JPH09235116A - 新規な層状ケイ酸塩及びその製造法 - Google Patents

新規な層状ケイ酸塩及びその製造法

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JPH09235116A
JPH09235116A JP4356896A JP4356896A JPH09235116A JP H09235116 A JPH09235116 A JP H09235116A JP 4356896 A JP4356896 A JP 4356896A JP 4356896 A JP4356896 A JP 4356896A JP H09235116 A JPH09235116 A JP H09235116A
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ナトリウム及び/又はリチウムから選ば
れたアルカリ金属、マグネシウム、ケイ素、酸素、水素
及びフッ素を主要構成元素とする、雲母様構造部とタル
ク様構造部の混合層構造をとる層状ケイ酸塩、並びにそ
の製造法。 【効果】 雲母様構造部とタルク様構造部の混合層構造
をとる新規な層状ケイ酸塩である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な層状ケイ酸
塩及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、代表的な層状ケイ酸塩の1つであ
るフッ素雲母の合成法としては、シリカ、酸化マグネシ
ウム、アルミナ及びフッ化物等を原料として1,300
℃以上の高温で溶融し徐冷する溶融法や、長石、カンラ
ン石、石英及びフッ化物等の混合物を1,000℃前後
で反応させる固相反応法、並びにタルクとケイフッ化ア
ルカリを1,000℃前後で反応させるインターカレー
ション法が知られており、これらの方法で造られる合成
雲母の大部分は、次の一般式(3) :
【0003】
【化5】X0.5-1.0 2-3 (Z4 10)F2 (3) (式中、Xは層間イオンで配位数12の陽イオン、Yは
八面体を形成している配位数6の陽イオン、Zは四面体
を形成している配位数4の陽イオンを表す。)で示され
る。
【0004】前記式(3) において、XはK+ 、Na+ 、Li
+ 等であり、YはMg2+、Fe2+、Fe3+、Al3+、Co2+等であ
り、ZはSi4+、Ge4+、Al3+、Fe3+等の陽イオンのもの
が、一般によく知られている。また、一般式(3) 中のZ
が(Si4+,Mg2+)イオンからなる特殊な合成雲母とし
て、次の一般式(4) 又は(5) :
【0005】
【化6】 (Na,K)0.5-1.0 Mg2.5-3 [(Si3.5-4.0 Mg0-0.5)O10] (OH)2 (4)
【0006】
【化7】 (Na,K,Li)0.5-1.0 Mg2.5-3 [(Si3.5-4.0 Mg0-0.5)4 10] F2 (5) (式中、(Na,K,Li)は層間イオンで配位数12の陽
イオン、Mgは八面体シートを形成している配位数6の陽
イオン、(Si,Mg)は四面体シートを形成している配位
数4の陽イオンである。)に包括される雲母が立山等に
より報告されている(H. Tateyama, S. Shimoda and T.
