JPH09225710A - 工具保持装置 - Google Patents

工具保持装置

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JPH09225710A
JPH09225710A JP3471496A JP3471496A JPH09225710A JP H09225710 A JPH09225710 A JP H09225710A JP 3471496 A JP3471496 A JP 3471496A JP 3471496 A JP3471496 A JP 3471496A JP H09225710 A JPH09225710 A JP H09225710A
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JP3471496A
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English (en)
Inventor
Hajime Mizutani
肇 水谷
Kazuo Nomoto
和男 野本
Takefusa Sasamori
竹房 笹森
Yasuo Kato
泰男 加藤
Kazuhiro Takasaki
多弘 高崎
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Toyota Motor Corp
Fuji Bellows Co Ltd
Fuji Seiko Co Ltd
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Fuji Bellows Co Ltd
Fuji Seiko Co Ltd
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Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Fuji Bellows Co Ltd, Fuji Seiko Co Ltd filed Critical Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 加工工具を保持する部材と、その部材を保持
して工作機械側に固定される部材との相対回転を阻止す
る。 【解決手段】 ホルダ本体44に係合突部114を設
け、カラー120を相対回転可能かつ軸方向に相対移動
可能に嵌合し、カラー120の引張コイルスプリング1
46の付勢力による周方向の回転を鋼球132,カム溝
138により軸方向の移動に変換する。スリーブ10に
係合切欠174を設け、嵌合穴18内に切削抵抗に基づ
く向きの相対回転は許容するが、逆向きの相対回転は阻
止する一方向クラッチ180を設ける。係合突部114
が係合切欠174に嵌入し、カラー120が移動して係
合突部126が外向きフランジ172をフランジ部11
0に押し付ける。小径軸部43が一方向クラッチ180
に嵌合され、係合突部114と係合切欠174との係
合,一方向クラッチ180がドリルホルダ36とスリー
ブ10との相対回転を阻止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は工作機械に加工工具
を取り付けるための工具保持装置に関するものであり、
特に、工作機械側に固定される部材と加工工具を保持し
てその部材に着脱される部材との相対回転の防止に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】この種の工具保持装置には、加工工具を
保持する部材が別の部材を介して工作機械に取り付けら
れる装置がある。この工具保持装置は、(a)第一嵌合
部を備えて工作機械側に固定される第一部材と、(b)
前記第一嵌合部と相対回転可能かつ軸方向に相対移動可
能に嵌合される第二嵌合部と、加工工具保持部とを備え
た第二部材と、(c)前記第一,第二嵌合部の嵌合状態
においてそれら第一,第二嵌合部の限られた距離を超え
る軸方向の相対移動を阻止する軸方向移動限定装置と含
むように構成されることが多い。なお、ここにおいて
「限られた距離」は0でもよく、0より大きい距離でも
よい。0の場合、第一,第二嵌合部は軸方向において全
く相対移動せず、0より大きい距離の場合は、第一嵌合
部と第二嵌合部とが軸方向においてその0より大きい距
離だけ相対移動することが許容される。
【0003】実公平5−46802号公報に記載の工具
保持装置は、その一例である。この工具保持装置は、加
工工具を工作機械の主軸に取り付けるための装置であ
り、主軸に取り付けられるアダプタと、加工工具を保持
し、アダプタに着脱される工具保持体と、工具保持体の
外側に嵌合され、アダプタの回転を工具保持体に伝達す
るカラーとを有している。アダプタには、有底の嵌合穴
が形成されるとともに、嵌合穴の開口側の部分には環状
溝が形成されており、それによりアダプタの先端部には
半径方向内向きの内向きフランジが形成されている。ア
ダプタにはまた、嵌合穴の開口端の端面から軸方向に延
び、内向きフランジの厚さより深く、環状溝に達する深
さの係合切欠が4個、等角度間隔に形成されている。
【0004】工具保持体は、加工工具保持部および嵌合
部を備え、嵌合部の加工工具保持部側の端に設けられた
半径方向外向きのフランジ部の外周部には、直径方向に
隔たった2個所にそれぞれ、軸方向に貫通する係合溝が
形成されている。また、嵌合部のフランジ部に近い部分
には、半径方向外向きに延び出す4個の半径方向突起が
等角度間隔に、かつ係合溝とは45度位相を異にする位
置に設けられている。カラーは円筒状を成し、軸方向に
隔たった2つの端面のうち、一方の端面の直径方向に隔
たった2個所にそれぞれ、軸方向突起が突設されてい
る。カラーは工具保持部に嵌合されるとともに、ばねに
より軸方向突起が係合溝に係合する向きに付勢されてい
る。
【0005】工具保持体のアダプタへの取付け時には、
半径方向突起と係合切欠との位相が一致させられた状態
で、嵌合部が嵌合穴内へフランジ部がアダプタの先端面
に当接するまで挿入され、半径方向突起が環状溝に嵌入
させられた後、回転させられ、半径方向突起が内向きフ
ランジと軸方向に離脱不能に係合させられる。すなわ
ち、アダプタの内向きフランジが工具保持体のフランジ
部と半径方向突起との間に挟まれた状態になるのであ
り、それによって工具保持体のアダプタに対する軸方向
の相対移動が限られた微小距離に制限される。これらが
軸方向移動限定装置を構成しているのである。加工工具
保持部の嵌合穴への挿入時には、カラーの軸方向突起と
アダプタの係合切欠との位相は45度ずれており、軸方
向突起はアダプタの先端面に当接するが、工具保持体が
回転させられて軸方向突起と係合切欠との位相が一致さ
せられれば、カラーがばねの付勢力により移動させられ
て軸方向突起が係合切欠に嵌入する。軸方向突起が工具
保持体とアダプタとに跨がって係合し、アダプタの回転
を工具保持体に伝達する状態となるのである。したがっ
て、工具保持体はアダプタを介して主軸にほぼ相対移動
不能に取り付けられ、主軸の回転に伴って工具保持体に
保持された加工工具による加工が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近、
この工具保持装置には耐久性に欠けるという問題がある
ことが判明した。カラーに設けられた軸方向突起を係合
切欠および係合溝に係合させるためには、回転方向にお
いて僅かなクリアランスが必要である。したがって、軸
方向突起が係合切欠および係合溝に係合した状態におい
ても、工具保持体がアダプタに対して微小角度だけ相対
回転することを避け得ない。当初は上記クリアランスが
小さいため問題はないが、使用に伴ってクリアランスが
増大し、工具保持体のアダプタに対する相対回転が大き
くなり、工具保持装置の各部が衝突や摺動を繰り返し、
へたり(塑性変形)や摩耗が生じて加工精度の低下や加
工工具の欠損等の原因となり、使用に耐えなくなってし
まうのである。
【0007】この原因は次のように推測される。加工時
にアダプタが回転させられれば、係合切欠の回転トルク
伝達面が軸方向突起に係合するとともに、軸方向突起を
係合溝の回転トルク伝達面に係合させ、回転トルクの伝
達が行われる。しかし、上記のようにクリアランスがあ
るため、切削抵抗の急な消滅時に工具保持体がアダプタ
に対して、切削抵抗に基づく向きとは逆向きに回転し、
係合溝の回転トルク伝達面が軸方向突起から離れ、ある
いは軸方向突起が係合切欠の回転トルク伝達面から離れ
る。そして、再び切削抵抗が作用すれば、一旦離れたト
ルク伝達面が軸方向突起に衝突し、摺動する。そのた
め、衝突,摺動回数が増えるに従って係合溝の溝側面,
軸方向突起,係合切欠の切欠側面に衝突,摺動に起因し
て摩耗やへたりが生じ、クリアランスが増大するのであ
る。この問題は、主軸に回転切削工具や研削工具を取り
付けるための工具保持装置に限らず、旋盤の心押し台や
刃物台に切削工具を取り付けるための工具保持装置等他
の工具保持装置においても同様に生ずる。請求項1およ
び請求項2に係る第一発明および第二発明はそれぞれ、
上記第一,第二部材の相対回転を完全に防止し得る工具
保持装置を得ることを課題として為されたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段,作用および発明の効果】
第一発明は、上記の課題を解決するために、前記(a)
第一部材,(b)第二部材および(c)軸方向移動限定
装置を含む工具保持装置において、第一嵌合部と第二嵌
合部との相対回転を正逆両方向において遊びなく阻止す
る相対回転完全阻止装置を設けたことを要旨とするもの
である。この装置においては、第一嵌合部と第二嵌合部
との相対回転が相対回転完全阻止装置によって阻止さ
れ、加工時に加工抵抗が断続的に作用しても両者が相対
回転して、前記軸方向突起と係合溝および係合切欠との
係合におけるように、相対回転阻止部同士が繰返し衝
突,摺動して摩耗やへたりを生ずることがなく、工具保
持装置の各部の衝突,摺動に起因する摩耗やへたりの発
生もなくなって耐久性に優れた工具保持装置が得られ
る。
【0009】第二発明は、第一発明に係る工具保持装置
において、相対回転完全阻止装置を、第一部材と第二部
材との間に設けられ、第二部材の第一部材に対する加工
抵抗に基づく向きの相対回転は許容するが、逆向きの相
対回転は阻止する一方向クラッチを含むものとしたこと
を要旨とするものである。ここにおいて、一方向クラッ
チは第一部材と第二部材との間に直接設けられてもよ
く、後に実施形態において説明するように、第一,第二
部材とは別の他部材と第一,第二部材のいずれかとの間
に設けられてもよく、他部材同士の間に設けられてもよ
い。ただし、他部材と第一,第二部材のいずれかとは、
限られた角度を超える相対回転が何らかの手段により阻
止されていることが必要である。本発明においては、第
二部材の第一部材に対する加工抵抗に基づく向きの相対
回転は、いかなる手段により阻止されてもよい。例え
ば、前記従来の工具保持装置におけるように周方向当接
部同士の当接により阻止されるようにしてもよく、上記
一方向クラッチとは回転阻止方向が逆である別の一方向
クラッチにより阻止されるようにしもてよいのである。
加工時に加工抵抗が急に消滅しても、一方向クラッチの
阻止機能により、第二部材が第一部材に対して相対回転
することが防止される。加工抵抗の急な消滅時に第二部
材を加工抵抗に基づく向き(正方向とする)とは逆向き
(逆方向)に回転させようとする力は比較的小さく、一
方向クラッチにより十分受けられ、第一部材と第二部材
との逆方向の相対回転が十分に防止される。したがっ
て、たとえ正方向の相対回転が周方向当接部同士の当接
により防止される場合であっても、周方向当接部同士は
安定して当接した状態に保たれ、衝突や摺動を繰り返す
ことはなく、耐久性の高い工具保持装置が得られる。
【0010】
【発明の望ましい態様】本発明は、上記請求項1,2の
態様の他に、下記の態様でも実施可能である。実施の態
様は便宜上、請求項と同じ形式の実施態様項として記載
する。 (1)前記相対回転完全阻止装置が、前記第一部材と前記
第二部材との間に設けられ、互いに当接することにより
前記加工抵抗に基づく向きの相対回転を阻止する第一周
方向当接部と第二周方向当接部とを備えた当接型相対回
転阻止装置を含む請求項2に記載の工具保持装置。この
装置においては、第二部材の第一部材に対する加工抵抗
に基づく向きの相対回転は、第一,第二周方向当接部の
当接により阻止され、逆向きの相対回転は一方向クラッ
チにより阻止され、加工抵抗に基づく大きな回転トルク
も第一,第二周方向当接部により強固にかつ確実に受け
られる。第一,第二周方向当接部が例えば係合突起と係
合切欠とにより構成される場合には、前述のように、係
合切欠と係合突起との間にクリアランスが生ずることを
避け得ない。しかし、本態様におけるように第一,第二
部材の逆方向の相対回転が一方向クラッチにより阻止さ
れる場合には、第一,第二周方向当接部を一旦当接状態
にすれば、その当接状態が一方向クラッチにより維持さ
れ、クリアランスがないに等しい状態となる。この意味
で、一方向クラッチは当接型相対回転阻止装置のクリア
ランス除去装置であると考えることもできる。第一,第
二周方向当接部は、互いに嵌合される係合突起と係合切
欠とに限らず、それぞれ回転方向において互いに当接す
る当接面を有するものであればよい。第一,第二部材の
正方向の相対回転のみを阻止すればよいからであり、例
えば、第一,第二周方向当接部を共に係合突部とするこ
とができる。 (2)前記相対回転完全阻止装置が、前記第一部材および
前記第二部材に跨がって相対回転可能に嵌合された回転
操作部材を含み、第一部材と第二部材との間に前記当接
型相対回転阻止装置が、また、回転操作部材と第一部材
および第二部材の一方との間に前記一方向クラッチがそ
れぞれ設けられるとともに、回転操作部材と第一部材お
よび第二部材の他方との間に前記当接型相対回転阻止装
置と相対回転阻止方向が同じである別の当接型相対回転
阻止装置が設けられた実施態様項1に記載の工具保持装
置。2つの当接型相対回転阻止装置の相対回転阻止方向
が同じであるため、これら2つの当接型相対回転阻止装
置がいずれも相対回転を阻止した状態では、第一,第二
部材および回転操作部材はいずれも、これら当接型相対
回転阻止装置の相対回転阻止方向に相対回転することが
できない。また、それとは逆の方向への相対回転は一方
向クラッチにより阻止されるため、第一,第二および回
転操作部材は正逆いずれの方向へも相対回転できず、加
工抵抗が断続しても第一,第二部材が繰返し相対回転さ
せられることがない。本態様の工具保持装置を概念的に
示す図55および図56に基づいてさらに具体的に説明
する。なお、両図中、丸に点を付した印はその部分が紙
面の手前側に移動することを示し、丸に十字を付した印
はその部分が紙面の向こう側へ移動することを表すもの
とする。また、許容,阻止とは、上記両印によって示さ
れる方向の相対回転が一方向クラッチ,当接型相対回転
阻止装置によって許容,阻止されることを表す。図55
において、第一部材1100と第二部材1102との間
に第一当接型相対回転阻止装置1104が設けられ、第
二部材1102と回転操作部材1106との間に第二当
接型相対回転阻止装置1108が設けられ、第一部材1
100と回転操作部材1106との間に一方向クラッチ
1110が設けられている。第一,第二当接型相対回転
阻止装置1104,1108はそれぞれ、係合突起11
12,1114および係合溝1116,1118を有す
る。なお、図中矢印で示すのは、工具保持装置が回転切
削工具保持装置である場合の第一部材1100の回転方
向である。第二部材1102を第一部材1100に取り
付けた状態で、第一部材1100を保持して回転操作部
材1106を一方向クラッチ1110により許容される
方向へ回せば、第二当接型回転阻止装置1108の係合
溝1118の溝側面1120が係合突起1114に当接
し、回転操作部材1106の第二部材1102に対する
相対回転が阻止される。この状態から更に回転操作部材
1106を回せば、第二部材1102が共に回転させら
れ、第一当接型相対回転阻止装置1104の係合溝11
16の溝側面1122が係合突起1112に当接し、相
対回転が阻止される。この状態では、回転操作部材11
06の回転操作方向とは逆方向の回転は一方向クラッチ
1110により阻止され、第一,第二部材1100,1
102および回転操作部材1106は正逆いずれの方向
にも相対回転せず、一体的に係合させられた状態とな
る。図56においては、第一部材1130と第二部材1
132との間に第一当接型相対回転阻止装置1134が
設けられ、第一部材1130と回転操作部材1136と
の間に第二当接型相対回転阻止装置1138が設けら
れ、回転操作部材1136と第二部材1132との間に
一方向クラッチ1140が設けられている。第一,第二
当接型相対回転阻止装置1134,1138はそれぞ
れ、係合突起1142,1144,係合溝1146,1
148を有する。図中矢印で示すのは、工具保持装置が
回転切削工具保持装置である場合の第一部材1130回
転方向である。第二部材1132を第一部材1130に
取り付けた状態で、第二部材1132を保持して回転操
作部材1136を一方向クラッチ1140により許容さ
れる方向へ回せば、第二当接型回転阻止装置1138の
係合突起1144が係合溝1148の溝側面1150に
当接し、回転操作部材1136の第一部材1130に対
する相対回転が阻止される。この状態から更に回転操作
部材1136を回せば、第一部材1130が共に回転さ
せられ、第一当接型相対回転阻止装置1134の係合突
起1142が係合溝1146の溝側面1152に当接
し、相対回転が阻止される。この状態では、回転操作部
材1136の回転操作方向とは逆方向の回転は一方向ク
ラッチ1140により阻止され、第一,第二部材113
0,1132および回転操作部材1136は正逆いずれ
の方向にも相対回転せず、一体的に係合させられた状態
となる。正逆両方向の相対回転阻止状態を実現するため
には、第一,第二部材および回転操作部材のうち、間に
一方向クラッチが設けられた2部材の一方を他方に対し
て回転させる。一方向クラッチが間に設けられていない
部材同士を相対回転させても、2つの当接型相対回転阻
止装置が共に相対回転阻止状態になることが保証されな
いからである。 (3)前記第一部材と前記第二部材とが、それら両部材が
互いに嵌合された状態で互いに当接可能な第一軸方向当
接面と第二軸方向当接面とをそれぞれ有し、前記軸方向
移動限定装置が、それら第一,第二軸方向当接面と共に
カム機構を含み、そのカム機構が、前記第一部材と前記
第二部材とのいずれか一方に周方向に対して傾斜して設
けられたカム溝と、他方に設けられてそのカム溝と係合
するカムフォロワとを備え、第一部材と第二部材との相
対回転に基づいて両者を第一軸方向当接面と第二軸方向
当接面とが当接する向きに相対移動させるものであり、
前記回転操作部材が第一部材および第二部材に軸方向に
相対移動可能に嵌合され、前記別の当接型相対回転阻止
装置の第一周方向当接部と第二周方向当接部との一方が
係合突部であり、他方が、軸方向に延びる軸方向溝部と
その軸方向溝部の第一端から周方向に延び出して前記カ
ム溝と前記カムフォロワとの係合を解除する向きの第一
部材と第二部材との相対回転に伴う前記係合突部の移動
を許容する周方向溝部とを含む係合溝であり、かつ、前
記回転操作部材が付勢手段により前記係合突部が前記軸
方向溝部の前記第一端とは反対側の第二端に向かって移
動する向きに付勢されている実施態様項2に記載の工具
保持装置。この装置においては、回転操作部材が付勢手
段により付勢され、別の当接型相対回転阻止装置の係合
突部が軸方向溝部の第二端側に位置する状態で、第一,
第二嵌合部が嵌合され、カムフォロワがカム溝に係合さ
せられる。その状態で第一,第二部材および回転操作部
材のうち、間に一方向クラッチが設けられた部材の一方
が他方に対して回転させられることにより、係合突部が
軸方向溝部の溝側面に係合させられるとともに、カムフ
ォロワがカム溝の溝側面に係合させられ、これら2つの
係合により、第一,第二部材および回転操作部材の一方
向の相対回転が阻止され、他方向の相対回転は一方向ク
ラッチにより阻止された状態となる。カムフォロワおよ
びカム溝が当接型相対回転阻止装置として機能するので
ある。また、第一部材と第二部材とが相対回転させられ
るとき、カムフォロワがカム溝の斜面の作用により軸方
向の推力を受けて第一,第二軸方向当接面を互いに当接
させるため、第一部材と第二部材との軸方向の遊びが消
滅させられる。そのため、加工中に第一部材と第二部材
とが軸方向の相対移動を繰り返すことに伴って、工具保
持装置の各部が衝突や摺動を繰り返し、へたりや摩耗が
生じて寿命が低下することが良好に回避される。また、
第一部材と第二部材との軸方向の相対移動に起因して加
工工具に欠損が生ずることも良好に回避される。第二部
材を第一部材から取り外す場合には、回転操作部材を付
勢手段の付勢力に抗して移動させ、係合突部を軸方向溝
部の第一端へ移動させる。この状態では、係合突部が軸
方向溝部から外れて周方向溝部に到り、別の当接型相対
回転阻止装置による相対回転阻止作用が解除される。そ
のため、第一部材と第二部材とのうち、別の当接型相対
回転阻止装置が設けられた部材を、回転操作部材に対し
てカム溝とカムフォロワとの係合を解除する向きに回転
させることができ、第二部材を第一部材から取り外すこ
とができる。 (4)前記第一部材と前記第二部材とが、それら両部材が
互いに嵌合された状態で互いに当接可能な第一軸方向当
接面と第二軸方向当接面とをそれぞれ有し、かつ、前記
軸方向移動限定装置が、第一軸方向当接面と第二軸方向
当接面とを当接状態に保つ当接状態維持装置を含む請求
項1,2,実施態様項1,2のいずれか一つに記載の工
具保持装置。この装置においては、第二部材が第一部材
に軸方向の遊びなく取り付けられた状態に保たれる。第
