JPH08277308A - 炭酸エステル化ポリビニルアルコール誘導体およびそ の製造方法 - Google Patents

炭酸エステル化ポリビニルアルコール誘導体およびそ の製造方法

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JPH08277308A
JPH08277308A JP8022895A JP8022895A JPH08277308A JP H08277308 A JPH08277308 A JP H08277308A JP 8022895 A JP8022895 A JP 8022895A JP 8022895 A JP8022895 A JP 8022895A JP H08277308 A JPH08277308 A JP H08277308A
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carbonic acid
polyvinyl alcohol
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pva derivative
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JP8022895A
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Hiroaki Taniguchi
博彰 谷口
Isao Ikeda
功夫 池田
Kimihiro Suzuki
公宏 鈴木
Masayoshi Yamashita
雅由 山下
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Ube Corp
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Ube Industries Ltd
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    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
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    • C08F8/00Chemical modification by after-treatment
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、対応するモノマーからは合
成不可能な新規なポリビニルアルコール(PVA)エス
テルおよびその製造方法を提供し、PVAを高機能化・
高性能化することにある。 【構成】 本発明は、ポリマー分子内に少なくとも6員
の環状炭酸エステル構造、場合によっては、さらにモノ
炭酸エステル構造および/または架橋炭酸エステル構造
を含有する炭酸エステル化PVA誘導体およびPVAと
炭酸ジアルキルとを反応せしめることによる炭酸エステ
ル化PVA誘導体の製造方法に関する。 【効果】 本発明によれば、水溶性のものから水不溶性
のものに至るまでの種々の物理的、化学的性質を備えた
PVAエステルを効率よく製造でき、繊維加工剤や紙加
工剤などの水溶性PVA本来の用途の他、水不溶性ポリ
マーとしては、塗料、接着剤、バインダーなどへの応用
に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリビニルアルコール
の炭酸エステル化反応によって得られる新規な炭酸エス
テル化PVA誘導体およびその製造方法に関する。さら
に詳しくは、ポリビニルアルコールと前記一般式(VI)
によって示される炭酸ジアルキルとのエステル交換反応
によって生成するポリマー、すなわち、前記一般式
(I)で示される繰り返し単位からなる環状エステル構
造、前記一般式(II)で示される繰り返し単位からなる
ポリビニルアルコール構造および前記一般式(III)で示
される繰り返し単位からなるポリ酢酸ビニル構造を含
み、かつ、前記一般式(IV)で示される繰り返し単位か
らなるモノ炭酸エステル構造および/または前記一般式
(V)で示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エステ
ル構造を含んでなる炭酸エステル化PVA誘導体、およ
び、エステル化反応触媒の存在下または不存在下に、溶
媒中、該溶媒の融点以上、かつ該溶媒の沸点以下の温度
において、もしくは、無溶媒状態下、炭酸ジアルキルの
融点以上、かつ200℃以下の温度において、ポリビニ
ルアルコールと炭酸ジアルキルとを反応せしめることか
らなる前記炭酸エステル化PVA誘導体の製造方法に関
する。
【0002】本発明の炭酸エステル化PVA誘導体は、
その炭酸エステル化度や水酸基、アセチル基の組成割合
などにより物理的、化学的性質が異なり、炭酸エステル
化度が低く、水溶性で強力な接着力や乳化力などを示す
ものは、経糸糊付や織物加工などの繊維加工剤、紙加工
剤、乳化安定剤、接着剤、粘結剤、フィルムなど、ポリ
ビニルアルコール自体としての用途分野に使用できる。
一方、炭酸エステル化度が上がり、優れた強靱性、可撓
性、柔軟性、耐熱性、接着性、分散性、耐水性、耐油
性、有機溶剤に対する溶解性、透明性などを有する他、
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹
脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、天然樹脂などの各
種樹脂やトリエチレングリコール、トリクレジルホスフ
ェート、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、メ
チルアセチルリシノレート、ひまし油などの可塑剤との
相溶性に優れるものは、それ自体で、あるいは、前記相
溶性のある他の樹脂や可塑剤と混合して、ウォッシュプ
ライマー、粉体塗料、金属塗料、金属箔塗料、金属用イ
ンク、真空蒸着用塗料、光沢面保護塗料、防水塗料、木
材塗料、皮革用塗料、コンクリート塗料などの塗料への
応用、プリント基板への接着、コイル用エナメル電線の
接着、金属の接着、ヒートシール接着剤、感圧性接着
剤、フィルム状接着剤、電着植毛用接着剤、皮革用接着
剤など接着剤への応用、ICセラミックバインダー、磁
気テープバインダー、静電複写機用トナー、反射シート
バインダー、ブレーキライニングバインダー、不織布バ
インダーなど、各種バインダーへの応用など、幅広い分
野に使用することができる。
【0003】
【従来の技術およびその問題点】合成高分子であるポリ
ビニルアルコール(PVA)のエステル化合物に関する
研究は、従来より多数の研究が報告されている。しか
し、これらの研究の多くが、生成するPVAエステルの
基本構造に対応するビニルモノマーからの付加重合、も
しくは環化重合による合成反応であり、PVAが持つ水
酸基を利用した、ポリマー自身の化学反応によるエステ
ル化の研究となるとその数は多くない。これまで、PV
A自身のエステル化反応による研究は、高分子アルコー
ルの化学反応の研究対象として、あるいは、PVAの性
質の改善を目的として検討されてきた。
【0004】しかし、PVA自身の反応によるPVAの
エステル化は、モノマーからは合成不可能なPVAエス
テルを合成することが可能であり、PVAを高機能化・
高性能化してPVAの新しい用途を見い出すという意味
において、重要な反応であると考えられ、例えば、PV
Aのアセタール化反応は、PVAの工業的利用という面
において非常に重要な反応であり、アセタール化により
PVAが水に対し不溶化するため、PVAが繊維、また
は様々な工業分野で産業資材として利用されるに至って
いる。そして、このような報告例として、特開昭53−
143691号公報、特開昭54−20073号公報お
よび特開昭54−118490号公報などには、側鎖が
環状酸無水物で変性された変性ポリビニルアルコール系
重合体がその製造条件によって水溶性のものから水不溶
性の吸水性ポリマーに至るまでの種々の性質を備えたポ
リマーになり得ることが開示されており、さらに、特公
昭63−58868号公報には、前記変性ポリビニルア
ルコール系重合体を適当な溶媒に溶解し調製した溶液を
各種基材に塗布するか、または、各種基材と混合した
後、該処理の施された基材を熱処理することによって、
優れた吸水性もしくは吸湿性を有する被覆材料を得るこ
とが開示されている。また、特公昭60−8043号公
報や特公昭60−8044号公報には、PVA水溶液ま
たはPVAの極性有機溶剤溶液に不飽和カルボン酸化合
物を加えてエステル化反応を行い、次いでアルデヒド化
合物を加えてアセタール化反応を行うことによってPV
Aの改質を行い、接着剤、塗料などとして有用なポリビ
ニルアセタールを製造する方法が提案されている。さら
にはまた、特公平4−28001号公報には、3級アミ
ンの存在下に活性化カルボン酸誘導体でPVAをエステ
ル化することにより、光重合もしくは光架橋可能の混合
組成物を構成するために使用されるアシル化ポリビニル
アルコールの製造方法が、特公平6−41520号公報
には、PVAとアクリレート/無水マレイン酸共重合体
との開環エステル化反応による防水性を増強させたポリ
ビニルアルコールグラフト三元共重合体が、それぞれ開
示されている。このように、PVA自身のエステル化反
応において、その水酸基の反応性を利用することによ
り、側鎖に新しい官能基を導入しPVAに新しい機能・
性質を発現させることは、重要でかつ有効な方法と考え
られるのである。
【0005】一方、水酸基含有化合物の持つ水酸基の反
応性を利用したエステル化の研究として、ヒドロキシ化
合物(アルコール)を炭酸ジエステルでエステル化する
試みが既になされており、例えば、特開平5−1250
21号公報には、エステル交換反応触媒の存在下、脂肪
族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコールな
どのヒドロキシ化合物を炭酸ジメチルとエステル交換反
応させ、炭酸エステルを製造する方法が提案されてい
る。そして、特に、米国特許第5091543号明細書
には、アルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、第3
級アミンおよびアルキルアンモニウム基もしくは第3級
アミノ基を含有する強塩基型または弱塩基型のイオン交
換樹脂から選ばれる触媒の存在下に、1,2−ジオール
類もしくは1,3−ジオール類を炭酸ジメチル、炭酸ジ
エチル、炭酸ジフェニルなどの炭酸ジエステルと、副生
するアルコールまたはフェノール系化合物を蒸留除去し
ながら、反応せしめ、5員もしくは6員の環状炭酸エス
テル、モノ炭酸エステルおよび炭酸ジエステルを生成す
る方法が開示されている。
【0006】そこで、このようなジオール類と炭酸ジエ
ステルの反応をモノマーだけではなくポリマーについて
も応用できれば、ポリマー内に環状構造の炭酸エステル
を持つポリマーエステルの合成が可能であると考えられ
るのである。そして、このようなポリマーエステルとし
て、ジビニルカーボネートの重合によって得られる6員
の環状炭酸エステル構造と5員の環状炭酸エステル構造
を同時に含むポリマーが既に知られている(Bull. Che
m. Soc. Japan, 38(11), 1905(1965)など参照)。しか
しながら、水酸基を有するポリマーと炭酸ジエステルと
の反応、特に、モノマーの重合で合成できないPVAエ
ステルの合成の一例としての、PVAの炭酸ジエステル
による炭酸エステル化反応については、未だ研究報告は
皆無であったのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
ビニルアルコールの炭酸ジアルキルによる炭酸エステル
化反応によって、水溶性のものから水不溶性のポリマー
に至るまでの種々の物理的、化学的性質を備えたポリマ
ーとして得られ、繊維加工剤、紙加工剤、乳化安定剤、
接着剤、粘結剤、フィルムなど水溶性のポリビニルアル
コールとしての用途の他、水不溶性のポリマーとして
は、それ自体で、あるいは、それと相溶性のある他の樹
脂や可塑剤と混合して塗料、接着剤、バインダーなどへ
の応用に有用な、そして対応するモノマーからは合成不
可能な、新規な炭酸エステル化PVA誘導体およびその
製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリビニ
ルアルコールの水酸基の化学反応の一つであるエステル
化反応を利用して、ポリビニルアルコール自身の反応に
よる新規なポリビニルアルコールのエステル誘導体の合
成について鋭意研究を重ねた結果、アルキルアンモニウ
ム塩などのエステル化反応用塩基触媒の存在下または不
存在下に、無溶媒状態下、炭酸ジメチルなどの炭酸ジア
ルキルの融点以上、かつ200℃以下の温度において、
あるいはまた、ポリビニルアルコールの非プロトン性極
性溶媒(例えばジメチルスルホキシドなど)中、該溶媒
の融点以上、かつ沸点以下の温度において、ポリビニル
アルコールと前記炭酸ジアルキルとのエステル化反応を
行うことによって、水溶性のポリマーから水不溶性のポ
リマーに至るまでの種々の異なった物理的、化学的性質
を備え、したがって、繊維加工剤、紙加工剤、塗料、接
着剤、バインダーなどの幅広い分野に利用できる新規な
炭酸エステル化PVA誘導体(すなわち、環状炭酸エス
テル構造とポリビニルアルコール構造とを少なくとも含
んでなるポリマー、または、これら構造成分に加えて、
ポリ酢酸ビニル構造を含み、かつ、モノ炭酸エステル構
造および/または架橋炭酸エステル構造を含んでなるポ
リマー)が得られることを見い出し、本発明を完成する
に至った。
【0009】すなわち、請求項1に記載の第1の発明