Sudo, The crystal structure of synthetic MgIV mic
a. Zeitschrift furKristallographie,139, (1974) 196
-206;九州産業技術 No.13、1991.3、31−3
9頁;化学工業1989年6月号、61−67頁;日本
セラミックス協会1989年会講演予稿集282頁)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一般式(4) の合成雲母
は、新しいタイプの雲母であり、タルクとケイフッ化ア
ルカリを1,000℃前後で反応させる所謂インターカ
レーション法でつくられたものが報告されている。ここ
で得られた合成雲母は膨潤タイプと非膨潤タイプがあ
り、従来の雲母にない機能が数々報告されているが、合
成雲母の性質は複雑で、未知の部分が多い。本発明は、
従来と異なる特性を有する層状ケイ酸塩を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、タルクと
ケイフッ化アルカリを主原料とした加熱反応、所謂イン
ターカレーション法で得られた膨潤性層状ケイ酸塩を用
い、そこに含まれるナトリウム又はリチウムイオンをマ
グネシウムイオンでイオン交換後加熱した場合、生成物
の結晶構造がどのように変化するかを製造条件を変えて
検討を行い、ある条件下で製造した層状ケイ酸塩は、構
造的に従来にない新規な層状ケイ酸塩であることを見出
し、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明は、ナトリウム及び/又はリ
チウムから選ばれたアルカリ金属、マグネシウム、ケイ
素、酸素、水素及びフッ素を主要構成元素とする、雲母
様構造部とタルク様構造部の混合層構造をとる層状ケイ
酸塩、並びにその製造法に関するものである。なお、本
発明の層状ケイ酸塩は、2:1型構造をとるが、雲母様
構造部とタルク様構造部の混合層構造をとる関係上、鉱
物学的分類の雲母、バーミキュライト、スメクタイトの
いずれにも属さないものである。
【0010】なお、本発明でいう雲母様構造部とタルク
様構造部の混合層構造とは、2:1型の雲母成分層と、
2:1型のタルクと同一又は類似の成分層とが、規則的
あるいは不規則に積層した構造を意味する。ここで、タ
ルクと類似の成分層とはタルク成分中の(OH)-イオン
の1部又は全部がF-イオンに置換されている成分層を
意味する。
【0011】その層状ケイ酸塩粒子の雲母様構造部は、
式(1) :
【0012】
【化8】 (Na,Li)2X+2a (Mg3.0-X )[(Si4.0-a Mga )O10](F,OH)2 (1) (式(1) において、0≦X≦0.5、0≦a<0.5
0、0.15≦X+a≦0.5、Na,Liは層間にある配
位数12の陽イオンで、“,”は“及び/又は”を表
し、(Mg3.0-X )中のMgは八面体シートを形成している
配位数6の陽イオン、(Si4.0-a Mga )中のSiとMgは四
面体シートを形成している配位数4の陽イオンであり、
FとOHは陰イオンとして八面体シート中に存在する。)
で、タルク様構造部は、式(2) :
【0013】
【化9】Mg3.0 Si4.0 10(F,OH)2 (2) (式(2) において、Mgは八面体シートを形成している配
位数6の陽イオン、Siは四面体シートを形成している配
位数4の陽イオンであり、FとOHは陰イオンとして八面
体シート中に存在する。)で示されるものと判断され
る。
【0014】式(1) の(F,OH)2 中のOHはごく少量
で、Fが大部分であり、雲母様構造部とタルク様構造部
の割合は製造条件により異なるが、雲母様構造部:タル
ク様構造部=1:9〜9:1(層数比)の範囲にある。
また、本発明の層状ケイ酸塩の主要構成元素であるナト
リウム及び/又はリチウムから選ばれたアルカリ金属、
マグネシウム、ケイ素、酸素、水素、フッ素の他に微量
