JPH09263609A - 炭酸エステル化ポリビニルアルコール誘導体の製造方法 - Google Patents

炭酸エステル化ポリビニルアルコール誘導体の製造方法

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JPH09263609A
JPH09263609A JP7674796A JP7674796A JPH09263609A JP H09263609 A JPH09263609 A JP H09263609A JP 7674796 A JP7674796 A JP 7674796A JP 7674796 A JP7674796 A JP 7674796A JP H09263609 A JPH09263609 A JP H09263609A
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polyvinyl alcohol
reaction
carbonate
solvent
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JP7674796A
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Kimihiro Suzuki
公宏 鈴木
Isao Ikeda
功夫 池田
Hidemasa Okamoto
秀正 岡本
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Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、耐熱性に優れ、かつ、水溶性のも
のから水不溶性のものに至るまでの種々の物理的、化学
的性質を備えており、繊維加工剤や紙加工剤などの水溶
性ポリビニルアルコール(PVA)本来の用途の他、水
不溶性ポリマーとしては、塗料、接着剤、バインダーな
どへの応用に有用な、そして、対応するモノマーからは
合成不可能な新規なPVAエステルを安定的かつ効率よ
く製造する方法を提供し、PVAを高機能化・高性能化
する。 【解決手段】 本発明は、副生するアルコールを蒸留除
去しながら、PVAと炭酸ジアルキルとを反応せしめる
ことによる6員の環状炭酸エステル構造を含んでなる炭
酸エステル化PVA誘導体の製造方法に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリビニルアルコ
ールの炭酸エステル化反応によって得られる新規な炭酸
エステル化ポリビニルアルコール誘導体(以下「炭酸エ
ステル化PVA誘導体」という)の製造方法に関する。
さらに詳しくは、エステル化反応触媒の存在下または不
存在下に、反応溶媒中、副生するアルコールの沸点以
上、かつ、反応溶媒の沸点もしくは200℃のいずれか
低い方の温度以下の温度で、ポリビニルアルコールと炭
酸ジアルキルとの反応を、副生するアルコールを蒸留除
去しながら行うことによって、前記一般式(I)で示さ
れる繰り返し単位からなる環状炭酸エステル構造を少な
くとも含んでなる炭酸エステル化PVA誘導体を製造す
る方法に関する。
【0002】本発明の炭酸エステル化PVA誘導体は、
前記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる環状
炭酸エステル構造の他、後述するポリビニルアルコール
構造およびポリ酢酸ビニル構造を含み、さらに、後述す
るモノ炭酸エステル構造および/または架橋炭酸エステ
ル構造を含んでなるものであり、その炭酸エステル化度
や水酸基、アセチル基の組成割合などにより物理的、化
学的性質が異なり、炭酸エステル化度が低く、水溶性で
強力な接着力や乳化力などを示すものは、経糸糊付や織
物加工などの繊維加工剤、紙加工剤、乳化安定剤、接着
剤、粘結剤、フィルムなど、ポリビニルアルコール自体
としての用途分野に使用できる。
【0003】一方、炭酸エステル化度が上がり、優れた
強靱性、可撓性、柔軟性、耐熱性、接着性、分散性、耐
水性、耐油性、有機溶剤に対する溶解性、透明性などを
有する他、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹
脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、天然樹
脂などの各種樹脂やトリエチレングリコール、トリクレ
ジルホスフェート、ジブチルフタレート、ジブチルセバ
ケート、メチルアセチルリシノレート、ひまし油などの
可塑剤との相溶性に優れるものは、それ自体で、あるい
は、前記相溶性のある他の樹脂や可塑剤と混合して、ウ
ォッシュプライマー、粉体塗料、金属塗料、金属箔塗
料、金属用インク、真空蒸着用塗料、光沢面保護塗料、
防水塗料、木材塗料、皮革用塗料、コンクリート塗料な
どの塗料への応用、プリント基板への接着、コイル用エ
ナメル電線の接着、金属の接着、ヒートシール接着剤、
感圧性接着剤、フィルム状接着剤、電着植毛用接着剤、
皮革用接着剤など接着剤への応用、ICセラミックバイ
ンダー、磁気テープバインダー、静電複写機用トナー、
反射シートバインダー、ブレーキライニングバインダ
ー、不織布バインダーなど、各種バインダーへの応用な
ど、幅広い分野に使用することができる。
【0004】
【従来の技術】合成高分子であるポリビニルアルコール
(PVA)のエステル化合物に関する研究は、従来より
多数の研究が報告されている。しかし、これらの研究の
多くが、生成するPVAエステルの基本構造に対応する
ビニルモノマーからの付加重合、もしくは環化重合によ
る合成反応であり、PVAが持つ水酸基を利用した、ポ
リマー自身の化学反応によるエステル化の研究となると
その数は多くない。これまで、PVA自身のエステル化
反応による研究は、高分子アルコールの化学反応の研究
対象として、あるいは、PVAの性質の改善を目的とし
て検討されてきた。
【0005】しかし、PVA自身の反応によるPVAの
エステル化は、モノマーからは合成不可能なPVAエス
テルを合成することが可能であり、PVAを高機能化・
高性能化してPVAの新しい用途を見い出すという意味
において、重要な反応であると考えられ、例えば、PV
Aのアセタール化反応は、PVAの工業的利用という面
において非常に重要な反応であり、アセタール化により
PVAが水に対し不溶化するため、PVAが繊維、また
は様々な工業分野で産業資材として利用されるに至って
いる。
【0006】そして、このような報告例として、特開昭
53−143691号公報、特開昭54−20073号
公報および特開昭54−118490号公報などには、
側鎖が環状酸無水物で変性された変性ポリビニルアルコ
ール系重合体がその製造条件によって水溶性のものから
水不溶性の吸水性ポリマーに至るまでの種々の性質を備
えたポリマーになり得ることが開示されており、さら
に、特公昭63−58868号公報には、前記変性ポリ
ビニルアルコール系重合体を適当な溶媒に溶解し調製し
た溶液を各種基材に塗布するか、または、各種基材と混
合した後、該処理の施された基材を熱処理することによ
って、優れた吸水性もしくは吸湿性を有する被覆材料を
得ることが開示されている。
【0007】また、特公昭60−8043号公報や特公
昭60−8044号公報には、PVA水溶液またはPV
Aの極性有機溶剤溶液に不飽和カルボン酸化合物を加え
てエステル化反応を行い、次いでアルデヒド化合物を加
えてアセタール化反応を行うことによってPVAの改質
を行い、接着剤、塗料などとして有用なポリビニルアセ
タールを製造する方法が提案されている。
【0008】さらにはまた、特公平4−28001号公
報には、3級アミンの存在下に活性化カルボン酸誘導体
でPVAをエステル化することにより、光重合もしくは
光架橋可能の混合組成物を構成するために使用されるア
シル化ポリビニルアルコールの製造方法が、特公平6−
41520号公報には、PVAとアクリレート/無水マ
レイン酸共重合体との開環エステル化反応による防水性
を増強させたポリビニルアルコールグラフト三元共重合
体が、それぞれ開示されている。
【0009】このように、PVA自身のエステル化反応
において、その水酸基の反応性を利用することにより、
側鎖に新しい官能基を導入しPVAに新しい機能・性質
を発現させることは、重要でかつ有効な方法と考えられ
るのである。
【0010】一方、水酸基含有化合物の持つ水酸基の反
応性を利用したエステル化の研究として、ヒドロキシ化
合物(アルコール)を炭酸ジエステルでエステル化する
試みが既になされており、例えば、特開平5−1250
21号公報には、エステル交換反応触媒の存在下、脂肪
族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコールな
どのヒドロキシ化合物を炭酸ジメチルとエステル交換反
応させ、炭酸エステルを製造する方法が提案されてい
る。
【0011】そして、特に、米国特許第5091543
号明細書には、アルキルアンモニウム塩、ピリジニウム
塩、第3級アミンおよびアルキルアンモニウム基もしく
は第3級アミノ基を含有する強塩基型または弱塩基型の
イオン交換樹脂から選ばれる触媒の存在下に、1,2−
ジオール類もしくは1,3−ジオール類を炭酸ジメチ
ル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニルなどの炭酸ジエステ
ルと、副生するアルコールまたはフェノール系化合物を
蒸留除去しながら、反応せしめ、5員もしくは6員の環
状炭酸エステル、モノ炭酸エステルおよび炭酸ジエステ
ルを生成する方法が開示されている。
【0012】そこで、このようなジオール類と炭酸ジエ
ステルの反応をモノマーだけではなくポリマーについて
も応用できれば、ポリマー内に環状構造の炭酸エステル
を持つポリマーエステルの合成が可能であると考えられ
るのである。そして、このようなポリマーエステルとし
て、ジビニルカーボネートの重合によって得られる6員
の環状炭酸エステル構造と5員の環状炭酸エステル構造
を同時に含むポリマーが既に知られている(Bull. Che
m. Soc. Japan, 38(11), 1905(1965)など参照)。
【0013】しかしながら、水酸基を有するポリマーと
炭酸ジエステルとの反応、特に、モノマーの重合で合成
できないPVAエステルの合成の一例としての、PVA
の炭酸ジエステルによる炭酸エステル化反応について
は、未だ研究報告は皆無であったのである。