は、前記一般式(I)(ただし式中、aは、該式で示さ
れる繰り返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PV
A誘導体中におけるモル分率を示す)で示される繰り返
し単位からなる環状炭酸エステル構造と、前記一般式
(II)(ただし式中、bは、該式で示される繰り返し単
位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体中にお
けるモル分率を示す)で示される繰り返し単位からなる
ポリビニルアルコール構造とを少なくとも含み、かつ、
前記aおよびbの値が前記数式(I)(ただし式中、a
およびbは、それぞれ、前記一般式(I)におけるaお
よび前記一般式(II)におけるbと同じ意味を表わす)
を満足することを特徴とする炭酸エステル化PVA誘導
体を提供することにより達成できる。
【0010】そして、請求項2に記載の第2の発明は、
前記一般式(I)(ただし式中、aは、該式で示される
繰り返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘
導体中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し単
位からなる環状炭酸エステル構造と、前記一般式(II)
(ただし式中、bは、該式で示される繰り返し単位から
なる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体中におけるモ
ル分率を示す)で示される繰り返し単位からなるポリビ
ニルアルコール構造と、前記一般式(III)(ただし式
中、cは、該式で示される繰り返し単位からなる構造
の、炭酸エステル化PVA誘導体中におけるモル分率を
示し、0〜0.3の範囲の値である)で示される繰り返
し単位からなるポリ酢酸ビニル構造とを含み、かつ、前
記一般式(IV)(ただし式中、R1 は、1〜4個の炭素
原子を有するアルキル基を表わし、dは、該式で示され
る繰り返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA
誘導体中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し
単位からなるモノ炭酸エステル構造、および/または、
前記一般式(V)(ただし式中、eは、該式で示される
繰り返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘
導体中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し単
位からなる架橋炭酸エステル構造を含有し、さらに、前
記a〜eの値が前記数式(II)(ただし式中、a、b、
dおよびeは、それぞれ、前記一般式(I)、(II)、
(IV)および(V)におけるa、b、dおよびeと同じ
意味を表わす)および前記数式(III)(ただし式中、a
〜eは、それぞれ、前記一般式(I)〜(V)における
a〜eと同じ意味を表わす)を同時に満足することを特
徴とする炭酸エステル化PVA誘導体を提供することで
達成できる。
【0011】また、請求項3に記載の第3の発明は、ポ
リビニルアルコールと前記一般式(VI)(ただし式中、
1 は、前記一般式(IV)におけるR1 と同じ意味を表
わし、R2 は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基
を表わす。なお、R1 とR2は、同一でも異なっていて
もよい)で示される炭酸ジアルキルとを反応せしめるこ
とを特徴とする前記第1または第2の発明に係る炭酸エ
ステル化PVA誘導体の製造方法を提供することで達成
できる。また、請求項4に記載の第4の発明は、エステ
ル化反応触媒の存在下もしくは不存在下に無溶媒状態
で、前記炭酸ジアルキルの融点以上、かつ200℃以下
の温度において、ポリビニルアルコールと前記炭酸ジア
ルキルとを反応せしめることを特徴とする前記第3の発
明に係る炭酸エステル化PVA誘導体の製造方法を、そ
して、請求項5に記載の第5の発明は、反応溶媒中、エ
ステル化反応触媒の存在下もしくは不存在下に、前記反
応溶媒の融点以上、かつその沸点以下の温度において、
ポリビニルアルコールと前記炭酸ジアルキルとを反応せ
しめることを特徴とする前記第3の発明に係る炭酸エス
テル化PVA誘導体の製造方法を、それぞれ提供するこ
とにより達成され得る。
【0012】さらにはまた、請求項6に記載の第6の発
明は、反応溶媒が水、非プロトン性極性溶媒および水−
非プロトン性極性溶媒混合溶液からなる群より選ばれる
少なくとも1種以上の溶媒であることを特徴とする上記
第5の発明に係る炭酸エステル化PVA誘導体の製造方
法を、請求項7に記載の第7の発明は、エステル化反応
触媒がアルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジア
ザビシクロアルケン類、第3級アミン、アルキルアンモ
ニウム基もしくは第3級アミノ基を含有するイオン交換
樹脂およびアルカリ性触媒からなる群より選ばれる塩基
触媒であることを特徴とする前記第3〜第6の発明のい
ずれか1つに係る炭酸エステル化PVA誘導体の製造方
法を、そして、請求項8に記載の第8の発明は、炭酸ジ
アルキルが炭酸ジメチルであることを特徴とする前記第
3〜第7の発明のいずれか1つに係る炭酸エステル化P
VA誘導体の製造方法を、それぞれ提供することで達成
できる。
【0013】以下に、本発明を詳しく説明する。本発明
の炭酸エステル化PVA誘導体は、後述する方法によ
り、ポリビニルアルコールを後述する炭酸ジアルキルで
炭酸エステル化反応せしめて得られる新規ポリマーであ
る。すなわち、該ポリマーは、前記一般式(I)(ただ
し式中、aは、該式で示される繰り返し単位からなる構
造の、炭酸エステル化PVA誘導体中におけるモル分率
を示す)で示される繰り返し単位からなる環状炭酸エス
テル構造と、前記一般式(II)(ただし式中、bは、該
式で示される繰り返し単位からなる構造の、炭酸エステ
ル化PVA誘導体中におけるモル分率を示す)で示され
る繰り返し単位からなるポリビニルアルコール構造とを
少なくとも含み、かつ、前記aおよびbの値が前記数式
(I)(ただし式中、aおよびbは、それぞれ、前記一
般式(I)におけるaおよび前記一般式(II)における
bと同じ意味を表わす)を満足することを特徴とする炭
酸エステル化PVA誘導体である。好ましくは該ポリマ
ーは、上記環状炭酸エステル構造およびポリビニルアル
コール構造に加えて、前記一般式(III)(ただし式中、
cは、該式で示される繰り返し単位からなる構造の、炭
酸エステル化PVA誘導体中におけるモル分率を示し、
0〜0.3の範囲の値である)で示される繰り返し単位
からなるポリ酢酸ビニル構造を含むか含まず、かつ、前
記一般式(IV)(ただし式中、R1 は、1〜4個の炭素
原子を有するアルキル基を表わし、dは、該式で示され
る繰り返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA
誘導体中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し
単位からなるモノ炭酸エステル構造、および/または、
前記一般式(V)(ただし式中、eは、該式で示される
繰り返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘
導体中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し単
位からなる架橋炭酸エステル構造を含有し、さらに、前
記a〜eの値が前記数式(II)(ただし式中、a、b、
dおよびeは、それぞれ、前記一般式(I)、(II)、
(IV)および(V)におけるa、b、dおよびeと同じ
意味を表わす)および前記数式(III)(ただし式中、a
〜eは、それぞれ、前記一般式(I)〜(V)における
a〜eと同じ意味を表わす)を同時に満足することを特
徴とする炭酸エステル化PVA誘導体である。したがっ
て、該ポリマーの化学構造は、下記一般式(VII)
【0014】
【化7】 (ただし式中、a〜eは、それぞれ、前記一般式(I)
〜(V)におけるa〜eと同じ意味を表わし、かつ、a
は0.003〜0.408、そしてdおよびeは0〜
0.816の範囲の値であり、さらに、0<(2a+d
+e)/(2a+b+d+e)≦0.816、および、
2a+b+c+d+e=1.0を同時に満足する値であ
る)で示される通りである。
【0015】ポリビニルアルコールは、後述するよう
に、専らポリ酢酸ビニルの加水分解(ケン化)によって
製造されるため、該ポリビニルアルコール中には、前記
一般式(III)に示される酢酸ビニル単量体構造単位の繰
り返しからなるポリ酢酸ビニル構造が残存する。このポ
リ酢酸ビニル構造は、本発明のポリビニルアルコールと
炭酸ジアルキルとの炭酸エステル化反応に際して変化し
ないため、炭酸エステル化PVA誘導体中におけるポリ
酢酸ビニル構造の組成割合は、ポリビニルアルコール中
におけるポリ酢酸ビニル構造の組成割合に等しい。そし
て、上記ポリビニルアルコール中におけるポリ酢酸ビニ
ル構造の組成割合は、ポリ酢酸ビニルからポリビニルア
ルコールを製造する際のケン化の程度、すなわち、ポリ
ビニルアルコールのケン化度に左右されるものである。
本発明においては、後述するように、原料のポリビニル
アルコールのケン化度は70〜100モル%、すなわ
ち、原料ポリビニルアルコール中におけるポリ酢酸ビニ
ル構造の組成割合は0〜30モル%であり、したがっ
て、炭酸エステル化PVA誘導体中における前記一般式
(III)で示される繰り返し単位からなるポリ酢酸ビニル
構造のモル分率(c)は、0〜0.3の範囲の値をとり
得るのである。
【0016】本発明の炭酸エステル化反応は、原料ポリ
ビニルアルコール中のビニルアルコール単量体構造単位
の繰り返しからなるポリビニルアルコール構造が有する
水酸基と、後述する炭酸ジアルキルとの脱アルコール反
応、すなわち、炭酸ジアルキルによるポリビニルアルコ
ールへの二官能性のエステル交換反応に基づくものであ
り、該炭酸エステル化反応によって、原料ポリビニルア
ルコール中のポリビニルアルコール構造が、前記一般式
(I)で示される繰り返し単位からなる環状炭酸エステ
ル構造に、または、該構造の他に、前記一般式(IV)で
示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル構造お
よび/または前記一般式(V)で示される繰り返し単位
からなる架橋炭酸エステル構造に変性されるものであ
る。したがって、該変性量は、炭酸エステル化PVA誘
導体中における前記一般式(I)で示される繰り返し単
位からなる環状炭酸エステル構造のモル分率(a)の2
倍(環状炭酸エステル構造を構成する前記一般式(I)
に示される繰り返し単位は、ポリビニルアルコール構造
を構成するビニルアルコール単量体の繰り返し構造単位
2単位から生成されるため)に等しいか、または、この
値と、炭酸エステル化PVA誘導体中における前記一般
式(IV)で示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エス
テル構造のモル分率(d)と、炭酸エステル化PVA誘
導体中における前記一般式(V)で示される繰り返し単
位からなる架橋炭酸エステル構造のモル分率(e)との
和、つまり、(2a+d+e)に等しい。また、原料ポ
リビニルアルコール中におけるビニルアルコール単量体
繰り返し構造単位からなるポリビニルアルコール構造の
モル分率(b0 )は、前記2aの値と、炭酸エステル化
PVA誘導体中における前記一般式(II)で示される繰
り返し単位からなるポリビニルアルコール構造のモル分
率(b)の値の和、つまり、(2a+b)に等しいか、
または、前記2aの値と、前記dの値と、前記eの値
と、前記bの値との和、つまり、(2a+b+d+e)
に等しい。よって、原料ポリビニルアルコールの炭酸エ
ステル化度(モル%)、すなわち、変性率(モル%)
は、{2a/(2a+b)}×100または{(2a+
d+e)/(2a+b+d+e)}×100の値として
求められるのである。ところで、ポリビニルアルコール
中のビニルアルコール単量体繰り返し構造単位からなる
ポリビニルアルコール構造を完全に炭酸エステル化する
ことはできず、該炭酸エステル化反応においても、ポリ
ビニルアルコールのアルデヒド化合物によるアセタール
化の場合と同様、Floryの理論が成り立つものとさ
れ、理論的最高炭酸エステル化度は81.6モル%であ
ると言われている。
【0017】そこで、本発明において所望される炭酸エ
ステル化度の最小値は、後述するように、1モル%であ
るが、この値を目標にしてポリビニルアルコールの炭酸
エステル化反応を行った場合、前記一般式(I)で示さ
れる繰り返し単位からなる環状炭酸エステル構造の生成
量は最少となり、前記aの値は、最小値の0.003と
なる。また、ポリビニルアルコールの炭酸エステル化反
応において、前記一般式(IV)で示される繰り返し単位
からなるモノ炭酸エステル構造、および、前記一般式
(V)で示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エステ
ル構造がそれぞれ生成しない場合に、前記dおよびeの
値は最小値0となる。一方、前記ポリビニルアルコール
の炭酸エステル化反応において、ケン化度100モル%
のポリビニルアルコールを原料として用い、前記一般式
(I)で示される繰り返し単位からなる環状炭酸エステ
ル構造のみ、または、前記一般式(IV)で示される繰り
返し単位からなるモノ炭酸エステル構造のみ、あるい
は、前記一般式(V)で示される繰り返し単位からなる