一,第二部材は相対回転することがない上、軸方向にお
いても相対移動することがなく、加工中の第一部材と第
二部材との相対移動がより確実に防止され、工具保持装
置の各部の摩耗やへたりによる耐久性の低下が極めて良
好に防止されるとともに、加工工具の欠損も良好に回避
される。 (5)前記当接状態維持装置が、前記第一軸方向当接面お
よび前記第二軸方向当接面と共にカム機構を含み、その
カム機構が、前記第一部材と前記第二部材とのいずれか
一方に周方向に対して傾斜して設けられたカム溝と、他
方に設けられてそのカム溝と係合するカムフォロワとを
備え、第一部材と第二部材との相対回転に基づいて両者
を第一軸方向当接面と第二軸方向当接面とが当接する向
きに相対移動させるものである実施態様項4に記載の工
具保持装置。この装置によれば、第二部材と第一部材と
が相対回転させられれば、カムフォロワがカム溝の溝側
面に係合させられて両部材の一定以上の相対回転を阻止
するとともに、カム溝の斜面の作用により軸方向に移動
させられて第一,第二軸方向当接面を互いに当接させ
る。カム溝とカムフォロワとを含むカム機構が、当接状
態維持装置と当接型相対回転阻止装置とを兼ねているの
である。 (6)前記相対回転完全阻止装置が、前記一方向クラッチ
とは相対回転阻止方向が逆向きである別の一方向クラッ
チを含む請求項2に記載の工具保持装置。この装置によ
れば、第二部材の第一部材に対する正逆両方向の相対回
転がいずれも一方向クラッチにより阻止される。第二部
材を第一部材に嵌合するだけで、両者が正逆いずれの方
向にも相対回転しない状態が得られる。例えば、発明の
実施形態の項において述べるように、工具保持装置が回
転切削工具保持装置であり、第一部材が回転させられる
場合、2つの一方向クラッチによって正逆両方向の相対
回転が阻止されていることにより、第二部材は第一部材
に固定されているのに等しく、第二部材が第一部材と共
に回転させられるとともに、加工抵抗の消滅時における
第二部材の第一部材に対する相対回転が阻止される。一
方の一方向クラッチが回転伝達装置として機能し、他方
の一方向クラッチが加工抵抗消滅時の相対回転を阻止す
る相対回転阻止装置として機能するのである。 (7)前記第一部材が、工作機械の主軸に取外し可能に着
脱するための取付部を有する請求項1,2,実施態様項
1〜6のいずれか一つに記載の工具保持装置。この装置
において、相対回転完全阻止装置は、第一部材を介して
主軸の回転を第二部材に伝達する回転伝達装置として機
能する。また、この態様の装置においては、第一部材に
対して第二部材が着脱可能であるとともに、第一部材自
体も主軸に対して着脱可能であるため、工具保持装置の
使い勝手が向上する。例えば、第一部材を自動工具交換
装置により工作機械に着脱可能とし、その第一部材に保
持される第二部材を機外で交換可能とすることができる
のである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、第一,第二発明に共通の実
施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1におい
て、10は第一部材たるスリーブである。スリーブ10
は半径方向外向きのフランジ部12を備えている。ま
た、スリーブ10には、先端部(図1において左端部)
から基端部(図1において右端部)に向かって延び、端
面16に開口する第一嵌合部たる有底の嵌合穴18が形
成されている。
【0012】一方、フランジ部12の端面22側には、
取付け部24が形成されている。取付け部24はフラン
ジ部12から遠ざかるほど径の小さいテーパ外周面26
を有している。また、取付け部24の端面28には軸方
向穴30が形成されている。軸方向穴30の端面28側
の部分は雌ねじ部32とされており、図示しないプルス
タッドの雄ねじ部が螺合されるようになっている。さら
に、フランジ部12には切欠34が形成されており、工
作機械側の係合突部と係合させられるようになってい
る。
【0013】図示は省略するが、工作機械のスピンドル
穴は取付け部24のテーパ外周面26に対応するテーパ
内周面を有しており、スリーブ10の取付け部24が上
記係合突部と切欠34との位相が合致した状態でスピン
ドル穴に嵌合され、スピンドル穴内の把持部材によりプ
ルスタッドが把持されてスピンドル穴内に引き込まれる
ことにより、フランジ部12の切欠34に係合突部が係
合させられるとともに、取付け部24のテーパ外周面2
6とスピンドル穴のテーパ内周面とが締まり嵌合し、ス
リーブ10が工作機械のスピンドルに軸方向に相対移動
不能かつ相対回転不能に取り付けられるようになってい
る。
【0014】スリーブ10の嵌合穴18には、第二部材
たる工具ホルダとしてのドリルホルダ36が着脱可能に
嵌合されるようになっている。ドリルホルダ36は、第
二嵌合部たる嵌合軸部38と、その先端部(図1におい
て左端部)に加工工具たるドリル40(図1に二点鎖線
で示す)を保持する工具保持部42とを備えている。嵌
合軸部38は段付状を成し、後端側(図1において右端
側)に設けられた小径軸部43からスリーブ10の嵌合
穴18に嵌合される。
【0015】ドリルホルダ36のホルダ本体44は概し
て円筒状を成しており、軸方向に延びる工具挿入穴46
を有している。工具挿入穴46の軸方向の中央部は雌ね
じ穴48とされており、内部にはねじ部材たるアジャス
ト部材50が螺合されている。雌ねじ穴48にはまた、
工具駆動部材たるドライバ52が軸方向に移動可能に嵌
合されるとともに、アジャスト部材50に軸方向に相対
移動不能かつ相対回転可能に係合させられている。
【0016】ドライバ52はアジャスト部材50に係合
させられた側とは反対側の先端面に工具係合溝56を備
えており、ドリル40のタングと相対回転不能に係合す
るとともに軸方向において互いに当接するようになって
いる。ドライバ52の外周面には、断面形状がほぼ半円
形の軸方向溝が一対形成されており、それら軸方向溝に
一対の円柱状部材であるピン62が嵌合されている。各
ピン62は、ドライバ52に嵌合させられた状態で、ほ
ぼ半分の部分がドライバ52の外周面から半径方向外向
きに突出させられている。一方、雌ねじ穴48の内周面
には、軸方向に延び、ほぼ半円形の断面形状を有する一
対の案内溝64が形成されており、これら案内溝64に
各ピン62の突出部がそれぞれ係合させられることによ
り、ドライバ52の軸方向の案内が行われる。また、一
対のピン62がドライバ52の雌ねじ穴48内での回転
を阻止する回転阻止突起として機能している。
【0017】したがって、ホルダ本体44に加えられる
回転トルクが、ピン62およびドライバ52を介してド
リル40に伝達される。また、ドリル40の軸方向の位
置は、アジャスト部材50の位置を変更することにより
調整される。アジャスト部材50を移動させてドライバ
52の位置を変更することにより、ドリル40のホルダ
本体44からの突出長さを変え得るのである。
【0018】工具挿入穴46の軸方向の前端部はテーパ
穴70とされており、コレット72が嵌合されている。
コレット72は、概して円筒状の部材に両端面から交互
に軸方向の複数本ずつのすり割り溝が、反対側の端面ま
では達しない長さで形成されたものであり、軸方向のあ
らゆる部分において縮径が可能である。テーパ穴70は
先端側ほど径が大きくされており、コレット72は、テ
ーパ穴70の内周面に対応して形成されたテーパ外周面
74においてテーパ穴70に嵌合される一方、軸方向に
平行に形成された内周面76において、ドリル40のシ
ャンク部の外周面に密着してこれを把持し、切削時にド
リル40が受ける軸方向力を受けるようになっている。
コレット72の外周面にはさらに、テーパ外周面74が
形成された部分に隣接して矩形断面の環状溝80が形成
されるとともに、環状溝80を挟んでテーパ外周面74
が形成された部分とは反対側の外周面には、先端側ほど
径の小さいテーパ面82が形成されている。
【0019】コレット72の先端部にはコレットキャッ
プ84が被せられている。コレットキャップ84の内周
面には、環状溝80に嵌入可能な環状突起86と、コレ
ット72のテーパ面82に対応するテーパ面88とが形
成されており、コレット72を縮径させつつ、コレット
キャップ84の環状突起86をコレット72の環状溝8
0内に嵌入させた後、コレット72を自然状態に戻せ
ば、コレットキャップ84が軸方向に移動不能な状態で
コレット72に被せられる。この状態では、テーパ面8
8がテーパ面82に密着し、コレットキャップ84がコ
レット72に相対移動および相対回転不能に取り付けら
れる。
【0020】なお、環状突起86の厚さの環状溝80の
幅よりやや小さくされており、環状突起86は環状溝8
0内でコレット72の軸方向に一定距離移動可能であ
る。また、コレットキャップ84とホルダ本体44の先
端面92との間には、コレットキャップ84がコレット
72と共に軸方向移動可能な大きさの隙間が設けられて
いる。
【0021】ホルダ本体44の先端部の外周面には、雄
ねじ部98が形成されており、この雄ねじ部98にはク
ランプナット100がホルダ本体44と同軸に螺合され
ている。クランプナット100はホルダ本体44から突
出した部分においてコレットキャップ84に嵌合されて
おり、これらクランプナット100とコレットキャップ
84とは、両者の間に介在する多数のボール102によ
って互いに相対回転可能、かつ軸方向移動不能とされて
いる。クランプナット100の内周面とコレットキャッ
プ84の外周面との互いに対応する部分には、それぞれ
半円形断面の環状溝が形成されており、それら環状溝に
よって形成される円形断面の環状空間に、クランプナッ
ト100に形成された図示しない半径方向の貫通穴から
多数のボール102が供給された後、貫通穴がプラグに
よって閉塞されているのである。
【0022】したがって、クランプナット100が雄ね
じ部98に締め込まれる方向に回転操作された場合に
は、コレットキャップ84がホルダ本体44に向かって
移動させられるとともに、コレットキャップ84のテー
パ面88によってコレット72のテーパ面82が押さ
れ、コレット72がテーパ穴70内へ押し込まれて、弾
性的に縮径させられる。それにより、コレット72の内
周面76にドリル40のシャンク部が把持されるととも
に、把持状態においては、ホルダ本体44に対するコレ
ット72の相対回転が摩擦力により防止される状態とな
る。
【0023】なお、104は、クランプナット100を
回転させる締付け用工具を係合させるための工具係合溝
であり、クランプナット100の外周面に等角度間隔に
複数個(本実施形態においては6個であり、図1には1
個のみ示されている)形成されている。また、コレット
72の両端面から形成されたすり割り溝は、それぞれテ
ーパ穴70内において終わっており、そのためにコレッ
ト72はホルダ本体44とドリル40との間の液密を保
持し得るものとされている。
【0024】ホルダ本体44のスリーブ10からの突出
端部となる部分には、図1に示すように半径方向外向き
に延び出すフランジ部110が形成されている。フラン
ジ部110の後端面、すなわち嵌合軸部38側の端面1
12の直径方向に隔たった2個所にはそれぞれ、図3に
示すように係合突部114が突設されている(図3には
1個のみ示されている)。フランジ部110にはまた、
係合突部114から外れるとともに、直径方向に隔たっ
た2個所にそれぞれ、軸方向に貫通する切欠116が設
けられている(図3には1個のみ示されている)。
【0025】ホルダ本体44のスリーブ10からの突出
端部となる部分にはまた、図1に示すように円筒状のカ
ラー120が軸方向に相対移動可能かつ相対回転可能に
嵌合されている。カラー120は、一端部がホルダ本体
44に嵌合される嵌合部122とされ、他端部は、内径
がフランジ部110の直径より大きい環状部124とさ
れている。環状部124の嵌合部122とは反対側の端
部の内周面には、図4に示すように、直径方向に隔たっ
た2個所にそれぞれ、半径方向内向きに延び出す係合突
部126が形成されている。カラー120は嵌合部12
2においてホルダ本体44のクランプナット100が嵌
合された部分とフランジ部110との間に嵌合されると
ともに、環状部124はフランジ部110に被せられ、
軸方向付勢手段の一種である弾性部材としての圧縮コイ
ルスプリング128により、係合突部126がフランジ
部110から離れる向きに付勢されている。圧縮コイル
スプリング128は、ホルダ本体44に取り付けられた
スプリングリテーナ129と、カラー120の嵌合部1
20の端面に開口する有底穴130(図2参照)との間
に配設され、一部がカラー120内に収容されている。
【0026】カラー120の嵌合部122の直径方向に
隔たった2個所であって、2個の係合突部126とそれ
ぞれ回転方向の位相が一致する位置にそれぞれ、球体た
る鋼球132が嵌合されている。嵌合部122には、図
2に示すように、半径方向に貫通する2個の貫通孔13
4が形成されるとともに鋼球132が移動可能に嵌合さ
れ、ピン136によって貫通孔134からの抜出しを防
止されている。これら鋼球132はそれぞれ、外周部の
一部がカラー120の内周面から突出させられ、ホルダ
本体44の外周面に形成されたカム溝138に嵌入させ
られている。
【0027】カム溝138は、図3に示すように、カラ
ー120の軸方向に平行に延びる軸方向溝部140と、
軸方向溝部140のフランジ部110から遠い側の端部
から周方向へ延び出させられるとともに、延出端ほどフ
ランジ部110から離れる向きに傾斜させられ、周方向
に対して傾斜させられた傾斜溝部142とを有する。こ
の傾斜角度は、本実施形態では3度とされており、軸方
向溝部140は傾斜溝部142からは鈍角を成す向きに
延び出させれられている。また、カム溝138は、軸方
向溝部140の回転方向の位相が2個の係合突部114
のうちの一方と一致する位置に形成されている。ドリル
ホルダ36がスリーブ10から取り外された状態では、
カラー120は圧縮コイルスプリング128により付勢
され、鋼球132が軸方向溝部140の傾斜溝部142
が延び出させられた側とは反対側の端面に当接させら
れ、係合突部126が端面112から離れた非作用位置
に位置させられている。
【0028】カラー120の嵌合部122とホルダ本体
44のフランジ部110との間には、環状部124を周
壁とする円環状の隙間144が形成され、この隙間14
4に回転付勢手段の一種である弾性部材としての引張コ
イルスプリング146が配設されている。引張コイルス
プリング146はホルダ本体44に巻き付けられ、一端
部がホルダ本体44に嵌合されたピン148に係止さ
れ、他端部はカラー120の内周面に係止されており、
カラー120は引張コイルスプリング146により、鋼
球132が傾斜溝部142内を軸方向溝部140から離
れる方向へ移動する向きに付勢されている。
【0029】カラー120は、ドリルホルダ36がスリ
ーブ10から取り外された状態では、圧縮コイルスプリ
ング128の付勢力により軸方向に移動させられ、鋼球
132が軸方向溝部140の傾斜溝部142が延び出さ
せられた側とは反対側の端面に当接させられるととも
に、引張コイルスプリング146の付勢力により回転方
向に僅かに移動させられ、鋼球132が軸方向溝部14
0の軸方向に延びる溝側面に係合し、回転を阻止されて
係合突部126がフランジ部110から離れた非作用位
置に保たれている。
【0030】カラー120をホルダ本体44に取り付け
る場合には、まず、引張コイルスプリング146の一端
部をカラー120の内周面に係止させる。そして、嵌合
部122をホルダ本体44に嵌合するとともに、引張コ
イルスプリング146の他端部を環状部124内から引
っ張り出してピン148に係止させる。このとき、引張
コイルスプリング146は自由長から僅かに延ばされた
状態とされる。そして、カラー120を更にホルダ本体
44に嵌合しつつ、引張コイルスプリング146を延ば
す向きに回転させて係合突部126とフランジ部110
の切欠116との位相を一致させ、係合突部126に切
欠116を通過させるとともに、係合突部126を軸方
向において係合突部114より突出した位置へ移動させ
る。通過後、カラー120を更に引張コイルスプリング
146を延ばしつつ回転させ、係合突部126とフラン
ジ部110の係合突部114との位相を一致させる。こ
の位置では、鋼球132が嵌合される貫通孔134とカ
ム溝138の軸方向溝部140の傾斜溝部142が延び
出させられた側とは反対側の部分との回転方向の位相が
一致し、貫通孔134から鋼球132を入れて軸方向溝
部140に嵌入させれば、カラー120が引張コイルス
プリング146により付勢されて周方向に僅かに移動さ
せられ、鋼球132が軸方向溝部140の溝側面に係合
してカラー120が係合突部126と114との位相が
一致する位置に嵌合された状態に保たれる。なお、係合
突部114と係合切欠116とは、回転方向において、
後述するようにカラー120が回転させられてドリルホ
ルダ36がスリーブ10に取り付けられるとき、係合突
部126が係合切欠116に至らない間隔で形成され
る。カラー120のドリルホルダ36への嵌合後、圧縮
コイルスプリング128が取り付けられ、カラー120
を非作用位置に向かって付勢するようにされる。
【0031】嵌合軸部38のフランジ部110に隣接す
る部分には、図2に示すように、コレット154が嵌合
されるとともに、付勢手段の一種である弾性部材として
の皿ばね156によりフランジ部110から離れる向き
に付勢されている。コレット154は概して円筒状を成
し、外周面はテーパ外周面158とされるとともに、内
周面は軸方向に平行なストレート内周面160とされて
いる。嵌合軸部38には浅い円環状溝162が形成さ
れ、コレット154は拡径させられた状態で嵌合軸部3
8の後部から嵌められるとともに、円環状溝162内に
嵌合されており、ドリルホルダ36がスリーブ10から
取り外された状態では、皿ばね156の付勢力により移
動させられ、円環状溝162のフランジ部110から遠
い後側溝側面164に当接させられている。
【0032】前記スリーブ10の先端部には、図5およ
び図6に示すように、外周面に開口する円環状の嵌合溝
170が形成されており、それによりスリーブ10の先
端には、半径方向外向きの外向きフランジ172が設け
られている。スリーブ10の先端の外向きフランジ17
2を含む部分の直径方向に隔たった2個所にはそれぞ
れ、係合切欠174が形成されている。係合切欠174
は、スリーブ10の端面16と、外向きフランジ172
の外周面とに開口させられているが、半径方向において
嵌合穴18までは至らない深さを有し、嵌合溝170の
外向きフランジ172を形成する溝側面であって、端面
16とは反対向きの係合面175を越えて嵌合溝170
内に達する長さを有するが、嵌合溝170の他方の溝側
面であって係合面175とは反対側のストッパ面176
までは至らない長さを有する。また、嵌合穴18の先端
部には、前記コレット154のテーパ外周面158に対
応するテーパ内周面178が形成されている。
【0033】スリーブ10の嵌合穴18の底部には、図
1に示すように、一方向クラッチ180が取り付けられ
ている。一方向クラッチ180は、ケーシングと、ケー
シングに収容された転動体の一種である複数のローラ1
82とを有する。ケーシングは円筒状を成し、嵌合穴1
8に圧入されており、ケーシングの内周面に開口する複
数の凹部が等角度間隔に形成されている。これら凹部の
各々は、周方向の一端部から他端部に向かうに従ってケ
ーシングの中心からの距離が短くなる向きに傾斜させら
れたカム面を備えており、それにより楔形の隙間が形成
され、この隙間にリテーナにより保持された複数のロー
ラ182の各々の一部が収容されている。リテーナはケ
ーシングに固定されており、ローラ182の各々は、リ
テーナにより嵌合軸部38と嵌合穴18との相対回転方
向に移動可能に保持され、一部が上記凹部に収容される
とともに、それぞれ付勢手段の一種である弾性部材とし
てのばねにより、楔形の隙間の小さい側に向かって付勢
されている。この一方向クラッチ180は、ドリルホル
ダ36のスリーブ10に対する切削抵抗に基づく向きの
相対回転は許容するが、逆向きの相対回転は阻止するも
のとされている。
【0034】以上のように構成された工具保持装置のド
リルホルダ36のスリーブ10への取付けを説明する。
ドリルホルダ36には、スリーブ10への取付けに先立
ってドリル40が保持される。まず、工具挿入穴46内
にドリル40のシャンクを挿入し、ドライバ52の工具
係合溝56にタングを係合させる。そして、アジャスト
部材50の六角穴に工具を係合させて回転させ、ドライ
バ52を任意の量だけ軸方向に移動させてドリル40の
工具挿入穴46への深さを調節する。ドリル40の適宜
の挿入深さが決まれば、クランプナット100の工具係
合溝104に工具を係合させて回転させ、コレットキャ
ップ84を介してコレット72を締め付ければ、コレッ
ト72がテーパ穴70内へ押し込まれつつ縮径させら
れ、ドリル40がコレット72に締め付けられて保持さ
れる。
【0035】続いて、ドリルホルダ36をスリーブ10
に取り付ける。スリーブ10は自動工具交換装置付き加
工装置用のものであり、加工時以外にはスピンドルから
取り外され、図示しない収容装置において、支持部材に
より支持された状態で収容されており、ドリルホルダ3
6は収容装置に収容されたスリーブ10に取り付けられ
る。ドリルホルダ36のスリーブ10への取付け時に
は、カラー120の係合突部126とフランジ部110
の係合突部114とは回転方向の位相が一致しており、
これらとスリーブ10の係合切欠174との位相を合わ
せた状態で嵌合軸部38を嵌合穴18内に挿入する。こ
の際、まず、係合突部126が係合切欠174内に進入
し、図7(a)に示すように、嵌合溝170のストッパ
面176に当接して係合突部126全体が嵌合溝170
内に位置するとともに、フランジ部110の係合突部1
14の一部が係合切欠174内に嵌入する。
