JPH09256198A - ステンレス冷延鋼帯の電解脱スケール方法 - Google Patents

ステンレス冷延鋼帯の電解脱スケール方法

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JPH09256198A
JPH09256198A JP5968696A JP5968696A JPH09256198A JP H09256198 A JPH09256198 A JP H09256198A JP 5968696 A JP5968696 A JP 5968696A JP 5968696 A JP5968696 A JP 5968696A JP H09256198 A JPH09256198 A JP H09256198A
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electrode
electrolytic
steel strip
descaling
cathode
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JP5968696A
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Shigeru Kitani
滋 木谷
Tetsuaki Tsuda
哲明 津田
Koichi Takeuchi
孝一 武内
Hiroshi Takebayashi
浩史 竹林
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】電流効率を高め、脱スケールを確実に行って脱
スケール不足を防止する、ステンレス冷廷鋼帯の電解脱
スケール。 【解決手段】電極としてガス拡散電極を用いる、ステン
レス冷廷鋼帯の表面に生成したスケールを間接通電法に
より電解脱スケールする方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼を冷
間圧延した後、焼鈍するこにより生成したステンレス鋼
帯表面の脱スケール方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス冷延鋼板の工業的製造工程中
には、冷間圧延した鋼帯を焼鈍することによって生成し
た酸化スケールを電解によって連続的に除去する工程が
ある。近年、一般に行われている電解脱スケール法は、
硫酸ナトリウムのような中性の電解質水溶液中で電解す
る方法であり、これは通常中性塩電解法と呼ばれてい
る。
【0003】図2は、間接通電式中性塩電解法によるス
テンレス冷延鋼帯の脱スケールにおける電極反応模式図
である。中性塩電解槽には電解のための電極(陽極およ
び陰極)が、例えば図2のように電解液中に配列されて
いる。鋼帯がこれらの電極の近傍を通過する際に、電流
が陽極→地金→陰極のように流れることによって、鋼帯
表面が電解され、それに伴って酸化スケール中のCr、Mn
あるいはFeの酸化物がCr2O7 2-、MnO4 -あるいはFeO4 2-
して溶解し、このような作用で脱スケールが行われる。
また、中性塩電解質の外に、硝酸や硫酸の水溶液を用い
て電解脱スケールを行うこともある。図2のように、電
極から電解液を介して間接的に鋼帯に通電する方法を間
接通電法と呼んでいる。
【0004】電解脱スケール用電極としては、従来高珪
素鋳鉄製のものが多用されてきたが、近年はチタンに貴
金属メッキを施したものやステンレス鋼製のものも用い
られるようになってきた。例えば、特開平2-310398号、
特開平4-45300号各公報には、ステンレス鋼帯の中性塩
電解脱スケール設備の陽極としてイリジウム等の白金族
元素の酸化物で被覆したチタン電極を用い、陰極として
ステンレス鋼やチタン製電極を用いる方法が開示されて
いる。
【0005】一方、ステンレス鋼焼鈍材の脱スケール速
度を速め、脱スケールを効率的に行う方法についての研
究も数多く行われている。例えば、塩素イオンを含有す
る水溶液中で電解する方法として、特開昭 50-102534号
公報には硫酸と塩化ナトリウムの水溶液や塩酸水溶液、
特開昭 63-216999号公報には硝酸と塩酸、硝酸と塩化第
二鉄等の水溶液で電解する方法が開示されている。
【0006】酸洗工程における生産性向上のためには酸