架橋炭酸エステル構造のみを、それぞれ、前述の理論的
最高炭酸エステル化度でもって生成する場合に、前記
a、dおよびeは最大値となるのである。
【0018】すなわち、前記aの値は、0.003〜
0.408の範囲で変動し、前記dおよびeの値は、0
〜0.816の範囲で変動するのである。なお、この場
合、前記dおよびeの値が0、つまり、前記一般式(I
V)で示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル
構造、および、前記一般式(V)で示される繰り返し単
位からなる架橋炭酸エステル構造が生成しない時、前記
a〜cの値は、前記数式(I)を満足しなければならな
い。そして、前記dおよびeの値の少なくとも一方が0
以外の前記範囲内の値をとる時、つまり、前記一般式
(IV)で示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エステ
ル構造および/または前記一般式(V)で示される繰り
返し単位からなる架橋炭酸エステル構造が生成する時、
前記a、b、dおよびeの値は、本発明のポリビニルア
ルコールの炭酸エステル化反応における炭酸エステル化
度、すなわち、該反応による前記ポリビニルアルコール
中のポリビニルアルコール構造の変性率を示す前記数式
(II)を満足しなければならないことは言うまでもな
い。さらに、前記dおよびeの値の少なくとも一方が0
以外の前記範囲内の値をとる時、前記a〜eの値は、本
発明の炭酸エステル化PVA誘導体を構成する各繰り返
し単位からなる構造成分のモル分率を表わすものである
から、前記数式(III)も満足しなければならないのであ
る。
【0019】本発明では、前記一般式(VII)で示される
化学構造を有する炭酸エステル化PVA誘導体における
前記の環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エステル構造、
架橋炭酸エステル構造、ポリビニルアルコール構造およ
びポリ酢酸ビニル構造の組成割合は、特に制限されるも
のではなく、前記a〜eの値がそれぞれ上述の範囲を満
足する範囲で自由に選ぶことができる。しかし、前記炭
酸エステル化PVA誘導体中における前記環状炭酸エス
テル構造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エステ
ル構造の組成割合は、前記ポリビニルアルコールの炭酸
ジアルキルによる炭酸エステル化反応に際しての前記原
料ポリビニルアルコールの炭酸エステル化度に関係があ
り、一般的には、該炭酸エステル化度の低いもの程(す
なわち、前記炭酸エステル化反応の進行が進んでいない
もの程)、前記モノ炭酸エステル構造の組成割合が多く
なり、該炭酸エステル化度が高いもの程(すなわち、前
記炭酸エステル化反応の進行が進んでいるもの程)、前
記環状炭酸エステル構造の組成割合が多くなる傾向にあ
ると言われている。また、該炭酸エステル化度がさらに
高くなる(すなわち、前記炭酸エステル化反応がさらに
進行する)と、架橋炭酸エステル構造の組成割合が増え
てくると言われている。本発明の炭酸エステル反応にお
ける目的生成物は、前記一般式(I)で示される繰り返
し単位からなる環状炭酸エステル構造であり、前記一般
式(IV)で示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エス
テル構造や前記一般式(V)で示される繰り返し単位か
らなる架橋炭酸エステル構造は、どちらかと言えば望ま
しくない副生物である。そこで、本発明においては、前
記ポリビニルアルコールの炭酸ジアルキルによる炭酸エ
ステル化反応に際し、前記原料ポリビニルアルコールの
炭酸エステル化度を適当に選択することにより、得られ
る炭酸エステル化PVA誘導体中における前記一般式
(I)で示される繰り返し単位からなる環状炭酸エステ
ル構造、前記一般式(IV)で示される繰り返し単位から
なるモノ炭酸エステル構造および前記一般式(V)で示
される繰り返し単位からなる架橋炭酸エステル構造の組
成割合、すなわち、前記a〜eの値を、目的に応じて適
宜選ぶことができるのである。
【0020】そして炭酸エステル化PVA誘導体として
は、その炭酸エステル化度や水酸基、アセチル基の組成
割合の差異、すなわち、該ポリマーの化学構造を示す前
記一般式(VII)におけるa〜eの値、言い換えれば、前
記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる環状炭
酸エステル構造、前記一般式(IV)で示される繰り返し
単位からなるモノ炭酸エステル構造、前記一般式(V)
で示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エステル構
造、前記一般式(II)で示される繰り返し単位からなる
ポリビニルアルコール構造および前記一般式(III)で示
される繰り返し単位からなるポリ酢酸ビニル構造の該ポ
リマー中における組成割合の差異によって、水溶性ポリ
マーから水不溶性ポリマーに至るまでの種々の異なった
物理的、化学的性質を有するものが得られるのである。
【0021】例えば、本発明において、前記一般式
(V)で示される繰り返し単位からなる架橋炭酸エステ
ル構造が存在しない炭酸エステル化PVA誘導体は、重
合度が200〜5000、比重(n−ヘキサンを媒体と
する置換法にて測定)が1.20〜1.40、ガラス転
移温度(DSC法にて測定)が60〜90℃、融点(D
SC法にて測定)が200〜240℃、引張り降状点強
度(ASTM D638に準拠して測定)が100〜5
00kgf/cm2 、引張り破断強度(ASTMD63
8に準拠して測定)が100〜700kgf/cm2
および引張り破断点伸度(ASTM D638に準拠し
て測定)が50〜400%であることが好ましい。
【0022】一方、前記一般式(V)で示される繰り返
し単位からなる架橋炭酸エステル構造を有する場合、炭
酸エステル化PVA誘導体は分子間架橋をしており、そ
の重合度は無限大である。
【0023】また、本発明の炭酸エステル化PVA誘導
体の常温の水に対する溶解性についてみると、下記数式
(IV)
【0024】
【数4】
【0025】で示される炭酸エステル化PVA誘導体の
炭酸エステル化度によって異なった性質を示す。すなわ
ち、炭酸エステル化PVA誘導体は、該炭酸エステル化
度が約13モル%程度までは水に可溶性であるのに対
し、約13〜35モル%の範囲では水に対して一部不溶
性となり膨潤するようになり、35モル%を越えるとほ
ぼ完全に不溶となる。したがって、炭酸エステル化PV
A誘導体の用途として、前述したような繊維加工剤、紙
加工剤、乳化安定剤、接着剤、粘結剤、フィルムなど、
水溶性ポリマーであるポリビニルアルコールとしての用
途分野を残すには、炭酸エステル化PVA誘導体は、少
なくとも水溶性であるべきであり、炭酸エステル化度が
約13モル%以下の変性率の低いものであることが好ま
しい。また、炭酸エステル化PVA誘導体と相溶性のあ
る前述したような他の熱硬化性樹脂や可塑剤との混合に
よる塗料、接着剤、バインダーなどへの応用を考慮する
場合、炭酸エステル化PVA誘導体は、そのポリビニル
アルコール構造に起因する残存水酸基と前記熱硬化性樹
脂や可塑剤との反応を考えれば、水溶性のもの、もしく
は精々水に膨潤するものに留めるべきであり、炭酸エス
テル化度が35モル%以下のものであることが好まし
い。これに対し、炭酸エステル化によりポリビニルアル
コールを大きく改質し、その極性カーボネート基(−O
COO−)の有する優れた接着性や密着性を利用して、
それ自体で塗料、接着剤、バインダーなどへの応用を図
る場合には、炭酸エステル化PVA誘導体は、その炭酸
エステル化度が35モル%を越えるような変性率の高
い、つまり、水不溶性の領域にあるものであることが好
ましい。
【0026】さらに本発明の炭酸エステル化PVA誘導
体は、その有機溶剤に対する溶解性としては、次のよう
な特性を有するものである。例えば、ジメチルスルホキ
シドの場合、炭酸エステル化度が65モル%以下では該
溶剤に可溶であるが、約65モル%を越える範囲では、
前記一般式(V)で示される繰り返し単位からなる架橋
炭酸エステル構造の生成、すなわち、分子鎖間架橋結合
の生成に起因するゲル化のためか、該溶剤に対し部分溶
解の状態となる。一方、テトラヒドロフランに対して
は、本発明において所望される炭酸エステル化度の全て
の領域において不溶である。また、蟻酸の場合には、該
溶剤に対し、炭酸エステル化度が約10モル%以下では
可溶であるが、約10〜約50モル%の範囲では膨潤状
態となり、約50〜約65モル%の範囲では再び可溶と
なり、そして約65モル%を越える範囲では、前記ジメ
チルスルホキシドの場合と同様に分子鎖間架橋結合の生
成に起因するゲル化のためか、部分溶解状態となるなど
特異な性質を示すものである。
【0027】さらにまた、本発明の炭酸エステル化PV
A誘導体の化学的性質として、蟻酸水溶液や塩酸水溶液
などによって加水分解されないなど、酸に強いという特
性を挙げることができる。一方、水酸化ナトリウムや水
酸化カリウムなどの水溶液によって加水分解を受けやす
いなど、アルカリに対して弱いという欠点を有するが、
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合によるエステル化
反応によって得られ、塗料や接着剤などへの用途を持つ
ポリエステル樹脂よりは、アルカリ加水分解に対して強
いと言える。
【0028】以上述べたように本発明は、水溶性のもの
から水不溶性のものに至るまで、その使用目的(用途)
に応じて、種々の異なった物理的、化学的物質を有する
炭酸エステル化PVA誘導体を対象とするものである。
【0029】次に、本発明の炭酸エステル化PVA誘導
体の製造方法について述べる。本発明において、原料と
して用いられるポリビニルアルコールとは、ポリマー主
鎖の反覆するビニル単量体、すなわち、−CH2 CH
(OH)−構造単位を有する水溶性の、あるいは少なく
とも水分散性のポリマーを総称するものである。ポリビ
ニルアルコールは、現在工業的には、専ら酢酸ビニルの
重合体を加水分解(ケン化)して製造されており、この
ことからすれば、一般的にはポリ酢酸ビニルの加水分解
物(ケン化物)ということができる。そして、重合度や
加水分解の程度(ケン化度)を異にする数多くの銘柄の
ものが市販されている。本発明においては、ポリビニル
アルコールとしての性質を示す範囲のものであれば特に
制限されるものではなく、市販されている全ての銘柄の
ものを使用できるが、平均重合度が200〜5000の
範囲であり、ケン化度が70〜100モル%のポリビニ
ルアルコールを好適に使用することができる。また、形
態は粉末状のものが好適である。したがって、本発明に
おいて使用されるポリビニルアルコールは、前記のビニ
ルアルコール単量体構造単位の繰り返しからなるポリビ
ニルアルコール構造と、前記一般式(III)に示される酢
酸ビニル単量体構造の繰り返しからなるポリ酢酸ビニル
構造とからなっており、下記一般式(VIII)
【0030】
【化8】 (ただし式中、b0 は、ポリビニルアルコール中におけ
る、ビニルアルコール単量体構造単位の繰り返しからな
るポリビニルアルコール構造のモル分率を示し、0.7
〜1.0の範囲の値である。また、式中のcは、前記一
般式(III)におけるcと同じ意味を表わす)で示される
化学構造を有するものである。
【0031】本発明における上記ポリビニルアルコール
の炭酸エステル化反応に用いられるエステル化剤として
は、前記一般式(VI)(ただし式中、R1 およびR
2 は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基を表
わし、R1 とR2 は同一でも異なっていてもよい)で示
される炭酸ジアルキルであり、具体的には、炭酸ジメチ
ル、炭酸ジエチル、炭酸ジn−プロピル、炭酸ジイソプ
ロピル、炭酸ジn−ブチル、炭酸ジsec−ブチル、炭
酸ジtert−ブチル、炭酸メチル・エチル、炭酸n−
プロピル・メチル、炭酸イソプロピル・メチル、炭酸n
−ブチル・メチル、炭酸sec−ブチル・メチル、炭酸
tert−ブチル・メチル、炭酸n−プロピル・エチ
ル、炭酸イソプロピル・エチル、炭酸n−ブチル・エチ
ル、炭酸sec−ブチル・エチル、炭酸tert−ブチ
ル・エチル、炭酸n−プロピル・n−ブチル、炭酸n−
プロピル・sec−ブチル、炭酸n−プロピル・ter
t−ブチル、炭酸イソプロピル・n−ブチル、炭酸イソ
プロピル・sec−ブチルおよび炭酸イソプロピル・t
ert−ブチルなどを挙げることができる。場合によっ
ては、これらの混合物として使用することも可能であ
る。本発明においては、上記の中でも、前記一般式(V
I)におけるR1 とR2 が同一アルキル基である炭酸ジ
アルキルが好ましく、具体的には、炭酸ジメチルや炭酸
ジエチルが好ましく、炭酸ジメチルが特に好ましい。
【0032】前記炭酸ジアルキルは前記数式(IV)で示
される炭酸エステル化度の所望値に相当する量使用する
ことが必要である。すなわち、前述したように、この炭
酸エステル化度は1モル%以上、かつ、Floryの理
論に基づく理論的最高エステル化度である81.6モル
%以下のものが可能であるが、本発明の目的には、1〜
70モル%のものが好適であり、ポリビニルアルコール
の性質を残存しているものからポリビニルアルコールの
性質を大きく改質したものに至るまで、得られる炭酸エ
ステル化PVA誘導体の各種用途に応じて前記炭酸エス
テル化度を選ぶことができ、該炭酸エステル化度に応じ
て、相当する量の前記炭酸ジアルキルを使用すればよ
い。具体的には、前記炭酸ジアルキルをポリビニルアル
コールに対して0.1〜20倍モル量、好ましくは0.