【0036】この状態から嵌合軸部38を更に嵌合穴1
8内へ挿入するとき、カラー120は係合突部126が
嵌合溝170のストッパ面176に当接して移動できな
いため、ドリルホルダ36が圧縮コイルスプリング12
8を圧縮しつつカラー120に対してスリーブ10側へ
移動させられ、係合突部114が係合切欠174内へ更
に進入させられる。また、ドリルホルダ36とカラー1
20との相対移動により、鋼球132が軸方向溝部14
0内を傾斜溝部142側へ移動する。
【0037】フランジ部110の端面112がスリーブ
10の端面16に当接したとき、あるいは当接する直前
に、鋼球132が軸方向溝部140から傾斜溝部142
内へ進入し得る位置に至り、カラー120が引張コイル
スプリング146の付勢力によって回転させられること
により、鋼球132が傾斜溝部142内を軸方向溝部1
40から離れる向きに移動させられる。
【0038】傾斜溝部142は軸方向溝部140からの
延出端部ほどフランジ部110から離れる向きに傾斜さ
せられているため、カラー120は引張コイルスプリン
グ146により引っ張られるとともに、圧縮コイルスプ
リング128の付勢力に抗して係合突部126がフラン
ジ部110に接近する向きに移動させられ、図7(b)
に示すように係合突部126が外向きフランジ172の
係合面175に係合し、端面16をフランジ部110の
端面112に押し付ける。引張コイルスプリング146
がカラー120を引っ張る力は、傾斜溝部142の傾斜
により倍力され、端面16は端面112に強固に押し付
けられ、ドリルホルダ36がスリーブ10に軸方向の隙
間なく取り付けられる。カラー120の回転により、係
合突部126はフランジ部110の係合突部114とは
回転方向の位相を異にする位置へ移動させられて係合面
175に係合し、端面16を端面112に押し付けるこ
とができる。このカラー120の係合突部126が係合
面175に係合して端面16を端面112に押し付ける
位置が作用位置である。鋼球132,カム溝138が付
勢手段たる引張コイルスプリング146の付勢力に基づ
くカラー120の回転を、係合突部126がカラー12
0が嵌合された部材であるドリルホルダ36の端面11
2に接近する向きの軸方向の移動に変換する変換装置を
構成し、回転部材たるカラー120,引張コイルスプリ
ング146,係合面175と共にドリルホルダ36の端
面112とスリーブ10の端面16とを軸方向において
当接した状態に保つ当接状態維持装置を構成し、第一軸
方向当接面たる端面16および第二軸方向当接面たる端
面112と共に軸方向移動限定装置の一種である軸方向
移動阻止装置を構成しているのである。上記付勢手段お
よび変換装置は、回転部材たるカラー120に端面16
と112とを互いに当接させる向きの引付け力を付与す
る引付け力付与装置を構成していると言うこともでき
る。
【0039】スリーブ10の回転は、係合切欠174と
係合突部114との係合によりドリルホルダ36に伝達
される。また、嵌合軸部38が嵌合穴18に嵌合される
とき、小径軸部43が一方向クラッチ180の複数のロ
ーラ182の中に嵌合され、ドリルホルダ36のスリー
ブ10に対する加工抵抗に基づく向きとは逆向きの回転
が一方向クラッチ180により阻止される。そのため、
係合突部114と係合切欠174との間には、回転方向
において係合のためのクリアランスがあるが、係合切欠
174のトルク伝達面と係合突部114とが一旦、係合
した後は係合したままの状態に保たれる。この場合、加
工開始に先立って予めドリルホルダ36とスリーブ10
とを相対回転させ、係合切欠174のトルク伝達面を係
合突部114に当接させておくことが望ましい。加工開
始時にスリーブ10が回転させられるとき、上記係合ク
リアランス分、スリーブ10がドリルホルダ36に対し
て回転し、係合切欠174が係合突部114に衝突する
ことを回避することができるからであり、特に、本実施
形態の工具保持装置においては、カラー120が回転お
よび移動させられて端面112と16とが当接状態に維
持される前にスリーブ10とドリルホルダ36とを相対
回転させ、係合切欠174のトルク伝達面を係合突部1
14に当接させておくことが望ましい。係合突部126
が外向きフランジ172に係合し、端面16を端面11
2に押し付けた状態では、両面の間の摩擦力に抗してド
リルホルダ36とスリーブ10とを相対回転させること
が容易ではないからである。そのため、カラー120の
係合突部126が嵌合溝170のストッパ面176に当
接した状態から更に嵌合軸部38を嵌合穴18に挿入す
る前に、ドリルホルダ36とスリーブ10とを相対回転
させる。この相対回転は、一方向クラッチ180により
許容される方向、すなわち切削抵抗に基づく方向の相対
回転であり、両者の逆向きの相対回転は一方向クラッチ
180により阻止されているため、係合切欠174のト
ルク伝達面が、係合切欠174に一部が嵌入した状態に
ある係合突部114に当接させられた後は、当接状態に
保たれる。ドリルホルダ36のスリーブ10への取付け
時に、係合切欠174のトルク伝達面を係合突部114
に当接させることを作業者が忘れても、加工が開始され
れば、スリーブ10の回転により係合突部114と係合
切欠174とが当接させられ、以後は両者が当接した状
態に保たれるため支障はない。
【0040】このようにドリルホルダ36のスリーブ1
0に対する切削抵抗に基づく向きとは逆向きの相対回転
は一方向クラッチ180により阻止されるため、加工時
に切削抵抗が急に消滅してもドリルホルダ36がスリー
ブ10に対して相対回転することがない。係合突部11
4と係合切欠174との間には、両者を係合させるため
に回転方向において僅かな係合クリアランスがあるが、
切削抵抗の消滅および再度の切削抵抗の付与により、係
合突部114と係合切欠174とが衝突,摺動すること
がないのであり、係合突部114と係合切欠174とが
繰り返し衝突,摺動して摩耗やへたりを生ずることがな
く、また、工具保持装置の各部の衝突,摺動に起因する
摩耗やへたりもなくなって工具保持装置の耐久性が向上
する。係合切欠174が第一周方向当接部を構成し、係
合突部114が第二周方向当接部を構成し、これらを備
えた当接型相対回転阻止装置が一方向クラッチ180と
共に相対回転完全阻止装置を構成しているのである。
【0041】さらに、ドリルホルダ36の嵌合軸部38
を嵌合穴18に嵌合するとき、コレット154のテーパ
外周面158が嵌合穴18のテーパ内周面178に当接
し、テーパ内周面178により押されて縮径させられつ
つ、皿ばね156の付勢力に抗して円環状溝162内を
フランジ部110側へ移動させられ、円環状溝162の
フランジ部110側に位置する前側溝側面にも、反対側
に位置する後側溝側面164にも当接しない状態にな
る。ドリルホルダ36がスリーブ10に軸方向において
隙間なく取り付けられた状態では、コレット154は皿
ばね156の付勢力により縮径した状態に保たれ、スト
レート内周面160が嵌合軸部38に密着するととも
に、テーパ外周面158がテーパ内周面178に密着
し、嵌合軸部38の嵌合穴18に対する径方向の相対移
動が阻止される。
【0042】また、一方向クラッチ180も嵌合軸部3
8と嵌合穴18との間の径方向の相対移動を阻止する役
割を果たす。一方向クラッチ180のケーシングが嵌合
穴18に圧入されていて、両者間に径方向のクリアラン
スがなく、ローラ182がばねの付勢力により嵌合軸部
38に押し付けられ、ローラ182はケーシングの凹部
の内面と嵌合軸部38の外周面との間に挟まれた状態に
保たれるからである。特に、一方向クラッチ180は嵌
合穴18の底部に設けられ、軸方向においてコレット1
54とは離れた位置に設けられているため、軸方向に隔
たった2個所において嵌合軸部38と嵌合穴18との間
の径方向の相対移動が阻止されており、加工時における
嵌合軸部38の嵌合穴18に対する相対移動が極めて良
好かつ確実に阻止され、嵌合軸部38と嵌合穴18との
径方向のクリアランスに基づく相対移動の発生が阻止さ
れる。
【0043】本実施形態においては、コレット154お
よび皿ばね156ならびに一方向クラッチ180が、嵌
合軸部38の嵌合穴18に対する嵌合クリアランスに基
づく径方向の相対移動を減少させる径方向相対移動減少
装置の一種である径方向相対移動阻止装置を構成してい
るのである。なお、一方向クラッチ180は、嵌合穴1
8の奥であって、端面16から離れた位置に設けられて
おり、スリーブ10とドリルホルダ36とが傾いて、端
面16と112とが離れることを阻止することを助け、
前記当接状態維持装置により当接させられた端面16と
112とが離れることをより確実に阻止することができ
る。
【0044】なお、コレット154は皿ばね156の付
勢力により縮径状態に保たれ、嵌合軸部38,テーパ内
周面178に当たった状態に保たれるため、コレット1
54のテーパ外周面158,ストレート内周面160,
嵌合穴18のテーパ内周面178および嵌合軸部38を
それほど精度良く形成しなくても、テーパ外周面15
8,ストレート内周面160をテーパ内周面178,嵌
合軸部38に密着させて径方向の相対移動を阻止するこ
とができる。このように本工具保持装置は、ドリルホル
ダ36とスリーブ10との軸方向の相対移動および相対
回転が阻止されるとともに、嵌合軸部38と嵌合穴18
との径方向の相対移動が阻止されており、加工中におけ
る工具保持装置の各部の衝突,摺動、それらに起因する
摩耗やへたりの発生が極めて良好に回避され、耐久性の
高い工具保持装置が得られる。
【0045】ドリルホルダ36をスリーブ10から取り
外す場合には、カラー120を引張コイルスプリング1
46の付勢力に抗して回転させ、鋼球132を軸方向溝
部140内に位置させる。このときカラー120は軸方
向において係合突部126が外向きフランジ172から
離れる向きに移動させられ、カラー120による端面1
6の端面112への押付けが解除される。この状態で
は、係合突部126とストッパ面176との間に隙間が
なく、カラー120を係合突部126が端面112から
離れる向きに移動させることはできないが、係合突部1
26は外向きフランジ172の係合切欠174と回転方
向の位相が一致するため、カラー120を引張コイルス
プリング146の付勢力に抗して回転させた状態を保ち
つつ、スリーブ10から離れる向きに移動させれば、鋼
球132が軸方向溝部140の傾斜溝部142側の端面
に係合し、ドリルホルダ36がスリーブ10から抜け出
す向きに移動させられる。それにより係合突部126と
ストッパ面176との間に隙間が生ずるため、カラー1
20を引張コイルスプリング146の付勢力に抗して回
転させた状態を保って、圧縮コイルスプリング128の
付勢力に基づいて移動させれば、係合突部126が端面
112から離れる向きに移動させられる。それにより鋼
球132が軸方向溝部140内に進入し、引張コイルス
プリング146の付勢力を受けて軸方向溝部140の軸
方向に平行な溝側面に係合してカラー120の回転を阻
止する状態になり、作業者はカラー120を引張コイル
スプリング146の付勢力に抗して回転させた状態に保
つことなく、カラー120あるいはドリルホルダ36を
持ってスリーブ10から取り外すことができる。
【0046】なお、上記実施形態においては、係合突部
114と嵌合軸部38との間に隙間が形成され、コレッ
ト154が配設されていたが、図8に示すドリルホルダ
190のように、コレット192をフランジ部194に
突設された係合突部196から軸方向に外れた位置に設
けてもよい。
【0047】ドリルホルダ190のホルダ本体198の
係合突部196が設けられた部分より嵌合軸部200側
の部分は、径が小さくされるとともに浅い円環状溝20
2が形成され、コレット192が収容されるとともに、
皿ばね204により付勢されている。このようにすれ
ば、係合突部196と嵌合軸部200との間にコレット
192を配設するための隙間を形成する必要がなく、係
合突部196の形成が容易である。
【0048】また、上記実施形態においては、ドリルホ
ルダ36,190に係合突部114,196が設けら
れ、スリーブ10に係合切欠174が形成されていた
が、逆に、ドリルホルダに係合切欠を形成し、スリーブ
に係合突部を形成して両者を係合させ、回転トルクが伝
達されるようにしてもよい。例えば、図8に示すドリル
ホルダ190において、フランジ部194を、係合突部
196の幅を加えた幅の厚いものとし、係合突部196
に代えて係合切欠を形成し、スリーブ10においては、
外向きフランジ172,係合切欠174に代えて、直径
方向の2個所に隔たった位置にそれぞれ、係合突部を形
成するのである。この場合にも、コレットをドリルホル
ダのフランジ部に対して軸方向においてずれた位置に設
ければ、フランジ部および係合切欠を容易に形成するこ
とができる。
【0049】第一,第二発明に共通の別の実施形態を図
9〜図14に示す。本実施形態は、ドリルホルダ300
とスリーブ302とを、スリーブ302の嵌合穴304
内において係合させ、軸方向の隙間をなくすとともに、
一方向クラッチ306をドリルホルダ300側に設けた
ものである。その他の構成は前記実施形態と同じであ
り、対応する部分には同一の符号を付して説明を省略す
る。
【0050】ドリルホルダ300のホルダ本体310
は、図10に示すように段付状を成し、軸方向の一端部
に大径部312,中間部に大径部312より径の小さい
嵌合軸部314,他端部に嵌合軸部314より径の小さ
い係合軸部316が設けられている。嵌合軸部314の
係合軸部316側の端部は、嵌合穴304との嵌合クリ
アランスが大径部312側の部分より大きく、0.1mm
である嵌合案内部317とされている。また、大径部3
12の嵌合軸部314とは反対側の先端部は、前記工具
保持部42と同様の工具保持部318を構成し、加工工
具を保持するようにされている。
【0051】大径部312の先端部と嵌合軸部314と
の間の部分には、円筒状のカラー320が軸方向に相対
移動可能かつ相対回転可能に嵌合されている。カラー3
20は、大径部312に嵌合される嵌合部322と、内
径が嵌合軸部314より大きい環状部324とを有す
る。嵌合部322の内周面は段付状を成し、小径嵌合穴
部328において大径部312に嵌合され、大径嵌合穴
部330において、大径部312に半径方向外向きに突
設されたフランジ部332に嵌合されている。カラー3
20は圧縮コイルスプリング336により、小径嵌合穴
部328と大径嵌合穴部330との間の肩面338がフ
ランジ部332に当接する向きに付勢されている。
【0052】圧縮コイルスプリング336は、ホルダ本
体310に取り付けられたスプリングリテーナ340
と、カラー320の嵌合部322に形成された有底穴3
42の底面との間に配設されている。有底穴342の内
径はスプリングリテーナ340の外径より僅かに大きく
されており、圧縮コイルスプリング336がカラー32
0内に収容されてホルダ本体310の長さの増大が抑え
られるとともに、カラー320のスプリングリテーナ3
40に対する軸方向の相対移動が許容されている。
【0053】カラー320の嵌合部322の直径方向に
隔たった2個所にはそれぞれ、半径方向に貫通し、外周
面と大径嵌合穴部330とに開口する雌ねじ孔346が
形成されており、係合子としての鋼球348が嵌合され
るとともに、雌ねじ孔346に螺合されたプラグ350
により抜出しを防止されている。
【0054】ホルダ本体310のカラー320の嵌合部
322が嵌合された部分には、直径方向に隔たった2個
所にそれぞれ、係合溝354が形成されている(図9お
よび図10にはそれぞれ、1個ずつ示されている)。係
合溝354は、図11に示すように、軸方向に延びる軸
方向溝部356と、軸方向溝部356の中間部から周方
向へ延び出させられた周方向溝部358とを有する。周
方向溝部358は、軸方向溝部356から、図中矢印で
示す加工時の回転方向とは逆向きに延び出させられてい
る。前記鋼球348の外周部の一部は雌ねじ孔346か
ら突出させられて係合溝354に嵌入させられており、
カラー320が圧縮コイルスプリング336により付勢
されて肩面338がフランジ部332に当接した状態で
は、鋼球348は、外周部の一部が軸方向溝部356内
に位置するとともに、軸方向溝部356の周方向溝部3
58から離れたフランジ部332側の端に位置させられ
ている。
【0055】カラー320の環状部324内に、前記一
方向クラッチ306が取り付けられている。一方向クラ
ッチ306は、前記一方向クラッチ180と同様に構成
されており、ケーシングと、リテーナにより保持されて
ケーシングの凹部に半ば収容された複数のローラ366
と、複数のローラ366の各々を付勢するばねとを有す
る。一方向クラッチ306は、ドリルホルダ300のス
リーブ302に対する切削抵抗に基づく向きの相対回転
は許容するが、逆向きの相対回転は阻止する。
【0056】また、嵌合軸部314のフランジ部332
に隣接する部分には、浅い円環状溝368が形成され、
コレット370が嵌合されるとともに、皿ばね372に
よりフランジ部332から離れる向きに付勢されてい
る。コレット370は前記コレット154と同じもので
あり、コレット154について付した符号と同じ符号を
付し、説明を省略する。
【0057】さらに、係合軸部316には、図10およ
び図12に示すように、カム溝380が形成されてい
る。カム溝380は、係合軸部316の端面に開口し、
軸方向に延びる軸方向溝部382と、軸方向溝部382
から加工時の回転方向へ延び出させられるとともに、係
合軸部316の周方向に対して、突出端ほど軸方向溝部
382から離れる向きに傾斜させられた傾斜溝部384
とを有する。これらカム溝380は、4個、等角度間隔
に形成されている。
【0058】スリーブ302の先端部には、図9に示す
ように、前記一方向クラッチ306のローラ366内に
嵌合される小径の嵌合部388が突設されている。ま
た、嵌合穴304は有底穴であり、開口端部には、前記
コレット370のテーパ外周面158に対応するテーパ
内周面390が形成されている。嵌合穴304の底部に
は、鋼球保持部材392が固定されている。鋼球保持部
材392は有底円筒状を成し、円筒部394には半径方
向に貫通する4個の貫通穴396が等角度間隔に形成さ
れるとともに、それぞれ鋼球398が嵌合されている。
これら貫通穴396の内周面は、円筒部394の内周側
の径は鋼球398の直径より小さくされ、外周側の径は
鋼球398の直径よりは大きくされたテーパ面とされて
いる。鋼球398は、鋼球保持部材392の外側に嵌合
された筒状部材400により貫通穴396からの抜出し
を防止されるとともに、外周部の一部が円筒部394の
内周面から突出させられている。鋼球保持部材392
は、スリーブ302にピン402によって位置決めされ
るとともに、ボルト404によってスリーブ302に固
定されている。
【0059】以上のように構成された工具保持装置のド
リルホルダ300のスリーブ302への取付けを説明す
る。取付け時にはドリルホルダ300を係合軸部316
側からスリーブ302の嵌合穴304に挿入する。この
とき、嵌合案内部317が嵌合軸部314の嵌合穴30
4への嵌合を案内する。嵌合案内部317の嵌合穴30
4に対する嵌合クリアランスは、嵌合軸部314の大径
部312側の部分より僅かに大きくされているため、嵌
合穴304への嵌合が容易である。嵌合案内部317の
嵌合クリアランスは、嵌合案内部317が嵌合穴304
に嵌合された状態で、嵌合軸部316を嵌合穴304と
ほぼ同心状に保ち得る大きさとされており、嵌合案内部
317を案内にして嵌合軸部314の残りの部分をスム
ーズに嵌合することができる。このように嵌合案内部3
17を設け、嵌合軸部314の嵌合を案内させれば、嵌
合軸部314の嵌合案内部317以外の部分を精度良く
加工し、嵌合クリアランスを極めて小さくしても嵌合穴
304にスムーズに嵌合することができ、嵌合軸部31
4と嵌合穴304との間の径方向のクリアランスを小さ
くし、嵌合軸部314と嵌合穴304との径方向の相対
移動を減少させることができる。
【0060】このように嵌合軸部314を嵌合穴304
に嵌合するとき、カム溝380の軸方向溝部382と鋼
球398との回転方向の位相は一致していないのが普通
であり、係合軸部316の端面が鋼球398に当たる。
その状態からドリルホルダ300を正逆いずれかの方向
へ回転させれば、軸方向溝部382と鋼球398との位
相が一致し、嵌合軸部314を更に嵌合穴304内に挿
入することができる。
【0061】鋼球398が軸方向溝部382内を傾斜溝
部384側へ移動し、鋼球398が軸方向溝部382と
傾斜溝部384との境の屈曲部に当たるまで、嵌合軸部
314を嵌合穴304に挿入したならば、スリーブ30
2を持ってカラー320を回し、ドリルホルダ300を
スリーブ302に対して回転させる。カム溝380に鋼
球398が嵌入するまで嵌合軸部314が嵌合穴304
に嵌合された状態では、スリーブ302の先端の嵌合部
388が一方向クラッチ306のローラ366内に嵌合
されているが、一方向クラッチ306はドリルホルダ3
00のスリーブ302に対する切削抵抗に基づく向きの
相対回転を許容するため、カラー320をスリーブ30
2に対して、切削抵抗に基づく向きに回転させることが
できる。カラー320が回転させられることにより、ま
ず、雌ねじ孔346の内周面が鋼球348に係合させら
れるとともに、鋼球348が係合溝354の軸方向溝部
356の溝側面に係合させられる。
【0062】そのため、更にカラー320をスリーブ3
02に対して回転させれば、図12に矢印で示すよう
に、ドリルホルダ300が切削抵抗が加えられる向き、
すなわち加工時の回転方向とは逆向きに回転させられ
る。それによりカム溝380が鋼球398に対して回転
し、鋼球398が傾斜溝部384内へ進入し、傾斜溝部
384の溝側面に係合してドリルホルダ300をスリー
ブ302内に引き込む。
【0063】このとき、スリーブ302の嵌合部388