の鉄、アルミニウム、カルシウム等の元素が含まれてい
る場合、或いはそれらの微量元素で式(1) のナトリウム
及び/又はリチウムから選ばれたアルカリ金属、マグネ
シウム、ケイ素等が置換されている場合、又は式(1) の
F、OHの1部が 1/2Oに置換されているものも本質的に
は問題はないため、本発明の層状ケイ酸塩に包含され
る。
【0015】また、雲母様構造部において、層間のナト
リウム及び/又はリチウムから選ばれたアルカリ金属の
一部がマグネシウムで置換されているものも本質的に問
題はなく、本発明の層状ケイ酸塩に包含される。
【0016】本発明の層状ケイ酸塩は、ナトリウム及び
/又はリチウムから選ばれたアルカリ金属、マグネシウ
ム、ケイ素、酸素、水素及びフッ素を主要構成元素とす
る膨潤性層状ケイ酸塩の層間にマグネシウム(Mg)イオン
を導入し、加熱処理することにより得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明は、雲母様構造部とタルク
様構造部の混合層構造をとる層状ケイ酸塩に関するもの
であるが、本発明の方法で製造するには、原料としてナ
トリウム及び/又はリチウムから選ばれたアルカリ金
属、マグネシウム、ケイ素、酸素、水素及びフッ素を主
要構成元素とする膨潤性(膨潤性とは水中で膨潤する意
味)層状ケイ酸塩を使用する必要がある。本発明で使用
する膨潤性層状ケイ酸塩は2:1型構造をとり、広義の
雲母の範疇に属し、鉱物学的分類では雲母、バーミキュ
ライト、スメクタイトのいずれかに属するものである。
その一般式は、式(1) :
【0018】
【化10】 (Na,Li)2X+2a (Mg3.0-X )[(Si4.0-a Mga )O10](F,OH)2 (1) (式(1) において、0≦X≦0.5、0≦a<0.5
0、0.15≦X+a≦0.5、Na,Liは層間にある配
位数12の陽イオンで、“,”は“及び/又は”を表
し、(Mg3.0-X )中のMgは八面体シートを形成している
配位数6の陽イオン、(Si4.0-a Mga )中のSiとMgは四
面体シートを形成している配位数4の陽イオンであり、
FとOHは陰イオンとして八面体シート中に存在する。)
で示される。
【0019】本発明で使用する膨潤性層状ケイ酸塩は、
反応性、純度等の観点より、タルクとケイフッ化ナトリ
ウム及び/又はケイフッ化リチウムとを混合した微粉末
を700〜1200℃に加熱して得られるナトリウム及
び/又はリチウムから選ばれたアルカリ金属、マグネシ
ウム、ケイ素、酸素、水素及びフッ素を主要構成元素と
する膨潤性層状ケイ酸塩が望ましい。その方法で製造さ
れる膨潤性層状ケイ酸塩は、詳細には、特公平6−27
002号公報に記載されており、またコープケミカル
(株)よりソマシフ(ME−100)として市販されて
いるのでそれを用いてもよい。
【0020】本発明で使用する膨潤性層状ケイ酸塩は、
マグネシウムイオンとの交換反応及び加熱反応を円滑に
行うために平均粒径が数μm程度〜数十μmのものが望
ましく、粒径が大きい場合は粉砕した方が好ましい。膨
潤性層状ケイ酸塩の層間にあるNa,Liはイオンとして存
在し、水に該ケイ酸塩を分散させると、マグネシウムイ
オンとイオン交換をすることができる。Na,Liイオンの
陽イオン交換容量は、ケイ酸塩の種類や純度等により異
なるが、一般的には15〜150meq(ミリ当量)/
100gの範囲に入り、本発明で使用するケイ酸塩は5
0〜150meq(ミリ当量)/100g程度のものが
好ましい。
【0021】本発明では、膨潤性層状ケイ酸塩の層間に
マグネシウムイオンを導入するために、Mg塩水溶液中に
膨潤性層状ケイ酸塩を投入し、攪拌混合してイオン交換
する。Mg塩としては、Mgを含む各種の塩が使用でき、例
えばMg(NO3)2、MgSO4 、MgCl2 等が使用できる。Mg塩水
溶液濃度は特に制限はなく、Mg塩が溶解する濃度以下で
あればよい。
【0022】膨潤性層状ケイ酸塩中のNa,Liイオンのマ