【0014】そこで、本発明者らは、かかる状況に鑑
み、ポリビニルアルコールの水酸基の化学反応の一つで
あるエステル化反応を利用して、ポリビニルアルコール
自身の反応による新規なポリビニルアルコールのエステ
ル誘導体の合成について鋭意研究した結果、アルキルア
ンモニウム塩などのエステル化反応用塩基触媒の存在下
または不存在下に、無溶媒状態下、炭酸ジメチルなどの
炭酸ジアルキルの融点以上、かつ200℃以下の温度に
おいて、あるいはまた、ポリビニルアルコールの非プロ
トン性極性溶媒(例えばジメチルスルホキシドなど)
中、該溶媒の融点以上、かつその沸点以下の温度におい
て、ポリビニルアルコールと前記炭酸ジアルキルとのエ
ステル交換反応を行うことによって、水溶性のポリマー
から水不溶性のポリマーに至るまでの種々の異なった物
理的、化学的性質を備え、したがって、繊維加工剤、紙
加工剤、塗料、接着剤、バインダーなどの幅広い分野に
利用できる新規な炭酸エステル化PVA誘導体(すなわ
ち、環状炭酸エステル構造とポリビニルアルコール構造
とポリ酢酸ビニル構造とを含み、かつ、モノ炭酸エステ
ル構造および/または架橋炭酸エステル構造を含んでな
るポリマー)が得られることを、先に提案した(特願平
7−80228号明細書参照)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記提
案に記載された炭酸エステル化PVA誘導体は、反応の
進行と共に反応系内に副生するアルコールが架橋反応を
促進させるためか、架橋炭酸エステル構造の組成割合が
多くなり、反応系においてゲルの生成が著しくなり、均
一系反応を行うことが困難となるので、反応系の安定度
が低下したり、また、耐熱性などに問題があった。
【0016】本発明の目的は、上記課題を解決するとと
もに、ポリビニルアルコールの炭酸ジアルキルによる炭
酸エステル化反応によって、水溶性のものから水不溶性
のポリマーに至るまでの種々の物理的、化学的性質を備
えたポリマーとして得られ、繊維加工剤、紙加工剤、乳
化安定剤、接着剤、粘結剤、フィルムなど水溶性のポリ
ビニルアルコールとしての用途の他、水不溶性のポリマ
ーとしては、それ自体で、あるいは、それと相溶性のあ
る他の樹脂や可塑剤と混合して塗料、接着剤、バインダ
ーなどへの応用に有用な、そして対応するモノマーから
は合成不可能な、前記環状炭酸エステル構造を含んでな
る新規な炭酸エステル化PVA誘導体の製造方法を提供
することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために、ポリビニルアルコールと炭酸ジア
ルキルとのエステル交換反応による炭酸エステル化PV
A誘導体の製造方法について鋭意検討を重ねた結果、反
応溶媒中、エステル化反応触媒の存在下もしくは不存在
下に、副生するアルコールの沸点以上、かつ、反応溶媒
の沸点もしくは200℃のいずれか低い方の温度以下の
温度において、副生するアルコールを蒸留除去しながら
前記ポリビニルアルコールと炭酸ジアルキルとの反応を
行うことによって、上述の目的を満足する、環状炭酸エ
ステル構造を含んでなる炭酸エステル化PVA誘導体が
得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0018】すなわち、請求項1に記載の第1の発明
は、反応溶媒中、エステル化反応触媒の存在下もしくは
不存在下に、ポリビニルアルコールと炭酸ジアルキルと
の炭酸エステル化反応を行い、前記一般式(I)で示さ
れる繰り返し単位からなる環状炭酸エステル構造を少な
くとも含んでなる炭酸エステル化PVA誘導体を得るに
際し、該炭酸エステル化反応を、副生するアルコールの
沸点以上、かつ、前記反応溶媒の沸点もしくは200℃
のいずれか低い方の温度以下の温度において、副生する
アルコールを蒸留除去しながら行うことを特徴とする炭
酸エステル化PVA誘導体の製造方法を提供することで
達成できる。
【0019】請求項2に記載の第2の発明は、反応溶媒
が水、非プロトン性極性溶媒および水−非プロトン性極
性溶媒混合溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種
以上の溶媒であることを特徴とする上記第1の発明に係
る、炭酸エステル化PVA誘導体の製造方法を提供する
ことで達成できる。請求項3に記載の第3の発明は、エ
ステル化反応触媒がアルキルアンモニウム塩、ピリジニ
ウム塩、ジアザビシクロアルケン類、第3級アミン、ア
ルキルアンモニウム基もしくは第3級アミノ基を含有す
るイオン交換樹脂、およびアルカリ性触媒からなる群よ
り選ばれる塩基触媒であることを特徴とする前記第1ま
たは第2の発明に係る、炭酸エステル化PVA誘導体の
製造方法を、そして、請求項4に記載の第4の発明は、
炭酸ジアルキルが炭酸ジメチルであることを特徴とする
前記第1〜第3の発明のいずれか1つに係る、炭酸エス
テル化PVA誘導体の製造方法を、それぞれ提供するこ
とで達成できる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳しく説明す
る。本発明の製造方法によって得られる炭酸エステル化
PVA誘導体は、後述する方法により、ポリビニルアル
コールを下記一般式(II)
【0021】
【化2】
【0022】(ただし式中、R1 およびR2 は、1〜4
個の炭素原子を有する低級アルキル基を表わし、同一で
も異なっていてもよい)で示される炭酸ジアルキルで炭
酸エステル化反応せしめて得られる新規ポリマーであ
る。すなわち、該ポリマーは、下記一般式(III)
【0023】
【化3】
【0024】(ただし式中、aは、該式で示される繰り
返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体
中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し単位か
らなる環状炭酸エステル構造と、下記一般式(IV)
【0025】
【化4】
【0026】(ただし式中、bは、該式で示される繰り
返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体
中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し単位か
らなるポリビニルアルコール構造とを含み、そして、下
記一般式(V)
【0027】
【化5】
【0028】(ただし式中、cは、該式で示される繰り
返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体
中におけるモル分率を示し、0〜0.3の範囲の値であ
る)で示される繰り返し単位からなるポリ酢酸ビニル構
造を含むか含まず、かつ、下記一般式(VI)
【0029】
【化6】
【0030】(ただし式中、R1 は、前記一般式(II)
におけるR1 と同じ意味を表わし、dは、該式で示され
る繰り返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA
誘導体中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し
単位からなるモノ炭酸エステル構造、および/または、
下記一般式(VII)
【0031】
【化7】
【0032】(ただし式中、eは、該式で示される繰り
返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体
中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し単位か
らなる架橋炭酸エステル構造を含有し、さらに、前記a
〜eの値が下記数式(I)
【0033】
【数1】
【0034】(ただし式中、a、b、dおよびeは、そ
れぞれ、前記一般式(III)、(IV)、(VI)および(VI
I)におけるa、b、dおよびeと同じ意味を表わす)お
よび下記数式(II)
【0035】
【数2】
【0036】(ただし式中、a〜eは、それぞれ、前記
一般式(III)〜(VII)におけるa〜eと同じ意味を表わ
す)を同時に満足することを特徴とする炭酸エステル化
PVA誘導体である。したがって、該ポリマーの化学構
造は、下記一般式(VIII)
【0037】
【化8】
【0038】(ただし式中、a〜eは、それぞれ、前記
一般式(III)〜(VII)におけるa〜eと同じ意味を表わ
し、かつ、aは0.003〜0.408、そしてdおよ
びeは0〜0.816の範囲の値であり、さらに、0<
(2a+d+e)/(2a+b+d+e)≦0.81
6、および、2a+b+c+d+e=1.0を同時に満
足する値である)で示される通りである。
【0039】ポリビニルアルコールは、後述するよう
に、専らポリ酢酸ビニルの加水分解(ケン化)によって
製造されるため、該ポリビニルアルコール中には、前記
一般式(V)に示される酢酸ビニル単量体構造単位の繰
り返しからなるポリ酢酸ビニル構造が残存する。このポ
リ酢酸ビニル構造は、本発明のポリビニルアルコールと
炭酸ジアルキルとの炭酸エステル化反応に際して変化し
ないため、炭酸エステル化PVA誘導体中におけるポリ
酢酸ビニル構造の組成割合は、ポリビニルアルコール中
におけるポリ酢酸ビニル構造の組成割合に等しい。
【0040】そして、上記ポリビニルアルコール中にお
けるポリ酢酸ビニル構造の組成割合は、ポリ酢酸ビニル
から本発明の原料のポリビニルアルコールを製造する際
のケン化の程度、すなわち、ポリビニルアルコールのケ
ン化度に左右されるものである。本発明においては、後
述するように、原料のポリビニルアルコールのケン化度
は70〜100モル%、すなわち、原料ポリビニルアル
コール中におけるポリ酢酸ビニル構造の組成割合は0〜
30モル%であり、したがって、炭酸エステル化PVA
誘導体中における前記一般式(V)で示される繰り返し
単位からなるポリ酢酸ビニル構造のモル分率(c)は、
0〜0.3の範囲の値をとり得るのである。
【0041】本発明の炭酸エステル化反応は、原料ポリ
ビニルアルコール中のビニルアルコール単量体構造単位
の繰り返しからなるポリビニルアルコール構造が有する
水酸基と、後述する炭酸ジアルキルとの脱アルコール反
応、すなわち、炭酸ジアルキルによるポリビニルアルコ
ールへの二官能性のエステル交換反応に基づくものであ
り、該炭酸エステル化反応によって、原料ポリビニルア
ルコール中のポリビニルアルコール構造が、前記一般式