の端面408は、ドリルホルダ300のフランジ部33
2のスリーブ302側の端面410に当接し、あるいは
僅かな隙間があり、前者の場合には、端面408,41
0が互いに押し付けられ、後者の場合にはドリルホルダ
300が端面408,410同士が当接するまで嵌合穴
304に引き込まれるとともに、端面408,410が
互いに押し付けられる。いずれにしてもドリルホルダ3
00はスリーブ302に軸方向の遊びなく取り付けられ
るとともに、鋼球398と傾斜溝部384との係合によ
り当接状態に保たれる。
【0064】加工時には、ドリルホルダ300に加えら
れる切削抵抗が傾斜溝部384の斜面の作用により軸方
向の推力に変換され、鋼球398がこの推力を受けて傾
斜溝部384の溝側面に係合した状態に保たれるととも
に、端面408,410を当接した状態に保ち、ドリル
ホルダ300とスリーブ302との軸方向の相対移動が
阻止される。鋼球398と傾斜溝部384の溝側面との
係合により、スリーブ302の回転トルクがドリルホル
ダ300に伝達されるのであり、切削抵抗が消滅しても
ドリルホルダ300がスリーブ302に対して軸方向に
相対移動することがない。カムフォロワとしての鋼球3
98およびカム溝380を含むカム機構が当接状態維持
装置を構成し、第一軸方向当接面たる端面408,第二
軸方向当接面たる端面410と共に軸方向移動限定装置
の一種である軸方向移動阻止装置を構成しているのであ
る。
【0065】このようにドリルホルダ300がスリーブ
302に取り付けられた状態では、ドリルホルダ300
とスリーブ302との相対回転は完全に阻止され、スリ
ーブ302の回転トルクがドリルホルダ300に伝達さ
れるとともに、切削抵抗の急な消滅時に両者が繰り返し
相対回転し、衝突,摺動に起因して摩耗やへたりが生じ
て耐久性が低下することがない。カラー320が鋼球3
48をドリルホルダ300の軸方向溝部356の溝側面
に係合させ、鋼球398がカム溝380の傾斜溝部38
4に係合させられることにより、カラー320,ドリル
ホルダ300のスリーブ302に対する切削抵抗に基づ
く向きの相対回転が阻止されるとともに、逆向きの相対
回転が一方向クラッチ306によって阻止されるからで
ある。本実施形態においては、第一周方向当接部たる傾
斜溝部384と、第二周方向当接部たる鋼球398とを
備えた当接型相対回転阻止装置、別の第一周方向当接部
たる係合溝350と、別の第二周方向当接部たる鋼球3
48とを備えた別の当接型回転阻止装置および一方向ク
ラッチ306が相対回転完全阻止装置を構成している。
鋼球398およびカム溝380を含むカム機構が当接状
態維持装置と当接型相対回転阻止装置を兼ねているので
ある。
【0066】ドリルホルダ300をスリーブ302から
取り外す場合には、カラー320を圧縮コイルスプリン
グ336の付勢力に抗して後退させ、鋼球348と係合
溝354の周方向溝部358との軸方向の位相が一致し
た状態でドリルホルダ300をスリーブ302に対して
取付け時とは逆向き、すなわち加工時の回転方向に回転
させる。それによりカム溝380の傾斜溝部384が鋼
球398に対して取付け時とは逆向きに移動させられ、
鋼球398と傾斜溝部384との係合が解除され、鋼球
398が軸方向溝部382内に位置する状態でドリルホ
ルダ300をスリーブ302から取り外すことができ
る。取外し後、カラー320とドリルホルダ300とを
相対回転させ、鋼球348が係合溝354の軸方向溝部
356のフランジ部332側の端部に係合した状態に戻
す。
【0067】上記のようにドリルホルダ300,スリー
ブ302およびカラー320が取付け状態においては正
逆いずれの方向にも相対回転しない理由を図13に基づ
いて簡単に説明する。ただし、理解を容易にするため
に、図13においてドリルホルダ300,スリーブ30
2およびカラー320はいずれも直線的に相対移動する
ものとして例示する。また、鋼球348,398は、突
部に置き換えて示す。さらに、スリーブ302は固定し
て動かさないものとして例示する。
【0068】ドリルホルダ300がスリーブ302に嵌
合され、カラー320が回転操作されていない状態で
は、図13(a)に示すように、鋼球348は係合溝3
54の軸方向溝部356の溝側面に係合しておらず、鋼
球398はカム溝380の傾斜溝部384に係合してい
ない。また、カラー320は、一方向クラッチ306に
より、スリーブ302に対して○印を付した矢印の方向
には移動可能であるが、×印を付した矢印の方向には移
動不能である。この状態からカラー320をスリーブ3
02に対して移動(回転)させ、図13(b)に示すよ
うに、鋼球348を軸方向溝部356の溝側面に係合さ
せる。この係合により、ドリルホルダ300は、○印を
付した矢印の方向には移動可能であるが、×印を付した
矢印の方向には移動不能になる。
【0069】そして、さらにカラー320をスリーブ3
02に対して移動(回転)させれば、鋼球348と軸方
向溝部356との係合によりドリルホルダ300も移動
させられ、図13(c)に示すように鋼球398が傾斜
溝部384の溝側面に係合し、カラー320の移動が止
められる。この状態では、カラー320の移動(回転)
は、鋼球348と軸方向溝部356との係合および一方
向クラッチ306により正逆いずれの方向においても阻
止され、ドリルホルダ300の移動は、鋼球348と軸
方向溝部356との係合および鋼球398と傾斜溝部3
84との係合により正逆いずれの方向においても阻止さ
れる。結局、ドリルホルダ300,スリーブ302およ
びカラー302は回転方向において正逆いずれにおいて
も相対回転不能に係合させられ、回転方向の隙間がな
く、切削抵抗が変動しても微小回転が生じて摩耗するこ
とはないのである。
【0070】ドリルホルダ300のスリーブ302から
の取外し時には、図13(c)に示す状態からカラー3
20を紙面に直角な方向に移動させ(この移動は、カラ
ー320の鋼球348がカム溝354の周方向溝部35
8に嵌入する位置への移動に相当する)、図14(a)
に示すように、鋼球348と周方向溝部358との位相
を一致させる。この状態ではドリルホルダ300をスリ
ーブ302に対して移動させることが可能であり、ドリ
ルホルダ300を移動させ、図14(b)に示すように
スリーブ302との係合を解き、ドリルホルダ300を
スリーブ302から取り外すことができる。
【0071】本実施形態の工具保持装置においてもコレ
ット370が設けられており、それにより嵌合軸部31
4と嵌合穴304とのコレット370が設けられた部分
の径方向の相対移動が阻止されることは、前記実施形態
と同じである。本実施形態の工具保持装置においては、
嵌合軸部314と嵌合穴304との径方向の相対移動が
一方向クラッチにより阻止されることはないが、前述の
ように、嵌合軸部314に嵌合案内部317が設けら
れ、嵌合軸部314の嵌合案内部317以外の部分と嵌
合穴304との嵌合クリアランスが極めて小さくなるよ
うにされているため、コレット370が設けられた部分
以外の部分においても嵌合軸部314と嵌合穴304と
の径方向の相対移動が少なくて済み、耐久性の高い工具
保持装置が得られる。
【0072】なお、上記実施形態において、嵌合案内部
317の嵌合クリアランスは、0.1mmとされていた
が、下限は0.05mm以上とすることが望ましく、上限
は0.15mm以下とすることが望ましい。
【0073】また、ドリルホルダ300をスリーブ30
2に取り付けるとき、カラー320をドリルホルダ30
0およびスリーブ302に対して回転させるとともに、
スリーブ302をカラー320に対して回転させて取り
付けてもよい。
【0074】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態
を図15〜図36に基づいて説明する。本実施形態は、
当接状態維持装置の構成が前記図1〜7に示す実施形態
と異なっているが、スリーブ420のスピンドルに取り
付けられる部分の構成およびドリルホルダ422のドリ
ルを保持する構成は同じであり、対応する部分には同一
の符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0075】嵌合軸部38には、工具保持部42側とは
反対側に、嵌合軸部38より径の小さい円形断面の嵌合
突部426が設けられている。また、ホルダ本体424
のスリーブ420からの突出端部となる部分には、図1
8に示すように半径方向外向きに延び出すフランジ部4
30が形成されている。フランジ部430の軸方向にお
いてホルダ本体424の先端側(工具保持部42が設け
られる側)の端部の外周面には、先端側ほどホルダ本体
424の軸線に接近する向きに傾斜するテーパ面432
が形成されている。このテーパ面432の傾斜角度は約
60度とされている。フランジ部430には、図19に
示すように、直径方向に隔たった2か所にそれぞれ、軸
方向に貫通し、幅が一定の第二係合切欠たる幅一定切欠
434が形成されている。
【0076】ホルダ本体424のフランジ部430より
先端側には、図15および図16に示すように、カラー
440が軸方向に相対移動可能に嵌合されている。カラ
ー440は、図20ないし図23に示すように、円筒状
の嵌合部442と、嵌合部442の軸方向において一方
の側の端面の直径方向に隔たった2個所にそれぞれ突設
された係合片444とを有する。係合片444の基端部
は、軸方向に延びる二側面がいずれも軸方向に平行であ
って、幅が一定の幅一定係合部446とされ、幅一定係
合部446に続く突出端部は、軸方向に延びる二側面の
一方が軸方向に平行な平行面448、他方が基端部側か
ら突出端部側に向かうに従って平行面448に接近する
向きに傾斜し、軸方向に対する傾斜角度が15度の傾斜
面450である片傾斜係合部452とされている。これ
ら2個の係合片444の各片傾斜係合部452は、スリ
ーブ420とドリルホルダ422との切削抵抗に基づく
正方向と逆方向との相対回転をそれぞれ、平行面448
において阻止する向きに形成されている。
【0077】これら係合片444はそれぞれ、フランジ
部430に形成された幅一定切欠434に軸方向に相対
移動可能に嵌入させられている。カラー440は、図1
6に示すように、ホルダ本体424に取り付けられたス
プリングリテーナ454との間に配設された付勢手段の
一種である弾性部材としての圧縮コイルスプリング45
6により、係合片444が幅一定切欠434と係合し、
フランジ部430の軸方向においてホルダ本体424の
後側の端面、すなわち嵌合軸部38側の端面528(図
16参照)から突出する向きに付勢されている。係合片
444は、圧縮コイルスプリング456により、スリー
ブ420に形成された後述する第一係合切欠から離脱し
た非作用位置から、幅一定切欠434および第一係合切
欠に跨がって係合する作用位置側へ移動する向きに付勢
されているのである。これら係合片444の幅一定係合
部446と幅一定切欠434との回転方向の両側クリア
ランスは、0.01mm〜0.03mmとされている。
【0078】カラー440の嵌合部442は、図21に
示すように、大径嵌合部458および小径嵌合部460
を有する段付状を成す。大径嵌合部458は嵌合部44
2の係合片444が突設された側とは反対側に設けられ
ており、嵌合部442の直径方向に隔たった2個所には
それぞれ、図23に示すように、大径嵌合部458の端
面に開口し、軸方向に延びて小径嵌合部460に至る円
形断面のピン穴462が2個ずつ形成されている。これ
ら2個ずつのピン穴462はそれぞれ、図22に示すよ
うに、係合片444が形成された位置を中心として、正
逆両方向にそれぞれ17.5度ずつ離れ、互いに35度
隔たった位置に形成されており、2個ずつのピン穴46
2のうちの一方にそれぞれ、ピン464(図16参照)
が嵌合されている。ピン穴462の小径嵌合部460に
形成された部分は、断面形状がほぼ半円形状を成し、ピ
ン464の小径嵌合部460に嵌合された部分は、半径
方向のほぼ半分がピン穴462から半径方向外向きに突
出させられている。
【0079】上記カラー440の外側には、図16に示
すように係合部材470が嵌合されている。係合部材4
70は、図24ないし図27に示すように円筒状の嵌合
部472と、嵌合部472の軸方向に隔たった2つの端
面のうち、後ろ側、すなわち係合軸部38側の端面に突
設された2個の内向き突部474とを有する。内向き突
部474は、嵌合部472の端面の直径方向に隔たった
2個所にそれぞれ、半径方向内向きに延び出す向きに設
けられている。
【0080】係合部材470の嵌合部472の軸方向の
中間部には、上記2個の内向き突部474に対して、軸
線まわりの位相を同じくする位置であって、直径方向に
隔たった2個所にはそれぞれ、軸方向に延びる長穴47
6が形成されている。前記ホルダ本体424のフランジ
部430の直径方向に隔たった2個所であって、2つの
幅一定切欠434が形成された位置とは90度位相を異
にする位置にはそれぞれ、図19に示すように、半径方
向に延びるピン穴477が形成されるとともに、ピン4
78(図16参照)が嵌合されており、係合部材470
の長穴476にピン478のピン穴477からの突出端
部が嵌合されている。それにより係合部材470はホル
ダ本体424に、相対回転不能かつ軸方向の僅かな相対
移動が許容されるとともに、内向き突部474がカラー
440の係合片444と90度位相を異にする位相で取
り付けられている。カラー440の係合片444がフラ
ンジ部430の幅一定切欠434に嵌合した状態では、
係合部材470とカラー440とはホルダ本体424を
介して互いに相対回転不能な状態となる。
【0081】嵌合部472のフランジ部430に係合さ
せられた部分より先端側の部分は、内径がフランジ部4
30の外径より小さくされるとともに、外周面は、先端
ほど直径が漸減するテーパ外周面480とされている。
テーパ外周面480の係合部材470の軸線に対する傾
斜角度は約10度とされている。この外周面がテーパ面
であるテーパ部482の直径方向に隔たった2個所には
それぞれ、直径方向に貫通する貫通穴484が形成され
るとともに、係合子の一種である球体としての鋼球48
6(図16参照)が嵌合されている。鋼球486はフラ
ンジ部430より先端側に位置させられているのであ
り、テーパ部482の貫通穴484が形成された部分の
内周面は、先端ほど直径が漸減するテーパ内周面488
とされ、テーパ部482とフランジ部430との干渉が
回避されるとともに、鋼球486が貫通穴484から突
出してフランジ部430に係合し得るようにされてい
る。
【0082】さらに、図25および図27に示すよう
に、2つの内向き突部474とは90度位相を異にする
2個所にそれぞれ、テーパ部482の端面に開口し、軸
方向に延びる切欠489が形成されている。これら切欠
489はそれぞれ、係合部材470の軸線を中心とする
部分円環状を成し、カラー440に設けられた2個の係
合片444と回転方向の位相が一致させられている。
【0083】上記係合部材470の外側には、図16に
示すように可動スリーブ490が嵌合されている。可動
スリーブ490は、図28および図29に示すように円
筒状を成し、軸方向に隔たった2つの端面のうち、嵌合
軸部38側の端面の直径方向に隔たった2個所にはそれ
ぞれ、軸方向突起492が突設されている。また、可動
スリーブ490の内周面には、前記係合部材470に形
成されたテーパ外周面480の傾斜に対応する傾斜のテ
ーパ内周面494が形成されている。さらに、可動スリ
ーブ490のテーパ内周面494が形成された部分より
先端側には、半径方向内向きに突出する円環状突部49
6が形成されるとともに、円環状突部496の2個の軸
方向突起492に対して回転方向における位相を90度
異にする2個所にはそれぞれ、可動スリーブ490の軸
線を中心とし、中心角が35度の部分円環状の係合溝4
98が形成されている。これら係合溝498にはそれぞ
れ、前記カラー440に嵌合された2個のピン464の
小径嵌合部460側へ突出した部分が嵌合されており、
可動スリーブ490はカラー440に対してピン464
が係合溝498内を移動する範囲(ここでは35度)に
おいて相対回転可能である。
【0084】可動スリーブ490は、図16に示すよう
に、スプリングリテーナ500との間に配設された付勢
手段の一種である弾性部材としての圧縮コイルスプリン
グ502により、テーパ内周面494が係合部材470
により保持された鋼球486に係合する向きに付勢され
ている。そのため、ドリルホルダ422がスリーブ42
0から外された状態では、カラー440は圧縮コイルス
プリング456の付勢力により移動させられて、係合片
444がフランジ部430に形成された幅一定切欠43
4に嵌入させられるとともに、片傾斜係合部452がフ
ランジ部430から嵌合軸部38側へ突出させられてい
る。また、可動スリーブ490は、圧縮コイルスプリン
グ502の付勢力により移動させられてテーパ内周面4
94が鋼球486に係合し、鋼球486をフランジ部4
30に形成されたテーパ面432に係合させている。カ
ラー440の圧縮コイルスプリング456の付勢方向の
移動限度は、大径嵌合部458が可動スリーブ490の
円環状突部496に当接することにより規定される。
【0085】前記スリーブ420の先端部には、図30
および図31に示すように、外周面に開口する円環状の
嵌合溝510が形成され、それによりスリーブ420の
先端には半径方向外向きの外向きフランジ516が形成
されている。外向きフランジ516の径は、スリーブ4
20の嵌合溝510より後端側の部分より小さくされて
おり、嵌合溝510の外向きフランジ516を形成する
環状の溝側面は、他方の溝側面より径が小さい係合面5
12を構成し、他方の溝側面はストッパ面514を構成
し、係合面512より半径方向外向きに突出させられて
いる。スリーブ420にはまた、ストッパ面514に開
口し、軸方向に延びる嵌合切欠518が直径方向に隔た
った2個所にそれぞれ形成されている。
【0086】外向きフランジ516の上記2個の嵌合切
欠518とは90度位相を異にする2個所にはそれぞ
れ、第一係合切欠たる片傾斜切欠520が形成されてい
る。片傾斜切欠520は、スリーブ420の先端面であ
る外向きフランジ516の端面522に開口させられて
おり、図17に示すように、スリーブ420の軸方向に
延びる二側面の一方が軸方向に平行な平行面524、他
方がスリーブ420の後端側ほど、すなわち前記係合片
444が片傾斜切欠520から離脱する非作用位置側か
ら、係合片444が幅一定切欠434および片傾斜切欠
520に跨がって係合する作用位置側へ向かうに従って
平行面524に接近する向きに傾斜させられ、軸方向に
対する傾斜角度が15度の傾斜面526とされている。
これら2個の片傾斜切欠520は、回転方向に対して互
いに逆向きに形成されており、片傾斜切欠520の平行
面524がそれぞれ、スリーブ420とドリルホルダ4
22との正方向と逆方向との相対回転をそれぞれ、前記
2個の係合片444の各片傾斜係合部452の平行面4
48と当接して阻止する。また、2個ずつの係合片44
4,片傾斜切欠520はそれぞれ、片傾斜係合部452
が片傾斜切欠520に回転方向において隙間なく係合し
た状態において、カラー440のそれ以上の移動を阻止
し、カラー440の嵌合部442をフランジ部430か
ら離れた状態に保つ大きさとされている。
【0087】嵌合穴18の底部には、一方向クラッチ5
30が配設されている。この一方向クラッチ530は、
前記一方向クラッチ180と同様に構成され、ケーシン
グと、それぞれリテーナにより保持されるとともにばね
により付勢された複数のローラ532とを備え、ケーシ
ングにおいて嵌合穴18に圧入されており、ドリルホル
ダ422のスリーブ420に対する切削抵抗に基づく向
きの相対回転は許容するが、逆向きの相対回転は阻止す
るようにされている。
【0088】以上のように構成された工具保持装置のド
リルホルダ422のスリーブ420への取付けを説明す
る。取付け開始時におけるカラー440の係合片444
と、係合部材470の内向き突部474と、可動スリー
ブ490の軸方向突起492と、スリーブ420の嵌合
切欠518および片傾斜切欠520との回転方向におけ
る位置関係を図32に示す。なお、スリーブ420はカ
ラー440等と重なって図がわかり難くなることを避け
るために、実際より大きく示されている。
【0089】図32(a)に示すように、内向き突部4
74と軸方向突起492との回転方向の位相を合わせ
る。この状態では、カラー440に嵌合されたピン46
4が、可動スリーブ490の係合溝498のドリルホル
ダ取付け時の回転操作方向(図中矢印で示されており、
本実施形態では、ドリルホルダ422のスリーブ420
に対する切削抵抗に基づく向きの相対回転方向が回転操
作方向とされている)において上流側の端部に係合した
状態となる。前述のように、カラー440には、直径方
向に隔たった2個所にそれぞれ2個ずつのピン穴462
が形成され、いずれかのピン穴462にピン464が嵌
合されるが、ピン464は、ドリルホルダ422の回転
操作方向において上流側に位置するピン穴462に嵌合
される。回転操作開始時にドリルホルダ422と可動ス
リーブ490とが相対回転を生ずる側のピン穴462に
嵌合されるのである。ピン464が係合溝498に対し
てドリルホルダ422の回転操作開始時に相対回転を生
ずる側の端部に係合する状態において、可動スリーブ4
90の軸方向突起492とカラー440の係合片444
とは、嵌合切欠518と片傾斜切欠520との間の角度
に等しい角度隔たった位置に位置させられている。
【0090】内向き突部474と軸方向突起492との
回転方向の位相を合わせたならば、内向き突部474お
よび軸方向突起492と片傾斜切欠520との回転方向
の位相を合わせ、内向き突部474を片傾斜切欠520
内を通しつつドリルホルダ422の嵌合軸部38をスリ
ーブ420の嵌合穴18に挿入する。カラー440の係