グネシウムイオンによる交換量は、層間にあるそれらイ
オンの陽イオン交換容量の10〜90%が望ましい。
【0023】イオン交換反応において、反応温度は特に
制限はなく、室温で充分であり、反応時間は通常1〜2
4時間である。イオン交換反応後固形分を分離する。分
離はブフナー漏斗(濾紙を敷く)を用いた減圧濾過、或
いは遠心分離機による濾過等のごく普通の分離方法で行
い、分離後水洗する。
【0024】イオン交換したマグネシウムイオン量は、
イオン交換前後の水溶液中のマグネシウムイオン量の差
より求められる。イオン交換反応が予定量に達しない場
合は、交換反応を数回繰り返すことにより達成できる。
分離後の固形分は、いきなり高温に加熱するよりも、1
00℃以下で付着水を脱水し、パウダー状にしてから高
温で加熱処理した方が、均一でマイルドな反応を行わせ
るために好ましい。
【0025】予定量のマグネシウムイオンの交換をした
膨潤性層状ケイ酸塩は、100℃以下でパウダー状にな
るまで付着水を脱水した後、200〜1000℃、好ま
しくは300〜800℃で加熱処理する。200℃未満
では反応が充分進行せず、1000℃を超えると層状ケ
イ酸塩の分解反応がおこるため好ましくない。加熱処理
時間は処理容量、反応温度等により異なるが、通常1〜
5時間程度である。
【0026】加熱処理後の生成物について、29Siと1
のマジックアングルスピニングNMR(MAS NM
R)スペクトルを測定することにより構造解析すること
ができる。それで加熱処理後の生成物について、29Siと
1HのMAS NMRスペクトルの共鳴周波数を測定
し、その値よりテトラメチルシラン(TMS)の共鳴周
波数を差し引いた値(化学シフト、ppm単位)を求め
た。
【0027】ハイパワーデカップリング−MAS(HD
−MAS)法のスペクトルより求めた29Siの化学シフト
の値(ピーク値)は、ほぼ−99ppmと−95ppm
であり、また、クロスポーラリゼーション−MAS(C
P−MAS)法のスペクトルでは−99ppmのピーク
強度が強調され、−95〜−96ppmのピークは明確
に認められない。また、1HのMAS NMRスペクト
ルより求めた化学シフトは、タルクの0.7ppmに近
い値になる。
【0028】式(1) で示される膨潤性層状ケイ酸塩の29
SiのMAS NMRスペクトルより求めた化学シフトの
値は、ほぼ−95ppmであり、またタルク(理想式は
Mg3.0 Si4.0 10(OH)2 で示される。Mgは八面体シー
トを形成している配位数6の陽イオンであり、OHは陰イ
オンとして八面体シート中に存在する。)の化学シフト
の値は、ほぼ−98ppmである点より、前記した本発
明の層状ケイ酸塩のHD−MAS法のスペクトルより求
めた化学シフトの2つの値(ピーク値)をそれらの値と
比較すると2つのピーク値がほぼ一致することより、加
熱処理後の生成物が雲母様構造部とタルク様構造部の混
合層構造をとるものと判断される。
【0029】一方、29SiのCP−MASスペクトルでピ
ークが存在する場合は、29Siの周囲に1Hが存在するこ
とを示していると判断できるが、−99ppmのピーク
強度が強調され、−95〜−96ppmのピークは明確
に認められないのは、タルク様構造部の周囲にOHイオン
が存在し、雲母様構造部の周囲にはOHイオンが殆ど存在
しないことに起因すると判断される。また、1HのMA
S NMRスペクトルより求めた化学シフトが、タルク
の0.7ppmに近い値になる点もタルク様構造部の周
囲にOHイオンが存在していることを裏付けている。
【0030】これらのNMRスペクトルデータより、加
熱処理後の生成物は式(1) で示される雲母様構造部と式
(2) で示されるタルク様構造部の混合層構造をとってい
るものと判断され、また、式(1) の(F,OH)2 中のOH
は存在しても微量であると判断される。雲母様構造部と
タルク様構造部の割合は−99ppmと−95〜−96
ppmの強度比や組成分析値等より概略値を求めること