(III)で示される繰り返し単位からなる環状炭酸エステ
ル構造に、または、該構造の他に、前記一般式(VI)で
示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル構造お
よび/または前記一般式(VII)で示される繰り返し単位
からなる架橋炭酸エステル構造に変性されるものであ
る。
【0042】したがって、該変性量は、炭酸エステル化
PVA誘導体中における前記一般式(III)で示される繰
り返し単位からなる環状炭酸エステル構造のモル分率
(a)の2倍(環状炭酸エステル構造を構成する前記一
般式(III)に示される繰り返し単位は、ポリビニルアル
コール構造を構成するビニルアルコール単量体の繰り返
し構造単位2単位から生成されるため)に等しいか、ま
たは、この値と、炭酸エステル化PVA誘導体中におけ
る前記一般式(VI)で示される繰り返し単位からなるモ
ノ炭酸エステル構造のモル分率(d)と、炭酸エステル
化PVA誘導体中における前記一般式(VII)で示される
繰り返し単位からなる架橋炭酸エステル構造のモル分率
(e)との和、つまり、(2a+d+e)に等しい。ま
た、原料ポリビニルアルコール中におけるビニルアルコ
ール単量体繰り返し構造単位からなるポリビニルアルコ
ール構造のモル分率(b0 )は、前記2aの値と、炭酸
エステル化PVA誘導体中における前記一般式(IV)で
示される繰り返し単位からなるポリビニルアルコール構
造のモル分率(b)の値の和、つまり、(2a+b)に
等しいか、または、前記2aの値と、前記dの値と、前
記eの値と、前記bの値との和、つまり、(2a+b+
d+e)に等しい。よって、原料ポリビニルアルコール
の炭酸エステル化度(モル%)、すなわち、変性率(モ
ル%)は、{2a/(2a+b)}×100または
{(2a+d+e)/(2a+b+d+e)}×100
の値として求められるのである。
【0043】ところで、ポリビニルアルコール中のビニ
ルアルコール単量体繰り返し構造単位からなるポリビニ
ルアルコール構造を完全に炭酸エステル化することはで
きず、該炭酸エステル化反応においても、ポリビニルア
ルコールのアルデヒド化合物によるアセタール化の場合
と同様、Floryの理論が成り立つものとされ、理論
的最高炭酸エステル化度は81.6モル%であると言わ
れている。
【0044】そこで、本発明において所望される炭酸エ
ステル化度の最小値は、後述するように、1モル%であ
るが、この値を目標にしてポリビニルアルコールの炭酸
エステル化反応を行った場合、前記一般式(III)で示さ
れる繰り返し単位からなる環状炭酸エステル構造の生成
量は最少となり、前記aの値は、最小値の0.003と
なる。また、ポリビニルアルコールの炭酸エステル化反
応において、前記一般式(VI)で示される繰り返し単位
からなるモノ炭酸エステル構造、および、前記一般式
(VII)で示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エステ
ル構造がそれぞれ生成しない場合に、前記dおよびeの
値は最小値0となる。
【0045】一方、前記ポリビニルアルコールの炭酸エ
ステル化反応において、ケン化度100モル%のポリビ
ニルアルコールを原料として用い、前記一般式(III)で
示される繰り返し単位からなる環状炭酸エステル構造の
み、または、前記一般式(VI)で示される繰り返し単位
からなるモノ炭酸エステル構造のみ、あるいは、前記一
般式(VII)で示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エ
ステル構造のみを、それぞれ、前述の理論的最高炭酸エ
ステル化度でもって生成する場合に、前記a、dおよび
eは最大値となるのである。
【0046】すなわち、前記aの値は、0.003〜
0.408の範囲で変動し、前記dおよびeの値は、0
〜0.816の範囲で変動するのである。なお、この場
合、前記dおよびeの値が0、つまり、前記一般式(V
I)で示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル
構造、および、前記一般式(VII)で示される繰り返し単
位からなる架橋炭酸エステル構造が生成しない時、また
は、前記dおよびeの値の少なくとも一方が0以外の前
記範囲内の値をとる時、つまり、前記一般式(VI)で示
される繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル構造およ
び/または前記一般式(VII)で示される繰り返し単位か
らなる架橋炭酸エステル構造が生成する時、前記a、
b、dおよびeの値は、本発明のポリビニルアルコール
の炭酸エステル化反応における炭酸エステル化度、すな
わち、該反応による前記ポリビニルアルコール中のポリ
ビニルアルコール構造の変性率を示す前記数式(I)を
満足しなければならない。
【0047】さらに、前記a〜eの値は、本発明の炭酸
エステル化PVA誘導体を構成する各繰り返し単位から
なる構造成分のモル分率を表わすものであるから、前記
数式(II)も満足しなければならないのである。
【0048】本発明では、前記一般式(VIII)で示され
る化学構造を有する炭酸エステル化PVA誘導体におけ
る前記の環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エステル構
造、架橋炭酸エステル構造、ポリビニルアルコール構造
およびポリ酢酸ビニル構造の組成割合は、特に制限され
るものではなく、前記a〜eの値がそれぞれ上述の範囲
を満足する範囲で自由に選ぶことができる。
【0049】しかし、前記炭酸エステル化PVA誘導体
中における前記環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エステ
ル構造および架橋炭酸エステル構造の組成割合は、前記
ポリビニルアルコールの炭酸ジアルキルによる炭酸エス
テル化反応に際しての前記原料ポリビニルアルコールの
炭酸エステル化度に関係があり、一般的には、該炭酸エ
ステル化度の低いもの程(すなわち、前記炭酸エステル
化反応の進行が進んでいないもの程)、前記モノ炭酸エ
ステル構造の組成割合が多くなり、該炭酸エステル化度
が高いもの程(すなわち、前記炭酸エステル化反応の進
行が進んでいるもの程)、前記環状炭酸エステル構造の
組成割合が多くなる傾向にあると言われている。そし
て、該炭酸エステル化度がさらに高くなる(すなわち、
前記炭酸エステル化反応がさらに進行する)と、架橋炭
酸エステル構造の組成割合が増えてくると言われてい
る。
【0050】また、本発明の製造方法においては、前記
ポリビニルアルコールの炭酸ジアルキルによる炭酸エス
テル化反応に際し、該反応を、副生するアルコールを蒸
留除去しながら行うことによって、得られる炭酸エステ
ル化PVA誘導体のポリマー分子間での架橋エステル化
反応を抑制することができる。ところで、本発明の炭酸
エステル化反応における目的物は、前記一般式(III)で
示される繰り返し単位からなる環状炭酸エステル構造で
あり、前記一般式(VI)で示される繰り返し単位からな
るモノ炭酸エステル構造や前記一般式(VII)で示される
繰り返し単位からなる架橋炭酸エステル構造は、どちら
かと言えば望ましくない副生物である。
【0051】そこで、本発明においては、前記ポリビニ
ルアルコールの炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反
応に際し、前記原料ポリビニルアルコールの炭酸エステ
ル化度を適当に選択することにより、また、該炭酸エス
テル化反応において副生するアルコールの蒸留除去を適
度に行うことにより、得られる炭酸エステル化PVA誘
導体中における前記一般式(III)で示される繰り返し単
位からなる環状炭酸エステル構造、前記一般式(VI)で
示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル構造お
よび前記一般式(VII)で示される繰り返し単位からなる
架橋炭酸エステル構造の組成割合、すなわち、前記a〜
eの値を、目的に応じて適宜選ぶことができるのであ
る。
【0052】そして炭酸エステル化PVA誘導体として
は、その炭酸エステル化度や水酸基、アセチル基の組成
割合の差異、すなわち、該ポリマーの化学構造を示す前
記一般式(VIII)におけるa〜eの値、言い換えれば、
前記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる環状
炭酸エステル構造、前記一般式(VI)で示される繰り返
し単位からなるモノ炭酸エステル構造、前記一般式(VI
I)で示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エステル構
造、前記一般式(IV)で示される繰り返し単位からなる
ポリビニルアルコール構造および前記一般式(V)で示
される繰り返し単位からなるポリ酢酸ビニル構造の該ポ
リマー中における組成割合の差異によって、水溶性ポリ
マーから水不溶性ポリマーに至るまでの種々の異なった
物理的、化学的性質を有するものが得られるのである。
【0053】例えば、本発明の製造方法において得られ
る、前記一般式(VII)で示される繰り返し単位からなる
架橋炭酸エステル構造が存在しない炭酸エステル化PV
A誘導体は、重合度が200〜5000、比重(n−ヘ
キサンを媒体とする置換法にて測定)が1.20〜1.
40、ガラス転移温度(DSC法にて測定)が60〜9
0℃、融点(DSC法にて測定)が200〜240℃、
引張り降状点強度(ASTM D638に準拠して測
定)が100〜500kgf/cm2 、引張り破断強度
(ASTM D638に準拠して測定)が100〜70
0kgf/cm2、および引張り破断点伸度(ASTM
D638に準拠して測定)が50〜400%であるこ
とが好ましい。
【0054】一方、前記一般式(VII)で示される繰り返
し単位からなる架橋炭酸エステル構造を有する場合、炭
酸エステル化PVA誘導体は分子鎖間架橋をしており、
その重合度は無限大である。
【0055】また、本発明の製造方法により得られる炭
酸エステル化PVA誘導体の常温の水に対する溶解性に
ついてみると、下記数式(III)
【0056】
【数3】
【0057】で示される炭酸エステル化PVA誘導体の
炭酸エステル化度によって異なった性質を示す。すなわ
ち、炭酸エステル化PVA誘導体は、該炭酸エステル化
度が約13モル%程度までは水に可溶性であるのに対
