。
【0069】これらの結合剤は、−SO3 M、−COO
M、−PO(OM’)2 (但し、Mは水素、又は、リチウ
ム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、M’は水
素、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属
または炭化水素残基)等の親水性極性基を含有した樹脂
であってもよい。
【0070】また、上記の結合剤を架橋させるために光
重合開始剤を添加する必要がある場合には、たとえば、
アセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、ジ
アセチル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、1−
ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロ
キシ−2−メチルフェニルプロパノン等のフェニルケト
ン類、ベンゾフェノン、ビス−4,4’−ジアルキルア
ミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキ
シベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンゾイン、
ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾイン類、クロル
チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチ
オキサントン等のキサントン類、その他、アントラキノ
ン類、スルフィド類、フェニルオキシム類等、公知のも
のを単独若しくは、2種類以上の混合物としていずれも
使用可能である。これらの重合開始剤の添加量として
は、少なすぎると硬化が不十分となる虞があり、また、
過剰に存在すると磁気記録媒体の磁性塗膜の物性に悪影
響を与える虞があるため、結合剤100重量部に対して
0.1重量部から50重量部の範囲とするのが好まし
い。
【0071】さらに、本発明においては、必要があれば
硬化促進剤を添加することも可能である。この硬化促進
剤としてはたとえば、N,N−ジメチルエタノールアミ
ン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールア
ミン、トリプロパノールアミン等の脂肪族アミン類、ビ
ス−4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノン、N,
N−ジメチルアミノ安息香酸アルキル等の芳香族アミ
ン、その他、ポリアミン化合物等、公知のものを単独若
しくは、2種類以上の混合物としていずれも使用可能で
ある。これらの硬化促進剤の添加量としては、重合開始
剤の場合と同様に、結合剤100重量部に対して0.1
重量部から50重量部の範囲とするのが好ましい。
【0072】さらに、本発明の磁気記録媒体において
は、磁性層を形成する磁性塗料中に、必要に応じて潤滑
剤、研摩剤、マット剤、帯電防止剤等の添加剤を含有さ
せてもよい。
【0073】また、この表面処理剤として使用される有
機化合物として、各種オキシ酸、多価カルボン酸類、多
価アルコール類を使用を使用している磁気記録媒体の硬
化剤としては以下に示すようなものが好適である。例え
ば、p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソ
シアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキ
サメチレンジイソシアネート、イソホロン系ポリイソシ
アネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネ
ート等の2個以上のイソシアネート基を有するポリイソ
シアネート化合物、ジイソシアナート、トリレンジイソ
シアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等のポリ
イソシアナート、テトラグリシジルメタキシレンジアミ
ン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシク
ロヘキサン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタ
ン、トリグリシジル−p−アミノフェノール等のポリグ
リシジルアミン化合物、2−ジブチルアミノ−4,6−
ジメルカプト置換トリアジン等のポリチオール化合物、
トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ化合物、
エポキシ化合物とイソシアネート化合物との混合物、エ
ポキシ化合物とオキサゾリン化合物との混合物、イミダ
ゾール化合物とイソシアネート化合物との混合物、無水
メチルナジン酸等、従来より公知のものがいずれも使用
可能である。これらの硬化剤は結合剤100重量部に対
して、通常、0.2〜80重量部の範囲で添加される。
【0074】潤滑剤としては、シリコーンオイル、グラ
ファイト、カーボンブラックグラファイトポリマ、二硫
化モリブデン、二硫化タングステン、ラウリン酸、ミリ
スチン酸、炭素原子数12〜16の脂肪酸と該脂肪酸の
炭素原子数と合計して炭素原子数21〜23個の一価ア
ルコールから成る脂肪酸エステル等も使用できる。これ
らの潤滑剤は結合剤100重量部に対して、通常、0.
2〜20重量部の範囲で添加される。
【0075】研摩剤としては、一般に使用される材料で
溶融アルミナ、αアルミナ等の各種アルミナ、炭化珪
素、酸化クロム、コランダム、人造コランダム、人造ダ
イヤモンド、ざくろ石、エメリ等が使用される。これら
の研摩剤は平均粒子径0.05〜5μmの大きさのもの
が使用され、特に好ましくは0.1〜2μmである。こ
れらの研摩剤は結合剤100重量部に対して、通常、1
〜20重量部の範囲で添加される。
【0076】マット剤としては、有機質粉末あるいは無
機質粉末をそれぞれに、あるいは混合して用いられる。
本発明に用いられる有機質粉末としては、アクリルスチ
レン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミ
ン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が好ましいが、ポ
リオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポ
リアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリ弗化
エチレン樹脂粉末等も使用でき、無機質粉末としては酸
化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウ
ム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化クロム、炭
化珪素、酸化鉄、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、
窒化ホウ素、弗化亜鉛、二酸化モリブデンが挙げられ
る。
【0077】帯電防止剤としては、カーボンブラックを
はじめ、グラファイト、酸化錫−酸化アンチモン系化合
物、酸化チタン−酸化錫−酸化アンチモン系化合物など
の導電性粉末、サポニンなどの天然界面活性剤、アルキ
レンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系など
のノニオン界面活性剤、高級アルキルアミン、第4級ア
ンモニウム塩類、ピリジン、その他の複素環類、ホスホ
ニウムまたはスルホニウム類などのカチオン界面活性
剤、カルボン酸、スルホン酸、燐酸、硫酸エステル基等
の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミ
ノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エ
ステル類等の両性活性剤などが挙げられる。
【0078】上記塗料に配合される溶媒、あるいはこの
塗料の塗布時の希釈溶剤としては、アセトン、メチルエ
チルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノ
ン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノー
ル、ブタノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エ
チル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールモ
ノアセテート等のエステル類、グリコールジメチルエー
テル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テ
トラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチレンクロライ
ド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、
ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等のものが使
用できる。
【0079】また、本発明の磁気記録媒体の非磁性支持
体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート
等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィ
ン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセ
テート等のセルロース誘導体、ポリアミド、ポリカーボ
ネートなどのプラスチックが挙げられるが、銅、アルミ
ニウム、亜鉛等の金属、ガラス、窒化ホウ素、炭化珪素
等のセラミクスなども使用できる。
【0080】これらの支持体の厚みはフィルム、シート
状の場合は約3〜100μm程度、好ましくは5〜50
μmであり、ディスク、カード状の場合は30μm〜1
0mm程度であり、ドラム状の場合は円筒状で用いら
れ、使用するレコーダに応じてその形は決められる。こ
の支持体と磁性層の中間には接着性を向上させる中間層
を設けてもよい。
【0081】なお、本発明の磁気記録媒体においては、
上述のように非磁性支持体上に磁性塗料を塗布して磁性
層を形成するが、その塗布方法としては、エアードクタ
ーコート、ブレードコート、エアーナイフコート、スク
ィズコート、含浸コート、リバースロールコート、トラ
ンスファロールコート、グラビアコート、キスコート、
キャストコート、スプレーコート、エクストルージョン
コート等が挙げられ、これらに限定されるものではな
い。これらのコート法によって非磁性支持体上に磁性層
を構成させる場合、一層ずつ塗布乾燥工程を積み重ねる
方式と乾燥されていない湿潤状態にある層の上に次の層
を逐次重ねて塗布する方式とがあるが、本発明の磁気記
録媒体の製造に当たってはいずれの方式を採ることもで
きる。
【0082】また、本発明の磁気記録媒体においては、
前述のように非磁性支持体に磁性塗料を塗布した後、所
定の処理を行う。本発明の磁気記録媒体のうち、磁性粉
末の表面処理剤として使用される有機化合物として各種
オキシ酸、多価カルボン酸類、多価アルコール類を使用
しているものにおいては、必要に応じて、磁性層中の磁
性粉末を配向させる処理を行った後、形成した磁性層を
乾燥する。この場合、配向磁場は交流または直流で約5
00〜5000ガウス程度であり、乾燥温度は約50〜
120℃程度、乾燥時間は約0.1〜10分程度であ
る。また必要に応じて表面平滑処理を施したり、所望の
形状に裁断したりして、本発明の磁気記録媒体を製造す
る。
【0083】一方、本発明の磁気記録媒体のうち、磁性
粉末の表面処理剤として使用される有機化合物として一
分子中に不飽和結合と水酸基(カルボキシル基を含む)
とを有する有機化合物を使用しているものにおいては、
非磁性支持体上に塗布された磁性層に必要に応じて磁性
層中の磁性粉末を配向させる処理を行った後、磁性層を
乾燥させた上、形成した磁性層に放射線を照射して結合
剤分子相互、及び有機化合物中の不飽和結合と結合剤中
の不飽和結合間を架橋、硬化させる。また、照射する放
射線としては、α線、β線、γ線、X線、紫外線等の中
から、結合剤中に導入された不飽和結合による重合に適
したものを用いればよい。たとえば、電子線の線源とし
ては電子線加速器等を利用することができ、また、X線
の線源としてはX線発生器、紫外線の線源としては水銀
ランプ、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、アー
ク燈、キセノンランプ等を挙げることができる。さら
に、放射線の照射による磁気記録媒体の昇温を防ぐ目的
で、任意の冷却装置等を併用してもよい。
【0084】なお、上記の放射線硬化の前または、後に
非磁性支持体上の塗料を乾燥させるが、このときの乾燥
温度は約50〜120℃程度、乾燥時間は約0.1〜1
0分程度である。また、配向の際の配向磁場は交流また
は直流で約500〜5000ガウス程度である。
【0085】さらに、必要に応じて表面平滑処理を施し
たり、所望の形状に裁断したりして、本発明の磁気記録
媒体を製造する。
【0086】本発明の磁性粉末においては、少なくとも
1種類の有機化合物若しくはその溶液により表面処理が
施されていることから、この有機化合物が磁性粉末表面
に吸着し、磁性粉末表面の活性点がその活性を失うた
め、磁性粉末の耐候性が向上し、経時安定性が確保され
る。
【0087】また、本発明の磁性粉末においては、有機
化合物中の少なくとも1種類の官能基が磁性粉末表面に
吸着していないことから、これを使用した本発明の磁気
記録媒体においては、結合剤中の官能基と磁性粉末表面
に吸着している1種類以上の有機化合物中の磁性粉末に
吸着していない官能基との反応、架橋がなされ、耐久性
が大幅に向上する。
【0088】また、表面処理剤として使用される有機化
合物として、ω−ヒドロキシカルボン酸を使用すれば、
上述のようにω−ヒドロキシカルボン酸中のカルボキシ
ル基が磁性粉末表面に吸着して、磁性粉末表面の活性点
がその活性を失うため、磁性粉末の耐候性が向上する
他、これを用いた本発明の磁気記録媒体においては、磁
性層を形成する磁性塗料中においてω−ヒドロキシカル
ボン酸中のアルキル鎖と結合剤や有機溶媒との親和性に
よって磁性粉末が結合剤に対して高い分散性を得、磁性
層中の磁性粉末の分散性が良好となる。
【0089】さらに、この本発明の磁気記録媒体におい
て、磁性層中の結合剤を水酸基を有するものとし、磁性
層中に硬化剤も含有させれば、磁性粉末に吸着したω−
ヒドロキシカルボン酸中の水酸基と結合剤中の水酸基と
が硬化剤で相互に架橋されて、優れた耐久性が得られ
る。
【0090】一方、表面処理剤として使用される有機化
合物として、ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸
を使用すれば、上述のようにω位に不飽和結合を有する
直鎖カルボン酸中のカルボキシル基が磁性粉末表面に吸
着して、磁性粉末表面の活性点がその活性を失うため、
磁性粉末の耐候性が向上する他、これを用いた本発明の
磁気記録媒体においては、磁性層を形成する磁性塗料中
においてω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸中の
アルキル鎖と結合剤や有機溶媒との親和性によって磁性
粉末が結合剤に対して高い分散性を得、磁性層中の磁性
粉末の分散性が良好となる。
【0091】さらには、この本発明の磁気記録媒体にお
いて、磁性層中の結合剤を不飽和結合を有するものとす
れば、磁性粉末に吸着したω位に不飽和結合を有する直
鎖カルボン酸中の不飽和結合と結合剤中の不飽和結合と
が架橋されて、優れた耐久性が得られる。
【0092】また、このとき、磁性粉末を還元状態の磁
性粉末に対して有機防錆剤等の有機化合物を予め被着さ
せたものとすれば、磁性粉末の高い磁化が確保され、経
時安定性がさらに良好となる。
【0093】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例について実験結
果に基づいて説明するが、本発明が以下に示す実施例に
より制限されるものではないことは言うまでもない。
【0094】〈実験例1〉本実験例においては、表面処
理剤として使用される有機化合物として少なくともω−
ヒドロキシカルボン酸を用い、少なくともω−ヒドロキ
シカルボン酸若しくはその溶液により表面処理した本発
明の磁性粉末を使用した本発明の磁気記録媒体の場合の
例について説明する。すなわち、表面処理を施さない磁
性粉末及びこれを使用した磁気記録媒体である比較例1
と、本発明を適用し、少なくともω−ヒドロキシカルボ
ン酸若しくはその溶液により表面処理した磁性粉末及び
これを使用した磁気記録媒体である実施例1〜10を製
造し、これらの磁気特性と表面光沢性及び耐久性を調査
することとした。各磁性粉末及び磁気記録媒体の製造過
程と実験結果を併せて以下に示す。
【0095】比較例1 本比較例1は、市販の磁気記録媒体用針状金属鉄磁性粉
末(比表面積53.9m2/g,保磁力Hc=126.