ができるが、その割合は製造条件によって異なり、本発
明では、雲母様構造部:タルク様構造部=1:9〜9:
1(層数比)の範囲にある。
【0031】なお、雲母とタルクの単なる混合物でない
ことは、電子顕微鏡による結晶表面観察による結晶の単
一性の確認、及びタルク様構造に起因するNMRスペク
トルがタルクとは完全に一致せず少しずれている点等よ
り明らかである。
【0032】
【実施例】以下に実施例によって本発明を更に詳しく説
明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り、本発明は実
施例に限定されるものではない。
【0033】(実施例1) 一般式:
【0034】
【化11】 (Na)2X+2a (Mg3.0-X )[(Si4.0-a Mga )O10](F,OH)2 (式中、0≦X≦0.5、0≦a<0.50、0.15
≦X+a≦0.5、Naは層間にある配位数12の陽イオ
ン、(Mg3.0-X )中のMgは八面体シートを形成している
配位数6の陽イオン、(Si4.0-a Mga )中のSiとMgは四
面体シートを形成している配位数4の陽イオンであり、
FとOHは陰イオンとして八面体シート中に存在する。)
で示されるコープケミカル(株)製の膨潤性雲母(ME
−100、陽イオン交換容量:70ミリ当量/100
g)1.5gを0.1規定の硝酸マグネシウム(Mg(N
O3)2)水溶液150mlにとり、1日攪拌処理後、固形
分を遠心分離した。以上の操作を7回繰り返し、陽イオ
ン交換処理を行なった。得られた固形分を風乾し、ナト
リウムイオンの80%がマグネシウムイオンで置換され
た層状ケイ酸塩を得た。このマグネシウムイオンで置換
された層状ケイ酸塩を磁性ルツボにとり、蓋をして60
0℃で3時間焼成して、本発明のナトリウム、マグネシ
ウム、ケイ素、酸素、水素及びフッ素を主要構成元素と
する、雲母様構造部とタルク様構造部の混合層構造をと
る層状ケイ酸塩を得た。
【0035】原料に用いたコープケミカル(株)製の膨
潤性雲母(ME−100)及び加熱後に得られた層状ケ
イ酸塩の化学組成(重量%)を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】ME−100は前記の化学組成を考慮する
と、次式(6) :
【0038】
【化12】 Na0.66Mg2.67Si4.0 10(F1.96,OH0.04) (6) (式中、Naは層間にある配位数12の陽イオン、Mgは八
面体シートを形成している配位数6の陽イオン、Siは四
面体シートを形成している配位数4の陽イオンであり、
FとOHは陰イオンとして八面体シート中に存在する。)
で示されるものと判断される。
【0039】得られた層状ケイ酸塩について、29Siと1
Hの固体NMRスペクトルを測定した。測定にはBru
ker製AC200に固体測定用のCP−MAS部を付
加した装置を用いた。29Si核の測定には、HD−MAS
法(繰り返し時間120秒)とCP−MAS法(繰り返
し時間5秒、接触時間4m秒)で測定した。1H核の測
定はシングルパルスで測定し、スペクトルはテトラメチ
ルシラン(TMS)の共鳴周波数からのずれをppm単
位で示した。
【0040】図1、図2に29SiのHD−MASとCP−
MAS法で測定したスペクトルを示す。HD−MAS法
のスペクトルでは、コープケミカル(株)製の膨潤性雲
母(ME−100)の場合は−95ppm付近にのみピ
ークを有しているが、加熱後の生成物では99ppm付
近にピークを有し、また−95〜−96ppm付近にシ
ョルダーピークが認められる。なお、タルクの場合は、
−98ppm付近にピークがある。
【0041】29SiのCP−MAS法で測定したスペクト
ルは、Si核の周りに固定化されたH核が存在している場
合にピークを有するので、今回の一連の実験では、OHイ
オンがSi核の周りにあるか否かを調べるために測定した
が、得られたスペクトルはー99ppm付近のピークが