し、約13〜35モル%の範囲では水に対して一部不溶
性となり膨潤するようになり、35モル%を越えるとほ
ぼ完全に不溶となる。
【0058】したがって、炭酸エステル化PVA誘導体
の用途として、前述したような繊維加工剤、紙加工剤、
乳化安定剤、接着剤、粘結剤、フィルムなど、水溶性ポ
リマーであるポリビニルアルコールとしての用途分野を
残すには、炭酸エステル化PVA誘導体は、少なくとも
水溶性であるべきであり、炭酸エステル化度が約13モ
ル%以下の変性率の低いものであることが好ましい。ま
た、炭酸エステル化PVA誘導体と相溶性のある前述し
たような他の熱硬化性樹脂や可塑剤との混合による塗
料、接着剤、バインダーなどへの応用を考慮する場合、
炭酸エステル化PVA誘導体は、そのポリビニルアルコ
ール構造に起因する残存水酸基と前記熱硬化性樹脂や可
塑剤との反応を考えれば、水溶性のもの、もしくは精々
水に膨潤するものに留めるべきであり、炭酸エステル化
度が35モル%以下のものであることが好ましい。これ
に対し、炭酸エステル化によりポリビニルアルコールを
大きく改質し、その極性カーボネート基(−OCOO
−)の有する優れた接着性や密着性を利用して、それ自
体で塗料、接着剤、バインダーなどへの応用を図る場合
には、炭酸エステル化PVA誘導体は、その炭酸エステ
ル化度が35モル%を越えるような変性率の高い、つま
り、水不溶性の領域にあるものであることが好ましい。
【0059】さらに本発明の製造方法により得られる炭
酸エステル化PVA誘導体は、その有機溶剤に対する溶
解性としては、次のような特性を有するものである。例
えば、ジメチルスルホキシドの場合、炭酸エステル化度
が65モル%以下では該溶剤に可溶であるが、約65モ
ル%を越える範囲では、前記一般式(VII)で示される繰
り返し単位からなる架橋炭酸エステル構造の生成、すな
わち、分子鎖間架橋結合の生成に起因するゲル化のため
か、該溶剤に対し部分溶解の状態となる。
【0060】一方、テトラヒドロフランに対しては、本
発明において所望される炭酸エステル化度の全ての領域
において不溶である。また、蟻酸の場合には、該溶剤に
対し、炭酸エステル化度が約10モル%以下では可溶で
あるが、約10〜約50モル%の範囲では膨潤状態とな
り、約50〜約65モル%の範囲では再び可溶となり、
そして約65モル%を越える範囲では、前記ジメチルス
ルホキシドの場合と同様に分子鎖間架橋結合の生成に起
因するゲル化のためか、部分溶解状態となるなど特異な
性質を示すものである。
【0061】さらにまた、本発明の製造方法により得ら
れる炭酸エステル化PVA誘導体の化学的性質として
は、蟻酸水溶液や塩酸水溶液などによって加水分解され
ないなど、酸に強いという特性を挙げることができる。
一方、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水溶液
によって加水分解を受けやすいなど、アルカリに対して
弱いという欠点を有するが、多塩基酸と多価アルコール
との重縮合によるエステル化反応によって得られ、塗料
や接着剤などへの用途を持つポリエステル樹脂よりは、
アルカリ加水分解に対して強いと言える。
【0062】以上述べたように本発明の製造方法は、水
溶性のものから水不溶性のものに至るまで、その使用目
的(用途)に応じて、種々の異なった物理的、化学的物
質を有する、炭酸エステル化PVA誘導体を得ることを
対象とするものである。
【0063】次に、本発明の炭酸エステル化PVA誘導
体の製造方法について述べる。本発明の方法において、
原料として用いられるポリビニルアルコールとは、ポリ
マー主鎖の反覆するビニル単量体、すなわち、−CH2
CH(OH)−構造単位を有する水溶性の、あるいは少
なくとも水分散性のポリマーを総称するものである。ポ
リビニルアルコールは、現在工業的には、専ら酢酸ビニ
ルの重合体を加水分解(ケン化)して製造されており、
このことからすれば、一般的にはポリ酢酸ビニルの加水
分解物(ケン化物)ということができる。そして、重合
度や加水分解の程度(ケン化度)を異にする数多くの銘
柄のものが市販されている。
【0064】本発明の方法においては、ポリビニルアル
コールとしての性質を示す範囲のものであれば特に制限
されるものではなく、市販されている全ての銘柄のもの
を使用できるが、平均重合度が200〜5000の範囲
であり、ケン化度が70〜100モル%のポリビニルア
ルコールを好適に使用することができる。また、形態は
粉末状のものが好適である。
【0065】したがって、本発明の方法において使用さ
れるポリビニルアルコールは、前記のビニルアルコール
単量体構造単位の繰り返しからなるポリビニルアルコー
ル構造と、前記一般式(V)に示される酢酸ビニル単量
体構造の繰り返しからなるポリ酢酸ビニル構造とからな
っており、下記一般式(IX)
【0066】
【化9】
【0067】(ただし式中、b0 は、ポリビニルアルコ
ール中における、ビニルアルコール単量体構造単位の繰
り返しからなるポリビニルアルコール構造のモル分率を
示し、0.7〜1.0の範囲の値である。また、式中の
cは、前記一般式(V)で示される繰り返し単位からな
る構造の、ポリビニルアルコール中におけるモル分率を
示し、0〜0.3の範囲の値である)で示される化学構
造を有するものである。
【0068】本発明の方法における上記ポリビニルアル
コールの炭酸エステル化反応に用いられるエステル化剤
としては、前記一般式(II)(ただし式中、R1 および
2は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基を
表わし、R1 とR2 は同一でも異なっていてもよい)で
示される炭酸ジアルキルである。具体的には、炭酸ジメ
チル、炭酸ジエチル、炭酸ジn−プロピル、炭酸ジイソ
プロピル、炭酸ジn−ブチル、炭酸ジイソブチル、炭酸
ジsec−ブチル、炭酸ジtert−ブチル、炭酸メチ
ル・エチル、炭酸メチル・n−プロピル、炭酸メチル・
イソプロピル、炭酸メチル・n−ブチル、炭酸メチル・
イソブチル、炭酸メチル・sec−ブチル、炭酸メチル
・tert−ブチル、炭酸エチル・n−プロピル、炭酸
エチル・イソプロピル、炭酸エチル・n−ブチル、炭酸
エチル・イソブチル、炭酸エチル・sec−ブチル、炭
酸エチル・tert−ブチル、炭酸n−プロピル・n−
ブチル、炭酸n−プロピル・イソブチル、炭酸n−プロ
ピル・sec−ブチル、炭酸n−プロピル・tert−
ブチル、炭酸イソプロピル・n−ブチル、炭酸イソプロ
ピル・イソブチル、炭酸イソプロピル・sec−ブチル
および炭酸イソプロピル・tert−ブチルなどを挙げ
ることができる。場合によっては、これらの混合物とし
て使用することも可能である。
【0069】本発明の方法においては、経済性の面や入
手の容易さなどを考慮すれば、上記の中でも、前記一般
式(II)におけるR1 とR2 が同一アルキル基である炭
酸ジアルキルが好ましく、具体的には、炭酸ジメチルや
炭酸ジエチルが好ましく、炭酸ジメチルが特に好まし
い。
【0070】前記炭酸ジアルキルは前記数式(III)で示
される炭酸エステル化度の所望値に相当する量使用する
ことが必要である。すなわち、前述したように、この炭
酸エステル化度は1モル%以上、かつ、Floryの理
論に基づく理論的最高エステル化度である81.6モル
%以下のものが可能であるが、本発明の目的には、1〜
70モル%のものが好適であり、ポリビニルアルコール
の性質を残存しているものからポリビニルアルコールの
性質を大きく改質したものに至るまで、得られる炭酸エ
ステル化PVA誘導体の各種用途に応じて前記炭酸エス
テル化度を選ぶことができ、該炭酸エステル化度に応じ
て、相当する量の前記炭酸ジアルキルを使用すればよ
い。
【0071】具体的には、前記炭酸ジアルキルをポリビ
ニルアルコールに対して0.1〜20倍モル量、好まし
くは0.1〜10倍モル量使用することが好ましい。該
使用量が0.1倍モル量より少ないと、ポリビニルアル
コールの炭酸エステル化反応はほとんど進行しないの
で、前記炭酸エステル化度を少なくとも1モル%以上に
することができず、ポリビニルアルコールの性質が改善
された、目的とする炭酸エステル化PVA誘導体を効率
よく得ることができず、好ましくない。また、該使用量
が20倍モル量より多いと、前記炭酸エステル化度の向
上はほとんど望めなくなるので採算上好ましくなく、ま
た、炭酸エステル化反応に際して、ゲルの生成が著しく
なり、均一系反応を行うことが困難となるので、反応系
の安定度が低下する恐れがあり好ましくない。この炭酸
エステル化反応時の著しいゲルの生成は、前記炭酸エス
テル化度の上昇に伴い、得られる炭酸エステル化PVA
誘導体中において、前記一般式(III)で示される繰り返
し単位からなる環状炭酸エステル構造の組成割合が多く
なる一方、この環状炭酸エステル構造の間に孤立したモ
ノエステルが反応部位を失い、その結果として前記一般
式(VII)で示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エス
テル構造の生成に基づく分子鎖間架橋結合の生成が著し
くなることの他、前記炭酸ジアルキルの使用量が増大す
ることによって後述する反応溶媒へのポリビニルアルコ
ールの溶解性を低下させるなどの理由によるものと思わ
れる。
【0072】さらに、前記炭酸ジアルキルの使用量が1
0〜20倍モル量の範囲では、前記炭酸エステル化度の
向上が望めなくなる傾向にあるとともに、前記炭酸エス
テル化反応に際して、前記架橋炭酸エステル構造による
分子鎖間架橋結合の生成や、後述する反応溶媒へのポリ
ビニルアルコールの溶解性の低下などに起因するゲル化
のために、反応系の安定度の低下が起こることがある。
【0073】なお、ポリビニルアルコールの使用量に対
する前記炭酸ジアルキルの使用量が増す程、上述したよ
うな理由により、炭酸エステル化反応時の反応系のゲル
化は起こりやすくなるが、前記炭酸ジアルキルのどの程
度の使用量においてゲル化が起こり得るかは、使用され
る溶媒や触媒の種類と量、反応温度、反応時間など炭酸
エステル化反応条件の違いによって異なっており、一概
に言うことはできないが、いずれにしても、望ましくな
い反応系のゲル化を極力抑えるよう、炭酸エステル化反
応を制御すべきである。例えば、ポリビニルアルコール
のジメチルスルホキシド溶媒中での炭酸エステル化反応
では、反応系のゲル化が起こらないように、前記炭酸ジ
アルキルの使用量は、ポリビニルアルコールに対して5