5kA/m,飽和磁化σs=120Am2 /kg,平均
長軸長0.3μm,針状比8〜10)を用いて磁気記録
媒体を作製した例である。
【0096】すなわち、以下の組成の磁性塗料を調製
し、これを厚さ30μmポリエステルベースフィルム上
に塗布し、5000ガウスの配向磁場で配向させた後、
60℃,5分の条件で乾燥させ、磁気記録媒体として磁
気テープを作製した。
【0097】 磁気記録媒体用針状金属鉄磁性粉末 100 重量部 塩化ビニル酢酸ビニル共重合体 10 重量部 ポリウレタン樹脂 10 重量部 カーボン 3 重量部 酸化アルミニウム 2 重量部 ポリイソシアネート 5 重量部 メチルエチルケトン 100 重量部 トルエン 100 重量部 シクロヘキサノン 50 重量部 このようにして得られた磁気記録媒体について、磁気特
性を振動試料型磁束計で測定し、また、表面光沢性を標
準光沢度計で全反射率として測定した。さらに、耐久性
をいわゆるスティルテスト法で調べた。すなわち、磁気
記録媒体の同一箇所を磁気ヘッドで反復走査、再生し、
再生画像の画質が低下するまでの時間をもって耐久性の
測定値とした。なお、表面光沢性と耐久性の測定値につ
いては、本比較例1の測定値を100%として正規化し
た。以上の測定値を表1に示す。なお、後述の実施例1
〜10の結果も表1に併せて示すこととする。
【0098】
【表1】
【0099】実施例1 本実施例1は、比較例1で用いた磁性粉末に対して表面
処理剤として使用される有機化合物として、HO(CH
215COOHの構造を有する16−ヒドロキシパルミ
チン酸を用いて表面処理を行った磁性粉末及びこれを用
いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0100】まず、16−ヒドロキシパルミチン酸の
0.5mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性
粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末
のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、この
磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁性塗
料を調製し、比較例1と同様にして磁気記録媒体として
磁気テープを製造した。
【0101】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0102】表1の結果に示されるように、本実施例1
の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角形
比を有し、比較例1に比べて高い分散性が得られたこと
は明らかである。また、耐久性も良好であり、これは硬
化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時間
の経過とともに結合剤分子中の水酸基や16−ヒドロキ
シパルミチン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考え
られる。
【0103】このことは、16−ヒドロキシパルミチン
酸で表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有用
性を示すとともに、16−ヒドロキシパルミチン酸の優
れた表面処理性を示すものである。
【0104】実施例2 上記実施例1は予め16−ヒドロキシパルミチン酸で表
面処理を行った磁性粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁
気記録媒体を作製した例であるが、本実施例2は、磁性
粉末に対する表面処理を行うことなく、比較例1で用い
た未処理磁性粉末と16−ヒドロキシパルミチン酸とを
直接磁性塗料中に添加して磁性粉末に表面処理を行って
磁性粉末とするとともに、磁気記録媒体を作製した例で
ある。
【0105】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例2では上述のように、16−ヒドロキシ
パルミチン酸14重量部を磁性粉末の投入と同時に添加
した。これによって、磁性塗料混練時に16−ヒドロキ
シパルミチン酸が磁性粉末の表面に吸着して、磁性粉末
の表面処理がなされる。次いで、比較例1と同様にして
磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0106】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0107】表1の結果に示されるように、本実施例2
の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性が
確保されることが確認された。
【0108】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た16−ヒドロキシパルミチン酸の磁性粉末に対する優
れた表面処理性を示すものである。
【0109】実施例3 本実施例3は、比較例1で用いた磁性粉末に対して表面
処理剤として使用される有機化合物として、HO(CH
215COOHの構造を有する16−ヒドロキシパルミ
チン酸とCH3 (CH212COOHの構造を有するミ
リスチン酸との混合物を用いて表面処理を行った磁性粉
末及びこれを用いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0110】まず、16−ヒドロキシパルミチン酸の
0.4mol/lエタノール溶液とミリスチン酸の0.
6mol/lエタノール溶液との混合液に所定量の上記
磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性
粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、
この磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁
性塗料を調製し、比較例1と同様にして磁気記録媒体と
して磁気テープを製造した。
【0111】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0112】表1の結果に示されるように、本実施例3
の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角形
比を有し、比較例1に比べて高い分散性が得られたこと
は明らかである。また、耐久性も良好であり、これは硬
化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時間
の経過とともに結合剤分子中の水酸基や16−ヒドロキ
シパルミチン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考え
られる。
【0113】このことは、16−ヒドロキシパルミチン
酸を含む混合物で表面処理を施した磁性粉末の磁性材料
としての有用性を示すとともに、該混合物の優れた表面
処理性を示すものである。
【0114】実施例4 上記実施例3は予め16−ヒドロキシパルミチン酸とミ
リスチン酸との混合物で表面処理を行った磁性粉末を用
いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例であ
るが、本実施例4は、磁性粉末に対する表面処理を行う
ことなく、比較例1で用いた未処理磁性粉末と16−ヒ
ドロキシパルミチン酸及び、ミリスチン酸とを直接磁性
塗料中に添加して磁性粉末に表面処理を行って磁性粉末
とするとともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0115】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例4では上述のように、16−ヒドロキシ
パルミチン酸6重量部とミリスチン酸8重量部とを磁性
粉末の投入と同時に添加した。これによって、磁性塗料
混練時に16−ヒドロキシパルミチン酸とミリスチン酸
とが磁性粉末の表面に吸着して、磁性粉末の表面処理が
なされる。次いで、比較例1と同様にして磁気記録媒体
として磁気テープを製造した。
【0116】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0117】表1の結果に示されるように、本実施例4
の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性が
確保されることが確認された。
【0118】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た16−ヒドロキシパルミチン酸を含む混合物の磁性粉
末に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0119】実施例5 本実施例5は、比較例1で用いた磁性粉末に対して表面
処理剤として使用される有機化合物として、HO(CH
211COOHの構造を有する12−ヒドロキシラウリ
ン酸とC127 NO3 の構造を有する4−アミノ−無水
ナフタル酸を用いて順次、表面処理を行った磁性粉末及
びこれを用いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0120】まず、12−ヒドロキシラウリン酸の0.
2mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末
を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみ
を濾過、分離して大気中で乾燥した。さらに、4−アミ
ノ−無水ナフタル酸の0.3mol/lエタノール溶液
中に所定量の磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪
した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥し
た。次いで、この磁性粉末を用いて比較例1に示した組
成で同様に磁性塗料を調製し、比較例1と同様にして磁
気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0121】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0122】表1の結果に示されるように、本実施例5
の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角形
比を有し、比較例1に比べて高い分散性が得られたこと
は明らかである。また、耐久性も良好であり、これは硬
化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時間
の経過とともに結合剤分子中の水酸基や12−ヒドロキ
シラウリン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考えら
れる。
【0123】このことは、12−ヒドロキシラウリン酸
を含む多段階表面処理を施した磁性粉末の磁性材料とし
ての有用性を示すとともに、該多段階表面処理の優れた
表面処理性を示すものである。
【0124】実施例6 上記実施例5は予め12−ヒドロキシラウリン酸と4−
アミノ−無水ナフタル酸とによって順次、表面処理を行
った磁性粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体
を作製した例であるが、本実施例6は、予め磁性粉末に
対する表面処理を行うことなく、比較例1で用いた未処
理磁性粉末を用いて磁性塗料を調製する際に12−ヒド
ロキシラウリン酸および、4−アミノ−無水ナフタル酸
とを順次、磁性塗料中に添加して磁性粉末に表面処理を
行って磁性粉末とするとともに磁気記録媒体を作製した
例である。
【0125】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例6では上述のように磁性粉末の投入と同
時に12−ヒドロキシラウリン酸6重量部を添加し、さ
らに、全混練時間の半分が経過した時点で4−アミノ−
無水ナフタル酸8重量部を追加添加した。これによっ
て、磁性塗料混練時に12−ヒドロキシラウリン酸と4
−アミノ−無水ナフタル酸とが磁性粉末の表面に順次、
吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。次いで、比
較例1と同様にして磁気記録媒体として磁気テープを製
造した。
【0126】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0127】表1の結果に示されるように、本実施例6
の磁気録媒体においても、高い分散性と高い耐久性が確
保されることが確認された。
【0128】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た12−ヒドロキシラウリン酸を含む多段階表面処理の
磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0129】実施例7 本実施例7は、比較例1で用いた磁性粉末に対して表面
処理剤として使用される有機化合物として、C64
(COOH)2 の構造を有するフタル酸とHO(CH
211COOHの構造を有する12−ヒドロキシラウリ
ン酸を用いて順次、表面処理を行った磁性粉末及びこれ
を用いた磁気録媒体を作成した例である。
【0130】まず、フタル酸の0.3mol/lエタノ
ール溶液中に所定量の磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3
時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中
で乾燥した。さらに、12−ヒドロキシラウリン酸の
0.2mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性
粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末
のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、この
磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁性塗
料を調製し、比較例1と同様にして磁気記録媒体として
磁気テープを製造した。
【0131】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0132】表1の結果に示されるように、本実施例7
の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角形
比を有し、比較例1に比べて高い分散性が得られたこと
は明らかである。また、耐久性も良好であり、これは硬
化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時間
の経過とともに結合剤分子中の水酸基や12−ヒドロキ
シラウリン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考えら
れる。
【0133】このことは、12−ヒドロキシラウリン酸
を含む多段階表面処理を施した磁性粉末の磁性材料とし
ての有用性を示すとともに、該多段階表面処理の優れた
表面処理性を示すものである。
【0134】実施例8 上記実施例7は予めフタル酸と12−ヒドロキシラウリ
ン酸とによって順次、表面処理を行った磁性粉末を用い
て磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例である
が、本実施例8は、予め磁性粉末に対する表面処理を行
うことなく、比較例1で用いた未処理磁性粉末を用いて
磁性塗料を調製する際にフタル酸および、12−ヒドロ
キシラウリン酸とを順次、磁性塗料中に添加して磁性粉
末に表面処理を行って磁性粉末とするとともに磁気記録
媒体を作製した例である。
【0135】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例8では上述のように磁性粉末の投入と同
時にフタル酸8重量部を添加し、さらに、全混練時間の
半分が経過した時点で12−ヒドロキシラウリン酸6重
量部を追加添加した。これによって、磁性塗料混練時に
フタル酸と12−ヒドロキシラウリン酸とが磁性粉末の
表面に順次、吸着して、磁性粉末の表面処理がなされ
る。次いで、比較例1と同様にして磁気記録媒体として
磁気テープを製造した。
【0136】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0137】表1の結果に示されるように、本実施例8
の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性が
確保されることが確認された。
【0138】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た12−ヒドロキシラウリン酸を含む多段階表面処理の
磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0139】実施例9 本実施例9は、比較例1で用いた磁性粉末に対して表面
処理剤として使用される有機化合物として、C126
3 の構造を有する無水ナフタル酸とHO(CH29
OOHの構造を有する10−ヒドロキシカプリン酸を用
いて順次、表面処理を行った磁性粉末及びこれを用いた
磁気記録媒体を作成した例である。
【0140】まず、無水ナフタル酸の0.3mol/l
エタノール溶液中に所定量の磁性粉末を浸漬し、振動ミ
ルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して
大気中で乾燥した。さらに、10−ヒドロキシカプリン
酸の0.2mol/lエタノール溶液中に所定量の上記
磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性
粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、
この磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁
性塗料を調製し、比較例1と同様にして磁気記録媒体と
して磁気テープを製造した。
【0141】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0142】表1の結果に示されるように、本実施例9
の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角形
比を有し、比較例1に比べて高い分散性が得られたこと
は明らかである。また、耐久性も良好であり、これは硬
化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時間
の経過とともに結合剤分子中の水酸基や10−ヒドロキ
シカプリン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考えら
れる。
【0143】このことは、10−ヒドロキシカプリン酸
を含む多段階表面処理を施した磁性粉末の磁性材料とし
ての有用性を示すとともに、該多段階表面処理の優れた
表面処理性を示すものである。
【0144】実施例10 上記実施例9は予め無水ナフタル酸と10−ヒドロキシ
カプリン酸とによって順次、表面処理を行った磁性粉末
を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例
であるが、本実施例10は、予め磁性粉末に対する表面
処理を行うことなく、比較例1で用いた未処理磁性粉末
を用いて磁性塗料を調製する際に無水ナフタル酸およ
び、10−ヒドロキシカプリン酸とを順次、磁性塗料中
に添加して磁性粉末の表面処理を行って磁性粉末とする
とともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0145】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例10では上述のように磁性粉末の投入と
同時に無水ナフタル酸8重量部を添加し、さらに、全混
練時間の半分が経過した時点で10−ヒドロキシカプリ
ン酸6重量部を追加添加した。これによって、磁性塗料
混練時に無水ナフタル酸と10−ヒドロキシカプリン酸
とが磁性粉末の表面に順次、吸着して、磁性粉末の表面
処理がなされる。次いで、比較例1と同様にして磁気記
録媒体として磁気テープを製造した。
【0146】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例1と同様に測定した。結果は
表1に併せて示す。
【0147】表1の結果に示されるように、本実施例1
0の磁気録媒体においても、高い分散性と高い耐久性が
確保されることが確認された。
【0148】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た10−ヒドロキシカプリン酸を含む多段階表面処理の
磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0149】以上の実験例1の結果から、本発明の磁性
粉末及び磁気記録媒体のうち、表面処理剤として使用さ
れる有機化合物としてω−ヒドロキシカルボン酸を用
い、ω−ヒドロキシカルボン酸若しくはその溶液により
表面処理している磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒
体においては、磁性層を形成する磁性塗料中においてω
−ヒドロキシカルボン酸中のアルキル鎖と結合剤や有機
溶媒との親和性によって磁性粉末が結合剤に対して高い
分散性を得、磁性層中の磁性粉末の分散性が良好となっ
ていることが確認された。
【0150】さらに、この本発明の磁気記録媒体におい
て、磁性層中の結合剤を水酸基を有するものとし、磁性
層中に硬化剤も含有させれば、磁性粉末に吸着したω−
ヒドロキシカルボン酸中の水酸基と結合剤中の水酸基と
を硬化剤で相互に架橋し、優れた耐久性が得られること
も確認された。
【0151】すなわち、上述のような本発明の磁気記録
媒体は高密度記録化に十分対応可能である。
【0152】〈実験例2〉本実験例においては、表面処
理剤として使用される有機化合物として少なくともω−
ヒドロキシカルボン酸を用い、還元状態の磁性粉末に対
して有機化合物を予め被着させた磁性粉末に対し、少な
くとも上記ω−ヒドロキシカルボン酸若しくはその溶液
により表面処理した本発明の磁性粉末を使用した本発明
の磁気記録媒体の場合の例について説明する。すなわ
ち、前述の実験例1で使用した表面処理を施さない磁性
粉末及びこれを使用した磁気記録媒体である比較例1
と、本発明を適用し、還元状態の磁性粉末に対して有機
化合物を予め被着させた磁性粉末に少なくともω−ヒド
ロキシカルボン酸若しくはその溶液により表面処理した
磁性粉末及びこれを使用した磁気記録媒体である実施例
11〜22を製造し、これらの磁気特性と表面光沢性及
び耐久性、経時安定性を調査することとした。各磁性粉
末及び磁気記録媒体の製造過程と実験結果を併せて以下
に示す。
【0153】なお、上記磁気特性と表面光沢性及び耐久
性については実験例1で述べた方法により測定を行うも
のとし、表面光沢性及び耐久性は比較例1の結果を10
0%として正規化するものとする。また、この磁気記録
媒体を温度60℃、相対湿度90%の環境下に7日間放
置したときの残留磁束密度の劣化率(経時劣化)を測定
して経時安定性の目安とした。表2に比較例1の各特性
の測定値を示す。なお、後述の実施例11〜22の各特
性の測定値も表2に併せて示す。
【0154】
【表2】
【0155】実施例11 本実施例11は、表面部分に酸化鉄層の存在しない状
態、すなわち還元状態から有機化合物を被着させること
によって表面処理が施された磁性粉末に対して、さらに
表面処理剤として使用される有機化合物としてHO(C
215 COOHの構造を有する16−ヒドロキシパ
ルミチン酸を用いて表面処理を行った磁性粉末及びこれ
を用いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0156】まず、比較例1に示した磁性粉末の原料ゲ
ーサイトα−FeOOHを反応容器内に緩やかに充填
し、大気フローの状態で400℃で3時間加熱、脱水処
理を行った後、水素フローに切り替えてそのまま400
℃で3時間水素還元処理を行った。その後、水素フロー
の状態のまま室温近くまで放置冷却し、ついで還元磁性
粉末が大気に触れない状態で水素フローを停止し、引き