強調され、−95〜−96ppm付近のショルダーピー
クは殆ど認められなくなっている。
【0042】それゆえ、これらの固体NMRスペクトル
より、−95〜−96ppm付近のピークは元の雲母様
構造が残ったものと考えられ、また、−99ppm付近
のピークはタルクのピークである−98ppmに近いた
め類似の構造をとるものと判断されるため、焼成により
層間のマグネシウムイオンがMg−O八面体層の欠陥部に
進入して、タルク様構造が形成され、その際一部Fイオ
ンがマグネシウムイオンに水和していた水によりOHイオ
ンに置換されたものと推察される。また、1H−NMR
スペクトルの化学シフトの値(図3参照)はタルクの
0.7ppmに近い1.1ppmが得られており、タル
ク中に含まれるOHイオン様のものが、加熱して得られた
層状ケイ酸塩中にも存在していることを示しており、前
記判断を裏付けている。
【0043】得られた加熱生成後の層状ケイ酸塩は前記
の式(6) で示される雲母様構造部と次式(7) :
【0044】
【化13】Mg3.0 Si4.0 10(F1.72,OH0.28) (7) (式中、Mgは八面体シートを形成している配位数6の陽
イオン、Siは四面体シートを形成している配位数4の陽
イオンであり、FとOHは陰イオンとして八面体シート中
に存在する。)で示されるタルク様構造部の混合層構造
をとる層状ケイ酸塩であると判断され、その混合層の雲
母様構造部:タルク様構造部の比率(層数比)は前記の
置換量及び図1の2つのピークの大きさ等より、およそ
2:8であると判断される。
【0045】また、得られた加熱生成後の層状ケイ酸塩
について、走査型電子顕微鏡観察したところ、全体が薄
片状で単一な結晶であることが確認された。
【0046】(実施例2〜5)実施例1で用いたコープ
ケミカル(株)製の膨潤性雲母(ME−100、陽イオ
ン交換容量:70ミリ当量/100g)1.5gを0.
004〜0.007規定の硝酸マグネシウム(Mg(N
O3)2)水溶液150mlにとり、1日攪拌処理後、固形
分を遠心分離し、陽イオン交換処理を行なった。得られ
た固形分を風乾し、ナトリウムイオンの1部がマグネシ
ウムイオンで置換された層状ケイ酸塩を得た。このマグ
ネシウムイオンで置換された層状ケイ酸塩を磁性ルツボ
にとり、蓋をして600℃で3時間焼成して、本発明の
ナトリウム、マグネシウム、ケイ素、酸素、水素及びフ
ッ素を主要構成元素とする、雲母様構造部とタルク様構
造部の混合層構造をとる層状ケイ酸塩を得た。得られた
層状ケイ酸塩について、螢光X線による元素分析値より
化学組成を求め、また、そのナトリウム、マグネシウム
の値よりナトリウムイオンがマグネシウムイオンで置換
された量を求め、表2に示した。また、29Siと1Hの固
体NMRスペクトルを実施例1の場合と同様にして測定
した。
【0047】 実施例2 0.004規定の硝酸マグネシウム水溶液で
処理した場合 実施例3 0.005規定の硝酸マグネシウム水溶液で
処理した場合 実施例4 0.006規定の硝酸マグネシウム水溶液で
処理した場合 実施例5 0.007規定の硝酸マグネシウム水溶液で
処理した場合
【0048】
【表2】
【0049】なお、置換量とは、ナトリウムイオンがマ
グネシウムイオンで置換された量(イオン当量%)を示
す。図4、図5に29SiのHD−MASとCP−MAS法
で測定したスペクトルを示す。
【0050】HD−MAS法のスペクトルでは、コープ
ケミカル(株)製の膨潤性雲母(ME−100)そのも
のを600℃で3時間加熱処理したものは−95ppm
付近にのみピークを示しているが、実施例2〜5では−
95〜−96ppm付近のピークの他に−99ppm付
近にもピークが認められる。これらのピークは、実施例
1でも述べたように、前者は雲母様構造に由来するピー
クであり、後者はタルク様構造に由来するピークである
と判断される。実施例2→5とマグネシウムイオンの置
換量が多くなる順に、−95〜−96ppm付近のピー