倍モル量以下にする方が好ましい。
【0074】本発明の方法における反応溶媒としては、
前記ポリビニルアルコールを溶解もしくは膨潤する作用
を有し、かつ、前記炭酸ジアルキルと反応性を有しない
ものが用いられ得る。すなわち、水、非プロトン性極性
溶媒および水−非プロトン性極性溶媒混合溶液からなる
群より選ばれる少なくとも1種以上の反応溶媒が用いら
れ得る。
【0075】この非プロトン性極性溶媒としては、ホル
ムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)およびヘキ
サメチルホスフォリックアミド(HMPA)などのアミ
ド化合物、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メ
チル−2−ピロリドン(NMP)などを好適に挙げるこ
とができるが、これらの中でもDMSO、DMAC、N
MPなどの使用が好ましく、DMSOの使用が特に好ま
しい。
【0076】さらに本発明の方法においては、上記の
水、非プロトン性極性溶媒および水−非プロトン性極性
溶媒混合溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種以
上の反応溶媒と均一相を形成し、かつ、前記炭酸ジアル
キルと反応性を有しない有機溶剤とこれら反応溶媒との
混合物も使用することができる。該有機溶剤としては、
n−ヘキサン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素
類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケ
トンなどのケトン類、ジクロロメタン、ジクロロエタン
などのハロゲン化炭化水素類、エーテル類、ジオキサン
およびテトラヒドロフランなどが具体的に挙げられる。
【0077】反応溶媒の使用量は、前記ポリビニルアル
コールを溶解もしくは膨潤するに足る量以上であればよ
く、使用される反応溶媒の種類は勿論のこと、前記ポリ
ビニルアルコールの仕込み量、前記炭酸ジアルキルの種
類と使用量、触媒の種類と使用量、反応温度、反応時間
などの炭酸エステル化反応条件、さらには、該炭酸エス
テル化反応に際して、前記ポリビニルアルコールを反応
溶媒中に溶解するのか、それとも反応溶媒で膨潤するの
かにより異なるので、一概に規定することは困難であ
る。
【0078】したがって、例えば、前記反応溶媒として
DMSOを使用する場合、反応溶媒(DMSO)の使用
量は、前記ポリビニルアルコールの1〜60倍量(容量
比)が好適である。該使用量が1倍量未満では、前記ポ
リビニルアルコールの該DMSO溶媒への溶解が十分で
はなく、反応が不均一系で進行するようになるので、均
一な炭酸エステル化が困難となり、得られる炭酸エステ
ル化PVA誘導体の品質にばらつきが生じるなど好まし
くない。一方、60倍量を越えるDMSO溶媒を使用し
ても、前記ポリビニルアルコールを溶解して前記炭酸ジ
アルキルによる炭酸エステル化反応を均一系で進行せし
めるという反応溶媒の効果は既に達成されてしまってい
るので、それ以上の効果は期待できないばかりか、後述
するような方法でのDMSO溶媒の反応系からの回収に
必要以上のエネルギーを消費するなど、採算上好ましく
ない。
【0079】なお、本発明の方法においては、前述した
ように、水溶性のものから水不溶性のものに至るまで、
その使用目的(用途)に応じて、種々の異なった物理
的、化学的物質を有する炭酸エステル化PVA誘導体を
対象とするものであるから、上記反応溶媒の選定に際し
ては、得られる炭酸エステル化PVA誘導体の用途に応
じて、言い換えれば、前記炭酸エステル化度の目標値を
どこに置いて前記炭酸エステル化反応を行うのかによっ
て、適切な反応溶媒を選ぶべきである。
【0080】本発明の方法において、前記ポリビニルア
ルコールの前記炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反
応には、アルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジ
アザビシクロアルケン類、第3級アミン、アルキルアン
モニウム基もしくは第3級アミノ基を含有するイオン交
換樹脂、およびアルカリ性触媒からなる群より選ばれる
塩基触媒であるエステル化反応触媒が使用され得る。該
触媒は、下記式(X)に示されるようなポリビニルアル
コールの炭酸エステル化反応を促進する作用を有するも
のである。
【0081】
【化10】
【0082】本発明の方法におけるエステル化反応触媒
としてのアルキルアンモニウム塩は、下記一般式(XI)
で表わされる化合物である。
【0083】
【化11】
【0084】(式中、R3 〜R6 は、互いに同一でも異
なっていてもよい水素原子、ヒドロキシアルキル基、ア
ルキル基、アリール基、あるいはアルアルキル基を表わ
し、これらがアルキル基もしくはアルアルキル基である
場合は、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状または環状の
炭化水素基である。また、Xは、ハロゲン原子、水酸
基、アルコキシド、炭酸基、重炭酸基、リン酸二水素基
および重硫酸基からなる群より選ばれる1価の陰イオン
を表わす。)
【0085】そして、上記のアルキルアンモニウム塩や
前記のピリジニウム塩の具体例として、テトラn−ブチ
ルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラn−ブ
チルアンモニウムブロマイド(TBAB)およびテトラ
n−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)、テ
トラn−ブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)
などのテトラブチルアンモニウムハライド(TBA
X)、トリn−ブチルアミン塩酸塩、リン酸二水素テト
ラn−ブチルアンモニウム、トリメチルアンモニウムア
イオダイド、トリメチルアミン塩酸塩、トリメチルベン
ジルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニ
ウムブロマイド、テトラn−ブチルアンモニウムハイド
ロオキサイド、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウ
ム、ピリジニウムメチルアイオダイド、ピリジン塩酸
塩、トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウムクロ
ライドおよびこれらの2種以上の混合物などを挙げるこ
とができる。また、前記ジアザビシクロアルケン類とし
ては、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕7ーウン
デセン(DBU)などを好適に挙げることができる。
【0086】前記第3級アミンとしては、1個の電子対
を有しかつ脂肪族炭化水素置換基および/または芳香族
炭化水素置換基を有する全てのアミンを挙げることがで
き、特に、下記一般式(XII)によって示される第3級ア
ミンが好ましい。
【0087】
【化12】
【0088】(式中、R7 〜R9 は、互いに同一でも異
なっていてもよい炭素数1〜30の直鎖状、分岐状また
は環状のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリール
基、あるいはアルアルキル基を表わす。)
【0089】具体的には、トリエチルアミン、トリn−
プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、メチルジエチ
ルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピ
リジン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−
ジエチルプロパノールアミンおよびこれらの2種以上の
混合物を挙げることができる。また、本発明の方法にお
いてエステル化反応触媒として使用され得る前記のイオ
ン交換樹脂としては、活性基としてアルキルアンモニウ
ム基もしくは第3級アミノ基を含有する強塩基性および
弱塩基性陰イオン交換樹脂触媒である。強塩基性陰イオ
ン交換樹脂触媒としての代表例は、クロロメチル化され
たスチレン/ジビニルベンゼン共重合体と、トリメチル
アミンまたはN,N−ジメチルエタノールアミンなどか
ら選ばれる第3級アミンとの反応により製造され得るス
チレン/ジビニルベンゼン共重合体の第4級アンモニウ
ム塩誘導体であり、具体的には、ローム・アンド・ハー
ス社製のアンバーライトIRA−400(Cl)やアン
バーライトIRA−400(OH)、ダウ・ケミカル社
製のダウエックス1X2−100などの陰イオン交換樹
脂が好適に挙げられる。一方、弱塩基性陰イオン交換樹
脂としては、クロロメチル化ポリスチレンのアミン誘導
体、エピクロルヒドリンと第2級もしくは第3級アミン
との重縮合生成物、フェノールとホルムアルデヒドとの
アミノ化重縮合生成物などを代表例として挙げることが
でき、具体的には、ローム・アンド・ハース社製のアン
バーライトIRA−93やデュオライトA−75などの
陰イオン交換樹脂が好適に挙げられる。
【0090】さらにまた、本発明で使用される前記アル
カリ性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウ
ム、水素化ナトリウム、金属ナトリウム、カリウムアミ
ド、ナトリウムアミド、カリウムメチラートやカリウム
エチラートなどのカリウムアルコラート(特にカリウム
メチラート)、ナトリウムメチラートやナトリウムエチ
ラートなどのナトリウムアルコラート(特にナトリウム
メチラート)などを具体的に挙げることができる。
【0091】本発明の方法では、上述したようなエステ
ル化反応触媒の中でも、TBAC、TBABおよひTB
AIなどのTBAX、DBU、トリエチルアミン、トリ
n−プロピルアミン、トリn−ブチルアミンなどの使用
が好ましい。そして、第4級アンモニウム塩のTBAX
が使用される場合、TBAI<TBAB<TBACの順
でハロゲンの電気陰性度の増大とともに、すなわち、第
4級アンモニウム塩の解離が起こりやすくなる程、炭酸
エステル化PVA誘導体の収量や前記数式(III)で示さ
れる炭酸エステル化度が増加するので、この点からすれ