洗反応速度の向上が不可欠である。このため、現在まで
に酸濃度や液温を高める等の方法が採られているが、こ
れらの方法による酸洗反応の促進には限界があり、従来
の浸漬のみによる酸洗方法では、これ以上の生産性向上
は望めなくなっている。
【0007】酸洗における反応は、金属や金属酸化物を
より可溶性の高い金属イオンへと酸化させる酸化還元反
応であるから、鋼帯を酸液中で電解することにより、脱
スケールを電気化学的に促進できることが期待される
が、後述する諸問題により、実ラインではほとんど普及
していない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】焼鈍後のステンレス冷
延鋼帯を間接通電法で中性塩電解した場合、鋼帯表面で
はCrやMn酸化物の溶解が起こると同時に、水素ガスや酸
素ガスも多かれ少なかれ発生する。また、同時に陽極表
面では酸素ガス、陰極表面では水素ガスが発生する(図
2参照)。これらのガスは最初は小さな気泡として電極
面に付着しているが、ある程度の大きさに成長すると電
極面から離脱するという過程を次々と繰り返すものと推
測される。このような気泡の付着→離脱は電解液の撹拌
というプラスの効果をもつ反面、電解電流の不安定化と
いうマイナス効果を示す。さらに詳しく言えば、気泡の
離脱は流速が速いほど起こりやすいので、鋼帯の通板速
度が速い場合にはこれに伴う電解液の流れが速まって、
電極に付着した気泡は離脱しやすいが、通板速度が遅い
場合には離脱しにくいので、電解電流は不安定になりや
すいと推測される。電解電流が不安定になると、当然、
脱スケールが不十分な部位が発生しやすくなるので、こ
れを防止するためには過剰の電解電流を流したり、ポン
プ等を用いて電解液の流速を強制的に大きくする等の対
策が必要となるが、これらはいづれもコストアップの要
因となるので好ましくない。
【0009】本発明の目的は、ステンレス冷延鋼帯の電
解脱スケールにおいて、電流効率を高め、脱スケールを
確実に行って脱スケール不足を防止することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ステンレ
ス冷延鋼帯の電解脱スケール工程での脱スケール不足の
改善を目指し、電解脱スケール時の化学反応現象等につ
いて詳細な研究調査を行った結果、下記の知見を得た。
【0011】A)電解脱スケールで鋼帯下面に脱スケー
ルムラ、スケール残りや肌荒れを生じるのは、下電極表
面で発生した気泡がある程度の大きさになった後、電極
から離れて鋼帯下面に付着し、そこでの電解反応が気泡
の付着していない場所に比べ不均一となるためである。
【0012】B)脱スケール速度を向上させるために電
流量を増加すると上電極の電流効率が悪化するのは、電
極表面(下面)で発生したガスが気泡としてある程度の
大きさに成長するまで電極表面(下面)に付着している
ので、電極と電解液との接触面積が少なくなるためであ
る(図2参照)。
【0013】C)ステンレス鋼等の高級材料に適用され
ている電解脱スケール法で用いられているような金属電
極を普通鋼の電解脱スケールに適用すると、陽極表面に
O2ガスが発生し、更に、塩酸などハロゲンイオンを含有
する電解液中ではCl2などのハロゲンガスが発生する。
これらの腐食性の高いガスが存在する溶液中では、電極
の腐食が速く、電極の寿命が短い。
【0014】D)電解脱スケールにガス拡散電極を用
い、水素ガスを流しながら電解脱スケールを行うと、溶
出したFeイオンがFe2+の形になるので電解液の劣化
を防止することができる。
【0015】E)ガス拡散電極を用いると、従来の電極
を用いた場合に比べて、電極に印加する電圧を10〜2
0V低くすることができる。
【0016】この発明は、このような知見に基づき完成
されたもので、その要旨は以下の通りである。
【0017】「ステンレス鋼冷延鋼帯の表面に生成した
スケールを間接通電法により電解脱スケールする方法で
あって、電極としてガス拡散電極を用い、必要により、
電解液として、塩素イオンまたは/およびフッ素イオン
を含む硝酸水溶液を用いるステンレス鋼帯の脱スケール
する方法、およびこれらの方法において、強酸を主成分
とする電解液を用いる場合は、下記式(1)を満足する
電圧を、塩類を主成分とする電解液を用いる場合は、下
記式(2)を満足する電圧を陽極と陰極間に印加して電