1〜10倍モル量使用することが好ましい。該使用量が
0.1倍モル量より少ないと、ポリビニルアルコールの
炭酸エステル化反応はほとんど進行しないので、前記炭
酸エステル化度を少なくとも1モル%以上にすることが
できず、ポリビニルアルコールの性質が改善された、目
的とする炭酸エステル化PVA誘導体を効率よく得るこ
とができず、好ましくない。また、該使用量が20倍モ
ル量より多いと、前記炭酸エステル化度の向上はほとん
ど望めなくなるので採算上好ましくなく、また、炭酸エ
ステル化反応に際して、ゲルの生成が著しくなり、均一
系反応を行うことが困難となるので、反応系の安定度が
低下する恐れがあり好ましくない。この炭酸エステル化
反応時の著しいゲルの生成は、前記炭酸エステル化度の
上昇に伴い、得られる炭酸エステル化PVA誘導体中に
おける前記一般式(V)で示される繰り返し単位からな
る架橋炭酸エステル構造の生成に基づく分子間架橋結合
の生成が著しくなる他、前記炭酸エステル化反応を後述
するような反応溶媒中で行った場合は、前記炭酸ジアル
キルの使用量が増大することによって反応溶媒へのポリ
ビニルアルコールの溶解性を低下させるなどの理由によ
るものと思われる。さらに、前記炭酸ジアルキルの使用
量が10〜20倍モル量の範囲では、前記炭酸エステル
化度の向上が望めなくなる傾向にあるとともに、前記炭
酸エステル化反応に際して、前記架橋炭酸エステル構造
による分子間架橋結合の生成や、前記炭酸エステル化反
応を反応溶媒中で行う場合の反応溶媒へのポリビニルア
ルコールの溶解性の低下などに起因するゲル化のため
に、反応系の安定度の低下が起こることがある。なお、
ポリビニルアルコールの使用量に対する前記炭酸ジアル
キルの使用量が増す程、上述したような理由により、炭
酸エステル化反応時の反応系のゲル化は起こりやすくな
るが、前記炭酸ジアルキルのどの程度の使用量において
ゲル化が起こり得るかは、使用される溶媒や触媒の種類
と量、反応温度、反応時間など炭酸エステル化反応条件
の違いによって異なっており、一概に言うことはできな
いが、いずれにしても、望ましくない反応系のゲル化を
極力抑えるよう、炭酸エステル化反応を制御すべきであ
る。例えば、ポリビニルアルコールのジメチルスルホキ
シド溶媒中での炭酸エステル化反応では、反応系のゲル
化が起こらないように、前記炭酸ジアルキルの使用量
は、ポリビニルアルコールに対して5倍モル量以下にす
る方が好ましい。
【0033】本発明の反応溶媒としては、前記ポリビニ
ルアルコールを溶解もしくは膨潤する作用を有し、か
つ、前記炭酸ジアルキルと反応性を有しないものが用い
られ得る。すなわち、水、非プロトン性極性溶媒および
水−非プロトン性極性溶媒混合溶液からなる群より選ば
れる少なくとも1種以上の反応溶媒が用いられ得る。上
記非プロトン性極性溶媒としては、ホルムアミド、N,
N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチ
ルアセトアミド(DMAC)およびヘキサメチルホスフ
ォリックアミド(HMPA)などのアミド化合物、ジメ
チルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロ
リドン(NMP)などを好適に挙げることができるが、
これらの中でもDMSO、DMAC、NMPなどの使用
が好ましく、DMSOの使用が特に好ましい。さらに本
発明においては、前記の水、非プロトン性極性溶媒、あ
るいは水−非プロトン性極性溶媒混合溶液の少なくとも
1種以上と、これら溶媒と均一相を形成し、かつ、前記
炭酸ジアルキルと反応性を有しない有機溶剤との混合物
も使用することができる。該有機溶剤としては、n−ヘ
キサン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼ
ン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセ
トン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなど
のケトン類、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハ
ロゲン化炭化水素類、エーテル類、ジオキサンおよびテ
トラヒドロフランなどが具体的に挙げられる。
【0034】反応溶媒の使用量は、前記ポリビニルアル
コールを溶解もしくは膨潤するに足る量以上であればよ
く、使用される反応溶媒の種類は勿論のこと、前記ポリ
ビニルアルコールの仕込み量、前記炭酸ジアルキルの種
類と使用量、触媒の種類と使用量、反応温度、反応時間
などの炭酸エステル化反応条件、さらには、該炭酸エス
テル化反応に際して、前記ポリビニルアルコールを反応
溶媒中に溶解するのか、それとも反応溶媒で膨潤するの
かにより異なるので、一概に規定することは困難であ
る。したがって、例えば、前記反応溶媒としてDMSO
を使用する場合、反応溶媒(DMSO)の使用量は、前
記ポリビニルアルコールの1〜60倍量(容量比)が好
適である。該使用量が1倍量未満では、前記ポリビニル
アルコールの該DMSO溶媒への溶解が十分ではなく、
反応が不均一系で進行するようになるので、均一な炭酸
エステル化が困難となり、得られる炭酸エステル化PV
A誘導体の品質にばらつきが生じるなど好ましくない。
一方、60倍量を越えるDMSO溶媒を使用しても、前
記ポリビニルアルコールを溶解して前記炭酸ジアルキル
による炭酸エステル化反応を均一系で進行せしめるとい
う反応溶媒の効果は既に達成されてしまっているので、
それ以上の効果は期待できないばかりか、後述するよう
な方法でのDMSO溶媒の反応系からの回収に必要以上
のエネルギーを消費するなど、採算上好ましくない。
【0035】ところで、本発明では、上記反応溶媒は必
ずしも必要とされるものではなく、前記ポリビニルアル
コールの前記炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反応
を無溶媒状態で行うことも可能である。この場合、該反
応は、前記炭酸ジアルキル分散系中での不均一系反応と
して進行するのである。しかし、DMSOのような非プ
ロトン性極性溶媒中で、前記ポリビニルアルコールの前
記炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反応を行う場
合、下記式(IX)〜(XI)
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】に示されるような反応が進行するものと思
われる。したがって、この場合、後述するエステル化反
応触媒の存在下に前記炭酸エステル化反応を行う時は、
非プロトン性極性溶媒が、上記式(X)に示されるよう
な前記触媒の炭酸エステル化反応促進作用をさらに促進
するし、また、前記触媒の不存在下に前記炭酸エステル
化反応を行う時は、前記触媒に代って、上記式(X)に
示されるような炭酸エステル化反応促進効果をもたらす
のである。これらのことからすれば、本発明において
は、前記炭酸エステル化反応に際して、上記反応溶媒を
使用する方が好ましい。
【0040】本発明において、前記炭酸エステル化反応
を無溶媒状態で行う場合、該反応は僅かしか進行しない
(例えば、エステル化反応触媒の存在下では、前記数式
(IV)で示される炭酸エステル化度は2〜3モル%程度
である)。また、前記炭酸エステル化反応を上記反応溶
媒としての水の存在下、かつ、エステル化反応触媒の存
在下に行う場合でも、前記炭酸エステル化度は精々4〜
5モル%程度である。したがって、前記炭酸エステル化
反応を無溶媒状態で行う場合や反応溶媒として水を使用
して行う場合などは、変性率が低く、ポリビニルアルコ
ールの本来有する性質を残存しており、ポリビニルアル
コール自体の用途分野に使用され得る炭酸エステル化P
VA誘導体を得ることを目的とする場合に採用されるの
が好ましい。このように、上記反応溶媒の選定に際して
は、得られる炭酸エステル化PVA誘導体の用途に応じ
て、言い換えれば、前記炭酸エステル化度の目標値をど
こに置いて前記炭酸エステル化反応を行うのかによっ
て、適切な反応溶媒を選ぶ(無溶媒状態も含めて)べき
である。
【0041】本発明において、前記ポリビニルアルコー
ルの前記炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反応に
は、アルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジアザ
ビシクロアルケン類、第3級アミン、アルキルアンモニ
ウム基もしくは第3級アミノ基を含有するイオン交換樹
脂およびアルカリ性触媒からなる群より選ばれる塩基触
媒であるエステル化反応触媒が使用され得る。該触媒
は、前記式(X)に示されるようなポリビニルアルコー
ルの炭酸エステル化反応を促進する作用を有する。本発
明のエステル化反応触媒としてのアルキルアンモニウム
塩は、下記一般式(XII)で表わされる化合物である。
【0042】
【化12】 (式中、R3 〜R6 は、互いに同一でも異なっていても
よい水素原子、ヒドロキシアルキル基、アルキル基、ア
リール基、あるいはアルアルキル基を表わし、これらが
アルキル基もしくはアルアルキル基である場合は、炭素
数1〜30の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基で
ある。また、Xは、ハロゲン、水酸基、アルコキシド、
炭酸基、重炭酸基、リン酸二水素基および重硫酸基から
なる群より選ばれる1価の陰イオンを表わす。)
【0043】そして、上記のアルキルアンモニウム塩や
前記のピリジニウム塩の具体例として、テトラn−ブチ
ルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラn−ブ
チルアンモニウムブロマイド(TBAB)およびテトラ
n−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)、テ
トラn−ブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)
などのテトラブチルアンモニウムハライド(TBA
X)、トリn−ブチルアミン塩酸塩、リン酸二水素テト
ラn−ブチルアンモニウム、トリメチルアンモニウムア
イオダイド、トリメチルアミン塩酸塩、トリメチルベン
ジルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニ
ウムブロマイド、テトラn−ブチルアンモニウムハイド
ロオキサイド、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウ
ム、ピリジニウムメチルアイオダイド、ピリジン塩酸
塩、トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウムクロ
ライドおよびこれらの2種以上の混合物などを挙げるこ
とができる。また、前記ジアザビシクロアルケン類とし
ては、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕7ーウン
デセン(DBU)などを好適に挙げることができる。前
記第3級アミンとしては、1個の電子対を有しかつ脂肪
族炭化水素置換基および/または芳香族炭化水素置換基
を有する全てのアミンを挙げることができ、特に、下記
一般式(XIII) によって示される第3級アミンが好まし
い。
【0044】
【化13】 (式中、R7 〜R9 は、互いに同一でも異なっていても
よい炭素数1〜30の直鎖状、分岐状または環状のアル
キル基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、あるいは
アルアルキル基を表わす。)
【0045】具体的には、トリエチルアミン、トリn−
プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、メチルジエチ
ルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピ
リジン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−
ジエチルプロパノールアミンおよびこれらの2種以上の
混合物を挙げることができる。また、本発明においてエ
ステル化反応触媒として使用され得る前記のイオン交換
樹脂としては、活性基としてアルキルアンモニウム基も
しくは第3級アミノ基を含有する強塩基性および弱塩基
性陰イオン交換樹脂触媒である。強塩基性陰イオン交換
樹脂触媒としての代表例は、クロロメチル化されたスチ
レン/ジビニルベンゼン共重合体と、トリメチルアミン
またはN,N−ジメチルエタノールアミンなどから選ば
れる第3級アミンとの反応により製造され得るスチレン
/ジビニルベンゼン共重合体の第4級アンモニウム塩誘
導体であり、具体的には、ローム・アンド・ハース社製
のアンバーライトIRA−400(Cl)やアンバーラ
イトIRA−400(OH)、ダウ・ケミカル社製のダ
ウエックス1X2−100などの陰イオン交換樹脂が好
適に挙げられる。一方、弱塩基性陰イオン交換樹脂とし
ては、クロロメチル化ポリスチレンのアミン誘導体、エ
ピクロルヒドリンと第2級もしくは第3級アミンとの重
縮合生成物、フェノールとホルムアルデヒドとのアミノ
化重縮合生成物などを代表例として挙げることができ、
具体的には、ローム・アンド・ハース社製のアンバーラ
イトIRA−93やデュオライトA−75などの陰イオ
ン交換樹脂が好適に挙げられる。さらにまた、本発明で
使用される前記アルカリ性触媒としては、水酸化カリウ
ム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、金属ナトリ
ウム、カリウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムメ
チラートやカリウムエチラートなどのカリウムアルコラ
ート(特にカリウムメチラート)、ナトリウムメチラー
トやナトリウムエチラートなどのナトリウムアルコラー
ト(特にナトリウムメチラート)などを具体的に挙げる
ことができる。
【0046】本発明では、上述したようなエステル化反
応触媒の中でも、TBAC、TBABおよひTBAIな
どのTBAX、DBU、トリエチルアミン、トリn−プ
ロピルアミン、トリn−ブチルアミンなどの使用が好ま
しい。そして、第4級アンモニウム塩のTBAXが使用
される場合、TBAI<TBAB<TBACの順でハロ
ゲンの電気陰性度の増大とともに、すなわち、第4級ア
ンモニウム塩の解離が起こりやすくなる程、炭酸エステ
ル化PVA誘導体の収量や前記数式(IV)で示される炭