ば、これらTBAXの中でもTBAC>TBAB>TB
AIの順での使用が好ましいと言える。
【0092】なお、第4級アンモニウム塩のTBAXの
一つであるTBAFは、これら第4級アンモニウム塩中
最も高い電気陰性度を示すものであるが、DBUなどの
場合と同様、強塩基であり触媒が強すぎるために炭酸エ
ステル化反応を促進する以上に得られる炭酸エステル化
PVA誘導体の分解が生じていると考えられ、他の第4
級アンモニウム塩に比べて炭酸エステル化PVA誘導体
の収量が減少するとともに、前記一般式(VI)で示され
る繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル構造をかなり
多く持つ炭酸エステル化PVA誘導体となるのである。
そして、この炭酸エステル化PVA誘導体の分解は、エ
ステル化反応触媒としてTBACを使用した場合にも見
られ、この場合においても、エステル化反応触媒として
TBABやTBAIを使用した場合に比べ、得られる炭
酸エステル化PVA誘導体中の、前記一般式(VI)で示
される繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル構造の組
成割合が多くなるものと思われる。
【0093】以上のことからして、上記TBAXの中で
は、TBABの使用が最も好ましい。
【0094】以上述べたように、前記ポリビニルアルコ
ールの前記炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反応に
は各種の塩基触媒が使用され得るが、本発明の方法にお
いて、これらエステル化反応触媒は必須のものではな
い。すなわち、前記炭酸エステル化反応は、エステル化
反応触媒の不存在下でも進行する。この場合、該反応を
例えばDMSOのような非プロトン性極性溶媒の存在下
に行うと、下記一般式(XIII)
【0095】
【化13】
【0096】(ただし式中、R1 およびR2 は、それぞ
れ、前記一般式(II)におけるR1 およびR2 と同じ意
味を表わす)に示されるような反応が進行するものと思
われ、前記一般式(VI)で示される繰り返し単位からな
るモノ炭酸エステル構造に富んだ炭酸エステル化PVA
誘導体が得られる。したがって、前記炭酸エステル化反
応に必要とされる上述のエステル化反応触媒の量は、前
記ポリビニルアルコールの仕込み量、前記炭酸ジアルキ
ルの種類および使用量、反応溶媒の種類および使用量、
反応温度、反応圧力、反応時間、炭酸エステル化度の目
標値などの炭酸エステル化反応条件などによって異な
り、一概に限定できないが、本発明の方法におけるエス
テル化反応触媒の使用量は、前記のイオン交換樹脂触媒
を使用した場合は、前記ポリビニルアルコールに対して
50重量%以下、好ましくは30重量%以下、そして、
それ以外の触媒を使用した場合は、前記ポリビニルアル
コールに対して25モル%以下、好ましくは10モル%
以下が好適である。エステル化反応触媒の使用量を前記
ポリビニルアルコールに対して50重量%もしくは25
モル%より多くしても、該触媒を多量に用いることによ
る好ましい効果の向上はほとんど認められないので、経
済性の面からは好ましくない。
【0097】本発明の製造方法における炭酸エステル化
反応は、溶液中にて均一系で進行させる必要がある。す
なわち、前記ポリビニルアルコールを前記反応溶媒中に
溶解した状態で、あるいは、前記ポリビニルアルコール
を前記反応溶媒で膨潤させた状態で前記炭酸エステル化
反応を行う必要があり、そのためには、前記炭酸エステ
ル化反応の進行中、前記反応溶媒を液体状態に維持すべ
きである。したがって、反応温度は、少なくとも前記反
応溶媒の融点以上、かつ、前記反応溶媒の沸点以下の範
囲の温度であることが好ましい。
【0098】ところで、本発明の製造方法では、下記反
応式(XIV)
【0099】
【化14】
【0100】(ただし式中、R1 およびR2 は、それぞ
れ、前記一般式(II)におけるR1 およびR2 と同じ意
味を表わす)に示されるように、前記ポリビニルアルコ
ールと炭酸ジアルキルとの炭酸エステル化反応時に、反
応溶液中にアルコールが副生する。副生するアルコール
としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−
プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブ
チルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチ
ルアルコールおよびtert−ブチルアルコールなどで
あり、用いられる前記炭酸ジアルキルの種類によって異
なる。
【0101】この副生アルコールは、前記炭酸エステル
化反応の進行と共に生成する前記炭酸エステル化PVA
誘導体において、ポリマー分子間での架橋エステル化反
応を促進させるものと推測される。その結果として、前
記炭酸エステル化PVA誘導体中の前記一般式(VII)で
示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エステル構造の
組成割合が多くなり、反応溶液中にゲルの生成が著しく
なって均一系での前記炭酸エステル化反応を行うことが
困難となり、反応系の安定度が低下する恐れがある。
【0102】そこで、本発明の方法では、蒸留下に前記
炭酸エステル化反応を行い、上記副生アルコールを積極
的に反応系外に除去することが好ましい。そのために
は、前記炭酸エステル化反応を少なくとも上記副生アル
コールの沸点以上の温度で行う必要がある。さらに、前
記炭酸エステル化反応に際し、反応温度が200℃を越
えると、望ましくない原料ポリビニルアルコールの熱分
解反応を併発するようになるので好ましくない。
【0103】以上のことから、本発明の炭酸エステル化
反応における反応温度は、前記炭酸エステル化反応によ
り副生するアルコールの沸点以上、かつ、前記反応溶媒
の沸点もしくは200℃のいずれか低い方の温度以下の
範囲であるべきであり、好ましくは50〜180℃であ
ることが望ましい。
【0104】本発明の製造方法における炭酸エステル化
反応において、反応圧力は特に制限されるものではな
く、減圧、常圧および加圧のいずれの場合においても実
施可能である。しかし、加圧の場合は、製造設備に耐圧
性能が要求されるし、また、減圧の場合には、減圧設備
が必要になるなど、経済性の面からは常圧で実施するの
が好ましい。
【0105】なお、前記炭酸エステル化反応は、高温で
ある程反応速度が速いので、得られる炭酸エステル化P
VA誘導体の収量や炭酸エステル化度を高める必要があ
る場合、反応温度は、前述の範囲内でできるだけ高温に
した方がよい。しかしながら、前記炭酸エステル化反応
の反応時の温度が高すぎると、反応が不均一になり、得
られる炭酸エステル化PVA誘導体の溶融性、透明性、
機械的性質などの品質に悪影響が生じたり、使用する炭
酸ジアルキルや反応溶媒が熱的に不安定となったりする
恐れがある。したがって、このような場合は、反応系を
減圧にして、前記反応温度を低めに維持することが好ま
しい。
【0106】反応時間も、前記ポリビニルアルコールの
仕込み量、前記炭酸ジアルキルの種類および使用量、前
記反応溶媒の種類および使用量、反応温度、炭酸エステ
ル化度の目標値などの前記炭酸エステル化条件によって
異なるが、5分〜50時間程度、好ましくは10分〜3
0時間程度が好適である。約5分より短いと、前記ポリ
ビニルアルコールの炭酸エステル化反応が十分進行せ
ず、炭酸エステル化PVA誘導体が目標とする収量およ
び炭酸エステル化度でもって得られないし、また、約5
0時間より長くなると、それ以上の炭酸エステル化度の
向上が望めないばかりか、前記一般式(VII)で示される
繰り返し単位からなる架橋炭酸エステル構造の生成によ
る分子鎖間架橋結合の生成が著しくなって、本発明の方
法にとって望ましくない反応系のゲル化が促進するし、
得られる炭酸エステル化PVA誘導体が長時間の熱履歴
を受けて、熱劣化による品質の低下を招く恐れがあるな
ど、いずれの場合も好ましくない。
【0107】本発明の方法における炭酸エステル化反応
は、攪拌機による機械的攪拌などの適当な方法によって
攪拌しながら行うことが好ましい。また、本発明の方法
における炭酸エステル化反応は、得られる炭酸エステル
化PVA誘導体の望ましくない加水分解や酸化を防止す
るために、不活性ガス雰囲気下に行われることが好まし
い。不活性ガスとしては、窒素ガスの他、アルゴンガ
ス、ヘリウムガスなどの希ガスが好適に使用され得る。
【0108】そして、本発明では、前記ポリビニルアル
コールの炭酸エステル化による炭酸エステル化PVA誘
導体の製造方法は、特に限定されるものではなく、常法
にしたがって行えばよく、バッチ式または連続式のいず
れにおいても実施することができる。例えば、所定量の
前記反応溶媒に所定量の前記ポリビニルアルコールを溶
解もしくは膨潤した後、攪拌機および加熱装置などを備
えた適当な反応装置に供給するとともに、所定量の前記
炭酸ジアルキルおよびエステル化反応触媒をそれぞれ添
加し、常圧、あるいは、所定の減圧または加圧下に、攪
拌しながら所定温度に加熱し、所定時間炭酸エステル化
反応を行えばよい。そして、該反応の進行とともに副生
するアルコールが前記炭酸ジアルキルと、場合によって
はさらに前記反応溶媒と共沸混合物を形成して、上記反
応装置の頂部に設けられた蒸気留出口から留出してくる
ので、これらを適当な冷却装置で冷却した後、共沸蒸留
や抽出蒸留などの公知の方法(例えば、特開平4−27
0249号公報に開示されたような方法)により前記副
生アルコールを蒸留除去せしめ、前記炭酸ジアルキル、
場合によってはさらに前記反応溶媒を回収し、前記反応
装置に戻せばよい。なお、前記炭酸エステル化反応に際
し、前記炭酸ジアルキルは、所定量を一度に加えられる
ことなく、適宜量に分割されて加えられることも可能で
ある。また、前記エステル化反応触媒も、反応系に所要
量を一度に添加してもよく、または、適当な回数に分割
して添加してもよい。
【0109】さらに、本発明の方法では、前記炭酸エス
テル化反応時における前記架橋炭酸エステル構造に基づ
く、分子鎖間架橋結合の生成を防ぐために、前記炭酸エ
ステル化反応に際し、原料ポリビニルアルコールの重合
度の選定や、前述した反応温度や反応時間などの範囲内
での可及的に穏やかな炭酸エステル化反応条件の選定な
どの配慮も必要である。