解することを特徴とするステンレス冷延鋼帯の電解脱ス
ケール方法。
【0018】E < 2 × L ・・・・・・・・・・・・・・ (1) E < 6 × L ・・・・・・・・・ (2) ここで、E:印加電圧(V) L:陽極または陰極の電解面と鋼帯の電解面との距離
(cm) ただし、陽極および陰極のどちらか一方にのみにガス拡
散電極を用いる場合は、(1)および(2)式の右辺に
10ボルトを加えるものとする。」 ガス拡散電極の構造、作り方、性能等については、「鉄
と鋼」第78年(1992年)第3号、354〜359ページに開示さ
れている。ガス拡散電極は疎水性のガス拡散層、親水性
の反応層および集電体から構成されており、ガス拡散層
に供給された水素ガスが層内の細孔を通って反応層に達
し、電気化学反応によって酸化されて水素イオンになる
ことによって、陽極としての機能をはたす。また、陰極
として用いた場合には、反応層で水素イオンが還元され
て水素ガスを生じるが、これはガス拡散層を通って電極
外へ出る。このガス拡散電極は、めっき及び金属薄膜製
造用の電極として用いられている。
【0019】図3は、間接通電法の電解脱スケールの電
極にガス拡散電極を用い、ガス拡散電極に水素ガスを流
した場合の図である。
【0020】鋼板1に対面させて陽極9と陰極10が設
けられている。
【0021】ガス拡散電極は、集電体6、ガス拡散層7
および反応層8とからなっている。陽極電極の電解面で
は水素ガスが水素イオンになる反応が起きるため水素ガ
スは発生しない。
【0022】すなわち、陽極では通電によって、 H2→2H++2e- ・・・・・(3) なる反応が起こり、酸素ガスやハロゲンガスが発生する
ことはなく通電が可能となる。また、陰極では通電によ
って、 2H++2e-=H2 ・・・・・(4) なる反応が起こる。陰極では、電解液中の水素イオンが
電極表面で水素ガスに変わり、これは電極の拡散層を通
って外部へ放出される。
【0023】通電に伴い陽極側では水素ガスが消費され
るため、反応量に応じて陽極ガス拡散層内に水素を供給
する必要がある。この水素ガス供給は外部から行うか、
陰極のガス拡散電極表面で発生した水素ガスを陽極に輸
送することでも補給可能である。
【0024】図4は、ガス拡散電極に酸素ガスを流して
用いた場合の図で、陽極電極表面では酸素ガスが発生す
るけれども、これも電極の拡散層を通って外部や陰極へ
移動するため、気泡として電極表面に付着しないのであ
る。
【0025】すなわち、陽極では通電によって、 2OH-→2H++O2+4e- ・・・・・(5) となる反応が起こり酸素ガスが発生するが、これは電極
のガス拡散層を通って電極内部に移動し、電極表面で気
泡として発生することはなく通電が可能となる。通電に
伴い陽極内では酸素ガスが生成されるため、反応量に応
じて陽極ガス拡散層内から酸素ガスを排除する必要があ
る。この酸素ガスは外部へ排気するか、同時に陰極にも
ガス拡散電極を用いて、陰極ガス拡散層内へ輸送するこ
とによって、 2H++O2+4e-→2OH- ・・・・・(6) なる陰極反応として消費することも可能である。
【0026】
【発明の実施の形態】ステンレス鋼冷延鋼帯の表面に付
着したスケールは、普通鋼のスケールに比べ除去するの
が困難である。また、ステンレス鋼の鋼種によっても脱
スケールの難易度は異なる。
【0027】例えば、SUS430LXのスケールのようにスケ
ール中にSi酸化物を多量含むような場合は脱スケール
が困難となる。また、SUS304等のように、スケール中に
Cr酸化物を多量に含むオーステナイト系ステンレス鋼
の場合の脱スケールは比較的容易である。
【0028】図1は、ステンレス鋼の電解脱スケール装
置の例を示す図である。鋼板(鋼帯)1は、電解液が満
たされた第1槽2の中に設けられた電極5の間を通過
し、一次脱スケールが施され、次いで水洗装置3で鋼板
表面に付着している電解液が除去され、次いで第2槽中
の電極間を通過しながら2次脱スケールが施される。こ
の例では、電極は第1槽および2槽とも陽極、陰極の対
を上下2組を用いた例である。
【0029】ガス拡散電極は、第1槽、2槽の全ての電
極に用いるのが好ましい。しかし、ステンレス鋼の場合
前記したように鋼種により脱スケールの難易度が異なる
ので、脱スケールが容易な鋼種は、第1槽のみ電解と