酸エステル化度が増加するので、この点からすれば、こ
れらTBAXの中でもTBAC>TBAB>TBAIの
順に使用が好ましいと言える。なお、第4級アンモニウ
ム塩のTBAXの一つであるTBAFは、これら第4級
アンモニウム塩中最も高い電気陰性度を示すものである
が、DBUなどの場合と同様、強塩基であり触媒が強す
ぎるために炭酸エステル化反応を促進する以上に得られ
る炭酸エステル化PVA誘導体の分解が生じていると考
えられ、他の第4級アンモニウム塩に比べて炭酸エステ
ル化PVA誘導体の収量が減少するとともに、前記一般
式(IV)で示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エス
テル構造をかなり多く持つ炭酸エステル化PVA誘導体
となるのである。そして、この炭酸エステル化PVA誘
導体の分解は、エステル化反応触媒としてTBACを使
用した場合にも見られ、この場合においても、エステル
化反応触媒としてTBABやTBAIを使用した場合に
比べ、得られる炭酸エステル化PVA誘導体中の、前記
一般式(IV)で示される繰り返し単位からなるモノ炭酸
エステル構造の組成割合が多くなるものと思われる。以
上のことからして、上記TBAXの中では、TBABの
使用が最も好ましい。
【0047】以上述べたように、前記ポリビニルアルコ
ールの前記炭酸ジアルキルによる炭酸エステル化反応に
は各種の塩基触媒が使用され得るが、本発明において、
これらエステル化反応触媒は必須のものではない。すな
わち、前記炭酸エステル化反応は、エステル化反応触媒
の不存在下でも進行する。この場合、該反応を例えばD
MSOのような非プロトン性極性溶媒の存在下に行う
と、下記一般式(XIV)
【0048】
【化14】
【0049】(ただし式中、R1 およびR2 は、それぞ
れ、前記一般式(VI)におけるR1 およびR2 と同じ意
味を表わす)に示されるような反応が進行するものと思
われ、前記一般式(IV)で示される繰り返し単位からな
るモノ炭酸エステル構造に富んだ炭酸エステル化PVA
誘導体が得られる。したがって、前記炭酸エステル化反
応に必要とされる上述のエステル化反応触媒の量は、前
記ポリビニルアルコールの仕込み量、前記炭酸ジアルキ
ルの種類および使用量、反応溶媒の有無、反応溶媒を使
用する場合は、その種類と使用量、反応温度、反応圧
力、反応時間、炭酸エステル化度の目標値などの炭酸エ
ステル化反応条件などによって異なり、一概に限定でき
ないが、本発明におけるエステル化反応触媒の使用量
は、前記のイオン交換樹脂触媒を使用した場合は、前記
ポリビニルアルコールに対して50重量%以下、好まし
くは30重量%以下、そして、それ以外の触媒を使用し
た場合は、前記ポリビニルアルコールに対して25モル
%以下、好ましくは10モル%以下が好適である。エス
テル化反応触媒の使用量を前記ポリビニルアルコールに
対して50重量%もしくは25モル%より多くしても、
該触媒を多量に用いることによる好ましい効果の向上は
ほとんど認められないので、経済性の面からは好ましく
ない。
【0050】本発明の炭酸エステル化反応は、前述の無
溶媒状態下での反応のように、不均一系でも進行する
が、溶液中で均一系で進行させるのが好ましい。すなわ
ち、前記炭酸エステル化反応を前述の反応溶媒の存在下
で行う場合、前記ポリビニルアルコールを該反応溶媒中
に溶解した状態で、あるいは、前記ポリビニルアルコー
ルを該反応溶媒で膨潤させた状態で前記炭酸エステル化
反応を行う必要があり、そのため、前記炭酸エステル化
反応の進行中、該反応溶媒を液体状態に維持する必要が
ある。したがって、この場合、反応温度は、該反応溶媒
の融点以上、かつ、該反応溶媒の沸点以下の範囲の温度
であることが好ましい。一方、前記炭酸エステル化反応
を無溶媒状態で行う場合、前記炭酸ジアルキルにエステ
ル化剤としての本来の機能に加えて、上述したような反
応溶媒としての機能も持たせるために、前記炭酸エステ
ル化反応の進行中、少なくとも前記炭酸ジアルキルを液
体状態に維持する必要がある。したがって、この場合に
は、反応温度は、前記炭酸ジアルキルの融点以上、か
つ、200℃以下の範囲の温度であることが好ましい。
なお、この場合の反応温度の上限である200℃では、
前記炭酸ジアルキルは少なくとも液体状態に維持されて
いるが、反応温度が200℃を越えると、望ましくない
原料ポリビニルアルコールの熱分解反応を併発するよう
になるので好ましくない。
【0051】本発明の炭酸エステル化反応において、反
応圧力は特に制限されるものではなく、減圧、常圧およ
び加圧のいずれの場合においても実施可能である。しか
し、加圧の場合は、製造設備に耐圧性能が要求される
し、また、減圧の場合には、減圧設備が必要になるな
ど、経済性の面からは常圧で実施するのが好ましい。な
お、前記炭酸エステル化反応は、高温である程反応速度
が速いので、得られる炭酸エステル化PVA誘導体の収
量や炭酸エステル化度を高める必要がある場合、反応温
度は、前述の範囲内でできるだけ高温にした方がよい。
しかしながら、前記炭酸エステル化反応の反応時の温度
が高すぎると、反応が不均一になり、得られる炭酸エス
テル化PVA誘導体の溶融性、透明性、機械的性質など
の品質に悪影響が生じたり、使用する炭酸ジアルキルや
反応溶媒が熱的に不安定となったりする恐れがある。し
たがって、このような場合は、反応系を減圧にして、前
記反応温度を低めに維持することが好ましい。反応時間
も、前記ポリビニルアルコールの仕込み量、前記炭酸ジ
アルキルの種類および使用量、前記反応溶媒の種類およ
び使用量、反応温度、炭酸エステル化度の目標値などの
前記炭酸エステル化条件によって異なるが、5分〜50
時間程度、好ましくは10分〜30時間程度が好適であ
る。約5分より短いと、前記ポリビニルアルコールの炭
酸エステル化反応が十分進行せず、炭酸エステル化PV
A誘導体が目標とする収量および炭酸エステル化度でも
って得られないし、また、約50時間より長くなると、
それ以上の炭酸エステル化度の向上が望めないばかり
か、前記一般式(V)で示される繰り返し単位からなる
架橋炭酸エステル構造の生成による分子間架橋結合の生
成が著しくなって、本発明にとって望ましくない反応系
のゲル化が促進するし、得られる炭酸エステル化PVA
誘導体が長時間の熱履歴を受けて、熱劣化による品質の
低下を招く恐れがあるなど、いずれの場合も好ましくな
い。
【0052】本発明の炭酸エステル化反応は、攪拌機に
よる機械的攪拌などの適当な方法によって攪拌しながら
行うことが好ましい。特に、該反応を望ましくない不均
一系で進行させる場合には、前記ポリビニルアルコール
が均一に炭酸エステル化されるように、該反応の進行
中、十分攪拌する必要がある。また、本発明の炭酸エス
テル化反応は、得られる炭酸エステル化PVA誘導体の
望ましくない加水分解や酸化を防止するために、不活性
ガス雰囲気下に行われることが好ましい。不活性ガスと
しては、窒素ガスの他、アルゴンガス、ヘリウムガスな
どの希ガスが好適に使用され得る。
【0053】そして、本発明では、前記ポリビニルアル
コールの炭酸エステル化による炭酸エステル化PVA誘
導体の製造方法は、特に限定されるものではなく、常法
にしたがって行えばよく、バッチ式または連続式のいず
れにおいても実施することができる。例えば、所定量の
前記反応溶媒に所定量の前記ポリビニルアルコールを溶
解もしくは膨潤した後、適当な攪拌機付反応装置に供給
し、さらに、所定量の前記炭酸ジアルキルおよびエステ
ル化反応触媒をそれぞれ添加し、常圧、あるいは、所定
の減圧または加圧下に、攪拌しながら所定温度に加熱
し、所定時間反応を行えばよい。この場合、前記炭酸ジ
アルキルは、所定量を一度に加えられることなく、適宜
量に分割されて加えられることも可能である。また、前
記エステル化反応触媒も、反応系に所要量を一度に添加
してもよく、または、適当な回数に分割して添加しても
よい。さらに、本発明では、前記炭酸エステル化反応時
における前記架橋炭酸エステル構造に基づく、分子間架
橋結合の生成を防ぐために、前記炭酸エステル化反応に
際し、原料ポリビニルアルコールの重合度の選定や、前
述した反応温度や反応時間などの範囲内での可及的に穏
やかな炭酸エステル化反応条件の選定などの配慮も必要
である。
【0054】本発明の方法では、続いて、以上のように
して得られた反応液を沈殿溶媒中に加えて、適当な期間
(例えば、一昼夜程度)放置することにより、前記一般
式(VII)に示される化学構造を有する炭酸エステル化P
VA誘導体の沈殿物が得られるのである。前記沈殿溶媒
としては、該炭酸エステル化PVA誘導体に対する貧溶
媒であればよく、1〜4個の炭素原子を有する常温で液
体のアルコール、例えば、メチルアルコール、エチルア
ルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアル
コール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール
およびsec−ブチルアルコールなどが挙げられる。こ
れらの中でもメチルアルコールおよびエチルアルコール
が好ましく、エチルアルコールが特に好ましい。前記沈
殿溶媒の使用量は、前記反応液の量の1〜20倍量(容
量比)が好適である。該使用量が1倍量より少ないと、
前記反応液からの炭酸エステル化PVA誘導体の沈殿が
十分に行われず好ましくない。また、該使用量が20倍
量より多いと、前記沈殿溶媒の更なる効果が期待できな
いのは勿論のこと、前記沈殿溶媒の回収に必要以上のエ
ネルギーを消費し、経済上好ましくないなどの問題があ
る。なお、前述の炭酸エステル化反応に際して、前記の
イオン交換樹脂触媒など、固体状の触媒を存在させる場
合は、上記沈殿溶媒中への反応液の添加に先立って、濾
過、遠心分離、その他公知の方法により、該反応液から
固形分を分離する必要がある。
【0055】そこで、前記炭酸エステル化PVA誘導体
の沈殿物を含む反応混合物は、濾過、遠心分離などの公
知の方法により、固形分を分離する。そして、前記固形
分は、前記沈殿溶媒として用いたものと同種の溶媒、例
えばエチルアルコールで洗浄後、さらに前記沈澱溶媒と
して用いたものと同種の溶媒、例えばエチルアルコール
を抽出溶剤として、ソックスレー抽出など公知の方法に
より抽出処理して、抽残物である炭酸エステル化PVA
誘導体から残留反応溶媒などの不純物を除去精製するの
である。そして、得られた抽残物を熱風乾燥、真空乾燥
および凍結乾燥などの公知の方法により100℃以下の
温度で乾燥することによって、前述したような各種特性
を持ち、かつ、前記一般式(VII)に示されるような化学
構造を有する本発明の炭酸エステル化PVA誘導体が得
られるのである。
【0056】ところで、本発明では、前記炭酸エステル
化反応によって得られる炭酸エステル化PVA誘導体中
の、前記一般式(IV)で示される繰り返し単位からなる
モノ炭酸エステル構造の組成割合が多くなると、前述し
た炭酸エステル化PVA誘導体のエチルアルコール中へ
の投入の際に、該モノ炭酸エステル構造中のアルコキシ
基がエチルアルコールに対し親和性を示し、炭酸エステ
ル化PVA誘導体が可溶性となるためか、炭酸エステル
化PVA誘導体の沈澱が生成しにくくなる。そこで、本
発明では、前記炭酸エステル化PVA誘導体の沈澱物を
含む反応混合物の濾過、遠心分離などによる固形分(ポ
リマー生成物)の分離・回収に際しては、得られた濾液
を回収し、蒸発缶やロータリーエバポレーターなどによ
り、濾液中の前記エチルアルコールや前記反応溶媒を蒸
発・濃縮することで除去せしめ、濾液中に溶解している
炭酸エステル化PVA誘導体を析出させ、ついで、この
析出物の分離・回収、少量の溶媒による洗浄および乾燥
を前述と同様の方法で行うことにより、前記反応液の前
記沈澱溶媒中への添加によって沈澱しない炭酸エステル
化PVA誘導体を回収することが望ましい。
【0057】そして、上記濾液からのポリマー生成物の
回収に際して濾液から蒸発せしめた溶媒や、濾液の濃縮
によって得られたポリマー生成物の沈澱の分離・回収に
際して得られた濾液には、未反応のポリビニルアルコー
ルや炭酸ジアルキル、反応溶媒、エステル化反応触媒、
副生アルコールおよび沈澱溶媒などが含まれており、こ
れらは、必要に応じて回収後、蒸留、液体クロマトグラ
フィーなどのカラムクロマトグラフィー、再結晶、選択
的溶剤抽出、特開平5−125021号公報や特開平6
−157407号公報などに開示されている選択透過膜
を利用した浸透気化法や蒸気透過法など、公知の分離操
作法を単独で用いるか、あるいは、適当に組み合わせて
用いることにより、前記各物質を単離して再使用に供さ
れるのである。
【0058】
【実施例】次に、実施例および比較例を述べて本発明を
さらに詳しく説明するが、本発明は、これら実施例およ
び比較例によって何ら限定を受けるものではない。な
お、以下の実施例および比較例において、炭酸エステル
化PVA誘導体(ただし、比較例においては、得られた
固形物をいう)およびその成形品の特性は、下記の方法
によって求めた。
【0059】(1)炭酸エステル化PVA誘導体の炭酸
エステル化度 炭酸エステル化PVA誘導体の試料100mgを、60
℃で2時間以上減圧乾燥を行い、十分に水分を除いた
後、置換秤量法により精秤した。これを容量200ml
の共栓付き三角フラスコに入れ、0.5N水酸化ナトリ
ウム(NaOH)溶液〔市販品(容量分析用)〕30m
lを加えて、常温で一昼夜加水分解させた。この時、ほ
とんどの炭酸エステル化PVA誘導体試料が溶解し、該
試料中の、前記一般式(I)で示される繰り返し単位か
らなる環状炭酸エステル構造、前記一般式(IV)で示さ
れる繰り返し単位からなるモノ炭酸エステル構造、およ
び、前記一般式(V)で示される繰り返し単位からなる
架橋炭酸エステル構造のエステル部位の全てが加水分解
された。また、炭酸エステル化PVA誘導体試料を全く
入れない系もブランクとして上述と同様の操作を行っ
た。その後、これらをホットプレート上で70℃におい
て4時間加熱し、常温で放冷させた後、イオン交換水5
0mlを加え、攪拌しながら0.5N塩酸(HCl)溶
液〔市販品(容量分析用)〕によって滴定した。なお、
この滴定には自動滴定装置(三菱化学(株)製、GT−
05型)を使用した。そして、塩酸による酸塩基滴定に
より、過剰のアルカリによる中和点(A点)、炭酸ナト
リウムによる中和点(B点)および炭酸水素ナトリウム
による中和点(C点)の3種類の変曲点を求め、この滴
定結果より、炭酸エステル化PVA誘導体試料の加水分
解に消費されたアルカリの消費量を求めて、下記数式
(V)により炭酸エステル化PVA誘導体の炭酸エステ
ル化度を計算した。
【0060】
【数5】