合片444と片傾斜切欠520との回転方向の位相は9
0度ずれているため、嵌合軸部38をスリーブ420に
挿入するとき、まず、図33(a)に示すように係合片
444がスリーブ420の端面522に当接する。この
状態から更に嵌合軸部38をスリーブ420に挿入すれ
ば、ドリルホルダ422は圧縮コイルスプリング456
を圧縮しつつカラー440に対して前進させられ、内向
き突部474が片傾斜切欠520を通って嵌合溝510
内へ進入させられる。
【0091】可動スリーブ490の軸方向突起492は
係合部材470の内向き突部474より突出させられて
いるため、内向き突部474全体が片傾斜切欠520を
通過して嵌合溝510内に進入する前にストッパ面51
4に当接する。そして、内向き突部474全体が嵌合溝
510内に進入するまで、ドリルホルダ422は圧縮コ
イルスプリング456,502を圧縮しつつ前進させら
れ、それにより図33(b)に示すように、フランジ部
430がスリーブ420の端面522に当接し、軸方向
突起492がストッパ面514に当接するとともに内向
き突部474全体が嵌合溝510内に位置する状態とな
る。なお、ドリルホルダ422が前進させられ、それと
共に係合部材470および可動スリーブ490が前進さ
せられるとき、係合部材470とカラー440の係合片
444との干渉は、係合部材470に形成された切欠4
89(図25,図27参照)によって回避される。
【0092】この状態でドリルホルダ422を90度回
転させれば、係合片444と片傾斜切欠520との位相
が一致し、カラー440に対する圧縮コイルスプリング
456の付勢力により、図33(c)に示すように、係
合片444が片傾斜切欠520に嵌入させられる。但
し、カラー440は、大径嵌合部458が可動スリーブ
490の円環状突部496に当接して前進を阻止される
ため、係合片444は一部が片傾斜切欠520内に嵌入
した状態となるにとどまる。嵌合軸部38を嵌合穴18
に嵌合するとき、嵌合突部426が一方向クラッチ53
0内に嵌入するが、ドリルホルダ422はスリーブ42
0に対して切削抵抗に基づく向きには相対回転可能であ
り、ホルダ本体424はこの相対回転方向に回転させら
れる。
【0093】また、ホルダ本体424を90度回転させ
るとき、当初の35度分の回転時にはピン464が係合
溝498内を移動し、可動スリーブ490は回転させら
れない。そのため、ドリルホルダ422が90度回転さ
せられて係合片444が片傾斜切欠520に嵌入させら
れた状態では、図32(b)に示すように、軸方向突起
492が嵌合切欠518に対して35度ずれた位置にあ
る。係合片444の片傾斜切欠520への嵌入後、可動
スリーブ490のみを35度回転させれば、図32
(c)に示すように軸方向突起492と嵌合切欠518
との位相が一致し、可動スリーブ490は圧縮コイルス
プリング502の付勢力により前進させられ、図16に
示すように軸方向突起492が嵌合切欠518に嵌入さ
せられる。なお、図16は、嵌合切欠518と片傾斜切
欠520との一方が90度回されて、回転方向において
同じ位相で図示されている。この可動スリーブ490の
前進により、カラー440が圧縮コイルスプリング45
6の付勢力により前進させられ、片傾斜係合部452が
更に片傾斜切欠520内へ嵌入させられて、図17に示
すように平行面448,傾斜面450がそれぞれ、平行
面524,傾斜面526に当接させられる。
【0094】可動スリーブ490が前進させられると
き、テーパ内周面494が鋼球486に係合して鋼球4
86をフランジ部430のテーパ面432に押し付け、
テーパ面432に沿って、軸方向においてフランジ部1
10の嵌合軸部38側の端面528から離れる向きに移
動させつつ半径方向内方に移動させる。前述のように、
テーパ内周面494の傾斜角度は10度、フランジ部4
30のテーパ面432の傾斜角度は60度とされている
ため、圧縮コイルスプリング502が可動スリーブ49
0を介して鋼球486を押す力は、摩擦を考慮しなけれ
ば約8倍に倍力されるとともに、内向き突部474が端
面528に接近する向きの力に変換されて係合部材47
0に加えられる。そのため、内向き突部474が外向き
フランジ516の係合面512に係合し、端面522を
端面528に強く押し付け、ドリルホルダ422はスリ
ーブ420に軸方向の隙間なく取り付けられる。本工具
保持装置においては、196N(20kgf )の引付け力
が得られる。
【0095】カラー440の係合片444が片傾斜切欠
520に係合する方向への移動限度は、片傾斜係合部4
52が片傾斜切欠520に回転方向において隙間なく係
合することにより規定され、ドリルホルダ422がスリ
ーブ420に取り付けられた状態では、図16に示すよ
うに、カラー440の大径嵌合部458が可動スリーブ
490の円環状突部496から離間させられる。そし
て、スリーブ420の回転は、カラー440を介してド
リルホルダ422に伝達される。係合片444が片傾斜
切欠520に嵌合し、傾斜面450が傾斜面526に当
接した状態でなお、ドリルホルダ422とスリーブ42
0との間に嵌合軸部38が嵌合穴18に嵌合される向き
の相対移動があるときには、カラー440は圧縮コイル
スプリング456の付勢力に抗して僅かに後退させら
れ、端面522と端面528との当接を許容する。ドリ
ルホルダ422とスリーブ420とは軸方向において隙
間なく取り付けられるとともに、係合片444が片傾斜
係合部452において片傾斜切欠520に回転方向の隙
間なく係合させられ、この係合によりカラー440の係
合片444が片傾斜係合部452に嵌入する側への移動
限度が規定される。
【0096】本実施形態においては、フランジ部430
に形成されたテーパ面432が第二傾斜面を構成し、可
動スリーブ490に形成されたテーパ内周面494が第
一傾斜面を構成し、これらが伝達子としての鋼球486
と共に、付勢手段の一種である圧縮コイルスプリング5
02の付勢力を係合部材470が端面522と528と
を互いに当接させる向きの引付け力に変換する変換装置
を構成し、この変換装置が圧縮コイルスプリング50
2,可動部材たる可動スリーブ490と共に、係合部材
470に引付け力を付与する引付け力付与装置を構成
し、内向き突部474を有する係合部材470,外向き
フランジ516および引付け力付与装置が当接状態維持
装置を構成している。この当接状態維持装置は、第一軸
方向当接面たる端面522,第二軸方向当接面たる端面
528と共に、軸方向移動限定装置の一種である軸方向
移動阻止装置を構成している。
【0097】また、本工具保持装置においては、可動ス
リーブ490とカラー440とが相対回転させられ、カ
ラー440の片傾斜係合部452の大部分が片傾斜切欠
520に嵌入した後に、可動スリーブ490の軸方向突
起492が嵌合切欠518に嵌入して、外向きフランジ
516がフランジ部430に押し付けられるようにされ
ているため、片傾斜係合部452が片傾斜切欠520に
係合し損なうことがない。カラー440と可動スリーブ
490とが一体的に回転させられ、片傾斜係合部452
の片傾斜切欠520への嵌入と、軸方向突起492の嵌
合切欠518内への嵌入が同時であれば、片傾斜係合部
452が片傾斜切欠520内に嵌入する前に軸方向突起
492が嵌合切欠518に嵌入し、係合部材470によ
り外向きフランジ516がフランジ部430に押し付け
られ、それ以上、ホルダ本体424を回転させることが
できず、片傾斜係合部452が片傾斜切欠520に嵌入
せず、端面522に当接したままになる恐れがある。し
かし、本工具保持装置においては、可動スリーブ490
とカラー440とが相対回転させられ、軸方向突起49
2の係合切欠518への嵌入時には既に片傾斜係合部4
52の大部分が片傾斜切欠520に嵌合させられている
ため、片傾斜係合部452の片傾斜切欠520への嵌合
が保証され、ドリルホルダ422のスリーブ420への
取付けが確実に行われる。
【0098】ドリルホルダ422のスリーブ420への
取り付け時に嵌合突部426が一方向クラッチ530に
嵌合される。そのため、ドリルホルダ422のスリーブ
420への取付け後、ドリルホルダ422をスリーブ4
20に対して切削抵抗に基づく方向へ相対回転させ、幅
一定切欠434のトルク伝達面を係合片444の幅一定
係合部446に当接させる。ドリルホルダ422のスリ
ーブ420に対する切削抵抗に基づく方向とは逆向きの
相対回転は一方向クラッチ530により阻止されてお
り、また、片傾斜係合部452は片傾斜切欠520に隙
間なく嵌合させられているため、幅一定切欠434を係
合片444に当接させた後は、ドリルホルダ422はス
リーブ420に対して両者が離れる向きに相対回転させ
られることはない。幅一定切欠434と幅一定係合部4
46との間に設けられた係合のための回転方向のクリア
ランスが一方向クラッチ530により除去されたのに等
しいことになるのである。スリーブ420の回転トルク
は片傾斜切欠520,幅一定切欠434と係合片444
との係合によりドリルホルダ422に伝達され、加工時
に切削抵抗が急に消滅してもドリルホルダ422とスリ
ーブ420との切削抵抗に基づく向きとは逆向きの相対
回転は一方向クラッチ530により阻止され、スリーブ
420とドリルホルダ422とは正逆いずれの方向にお
いても相対回転させられることはない。本実施形態にお
いては、スリーブ420の回転は係合片444を介して
ドリルホルダ422に伝達されるようになっており、片
傾斜切欠520の平行面524が第一周方向当接部を構
成し、幅一定切欠434の加工時に係合片444の幅一
定係合部446に当接する面が第二周方向当接部を構成
していると言うことができ、あるいは平行面524が第
一周方向当接部を構成し、係合片444の片傾斜係合部
452の平行面448が第二周方向当接部を構成してい
ると言うことができ、あるいは係合片444の幅一定係
合部446および幅一定切欠434の加工時に互いに当
接する面がそれぞれ、第一周方向当接部,第二周方向当
接部を構成していると言うことができる。第一,第二周
方向当接部は、直接的あるいは間接的に当接させられる
二部分により構成され、これら第一,第二周方向当接部
が一方向クラッチ530と共に相対回転完全阻止装置を
構成している。
【0099】ドリルホルダ422をスリーブ420から
取り外す場合には、圧縮コイルスプリング502を圧縮
しつつ、可動スリーブ490をスリーブ420から離れ
る向きに移動させて軸方向突起492を嵌合切欠518
から離脱させる。このとき、図34(a)に示すよう
に、途中で可動スリーブ490の円環状突部496がカ
ラー440の大径嵌合部458に係合し、カラー440
を圧縮コイルスプリング456の付勢力に抗して後退さ
せ、図34(b)に示すように、係合片444が片傾斜
切欠520から離脱させられる。
【0100】この状態で可動スリーブ490を回転させ
れば、係合溝498の端とピン464との係合を介し
て、カラー440が回転させられるとともにホルダ本体
424,係合部材470が回転させられ、内向き突部4
74と片傾斜切欠520との位相が一致したとき、ドリ
ルホルダ422は圧縮コイルスプリング456,502
の付勢力によりスリーブ420から抜け出させられる。
ホルダ本体424のスリーブ420に対する回転方向は
一方向クラッチ530により一方向に規制されており、
取外し時には可動スリーブ490を取付け時と同じ方向
に回転させる。ドリルホルダ422がスリーブ420に
取り付けられた状態では、可動スリーブ490の係合溝
498の端はピン464に係合しており、可動スリーブ
490を90度回転させれば、内向き突部474と片傾
斜切欠520との位相が一致し、ホルダ本体424がス
リーブ420から外れる。このようにドリルホルダ42
2のスリーブ420への取付けは、嵌合軸部38を嵌合
穴18に嵌合するとともにドリルホルダ422および可
動スリーブ490を回転させることにより行うことがで
き、取外しは、可動スリーブ490を軸方向突起492
が嵌合切欠518から離脱する向きに移動させるととも
に、回転させることにより行うことができ、いずれも作
業者が片手で容易に行うことができる。
【0101】本実施形態の工具保持装置においては、ス
リーブ420の回転がドリルホルダ422に、ドリルホ
ルダ422とは別体に設けられるとともにドリルホルダ
422に嵌合されたカラー440を介して伝達される
が、カラー440に設けられ、スリーブ420とドリル
ホルダ422との両方に跨がって係合させられた係合片
444が加工中に片傾斜切欠520から抜け出すことが
ない。以下、それについて説明する。切削抵抗に基づく
スリーブ420とドリルホルダ422との相対回転が傾
斜面同士の当接により阻止されれば、斜面の作用により
係合片444が片傾斜切欠520から抜け出す向きの力
が加えられる。斜面の作用による係合片444の押出し
力が、係合片444と幅一定切欠434,片傾斜切欠5
20との摩擦力と、圧縮コイルスプリング456の付勢
力との和より小さければ、係合片444は片傾斜切欠5
20から抜け出さないように考えられがちであるが、実
際には振動により摩擦係数が見かけ上、小さくされるた
め、傾斜面の傾斜角度を相当小さくしても係合片444
は片傾斜切欠520から抜け出してしまう。それに対
し、本実施形態の工具保持装置と、係合突起および係合
突起が跨がって係合する2つの係合切欠がいずれも幅が
一定である従来の工具保持装置とにおいてはいずれも、
切削抵抗に基づくドリルホルダとスリーブとの相対回転
が平行面同士の当接により阻止されるため、斜面の作用
により係合片が第一,第二係合切欠から抜け出させられ
ることはない。
【0102】それなのに、従来の工具保持装置において
は係合突起の係合切欠からの抜出しが生じ、本工具保持
装置においては生じない。その理由は不明であるが、従
来の工具保持装置においては、係合突起が係合切欠から
抜け出し、本工具保持装置においては加工中に係合片4
44の片傾斜係合部452が片傾斜切欠520から抜け
出すことがなく、ドリルホルダ422がスリーブ420
に対して相対回転可能な状態になることがないことが実
験により確認されている。
【0103】この実験は、係合片444と同様の係合片
を有し、ドリルホルダとスリーブとの相対回転を限定す
る相対回転限定部材(ただし、逆方向の相対回転を平行
面448において阻止する係合片は有せず、ドリルホル
ダとスリーブとの切削抵抗に基づく向きとは逆向きの相
対回転を阻止する一方向クラッチを有しないもの。正傾
斜品と称する。)を有する工具保持装置について、主軸
により回転させられるスリーブと工具を保持する工具ホ
ルダとの相対回転を限定して行うとともに、比較のため
に、従来のように、幅が一定の係合片を有する相対回転
限定部材(従来品と称する)によりスリーブと工具ホル
ダとの相対回転を限定する工具保持装置と、片傾斜係合
部および片傾斜切欠の傾斜面の形成位置が上記のものと
は逆である相対回転限定部材(逆傾斜品と称する)によ
りスリーブと工具ホルダとの相対回転を限定する工具保
持装置とについても同じ条件で実験を行った。なお、幅
がそれぞれ一定の係合片と係合切欠とについては、回転
方向の両側クリアランスを0.1mm〜0.3mmとし、正
傾斜品および逆傾斜品の係合片の幅一定係合部と、幅一
定係合部が嵌入させられる幅一定切欠との回転方向の両
側クリアランスを0.01mm〜0.03mmとした。ま
た、従来品を有する工具保持装置は、前記実公平5−4
6802号公報に記載の工具保持装置と同様に構成さ
れ、本発明実施品を有する工具保持装置および逆傾斜品
を有する工具保持装置はそれぞれ、相対回転限定部材の
係合片の一部が片傾斜係合部とされ、スリーブに片傾斜
切欠が設けられるとともに、それら片傾斜係合部と片傾
斜切欠とが回転方向において隙間なく係合させられるこ
とを除いて、上記公報に記載の工具保持装置と同様にス
リーブが工具ホルダを保持するように構成されている。
【0104】工具模型は、断面形状が円形の棒状を成
し、工具模型を工具保持装置に保持させた状態で200
0r.p.m.で回転させつつ、荷重付与部材により荷重を加
えた。荷重付与部材も断面形状が円形の棒状を成すもの
であり、工具模型に対して直角に配設し、それの先端面
を工具模型の外周面の、工具保持部の先端面からの突出
長さが80mm、片傾斜係合部と片傾斜切欠との係合位置
からの距離が108mmの位置に1177N (120kgf
)の力で押し付けたのであり、それによって、工具模
型には、1177N の半径方向の力と、この半径方向の
力と直角で大きさが半径方向の力と摩擦係数との積であ
る周方向の力とが加えられることとなる。その結果、逆
傾斜品については実験開始直後に係合片が係合切欠から
抜け出し、従来品については0.2m (分)経過後に抜
け出したのに対し、正傾斜品については60m (分)経
過後も抜け出さないため、実験を終了した。
【0105】実際の加工時にも、加工工具に半径方向の
荷重が加えられることがある。例えば、中ぐり工具では
当然に半径方向の荷重が加えられるし、ドリルであって
も、穴をあけるべき面がドリルの回転中心線に対して傾
斜しているとき、滑りによってドリルが撓まされ、横方
向の荷重が加えられることがあるのである。このような
場合でも、係合片を片傾斜係合部を有するものとしてお
けば、係合片が係合切欠から抜け出して加工ができなく
なることがない。
【0106】なお、もし、2個の係合片444の片傾斜
係合部452が、共にスリーブ420とドリルホルダ4
22との正方向の相対回転を阻止する向きに形成されて
いれば、ドリルホルダ422に加工時とは逆向きの回転
トルクが加えられた場合、例えば、ドリルホルダ422
にドリルを保持させて貫通穴を加工する際にドリルが貫
通穴を抜け出た瞬間にドリルホルダ422にそれまでと
は逆向きの回転トルクが作用し、斜面の効果により係合
片444の片傾斜係合部452が片傾斜切欠520から
押し出される恐れがあるが、本実施形態においては、2
個の係合片444の片傾斜係合部452が、前述のよう
にそれぞれスリーブ420とドリルホルダ422との正
方向と逆方向との相対回転を阻止する向きに形成されて
いるため、ドリルホルダ422に加工時と逆向きの回転
トルクが加えられても、その回転トルクが平行面により
受けられ、片傾斜係合部452が片傾斜切欠520から
押し出されることはない。
【0107】一方向クラッチ530があれば、係合片4
44の一部を片傾斜係合部452とせず、全体の幅を一
定にしても、係合片444とスリーブ420,ドリルホ
ルダ422にそれぞれ設けられた幅が一定の切欠との間
の相対回転を阻止することができる。しかし、片傾斜係
合部452,片傾斜切欠520が設けられていれば、例
えば、一方向クラッチ530に異常が生じて相対回転を
阻止できなくなったとき、スリーブ420とドリルホル
ダ422との相対回転量が少なくて済み、耐久性の低下
が抑制される効果が得られる。
【0108】幅一定係合部446と幅一定切欠434と
の間には回転方向において僅かなクリアランスが設けら
れるが、係合片444は片傾斜係合部452において片
傾斜切欠520に隙間なく係合するため、幅一定係合部
446と幅一定切欠434との間のクリアランスの大き
さを、従来の幅が一定の係合突起と係合切欠との間のク
リアランスの大きさより小さくすれば、係合突起と二つ
の係合切欠との間の回転方向のクリアランスを従来より
小さくでき、それによりスリーブ420とドリルホルダ
422との相対回転可能量が減少し、耐久性に優れた工
具保持装置が得られることは勿論、従来のクリアランス
と同等としても、スリーブ420とドリルホルダ422
との相対回転可能量が減少し、耐久性向上の効果が得ら
れる。特に、係合片444は嵌合部442からの突出端
部が片傾斜係合部452とされており、作業者による片
傾斜係合部452の片傾斜切欠520からの離脱操作が
容易となるとともに、係合片444の加工が容易である
利点がある。
【0109】例えば、図35に示すように、ドリルホル
ダのフランジ部540,スリーブの外向きフランジ54
2を含む部分にそれぞれ形成された第一,第二係合切欠
を第一,第二片傾斜切欠544,546とし、カラーに
設けられた係合片548を第一,第二片傾斜切欠54
4,546に対応した片傾斜係合部550とすることも
可能である。第一,第二片傾斜切欠544,546は、
各二側面のうちの一方の平行面552,554が同一平
面上に位置する状態で、他方の傾斜面556,558同
士も一平面内に位置させられており、平行面552,5
54,傾斜面556,558を片傾斜係合部550が隙
間なく嵌合される寸法を狙って共加工することにより、
片傾斜係合部550の第一,第二片傾斜切欠544,5
46に係合させられる2部分のうちのいずれか一方が隙
間なく係合し、他方も極めて小さなクリアランスで係合
するようにすることができるのである。
【0110】しかし、スリーブからドリルホルダへの回
転トルク伝達時に、傾斜面556,558の斜面の作用
により係合片548に第一,第二片傾斜切欠544,5
46から抜け出す向きの力が作用する。傾斜面556,
558の傾斜角度を係合片548と傾斜面556,55
8との間の摩擦角より著しく小さく(単に摩擦角より小
さくするのみでは、振動により摩擦係数が見かけ上低下
するため不十分である)すれば、係合片548の第一,
第二片傾斜切欠544,546からの抜出しを防止する
ことができるが、係合片548と第一,第二片傾斜切欠
544,546の一方とが締まり嵌合することとなるた
め、ドリルホルダのスリーブからの取外し時に係合片5
48を片傾斜切欠544,546から抜き出すことが困
難となる。また、傾斜角度を摩擦角より大きくすれば、
係合片548を第一,第二片傾斜切欠544,546の
一方から抜き出すことは容易になるが、回転トルクが加
えられたときに係合片548が第一,第二片傾斜切欠5
44,546から押し出されることを回避するために、
圧縮コイルスプリング等の付勢手段の付勢力を大きくす
ることが必要となる。そのため、ドリルホルダの取外し