し、第2槽は単なる浸漬による酸洗でよい場合がある。
例えば、冷間圧延したSUS304鋼帯を連続焼鈍、酸洗する
場合には、第1槽で中性塩電解脱スケール処理後、第2
槽でフッ素イオンを含む硝酸水溶液に浸漬する方法でも
よい。また、フェライト系ステンレス鋼の場合には、第
1槽、第2槽共電解する必要があるが、SUS304のように
スケール中のCr酸化物が多く、Si酸化物が比較的少
ないような場合には、第1槽のみガス拡散電極を用い第
2槽には通常のに金属電極を用いてもよい。逆に、第1
槽に金属電極、第2槽にガス拡散電極を用いてもよい。
ステンレス鋼の場合は、ガス拡散電極を陽極、陰極のど
ちらに用いても効果はほぼ同じであり、陽極のみガス拡
散電極を用い、陰極には金属電極を用いてもよい。
【0030】次に、電極に印加する電圧であるが、ガス
拡散電極を用いることにより、従来の電極を用いた場合
にくらべ10〜20V低くすることができる。その理由
は、次のように考えられる。
【0031】1)電極表面で起きる水素ガスの酸化反応
式(3)、水素ガスの発生反応式(4)、および酸素ガ
ス発生反応式(5)が、ガス拡散電極反応槽層の触媒の
働きにより円滑に進む。
【0032】2)電極表面での水素ガスや酸素ガスの発
生が非常に少ないので、これらのガスの気泡でおおわれ
る面積が小さく(有効面積が大きい)、見掛けの表面電
気抵抗が小さい。脱スケールに必要な電流をIとする
と、 I= E1/ R1 = E2/R21、E2え:ガス拡散電極および従来電極を用いた場合
の表面電気抵抗による電圧降下量 R1、R2:ガス拡散電極および従来電極の見掛けの表面
電気抵抗 の関係があるが、もしR1<R2であるなら、E1<E2
なり、電極表面での電圧降下が小さいので、その分印加
電圧が低くてよい。また、ガス発生が少ないと、印加電
圧が低くなり、これがガス発生を少なくするという好循
環を生み、印加電圧が低くても充分脱スケールが可能と
なる。
【0033】本発明で使用可能な電解液は、電気化学反
応によって脱スケールを行う方法であるため、通電状態
で金属もしくは金属酸化物を溶解する作用のある電解質
を含む溶液であればよい。例えば、中性塩の水溶液等で
ステンレス鋼の脱スケールを行うことができる。
【0034】ステンレス冷延鋼帯の脱スケールにおいて
は、硝酸あるいは硝酸に塩素イオンまたは/およびフッ
素イオンを添加した溶液中で水素ガスを流したガス拡散
電極を用いてステンレス鋼帯を間接通電法で電解酸洗す
る場合には、上記の気泡発生防止以外に、電解液の劣化
が少ないというプラス効果が得られる。
【0035】すなわち、これらの電解液中でステンレス
鋼を電解酸洗する場合、処理量が増すにつれて同じ電流
密度で電解しても、酸洗速度が徐々に遅くなる現象が現
れるが、これは溶液中のFe3+イオンが増加してステンレ
ス鋼の酸洗を阻害するためと推測される。従来の間接通
電法で用いられる高珪素鋳鉄等の陽極表面では、ステン
レス鋼の酸洗によって溶出したFe2+イオンが酸化されて
Fe3+イオンになる反応が不可避であるため、電解液の劣
化が起こりやすい。しかし、ガス拡散電極を陽極として
用いれば、表面電位が従来の電極よりはるかに卑であ
り、Fe2+→Fe3+の反応が起こりえないので、液の劣化が
起こりにくいものと推測される 強酸を主成分とする電解液を使用する場合は、塩類を主
成分とする電解液を使用する場合とでは、電気抵抗がか
なり小さくなる。すなわち、電極の電解面と鋼帯の電解
面の間に存在する電解液に流れることにより生じる電圧
降下が、強酸を主成分とする電解液の方が塩類を主成分
にする電解液より、かなり小さいためと推測される。し
たがって、前者の場合は、下記式(1)を満足する電圧
を、後者の場合は下記式(2)を満足する電圧を陽極お
よび陰極に印加して電解するのが好ましい。
【0036】E < 2 × L ・・・・・・・・・・・・・・ (1) E < 6 × L ・・・・・・・・・ (2) L:陽極または陰極の電解面と、鋼帯の電解面との距離
(cm) ただし、陽極および陰極のどちらか一方にのみにガス拡
散電極を用いる場合は、(1)式の右辺に10ボルトを
加えるものとする。
【0037】ただし、強酸を主成分とする電解液を使用
する場合は、通常0.2×Lボルト未満では電圧が低す
ぎて電解時間が長くなり、電解効率が下がるので、0.