【0061】(2)炭酸エステル化PVA誘導体の赤外
線吸収スペクトル(IR) 日本分光(株)製FT−8000型フーリエ赤外分光光
度計を用いて、下記方法により測定した。 (KBr錠剤法)炭酸エステル化PVA誘導体試料1m
gをKBr(Merck社製)150mgに混合し、6
0℃で2時間以上減圧乾燥し水分を除去した後、加圧錠
剤を形成して測定した。 (フィルム法)60℃で2時間以上減圧乾燥し水分を除
いた炭酸エステル化PVA誘導体試料を、約5重量%濃
度になるように蟻酸(市販特級品、純度:約99重量
%)に溶解し、プラスチックシャーレ上でゆるやかに乾
燥させてフィルムを作製し測定した。 (液膜法)アルカリ塩の窓板としてNaClを用いた。
微量の炭酸エステル化PVA誘導体の液体試料をNaC
l板上にキャストして測定した。
【0062】(3)炭酸エステル化PVA誘導体の核磁
気共鳴スペクトル(NMR) 日本電子(株)GX−270型FT−NMR(270M
Hz)装置およびJMN−60(60MHz)核磁気共
鳴装置を使用した。60℃で2時間以上減圧乾燥し水分
を除いた炭酸エステル化PVA誘導体試料5mgを、約
0.5mlのDMSO−d6 (Aldrich Chem. Co. (U
SA)製、99.9atom%でテトラメチルシラン
(TMS)の入ったもの)に溶解して、 1H−NMRお
よび13C−NMRを測定した。
【0063】(4)炭酸エステル化PVA誘導体の比重 ザルトリウス(株)製MC−1電子天秤を用い、n−ヘ
キサンを媒体とする置換法により測定した。
【0064】(5)炭酸エステル化PVA誘導体のガラ
ス転移温度および融点 示差走査熱量計((株)島津製作所製DSC−50型)
を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定した。
【0065】(6)成形品の引張り特性 インテスコ(株)製モデル2005引張り試験機を使用
して測定した。炭酸エステル化PVA誘導体の乾燥試料
(炭酸エステル化PVA誘導体を60℃で2時間以上減
圧乾燥し水分を除去したもの)を成形後、23℃、相対
湿度50%(以下「50%RH」と略記)で48時間状
態調節をした。そして、得られた試験片の降状点強度、
破断点強度および破断点伸度の測定を、ASTM D
638に準拠し、23℃、50%RHにおいて行った。
【0066】実施例1 (ポリビニルアルコール/ジメチルスルホキシド溶液の
調製)60℃で3時間以上減圧乾燥したポリビニルアル
コール粉末(日本合成化学工業(株)製、銘柄:NH−
18、平均重合度:1800、ケン化度:98.3モル
%)1.0g(ポリビニルアルコール構造単位成分:
0.0223モル)を精秤し、これを容量100mlの
三角フラスコに入れた。これに30mlのジメチルスル
ホキシド(市販特級品)を加え、80℃で5時間(また
は、ポリビニルアルコール粉末が完全に溶解するまで)
加熱して溶解させた後、一昼夜以上静置して前記ポリビ
ニルアルコール粉末を完全に前記ジメチルスルホキシド
に溶解させ、ポリビニルアルコール/ジメチルスルホキ
シド溶液を調製した。
【0067】(ポリビニルアルコールの炭酸エステル化
反応)上記のように調製したポリビニルアルコール/ジ
メチルスルホキシド溶液(以下、単に「溶液」と略記)
は、時間の経過と共に溶液の下層部と上層部で濃度差を
生じる傾向があるので、溶液を完全に均一な状態にする
ために、反応に先立って、この溶液を80℃で1時間加
熱・攪拌した。この溶液に、触媒としてのテトラn−ブ
チルアンモニウムブロマイド(市販特級品、以下「TB
AB」と略記)63mg(1.96×10-4モル)と炭
酸ジメチル(宇部興産(株)製、純度:99.0重量%
以上)2.4ml(2.568g、0.0285モル)
とを加えた後、反応系全体が60mlとなるよう、前記
ジメチルスルホキシド27.6ml(ジメチルスルホキ
シドの添加量は合計で57.6ml)をさらに加え、マ
グネチックスターラーで攪拌しながら、オイルバス中で
120℃まで昇温し、この温度で6時間保持してポリビ
ニルアルコールの炭酸エステル化反応を行った。ここ
で、この溶液に前記炭酸ジメチルを加えた時、一部ポリ
マーが析出してくるので、反応前にこれを完全に溶解す
るまで最低30分間攪拌した。
【0068】ポリビニルアルコールの炭酸エステル化反
応は均一系で進行し、また、反応中、ゲル状物の発生も
見られなかった。上記所定時間経過後、反応溶液を純度
99容量%のエチルアルコール(市販品)500ml中
に投入し、ポリマー生成物を沈殿させ、一夜静置した後
に、遠心分離にかけて分離・回収した。回収したポリマ
ー生成物は、さらに、各回500mlの前記エチルアル
コールで3回洗浄した。次に、このポリマー生成物を前
記エチルアルコール500mlを抽出溶剤として用い、
ソックスレー抽出器で3日間抽出処理して、精製した。
一方、前記遠心分離で得られた濾液は、回収後、ロータ
リーエバポレーターにより前記沈殿溶媒のエチルアルコ
ールおよび前記反応溶媒のジメチルスルホキシドを濃縮
除去し、前記エチルアルコール中への投入によって沈殿
しないポリマー生成物を得たので、これを少量の前記エ
チルアルコールで洗浄処理した。そこで、前記遠心分離
により分離・回収されたポリマー生成物と前記ロータリ
ーエバポレーターによる溶媒の濃縮除去により回収され
たポリマー生成物を一緒にし、これらポリマー生成物に
付着しているエチルアルコールをジオキサンに置換して
凍結乾燥を行い、粉末のポリマー生成物、すなわち、炭
酸エステル化PVA誘導体を得た。該炭酸エステル化P
VA誘導体の収量は1.227gであり、また、0.5
NNaOH溶液加水分解法により求めた炭酸エステル化
度(E)は52.99モル%であった。
【0069】そして、上記得られた炭酸エステル化PV
A誘導体の化学構造を決定するために、原料のポリビニ
ルアルコールと比較して赤外線吸収スペクトル(IRス
ペクトル)測定を行った。得られた炭酸エステル化PV
A誘導体のIRスペクトルを原料ポリビニルアルコール
のそれと比較して図1に、そしてスペクトルの帰属を表
1に、それぞれ示す。
【0070】
【表1】
【0071】この結果により、1740cm-1および1
219cm-1に強い炭酸エステルによるC=OおよびC
−Oの伸縮振動による吸収が確認でき、また、769c
-1と870cm-1には環状炭酸エステルによる吸収を
確認することができた。このことから、得られた炭酸エ
ステル化PVA誘導体中に環状炭酸エステル構造の存在
を確認することができた。さらに、2858cm-1にメ
トキシ基によるC−Hの伸縮振動による吸収が存在する
ことから、また、889cm-1に架橋炭酸エステルによ
る対称環伸縮振動の弱い吸収が存在することから、得ら
れた炭酸エステル化PVA誘導体中にモノ炭酸エステル
構造および架橋炭酸エステル構造の存在も確認できた。
一方、上記得られた炭酸エステル化PVA誘導体の核磁
気共鳴スペクトル( 1H−NMRスペクトルおよび13
−NMRスペクトル)測定を行い、図2には、得られた
炭酸エステル化PVA誘導体の 1H−NMRスペクトル
(溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6 ))を、そして図3には、得られた炭酸エステル化P
VA誘導体の13C−NMRスペクトル(溶媒:重水素化
ジメチルスルホキシド(DMSO−d6 ))を、それぞ
れ示した。また、各シグナルの帰属を行い、表2に示し
た。
【0072】
【表2】
【0073】この結果から、 1H−NMRスペクトルに
は、4.9〜4.6ppmに炭酸エステルのメチンのプ
ロトンによるシグナルが、3.6ppmにメトキシのプ
ロトンによるシグナルが確認でき、そして、炭酸エステ
ルにより変化したメチレンのプロトンによるシグナルが
2.3〜1.6ppmの広範囲にわたって確認すること
ができた。また、13C−NMRスペクトルより、150
ppmに環状炭酸エステルの炭素によるシグナルが、そ
して68ppmにメトキシの炭素によるシグナルが確認
できた。このことから、これらNMR測定においても、
得られた炭酸エステル化PVA誘導体中に、環状炭酸エ
ステル構造およびモノ炭酸エステル構造が混在している
ことが判った。したがって、以上のIRスペクトル測定
およびNMR測定の結果より、上記得られた炭酸エステ
ル化PVA誘導体は、前記一般式(I)で示される繰り
返し単位からなる環状炭酸エステル構造および前記一般
式(IV)で示される繰り返し単位からなるモノ炭酸エス
テル構造の他に、前記一般式(V)で示される繰り返し
単位からなる架橋炭酸エステル構造が僅かに存在した化
学構造を有するものであることが判った。
【0074】また、得られた炭酸エステル化PVA誘導
体の比重、ガラス転移温度および融点などの物性を測定
したところ、結果は表3に示す通りであった。さらに、
得られた炭酸エステル化PVA誘導体を蟻酸(市販特級
品、純度:約99重量%)に溶解し、プラスチックシャ
ーレ上でゆるやかに乾燥させてフィルムを成形した。こ
のフィルムから、物性測定用の試験片を作製し、該試験
片を用いて、物性、つまり、引張り特性を測定した。結
果を表3に示す。
【0075】実施例2 ジメチルスルホキシドの合計使用量を57.6mlに変
えて59.5mlにしたこと、および、炭酸ジメチルの
使用量を2.4ml(2.568g、0.0285モ
ル)に変えて0.5ml(0.535g、5.94×1
-3モル)にしたこと以外は、実施例1と同様の操作を
行った。反応中、反応液にゲルの発生は認められず、実
施例1と同様の精製処理によって得られた白色粉末状の
炭酸エステル化PVA誘導体の収量および0.5NNa
OH溶液加水分解法で求められた炭酸エステル化度
(E)は、それぞれ、1.139gおよび26.70モ
ル%であった。得られた炭酸エステル化PVA誘導体の
IRスペクトルおよびNMRスペクトル( 1H−NMR
スペクトルおよび13C−NMRスペクトル、以下におい
て同じ)の測定結果から、環状炭酸エステル構造および
モノ炭酸エステル構造の存在に基づく吸収が確認された
が、架橋炭酸エステル構造に基づく吸収は確認されなか
った。また、該炭酸エステル化PVA誘導体およびその
フィルムの物性測定用試験片を用いての物性測定結果
は、表3に示す通りであった。
【0076】実施例3 ジメチルスルホキシドの合計使用量を57.6mlに変
えて50mlにしたこと、および、炭酸ジメチルの使用
量を2.4ml(2.568g、0.0285モル)に
変えて10ml(10.7g、0.119モル)にした
こと以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応の途
中、反応液にゲルの発生が認められたが、所定時間反応
を続行した。反応終了後、実施例1と同様の精製処理に
よって得られた海綿状の炭酸エステル化PVA誘導体の
収量および0.5NNaOH溶液加水分解法で求められ
た炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、1.250g
および61.0モル%であった。
【0077】実施例4〜6 実施例4〜6において、触媒としてのTBABの使用量
を実施例1の63mg(1.96×10-4モル)に変え
て、それぞれ、16mg(5.0×10-5モル)、0.
19g(5.9×10-4モル)および0.378g
(1.17×10-3モル)としたこと以外は、実施例1
と同様の操作を行った。いずれの実施例においても、反
応中、ゲル状物の発生は認められなかった。各実施例に
おいて得られた粉末の炭酸エステル化PVA誘導体の収
量および0.5NNaOH溶液加水分解法で求められた
炭酸エステル化度(E)は、実施例4ではそれぞれ1.
16gおよび51.56モル%、実施例5ではそれぞれ
1.14gおよび48.73モル%、そして、実施例6
ではそれぞれ1.44gおよび52.57モル%であっ
た。また、各実施例において、得られた炭酸エステル化
PVA誘導体のIRスペクトルおよびNMRスペクトル
の測定結果から、環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エス
テル構造および架橋炭酸エステル構造の存在に基づく吸
収が確認された。
【0078】実施例7 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、テトラn−ブチルアンモニウムクロライ
ド(市販品、以下「TBAC」と略記)54mg(1.
96×10-4モル)を使用したこと以外は、実施例1と
同様の操作を行った。得られた粉末の炭酸エステル化P
VA誘導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解
法で求められた炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、
1.302gおよび54.33モル%であった。得られ
た炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよび
NMRスペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構
造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エステル構造
の存在に基づく吸収が確認された。
【0079】実施例8 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、テトラn−ブチルアンモニウムアイオダ
イド(TBAI)(市販特級品)72mg(1.96×
10-4モル)を使用したこと以外は、実施例1と同様の
操作を行った。得られた粉末の炭酸エステル化PVA誘
導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解法で求
められた炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、1.1
08gおよび49.94モル%であった。得られた炭酸
エステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよびNMR
スペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構造、モ
ノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エステル構造の存在
に基づく吸収が確認された。
【0080】実施例9 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、テトラn−ブチルアンモニウムフルオラ
イド・XH2 O(TBAF)(市販品)51mg(1.