時に作業者が大きな付勢力に抗して係合片548を第
一,第二片傾斜切欠544,546から離脱させること
が必要となり、結局、離脱操作が困難になるのである。
【0111】それに対し、本実施形態におけるように、
係合片444の一部が片傾斜係合部452であって、第
一係合切欠が片傾斜切欠520,第二係合切欠が幅一定
切欠434であれば、スリーブ420からカラー440
に加えられる回転トルクが平面で受けられ、ドリルホル
ダ422に平面で伝達されるため、係合片444を切欠
434,520から抜け出させる力が生ぜず、圧縮コイ
ルスプリング456の付勢力は係合片444が片傾斜切
欠520に係合する程度の大きさでよく、片傾斜切欠5
20の傾斜面526の傾斜角度を摩擦角に近い大きさと
し、あるいはそれより大きくして、取外しを容易とする
ことができる。
【0112】また、図36に示すように、係合片560
の基端部側に片傾斜係合部562を設け、突出端部を幅
一定係合部564とすることも可能である。この場合、
ドリルホルダのフランジ部566に形成される第二係合
切欠が片傾斜切欠567とされ、スリーブの外向きフラ
ンジ568を含む部分に形成される第一係合切欠が幅一
定切欠569とされる。この係合片560によっても、
スリーブから加えられる回転トルクを平面で受け、平面
でドリルホルダに伝達することができる。しかし、係合
片560の基端部に片傾斜係合部562を形成すること
は容易ではない。それに対し、本実施形態の係合片44
4は突出端部に片傾斜係合部452が形成されており、
加工を容易に行うことができる。
【0113】なお、上記実施形態において、片傾斜係合
部452,片傾斜切欠520の傾斜面450,526の
軸方向に対する傾斜角度は15度とされていたが、この
傾斜角度は15度には限らない。傾斜面の傾斜角度が大
きいほど、斜面の作用により生ずる係合片を片傾斜切欠
から抜け出させる向きの力が大きく、片傾斜係合部が片
傾斜切欠から抜け出し易く、その点からは傾斜角度は小
さいことが望ましい。しかし、傾斜角度が小さ過ぎれば
片傾斜係合部を片傾斜切欠から離脱させ難くなり、ま
た、傾斜面同士の係合により係合片の係合切欠への嵌入
限度を規定する場合、嵌入限度位置が不正確になる。そ
のため、片傾斜係合部,片傾斜切欠の傾斜面の傾斜角度
は、下限が8度以上であることが望ましく、10度以上
であることが特に望ましい。また、上限は、30度以下
であることが望ましく、20度以下とすることが特に望
ましい。
【0114】また、上記実施形態においては、係合突起
の突出端部の一方の側面が傾斜面とされていたが、基端
部の一方の側面を傾斜面としてもよく、あるいは二つの
係合切欠をいずれも片傾斜切欠とし、係合突起のそれら
係合切欠と係合する部分をいずれも片傾斜係合部として
もよい。後者の場合、係合片の2個所の片傾斜係合部の
各平行面の一方は、係合部の軸方向に延びる一対の側面
の一方に設けられ、平行面の他方は他方の側面に設けら
れる。また、二つの片傾斜切欠の各平行面はそれぞれ、
片傾斜係合部が係合させられた状態において、回転方向
において互いに反対側の位置に設けられ、二つの片傾斜
切欠の各平行面および2個所の片傾斜係合部の各平行面
は、加工抵抗により互に当接させられて加工抵抗に基づ
く第一,第二部材の相対回転を阻止する位置に形成され
る。二つの係合切欠が片傾斜切欠であり、係合片の2個
所が片傾斜係合部である場合に、相対回転限定部材の係
合片が二つの係合切欠から抜け出した非作用位置側か
ら、二つの係合切欠に係合する作用位置側への移動限度
が片傾斜切欠と片傾斜係合部との係合により規定される
のであれば、いずれか一方の片傾斜係合部の傾斜面が片
傾斜切欠の傾斜面に当接して相対回転限定部材の上記移
動限度が規定される。
【0115】また、後者の場合、第一,第二係合切欠が
いずれも片傾斜切欠であるが、両者が共に係合片と回転
方向のクリアランスなく係合することは実際上期待でき
ない。第一,第二係合切欠のいずれか一方と係合片とは
回転方向のクリアランスなく係合するが、他方の係合切
欠と係合片との間にはクリアランスが残ることを避け得
ないのである。しかし、片傾斜切欠の非作用位置側の部
分の幅は、係合片の片傾斜係合部の作用位置側の端部の
幅より大きいため、片傾斜切欠と片傾斜部とを係合させ
る場合には、幅一定係合部と幅一定切欠とを係合させる
場合のように意図的にクリアランスを設ける必要はな
い。設計上、第一,第二係合切欠と係合片とが係合した
状態で両者の互いに対応する部分の幅を互いに同一にし
ておくことができ、いずれか一方がクリアランスなく係
合した場合の他方のクリアランスも殆ど0にできるので
ある。したがって、第一,第二部材の相対回転可能量を
特に小さくできる。
【0116】なお、係合部材470のテーパ内周面49
4の傾斜角度は10度、フランジ部430のテーパ面4
32の傾斜角度は60度とされて圧縮コイルスプリング
502が鋼球486を押す力が倍力されるようになって
いたが、これらテーパ内周面494,テーパ面432の
角度は、圧縮コイルスプリング502が鋼球486を押
す力が倍力される大きさに設定すればよい。
【0117】一方向クラッチ530は、前述のようにコ
レットと同様に機能し、嵌合軸部38と嵌合穴18との
径方向の相対移動を阻止するが、一方向クラッチと共
に、スリーブ420とドリルホルダ422との間にコレ
ットを設け、両者の径方向の相対移動を阻止し、あるい
はコレットに代えてテーパ外周面およびテーパ内周面を
設けてテーパ嵌合させ、径方向の相対移動を減少させる
ようにしてもよい。一方向クラッチと、コレットおよび
テーパ外周面およびテーパ内周面との少なくとも一方と
を、スリーブ420およびドリルホルダ422の軸方向
に隔たった2個所にそれぞれ設ければ、両者の径方向の
相対移動を効果的に阻止することができる。
【0118】また、上記実施形態において、可動スリー
ブ490とカラー440とが相対回転させられ、片傾斜
係合部452の大部分が片傾斜切欠520に嵌入した後
に端面522,528同士が引き付けられるようになっ
ていたが、これは不可欠ではなく、可動スリーブ490
とカラー440とを一体的に回転させてもよい。例え
ば、前記カラー440に形成された2個のピン穴462
の両方にピン464を嵌合し、可動スリーブ490に形
成された係合溝498の両端部に係合させ、可動スリー
ブ490とカラー440との相対回転を阻止するのであ
る。このようにすれば、ドリルホルダ422のスリーブ
420への取付け時にホルダ本体424を回すとき、可
動スリーブ490がカラー440と共に一体的に回転す
る。
【0119】さらに、上記実施形態におけるように、可
動スリーブ490とドリルホルダ422とを相対回転可
能とし、係合片444の片傾斜係合部452が片傾斜切
欠520に係合した後に可動スリーブ490が前進させ
られてスリーブ420とドリルホルダ422とが軸方向
において互いに引き付けられるようにする場合、ドリル
ホルダ422の回転角度、すなわち係合片444を片傾
斜切欠520に係合させるための回転角度と、可動スリ
ーブ490の回転角度とを等しくすることは不可欠では
なく、例えば、後者を前者より小さくしてもよい。可動
スリーブ490の回転角度を、ドリルホルダの回転角度
から、可動スリーブとドリルホルダとの相対回転角度を
引いた角度に相対回転可能角度より小さい値を加えた大
きさとするのである。
【0120】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態
を図37ないし図50に示す。本実施形態は、スリーブ
570内においてドリルホルダ572をスリーブ570
側へ引き付けるようにしたものである。その他の構成は
前記実施形態と同じであり、対応する部分には同一の符
号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
【0121】ドリルホルダ572のホルダ本体574に
は、半径方向外向きに延び出すフランジ部576が形成
されるとともに、フランジ部576より先端側にカラー
578が軸方向に相対移動可能かつ相対回転可能に嵌合
されている。カラー578は、円筒状の嵌合部580
と、嵌合部580の軸方向に隔たった端面のうちの、フ
ランジ部576側の端面に突設された2個の係合片58
2とを有する。これら係合片582は、図38に示すよ
うに、基端部が幅が一定の幅一定係合部584とされ、
幅一定係合部584に続く突出端部は、軸方向に延びる
二側面の一方が軸方向に平行な平行面585,他方が基
端部側から突出端部側に向かうに従って平行面585に
接近する向きに傾斜した傾斜面587である片傾斜係合
部586とされている。なお、片傾斜係合部589の軸
方向に延びる二側面のうち、スリーブ570から加えら
れる回転トルクを受ける側の面が平行面585とされ、
他方の面が傾斜面587とされている。二つの係合片5
82の片傾斜係合部586は、スリーブ570とドリル
ホルダ572との正方向と逆方向との相対回転をそれぞ
れ阻止する向きに形成されている。
【0122】これら係合片582はそれぞれ、フランジ
部576を軸方向に貫通して形成された幅が一定の幅一
定切欠588に軸方向に相対移動可能に嵌合されてい
る。また、カラー578は、ホルダ本体574に取り付
けられたスプリングリテーナ590との間に配設された
付勢手段の一種である弾性部材としての圧縮コイルスプ
リング592により、係合片582が幅一定切欠588
に係合する向きに付勢されており、ドリルホルダ572
がスリーブ570から取り外された状態では、係合片5
82はフランジ部576の嵌合軸部596側の端面59
4から嵌合軸部596側へ突出させられている。
【0123】カラー578とホルダ本体574との間に
一方向クラッチ598が設けられている。一方向クラッ
チ598は、前記一方向クラッチ180,306と同様
に構成されていて、ケーシングと、リテーナにより保持
されるとともにそれぞればねにより付勢された複数のロ
ーラ600とを有するものである。一方向クラッチ59
8はカラー578内に圧入されており、ホルダ本体57
4は複数のローラ600の中に軸方向に相対移動可能に
嵌合されている。一方向クラッチ598は、ドリルホル
ダ572のカラー578に対する切削抵抗に基づく向き
の相対回転は許容するが、逆向きの回転は阻止するもの
とされている。
【0124】ホルダ本体574の嵌合軸部596のフラ
ンジ部576に隣接する位置には、図41に示すよう
に、コレット604が嵌合されるとともに、皿ばね60
6によりフランジ部576から離れる向きに付勢されて
いる。コレット604は概して円筒状を成し、外周面は
テーパ外周面608とされるとともに、内周面は軸方向
に平行なストレート内周面610とされている。嵌合軸
部596には浅い円環状溝612が形成され、コレット
604は拡径させられた状態で嵌合軸部596の後部か
ら嵌められるとともに、円環状溝612内に嵌合されて
おり、ドリルホルダ572がスリーブ570から取り外
された状態では、皿ばね606により付勢され、円環状
溝612のフランジ部576から遠い後側溝側面に当接
させられている。
【0125】図37および図39に示すように、スリー
ブ570の先端部の直径方向に隔たった2個所にはそれ
ぞれ、先端面に開口する片傾斜切欠614が形成されて
いる。これら2つの片傾斜切欠614は、スリーブ57
0の先端部の第一軸方向当接面たる端面615および外
周面に開口させられるが、嵌合穴18には至らない深さ
で形成され、スリーブ570の軸方向に延びる二側面の
一方が軸方向に平行な平行面616,他方がスリーブ5
70の後端側ほど平行面616に接近する向きに傾斜さ
せられた傾斜面618とされている。片傾斜切欠614
の軸方向に延びる二側面のうち、前記カラー578の係
合片582の平行面585に係合し、回転トルクを伝達
する面が平行面616とされ、他方の面が傾斜面618
とされている。これら2個の片傾斜切欠614は、前記
片傾斜切欠200と同様に、回転方向に対して互いに逆
向きに形成されている。また、嵌合穴18の開口部に
は、図37に示すように、コレット604のテーパ外周
面608に対応する傾斜のテーパ内周面620が形成さ
れている。
【0126】図44に示すように、スリーブ570の嵌
合穴18の底面640の中心には、雌ねじ穴642が形
成されている。雌ねじ穴642は、図37に示すように
取付け部24に形成された軸方向穴30に連通してい
る。また、底面640には、雌ねじ穴642の中心から
偏心した位置に偏心穴644が形成されている。偏心穴
644は半径方向に長い長穴とされている。
【0127】嵌合穴18の底部には、筒状部材たるスリ
ーブ648が着脱可能に嵌合されている。スリーブ64
8は、スリーブ570の基端側から先端側に向かって開
口した有底穴650を有する有底円筒状を成している。
有底穴650の底面の中央部には、図44に示すように
段付きの貫通穴654が形成されており、雄ねじ部材6
56が挿通されている。図45に拡大して示すように、
雄ねじ部材656は大径の頭部658と小径の雄ねじ部
660とを備えており、雄ねじ部660が貫通穴654
を貫通させられて雌ねじ穴642に締め込まれるように
なっている。頭部658の先端部には、六角レンチ等の
回転操作工具を係合させるべき工具係合部としての六角
穴662が形成されるとともに、六角穴662の中央部
から雄ねじ部660の先端部へ貫通する液通路664が
形成されている。
【0128】スリーブ648の底面670には、有底穴
650の中心から偏心した位置に偏心突起たるピン67
2が圧入されている。ピン672は、嵌合穴18の底面
640に形成された長穴である偏心穴644の幅より僅
かに小さい直径を有しており、このピン672の偏心穴
644への嵌入によりスリーブ648のスリーブ570
に対する相対回転が実質的に防止される。
【0129】スリーブ648の周壁には、等角度間隔の
複数か所(図示の例では3か所)に貫通穴676が形成
されている。貫通穴676の直径はスリーブ648の周
壁の厚さより大きくされており、内部にはそれぞれ伝達
子としての球体たる鋼球678が移動可能に保持されて
いる。
【0130】スリーブ648の有底穴650には係合部
材680が嵌合されている。係合部材680は、有底穴
680内に保持された大径部681と大径部681の先
端面から有底穴680の開口側へ軸方向に延びる小径部
とから成っている。大径部681の後端面の中央部には
嵌合穴682が形成されており、雄ねじ部材656の頭
部658が嵌合されるようになっている。大径部681
の外周面には、図示は省略するが軸方向に長い長穴が係
合凹部として形成されており、この長穴にスリーブ64
8の周壁に立設された回転防止突起としてのピンが嵌入
させられることにより、係合部材680のスリーブ64
8に対する相対回転が防止されている。
【0131】スリーブ648および係合部材680は、
雄ねじ部材656が雌ねじ穴642に締め込まれること
により、スリーブ570の嵌合穴18の底面640に取
り付けられている。雄ねじ部材656の頭部658がス
リーブ648の貫通穴654の肩面に密着させられ、ス
リーブ648が嵌合穴18の底面に押し付けられるた
め、スリーブ648がスリーブ570に相対移動不能に
取り付けられ、また、スリーブ648を介して、係合部
材680がスリーブ570に軸方向の相対移動可能かつ
相対回転不能に取り付けられるのである。
【0132】スリーブ648の内周面には、有底穴65
0の開口端部近傍において、止め輪から成るスプリング
リテーナ684が嵌装されており、係合部材680の大
径部681の先端面との間に付勢手段としての弾性部材
たる圧縮コイルスプリング686が配設されている。そ
のため、常には係合部材680がスプリング686によ
って有底穴650の底面に向かって付勢されており、大
径部681の後端面が有底穴650の底面に当接する原
位置に位置決めされている。
【0133】係合部材680の小径部には第一係合部6
88が形成されている。第一係合部688は、小径部の
直径方向に隔たった2か所から半径方向外向きに延び出
す一対の係合突起689から成っている。各係合突起6
89の大径部681に対向する側の面の両側部には面取
り部690が形成されている。この面取り部690の機
能は後述する。係合部材680には、小径部の先端から
嵌合穴682へ軸方向に延びる貫通穴691が形成され
ている。貫通穴691の内径は雄ねじ部材656の頭部
658に形成された六角穴662の外径よりやや大きく
されている。
【0134】なお、貫通穴691は液通路としても機能
するようになっており、雄ねじ部材656の液通路66
4および嵌合穴682を経て切削液の流入が許容されて
いる。692,694はそれぞれ切削液の漏れを防止す
るためのシール部材たるOリングである。
【0135】スリーブ648の外周面には可動部材とし
ての可動スリーブ700が嵌合されている。図46およ
び図47に示すように、可動スリーブ700は円筒状を
成し、端面702からスリーブ570の先端側に向かっ
て軸方向に延び出す一対のカム突起704を備えてい
る。カム突起704はそれぞれ両肩部に面取りが施さ
れ、先端面が中高で中央部が軸方向に直角なカム面70
6とされている。
【0136】スリーブ648の開口側端部の外周面に
は、半径方向外向きに延びるフランジ部708が形成さ
れており、このフランジ部708の直径方向に隔たった
2か所に、軸方向に貫通する軸方向溝710が形成され
ている。軸方向溝710はカム突起704の軸方向の相
対移動は許容するが、周方向の相対移動を阻止する大き
さとされている。したがって、可動スリーブ700の一
対のカム突起704がそれぞれ軸方向溝710に嵌合さ
れることにより、可動スリーブ700がスリーブ648
に対して軸方向には相対移動可能であるが相対回転は不
能となる。
【0137】スリーブ648の外周面の後端部近傍には
止め輪から成るスプリングリテーナ716が固定されて
おり、可動スリーブ700のカム突起704側とは反対
側の端部との間に付勢手段たる弾性部材として圧縮コイ
ルスプリング720が配設されている。したがって、ス
プリング720によって可動スリーブ700が有底穴6
50の開口端側に向かって、すなわち、スリーブ570
の基端側から先端側に向かって付勢されるが、可動スリ
ーブ700の端面702がスリーブ648のフランジ部
708に当接することにより、可動スリーブ700の軸
方向の移動限度が規定される。
【0138】可動スリーブ700の内周面には、図45
に示すように、カム部として環状のカム溝728が形成
されている。カム溝728は、スリーブ648の貫通穴
676に保持された鋼球678に係合可能な第一傾斜面
730を備えている。第一傾斜面730はスリーブ64
8の軸方向に対して、スリーブ648の開口端側ほど半
径方向外方となる向きに傾斜している。
【0139】一方、係合部材680の大径部681の外
周面にもカム部として環状のカム溝734が形成されて
おり、カム溝734には、鋼球678に係合可能な第二
傾斜面736が形成されている。第二傾斜面736もス
リーブ648の軸方向に対して傾斜しているが傾斜方向
が第一傾斜面730とは逆にされているとともに、傾斜
角度が大きくされている。本実施形態においては、第一
傾斜面730の傾斜角度が45度より小さい15度とさ
れているのに対し、第二傾斜面736の傾斜角度は45
度とされている。第二傾斜面736の傾斜角度は、下記
の倍力機能の観点からは45度以上であることが望まし
い。
【0140】常には、スプリング720により可動スリ
ーブ700が、端面702がフランジ部708と当接す
る移動限度位置に向かって付勢されており、カム溝72
8の第一傾斜面730が鋼球678に係合させられる。
その結果、スプリング720の軸方向の付勢力が、カム
溝728の第一傾斜面730の作用により、鋼球678
を半径方向内向きに付勢する力に変換される。この付勢
力により鋼球678がカム溝734の第二傾斜面736
に係合させられ、第二傾斜面736の作用により係合部
材680をスリーブ570の先端側から基端側に向かっ
て付勢する軸方向の付勢力に変換される。すなわち、ス
プリング720の軸方向の付勢力が、軸方向の逆向きの
付勢力に変換されるのである。それと同時に、第一傾斜
面730の軸方向の傾斜角度が第二傾斜面736の軸方
向の傾斜角度より小さくされていることにより、スプリ
ング720の付勢力が倍力され、係合部材680にはス
プリング720の付勢力より大きい引付け力が付与され
る。
【0141】それに対して、可動スリーブ700がスプ
リング720の付勢力に抗してスリーブ570の基端側
へ移動させられれば、第一傾斜面730と鋼球678と
の係合が解除され、鋼球678がカム溝728側へ移動
可能となり、鋼球678と第二傾斜面736との係合も
解除されるため、係合部材680の引付け力はスプリン
グ686の付勢力のみに低減する。本実施形態において
は、スリーブ648,鋼球678,第一傾斜面730お
よび第二傾斜面736により力変換装置740が構成さ
れているのである。
【0142】図41および図43にドリルホルダ572
の嵌合軸部596の後端側を示し、図42に前端側を示
す。図41および図43に示すように、ドリルホルダ5
72の嵌合軸部596の後端面744には、工具挿入穴
46に連通する軸方向穴746が形成されている。軸方
向穴746はスリーブ570に対向する開口端部が小径
穴部750とされ、その奥に大径穴部752が形成され
ている。図43に示すように、後端面744には直径方
向に延び、軸方向穴746の小径穴部750と直交する
切欠754が形成されており、その切欠754を間に挟
んだ両側に一対の第二係合部758が形成されている。
【0143】第二係合部758は、嵌合軸部596がス
リーブ570の嵌合穴18内に嵌合された状態で、係合
部材680の第一係合部688と切欠754との位相が
合致した非係合位相においては、第一係合部688と軸
方向に嵌合,離脱可能である。第一係合部688は切欠
754に嵌合されるのみでは、大半が軸方向穴746の