続いて有機化合物としてメチルエチルケトン(CH3
OCH2 CH3 )を反応容器内に注入した。以上の操作
によって得られた試料を反応容器から取り出し、大気中
で余分な有機化合物を乾燥して磁性粉末を得た。なお、
この磁性粉末の飽和磁化を表2中に示す。
【0157】次に、16−ヒドロキシパルミチン酸の
0.5mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性
粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末
のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、この
磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁性塗
料を調製し、比較例1と同様に磁気記録媒体として磁気
テープを製造した。
【0158】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を実験例1と同様にして測定し、温度
60℃、相対湿度90%の環境下に7日間放置したとき
の残留磁束密度の劣化率を経時安定性として測定した。
結果を表2に併せて示す。
【0159】表2の結果に示されるように、本実施例1
1の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例11の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例1に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、磁性粉末表面
に2回に分けて吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時
間の経過とともに結合剤分子中の水酸基や16−ヒドロ
キシパルミチン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考
えられる。
【0160】このことは、表面部分に酸化鉄層の存在し
ない還元状態から有機化合物を被着させることによって
表面処理が施された磁性粉末に対して、さらに16−ヒ
ドロキシパルミチン酸で表面処理を施した磁性粉末の磁
性材料としての有用性を示すとともに、16−ヒドロキ
シパルミチン酸の優れた表面処理性を示すものである。
【0161】実施例12 上記実施例11は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに16−ヒドロキシパルミチン酸を用いて表面処理を
行った磁性粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒
体を作製した例であるが、本実施例12は、予め16−
ヒドロキシパルミチン酸による表面処理を行うことな
く、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元状態から有機
化合物を被着させることによって表面処理が施された磁
性粉末と16−ヒドロキシパルミチン酸とを直接磁性塗
料中に添加して磁性粉末に表面処理を行って磁性粉末と
するとともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0162】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにアセトン(CH3 COCH3 )を使用す
るものとした。なお、このようにして得られた磁性粉末
の飽和磁化の値を表2中に示す。
【0163】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例12では上述のように、16−ヒドロ
キシパルミチン酸14重量部を磁性粉末の投入と同時に
添加した。これによって、磁性塗料混練時に16−ヒド
ロキシパルミチン酸が磁性粉末の表面に吸着して、磁性
粉末の表面処理がなされる。次いで、比較例1と同様に
して磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0164】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0165】表2の結果に示されるように、本実施例1
2の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0166】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された16−ヒドロキシパ
ルミチン酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示す
ものである。
【0167】実施例13 本実施例13は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてHO(CH213COOH
の構造を有する14−ヒドロキシミリスチン酸とCH3
(CH210COOHの構造を有するラウリン酸との混
合物を用いて表面処理を行った磁性粉末及びこれを用い
た磁気記録媒体を作成した例である。
【0168】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにエチルエーテル((CH3 CH22
O)を使用するものとした。なお、このようにして得ら
れた磁性粉末の飽和磁化の値を表2中に示す。
【0169】次に、14−ヒドロキシミリスチン酸の
0.4mol/lエタノール溶液とラウリン酸の0.6
mol/lエタノール溶液との混合液に所定量の上記磁
性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉
末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、こ
の磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁性
塗料を調製し、比較例1と同様に磁気記録媒体として磁
気テープを製造した。
【0170】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0171】表2の結果に示されるように、本実施例1
3の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例13の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例1に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、磁性粉末表面
に2回に分けて吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時
間の経過とともに結合剤分子中の水酸基や14−ヒドロ
キシミリスチン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考
えられる。
【0172】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに14−ヒドロキシミリスチン酸で表面処理
を施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すとと
もに、14−ヒドロキシミリスチン酸の優れた表面処理
性を示すものである。
【0173】実施例14 上記実施例13は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに14−ヒドロキシミリスチン酸とラウリン酸との混
合物を用いて表面処理を行った磁性粉末を用いて磁性塗
料を調製し、磁気記録媒体を作製した例であるが、本実
施例14は、予め14−ヒドロキシミリスチン酸とラウ
リン酸との混合物による表面処理を行うことなく、表面
部分に酸化鉄層の存在しない還元状態から有機化合物を
被着させることによって表面処理が施された磁性粉末と
14−ヒドロキシミリスチン酸とラウリン酸とを直接磁
性塗料中に添加して磁性粉末に表面処理を行って磁性粉
末とするとともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0174】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにテトラヒドロフラン(C48 O)を使
用するものとした。なお、このようにして得られた磁性
粉末の飽和磁化の値を表2中に示す。
【0175】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例14では上述のように、14−ヒドロ
キシミリスチン酸6重量部とラウリン酸8重量部とを磁
性粉末の投入と同時に添加した。これによって、磁性塗
料混練時に14−ヒドロキシミリスチン酸とラウリン酸
とが磁性粉末の表面に吸着して、磁性粉末の表面処理が
なされる。次いで、比較例1と同様にして磁気記録媒体
として磁気テープを製造した。
【0176】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0177】表2の結果に示されるように、本実施例1
4の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0178】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された14−ヒドロキシミ
リスチン酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示す
ものである。
【0179】実施例15 本実施例15は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてHO(CH215COOH
の構造を有する16−ヒドロキシパルミチン酸とC12
5 NO5 の構造を有する4−ニトロ−無水ナフタル酸を
用いて順次、表面処理を行った磁性粉末及びこれを用い
た磁気記録媒体を作成した例である。
【0180】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにシクロヘキサノン(C610O)を使用
するものとした。なお、このようにして得られた磁性粉
末の飽和磁化の値を表2中に示す。
【0181】次に、16−ヒドロキシパルミチン酸の
0.2mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性
粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末
のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。さらに、4−
ニトロ−無水ナフタル酸の0.3mol/lエタノール
溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3
時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中
で乾燥した。次いで、この磁性粉末を用いて比較例1に
示した組成で同様に磁性塗料を調製し、比較例1と同様
に磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0182】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0183】表2の結果に示されるように、本実施例1
5の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例15の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例1に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、磁性粉末表面
に3回に分けて吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時
間の経過とともに結合剤分子中の水酸基や16−ヒドロ
キシパルミチン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考
えられる。
【0184】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに16−ヒドロキシパルミチン酸で表面処理
を施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すとと
もに、16−ヒドロキシパルミチン酸の優れた表面処理
性を示すものである。
【0185】実施例16 上記実施例15は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに16−ヒドロキシパルミチン酸と4−ニトロ−無水
ナフタル酸とによって順次、表面処理を行った磁性粉末
を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例
であるが、本実施例16は、予め磁性粉末に対する表面
処理剤による表面処理を行うことなく、表面部分に酸化
鉄層の存在しない還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末を用いて磁性
塗料を調製する際に16−ヒドロキシパルミチン酸およ
び、4−ニトロ−無水ナフタル酸とを順次、磁性塗料中
に添加して磁性粉末に表面処理を行って磁性粉末とする
とともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0186】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにシクロペンタノン(C58 O)を使用
するものとした。なお、このようにして得られた磁性粉
末の飽和磁化の値を表2中に示す。
【0187】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例16では上述のように磁性粉末の投入
と同時に16−ヒドロキシパルミチン酸6重量部を添加
し、さらに、全混練時間の半分が経過した時点で4−ニ
トロ−無水ナフタル酸8重量部を追加添加した。これに
よって、磁性塗料混練時に16−ヒドロキシパルミチン
酸と4−ニトロ−無水ナフタル酸とが磁性粉末の表面に
順次、吸着して、磁性粉末の表面処理が順次なされる。
次いで、比較例1と同様にして磁気記録媒体として磁気
テープを製造した。
【0188】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0189】表2の結果に示されるように、本実施例1
6の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0190】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された16−ヒドロキシパ
ルミチン酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示す
ものである。
【0191】実施例17 本実施例17は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてCH3 (CH28 COO
Hの構造を有するカプリン酸とHO(CH211COO
Hの構造を有する12−ヒドロキシラウリン酸を用いて
順次、表面処理を行った磁性粉末及びこれを用いた磁気
記録媒体を作成した例である。
【0192】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにテトラヒドロフラン(C48 O)を使
用するものとした。なお、このようにして得られた磁性
粉末の飽和磁化の値を表2中に示す。
【0193】次に、カプリン酸の0.3mol/lエタ
ノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミ
ルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して
大気中で乾燥した。さらに、12−ヒドロキシラウリン
酸の0.2mol/lエタノール溶液中に所定量の上記
磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性
粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、
この磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁
性塗料を調製し、比較例1と同様に磁気テープを製造し
た。
【0194】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0195】表2の結果に示されるように、本実施例1
7の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例17の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例1に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、磁性粉末表面
に3回に分けて吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時
間の経過とともに結合剤分子中の水酸基や12−ヒドロ
キシラウリン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考え
られる。
【0196】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに12−ヒドロキシラウリン酸で表面処理を
施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すととも
に、12−ヒドロキシラウリン酸の優れた表面処理性を
示すものである。
【0197】実施例18 上記実施例17は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らにカプリン酸と12−ヒドロキシラウリン酸とによっ
て順次、表面処理を行った磁性粉末を用いて磁性塗料を
調製し、磁気記録媒体を作製した例であるが、本実施例
18は、予め磁性粉末に対する表面処理剤による表面処
理を行うことなく、表面部分に酸化鉄層の存在しない還
元状態から有機化合物を被着させることによって表面処
理が施された磁性粉末を用いて磁性塗料を調製する際に
カプリン酸および、12−ヒドロキシラウリン酸とを順
次、磁性塗料中に添加して磁性粉末に表面処理を行って
磁性粉末とするとともに磁気記録媒体を作製した例であ
る。
【0198】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりに1,4−ジオキサン(C482 )を
使用するものとした。なお、このようにして得られた磁
性粉末の飽和磁化の値を表2中に示す。
【0199】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例18では上述のように、磁性粉末の投
入と同時にカプリン酸8重量部を添加し、さらに、全混
練時間の半分が経過した時点で12−ヒドロキシラウリ
ン酸6重量部を追加添加した。これによって、磁性塗料
混練時にカプリン酸と12−ヒドロキシラウリン酸とが
磁性粉末の表面に順次、吸着して、磁性粉末の表面処理
がなされる。次いで、比較例1と同様にして磁気記録媒
体として磁気テープを製造した。
【0200】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0201】表2の結果に示されるように、本実施例1
8の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0202】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された12−ヒドロキシラ
ウリン酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すも
のである。
【0203】実施例19 本実施例19は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてC106 (COOH)2
構造を有する2,3−ナフタレンジカルボン酸とHO
(CH211COOHの構造を有する12−ヒドロキシ
ラウリン酸を用いて順次、表面処理を行った磁性粉末及
びこれを使用した磁気記録媒体を作成した例である。
【0204】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、還元磁性
粉末の冷却を0℃近傍まで行うものとし、有機化合物と
してメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH3 )の
代わりにアセトアルデヒド(CH3 CHO)を使用する
ものとした。なお、このようにして得られた磁性粉末の
飽和磁化の値を表2中に示す。
【0205】次に、2,3−ナフタレンジカルボン酸の
0.3mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性
粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末
のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。さらに、12
−ヒドロキシラウリン酸の0.2mol/lエタノール
溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3
時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中
で乾燥した。次いで、この磁性粉末を用いて比較例1に
示した組成で同様に磁性塗料を調製し、比較例1と同様
に磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0206】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0207】表2の結果に示されるように、本実施例1
9の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例19の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例1に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、磁性粉末表面
に3回に分けて吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化剤として添加したポリイソシアネートが塗布後、時
間の経過とともに結合剤分子中の水酸基や12−ヒドロ
キシラウリン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考え
られる。
【0208】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに12−ヒドロキシラウリン酸で表面処理を
施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すととも
に、12−ヒドロキシラウリン酸の優れた表面処理性を
示すものである。
【0209】実施例20 上記実施例19は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに2,3−ナフタレンジカルボン酸と12−ヒドロキ
シラウリン酸とによって順次、表面処理を行った磁性粉
末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した
例であるが、本実施例20は、予め磁性粉末に対する表
面処理剤による表面処理を行うことなく、表面部分に酸
化鉄層の存在しない還元状態から有機化合物を被着させ
ることによって表面処理が施された磁性粉末を用いて磁
性塗料を調製する際に2,3−ナフタレンジカルボン酸
および、12−ヒドロキシラウリン酸とを順次、磁性塗
料中に添加して磁性粉末の表面処理を行って磁性粉末と
するとともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0210】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにベンズアルデヒド(C65 CHO)を
使用するものとした。なお、このようにして得られた磁
性粉末の飽和磁化の値を表2中に示す。
【0211】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例20では上述のように磁性粉末の投入