2×Lボルト以上とするのが好ましい。一方、2×Lボ
ルトを超えると電力が無駄になり、気泡の発生がしやす
くなる。また、塩類を主成分とする電解液を使用する場
合には、通常0.6×Lボルト未満では電解時間がなが
くなり、効率がわるくなるので、0.6×Lボルト以上
とするのが好ましい。一方、6×Lボルト以上の電圧で
は電力が無駄になり、気泡の発生がしやすくなる。
【0038】なお、ガス拡散電極は、陽極および陰極の
がどちらか一方に用いても、効果はほぼ同じであること
は前述した通りであるが、その場合は従来の電極を用い
た極では気泡が発生して電極表面を覆い、見掛けの電気
抵抗が増加するため上記(1)、(2)式の右辺に10
Vを加算する必要がある。ここで、強酸とは、水溶液中
で水素イオンと陰イオンにほぼ100%解離する酸であ
り、具体的には塩酸、硝酸や硫酸等である。
【0039】また、塩類とは、いわゆる中性電解法に用
いる硫酸ナトリウム等の塩類である。
【0040】なお、この発明でいうステンレス冷延鋼帯
は、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイトステン
レス鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼のいずれの鋼
帯をも含むものである。
【0041】特に陽極としてガス拡散電極を用いた場
合、陽極表面に酸素や有害ガスが発生すると共に、腐食
性の高いガスにより電極の消耗が激しいという弊害を防
止することができる。
【0042】
【実施例】
(実施例1)電解面積100×200mmのガス拡散電極を以下
の方法で製作した。
【0043】反応層用原料粉末は親水性または疎水性カ
ーボンブラックとポリテトラフルオロエチレンを溶媒に
分散、混合し、凝集、ろ過、乾燥することによって製作
した。また、拡散層用原料粉末は疎水性カーボンブラッ
クとポリテトラフルオロエチレンを溶媒に分散させ、ろ
過、乾燥して製作した。これらの粉末と溶媒をこね合わ
せて餅状にし、別々にロールで圧延してシート化したの
ち、両者を重ねて再びロール圧延し、シート状にした。
さらに、熱処理等の工程を経た後、ホットプレスし、塩
化白金酸水溶液を塗布して、水素炉で還元してガス拡散
電極用膜を製作した。
【0044】図5は、上記の方法で作成した膜を用いて
製作したガス拡散電極の断面構造を示す図である。ガス
拡散層7には、その一面に集電体6と、他の面に反応層
8が接合されている。このガス拡散電極を図1の連続電
解処理装置に、電極の電解面と鋼帯の電解面との距離を
10mmとして組み込んだ。
【0045】この装置で、表1に示す化学組成の幅50mm
のステンレス鋼冷延・焼鈍鋼帯の脱スケールを実施し
た。
【0046】
【表1】
【0047】使用した電解液は、表2に示す5種の溶液
である。電極は、表3に示す水素ガスと酸素ガスを使用
したガス拡散電極と、比較のためのガス拡散電極と同じ
サイズの高珪素鋳鉄、ステンレス鋼板(SUS304)または
酸化イリジウム被覆チタン板の電極である。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】このような装置、電解液、電極を用い、表
4に示すように電解液と電極を種々組み合わせて電解脱
スケールを実施した。
【0051】
【表4】
【0052】試験NO.1〜4は供試材がCの SUS304であ
り、スケール除去は比較的容易なので電解脱スケール
後、第2槽で電極への通電を止め浸漬酸洗処理を行っ
た。
【0053】ステンレス鋼冷延焼鈍材の脱スケールにお
いては、最初にスケール外層のCr濃度の高い酸化物層を
溶解する必要があるため、図1の第1槽は中性塩電解専
用(電解液aのみ)としたが、第2槽はb〜eの溶液に
入れ換えて、電解または浸漬のみで脱スケール・酸洗処
理を行った。酸洗後の鋼帯より一部を切り出し、光学顕
微鏡で観察して表面の残存スケールの程度を3段階評価
した。試験結果を表4に示す。
【0054】表4の試験結果から明かなように、本発明
例のように、ガス拡散電極を対極として間接通電法によ
る電解脱スケールを行ったものは全て脱スケールが完全
に行われ、光学顕微鏡観察によってもスケール残りが全
く認められなかった。それに対して、比較例のように、
高珪素鋳鉄、酸化イリジウム被覆チタンまたはステンレ
ス鋼製対極を用いた場合には、脱スケールが多かれ少な
かれ不十分となり、光学顕微鏡によって残存スケールが
観察された。
【0055】また、ガス拡散電極を使用することによ
り、同じ電流であっても、従来の電極に比べて印加電圧
が低くなり、消費電力(電圧×電流)が大幅に少なくな
ることがわかる。
【0056】なお、溶液cやeのように、ふっ化水素酸