【0110】本発明の方法では、続いて、以上のように
して得られた反応液を沈澱溶媒中に加えて、適当な期間
(例えば、一昼夜程度)放置することにより、前記一般
式(VIII)に示される化学構造を有する炭酸エステル化
PVA誘導体の沈澱物が得られるのである。前記沈澱溶
媒としては、該炭酸エステル化PVA誘導体に対する貧
溶媒であればよく、1〜4個の炭素原子を有する常温で
液体のアルコール、例えば、メチルアルコール、エチル
アルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルア
ルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコー
ルおよびsec−ブチルアルコールなどが挙げられる。
これらの中でもメチルアルコールおよびエチルアルコー
ルが好ましく、エチルアルコールが特に好ましい。前記
沈澱溶媒の使用量は、前記反応液の量の1〜20倍量
(容量比)が好適である。該使用量が1倍量より少ない
と、前記反応液からの炭酸エステル化PVA誘導体の沈
澱が十分に行われず好ましくない。また、該使用量が2
0倍量より多いと、前記沈澱溶媒の更なる効果が期待で
きないのは勿論のこと、前記沈澱溶媒の回収に必要以上
のエネルギーを消費し、経済上好ましくないなどの問題
がある。
【0111】なお、本発明の方法では、前述のポリビニ
ルアルコールの炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反
応に際して、前記のイオン交換樹脂触媒など、固体状の
触媒を存在させる場合は、前記沈澱溶媒中への前記反応
液の添加に先立って、濾過、遠心分離、その他公知の方
法により、前記反応液から固形分を分離する必要があ
る。
【0112】そこで、前記炭酸エステル化PVA誘導体
の沈澱物を含む反応混合物は、半透膜による分離、濾
過、遠心分離などの公知の方法により、固形分を分離す
る。そして、前記固形分は、前記沈澱溶媒として用いた
ものと同種の溶媒、例えばエチルアルコールで洗浄後、
さらに前記沈澱溶媒として用いたものと同種の溶媒、例
えばエチルアルコールを抽出溶剤として、ソックスレー
抽出など公知の方法により抽出処理して、抽残物である
炭酸エステル化PVA誘導体から残留反応溶媒などの不
純物を除去精製するのである。そして、得られた抽残物
を熱風乾燥、真空乾燥および凍結乾燥などの公知の方法
により100℃以下の温度で乾燥することによって、前
述したような各種特性を持ち、かつ、前記一般式(VII
I)に示されるような化学構造を有する本発明の炭酸エ
ステル化PVA誘導体が得られるのである。
【0113】なお、上述では、後述する濾液からの前記
沈澱溶媒の回収・再使用を容易に行えるように、前記炭
酸エステル化PVA誘導体の沈澱物を含む反応混合物か
ら分離された固形分の洗浄処理を前記沈澱溶媒として用
いたものと同種の溶媒、例えばエチルアルコールで行う
としているが、これに限定されるものではない。濾液か
らの前記沈澱溶媒の回収・再使用を考慮しなければ、例
えば水を用いることも可能であることは言うまでもな
い。
【0114】ところで、本発明の方法では、前記炭酸エ
ステル化反応によって得られる炭酸エステル化PVA誘
導体中の、前記一般式(VI)で示される繰り返し単位か
らなるモノ炭酸エステル構造の組成割合が多くなると、
前述した炭酸エステル化PVA誘導体の沈澱溶媒、例え
ばエチルアルコール中への投入の際に、該モノ炭酸エス
テル構造中のアルコキシ基がエチルアルコールに対し親
和性を示し、炭酸エステル化PVA誘導体が可溶性とな
るためか、炭酸エステル化PVA誘導体の沈澱が生成し
にくくなる。
【0115】そこで、本発明の方法では、前記炭酸エス
テル化PVA誘導体の沈澱物を含む反応混合物の半透膜
による分離、濾過、遠心分離などによる固形分(ポリマ
ー生成物)の分離・回収に際しては、得られた濾液を回
収し、蒸発缶やロータリーエバポレーターなどにより、
濾液中の前記エチルアルコールや前記反応溶媒を蒸発・
濃縮することで除去せしめ、濾液中に溶解している炭酸
エステル化PVA誘導体を析出させ、次いで、この析出
物の分離・回収、少量の溶媒による洗浄および乾燥を前
述と同様の方法で行うことにより、前記反応液の前記沈
澱溶媒中への添加によって沈澱しない炭酸エステル化P
VA誘導体を回収することが望ましい。
【0116】そして、上記濾液からのポリマー生成物の
回収に際して濾液から蒸発せしめた溶媒や、濾液の濃縮
によって得られたポリマー生成物の沈澱の分離・回収に
際して得られた濾液には、未反応のポリビニルアルコー
ルや炭酸ジアルキル、反応溶媒、エステル化反応触媒お
よび沈澱溶媒などが含まれており、これらは、必要に応
じて回収後、蒸留、液体クロマトグラフィーなどのカラ
ムクロマトグラフィー、再結晶、選択的溶剤抽出、特開
平5−125021号公報や特開平6−157407号
公報などに開示されている選択透過膜を利用した浸透気
化法や蒸気透過法など、公知の分離操作法を単独で用い
るか、あるいは、適当に組み合わせて用いることによ
り、前記各物質を単離して再使用に供されるのである。
【0117】
【実施例】次に、実施例および比較例を述べて本発明の
方法をさらに詳しく説明するが、本発明の方法は、これ
ら実施例および比較例によって何ら限定を受けるもので
はない。なお、以下の実施例および比較例において、炭
酸エステル化PVA誘導体およびその成形品の特性は、
下記の方法によって求めた。
【0118】(1)炭酸エステル化PVA誘導体の炭酸
エステル化度 炭酸エステル化PVA誘導体の試料100mgを、60
℃で2時間以上減圧乾燥を行い、十分に水分を除いた
後、置換秤量法により精秤した。これを容量200ml
の共栓付き三角フラスコに入れ、0.5N水酸化ナトリ
ウム(NaOH)溶液〔市販品(容量分析用)〕30m
lを加えて、常温で一昼夜加水分解させた。この時、ほ
とんどの炭酸エステル化PVA誘導体試料が溶解し、該
試料中の、前記一般式(III)で示される繰り返し単位か
らなる環状炭酸エステル構造、前記一般式(VI)で示さ
れる繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル構造、およ
び、前記一般式(VII)で示される繰り返し単位からなる
架橋炭酸エステル構造のエステル部位の全てが加水分解
された。また、炭酸エステル化PVA誘導体試料を全く
入れない系もブランクとして上述と同様の操作を行っ
た。
【0119】その後、これらをホットプレート上で70
℃において4時間加熱し、常温で放冷させた後、イオン
交換水50mlを加え、攪拌しながら0.5N塩酸(H
Cl)溶液〔市販品(容量分析用)〕によって滴定し
た。なお、この滴定には自動滴定装置(三菱化学(株)
製、GT−05型)を使用した。そして、塩酸による酸
塩基滴定により、過剰のアルカリによる中和点(A
点)、炭酸ナトリウムによる中和点(B点)および炭酸
水素ナトリウムによる中和点(C点)の3種類の変曲点
を求め、この滴定結果より、炭酸エステル化PVA誘導
体試料の加水分解に消費されたアルカリの消費量を求め
て、下記数式(IV)により炭酸エステル化PVA誘導体
の炭酸エステル化度を計算した。
【0120】
【数4】
【0121】(2)炭酸エステル化PVA誘導体の赤外
線吸収スペクトル(IR) 日本分光(株)製FT−8000型フーリエ赤外分光光
度計を用いて、下記方法により測定した。 (KBr錠剤法)炭酸エステル化PVA誘導体試料1m
gをKBr(Merck社製)150mgに混合し、6
0℃で2時間以上減圧乾燥し水分を除去した後、加圧錠
剤を成形して測定した。 (フィルム法)60℃で2時間以上減圧乾燥し水分を除
いた炭酸エステル化PVA誘導体試料を、約5重量%濃
度になるように蟻酸(市販特級品、純度:約99重量
%)に溶解し、プラスチックシャーレ上でゆるやかに乾
燥させてフィルムを作製し測定した。 (液膜法)アルカリ塩の窓板としてNaClを用いた。
微量の炭酸エステル化PVA誘導体の液体試料をNaC
l板上にキャストして測定した。
【0122】(3)炭酸エステル化PVA誘導体の比重 ザルトリウス(株)製MC−1電子天秤を用い、n−ヘ
キサンを媒体とする置換法により測定した。
【0123】(4)炭酸エステル化PVA誘導体のガラ
ス転移温度および融点 示差走査熱量計((株)島津製作所製DSC−50型)
を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定した。
【0124】(5)成形品の引張り特性 インテスコ(株)製モデル2005引張り試験機を使用
して測定した。炭酸エステル化PVA誘導体の乾燥試料
(炭酸エステル化PVA誘導体を60℃で2時間以上減
圧乾燥し水分を除去したもの)を成形後、23℃、相対
湿度50%(以下「50%RH」と略記)で48時間状
態調節をした。そして、得られた試験片の降状点強度、
破断点強度および破断点伸度の測定を、ASTM D
638に準拠し、23℃、50%RHにおいて行った。
【0125】実施例1 (ポリビニルアルコール/ジメチルスルホキシド溶液の
調製)60℃で3時間以上減圧乾燥したポリビニルアル
コール粉末(日本合成化学工業(株)製、銘柄:NH−
18、平均重合度:1800、ケン化度:98.3モル
%)1.0g(ポリビニルアルコール構造単位成分:
0.0223モル)を精秤し、これを容量100mlの
三角フラスコに入れた。これに30mlのジメチルスル
ホキシド(市販特級品)を加え、80℃で5時間(また
は、ポリビニルアルコール粉末が完全に溶解するまで)
加熱して溶解させた後、一昼夜以上静置して前記ポリビ
ニルアルコール粉末を完全に前記ジメチルスルホキシド
に溶解させ、ポリビニルアルコール/ジメチルスルホキ
シド溶液を調製した。
【0126】(ポリビニルアルコールの炭酸エステル化
反応)次に、上記のように調製したポリビニルアルコー
ル/ジメチルスルホキシド溶液(以下、単に「溶液」と
略記)を容量200mlの三口フラスコに移し、各口に
攪拌機、温度計およびト字型分留管をそれぞれセットし
た。この溶液は、時間の経過と共に溶液の下層部と上層
部で濃度差を生じる傾向があるので、溶液を完全に均一
な状態にするために、反応に先立って、この溶液を80
℃で1時間加熱・攪拌した。
【0127】そこで、この溶液に、触媒としてのテトラ
n−ブチルアンモニウムブロマイド(市販特級品、以下
「TBAB」と略記)63mg(1.96×10-4
ル)と炭酸ジメチル(宇部興産(株)製、純度:99.