96×10-4モル)を使用したこと以外は、実施例1と
同様の操作を行った。得られた粉末の炭酸エステル化P
VA誘導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解
法で求められた炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、
1.14gおよび47.17モル%であった。得られた
炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよびN
MRスペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構
造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エステル構造
の存在に基づく吸収が確認された。
【0081】実施例10 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕
7−ウンデセン(DBU)(市販品)30mg(1.9
6×10-4モル)を使用したこと以外は、実施例1と同
様の操作を行った。得られた粉末の炭酸エステル化PV
A誘導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解法
で求められた炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、
1.18gおよび49.65モル%であった。得られた
炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよびN
MRスペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構
造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エステル構造
の存在に基づく吸収が確認された。
【0082】実施例11 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、リン酸二水素テトラn−ブチルアンモニ
ウム(市販品)66mg(1.96×10-4モル)を使
用したこと、および、反応時間を6時間に変えて12時
間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
得られた粉末の炭酸エステル化PVA誘導体の収量およ
び0.5NNaOH溶液加水分解法で求められた炭酸エ
ステル化度(E)は、それぞれ、1.21gおよび5
1.77モル%であった。また、得られた炭酸エステル
化PVA誘導体のIRスペクトルおよびNMRスペクト
ルの測定結果から、環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エ
ステル構造および架橋炭酸エステル構造の存在に基づく
吸収が確認された。
【0083】実施例12 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、テトラn−ブチルアンモニウムハイドロ
オキサイド(市販品)51mg(1.96×10 -4
ル)を使用したこと、および、反応時間を6時間に変え
て12時間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を
行った。得られた粉末の炭酸エステル化PVA誘導体の
収量および0.5NNaOH溶液加水分解法で求められ
た炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、1.27gお
よび53.56モル%であった。また、得られた炭酸エ
ステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよびNMRス
ペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構造、モノ
炭酸エステル構造および架橋炭酸エステル構造の存在に
基づく吸収が確認された。
【0084】実施例13 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、ピリジニウムメチルアイオダイド(市販
品)43mg(1.96×10-4モル)を使用したこ
と、反応時間を6時間に変えて12時間としたこと以外
は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粉末の炭
酸エステル化PVA誘導体の収量および0.5NNaO
H溶液加水分解法で求められた炭酸エステル化度(E)
は、それぞれ、1.17gおよび49.87モル%であ
った。また、得られた炭酸エステル化PVA誘導体のI
RスペクトルおよびNMRスペクトルの測定結果から、
環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エステル構造および架
橋炭酸エステル構造の存在に基づく吸収が確認された。
【0085】実施例14 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、トリエチルアミン(市販品)20mg
(1.96×10-4モル)を使用したこと以外は、実施
例1と同様の操作を行った。得られた粉末の炭酸エステ
ル化PVA誘導体の収量および0.5NNaOH溶液加
水分解法で求められた炭酸エステル化度(E)は、それ
ぞれ、1.19gおよび51.36モル%であった。ま
た、得られた炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペク
トルおよびNMRスペクトルの測定結果から、環状炭酸
エステル構造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エ
ステル構造の存在に基づく吸収が確認された。
【0086】実施例15 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、ピリジン(市販品)16mg(2.0×
10-4モル)を使用したこと、および、反応時間を6時
間に変えて12時間としたこと以外は、実施例1と同様
の操作を行った。得られた粉末の炭酸エステル化PVA
誘導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解法で
求められた炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、1.
13gおよび47.68モル%であった。また、得られ
た炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよび
NMRスペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構
造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エステル構造
の存在に基づく吸収が確認された。
【0087】実施例16 触媒として、TBAB63mg(1.96×10-4
ル)に代えて、ナトリウムメチラートのメタノール溶液
(市販一級品、ナトリウムメチラート含量:約28重量
%)38mg(CH3 ONa分:1.96×10-4
ル)を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行
った。得られた粉末の炭酸エステル化PVA誘導体の収
量および0.5NNaOH溶液加水分解法で求められた
炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、1.008gお
よび37.32モル%であった。また、得られた炭酸エ
ステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよびNMRス
ペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構造および
モノ炭酸エステル構造の存在に基づく吸収が確認され
た。一方、架橋炭酸エステル構造の存在に基づく吸収は
確認されなかった。
【0088】実施例17 触媒としてのTBABを添加しなかったこと以外は、実
施例1と同様の操作を行った。得られた粉末の炭酸エス
テル化PVA誘導体の収量および0.5NNaOH溶液
加水分解法で求められた炭酸エステル化度(E)は、そ
れぞれ、1.11gおよび49.03モル%であった。
また、得られた炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペ
クトルおよびNMRスペクトルの測定結果から、環状炭
酸エステル構造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸
エステル構造の存在に基づく吸収が確認された。
【0089】実施例18 反応溶媒として、ジメチルスルホキシド(市販特級品)
を合計57.6ml用いたことに代えて、N,N−ジメ
チルアセトアミド(市販特級品)を合計57.6ml用
いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。得ら
れた粉末の炭酸エステル化PVA誘導体の収量および
0.5NNaOH溶液加水分解法で求められた炭酸エス
テル化度(E)は、それぞれ、1.15gおよび50.
46モル%であった。また、得られた炭酸エステル化P
VA誘導体のIRスペクトルおよびNMRスペクトルの
測定結果から、環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エステ
ル構造および架橋炭酸エステル構造の存在に基づく吸収
が確認された。
【0090】実施例19 反応溶媒として、ジメチルスルホキシド(市販特級品)
を合計57.6ml用いたことに代えて、N−メチル−
2−ピロリドン(市販特級品)を合計57.6ml用い
たこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られ
た粉末の炭酸エステル化PVA誘導体の収量および0.
5NNaOH溶液加水分解法で求められた炭酸エステル
化度(E)は、それぞれ、1.18gおよび48.73
モル%であった。また、得られた炭酸エステル化PVA
誘導体のIRスペクトルおよびNMRスペクトルの測定
結果から、環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エステル構
造および架橋炭酸エステル構造の存在に基づく吸収が確
認された。
【0091】実施例20 (ポリビニルアルコール/水溶液の調製)60℃で3時
間以上減圧乾燥したポリビニルアルコール粉末(日本合
成化学工業(株)製、銘柄:NH−18、平均重合度:
1800、ケン化度:98.3モル%)1.0g(ポリ
ビニルアルコール構造単位成分:0.0223モル)を
精秤し、これを容量100mlのナス型フラスコに入れ
た。これに30mlのイオン交換水を加えて、80℃で
5時間加熱して前記ポリビニルアルコール粉末を溶解さ
せた後、一昼夜以上静置して前記ポリビニルアルコール
粉末を完全に前記イオン交換水中へ溶解させ、ポリビニ
ルアルコール/水溶液を調製した。
【0092】(ポリビニルアルコールの炭酸エステル化
反応)次に、炭酸ジメチル(宇部興産(株)製、純度:
99.0重量%以上)8ml(8.56g、0.095
モル)を92mlのイオン交換水に溶解し、濃度8.5
重量%の炭酸ジメチル水溶液100mlを調製した。そ
こで、上記のようにして先に調製したポリビニルアルコ
ール/水溶液に、触媒としてのTBAB(市販特級品)
63mg(1.96×10-4モル)および前記の調製さ
れた濃度8.5重量%の炭酸ジメチル水溶液30mlを
加え、反応系全体を60mlとした後、マグネチックス
ターラーで攪拌しながら、オイルバス中で95℃まで昇
温し、この温度において、常圧下での炭酸エステル化反
応を6時間行った。
【0093】ポリビニルアルコールの炭酸エステル化反
応は均一系で進行し、また、反応中、ゲル状物の発生も
見られなかった。上記所定時間経過後、反応溶液を純度
99容量%のエチルアルコール(市販品)500ml中
に投入し、ポリマー生成物を沈澱させ、一夜静置した後
に、遠心分離にかけて分離・回収した。回収したポリマ
ー生成物は、さらに、各回500mlの前記エチルアル
コールで3回洗浄して精製した後、前記エチルアルコー
ル溶媒をジオキサンに置換して凍結乾燥を行い、白色粉
末状のポリマー生成物である炭酸エステル化PVA誘導
体を得た。得られた上記白色粉末状の炭酸エステル化P
VA誘導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解
法で求められた炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、
1.12gおよび4.02モル%であった。また、得ら
れた炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよ
びNMRスペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル
構造およびモノ炭酸エステル構造の存在に基づく吸収が
確認された。一方、架橋炭酸エステル構造の存在に基づ
く吸収は確認されなかった。そして、該ポリマーおよび
該ポリマーのフィルムの物性測定用試験片を用いての物
性測定の結果を表3に示す。
【0094】実施例21 60℃で3時間以上乾燥したポリビニルアルコール粉末
(日本合成化学工業(株)製、銘柄:NH−18、平均
重合度:1800、ケン化度:98.3モル%)2.0
g(ポリビニルアルコール構造単位成分:0.0447
モル)を容量100mlの三角フラスコに入れ、触媒と
してのTBAB(市販特級品)63mg(1.96×1
-4モル)および炭酸ジメチル(宇部興産(株)製、純
度:99.0重量%以上)29ml(31.03g、
0.345モル)を加え、マグネチックスターラーで攪
拌しながら、オイルバス中で90℃まで昇温し、この温
度において、前記炭酸ジメチルに前記ポリビニルアルコ
ール粉末が分散した状態での炭酸エステル化反応を6時
間行った。上記反応は、不均一系で進行し、前記ポリビ
ニルアルコール粉末の一部が三角フラスコの壁面に付着
した。所定時間経過後、反応溶液を純度99容量%のエ
チルアルコール(市販品)中に投入し、ポリマー生成物
を沈澱させ、一夜静置した後に、遠心分離にかけて分離
・回収した。回収したポリマー生成物は、さらに、各回
500mlの前記エチルアルコールで3回洗浄して精製
した後、前記エチルアルコール溶媒をジオキサンに置換
して凍結乾燥を行い、原料ポリビニルアルコールの白色
から褐色に変化した粉末の炭酸エステル化PVA誘導体
を得た。該ポリマー生成物の収量および0.5NNaO
H溶液加水分解法で求められた炭酸エステル化度(E)
は、それぞれ、2.04gおよび1.17モル%であっ
た。また、得られた炭酸エステル化PVA誘導体のIR
スペクトルおよびNMRスペクトルの測定結果から、環
状炭酸エステル構造およびモノ炭酸エステル構造の存在
に基づく吸収が確認された。一方、架橋炭酸エステル構
造の存在に基づく吸収は確認されなかった。
【0095】実施例22 触媒としてのTBABの使用量を63mg(1.96×
10-4モル)に変えて0.13g(4.0×10-4
ル)としたこと、および、反応温度を90℃に変えて1
00℃としたこと以外は、実施例21と同様の操作を行
った。得られた粉末状、褐色の炭酸エステル化PVA誘
導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解法で求
められた炭酸エステル化度(E)は、それぞれ、2.0
8gおよび3.30モル%であった。また、得られた炭
酸エステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよびNM
Rスペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構造お
よびモノ炭酸エステル構造の存在に基づく吸収が確認さ
れたが、架橋炭酸エステル構造の存在に基づく吸収は確
認されなかった。
【0096】実施例23〜26 実施例23〜26において、反応温度を実施例1の12
0℃に変えて、それぞれ、80℃、90℃、100℃お
よび110℃としたこと、そして、実施例23において
は、さらに反応時間を実施例1の6時間に変えて12時
間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
各実施例において得られた粉末の炭酸エステル化PVA
誘導体の収量および0.5NNaOH溶液加水分解法で
求められた炭酸エステル化度(E)は、実施例23では
それぞれ1.03gおよび6.52モル%、実施例24
ではそれぞれ1.13gおよび25.92モル%、実施
例25ではそれぞれ1.23gおよび45.00モル
%、そして、実施例26ではそれぞれ1.22gおよび
45.78モル%であった。また、各実施例において、
得られた炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペクトル
およびNMRスペクトルの測定結果から、実施例23お
よび実施例24においては、環状炭酸エステル構造およ
びモノ炭酸エステル構造の存在に基づく吸収が確認され
たが、架橋炭酸エステル構造の存在に基づく吸収は確認
されなかった。一方、実施例25および実施例26にお
いては、環状炭酸エステル構造、モノ炭酸エステル構造
および架橋炭酸エステル構造の存在に基づく吸収が確認
された。なお、実施例23〜26の各実施例において、
得られた炭酸エステル化PVA誘導体および該ポリマー
のフィルムの物性測定用試験片を用いての物性測定結果
は、それぞれ、表3に示す通りであった。
【0097】実施例27 反応時間を6時間に変えて1時間としたこと以外は、実
施例1と同様の操作を行った。得られた粉末の炭酸エス
テル化PVA誘導体の収量および0.5NNaOH溶液
加水分解法で求められた炭酸エステル化度(E)は、そ
れぞれ、1.10gおよび42.45モル%であった。
また、得られた炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペ
クトルおよびNMRスペクトルの測定結果から、環状炭
酸エステル構造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸
エステル構造の存在に基づく吸収が確認された。
【0098】実施例28 反応時間を6時間に変えて2時間としたこと以外は、実
施例25と同様の操作を行った。得られた粉末の炭酸エ
ステル化PVA誘導体の収量および0.5NNaOH溶
液加水分解法で求められた炭酸エステル化度(E)は、
それぞれ、1.02gおよび8.1モル%であった。ま
た、得られた炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペク
トルおよびNMRスペクトルの測定結果から、環状炭酸
エステル構造およびモノ炭酸エステル構造の存在に基づ
く吸収が確認されたが、架橋炭酸エステル構造の存在に
基づく吸収は確認されなかった。そして、該ポリマーお
よび該ポリマーのフィルムの物性測定用試験片を用いて
の物性測定の結果を表3に示す。
【0099】実施例29 反応時間を12時間に変えて48時間としたこと以外
は、実施例23と同様の操作を行った。得られた粉末の
炭酸エステル化PVA誘導体の収量および0.5NNa
OH溶液加水分解法で求められた炭酸エステル化度
(E)は、それぞれ、1.13gおよび29.21モル
%であった。また、得られた炭酸エステル化PVA誘導
体のIRスペクトルおよびNMRスペクトルの測定結果
から、環状炭酸エステル構造およびモノ炭酸エステル構
造の存在に基づく吸収が確認された。一方、架橋炭酸エ
ステル構造の存在に基づく吸収は確認されなかった。
【0100】実施例30〜32 実施例30〜32において、実施例1のポリビニルアル
コール粉末(日本合成化学工業(株)製、銘柄:NH−
18、平均重合度:1800、ケン化度:98.3モル
%)1.0g(ポリビニルアルコール構造単位成分:
0.983g、0.0223モル)に代えて、それぞ
れ、ポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業(株)
製、平均重合度:500、ケン化度:72.3モル%)
1.36g(ポリビニルアルコール構造単位成分:0.