と同時に2,3−ナフタレンジカルボン酸8重量部を添
加し、さらに、全混練時間の半分が経過した時点で12
−ヒドロキシラウリン酸6重量部を追加添加した。これ
によって、磁性塗料混練時に2,3−ナフタレンジカル
ボン酸と12−ヒドロキシラウリン酸とが磁性粉末の表
面に順次、吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。
次いで、比較例1と同様にして磁気記録媒体として磁気
テープを製造した。
【0212】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0213】表2の結果に示されるように、本実施例2
0の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0214】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された12−ヒドロキシラ
ウリン酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すも
のである。
【0215】実施例21 本実施例21は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてHO(CH213COOH
の構造を有する14−ヒドロキシミリスチン酸とCF3
(CF27 (CH210COOHの構造を有するヘプ
タデカフルオロノナデカン酸の混合物を用い、表面処理
を行った磁性粉末及びこれを使用した磁気記録媒体を作
成した例である。
【0216】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにエチルエーテル((CH3 CH22
O)を使用するものとした。なお、このようにして得ら
れた磁性粉末の飽和磁化の値は、本例においては測定し
ていない。
【0217】次に、14−ヒドロキシミリスチン酸の
0.4mol/lエタノール溶液とヘプタデカフルオロ
ノナデカン酸の0.6mol/lエタノール溶液の混合
液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時
間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中で
乾燥した。次いで、この磁性粉末を用いて比較例1に示
した組成で同様に磁性塗料を調製し、比較例1と同様に
磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0218】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0219】表2の結果に示されるように、本実施例2
1の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例1に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、磁性粉末表面に2回に分けて
吸着した有機化合物及び表面処理剤として使用される有
機化合物が、優れた経時安定性を与えることも示され
た。さらに、耐久性も良好であり、これは硬化剤として
添加したポリイソシアネートが塗布後、時間の経過とと
もに結合剤分子中の水酸基や14−ヒドロキシミリスチ
ン酸中の水酸基と相互に架橋したためと考えられる。
【0220】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに14−ヒドロキシミリスチン酸で表面処理
を施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すとと
もに、12−ヒドロキシミリスチン酸の優れた表面処理
性を示すものである。
【0221】実施例22 上記実施例20は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに14−ヒドロキシミリスチン酸とヘプタデカフルオ
ロノナデカン酸の混合物によって、表面処理を行った磁
性粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製
した例であるが、本実施例22は、予め磁性粉末に対す
る表面処理剤による表面処理を行うことなく、表面部分
に酸化鉄層の存在しない還元状態から有機化合物を被着
させることによって表面処理が施された磁性粉末を用い
て磁性塗料を調製する際に14−ヒドロキシミリスチン
酸とヘプタデカフルオロノナデカン酸の混合物とを磁性
塗料中に添加して磁性粉末の表面処理を行って磁性粉末
とするとともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0222】まず、実施例11と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにテトラヒドロフラン(C48 O)を使
用するものとした。なお、このようにして得られた磁性
粉末の飽和磁化の値は、本例においては測定していな
い。
【0223】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例22では上述のように磁性粉末の投入
と同時に14−ヒドロキシミリスチン酸6重量部とヘプ
タデカフルオロノナデカン酸8重量部を添加した。これ
によって、磁性塗料混練時に14−ヒドロキシミリスチ
ン酸とヘプタデカフルオロノナデカン酸とが磁性粉末の
表面に吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。次い
で、比較例1と同様にして磁気記録媒体として磁気テー
プを製造した。
【0224】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例11と同様にし
て測定した。結果は表2に併せて示す。
【0225】表2の結果に示されるように、本実施例2
2の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0226】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された14−ヒドロキシミ
リスチン酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示す
ものである。
【0227】以上の実験例2の結果から、本発明の磁性
粉末及び磁気記録媒体のうち、少なくともω−ヒドロキ
シカルボン酸若しくはその溶液により表面処理している
磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒体においては、実
験例1でも述べたように、磁性層中の磁性粉末の分散性
が良好であること、耐久性が良好であることが確認され
た。
【0228】また、本実験例2においては、磁性粉末を
還元状態の磁性粉末に対して有機防錆剤等の有機化合物
を予め被着させたものとしているが、このようにすれ
ば、磁性粉末の高い磁化が確保され、経時安定性がさら
に良好となることが確認された。
【0229】すなわち、上述のような本発明の磁気記録
媒体は高密度記録化に十分対応可能である。
【0230】〈実験例3〉本実験例においては、表面処
理剤として使用される有機化合物として少なくともω位
に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸を用い、少なくと
もω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸若しくはそ
の溶液により表面処理した本発明の磁性粉末を使用した
本発明の磁気記録媒体の場合の例について説明する。す
なわち、表面処理を施さない磁性粉末及びこれを使用し
た磁気記録媒体である比較例2と、本発明を適用し、少
なくともω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸若し
くはその溶液により表面処理した磁性粉末及びこれを使
用した磁気記録媒体である実施例23〜36を製造し、
これらの磁気特性と表面光沢性及び耐久性を調査するこ
ととした。各磁性粉末及び磁気記録媒体の製造過程と実
験結果を併せて以下に示す。
【0231】比較例2 本比較例は、市販の磁気記録媒体用針状金属鉄磁性粉末
(比表面積53.9m2 /g,保磁力Hc=126.5
kA/m,飽和磁化σs=120Am2 /kg,平均長
軸長0.3μm,針状比8〜10)を用いて磁気記録媒
体を作製した例である。
【0232】すなわち、以下の組成の磁性塗料を調製
し、これを30μmポリエステルベースフィルム上に塗
布し、5000ガウスの配向磁場で配向させた後、60
℃,5分の条件で乾燥させ、さらに加速電圧150ke
Vの電子線を照射して磁気記録媒体として磁気テープを
作製した。
【0233】 磁気記録媒体用針状金属鉄磁性粉末 100 重量部 アクリル二重結合を導入した電子線硬化性塩化ビニル酢酸ビニル共重合体 10 重量部 アクリル二重結合を導入した電子線硬化性ポリウレタン樹脂 10 重量部 カーボン 3 重量部 酸化アルミニウム 2 重量部 ポリイソシアネート 5 重量部 メチルエチルケトン 100 重量部 トルエン 100 重量部 シクロヘキサノン 50 重量部 このようにして得られた磁気記録媒体の磁気特性と表面
光沢性及び耐久性を実験例1で述べた方法により測定し
た。なお、表面光沢性と耐久性の測定値については、本
比較例2の測定値を100%として正規化した。以上の
測定値を表3に示す。なお、後述の実施例23〜36の
結果も併せて表3に示すこととする。ただし、実施例3
5,36においては、実験例1で使用した比較例1の測
定値を100%として正規化した値を示す。
【0234】
【表3】
【0235】実施例23 本実施例23は、比較例2で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、CH2
CH(CH28 COOHの構造を有するウンデシレン
酸を用いて表面処理を行った磁性粉末及びこれを用いた
磁気記録媒体を作成した例である。
【0236】まず、ウンデシレン酸の0.5mol/l
エタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振
動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離
して大気中で乾燥した。次いで、この磁性粉末を用いて
比較例2に示した組成で同様に磁性塗料を調製し、比較
例2と同様にして磁気記録媒体として磁気テープを製造
した。
【0237】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0238】表3の結果に示されるように、本実施例2
3の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合やウンデシレン酸中の不飽和結合が相互に架
橋したためと考えられる。
【0239】このことは、ウンデシレン酸で表面処理を
施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すととも
に、ウンデシレン酸の優れた表面処理性を示すものであ
る。
【0240】実施例24 上記実施例23は予めウンデシレン酸で表面処理を行っ
た磁性粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を
作製した例であるが、本実施例24は、磁性粉末に対す
る表面処理を行うことなく、比較例2で用いた未処理磁
性粉末とウンデシレン酸とを直接磁性塗料中に添加して
磁性粉末の表面処理を行って磁性粉末とするとともに、
磁気記録媒体を作製した例である。
【0241】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例24では上述のように、ウンデシレン酸
14重量部を磁性粉末の投入と同時に添加した。これに
よって、磁性塗料混練時にウンデシレン酸が磁性粉末の
表面に吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。次い
で、比較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気テー
プを製造した。
【0242】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0243】表3の結果に示されるように、本実施例2
4の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0244】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
たウンデシレン酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性
を示すものである。
【0245】実施例25 本実施例25は、比較例2で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、CH2
CH(CH28 COOHの構造を有するウンデシレン
酸とCH3 (CH28 COOHの構造を有するカプリ
ン酸との混合物を用いて表面処理を行った磁性粉末とこ
れを用いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0246】まず、ウンデシレン酸の0.4mol/l
エタノール溶液とカプリン酸の0.6mol/lエタノ
ール溶液との混合液に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、
振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分
離して大気中で乾燥した。次いで、この磁性粉末を用い
て比較例2に示した組成で同様に磁性塗料を調製し、比
較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気テープを製
造した。
【0247】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0248】表3の結果に示されるように、本実施例2
5の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合やウンデシレン酸中の不飽和結合が相互に架
橋したためと考えられる。
【0249】このことは、ウンデシレン酸を含む混合物
で表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有用性
を示すとともに、該混合物の優れた表面処理性を示すも
のである。
【0250】実施例26 上記実施例25は予めウンデシレン酸とカプリン酸との
混合物で表面処理を行った磁性粉末を用いて磁性塗料を
調製し、磁気記録媒体を作製した例であるが、本実施例
26は、磁性粉末に対する表面処理を行うことなく、比
較例2で用いた未処理磁性粉末とウンデシレン酸およ
び、カプリン酸とを直接磁性塗料中に添加して磁性粉末
に表面処理を行って磁性粉末とするとともに磁気記録媒
体を作製した例である。
【0251】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例26では上述のように、ウンデシレン酸
6重量部とカプリン酸8重量部とを磁性粉末の投入と同
時に添加した。これによって、磁性塗料混練時にウンデ
シレン酸とカプリン酸とが磁性粉末の表面に吸着して、
磁性粉末の表面処理がなされる。次いで、比較例2と同
様にして磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0252】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0253】表3の結果に示されるように、本実施例2
6の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0254】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
たウンデシレン酸を含む混合物の磁性粉末に対する優れ
た表面処理性を示すものである。
【0255】実施例27 本実施例27は、比較例2で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、CH2
CH(CH214COOHの構造を有する16−ヘプタ
デセン酸とC127 NO3 の構造を有する4−アミノ−
無水ナフタル酸を用いて順次、表面処理を行った磁性粉
末及びこれを用いた磁気録媒体を作成した例である。
【0256】まず、16−ヘプタデセン酸の0.2mo
l/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬
し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾
過、分離して大気中で乾燥した。さらに、4−アミノ−
無水ナフタル酸の0.3mol/lエタノール溶液中に
所定量の磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した
後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。
次いで、この磁性粉末を用いて比較例2に示した組成で
同様に磁性塗料を調製し、比較例2と同様にして磁気記
録媒体として磁気テープを製造した。
【0257】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0258】表3の結果に示されるように、本実施例2
7の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合や16−ヘプタデセン酸中の不飽和結合が相
互に架橋したためと考えられる。
【0259】このことは、16−ヘプタデセン酸を含む
多段階表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有
用性を示すとともに、該多段階表面処理の優れた表面処
理性を示すものである。
【0260】実施例28 上記実施例27は予め16−ヘプタデセン酸と4−アミ
ノ−無水ナフタル酸とによって順次、表面処理を行った
磁性粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作
製した例であるが、本実施例28は、予め磁性粉末に対
する表面処理を行うことなく、比較例2で用いた未処理
磁性粉末を用いて磁性塗料を調製する際に16−ヘプタ
デセン酸および、4−アミノ−無水ナフタル酸とを順
次、磁性塗料中に添加して磁性粉末の表面処理を行って
磁性粉末とするとともに磁気記録媒体を作製した例であ
る。
【0261】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例28では上述のように磁性粉末の投入と
同時に16−ヘプタデセン酸6重量部を添加し、さら
に、全混練時間の半分が経過した時点で4−アミノ−無
水ナフタル酸8重量部を追加添加した。これによって、
磁性塗料混練時に16−ヘプタデセン酸と4−アミノ−
無水ナフタル酸とが磁性粉末の表面に順次、吸着して、
磁性粉末の表面処理がなされる。次いで、比較例2と同
様にして磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0262】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0263】表3の結果に示されるように、本実施例2
8の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0264】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た16−ヘプタデセン酸を含む多段階表面処理の磁性粉
末に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0265】実施例29 本実施例29は、比較例2で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、C64
(COOH)2 の構造を有するフタル酸とCH2 =CH
(CH214COOHの構造を有する16−ヘプタデセ
ン酸とを用いて順次、表面処理を行った磁性粉末及びこ
れを用いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0266】まず、フタル酸の0.3mol/lエタノ
ール溶液中に所定量の磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3
時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中
で乾燥した。さらに、16−ヘプタデセン酸の0.2m
ol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸
漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾
過、分離して大気中で乾燥した。次いで、この磁性粉末
を用いて比較例2に示した組成で同様に磁性塗料を調製
し、比較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気テー
プを製造した。
【0267】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0268】表3の結果に示されるように、本実施例2
9の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合や16−ヘプタデセン酸中の不飽和結合が相
互に架橋したためと考えられる。
【0269】このことは、16−ヘプタデセン酸を含む
多段階表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有
用性を示すとともに、該多段階表面処理の優れた表面処
理性を示すものである。
【0270】実施例30 上記実施例29は予めフタル酸と16−ヘプタデセン酸
とによって順次、表面処理を行った磁性粉末を用いて磁
性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例であるが、
本実施例30は、予め磁性粉末に対する表面処理を行う
ことなく、比較例2で用いた未処理磁性粉末を用いて磁
性塗料を調製する際にフタル酸および、16−ヘプタデ
セン酸とを順次、磁性塗料中に添加して磁性粉末を表面
処理して磁性粉末とするとともに磁気記録媒体を作製し
た例である。
【0271】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例30では上述のように磁性粉末の投入と
同時にフタル酸8重量部を添加し、さらに、全混練時間
の半分が経過した時点で16−ヘプタデセン酸6重量部
を追加添加した。これによって、磁性塗料混練時にフタ
ル酸と16−ヘプタデセン酸とが磁性粉末の表面に順
次、吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。次い
で、比較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気テー
プを製造した。
【0272】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0273】表3の結果に示されるように、本実施例3
0の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0274】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た16−ヘプタデセン酸を含む多段階表面処理の磁性粉
末に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0275】実施例31 本実施例31は、比較例2で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、C126
3 の構造を有する無水ナフタル酸とCH2 =CH(C
220COOHの構造を有する22−トリコセン酸と
を用いて順次、表面処理を行った磁性粉末及びこれを用
いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0276】まず、無水ナフタル酸の0.3mol/l
エタノール溶液中に所定量の磁性粉末を浸漬し、振動ミ
ルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して
大気中で乾燥した。さらに、22−トリコセン酸の0.
2mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末
を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみ
を濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、この磁性
粉末を用いて比較例2に示した組成で同様に磁性塗料を
調製し、比較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気
テープを製造した。
【0277】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0278】表3の結果に示されるように、本実施例3
1の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合や22−トリコセン酸中の不飽和結合が相互
に架橋したためと考えられる。
【0279】このことは、22−トリコセン酸を含む多
段階表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有用
性を示すとともに、該多段階表面処理の優れた表面処理
性を示すものである。
【0280】実施例32 上記実施例31は予め無水ナフタル酸と22−トリコセ
ン酸とによって順次、表面処理を行った磁性粉末を用い
て磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例である
が、本実施例32は、予め磁性粉末に対する表面処理を
行うことなく、比較例2で用いた未処理磁性粉末を用い
て磁性塗料を調製する際に無水ナフタル酸および、22
−トリコセン酸とを順次、磁性塗料中に添加して磁性粉
末の表面処理を行って磁性粉末とするとともに磁気記録
媒体を作製した例である。
【0281】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例32では上述のように磁性粉末の投入と
同時に無水ナフタル酸8重量部を添加し、さらに、全混
練時間の半分が経過した時点で22−トリコセン酸6重
量部を追加添加した。これによって、磁性塗料混練時に
無水ナフタル酸と22−トリコセン酸とが磁性粉末の表
面に順次、吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。
次いで、比較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気
テープを製造した。
【0282】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。
【0283】表3の結果に示されるように、本実施例3
2の磁気録媒体においても、高い分散性と高い耐久性が
確保されることが確認された。
【0284】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た22−トリコセン酸を含む多段階表面処理の磁性粉末
に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0285】実施例33 本実施例33は、比較例2で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、C126
3 の構造を有する無水ナフタル酸とC843 の構
造を有する無水フタル酸とCH2 =CH(CH28
OOHの構造を有するウンデシレン酸とによって順次、
表面処理を行った磁性粉末及びこれを使用した磁気記録
媒体を作成した例である。
【0286】まず、無水ナフタル酸の0.3mol/l
エタノール溶液中に所定量の磁性粉末を浸漬し、振動ミ
ルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して
大気中で乾燥した。次いで、無水フタル酸の0.2mo
l/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬
し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾
過、分離して大気中で乾燥した。さらに、ウンデシレン
酸の0.2mol/lエタノール溶液中に所定量の上記
磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性
粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、
この磁性粉末を用いて比較例2に示した組成で同様に磁
性塗料を調製し、比較例2と同様にして磁気記録媒体と
して磁気テープを製造した。
【0287】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。なお、
本実施例33においては、磁性粉末の飽和磁化も測定
し、経時劣化も実験例2で述べた方法で測定した。結果
は表3に併せて示す。
【0288】表3の結果に示されるように、本実施例3
3の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、磁性粉末表面に吸着した表面
処理剤が、優れた経時安定性を与えることも示された。
さらに、耐久性も良好であり、これは硬化のために照射
した電子線によって、結合剤分子中の不飽和結合やウン
デシレン酸中の不飽和結合が相互に架橋したためと考え
られる。
【0289】このことは、ウンデシレン酸を含む多段階
表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を
示すとともに、該多段階表面処理の優れた表面処理性を
示すものである。
【0290】実施例34 上記実施例33は予め無水ナフタル酸と無水フタル酸と
ウンデシレン酸とによって順次、表面処理を行った磁性
粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製し
た例であるが、本実施例34は、予め磁性粉末に対する
表面処理を行うことなく、比較例2で用いた未処理磁性
粉末を用いて磁性塗料を調製する際に無水ナフタル酸、
無水フタル酸および、ウンデシレン酸とを順次、磁性塗
料中に添加して磁性粉末を表面処理して磁性粉末とする
とともに、磁気記録媒体を作製した例である。
【0291】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例34では上述のように磁性粉末の投入と
同時に無水ナフタル酸8重量部を添加し、次いで、全混
練時間の3分の1が経過した時点で無水フタル酸5重量
部を追加添加し、さらに、全混練時間の3分の2が経過
した時点でウンデシレン酸6重量部を追加添加した。こ
れによって、磁性塗料混練時に無水ナフタル酸と無水フ
タル酸とウンデシレン酸とが磁性粉末の表面に順次、吸
着して、磁性粉末の表面処理が順次なされる。次いで、
比較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気テープを
製造した。
【0292】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。なお、
本実施例34においては、磁性粉末の飽和磁化も測定
し、経時劣化も実験例2で述べた方法で測定した。結果
は表3に併せて示す。
【0293】表3の結果に示されるように、本実施例3
4の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0294】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
たウンデシレン酸を含む多段階表面処理の磁性粉末に対
する優れた表面処理性を示すものである。
【0295】実施例35 本実施例35は、比較例2で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、CH2
CH(CH220COOHの構造を有する22−トリコ
セン酸とCF3 (CF25 (CH216COOHの構
造を有するトリデカフルオロトリコサン酸との混合物を
用いて表面処理を行った磁性粉末とこれを用いた磁気記
録媒体を作成した例である。
【0296】まず、22−トリコセン酸の0.4mol
/lエタノール溶液とトリデカフルオロトリコサン酸の
0.6mol/lエタノール溶液との混合液に所定量の
上記磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に
磁性粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次い
で、この磁性粉末を用いて比較例2に示した組成で同様
に磁性塗料を調製し、比較例2と同様にして磁気記録媒
体として磁気テープを製造した。
【0297】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。ただし、ここでは表面光沢性と耐久
性を実験例1で示した比較例1を100%として正規化
した値を示すものとする。
【0298】表3の結果に示されるように、本実施例3
5の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合や22−トリコセン酸中の不飽和結合が相互
に架橋したためと考えられる。
【0299】このことは、22−トリコセン酸を含む混
合物で表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有
用性を示すとともに、該混合物の優れた表面処理性を示
すものである。
【0300】実施例36 上記実施例35は予め22−トリコセン酸とトリデカフ
ルオロトリコサン酸との混合物で表面処理を行った磁性
粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製し
た例であるが、本実施例36は、磁性粉末に対する表面
処理を行うことなく、比較例2で用いた未処理磁性粉末
と22−トリコセン酸および、トリデカフルオロトリコ
サン酸とを直接磁性塗料中に添加して磁性粉末に表面処
理を行って磁性粉末とするとともに磁気記録媒体を作製
した例である。
【0301】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例36では上述のように、22−トリコセ
ン酸6重量部とトリデカフルオロトリコサン酸8重量部
とを磁性粉末の投入と同時に添加した。これによって、
磁性塗料混練時に22−トリコセン酸とトリデカフルオ
ロトリコサン酸とが磁性粉末の表面に吸着して、磁性粉
末の表面処理がなされる。次いで、比較例2と同様にし
て磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0302】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性を比較例2と同様に測定した。結果は
表3に併せて示す。ただし、ここでは表面光沢性と耐久
性を実験例1で示した比較例1を100%として正規化
した値を示すものとする。
【0303】表3の結果に示されるように、本実施例3
6の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0304】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た22−トリコセン酸を含む混合物の磁性粉末に対する
優れた表面処理性を示すものである。
【0305】以上の実験例3の結果から、本発明の磁性
粉末及び磁気記録媒体のうち、ω位に不飽和結合を有す
る直鎖カルボン酸若しくはその溶液により表面処理して
いる磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒体において
は、磁性層を形成する磁性塗料中においてω位に不飽和
結合を有する直鎖カルボン酸中のアルキル鎖と結合剤や
有機溶媒との親和性によって磁性粉末が結合剤に対して
高い分散性を得、磁性層中の磁性粉末の分散性が良好と
なることが確認された。
【0306】さらに、この本発明の磁気記録媒体におい
て、磁性層中の結合剤を不飽和結合を有するものとすれ
ば、磁性粉末に吸着したω位に不飽和結合を有する直鎖
カルボン酸中の不飽和結合と結合剤中の不飽和結合とが
架橋され、優れた耐久性が得られることも確認された。
【0307】すなわち、上述のような本発明の磁気録媒
体は高密度記録化に十分対応可能である。
【0308】〈実験例4〉本実験例においては、表面処
理剤として使用される有機化合物として少なくともω位
に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸を用い、還元状態
の磁性粉末に対して有機化合物を予め被着させた磁性粉
末に対し、少なくともω位に不飽和結合を有する直鎖カ
ルボン酸若しくはその溶液により表面処理した本発明の
磁性粉末を使用した本発明の磁気記録媒体の場合の例に
ついて説明する。すなわち、前述の実験例3で使用した
表面処理を施さない磁性粉末及びこれを使用した磁気記
録媒体である比較例2と、本発明を適用し、還元状態の
磁性粉末に対して有機化合物を予め被着させた磁性粉末
に少なくともω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸
若しくはその溶液により表面処理した磁性粉末及びこれ
を使用した磁気記録媒体である実施例37〜44を製造
し、これらの磁気特性と表面光沢性及び耐久性、経時安
定性を調査することとした。各磁性粉末及び磁気記録媒
体の製造過程と実験結果を併せて以下に示す。
【0309】なお、上記磁気特性と表面光沢性、耐久
性、経時安定性は実験例1及び2で述べた方法により測
定を行うものとし、表面光沢性及び耐久性は比較例1の
結果を100%として正規化するものとする。表4に比
較例2の各特性の測定値を示す。なお、後述の実施例3
7〜44の各特性の測定値も表4に併せて示す。
【0310】
【表4】
【0311】実施例37 本実施例37は、表面部分に酸化鉄層の存在しない状
態、すなわち還元状態から有機化合物を被着させること
によって表面処理が施された磁性粉末に対して、さらに
表面処理剤として使用される有機化合物としてCH2
CH(CH28COOHの構造を有するウンデシレン
酸を用いて表面処理を行った磁性粉末及びこれを用いた
磁気記録媒体を作成した例である。
【0312】まず、比較例2に示した磁性粉末の原料ゲ
ーサイトα−FeOOHを反応容器内に緩やかに充填
し、大気フローの状態で400℃で3時間加熱、脱水処
理を行った後、水素フローに切り替えてそのまま400
℃で3時間水素還元処理を行った。その後、水素フロー
の状態のまま室温近くまで放置冷却し、ついで還元磁性
粉末が大気に触れない状態で水素フローを停止し、引き
続いて有機化合物としてメチルエチルケトン(CH3
OCH2 CH3 )を反応容器内に注入した。以上の操作
によって得られた試料を反応容器から取り出し、大気中
で余分な有機化合物を乾燥して磁性粉末を得た。なお、
この磁性粉末の飽和磁化を表4中に示す。
【0313】次に、ウンデシレン酸の0.5mol/l
エタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振
動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離
して大気中で乾燥した。次いで、この磁性粉末を用いて
比較例2に示した組成で同様に磁性塗料を調製し、比較
例2と同様に磁気記録媒体として磁気テープを製造し
た。
【0314】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実験例1及び実験例
2と同様にして測定した。結果を表4に併せて示す。
【0315】表4の結果に示されるように、本実施例3
7の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例37の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例2に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、磁性粉末表面
に2回に分けて吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合やウンデシレン酸中の不飽和結合が相互に架
橋したためと考えられる。
【0316】このことは、表面部分に酸化鉄層の存在し
ない還元状態から有機化合物を被着させることによって
表面処理が施された磁性粉末に対して、さらにウンデシ
レン酸で表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての
有用性を示すとともに、ウンデシレン酸の優れた表面処
理性を示すものである。
【0317】実施例38 上記実施例37は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らにウンデシレン酸を用いて表面処理を行った磁性粉末
を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例
であるが、本実施例38は、予めウンデシレン酸による
表面処理を行うことなく、表面部分に酸化鉄層の存在し
ない還元状態から有機化合物を被着させることによって
表面処理が施された磁性粉末とウンデシレン酸とを直接
磁性塗料中に添加して磁性粉末の表面処理を行って磁性
粉末とするとともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0318】まず、実施例37と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにアセトン(CH3 COCH3 )を使用す
るものとした。なお、このようにして得られた磁性粉末
の飽和磁化の値を表4中に示す。
【0319】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調整した。
ただし、本実施例38では上述のように、ウンデシレン
酸14重量部を磁性粉末の投入と同時に添加した。これ
によって、磁性塗料混練時にウンデシレン酸が磁性粉末
の表面に吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。次
いで、比較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気テ
ープを製造した。
【0320】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例37と同様にし
て測定した。結果は表4に併せて示す。
【0321】表4の結果に示されるように、本実施例3
8の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0322】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入されたウンデシレン酸の磁
性粉末に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0323】実施例39 本実施例39は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてCH2=CH(CH214
OOHの構造を有する16−ヘプタデセン酸とCH
3(CH212COOHの構造を有するミリスチン酸との
混合物を用いて表面処理を行った磁性粉末及びこれを用
いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0324】まず、実施例37と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにエチルエーテル((CH3 CH22
O)を使用するものとした。なお、このようにして得ら
れた磁性粉末の飽和磁化の値を表4中に示す。
【0325】次に、16−ヘプタデセン酸の0.4mo
l/lエタノール溶液とミリスチン酸の0.6mol/
lエタノール溶液との混合液に所定量の上記磁性粉末を
浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを
濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、この磁性粉
末を用いて比較例2に示した組成で同様に磁性塗料を調
製し、比較例2と同様に磁気記録媒体として磁気テープ
を製造した。
【0326】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例37と同様にし
て測定した。結果は表4に併せて示す。
【0327】表4の結果に示されるように、本実施例3
9の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例39の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例2に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、2回に分けて
磁性粉末表面に吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合や16−ヘプタデセン酸中の不飽和結合が相
互に架橋したためと考えられる。
【0328】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに16−ヘプタデセン酸で表面処理を施した
磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すとともに、1
6−ヘプタデセン酸の優れた表面処理性を示すものであ
る。
【0329】実施例40 上記実施例39は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに16−ヘプタデセン酸とミリスチン酸との混合物を