大径穴部752へ入り込むものの全体は入り込まない。
しかし、ドリルホルダ572が非係合位相から第一角度
相対回転させられることによって、第一係合部688の
面取り部690と第二係合部758とのカム作用によ
り、係合部材680がスプリング686の付勢力に抗し
て可動スリーブ700の開口端側へ移動させられ、第一
係合部688が第二係合部758と軸方向に離脱不能に
係合し、その係合状態のままさらにドリルホルダ572
が第二角度相対回転させられることにより、第一係合部
688との係合位相に到達する。
【0144】図43から明らかなように、嵌合軸部59
6の後端面744にはカム部たるカム切欠762が形成
されている。カム切欠762は、嵌合軸部596の後端
面744の外周縁に沿って形成されており、可動スリー
ブ700に形成された前記カム突起704との係合によ
り可動スリーブ700の軸方向の移動を制御するように
されている。カム切欠762は、切欠754の両側にそ
れぞれ、互いに向き合う状態で形成された一対の傾斜面
である第一傾斜面764および第二傾斜面766を備え
ている。両傾斜面764,766は軸方向に対して45
度より大きい角度(図示の例では75度)傾斜してい
る。
【0145】第一係合部688と第二係合部758とが
非係合位相にある状態で嵌合軸部596が嵌合穴18に
嵌合されることによって、後端面744がカム突起70
4に当接し、それにより可動スリーブ700がスプリン
グ720の付勢力に抗してスリーブ570の基端側へ移
動させられる。したがって、係合部材680の引付け力
は前述のようにスプリング686の付勢力のみに低減
し、第一係合部688と第二係合部758とが非係合位
相から前記第一角度相対回転させられる間に、面取り部
690のカム作用により容易に係合する。
【0146】ドリルホルダ572がさらに回転させられ
て第一係合部688と第二係合部758とが係合位相と
なるとき、カム突起704とカム切欠762との合致に
より可動スリーブ700がスプリング720の付勢力に
よりスリーブ570の先端側へ移動することが許容され
る。そのため、スプリング720の付勢力が力変換装置
740により係合部材680の引付け力に変換され、係
合部材680と係合しているドリルホルダ572が大き
な力でスリーブ570内に引き込まれ、フランジ部61
8がスリーブ570の端面615に強く引き付けられ
る。なお、前記カラー578の係合片582およびスリ
ーブ570に設けられた片傾斜切欠614とは、第一係
合部688と第二係合部758とが係合位相にあると
き、位相が一致する位置に設けられている。
【0147】一方、第一係合部688と第二係合部75
8とが係合位相にある状態からドリルホルダ572が回
転させられて非係合位相とされるときには、カム突起7
04が第一傾斜面764または第二傾斜面766(いず
れに係合するかはドリルホルダ572の回転方向によっ
て決まる)と係合するため、可動スリーブ700をスプ
リング720の付勢力に抗してスリーブ570の基端側
へ移動させられる。両傾斜面764,766の傾斜角度
および方向が、ドリルホルダ572のスリーブ570に
対する係合位相から非係合位相へ向かう向きの回転が可
動スリーブ700のスリーブ570の基端側への運動に
変換されるように決められているのである。しかも、カ
ム切欠762の第一,第二傾斜面764,766の傾斜
角度が倍力作用が生じる大きさに決定されているため、
比較的小さい相対回転モーメントにより可動スリーブ7
00をスプリング720の付勢力に抗してスリーブ57
0の基端側へ移動させることができる。
【0148】以上のように構成された工具保持装置のド
リルホルダ572のスリーブ570への取付けを説明す
る。本実施形態においては、スリーブ648に係合部材
680,可動スリーブ700および力変換装置740等
を組み付けることにより、図45に示すサブアッセンブ
リとすることができる。したがって、まず、サブアッセ
ンブリを組み立てておき、それをスリーブ570の嵌合
穴18に嵌合して、底面640に形成された雌ねじ穴6
42に雄ねじ部材656の雄ねじ部660を挿入すると
ともに、偏心穴644にピン672を嵌合させ、係合部
材680の貫通穴691から工具を挿入して、雄ねじ部
材656の六角穴662に係合させて締め込むことによ
り、図44に示すように、サブアッセンブリをスリーブ
570に固定することができる。このように、スリーブ
570の外でサブアッセンブリを組み立てて、後に嵌合
穴18の底面640に固定することができるため、スリ
ーブ648,可動スリーブ700,係合部材680およ
び力変換装置740等をそれぞれ個々にスリーブ570
内に組み付ける場合に比較して、組立作業を容易に行う
ことができる。
【0149】また、本実施形態においては、ピン672
が偏心穴644に嵌合する特定位置において、スリーブ
648がスリーブ570に取り付けられるようになって
いるため、サブアッセンブリとスリーブ570とを必ず
予め定められた相対位相で組み付けることができる。ま
た、ピン672が偏心穴644に嵌合させられることに
より、スリーブ648のスリーブ570に対する相対回
転が確実に防止される。
【0150】続いて、ドリルホルダ572をスリーブ5
70に取り付ける。まず、図37に示すように、ドリル
ホルダ572の切欠754に第一係合部688が嵌入可
能な状態、すなわち第二係合部658と第一係合部68
8とを非係合位相とした状態で、嵌合軸部596を嵌合
穴18に挿入する。ドリルホルダ572が取り付けられ
ていない状態では、係合部材680が有底穴650の底
面に当接する原位置にあり、力変換装置740の鋼球6
78がカム溝734の最も深い部分内に位置し、可動ス
リーブ700は第一傾斜面730において鋼球678に
係合することなく、端面702がフランジ部708に当
接する移動限度位置に保たれている。
【0151】しかし、図48に示すように、フランジ部
576が端面615に当接するまで嵌合軸部596をス
リーブ570の基端側へ挿入すれば、嵌合軸部596の
後端面744がカム突起704に当接し、可動スリーブ
700をスプリング720の付勢力に抗してスリーブ5
70の基端側へ移動させる。それにより、カム溝728
が鋼球678に対向する位置へ移動し、鋼球678が半
径方向外方へ自由に移動できる状態となる。なお、ドリ
ルホルダ572はフランジ部576の嵌合軸部596側
の第二軸方向当接面たる端面594が端面615に当接
する位置以上に深くスリーブ570に嵌合されることは
なく、本実施形態においては、フランジ部576と端面
615とが嵌合限度規定装置を構成している。また、フ
ランジ部576の端面594がスリーブ570の端面6
15に当接する以前に、カラー578の係合突起582
が端面615に当接するが、スプリング592の付勢力
は小さく設定されているため、カラー578がドリルホ
ルダ572に対して容易に前進させられ、フランジ部5
76は支障なく端面615に当接させ得る。
【0152】この状態でドリルホルダ572を第一角度
回転させ、図49に示すように、第二係合部758と第
一係合部688とを軸方向に離脱不能に係合させる。こ
のとき、第一係合部688の面取り部690と第二係合
部758とのカム作用により係合部材680がスリーブ
648から少し引き出されることになるが、ドリルホル
ダ572が第一角度回転させられる間はスプリング72
0の付勢力に基づく引付け力が係合部材680に加えら
れていないため、すなわち引付け力が緩和されているた
め、第一係合部688と第二係合部758とを容易に係
合させることができる。ただし、係合部材680はスプ
リング686の付勢力によりスリーブ648の底面側へ
付勢されているため、自由に軸方向に移動することはな
く、第一係合部688と第二係合部758とは安定して
係合する。
【0153】第一係合部688と第二係合部758との
係合に伴って係合部材680がスリーブ648の底面か
ら離間し、第二傾斜面736が鋼球678に係合してこ
れを半径方向外方へ、第一傾斜面730に係合可能な位
置まで押し出す。しかし、この時点では未だ可動スリー
ブ700が後退させられているため、第一傾斜面730
が実際に鋼球678に係合することはない。係合部材6
80の引付け力は緩和されたままなのである。
【0154】上記のようにして、第一係合部688と第
二係合部758とを係合させた後、さらにドリルホルダ
572を第二角度回転させ、図50に示すように、第二
係合部758を第一係合部688との係合位相に到達さ
せる。このドリルホルダ572の第二角度の回転によっ
て、カム突起704がカム切欠762と合致するため、
可動スリーブ700がスプリング720の付勢力により
移動限度位置に向かって移動させられる。この移動に伴
って、第一傾斜面730が鋼球678に係合し、半径方
向内方に移動させて第二傾斜面736に係合させるた
め、スプリング720の付勢力が倍力されて係合部材6
80に付与される。そのため、ドリルホルダ572がス
リーブ570の基端側へ強く引き込まれ、フランジ部5
76が端面615に強く押し付けられる。本実施形態に
おいては、前記力変換装置740が圧縮コイルスプリン
グ720と共に引付け力付与装置を構成し、係合部材6
80,第二係合部758および引付け力付与装置が当接
状態維持装置を構成し、第一当接面たる端面615およ
びフランジ部576の端面615に押し付けられる第二
当接面たる端面594と共に軸方向移動限定装置の一種
である軸方向移動阻止装置を構成している。
【0155】なお、第一係合部688と第二係合部75
8とが係合した状態でドリルホルダ572を第二角度回
転させるうちに、力変換装置740による係合部材68
0の引付け力が強くなるが、第一係合部688と第二係
合部758とは既に軸方向に直角な面で係合しており、
ドリルホルダ572は主として両係合部688,758
間およびフランジ部576,端面615間の摩擦力に打
ち勝って回転させればよいため、比較的小さい力で係合
位相まで回転させることができる。
【0156】ドリルホルダ572を第二角度回転させる
ことにより、カラー578の一対の係合片582とスリ
ーブ570の片傾斜切欠614との位相が合致し、図5
0に示すように、圧縮コイルスプリング592の付勢力
により係合片582がフランジ部576の幅一定切欠5
88から突出させられて片傾斜切欠614に嵌入させら
れる。係合片582は片傾斜係合部586において片傾
斜切欠614に回転方向のクリアランスなく係合し、カ
ラー578の係合片582が突設された端面は、フラン
ジ部576から離間させられている。係合片582の突
出端部は片傾斜係合部586とされていて、突出端の幅
は片傾斜切欠614の先端側の幅より小さいため、係合
片582は片傾斜切欠614に容易にかつ確実に嵌入す
ることができる。
【0157】取付け後、作業者はドリルホルダ572を
回し、幅一定切欠588の係合片582から伝達される
回転トルクを受ける側面を係合片582に当接させる。
係合片582と幅一定切欠588との間には、係合のた
めに回転方向において僅かにクリアランスがあるが、こ
のクリアランスは一方向クラッチ598により除去され
たのに等しいこととなる。本実施形態においても一方向
クラッチ598が設けられるとともに、係合片582に
片傾斜係合部586が設けられて回転方向の係合クリア
ランスが小さくなるようにされており、ドリルホルダ5
72のスリーブ570に対する相対回転がより確実に阻
止される。本実施形態においては、片傾斜切欠614の
平行面616が第一周方向当接部を構成し、幅一定切欠
588の加工時に係合片582の幅一定係合部584に
当接する部分が第二周方向当接部を構成し、あるいは片
傾斜切欠614の平行面616が第一周方向当接部を構
成し、係合片582の片傾斜係合部586の平行面58
5が第二周方向当接部を構成し、あるいは係合片582
の幅一定係合部584と幅一定切欠588との加工時に
互いに当接する面がそれぞれ、第一周方向当接部,第二
周方向当接部を構成し、これら第一,第二周方向当接部
が一方向クラッチ598と共に相対回転完全阻止装置を
構成している。
【0158】コレット604により嵌合軸部596と嵌
合穴18との径方向の相対移動が阻止され、コレット6
04が皿ばね606と共に、嵌合軸部596と嵌合穴1
8との嵌合クリアランスに基づく径方向の相対移動を阻
止する径方向相対移動阻止装置を構成していることは前
記各実施形態におけると同じである。
【0159】本実施形態においては、切削加工時に、ド
リル40の先端から切削液を噴出させることができる。
切削液はプルスタッドに設けられた切削液供給穴から供
給され、スリーブ570の取付け部24の軸方向穴3
0,雌ねじ穴642,雄ねじ部材656の液通路664
および係合部材680の貫通穴691を経てドリルホル
ダ572へ流入させられる。そして、アジャスト部材5
0,ドライバ52の貫通穴66,68を経て、切削液が
ドリル40の液通路へ流入し、その先端から噴出させら
れる。
【0160】この切削液供給通路に加圧した切削液を供
給すれば、液圧に基づいてスリーブ570とドリルホル
ダ572とを軸方向に離間させようとする力が作用する
が、本実施形態においては、引付け装置の引付け力がこ
の離間させようという力より大きく設定されているた
め、スリーブ570とドリルホルダ572とが離間させ
られることがない。本実施形態の装置は切削液が高圧で
供給される場合に特に有効なのである。
【0161】ドリルホルダ572をスリーブ570から
取り外す場合には、スプリング592の付勢力に抗して
カラー578を非作用位置へ移動させ、一対の係合片5
82をスリーブ570の片傾斜切欠614から離脱させ
る。それにより、ドリルホルダ572とスリーブ570
との相対回転が可能となる。この状態で、ドリルホルダ
572を正逆いずれかの方向へ第二係合部758が第一
係合部688と非係合位相となるまで回転させる。この
とき、可動スリーブ700のカム突起704がカム切欠
762の第一,第二傾斜面764,766のいずれかと
係合させられるため、可動スリーブ700がスプリング
720の付勢力に抗してスリーブ570の基端側へ移動
させられる。そのため、鋼球678と第一傾斜面730
および第二傾斜面736との係合が解かれ、係合部材6
80の引付け力が緩和されて、第一係合部688と第二
係合部758とを容易に非係合位相とすることができ
る。また、ドリルホルダ572がスリーブ570から引
き出されるとき、皿ばね606の付勢力が減少し、コレ
ット604が緩んで嵌合軸部596,スリーブ570か
ら離れ、ドリルホルダ572をスリーブ570の取出し
を妨げることがない。
【0162】この非係合位相においては、第一係合部6
88と第二係合部758との係合離脱により係合部材6
80が原位置に復帰し、かつ、ドリルホルダ572が可
動スリーブ700を介してスプリング720によりスリ
ーブ570から押し出される。したがって、ドリルホル
ダ572をスリーブ570から容易に抜き出すことがで
き、新品のドリルホルダを取り付けることができる。
【0163】なお、一方向クラッチを設ける場合、互い
に係合してスリーブの回転をドリルホルダに伝達する係
合片と係合切欠とを傾斜面で係合させることは不可欠で
はなく、図1〜図7に示す実施例におけるように、二側
面が軸方向に平行な面である係合片および係合切欠とし
てもよい。
【0164】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態
を図51に示す。本実施形態は、ドリルホルダに回転可
能に嵌合したカラーを引張コイルスプリングにより回転
させ、鋼球を傾斜溝部に係合させてドリルホルダをスリ
ーブに軸方向の隙間なく取り付けるとともに、一方向ク
ラッチによりドリルホルダとスリーブとの切削抵抗に基
づく向きとは逆向きの相対回転を阻止することは、図1
〜図7に示す実施形態と同じであるが、ドリルホルダと
スリーブとを軸方向に隔たった2個所においてテーパ嵌
合させる点において異なっている。以下、図1〜図7に
示す実施形態と同じ部分については同一の符号を付して
説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0165】ドリルホルダ800は、工具保持部804
および嵌合軸部806を備え、ホルダ本体802は工具
保持部804と嵌合軸部806との間に設けられ、半径
方向外向きに延び出すフランジ部808を備えている。
嵌合軸部806は段付状を成し、最もフランジ部808
側の大径嵌合軸部810の基端部には、フランジ部80
8から離れるほど直径が漸減する第一テーパ外周面81
2が形成されている。また、大径嵌合軸部810に続い
て設けられ、大径嵌合軸部810より小径の小径嵌合軸
部814の突出端には、小径嵌合軸部814より径の小
さい係合突部816が突設されるとともに、係合突部8
16の突出端部には、突出端ほど直径が漸減する第二テ
ーパ外周面818が形成されている。さらに、フランジ
部808の嵌合軸部806側の端面820には、直径方
向に隔たった2個所にそれぞれ、係合突部822が突設
されている。
【0166】スリーブ824の嵌合穴826は有底の段
付状を成し、スリーブ824の端面828に開口する大
径嵌合穴部830の開口端部には、前記第一テーパ外周
面812に対応する第一テーパ内周面832が形成され
ている。また、大径嵌合穴部830の底面には、一方向
クラッチ834が嵌合されている。この一方向クラッチ
834は、前記一方向クラッチ180と同様に構成され
ており、ドリルホルダ800のスリーブ824に対する
切削抵抗に基づく向きの相対回転は許容するが、逆向き
の相対回転は阻止する。
【0167】嵌合穴826の小径嵌合穴部836の底面
には、有底円筒状のテーパリング840が軸方向に移動
可能に嵌合されるとともに、付勢手段の一種である弾性
部材としての皿ばね842によって嵌合穴826の開口
側に付勢されている。小径嵌合穴部836の底面にはボ
ルト844が立設されており、ねじ部846にばね受け
848が嵌合され、ボルト844によって嵌合穴826
に固定されている。ばね受け848は有底円筒状を成
し、テーパリング840は、底壁部850においてボル
ト844の軸部852およびばね受け848の円筒部8
54に軸方向に相対移動可能に嵌合されるとともに、円
筒部856において小径嵌合穴部836に軸方向に相対
移動可能に嵌合されている。円筒部856の外周面は軸
方向に平行なストレート外周面であり、このストレート
外周面および小径嵌合穴部836の内周面はそれぞれ精
度良く加工され、円筒部856は小径嵌合穴部836に
径方向のクリアランスが殆どない状態で嵌合されてい
る。底壁部850の直径は円筒部856の直径より小さ
くされており、テーパリング840を嵌合穴826に嵌
合する際、底壁部850が案内の役割を果たし、容易に
嵌合することができる。皿ばね842は、これらテーパ
リング840の底壁部850とばね受け848との間に
配設されている。また、テーパリング840の円筒部8
56の開口端部内周面には、前記第二テーパ外周面81
8に対応する第二テーパ内周面860が形成されてい
る。
【0168】本実施形態の工具保持装置においてドリル
ホルダ800のスリーブ824への取付け時には、嵌合
軸部806が係合突部816側から嵌合穴826に挿入
される。そして、前記図1〜図7に示す実施形態におけ
ると同様に、カラー120の係合突部126がスリーブ
824の嵌合溝170のストッパ面176に当接すると
ともに、フランジ部808の端面820に突設された係
合突部822が係合切欠174に進入した後、ドリルホ
ルダ800が圧縮コイルスプリング128を圧縮しつつ
カラー120に対して前進させられれば、カラー120
が回転させられ、係合突部126が移動して係合突部1
72の係合面175に係合し、端面828をフランジ部
808の端面820に押し付ける。
【0169】本実施形態の工具保持装置において望まし
くは、カラー120の係合突部126がストッパ面17
6に当接し、係合突部822の一部が係合切欠174に
嵌入した状態で、作業者がドリルホルダ800とスリー
ブ824とを相対回転させ、係合突部822を係合切欠
174の回転トルク伝達面に当接させる。係合突部82
2と係合切欠174との間には、回転方向において係合
のためのクリアランスがあるからである。このようにす
れば、加工開始時には既に係合切欠174の回転トルク
伝達面が係合突部822に当接させられており、スリー
ブ824が回転開始当初に上記クリアランス分、スリー
ブ824に対して回転し、係合切欠174と係合突部8
22とが衝突することがない。なお、作業者が係合突部
822と係合切欠174とを係合させることを忘れて
も、加工が開始されれば、スリーブ824の回転により
係合突部822と係合切欠174とが当接させられ、回
転トルクが伝達されるとともに、切削抵抗に基づく向き
とは逆向きの相対回転が阻止された状態が得られる。
【0170】また、フランジ部808の端面820がス
リーブ824の端面828に当接する前に、係合突部8
16がテーパリング840に嵌合され、第二テーパ外周
面818が第二テーパ内周面860に当接させられる。
嵌合軸部806は、その状態から更に皿ばね842の付
勢力に抗してテーパリング840を後退させつつ挿入さ
れる。そのため、カラー120の係合突部126が係合
突部172の係合面175に係合し、端面828をフラ
ンジ部808の端面820に強固に押し付けた状態で
は、テーパリング840が皿ばね842により付勢さ
れ、第二テーパ外周面818と第二テーパ内周面860
とが皿ばね842の付勢力により互いに密着させられて
両面間には実質的にクリアランスがない状態になる。テ
ーパリング840は小径嵌合穴部836に径方向のクリ
アランスが極めて小さい状態で嵌合されており、嵌合軸
部806と嵌合穴826との間の径方向のクリアランス
は極めて小さく、それらが径方向に相対移動することは
殆どない。また、嵌合軸部806は、第一テーパ外周面
812と第一テーパ内周面832とにおいてテーパ嵌合
される。フランジ部808の端面820がスリーブ82