を含む電解液の中で、電極V、すなわち酸化イリジウム
被覆チタン製電極を用いて電解酸洗した場合には、この
電極自体が溶損するという不都合が生じた。これに対し
て、本発明例で用いたガス拡散電極は化学的にも安定で
あり、すべての溶液に対して、十分な耐久性を示した。
【0057】次に、前記の供試材Aのステンレス鋼冷延
・焼鈍鋼帯(板厚0.6mm、板幅50mm、長さ50m)数本を
準備した。最初に前記の表4の試験NO.5の条件(第1槽
での中性塩電解では金属電極、第2槽での硝酸溶液中電
解ではガス拡散電極使用)で上記4本の鋼帯を、新規に
調製した溶液を用いて脱スケール処理した。そして、各
鋼帯の後端付近からサンプリングした試料の表面を光学
顕微鏡で観察し、スケールの残存程度を調べた。次に、
槽の溶液を全て排出し、新たに同じ溶液を調製し直して
から表4の試験NO.7の条件(第1槽での中性電解ではス
テンレス鋼電極、チタン電極を、第2槽では硝酸溶液中
電解に高珪素鋳鉄電極使用)で4本の鋼帯を順次脱スケ
ール処理した。そして、再び各鋼帯の後端付近のスケー
ル残存程度を光学顕微鏡観察によって調査した。
【0058】図7は、電解液の劣化状態を示す図であ
る。この図より明かなように、ガス拡散電極を用いて電
解脱スケールした場合(図中a)には1〜4本目の全て
の鋼帯に全くスケール残りは観察されなかったが、高珪
素鋳鉄製電極を用いた場合(図中b)には、処理鋼帯数
が増すにつれてスケール残りが増加した。4本の鋼帯を
電解処理した後の第2槽の溶液(硝酸溶液)を分析した
ところ、ガス拡散電極電極を用いた場合の液中のFe3+
イオン濃度は1g/リットル以下であったが、高珪素鋳
鉄製電極を用いた場合の液中のFe3+ イオン濃度は26g/
リットルであり、このために酸洗能力が劣化したものと
推測される。
【0059】
【発明の効果】本発明の電解脱スケールによれば、冷間
圧延後焼鈍したステンレス鋼帯の脱スケールが確実に実
施できると同時に、電解電流や酸洗液の消費を削減でき
る。また、鋼材への気泡付着による脱スケールムラが無
くスケール残りや肌荒れがないため、製品的にも大幅な
品質向上をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】ステンレス冷延鋼帯の電解脱スケール装置を示
す図である。
【図2】ステンレス冷延鋼帯の電解脱スケールにおける
電極反応模式図である。
【図3】ガス拡散電極に水素ガスを流した場合の電極表
面反応模式図である。
【図4】ガス拡散電極に酸素ガスを流した場合の電極表
面反応模式図である。
【図5】ガス拡散電極の断面を示す図である。
【図6】普通鋼の連続電解処理装置をしめす図である。
【図7】電解液の劣化度を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹林 浩史 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ステンレス冷延鋼帯の表面に生成したスケ
    ールを間接通電法により電解脱スケールする方法であっ
    て、電極としてガス拡散電極を用いることを特徴とする
    ステンレス鋼帯の電解脱スケール方法。
  2. 【請求項2】請求項1の方法において、電解液として、
    塩素イオンまたは/およびフッ素イオンを含む硝酸水溶
    液を用いることを特徴とするステンレス冷延鋼帯の脱ス
    ケール方法。
  3. 【請求項3】強酸を主成分とする電解液を用い、下記式
    (1)を満足する電圧を陽極と陰極間に印加して電解す
    ることを特徴とする請求項1または2記載のステンレス
    冷延鋼帯の電解脱スケール方法。 E < 2 × L ・・・・・・・・・ (1) ここで、E:印加電圧(V) L:陽極または陰極の電解面と鋼帯の電解面との距離
    (cm) ただし、陽極および陰極のどちらか一方にのみにガス拡
    散電極を用いる場合は、(1)式の右辺に10ボルトを
    加えるものとする。
  4. 【請求項4】塩類を主成分とする電解液を用い、下記式
    (2)を満足する電圧を陽極と陰極間に印加して電解す
    ることを特徴とする請求項1または2記載のステンレス
    冷延鋼帯の電解脱スケール方法。 E < 6 × L ・・・・・・・・・ (2) ここで、E:印加電圧(V) L:陽極または陰極の電解面と鋼帯の電解面との距離
    (cm) ただし、陽極および陰極のどちらか一方にのみにガス拡
    散電極を用いる場合は、(1)式の右辺に10ボルトを
    加えるものとする。
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