用いて表面処理を行った磁性粉末を用いて磁性塗料を調
製し、磁気記録媒体を作製した例であるが、本実施例4
0は、予め16−ヘプタデセン酸とミリスチン酸との混
合物による表面処理を行うことなく、表面部分に酸化鉄
層の存在しない還元状態から有機化合物を被着させるこ
とによって表面処理が施された磁性粉末と16−ヘプタ
デセン酸とミリスチン酸とを直接磁性塗料中に添加して
磁性粉末に表面処理を行って磁性粉末とするとともに磁
気記録媒体を作製した例である。
【0330】まず、実施例37と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにテトラヒドロフラン(C48 O)を使
用するものとした。なお、このようにして得られた磁性
粉末の飽和磁化の値を表4中に示す。
【0331】次に上記のようにして得られた磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例40では上述のように、16−ヘプタデ
セン酸6重量部とミリスチン酸8重量部とを磁性粉末の
投入と同時に添加した。これによって、磁性塗料混練時
に16−ヘプタデセン酸とミリスチン酸とが磁性粉末の
表面に吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。次い
で、比較例2と同様にして磁気記録媒体として磁気テー
プを製造した。
【0332】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例37と同様にし
て測定した。結果は表4に併せて示す。
【0333】表4の結果に示されるように、本実施例4
0の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0334】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された16−ヘプタデセン
酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すものであ
る。
【0335】実施例41 本実施例41は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物として、C106 (COOH)2
の構造を有する2,3−ナフタレンジカルボン酸とCH
2 =CH(CH220COOHの構造を有する22−ト
リコセン酸とによって順次、表面処理を行った磁性粉末
及びこれを用いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0336】まず、実施例37と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、還元磁性
粉末の冷却を0℃近傍まで行うものとし、有機化合物と
してメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH3 )の
代わりにアセトアルデヒド(CH3 CHO)を使用する
ものとした。なお、このようにして得られた磁性粉末の
飽和磁化の値を表4中に示す。
【0337】次に、2,3−ナフタレンジカルボン酸の
0.3mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性
粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末
のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。さらに、22
−トリコセン酸の0.2mol/lエタノール溶液中に
所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪
した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥し
た。
【0338】次いで、この磁性粉末を用いて比較例2に
示した組成で同様に磁性塗料を調製し、比較例2と同様
に磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0339】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例37と同様にし
て測定した。結果は表4に併せて示す。
【0340】表4の結果に示されるように、本実施例4
1の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例41の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例2に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、3回に分けて
磁性粉末表面に吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合や22−トリコセン酸中の不飽和結合が相互
に架橋したためと考えられる。
【0341】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに22−トリコセン酸で表面処理を施した磁
性粉末の磁性材料としての有用性を示すとともに、22
−トリコセン酸の優れた表面処理性を示すものである。
【0342】実施例42 上記実施例41は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに2,3−ナフタレンジカルボン酸と22−トリコセ
ン酸とによって順次、表面処理を行った磁性粉末を用い
て磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例である
が、本実施例42は、予め磁性粉末に対する表面処理剤
による表面処理を行うことなく、表面部分に酸化鉄層の
存在しない還元状態から有機化合物を被着させることに
よって表面処理が施された磁性粉末を用いて磁性塗料を
調製する際に2,3−ナフタレンジカルボン酸および、
22−トリコセン酸とを順次、磁性塗料中に添加して磁
性粉末の表面処理を行って磁性粉末とするとともに磁気
記録媒体を作製した例である。
【0343】まず、実施例37と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにベンズアルデヒド(C65 CHO)を
使用するものとした。なお、このようにして得られた磁
性粉末の飽和磁化の値を表4中に示す。
【0344】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例42では上述のように磁性粉末の投入
と同時に2,3−ナフタレンジカルボン酸8重量部を添
加し、さらに、全混練時間の半分が経過した時点で22
−トリコセン酸6重量部を追加添加した。これによっ
て、磁性塗料混練時に2,3−ナフタレンジカルボン酸
と22−トリコセン酸とが磁性粉末の表面に順次、吸着
して、磁性粉末の表面処理がなされる。次いで、比較例
2と同様にして磁気記録媒体として磁気テープを製造し
た。
【0345】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例37と同様にし
て測定した。結果は表4に併せて示す。
【0346】表4の結果に示されるように、本実施例4
2の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0347】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された22−トリコセン酸
の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すものであ
る。
【0348】実施例43 本実施例43は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてCH2 =CH(CH220
COOHの構造を有する22−トリコセン酸とCH3
(CH212COOHの構造を有するミリスチン酸とを
用いて順次、表面処理を行った例である。
【0349】まず、実施例37と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりにテトラヒドロフラン(C48 O)を使
用するものとした。なお、このようにして得られた磁性
粉末の飽和磁化の値を表4中に示す。
【0350】次に、22−トリコセン酸の0.2mol
/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬
し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾
過、分離して大気中で乾燥した。さらに、ミリスチン酸
の0.3mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁
性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉
末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、こ
の磁性粉末を用いて比較例2に示した組成で同様に磁性
塗料を調製し、比較例2と同様に磁気記録媒体として磁
気テープを製造した。
【0351】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例37と同様にし
て測定した。結果は表4に併せて示す。
【0352】表4の結果に示されるように、本実施例4
3の磁性粉末は高い飽和磁化を有し、さらに、それを用
いた本実施例43の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残
留磁束密度、角形比を有し、比較例2に比べて高い分散
性が得られたことは明らかである。また、3回に分けて
磁性粉末表面に吸着した有機化合物及び表面処理剤とし
て使用される有機化合物が、優れた経時安定性を与える
ことも示された。さらに、耐久性も良好であり、これは
硬化のために照射した電子線によって、結合剤分子中の
不飽和結合や22−トリコセン酸中の不飽和結合が相互
に架橋したためと考えられる。
【0353】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに22−トリコセン酸で表面処理を施した磁
性粉末の磁性材料としての有用性を示すとともに、22
−トリコセン酸の優れた表面処理性を示すものである。
【0354】実施例44 上記実施例43は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに22−トリコセン酸とミリスチン酸とによって順
次、表面処理を行った磁性粉末を用いて磁性塗料を調製
し、磁気記録媒体を作製した例であるが、本実施例44
は、予め磁性粉末に対する表面処理剤による表面処理を
行うことなく、表面部分に酸化鉄層の存在しない状態か
ら有機化合物を被着させることによって表面処理が施さ
れた磁性粉末を用いて磁性塗料を調製する際に22−ト
リコセン酸および、ミリスチン酸とを順次、磁性塗料中
に添加して磁性粉末の表面処理を行って磁性粉末とする
とともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0355】まず、実施例37と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてメチルエチルケトン(CH3 COCH2 CH
3 )の代わりに1,4−ジオキサン(C482 )を
使用するものとした。なお、このようにして得られた磁
性粉末の飽和磁化の値を表4中に示す。
【0356】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例44では上述のように磁性粉末の投入
と同時に22−トリコセン酸6重量部を添加し、さら
に、全混練時間の半分が経過した時点でミリスチン酸8
重量部を追加添加した。これによって、磁性塗料混練時
に22−トリコセン酸とミリスチン酸とが磁性粉末の表
面に順次、吸着して、磁性粉末の表面処理がなされる。
次いで、比較例2と同様にして磁気テープを製造した。
【0357】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例37と同様にし
て測定した。結果は表4に併せて示す。
【0358】表4の結果に示されるように、本実施例4
4の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0359】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された22−トリコセン酸
の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すものであ
る。
【0360】以上の実験例4の結果から、本発明の磁性
粉末及び磁気記録媒体のうち、少なくともω位に不飽和
結合を有する直鎖カルボン酸若しくはその溶液により表
面処理している磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒体
においては、実験例3で述べたように、磁性層中の磁性
粉末の分散性が良好であること、耐久性が良好であるこ
とが確認された。
【0361】また、本実験例4においては、磁性粉末を
還元状態の磁性粉末に対して有機防錆剤等の有機化合物
を予め被着させたものとしているが、このようにすれ
ば、磁性粉末の高い磁化が確保され、経時安定性がさら
に良好となることが確認された。
【0362】すなわち、上述のような本発明の磁気記録
媒体は高密度記録化に十分対応可能である。
【0363】〈実験例5〉本実験例においては、表面処
理剤として使用される有機化合物として、これまで示し
た種類以外の種類の有機化合物を用い、少なくともこの
有機化合物若しくはその溶液により表面処理した本発明
の磁性粉末を使用した本発明の磁気記録媒体の場合の例
について説明する。すなわち、前述の実験例1及び実験
例2で使用した表面処理を施さない磁性粉末及びこれを
使用した磁気記録媒体である比較例1及び2と、本発明
を適用した磁性粉末及びこれを使用した磁気記録媒体で
ある実施例45〜56を製造し、これらの磁気特性と表
面光沢性及び耐久性、経時安定性を調査することとし
た。各磁性粉末及び磁気記録媒体の製造過程と実験結果
を併せて以下に示す。
【0364】実施例45 本実施例45は、比較例1で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、HOCO
CH2 C(OH)(COOH)CH2 COOHの構造を
有するクエン酸とC125 BrO3 の構造を有する4−
ブロモ−1,8−無水ナフタル酸との混合物を用いて表
面処理を行った磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒体
を作成した例である。
【0365】まず、クエン酸の0.4mol/lエタノ
ール溶液と4−ブロモ−1,8−無水ナフタル酸の0.
6mol/lエタノール溶液との混合液に所定量の上記
磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性
粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、
この磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁
性塗料を調製し、比較例1と同様にして磁気記録媒体と
して磁気テープを製造した。
【0366】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実験例1及び実験例
2と同様にして測定した。結果を表5に併せて示す。な
お、比較例1及び比較例2の結果も示すものとし、表面
光沢性及び耐久性は比較例1の結果を100%として正
規化した値を示す。
【0367】
【表5】
【0368】表5の結果に示されるように、本実施例4
5の磁気記録媒体は高い残留磁束密度、角形比を有し、
比較例1に比べて高い分散性が得られたことは明らかで
ある。また、耐久性も良好であり、これは硬化剤として
添加したポリイソシアネートが塗布後、時間の経過とと
もに結合剤分子中の水酸基やクエン酸中の水酸基と相互
に架橋したためと考えられる。
【0369】このことは、クエン酸を含む混合物で表面
処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を示す
とともに、該混合物の優れた表面処理性を示すものであ
る。
【0370】実施例46 上記実施例45は予めクエン酸と4−ブロモ−1,8−
無水ナフタル酸との混合物で表面処理を行った磁性粉末
を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例
であるが、本実施例46は、磁性粉末に対する表面処理
を行うことなく、比較例1で用いた未処理磁性粉末とク
エン酸及び、4−ブロモ−1,8−無水ナフタル酸とを
直接磁性塗料中に添加して磁性粉末に表面処理を行って
磁性粉末とするとともに磁気記録媒体を作製した例であ
る。
【0371】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例46では上述のように、クエン酸6重量
部と4−ブロモ−1,8−無水ナフタル酸8重量部とを
磁性粉末の投入と同時に添加した。これによって、磁性
塗料混練時にクエン酸と4−ブロモ−1,8−無水ナフ
タル酸とが磁性粉末の表面に吸着して、磁性粉末の表面
処理がなされる。次いで、比較例1と同様にして磁気記
録媒体として磁気テープを製造した。
【0372】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実施例45と同様に
して測定した。結果を表5に併せて示す。
【0373】表5の結果に示されるように、本実施例4
6の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0374】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
たクエン酸を含む混合物の磁性粉末に対する優れた表面
処理性を示すものである。
【0375】実施例47 本実施例47は、比較例1で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、C63
(OH)3 の構造を有する1,2,4−トリヒドロキシ
ベンゼンとCH3 (CH25 OHの構造を有する1−
ヘキサノールとを用いて順次、表面処理を行った磁性粉
末及びこれを用いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0376】まず、1,2,4−トリヒドロキシベンゼ
ンの0.3mol/lエタノール溶液中に所定量の上記
磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性
粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。続いて、
1−ヘキサノールの0.2mol/lエタノール溶液中
に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振
盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥
した。次いで、この磁性粉末を用いて比較例1に示した
組成で同様に磁性塗料を調製し、比較例1と同様にして
磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0377】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実施例45と同様に
して測定した。結果を表5に併せて示す。
【0378】表5の結果に示されるように、本実施例4
7の磁気記録媒体は高い残留磁束密度、角形比を有し、
比較例1に比べて高い分散性が得られたことは明らかで
ある。また、耐久性も良好であり、これは硬化剤として
添加したポリイソシアネートが塗布後、時間の経過とと
もに結合剤分子中の水酸基や1−ヘキサノール中の水酸
基と相互に架橋したためと考えられる。
【0379】このことは、1−ヘキサノールを含む多段
階表面処理を施した磁性粉末の磁性材料としての有用性
を示すとともに、該多段階表面処理の優れた表面処理性
を示すものである。
【0380】実施例48 上記実施例47は予め1,2,4−トリヒドロキシベン
ゼンと1−ヘキサノールとによって順次、表面処理を行
った磁性粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体
を作製した例であるが、本実施例48は、予め磁性粉末
に対する表面処理を行うことなく、比較例1で用いた未
処理磁性粉末を用いて磁性塗料を調製する際に1,2,
4−トリヒドロキシベンゼン及び、1−ヘキサノールと
を順次、磁性塗料中に添加して磁性粉末に表面処理を行
って磁性粉末とするとともに磁気記録媒体を作製した例
である。
【0381】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例48では上述のように磁性粉末の投入と
同時に1,2,4−トリヒドロキシベンゼン8重量部を
添加し、さらに、全混練時間の半分が経過した時点で1
−ヘキサノール6重量部を追加添加した。これによっ
て、磁性塗料混練時に1,2,4−トリヒドロキシベン
ゼンと1−ヘキサノールとが磁性粉末の表面に順次、吸
着して、磁性粉末の表面処理がなされる。次いで、比較
例1と同様にして磁気記録媒体として磁気テープを製造
した。
【0382】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実施例45と同様に
して測定した。結果を表5に併せて示す。
【0383】表5の結果に示されるように、本実施例4