0重量%以上)2.4ml(2.568g、0.028
5モル)とを加えた後、反応系全体が60mlとなるよ
う、前記ジメチルスルホキシド27.6ml(ジメチル
スルホキシドの添加量は合計で57.6ml)をさらに
加えた。ここで、この溶液に前記炭酸ジメチルを加えた
時、一部ポリマーが析出してくるので、反応前にこれを
完全に溶解するまで最低30分間攪拌機で攪拌した。
【0128】続いて、攪拌機で攪拌を続けながらオイル
バス中で120℃まで昇温し、この温度で常圧下に6時
間保持して、副生するメチルアルコールを留去しなが
ら、ポリビニルアルコールの炭酸エステル化反応を行っ
た。
【0129】ポリビニルアルコールの炭酸エステル化反
応は均一系で進行し、また、反応中、ゲル状物の発生も
見られなかった。上記所定時間経過後、反応溶液を純度
99容量%のエチルアルコール(市販品)500ml中
に投入し、ポリマー生成物を沈澱させ、一夜静置した後
に、遠心分離にかけて分離・回収した。回収したポリマ
ー生成物は、さらに、各回500mlの前記エチルアル
コールで3回洗浄した。
【0130】次に、このポリマー生成物を前記エチルア
ルコール500mlを抽出溶剤として用い、ソックスレ
ー抽出器で3日間抽出処理して、精製した。一方、前記
遠心分離で得られた濾液は、回収後、ロータリーエバポ
レーターにより前記沈澱溶媒のエチルアルコールおよび
前記反応溶媒のジメチルスルホキシドを濃縮除去し、前
記エチルアルコール中への投入によって沈澱しないポリ
マー生成物を得たので、これを少量の前記エチルアルコ
ールで洗浄処理した。
【0131】そこで、前記遠心分離により分離・回収さ
れたポリマー生成物と前記ロータリーエバポレーターに
よる溶媒の濃縮除去により回収されたポリマー生成物を
一緒にし、これらポリマー生成物に付着しているエチル
アルコールをジオキサンに置換して凍結乾燥を行い、粉
末のポリマー生成物、すなわち、炭酸エステル化PVA
誘導体を得た。該炭酸エステル化PVA誘導体の収量は
1.221gであり、また、0.5NNaOH溶液加水
分解法により求めた炭酸エステル化度(E)は52.5
7モル%であった。
【0132】そして、上記の得られた炭酸エステル化P
VA誘導体の化学構造を決定するために、原料のポリビ
ニルアルコールと比較して赤外線吸収スペクトル(IR
スペクトル)測定を行った。得られた炭酸エステル化P
VA誘導体のIRスペクトルを原料ポリビニルアルコー
ルのそれと比較して図1に、そしてスペクトルの帰属を
表1に、それぞれ示す。
【0133】
【表1】
【0134】この結果により、1740cm-1および1
219cm-1に強い炭酸エステルによるC=OおよびC
−Oの伸縮振動による吸収が確認でき、また、770c
-1と870cm-1には環状炭酸エステルによる吸収を
確認することができた。このことから、得られた炭酸エ
ステル化PVA誘導体中に環状炭酸エステル構造の存在
を確認することができた。
【0135】さらに、2858cm-1にメトキシ基によ
るC−Hの伸縮振動による吸収と、790cm-1にモノ
炭酸エステルによる吸収が存在することから、また、8
89cm-1に架橋炭酸エステルによる対称環伸縮振動の
弱い吸収が存在することから、得られた炭酸エステル化
PVA誘導体中にモノ炭酸エステル構造および架橋炭酸
エステル構造の存在も確認できた。
【0136】実施例2 炭酸ジメチルの使用量を2.4ml(2.568g、
0.0285モル)に変えて10ml(10.7g、
0.119モル)にしたこと、および、ジメチルスルホ
キシドの合計使用量を57.6mlに変えて50mlに
したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0137】反応中、反応液にゲルの発生は認められな
かった。そして、実施例1と同様の精製処理によって得
られた白色粉末状の炭酸エステル化PVA誘導体の収量
および0.5NNaOH溶液加水分解法により求められ
た炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、1.263g
および62.41モル%であった。そこで、上記の得ら
れた炭酸エステル化PVA誘導体の化学構造を決定する
ために、IRスペクトル測定を行った。得られた炭酸エ
ステル化PVA誘導体のIRスペクトルを図2に、そし
て、スペクトルの帰属を前記表1に、それぞれ示す。
【0138】この結果から、前記実施例1の場合と同様
に、1740cm-1および1219cm-1に強い炭酸エ
ステルによるC=OおよびC−Oの伸縮振動による吸収
が確認でき、また、770cm-1と870cm-1には環
状炭酸エステルによる吸収を確認することができた。こ
のことから、得られた炭酸エステル化PVA誘導体中に
環状炭酸エステル構造の存在を確認することができた。
【0139】さらに、2858cm-1にメトキシ基によ
るC−Hの伸縮振動による吸収と、790cm-1にモノ
炭酸エステルによる吸収が存在することから、また、8
89cm-1に架橋炭酸エステルによる対称環伸縮振動の
吸収が存在することから、得られた炭酸エステル化PV
A誘導体中にモノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エス
テル構造の存在も確認できた。
【0140】また、上記得られた炭酸エステル化PVA
誘導体およびそのフィルムの物性測定用試験片を用いて
の物性測定結果は、表2に示す通りであった。
【0141】
【表2】
【0142】実施例3および4 炭酸ジメチルの使用量を2.4ml(2.568g、
0.0285モル)に変えて、20ml(21.4g、
0.238モル)(実施例3の場合)および30ml
(32.1g、0.356モル)(実施例4の場合)に
したこと、および、ジメチルスルホキシドの合計使用量
を57.6mlに変えて、40ml(実施例3の場合)
および30ml(実施例4の場合)にしたこと以外は、
実施例1と同様の操作を行った。いずれの実施例とも、
反応中、反応液にゲルの発生は認められなかった。
【0143】そして、実施例1と同様の精製処理によっ
て得られた白色粉末状の炭酸エステル化PVA誘導体の
収量および0.5NNaOH溶液加水分解法により求め
られた炭酸エステル化度(E)は、実施例3ではそれぞ
れ1.281gおよび65.29モル%、実施例4では
それぞれ1.295gおよび68.49モル%であっ
た。
【0144】そこで、各実施例において、得られた炭酸
エステル化PVA誘導体の化学構造を決定するために、
IRスペクトル測定を行った。上記の得られた炭酸エス
テル化PVA誘導体のIRスペクトルを図2に、そし
て、スペクトルの帰属を前記表1に、それぞれ示す。こ
れらの結果から、実施例3および4のいずれの場合も前
記実施例1の場合と同様に、1740cm-1および12
19cm-1に強い炭酸エステルによるC=OおよびC−
Oの伸縮振動による吸収が確認でき、また、770cm
-1と870cm-1には環状炭酸エステルによる吸収を確
認することができた。このことから、得られた炭酸エス
テル化PVA誘導体中に環状炭酸エステル構造の存在を
確認することができた。
【0145】さらに、2858cm-1にメトキシ基によ
るC−Hの伸縮振動による吸収と、790cm-1にモノ
炭酸エステルによる吸収が存在することから、また、8
89cm-1に架橋炭酸エステルによる対称環伸縮振動の
吸収が存在することから、得られた炭酸エステル化PV
A誘導体中にモノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エス
テル構造の存在も確認できた。
【0146】比較例1 実施例1と同様にして調製された溶液(ポリビニルアル
コール/ジメチルスルホキシド溶液)は、時間の経過と
共に溶液の下層部と上層部で濃度差を生じる傾向がある
ので、溶液を完全に均一な状態にするために、反応に先
立って、この溶液を80℃で1時間加熱・攪拌した。そ
こで、この溶液に、触媒としてのTBAB(市販特級
品)63mg(1.96×10-4モル)と炭酸ジメチル
(宇部興産(株)製、純度:99.0重量%以上)10
ml(10.7g、0.119モル)とを加えた後、反
応系全体が60mlとなるよう、前記ジメチルスルホキ
シド20ml(ジメチルスルホキシドの添加量は合計で
50ml)をさらに加え、マグネチックスターラーで攪
拌しながら、オイルバス中で120℃まで昇温し、続い
て、この温度で常圧下に6時間保持し、副生するメチル
アルコールを留去することなくポリビニルアルコールの
炭酸エステル化反応を行った。ここで、この溶液に前記
炭酸ジメチルを加えた時、一部ポリマーが析出してくる
ので、反応前にこれを完全に溶解するまで最低30分間
攪拌機で攪拌した。
【0147】反応の途中、反応液にゲルの発生が認めら
れたが、所定時間反応を続行した。反応終了後、実施例
1と同様の精製処理を行ったところ、海綿状の炭酸エス
テル化PVA誘導体が得られた。該炭酸エステル化PV
A誘導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解法
で求められた炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、
1.250gおよび61.0モル%であった。
【0148】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の方法によれ
ば、ポリマー分子内に6員の環状構造の炭酸エステルを
持ち、耐熱性に優れるとともに、水溶性のものから水不
溶性のものに至るまでの種々の物理的、化学的性質を備
えた新規な炭酸エステル化PVA誘導体が得られる。
【0149】また、本発明の方法によれば、ポリビニル
アルコールの炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反応
を、著しいゲルの生成もなく均一系で円滑に行うことが
できるので、対応するモノマーからは合成不可能な上記
炭酸エステル化PVA誘導体を安定的、かつ、効率よく
製造することができ、得られる炭酸エステル化PVA誘
導体も高品質なものとなる。
【0150】したがって、本発明の炭酸エステル化PV
A誘導体は、得られる該ポリマーエステルの物理的、化
学的性質に応じて、繊維加工剤、紙加工剤、乳化安定
剤、接着剤、粘着剤、フィルムなどポリビニルアルコー
ル本来の用途に使用される他、水不溶性のものは単独
で、あるいは、該ポリマーエステルと相溶性のある他の
樹脂や可塑剤と混合してこれらを改質することにより、
塗料、接着剤、バインダーなどへの応用に有効に利用さ
れ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた炭酸エステル化PVA誘導
体のIRスペクトルとポリビニルアルコールのIRスペ
クトルを比較して示した図である。
【図2】実施例2〜4の各実施例で得られた炭酸エステ
ル化PVA誘導体のIRスペクトルを比較して示した図
である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反応溶媒中、エステル化反応触媒の存在
    下もしくは不存在下に、ポリビニルアルコールと炭酸ジ
    アルキルとの炭酸エステル化反応を行い、下記一般式
    (I) 【化1】 で示される繰り返し単位からなる環状炭酸エステル構造
    を少なくとも含んでなる炭酸エステル化ポリビニルアル
    コール誘導体を得るに際し、該炭酸エステル化反応を、
    副生するアルコールの沸点以上、かつ、前記反応溶媒の
    沸点もしくは200℃のいずれか低い方の温度以下の温
    度において、副生するアルコールを蒸留除去しながら行
    うことを特徴とする炭酸エステル化ポリビニルアルコー
    ル誘導体の製造方法。
  2. 【請求項2】 反応溶媒が水、非プロトン性極性溶媒お
    よび水−非プロトン性極性溶媒混合溶液からなる群より
    選ばれる少なくとも1種以上の溶媒であることを特徴と
    する請求項1に記載の炭酸エステル化ポリビニルアルコ
    ール誘導体の製造方法。
  3. 【請求項3】 エステル化反応触媒がアルキルアンモニ
    ウム塩、ピリジニウム塩、ジアザビシクロアルケン類、
    第3級アミン、アルキルアンモニウム基もしくは第3級
    アミノ基を含有するイオン交換樹脂、およびアルカリ性
    触媒からなる群より選ばれる塩基触媒であることを特徴
    とする請求項1または2に記載の炭酸エステル化ポリビ
    ニルアルコール誘導体の製造方法。
  4. 【請求項4】 炭酸ジアルキルが炭酸ジメチルであるこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭
    酸エステル化ポリビニルアルコール誘導体の製造方法。
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