クが徐々に小さくなり、逆に−99ppm付近のピーク
が徐々に大きくなっているが、これは雲母様構造が徐々
に減って、タルク様構造の割合が徐々に増えたことを示
すもので、表2で示した雲母様構造部とタルク様構造部
の比率を裏付けている。
【0051】CP−MAS法のスペクトルでは、実施例
2〜5において−99ppm付近のピークが強調され、
−95〜−96ppm付近のピークは殆ど認められなく
なっているが、実施例1の場合と同様に層間のマグネシ
ウムイオンが焼成によりMg−O八面体層の欠陥部に進入
してタルク様構造を形成する際、一部Fイオンがマグネ
シウムイオンに水和していた水によりOHイオンに置換さ
れたものと推察される。
【0052】ME−100は実施例1で示したように、
前記式(6) で示される構造をとるものと判断される。実
施例2〜5で得られた加熱生成後の層状ケイ酸塩は前記
式(6) で示される雲母様構造部と次式(8) で示されるタ
ルク様構造部の混合層構造をとる層状ケイ酸塩であると
判断され、その混合層の比率は表2の置換量及び図4の
2つのピークの大きさ等より、表3で示されるものと判
断される。
【0053】
【化14】 実施例2 Mg3.0 Si4.0 10(F1.47,OH0.53) (8)-1 実施例3 Mg3.0 Si4.0 10(F1.51,OH0.49) (8)-2 実施例4 Mg3.0 Si4.0 10(F1.57,OH0.43) (8)-3 実施例5 Mg3.0 Si4.0 10(F1.61,OH0.39) (8)-4 (式中、Mgは八面体シートを形成している配位数6の陽
イオン、Siは四面体シートを形成している配位数4の陽
イオンであり、FとOHは陰イオンとして八面体シート中
に存在する。)
【0054】
【表3】
【0055】また、得られた加熱生成後の層状ケイ酸塩
について、走査型電子顕微鏡観察したところ、全体が薄
片状で単一な結晶であることが確認された。
【0056】(実施例6)実施例1と同様な実験を、焼
成温度を300℃に変えた以外は実施例1と全く同様に
反応させて、本発明のナトリウム、マグネシウム、ケイ
素、酸素、水素及びフッ素を主要構成元素とする、雲母
様構造部とタルク様構造部の混合層構造をとる層状ケイ
酸塩を得た。得られた層状ケイ酸塩は実施例1の場合と
ほぼ同様の化学組成、NMRスペクトル、表面状態を示
しており、結晶構造もほぼ同様なものと判断される。
【0057】
【発明の効果】本発明の層状ケイ酸塩は、雲母様構造部
とタルク様構造部の混合層構造をとる新規な層状ケイ酸
塩である。一般的に層状ケイ酸塩は、天然及び合成品と
も、従来その燐片状の形状に起因する特性より、化粧
品、顔料、機能性樹脂の添加剤、無機フイルム等に利用
されている。本発明の層状ケイ酸塩は、特異な構造を有
する新規なものであり、また走査型電子顕微鏡で結晶表
面を観察すると単一で平滑な表面になっており、前記の
各用途にもその特異性を生かして有効に利用されるもの
であり、また新規な用途開発も期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のHD−MAS NMRスペクトルを
示す図である。
【図2】実施例1のCP−MAS NMRスペクトルを
示す図である。
【図3】実施例1の1H−NMRスペクトルを示す図で
ある。
【図4】実施例2〜5のHD−MAS NMRスペクト
ルを示す図である。
【図5】実施例2〜5のCP−MAS NMRスペクト
ルを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 立山 博 佐賀県鳥栖市宿町字野々下807番地1 工 業技術院 九州工業技術研究所内 (72)発明者 西村 聡 佐賀県鳥栖市宿町字野々下807番地1 工 業技術院 九州工業技術研究所内 (72)発明者 大井 勝 東京都千代田区一番町23番地3 コープケ ミカル株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ナトリウム及び/又はリチウムから選ば