8の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0384】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た1−ヘキサノールを含む多段階表面処理の磁性粉末に
対する優れた表面処理性を示すものである。
【0385】実施例49 本実施例49は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてCH3 (CH28 COO
Hの構造を有するカプリン酸とHOC64 COOHの
構造を有する4−ヒドロキシ安息香酸を用いて順次、表
面処理を行った磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒体
を作成した例である。
【0386】まず、比較例1に示した磁性粉末の原料ゲ
ーサイトα−FeOOHを反応容器内に緩やかに充填
し、大気フローの状態で400℃で3時間加熱、脱水処
理を行った後、水素フローに切り替えてそのまま400
℃で3時間水素還元処理を行った。その後、水素フロー
の状態のまま室温近くまで放置冷却し、ついで還元磁性
粉末が大気に触れない状態で水素フローを停止し、引き
続いて有機化合物としてテトラヒドロフラン(C48
O)を反応容器内に注入した。以上の操作によって得ら
れた試料を反応容器から取り出し、大気中で余分な有機
化合物を乾燥して磁性粉末を得た。
【0387】次に、カプリン酸の0.3mol/lエタ
ノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミ
ルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して
大気中で乾燥した。さらに、4−ヒドロキシ安息香酸の
0.2mol/lエタノール溶液中に所定量の上記磁性
粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末
のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、この
磁性粉末を用いて比較例1に示した組成で同様に磁性塗
料を調製し、比較例1と同様に磁気記録媒体として磁気
テープを製造した。
【0388】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実施例45と同様に
して測定した。結果を表5に併せて示す。
【0389】表5の結果に示されるように、本実施例4
9の磁気記録媒体は高い残留磁束密度、角形比を有し、
比較例1に比べて高い分散性が得られたことは明らかで
ある。また、磁性粉末表面に3回に分けて吸着した有機
化合物及び表面処理剤として使用される有機化合物が、
優れた経時安定性を与えることも示された。さらに、耐
久性も良好であり、これは硬化剤として添加したポリイ
ソシアネートが塗布後、時間の経過とともに結合剤分子
中の水酸基や4−ヒドロキシ安息香酸中の水酸基と相互
に架橋したためと考えられる。
【0390】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに4−ヒドロキシ安息香酸で表面処理を施し
た磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すとともに、
4−ヒドロキシ安息香酸の優れた表面処理性を示すもの
である。
【0391】実施例50 上記実施例49は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らにカプリン酸と4−ヒドロキシ安息香酸とによって順
次、表面処理を行った磁性粉末を用いて磁性塗料を調製
し、磁気記録媒体を作製した例であるが、本実施例50
は、予め磁性粉末に対する表面処理剤による表面処理を
行うことなく、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元状
態から有機化合物を被着させることによって表面処理が
施された磁性粉末を用いて磁性塗料を調製する際にカプ
リン酸及び、4−ヒドロキシ安息香酸とを順次、磁性塗
料中に添加して磁性粉末に表面処理を行って磁性粉末と
するとともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0392】まず、実施49と同様にして磁性粉末の有
機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合物
としてテトラヒドロフラン(C48 O)の代わりに
1,4−ジオキサン(C482 )を使用するものと
した。
【0393】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例1に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例50では上述のように磁性粉末の投入
と同時にカプリン酸8重量部を添加し、さらに、全混練
時間の半分が経過した時点で4−ヒドロキシ安息香酸6
重量部を追加添加した。これによって、磁性塗料混練時
にカプリン酸と4−ヒドロキシ安息香酸とが磁性粉末の
表面に順次、吸着して、磁性粉末の表面処理が順次なさ
れる。次いで、比較例1と同様にして磁気記録媒体とし
て磁気テープを製造した。
【0394】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実施例45と同様に
して測定した。結果を表5に併せて示す。
【0395】表5の結果に示されるように、本実施例5
0の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0396】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された4−ヒドロキシ安息
香酸の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すもので
ある。
【0397】実施例51 本実施例51は、比較例2で用いた磁性粉末に対して表
面処理剤として使用される有機化合物として、C64
(COOH)2 の構造を有するフタル酸とCH2 =CH
CH(OH)COOHの構造を有する2−ヒドロキシ−
3−ブテン酸を用いて順次、表面処理を行った磁性粉末
及びこれを用いた磁気録媒体を作成した例である。
【0398】まず、フタル酸の0.3mol/lエタノ
ール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミル
で3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離して大
気中で乾燥した。さらに、2−ヒドロキシ−3−ブテン
酸の0.2mol/lエタノール溶液中に所定量の磁性
粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末
のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。次いで、この
磁性粉末を用いて比較例2に示した組成で同様に磁性塗
料を調製し、比較例2と同様にして磁気記録媒体として
磁気テープを製造した。
【0399】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実施例45と同様に
して測定した。結果を表5に併せて示す。
【0400】表5の結果に示されるように、本実施例5
1の磁気記録媒体は高い残留磁束密度、角形比を有し、
比較例2に比べて高い分散性が得られたことは明らかで
ある。また、耐久性も良好であり、これは硬化のために
照射した電子線によって、結合剤分子中の不飽和結合や
2−ヒドロキシ−3−ブテン酸中の不飽和結合が相互に
架橋したためと考えられる。
【0401】このことは、2−ヒドロキシ−3−ブテン
酸を含む多段階表面処理を施した磁性粉末の磁性材料と
しての有用性を示すとともに、該多段階表面処理の優れ
た表面処理性を示すものである。
【0402】実施例52 上記実施例51は予めフタル酸と2−ヒドロキシ−3−
ブテン酸とによって順次、表面処理を行った磁性粉末を
用いて磁性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例で
あるが、本実施例52は、予め磁性粉末に対する表面処
理を行うことなく、比較例2で用いた未処理磁性粉末を
用いて磁性塗料を調製する際にフタル酸及び、2−ヒド
ロキシ−3−ブテン酸とを順次、磁性塗料中に添加して
磁性粉末の表面処理を行って磁性粉末とするとともに磁
気記録媒体を作製した例である。
【0403】まず、表面処理を施していない磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例52は上述のように磁性粉末の投入と同
時にフタル酸8重量部を添加し、さらに、全混練時間の
半分が経過した時点で2−ヒドロキシ−3−ブテン酸6
重量部を追加添加した。これによって、磁性塗料混練時
にフタル酸と2−ヒドロキシ−3−ブテン酸とが磁性粉
末の表面に順次、吸着して、磁性粉末の表面処理がなさ
れる。次いで、比較例2と同様にして磁気記録媒体とし
て磁気テープを製造した。
【0404】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性及び経時安定性を実施例45と同様に
して測定した。結果を表5に併せて示す。
【0405】表5の結果に示されるように、本実施例5
2の磁気記録媒体においても、高い分散性と高い耐久性
が確保されることが確認された。
【0406】このことは、磁性塗料の調製時に投入され
た2−ヒドロキシ−3−ブテン酸を含む多段階表面処理
の磁性粉末に対する優れた表面処理性を示すものであ
る。
【0407】実施例53 本実施例53は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物としてCH3(CH27 CH=C
H(CH27COOHの構造を有するオレイン酸とCH
3(CH26 COOHの構造を有するカプリル酸との混
合物を用いて表面処理を行った磁性粉末及びこれを用い
た磁気記録媒体を作成した例である。
【0408】まず、比較例2に示した磁性粉末の原料ゲ
ーサイトα−FeOOHを反応容器内に緩やかに充填
し、大気フローの状態で400℃で3時間加熱、脱水処
理を行った後、水素フローに切り替えてそのまま400
℃で3時間水素還元処理を行った。その後、水素フロー
の状態のまま室温近くまで放置冷却し、ついで還元磁性
粉末が大気に触れない状態で水素フローを停止し、引き
続いて有機化合物としてエチルエーテル((CH3 CH
22 O)を反応容器内に注入した。以上の操作によっ
て得られた試料を反応容器から取り出し、大気中で余分
な有機化合物を乾燥して磁性粉末を得た。
【0409】次に、オレイン酸の0.4mol/lエタ
ノール溶液とカプリル酸の0.6mol/lエタノール
溶液との混合液に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、振動
ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分離し
て大気中で乾燥した。次いで、この磁性粉末を用いて比
較例2に示した組成で同様に磁性塗料を調製し、比較例
2と同様に磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0410】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例45と同様にし
て測定した。結果は表5に併せて示す。
【0411】表5の結果に示されるように、本実施例5
3の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、2回に分けて磁性粉末表面に
吸着した有機化合物及び表面処理剤として使用される有
機化合物が、優れた経時安定性を与えることも示され
た。さらに、耐久性も良好であり、これは硬化のために
照射した電子線によって、結合剤分子中の不飽和結合や
オレイン酸中の不飽和結合が相互に架橋したためと考え
られる。
【0412】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらにオレイン酸で表面処理を施した磁性粉末の
磁性材料としての有用性を示すとともに、オレイン酸の
優れた表面処理性を示すものである。
【0413】実施例54 上記実施例53は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らにオレイン酸とカプリル酸との混合物を用いて表面処
理を行った磁性粉末を用いて磁性塗料を調製し、磁気記
録媒体を作製した例であるが、本実施例54は、予めオ
レイン酸とカプリル酸との混合物による表面処理を行う
ことなく、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元状態か
ら有機化合物を被着させることによって表面処理が施さ
れた磁性粉末とオレイン酸とカプリル酸とを直接磁性塗
料中に添加して磁性粉末に表面処理を行って磁性粉末と
するとともに磁気記録媒体を作製した例である。
【0414】まず、実施例53と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてエチルエーテル((CH3 CH22 O)の代
わりにテトラヒドロフラン(C48 O)を使用するも
のとした。
【0415】次に上記のようにして得られた磁性粉末を
用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。た
だし、本実施例54では上述のように、オレイン酸6重
量部とカプリル酸8重量部とを磁性粉末の投入と同時に
添加した。これによって、磁性塗料混練時にオレイン酸
とカプリル酸とが磁性粉末の表面に吸着して、磁性粉末
の表面処理がなされる。次いで、比較例2と同様にして
磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0416】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例45と同様にし
て測定した。結果は表5に併せて示す。
【0417】表5の結果に示されるように、本実施例5
4の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0418】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入されたオレイン酸の磁性粉
末に対する優れた表面処理性を示すものである。
【0419】実施例55 本実施例55は、表面部分に酸化鉄層の存在しない還元
状態から有機化合物を被着させることによって表面処理
が施された磁性粉末に対して、さらに表面処理剤として
使用される有機化合物として、CH3 (CH27 OH
の構造を有する1−オクタノールとCH2 =CH(CH
29 OHの構造を有する10−ウンデセン−1−オー
ルとによって順次、表面処理を行った磁性粉末及びこれ
を用いた磁気記録媒体を作成した例である。
【0420】まず、実施例53と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、還元磁性
粉末の冷却を0℃近傍まで行うものとし、有機化合物と
してエチルエーテル((CH3 CH22 O)の代わり
にアセトアルデヒド(CH3CHO)を使用するものと
した。
【0421】次に、1−オクタノールの0.3mol/
lエタノール溶液中に所定量の上記磁性粉末を浸漬し、
振動ミルで3時間振盪した後に磁性粉末のみを濾過、分
離して大気中で乾燥した。さらに、10−ウンデセン−
1−オールの0.2mol/lエタノール溶液中に所定
量の上記磁性粉末を浸漬し、振動ミルで3時間振盪した
後に磁性粉末のみを濾過、分離して大気中で乾燥した。
【0422】次いで、この磁性粉末を用いて比較例2に
示した組成で同様に磁性塗料を調製し、比較例2と同様
に磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0423】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例45と同様にし
て測定した。結果は表5に併せて示す。
【0424】表5の結果に示されるように、本実施例5
5の磁気記録媒体は高い表面光沢性、残留磁束密度、角
形比を有し、比較例2に比べて高い分散性が得られたこ
とは明らかである。また、3回に分けて磁性粉末表面に
吸着した有機化合物及び表面処理剤として使用される有
機化合物が、優れた経時安定性を与えることも示され
た。さらに、耐久性も良好であり、これは硬化のために
照射した電子線によって、結合剤分子中の不飽和結合や
10−ウンデセン−1−オール中の不飽和結合が相互に
架橋したためと考えられる。
【0425】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末に対
して、さらに10−ウンデセン−1−オールで表面処理
を施した磁性粉末の磁性材料としての有用性を示すとと
もに、10−ウンデセン−1−オールの優れた表面処理
性を示すものである。
【0426】実施例56 上記実施例55は還元状態から有機化合物を被着させる
ことによって表面処理が施された磁性粉末に対して、さ
らに1−オクタノールと10−ウンデセン−1−オール
とによって順次、表面処理を行った磁性粉末を用いて磁
性塗料を調製し、磁気記録媒体を作製した例であるが、
本実施例56は、予め磁性粉末に対する表面処理剤によ
る表面処理を行うことなく、表面部分に酸化鉄層の存在
しない還元状態から有機化合物を被着させることによっ
て表面処理が施された磁性粉末を用いて磁性塗料を調製
する際に1−オクタノール及び、10−ウンデセン−1
−オールとを順次、磁性塗料中に添加して磁性粉末の表
面処理を行って磁性粉末とするとともに磁気記録媒体を
作製した例である。
【0427】まず、実施例53と同様にして磁性粉末の
有機化合物による表面処理を行った。ただし、有機化合
物としてエチルエーテル((CH3 CH22 O)の代
わりにベンズアルデヒド(C65 CHO)を使用する
ものとした。
【0428】次に、上記のようにして得られた磁性粉末
を用いて比較例2に示した組成で磁性塗料を調製した。
ただし、本実施例56では上述のように磁性粉末の投入
と同時に1−オクタノール8重量部を添加し、さらに、
全混練時間の半分が経過した時点で10−ウンデセン−
1−オール6重量部を追加添加した。これによって、磁
性塗料混練時に1−オクタノールと10−ウンデセン−
1−オールとが磁性粉末の表面に順次、吸着して、磁性
粉末の表面処理がなされる。次いで、比較例2と同様に
して磁気記録媒体として磁気テープを製造した。
【0429】そして、この磁気記録媒体の磁気特性、表
面光沢性、耐久性、経時安定性を実施例45と同様にし
て測定した。結果は表5に併せて示す。
【0430】表5の結果に示されるように、本実施例5
6の磁気記録媒体においても、高い分散性と耐久性、高
い経時安定性を示すことが確認された。
【0431】このことは、還元状態から有機化合物を被
着させることによって表面処理が施された磁性粉末とと
もに磁性塗料の調製時に投入された10−ウンデセン−
1−オールの磁性粉末に対する優れた表面処理性を示す
ものである。
【0432】以上の実験例5の結果から、本発明の磁性
粉末及び磁気記録媒体のように、少なくとも1種類の有
機化合物により表面処理がなされ、当該有機化合物中の
少なくとも1種類の官能基が磁性粉末表面に吸着してい
ない磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒体において
は、磁性層中の磁性粉末の分散性が良好であること、耐
久性が良好であることが確認された。
【0433】すなわち、上述のような本発明の磁気記録
媒体は高密度記録化に十分対応可能である。
【0434】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明の磁性粉末においては、少なくとも1種類の有機化合
物若しくはその溶液により表面処理が施されていること
から、この有機化合物が磁性粉末表面に吸着し、磁性粉
末表面の活性点がその活性を失うため、磁性粉末の耐候
性が向上し、経時安定性が確保される。
【0435】また、本発明の磁性粉末においては、有機
化合物中の少なくとも1種類の官能基が磁性粉末表面に
吸着していないことから、これを使用した本発明の磁気
記録媒体においては、結合剤中の官能基と磁性粉末表面
に吸着している1種類以上の有機化合物中の磁性粉末に
吸着していない官能基との反応、架橋がなされ、耐久性
が大幅に向上する。
【0436】また、表面処理剤として使用される有機化
合物として、ω−ヒドロキシカルボン酸を使用すれば、
上述のようにω−ヒドロキシカルボン酸中のカルボキシ
ル基が磁性粉末表面に吸着して、磁性粉末表面の活性点
がその活性を失うため、磁性粉末の耐候性が向上する
他、これを用いた本発明の磁気記録媒体においては、磁
性層を形成する磁性塗料中においてω−ヒドロキシカル
ボン酸中のアルキル鎖と結合剤や有機溶媒との親和性に
よって磁性粉末が結合剤に対して高い分散性を得、磁性
層中の磁性粉末の分散性が良好となる。
【0437】さらに、この本発明の磁気記録媒体におい
て、磁性層中の結合剤を水酸基を有するものとし、磁性
層中に硬化剤も含有させれば、磁性粉末に吸着したω−
ヒドロキシカルボン酸中の水酸基と結合剤中の水酸基と
が硬化剤で相互に架橋されて、優れた耐久性が得られ
る。
【0438】一方、表面処理剤として使用される有機化
合物として、ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸
を使用すれば、上述のようにω位に不飽和結合を有する
直鎖カルボン酸中のカルボキシル基が磁性粉末表面に吸
着して、磁性粉末表面の活性点がその活性を失うため、
磁性粉末の耐候性が向上する他、これを用いた本発明の
磁気記録媒体においては、磁性層を形成する磁性塗料中
においてω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸中の