983g、0.0223モル)(実施例30の場合)、
ポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業(株)製、平
均重合度:1500、ケン化度:98.4モル%)1.
0g(ポリビニルアルコール構造単位成分:0.983
g、0.0223モル)(実施例31の場合)およびポ
リビニルアルコール粉末(和光純薬工業(株)製、平均
重合度:2000、ケン化度:98.8モル%)0.9
9g(ポリビニルアルコール構造単位成分:0.983
g、0.0223モル)(実施例32の場合)を使用し
たこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。各実施
例において得られた粉末の炭酸エステル化PVA誘導体
の収量および0.5NNaOH溶液加水分解法で求めら
れた炭酸エステル化度(E)は、実施例30ではそれぞ
れ1.003gおよび46.93モル%、実施例31で
はそれぞれ1.04gおよび50.56モル%、そし
て、実施例32ではそれぞれ1.10gおよび58.4
9モル%であった。また、各実施例において、得られた
炭酸エステル化PVA誘導体のIRスペクトルおよびN
MRスペクトルの測定結果から、環状炭酸エステル構
造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸エステル構造
の存在に基づく吸収が確認された。なお、実施例32に
おいて、得られた炭酸エステル化PVA誘導体およびそ
のフィルムの物性測定用試験片を用いての物性測定結果
を表3に示す。
【0101】実施例33および34 実施例1の炭酸ジメチル(宇部興産(株)製、純度:9
9.0重量%)2.4ml(2.568g、0.028
5モル)に代えて、実施例33においては、炭酸ジエチ
ル(和光純薬工業(株)製、純度:98重量%)3.5
ml(3.344g、0.0283モル)を、実施例3
4においては、炭酸ジn−ブチル(和光純薬工業(株)
製、純度:98重量%)5.2ml(4.96g、0.
0285モル)を使用したこと、および、反応系全体が
60mlとなるように、ジメチルスルホキシドの合計添
加量を、実施例1の57.6mlに変えて、実施例33
の場合は56.5ml、実施例34の場合は54.8m
lとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
反応中、ゲル状物の発生は、いずれの場合も認められな
かった。得られた粉末の炭酸エステル化PVA誘導体の
収量および0.5NNaOH溶液加水分解法で求められ
た炭酸エステル化度(E)は、実施例33ではそれぞれ
1.19gおよび51.27モル%、そして、実施例3
4ではそれぞれ1.16gおよび50.74モル%であ
った。また、得られた炭酸エステル化PVA誘導体のI
RスペクトルおよびNMRスペクトルの測定結果から、
実施例33および実施例34のいずれの場合も、環状炭
酸エステル構造、モノ炭酸エステル構造および架橋炭酸
エステル構造の存在に基づく吸収が確認された。
【0102】比較例1 ブランク試験として、炭酸ジメチル(宇部興産(株)
製、純度:99.0重量%以上)および触媒としてのT
BAB(市販特級品)を添加しなかったこと、および、
ジメチルスルホキシド(市販特級品)の合計添加量を5
7.6mlに変えて60mlとしたこと以外は、実施例
1と同様の操作を行った。得られた固形物の量および
0.5NNaOH溶液加水分解法で求められた炭酸エス
テル化度(E)は、それぞれ、0.986gおよび実質
的に0モル%であった。すなわち、得られた固形物は未
反応の原料ポリビニルアルコールそのものであることが
判った。また、得られた固形物およびそのフィルムの物
性測定用試験片を用いての物性測定結果は、表3に示す
通りであった。
【0103】
【表3】
【0104】比較例2 内容積が200mlのガラス製オートクレーブに、あら
かじめ60℃で3時間以上減圧乾燥したポリビニルアル
コール粉末(日本合成化学工業(株)製、銘柄:NH−
18、平均重合度:1800、ケン化度:98.3モル
%)1.0g(ポリビニルアルコール構造単位成分:
0.983g、0.0223モル)と、30mlのジメ
チルスルホキシド(市販特級品)を投入し、窒素ガスで
パージした後、攪拌しながら80℃で5時間加熱して、
ポリビニルアルコール粉末をジメチルスルホキシドに溶
解させた。次いで、攪拌を行いながら、220℃まで昇
温を続けたところ、上記溶液は、昇温過程で黄色に着色
しだし、220℃到達時には褐色になると同時に流動し
なくなり、約1時間後には黒褐色のゲル状となり、攪拌
が困難となったため、加熱攪拌を中止した。
【0105】比較例3 比較例2と同様のガラス製オートクレーブを使用して、
比較例2と全く同様の処理を行い、ポリビニルアルコー
ルのジメチルスルホキシド溶液を調製した。次いで、こ
の溶液に触媒としてのTBAB(市販特級品)63mg
(1.96×10-4モル)と、炭酸ジメチル(宇部興産
(株)製、純度:99.0重量%以上)2.4ml
(2.568g、0.0285モル)とを加えた後、反
応系全体が60mlとなるよう、ジメチルスルホキシド
(市販特級品)27.6ml(ジメチルスルホキシドの
添加量は合計で57.6ml)をさらに加え、窒素ガス
でパージした。前記炭酸ジメチルを加えたとき、一部ポ
リマーが析出したため、80℃で30分間攪拌して完全
に溶解し、その後220℃まで昇温してポリビニルアル
コールの炭酸エステル化反応を試みた。上記溶液は、2
20℃への昇温過程から黄色に着色しだし、220℃へ
の昇温完了時には褐色になると同時に流動しなくなり、
約1時間後には黒褐色のゲル状となり、攪拌が困難とな
ったため反応を停止した。
【0106】前記比較例2および本比較例の結果から、
反応温度を220℃にしたケースでは、炭酸ジメチルが
全く関与しない、つまり、原料ポリビニルアルコール自
身の分解とポリマー分子間の架橋反応とが支配的と推定
された。したがって、本比較例の生成物は、さらに化学
構造および物性を評価するに値しないものであった。
【0107】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、ポ
リマー分子内に6員の環状構造の炭酸エステルを持ち、
水溶性のものから水不溶性のものに至るまでの種々の物
理的、化学的性質を備えた新規な炭酸エステル化PVA
誘導体が得られる。また、本発明の方法によれば、対応
するモノマーからは合成不可能な上記炭酸エステル化P
VA誘導体を効率よく製造することができ、得られる炭
酸エステル化PVA誘導体も高品質なものとなる。した
がって、本発明の炭酸エステル化PVA誘導体は、得ら
れる該ポリマーエステルの物理的、化学的性質に応じ
て、繊維加工剤、紙加工剤、乳化安定剤、接着剤、粘着
剤、フィルムなどポリビニルアルコール本来の用途に使
用される他、水不溶性のものは単独で、あるいは、該ポ
リマーエステルと相溶性のある他の樹脂や可塑剤と混合
してこれらを改質することにより、塗料、接着剤、バイ
ンダーなどへの応用に有効に利用され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた炭酸エステル化PVA誘導
体のIRスペクトルとポリビニルアルコールのIRスペ
クトルを比較して示した図である。
【図2】実施例1で得られた炭酸エステル化PVA誘導
体の 1H−NMRスペクトルと各シグナルの帰属を示す
図である。
【図3】実施例1で得られた炭酸エステル化PVA誘導
体の13C−NMRスペクトルと各シグナルの帰属を示す
図である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I) 【化1】 (ただし式中、aは、該式で示される繰り返し単位から
    なる構造の、炭酸エステル化ポリビニルアルコール誘導
    体(以下「炭酸エステル化PVA誘導体」という)中に
    おけるモル分率を示す)で示される繰り返し単位からな
    る環状炭酸エステル構造と、下記一般式(II) 【化2】 (ただし式中、bは、該式で示される繰り返し単位から
    なる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体中におけるモ
    ル分率を示す)で示される繰り返し単位からなるポリビ
    ニルアルコール構造とを少なくとも含み、かつ、前記a
    およびbの値が下記数式(I) 【数1】 (ただし式中、aおよびbは、それぞれ、前記一般式
    (I)におけるaおよび前記一般式(II)におけるbと
    同じ意味を表わす)を満足することを特徴とする炭酸エ
    ステル化PVA誘導体。
  2. 【請求項2】 前記一般式(I)(ただし式中、aは、
    該式で示される繰り返し単位からなる構造の、炭酸エス
    テル化PVA誘導体中におけるモル分率を示す)で示さ
    れる繰り返し単位からなる環状炭酸エステル構造、前記
    一般式(II)(ただし式中、bは、該式で示される繰り
    返し単位からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体
    中におけるモル分率を示す)で示される繰り返し単位か
    らなるポリビニルアルコール構造および下記一般式(II
    I) 【化3】 (ただし式中、cは、該式で示される繰り返し単位から
    なる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体中におけるモ
    ル分率を示し、0〜0.3の範囲の値である)で示され
    る繰り返し単位からなるポリ酢酸ビニル構造を含み、か
    つ、下記一般式(IV) 【化4】 (ただし式中、R1 は、1〜4個の炭素原子を有するア
    ルキル基を表わし、dは、該式で示される繰り返し単位
    からなる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体中におけ
    るモル分率を示す)で示される繰り返し単位からなるモ
    ノ炭酸エステル構造、および/または、下記一般式
    (V) 【化5】 (ただし式中、eは、該式で示される繰り返し単位から
    なる構造の、炭酸エステル化PVA誘導体中におけるモ
    ル分率を示す)で示される繰り返し単位からなる架橋炭
    酸エステル構造を含有し、さらに、前記a〜eの値が下
    記数式(II) 【数2】 (ただし式中、a、b、dおよびeは、それぞれ、前記
    一般式(I)、(II)、(IV)および(V)における
    a、b、dおよびeと同じ意味を表わす)および下記数
    式(III) 【数3】 (ただし式中、a〜eは、それぞれ、前記一般式(I)
    〜(V)におけるa〜eと同じ意味を表わす)を同時に
    満足することを特徴とする炭酸エステル化PVA誘導
    体。
  3. 【請求項3】 ポリビニルアルコールと下記一般式(V
    I) 【化6】 (ただし式中、R1 は、前記一般式(IV)におけるR1
    と同じ意味を表わし、R 2 は、1〜4個の炭素原子を有
    するアルキル基を表わす。なお、R1 とR2 は、同一で
    も異なっていてもよい)で示される炭酸ジアルキルを反
    応せしめることを特徴とする請求項1または2に記載の
    炭酸エステル化PVA誘導体の製造方法。
  4. 【請求項4】 エステル化反応触媒の存在下もしくは不
    存在下に無溶媒状態で、炭酸ジアルキルの融点以上、か
    つ200℃以下の温度において、ポリビニルアルコール
    と炭酸ジアルキルとを反応せしめることを特徴とする請
    求項3に記載の炭酸エステル化PVA誘導体の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 反応溶媒中、エステル化反応触媒の存在
    下もしくは不存在下に、該反応溶媒の融点以上、かつそ
    の沸点以下の温度において、ポリビニルアルコールと炭
    酸ジアルキルとを反応せしめることを特徴とする請求項
    3に記載の炭酸エステル化PVA誘導体の製造方法。
  6. 【請求項6】 反応溶媒が水、非プロトン性極性溶媒お
    よび水−非プロトン性極性溶媒混合溶液からなる群より
    選ばれる少なくとも1種以上の溶媒であることを特徴と
    する請求項5に記載の炭酸エステル化PVA誘導体の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 エステル化反応触媒がアルキルアンモニ
    ウム塩、ピリジニウム塩、ジアザビシクロアルケン類、
    第3級アミン、アルキルアンモニウム基もしくは第3級
    アミノ基を含有するイオン交換樹脂およびアルカリ性触
    媒からなる群より選ばれる塩基触媒であることを特徴と
    する請求項3〜6のいずれか1項に記載の炭酸エステル
    化PVA誘導体の製造方法。
  8. 【請求項8】 炭酸ジアルキルが炭酸ジメチルであるこ
    とを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の炭
    酸エステル化PVA誘導体の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001247738A (ja) * 2000-03-06 2001-09-11 Unitika Chem Co Ltd ポリビニルアルコール系樹脂組成物およびそれを主成分とする紙コート剤
JP2008088328A (ja) * 2006-10-03 2008-04-17 Nitto Denko Corp カーボネート化ポリビニルアルコールおよびその製造方法ならびにゲル状電解質

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