    れたアルカリ金属、マグネシウム、ケイ素、酸素、水素
    及びフッ素を主要構成元素とする、雲母様構造部とタル
    ク様構造部の混合層構造をとる層状ケイ酸塩。
  2. 【請求項2】 雲母様構造部が式(1) : 【化1】 (Na,Li)2X+2a (Mg3.0-X )[(Si4.0-a Mga )O10](F,OH)2 (1) (式(1) において、0≦X≦0.5、0≦a<0.5
    0、0.15≦X+a≦0.5、Na,Liは層間にある配
    位数12の陽イオンで、“,”は“及び/又は”を表
    し、(Mg3.0-X )中のMgは八面体シートを形成している
    配位数6の陽イオン、(Si4.0-a Mga )中のSiとMgは四
    面体シートを形成している配位数4の陽イオンであり、
    FとOHは陰イオンとして八面体シート中に存在する。)
    で示され、タルク様構造部が式(2) : 【化2】Mg3.0 Si4.0 10(F,OH)2 (2) (式(2) において、Mgは八面体シートを形成している配
    位数6の陽イオン、Siは四面体シートを形成している配
    位数4の陽イオンであり、FとOHは陰イオンとして八面
    体シート中に存在する。)で示される請求項1記載の層
    状ケイ酸塩。
  3. 【請求項3】 タルクとケイフッ化ナトリウム及び/又
    はケイフッ化リチウムとを混合した微粉末を700〜1
    200℃に加熱して得られるナトリウム及び/又はリチ
    ウムから選ばれたアルカリ金属、マグネシウム、ケイ
    素、酸素、水素及びフッ素を主要構成元素とする膨潤性
    層状ケイ酸塩の層間にMgイオンを導入し、加熱処理する
    ことにより得られる請求項1又は2に記載の層状ケイ酸
    塩。
  4. 【請求項4】 ナトリウム及び/又はリチウムから選ば
    れたアルカリ金属、マグネシウム、ケイ素、酸素、水素
    及びフッ素を主要構成元素とする膨潤性層状ケイ酸塩の
    層間にマグネシウムイオンを導入し、加熱処理すること
    を特徴とする、ナトリウム及び/又はリチウムから選ば
    れたアルカリ金属、マグネシウム、ケイ素、酸素、水素
    及びフッ素を主要構成元素とする雲母様構造部とタルク
    様構造部の混合層構造をとる層状ケイ酸塩の製造法。
  5. 【請求項5】 雲母様構造部が式(1) : 【化3】 (Na,Li)2X+2a (Mg3.0-X )[(Si4.0-a Mga )O10](F,OH)2 (1) (式(1) において、0≦X≦0.5、0≦a<0.5
    0、0.15≦X+a≦0.5、Na,Liは層間にある配
    位数12の陽イオンで、“,”は“及び/又は”を表
    し、(Mg3.0-X )中のMgは八面体シートを形成している
    配位数6の陽イオン、(Si4.0-a Mga )中のSiとMgは四
    面体シートを形成している配位数4の陽イオンであり、
    FとOHは陰イオンとして八面体シート中に存在する。)
    で示され、タルク様構造部が式(2) : 【化4】Mg3.0 Si4.0 10(F,OH)2 (2) (式(2) において、Mgは八面体シートを形成している配
    位数6の陽イオン、Siは四面体シートを形成している配
    位数4の陽イオンであり、FとOHは陰イオンとして八面
    体シート中に存在する。)で示される請求項4記載の層
    状ケイ酸塩の製造法。
  6. 【請求項6】 膨潤性層状ケイ酸塩がタルクとケイフッ
    化ナトリウム及び/又はケイフッ化リチウムとを混合し
    た微粉末を700〜1200℃に加熱して得られる生成
    物である請求項4又は5に記載の層状ケイ酸塩の製造
    法。
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