アルキル鎖と結合剤や有機溶媒との親和性によって磁性
粉末が結合剤に対して高い分散性を得、磁性層中の磁性
粉末の分散性が良好となる。
【0439】さらには、この本発明の磁気記録媒体にお
いて、磁性層中の結合剤を不飽和結合を有するものとす
れば、磁性粉末に吸着したω位に不飽和結合を有する直
鎖カルボン酸中の不飽和結合と結合剤中の不飽和結合と
が架橋されて、優れた耐久性が得られる。
【0440】また、このとき、磁性粉末を還元状態の磁
性粉末に対して有機防錆剤等の有機化合物を予め被着さ
せたものとすれば、磁性粉末の高い磁化が確保され、経
時安定性がさらに良好となる。
【0441】従って、これら本発明の磁気記録媒体は高
記録密度化に十分対応可能である。

Claims (59)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁性粉末に対し、少なくとも1種類の有
    機化合物若しくはその溶液により表面処理が施されてな
    る磁性粉末において、 有機化合物中の少なくとも1種類の官能基が磁性粉末表
    面に吸着していないことを特徴とする磁性粉末。
  2. 【請求項2】 有機化合物が多価アルコールであること
    を特徴とする請求項1記載の磁性粉末。
  3. 【請求項3】 有機化合物が多価カルボン酸であること
    を特徴とする請求項1記載の磁性粉末。
  4. 【請求項4】 有機化合物がオキシ酸であることを特徴
    とする請求項1記載の磁性粉末。
  5. 【請求項5】 オキシ酸がω−ヒドロキシカルボン酸で
    あることを特徴とする請求項4記載の磁性粉末。
  6. 【請求項6】 ω−ヒドロキシカルボン酸を含む2種類
    以上の異なる表面処理剤若しくはその溶液による表面処
    理が施されており、ω−ヒドロキシカルボン酸以外の表
    面処理剤が、これが磁性粉末に吸着したときの高さがω
    −ヒドロキシカルボン酸が磁性粉末に吸着したときの高
    さと同等か若しくはそれよりも低いものであることを特
    徴とする請求項5記載の磁性粉末。
  7. 【請求項7】 ω−ヒドロキシカルボン酸を含む2種類
    以上の異なる表面処理剤の混合物若しくはその溶液によ
    り表面処理が施されていることを特徴とする請求項5記
    載の磁性粉末。
  8. 【請求項8】 ω−ヒドロキシカルボン酸を含む2種類
    以上の異なる表面処理剤若しくはその混合物或いはそれ
    らの溶液により、順次、表面処理が施されていることを
    特徴とする請求項5記載の磁性粉末。
  9. 【請求項9】 ω−ヒドロキシカルボン酸若しくは当該
    カルボン酸を含有する混合物或いはそれらの溶液により
    表面処理が施された後、ω−ヒドロキシカルボン酸以外
    の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混合物
    或いはそれらの溶液により表面処理が施されていること
    を特徴とする請求項8記載の磁性粉末。
  10. 【請求項10】 ω−ヒドロキシカルボン酸以外の表面
    処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混合物或いは
    それらの溶液により表面処理が施された後、ω−ヒドロ
    キシカルボン酸若しくは当該カルボン酸を含有する混合
    物或いはそれらの溶液により表面処理が施されているこ
    とを特徴とする請求項8記載の磁性粉末。
  11. 【請求項11】 還元状態の磁性粉末に対して有機化合
    物を予め被着させた後に表面処理が施されていることを
    特徴とする請求項5記載の磁性粉末。
  12. 【請求項12】 ω−ヒドロキシカルボン酸を含む2種
    類以上の異なる表面処理剤の混合物若しくはその溶液に
    より表面処理が施されていることを特徴とする請求項1
    1記載の磁性粉末。
  13. 【請求項13】 ω−ヒドロキシカルボン酸を含む2種
    類以上の異なる表面処理剤若しくはその混合物或いはそ
    れらの溶液により、順次、表面処理が施されていること
    を特徴とする請求項11記載の磁性粉末。
  14. 【請求項14】 ω−ヒドロキシカルボン酸若しくは当
    該カルボン酸を含有する混合物或いはそれらの溶液によ
    り表面処理が施された後、ω−ヒドロキシカルボン酸以
    外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混合
    物或いはそれらの溶液により表面処理が施されているこ
    とを特徴とする請求項13記載の磁性粉末。
  15. 【請求項15】 ω−ヒドロキシカルボン酸以外の表面
    処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混合物或いは
    それらの溶液により表面処理が施された後、ω−ヒドロ
    キシカルボン酸若しくは当該カルボン酸を含有する混合
    物或いはそれらの溶液により表面処理が施されているこ
    とを特徴とする請求項13記載の磁性粉末。
  16. 【請求項16】 有機化合物が不飽和結合を有するオキ
    シ酸であることを特徴とする請求項1記載の磁性粉末。
  17. 【請求項17】 有機化合物が不飽和結合を有するアル
    コールであることを特徴とする請求項1記載の磁性粉
    末。
  18. 【請求項18】 有機化合物が不飽和結合を有するカル
    ボン酸であることを特徴とする請求項1記載の磁性粉
    末。
  19. 【請求項19】 カルボン酸がω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸であることを特徴とする請求項18記
    載の磁性粉末。
  20. 【請求項20】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤若しくはその
    溶液による表面処理が施されており、ω位に不飽和結合
    を有する直鎖カルボン酸以外の表面処理剤が、これが磁
    性粉末に吸着したときの高さがω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸が磁性粉末に吸着したときの高さと同
    等か若しくはそれよりも低いものであることを特徴とす
    る請求項19記載の磁性粉末。
  21. 【請求項21】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤の混合物若し
    くはその溶液により表面処理が施されていることを特徴
    とする請求項19記載の磁性粉末。
  22. 【請求項22】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤若しくはその
    混合物或いはそれらの溶液により、順次、表面処理が施
    されていることを特徴とする請求項19記載の磁性粉
    末。
  23. 【請求項23】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸若しくは当該カルボン酸を含有する混合物或いはそ
    れらの溶液により表面処理が施された後、ω位に不飽和
    結合を有する直鎖カルボン酸以外の表面処理剤若しくは
    上記表面処理剤を含有する混合物或いはそれらの溶液に
    より表面処理が施されていることを特徴とする請求項2
    2記載の磁性粉末。
  24. 【請求項24】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有す
    る混合物或いはそれらの溶液により表面処理が施された
    後、ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸若しくは
    当該カルボン酸を含有する混合物或いはそれらの溶液に
    より表面処理が施されていることを特徴とする請求項2
    2記載の磁性粉末。
  25. 【請求項25】 還元状態の磁性粉末に対して有機化合
    物を予め被着させた後に表面処理が施されていることを
    特徴とする請求項19記載の磁性粉末。
  26. 【請求項26】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤の混合物若し
    くはその溶液により表面処理が施されていることを特徴
    とする請求項25記載の磁性粉末。
  27. 【請求項27】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤若しくはその
    混合物或いはそれらの溶液により、順次、表面処理が施
    されていることを特徴とする請求項25記載の磁性粉
    末。
  28. 【請求項28】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸若しくは当該カルボン酸を含有する混合物或いはそ
    れらの溶液により表面処理が施された後、ω位に不飽和
    結合を有する直鎖カルボン酸以外の表面処理剤若しくは
    上記表面処理剤を含有する混合物或いはそれらの溶液に
    より表面処理が施されていることを特徴とする請求項2
    7記載の磁性粉末。
  29. 【請求項29】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有す
    る混合物或いはそれらの溶液により表面処理が施された
    後、ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸若しくは
    当該カルボン酸を含有する混合物或いはそれらの溶液に
    より表面処理が施されていることを特徴とする請求項2
    7記載の磁性粉末。
  30. 【請求項30】 非磁性支持体上に磁性粉末と結合剤と
    を主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体にお
    いて、 磁性粉末が、少なくとも1種類の有機化合物若しくはそ
    の溶液により表面処理が施されたものであり、この有機
    化合物中の少なくとも1種類の官能基が磁性粉末表面に
    吸着しておらず、この官能基と結合剤中の官能基が架橋
    されていることを特徴とする磁気記録媒体。
  31. 【請求項31】 有機化合物が多価アルコールであり、
    多価アルコール中の磁性粉末表面に吸着していない水酸
    基と結合剤中の水酸基とが架橋されていることを特徴と
    する請求項30記載の磁気記録媒体。
  32. 【請求項32】 有機化合物が多価カルボン酸であり、
    多価カルボン酸中の磁性粉末に吸着していないカルボキ
    シル基の水酸基と結合剤中の水酸基とが架橋されている
    ことを特徴とする請求項30記載の磁気記録媒体。
  33. 【請求項33】 有機化合物がオキシ酸であり、オキシ
    酸中の水酸基若しくはカルボキシル基と結合剤中の水酸
    基とが架橋されていることを特徴とする請求項30記載
    の磁気記録媒体。
  34. 【請求項34】 オキシ酸がω−ヒドロキシカルボン酸
    であり、ω−ヒドロキシカルボン酸中の水酸基と結合剤
    中の水酸基とが硬化剤により架橋されていることを特徴
    とする請求項33記載の磁気記録媒体。
  35. 【請求項35】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤若しくはその溶
    液による表面処理が施されたものであり、ω−ヒドロキ
    シカルボン酸以外の表面処理剤が、これが磁性粉末に吸
    着したときの高さがω−ヒドロキシカルボン酸が磁性粉
    末に吸着したときの高さと同等か若しくはそれよりも低
    いものであることを特徴とする請求項34記載の磁気記
    録媒体。
  36. 【請求項36】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤の混合物若しく
    はその溶液により表面処理が施されたものであることを
    特徴とする請求項34記載の磁気記録媒体。
  37. 【請求項37】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤若しくはその混
    合物或いはそれらの溶液により、順次、表面処理が施さ
    れたものであることを特徴とする請求項34記載の磁気
    記録媒体。
  38. 【請求項38】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸若しくは当該カルボン酸を含有する混合物或いはそれ
    らの溶液により表面処理が施された後、ω−ヒドロキシ
    カルボン酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を
    含有する混合物或いはそれらの溶液により表面処理が施
    されたものであることを特徴とする請求項37記載の磁
    気記録媒体。
  39. 【請求項39】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する
    混合物或いはそれらの溶液により表面処理が施された
    後、ω−ヒドロキシカルボン酸若しくは当該カルボン酸
    を含有する混合物或いはそれらの溶液により表面処理が
    施されたものであることを特徴とする請求項37記載の
    磁気記録媒体。
  40. 【請求項40】 磁性粉末が還元状態の磁性粉末に対し
    て有機化合物を予め被着させたものであることを特徴と
    する請求項34記載の磁気記録媒体。
  41. 【請求項41】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤の混合物若しく
    はその溶液により表面処理が施されたものであることを
    特徴とする請求項40記載の磁気記録媒体。
  42. 【請求項42】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤若しくはその混
    合物或いはそれらの溶液により、順次、表面処理が施さ
    れたものであることを特徴とする請求項40記載の磁気
    記録媒体。
  43. 【請求項43】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸若しくは当該カルボン酸を含有する混合物或いはそれ
    らの溶液により表面処理が施された後、ω−ヒドロキシ
    カルボン酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を
    含有する混合物或いはそれらの溶液により表面処理が施
    されたものであることを特徴とする請求項42記載の磁
    気記録媒体。
  44. 【請求項44】 磁性粉末が、ω−ヒドロキシカルボン
    酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処理剤を含有する
    混合物或いはそれらの溶液により表面処理が施された
    後、ω−ヒドロキシカルボン酸若しくは当該カルボン酸
    を含有する混合物或いはそれらの溶液により表面処理が
    施されたものであることを特徴とする請求項42記載の
    磁気記録媒体。
  45. 【請求項45】 有機化合物が不飽和結合を有するオキ
    シ酸であり、磁性粉末表面に吸着しているオキシ酸中の
    磁性粉末表面に吸着していない不飽和結合と結合剤中の
    不飽和結合が架橋されていることを特徴とする請求項3
    0記載の磁気記録媒体。
  46. 【請求項46】 有機化合物が不飽和結合を有するアル
    コールであり、磁性粉末表面に吸着しているアルコール
    中の磁性粉末表面に吸着していない不飽和結合と結合剤
    中の不飽和結合が架橋されていることを特徴とする請求
    項30記載の磁気記録媒体。
  47. 【請求項47】 有機化合物が不飽和結合を有するカル
    ボン酸であり、磁性粉末表面に吸着しているカルボン酸
    中の磁性粉末表面に吸着していない不飽和結合と結合剤
    中の不飽和結合が架橋されていることを特徴とする請求
    項30記載の磁気記録媒体。
  48. 【請求項48】 カルボン酸がω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸であることを特徴とする請求項47記
    載の磁気記録媒体。
  49. 【請求項49】 ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸中の不飽和結合と結合剤中の不飽和結合が架橋され
    ていることを特徴とする請求項48記載の磁気記録媒
    体。
  50. 【請求項50】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤
    による表面処理が施されたものであり、ω位に不飽和結
    合を有する直鎖カルボン酸以外の表面処理剤が、これが
    磁性粉末に吸着したときの高さがω位に不飽和結合を有
    する直鎖カルボン酸が磁性粉末に吸着したときの高さと
    同等か若しくはそれよりも低いものであることを特徴と
    する請求項48記載の磁気記録媒体。
  51. 【請求項51】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤
    の混合物若しくはその溶液により表面処理が施されたも
    のであることを特徴とする請求項48記載の磁気記録媒
    体。
  52. 【請求項52】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤
    若しくはその混合物或いはそれらの溶液により、順次、
    表面処理が施されたものであることを特徴とする請求項
    48記載の磁気記録媒体。
  53. 【請求項53】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸若しくは当該カルボン酸を含有する混
    合物或いはそれらの溶液により表面処理が施された後、
    ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸以外の表面処
    理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混合物或いはそ
    れらの溶液により表面処理が施されたものであることを
    特徴とする請求項52記載の磁気記録媒体。
  54. 【請求項54】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処
    理剤を含有する混合物或いはそれらの溶液により表面処
    理が施された後、ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸若しくは当該カルボン酸を含有する混合物或いはそ
    れらの溶液により表面処理が施されたものであることを
    特徴とする請求項52記載の磁気記録媒体。
  55. 【請求項55】 磁性粉末が還元状態の磁性粉末に対し
    て有機化合物を予め被着させたものであることを特徴と
    する請求項48記載の磁気記録媒体。
  56. 【請求項56】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤
    の混合物若しくはその溶液により表面処理が施されたも
    のであることを特徴とする請求項55記載の磁気記録媒
    体。
  57. 【請求項57】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸を含む2種類以上の異なる表面処理剤
    若しくはその混合物或いはそれらの溶液により、順次、
    表面処理が施されたものであることを特徴とする請求項
    55記載の磁気記録媒体。
  58. 【請求項58】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸若しくは当該カルボン酸を含有する混
    合物或いはそれらの溶液により表面処理が施された後、
    ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボン酸以外の表面処
    理剤若しくは上記表面処理剤を含有する混合物或いはそ
    れらの溶液により表面処理が施されたものであることを
    特徴とする請求項57記載の磁気記録媒体。
  59. 【請求項59】 磁性粉末が、ω位に不飽和結合を有す
    る直鎖カルボン酸以外の表面処理剤若しくは上記表面処
    理剤を含有する混合物或いはそれらの溶液により表面処
    理が施された後、ω位に不飽和結合を有する直鎖カルボ
    ン酸若しくは当該カルボン酸を含有する混合物或いはそ
    れらの溶液により表面処理が施されたものであることを
    特徴とする請求項57記載の磁気記録媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005200643A (ja) * 2003-12-15 2005-07-28 Rikogaku Shinkokai ポリマー被覆微粒子の製造方法およびポリマー被覆微粒子
JP2010235861A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 Fujifilm Corp 粉末用表面改質剤、磁気記録媒体およびその製造方法、ならびに磁性塗料および非磁性塗料

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