4の端面828に押し付けられるため、第一テーパ外周
面812と第一テーパ内周面832とは密着せず、径方
向にクリアランスが残るが、このクリアランスは極めて
小さく、嵌合軸部806と嵌合穴826とが径方向に相
対移動することは殆どない。テーパ面であれば、傾斜に
より嵌合が案内されるため、嵌合を容易にするためのク
リアランスが不要であるからである。このようにドリル
ホルダ800はスリーブ824に、軸方向に隔たった2
個所において、嵌合軸部806と嵌合穴826との径方
向の相対移動が殆ど生じない状態で保持され、嵌合クリ
アランスに基づく相対移動が0に近い大きさに減少させ
られており、耐久性の高い工具保持装置が得られる。そ
の上、一方向クラッチ834が一種のコレットとして機
能し、嵌合軸部806の嵌合穴826に対する径方向の
相対移動を阻止しており、極めて耐久性の高い工具保持
装置が得られる。なお、一方向クラッチ834に異常が
生じ、径方向の相対移動阻止機能を果たさなくなること
があっても、嵌合軸部806と嵌合穴826とは軸方向
に隔たった2個所においてテーパ嵌合させられ、径方向
のクリアランスが極めて小さくされているため、嵌合軸
部806と嵌合穴826との径方向の相対移動は小さく
て済む。
【0171】上記実施形態において、第一テーパ外周面
812と第一テーパ内周面832とのテーパ嵌合を省略
してもよい。
【0172】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態
を図52に示す。本実施形態は、ドリルホルダとスリー
ブとを軸方向に隔たった2個所においてテーパ嵌合させ
る代わりに、コレットを設けて嵌合軸部と嵌合穴との径
方向の相対移動を阻止するようにしたものである。その
他の構成は、図51に示す実施形態と同じであり、対応
する部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる
部分を説明する。
【0173】ドリルホルダ900の嵌合軸部901は、
前記ドリルホルダ800の嵌合軸部806と同様に構成
されており、突出端部に第二テーパ外周面902が形成
された係合突部903を有する。嵌合軸部901のフラ
ンジ部808に隣接する部分には、浅い円環状溝904
が形成されるとともに、第一コレット905が嵌合され
ている。第一コレット905は、概して円筒状の部材に
両端面から交互に軸方向に複数本ずつのすり割り溝が、
反対側の端面まで達しない長さで形成されたものであ
り、軸方向のあらゆる部分において縮径が可能である。
この第一コレット905の外周面は、フランジ部808
から離れるほど直径が漸減する第一テーパ外周面906
とされ、内周面は軸方向に平行なストレート内周面90
8とされている。第一コレット905は、フランジ部8
08との間に配設された皿ばね910の付勢力により後
退させられ、ドリルホルダ900がスリーブ912から
取り外された状態では、第一コレット905は円環状溝
904のフランジ部808から遠い側の後側溝側面91
4に当接させられている。
【0174】スリーブ912の嵌合穴916は前記スリ
ーブ824の嵌合穴826と同様に段付状を成し、大径
嵌合穴部918の開口端部には、第一コレット905の
第一テーパ外周面906に対応する第一テーパ内周面9
20が形成されている。大径嵌合穴部918の底面には
一方向クラッチ922が圧入され、小径嵌合穴部924
の底面には第二コレット926が配設されている。
【0175】第二コレット926は概して有底円筒状を
成し、底壁部928において、小径嵌合穴部924の底
面に立設されたボルト930の軸部932とばね受け9
34の円筒部936とに軸方向に相対移動可能に嵌合さ
れている。第二コレット926は、底壁部928とばね
受け934との間に配設された付勢手段の一種である弾
性部材としての皿ばね938により、嵌合穴916の開
口側に向かって付勢されている。
【0176】第二コレット926の円筒部の外周面は、
軸方向に平行なストレート外周面940とされ、小径嵌
合穴部924に軸方向に相対移動可能に嵌合されてい
る。第二コレット926の内周面の開口端部には、前記
係合突部903の第二テーパ外周面902に対応する第
二テーパ内周面942が形成されている。第二コレット
926の円筒部には、円筒部の先端面から底壁部928
に向かって延びる軸方向のすり割り溝が複数本形成され
ており、拡径可能である。
【0177】本実施形態の工具保持装置においてドリル
ホルダ900のスリーブ912への取付けは、図51に
示す実施形態と同様に行われる。ドリルホルダ900の
嵌合軸部901がスリーブ912の嵌合穴916に嵌合
されるとき、端面820が端面828に当接する前に係
合突部903が第二コレット926に嵌合され、第二テ
ーパ外周面902が第二テーパ内周面942に係合する
とともに、第二コレット924の円筒部の先端部分を半
径方向外向きに押し拡げつつ嵌合される。それによりス
トレート外周面940が小径嵌合穴部924の内周面に
密着させられるとともに、第二テーパ内周面942が第
二テーパ外周面902に密着させられ、この部分におけ
る嵌合軸部901と嵌合穴916との径方向の相対移動
が阻止される。
【0178】また、嵌合軸部901の嵌合穴916への
挿入時には、第一テーパ内周面920が第一コレット9
05の第一テーパ外周面906に係合して第一コレット
905を前方へ押し、第一コレット905は縮径させら
れつつ皿ばね910の付勢力に抗して前進させられ、後
側溝側面914から離間させられる。フランジ部808
がスリーブ912の先端面に押し付けられてドリルホル
ダ900がスリーブ912に取り付けられた状態では、
第一コレット905は皿ばね910により縮径した状態
に維持され、第一テーパ外周面906,ストレート内周
面908がそれぞれ第一テーパ内周面920,嵌合軸部
901に密着し、嵌合軸部901は前部においても嵌合
穴916との径方向の相対移動が阻止される。
【0179】このようにドリルホルダ900はスリーブ
912により、軸方向に隔たった2個所において嵌合軸
部901と嵌合穴916との径方向の相対移動が阻止さ
れ、しかも一方向クラッチ922が設けられており、こ
れらの嵌合軸部901と嵌合穴916との径方向の相対
移動阻止機能により、ドリルホルダ900とスリーブ9
12との相対移動は極めて確実に阻止され、加工時にお
ける工具保持装置の各部同士の衝突や摺動がなくなって
極めて耐久性の高い工具保持装置が得られる。
【0180】なお、本工具保持装置においても、嵌合軸
部901が嵌合穴916に、カラー120の係合突部1
26がスリーブ912のストッパ面176に当接するま
で嵌合された状態でドリルホルダ900とスリーブ91
2とを相対回転させ、加工開始時に両者に相対回転が生
じないようにすることが望ましいことは、前記実施形態
と同じである。
【0181】また、一方向クラッチ922に異常が生
じ、径方向の相対移動阻止機能を果たさなくなることが
あっても、嵌合軸部901と嵌合穴916とは軸方向に
隔たった2個所においてコレットを介して嵌合させられ
ているため、径方向に相対移動することはない。
【0182】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態
を図53に示す。本実施形態は、図1〜図7に示す実施
形態の工具保持装置において、一方向クラッチを2つ設
けたものである。その他の構成は同じであり、対応する
部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0183】スリーブ950の嵌合穴952は段付状を
成し、小径嵌合穴部954の底面に第一一方向クラッチ
956が設けられ、大径嵌合穴部958の底面に第二一
方向クラッチ960が設けられている。これら一方向ク
ラッチ956,960はそれぞれ、ドリルホルダ964
とスリーブ950との相対回転の阻止方向が逆である。
ドリルホルダ964の嵌合軸部966も段付状を成し、
第一一方向クラッチ956に嵌合される小径軸部96
8,第二一方向クラッチ960に嵌合される中径軸部9
70,大径嵌合穴部958に嵌合される大径軸部972
を有する。
【0184】本工具保持装置においてドリルホルダ96
4のスリーブ950への取付けは、図1〜図7に示す実
施形態におけると同様に行われる。ただし、阻止する相
対回転方向が互いに逆の一方向クラッチが2つ設けられ
ているため、嵌合軸部966を嵌合穴952に、一方向
クラッチ956,960に嵌合する状態まで嵌合した後
は、ドリルホルダ964とスリーブ950とを相対回転
させることができない。そのため、ドリルホルダ964
の係合突部114とスリーブ950の係合切欠174と
の間には回転方向において少なくとも一方の側にクリア
ランスが生じたままとなり、スリーブ950の回転トル
クは第一,第二一方向クラッチ956,960のうち、
一方の一方向クラッチによりドリルホルダ964に伝達
され、切削抵抗消滅時の相対回転は他方の一方向クラッ
チにより阻止される。本実施形態においては、第一,第
二一方向クラッチ956,960が相対回転完全阻止装
置を構成しているのである。係合突部114および係合
切欠174は省略してもよいが、設けておけば、例え
ば、一方向クラッチに異常が生じて機能を果たさなくな
ったとき、一方向クラッチに代わって回転を伝達し、あ
るいは切削抵抗消滅時の相対回転を阻止することができ
る。
【0185】また、本工具保持装置においては、嵌合軸
部966と嵌合穴952との径方向の相対移動は、第
一,第二一方向クラッチ956,960およびコレット
154の3つによって阻止される。一方向クラッチ2つ
でも嵌合軸部966と嵌合穴952との径方向の相対移
動は阻止することができるが、更にコレット154を設
ければ、より確実に阻止することができる。例えば、一
方向クラッチに異常が生じて径方向の相対移動阻止機能
を果たさなくなっても、コレット154により径方向の
相対移動が阻止されるのである。
【0186】しかし、2個の一方向クラッチに加えてコ
レットを設けることは不可欠ではなく、コレットは省略
してもよい。
【0187】本発明の更に別の実施形態を図54に示
す。本実施形態は、図37〜図50に示す実施形態と同
様に、スリーブ内に当接状態維持装置が設けられた工具
保持装置において、阻止する相対回転方向が互いに逆向
きである一方向クラッチを2つ設けたものである。図3
7〜図50に示す工具保持装置と同じ部分には同一の符
号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0188】ドリルホルダ1000の嵌合軸部1002
は段付状を成し、小径嵌合軸部1004に前記第二係合
部758等が設けられており、大径嵌合軸部1006の
小径嵌合軸部1004とは反対側の端部には、小径嵌合
軸部1004から離れるほど直径が漸増するテーパ外周
面1008が形成されている。このテーパ外周面100
8より先端側には、テーパ外周面1008の最大径より
大径の嵌合部1010が設けられるとともに、カラー1
012が軸方向に移動可能に嵌合されている。
【0189】カラー1012の内周面は段付状を成し、
内径が小さく、嵌合部1010に嵌合されるカラー嵌合
部1014と、内径がカラー嵌合部1014より大きい
環状部1016とを有する。環状部1016の内側に
は、第一一方向クラッチ1018が設けられている。第
一一方向クラッチ1018は、ドリルホルダ1000の
スリーブ1020に対する切削抵抗に基づく向きの相対
回転は許容するが、逆向きの相対回転は阻止する。カラ
ー嵌合部1014には、直径方向に隔たった2個所にそ
れぞれ、ピン1022が嵌合されており(図には1個の
み示されている)、カラー嵌合部1014の内周面から
突出させられるとともに、ドリルホルダ1000の嵌合
部1010の外周面に形成された溝1024に嵌入させ
られている。
【0190】溝1024は、ドリルホルダ1000の全
周にわたって形成された環状溝部1025と、環状溝部
1025の直径方向に隔たった2個所にそれぞれ形成さ
れ、軸方向に平行にかつ環状溝部1025から嵌合軸部
1002側へ延び出させられた軸方向溝部1026と、
それら軸方向溝部1026とは90度位相を異にする2
個所にそれぞれ形成された係合溝部1028とを有す
る。係合溝部1028は、直径がピン1022の環状溝
部1025への嵌入部の直径と等しい係合穴の一部を成
すものである。また、カラー1012は、付勢手段の一
種である弾性部材としての圧縮コイルスプリング103
0により、嵌合軸部1002側へ付勢されている。さら
に、カラー1012の環状部1016側の端面には、軸
方向に延び出す突起1032が1つ設けられている。
【0191】スリーブ1020内には段付状の嵌合穴1
036が形成されており、小径嵌合穴部1038内に前
記力変換装置740等により構成される当接状態維持装
置が取り付けられ、大径嵌合穴部1040の底面に第二
一方向クラッチ1042が圧入されている。第二一方向
クラッチ1042は、第一一方向クラッチ1018と
は、阻止する相対回転方向が逆であり、ドリルホルダ1
000とスリーブ1020との切削抵抗に基づく向きの
相対回転を阻止し、逆向きの相対回転を許容する。さら
に、大径嵌合穴部1040の開口部には、前記テーパ外
周面1008に対応するテーパ内周面1046が形成さ
れている。
【0192】さらにまた、スリーブ1020には、半径
方向外向きに突出するフランジ部1048が形成される
とともに、フランジ部1048を軸方向に貫通する切欠
1050が形成されている。切欠1050は、前記ピン
1022が係合溝部1028に嵌入し、かつ、前記第二
係合部758と第一係合部688とが非係合位相にある
状態で、突起1032と切欠1050との回転方向の位
相が一致する位置に設けられている。突起1032およ
び切欠1050は、第一,第二係合部688,758と
を非係合位相に合わせた状態で嵌合軸部1002を嵌合
穴1036に挿入するための位相合わせ用の突起および
切欠なのである。
【0193】ドリルホルダ1000のスリーブ1020
への取付けを説明する。取付け時には、カラー1012
のピン1022を係合溝部1028に嵌合させ、カラー
1012とドリルホルダ1000とが相対回転しない状
態で嵌合軸部1002を嵌合穴1036に挿入する。こ
のとき、ドリルホルダ1000とスリーブ1020と
は、突起1032が切欠1050に嵌入する位相に合わ
せる。そのため、嵌合軸部1002の挿入に伴って突起
1032が切欠1050に嵌入するとともに、第一係合
部688が第二係合部758に嵌入させられる。
【0194】嵌合軸部1002は前記可動スリーブ70
0のカム突起704のカム面706に当接し、圧縮コイ
ルスプリング720の付勢力に抗して後退させる。テー
パ外周面1008と嵌合部1010との間の環状の当接
面1052と、スリーブ1020の先端の端面1054
とが当接するまで、嵌合軸部1002が嵌合穴1036
に嵌合され、この状態では第一係合部688は第二係合
部758内に殆ど嵌入させられており、ドリルホルダ1
000が第一角度回転させられる。
【0195】嵌合軸部1002の小径嵌合軸部1004
は第二一方向クラッチ1042に嵌合されているため、
ドリルホルダ1000をスリーブ1020に対して第二
一方向クラッチ1042が許容する方向に回転させる。
カラー1012がスリーブ1024の先端部に嵌合さ
れ、第一一方向クラッチ1018は、両者の相対回転を
許容,阻止する状態にあり、また、ピン1022が係合
溝部1028内にあるが、ドリルホルダ1000をカラ
ー1012に対して回せばピン1022が係合溝部10
28から外れ、ピン1022を環状溝部1025内を移
動させつつドリルホルダ1000を正逆いずれの方向へ
も回転させることができる。そのため、ドリルホルダ1
000をスリーブ1020に対して第二一方向クラッチ
1042により許容される方向へ回転させる。
【0196】図37〜50の実施形態において説明した
ように、ドリルホルダ1000が第一角度回転させら
れ、更に第二角度回転させられれば、可動スリーブ70
0が圧縮コイルスプリング720の付勢力により移動さ
せられるとともに、鋼球678により係合部材680が
引き込まれてドリルホルダ1000の当接面1052が
スリーブ1020の当接面1054に押し付けられ、ド
リルホルダ1000がスリーブ1020に軸方向の隙間
なく取り付けられる。
【0197】本実施形態において第二角度は、ドリルホ
ルダ1000の回転開始から90度とされており、ドリ
ルホルダ1000が第二角度回転させられたとき、カラ
ー1012のピン1022が軸方向溝部1026に至
り、カラー1012が圧縮コイルスプリング1030の
付勢力により移動させられて、ピン1022が軸方向溝
部1026の延出端に係合する位置まで移動させられ
る。そのため、ピン1022と軸方向溝部1026との
周方向における係合および第一一方向クラッチ1018
により、ドリルホルダ1000とカラー1012との相
対回転が阻止される。第一,第二一方向クラッチ101
8,1042により、ドリルホルダ1000とスリーブ
1020との正逆いずれの相対回転も阻止される状態に
なるのであり、第一,第二一方向クラッチ1018,1
042が相対回転完全阻止装置を構成している。また、
このとき、突起1032が切欠1050に更に嵌入させ
られる。
【0198】ドリルホルダ1000をスリーブ1024
から取り外す場合には、カラー1012を圧縮コイルス
プリング1030の付勢力に抗して後退させ、ピン10
22と環状溝部1025との位置が一致した状態でドリ
ルホルダ1000をスリーブ1024に対して取付け時
と同じ方向に回転させる。それにより可動スリーブ70
0のカム突起704が嵌合軸部1002との係合から外
れ、当接状態維持装置によるドリルホルダ1000の引
込みが解除される。ピン1022が係合溝部1028に
嵌入する位置までドリルホルダ1000を回転させれ
ば、第一,第二係合部688,758の位相が一致し、
嵌合軸部1002を嵌合穴1036から抜き出すことが
できる。
【0199】なお、上記各実施形態においてコレットを
付勢手段の一種である弾性部材としての皿ばねにより付
勢することは不可欠ではなく、皿ばねは省略してもよ
い。ドリルホルダがスリーブに嵌合され、フランジ部が
スリーブの先端面に押し付けられたとき、ちょうどコレ
ットが嵌合穴のテーパ内周面とドリルホルダの嵌合軸部
とに当接するようにコレット,テーパ内周面および嵌合
軸部を加工すればよいのである。
【0200】また、本発明は、ドリルを保持する工具保
持装置に限らず、タップ等、他の加工工具を保持する工
具保持装置にも適用することができる。タップを保持す
る装置において、第一部材と第二部材との相対回転を限
定する相対回転限定部材に、それぞれ片傾斜係合部を有
する係合突起を2個設ける場合、図15〜図36に示す
実施形態におけると同様に、それら2個の係合突起の片
傾斜係合部が第一部材と第二部材との正方向と逆方向と
の相対回転をそれぞれ、片傾斜切欠と平行面同士で当接
して阻止する向きに形成することが望ましい。タップと
被加工物とが正方向に相対回転させられて雌ねじが形成
されるときには、タップに切削抵抗と摩擦抵抗が加えら
れる。タップが加工時とは逆向きに回転させられ、加工
された雌ねじ穴から抜き出されるときには、切削抵抗は
加えられないが摩擦抵抗は加えられる。タップには、正
逆いずれの方向の回転時にも大きな回転抵抗が加えられ
るのであり、係合突起が切削抵抗に基づく第一,第二部
材の相対回転のみを平行面の当接により阻止するように
されていれば、タップの加工穴からの抜出し時に片傾斜
係合部および片傾斜切欠の傾斜面の作用により、係合片
が係合切欠から抜け出す恐れがあるのに対し、正逆いず
れの回転時にも、第一,第二部材との相対回転が平行面
同士の当接により阻止されるのであれば、タップの加工
穴からの抜き出し時にも係合片が係合切欠から抜け出す
ことがないのである。
【0201】また、第一部材と第二部材とにわたって係
合し、両者の限られた角度を超える相対回転を阻止する
相対回転限定部材(例えば、図15〜図36に示す実施
形態のカラー440)に係合突起を複数設けることは不
可欠ではなく、1個でもよい。さらに、複数設けるとと
もに、各係合突起にそれぞれ片傾斜係合部を1個所ずつ
設ける場合、第一部材と第二部材との加工抵抗に基づく
相対回転のみを阻止する向きに設けてもよい。加工工具
としてタップを用いる場合のように、加工工具と被加工
物とが逆向きに相対回転させられることがなければ、す
べての片傾斜係合部を第一,第二部材の加工抵抗に基づ
く相対回転を阻止する向きに形成すれば十分なのであ
る。
【0202】さらに、ドリルホルダをスリーブに取り付
けるとき、スリーブが収容装置において支持部材により
支持されていることは不可欠ではなく、ドリルホルダお
よび収容装置から取り外されたスリーブを作業者が持っ
て取付けを行ってもよい。さらに、スピンドルに取り付
けられたスリーブに対してドリルホルダを取付け、取外
ししてもよい。ドリルホルダのスリーブへの取付け時に
は、ドリルホルダをスリーブに対して回してもよく、ス
リーブをドリルホルダに対して回してもよく、両者を互
いに逆方向に回してもよい。
【0203】また、本発明は、上記各実施形態の構成要
素の組合わせを変えた態様で実施することができる。そ
の他、特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知
識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を
実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一,第二発明に共通の一実施形態である工具
保持装置を示す正面図(一部断面)である。
【図2】上記工具保持装置の構成要素であるドリルホル
ダを示す正面図(一部断面)である。
【図3】上記ドリルホルダのホルダ本体のカム溝が設け
られた部分を示す正面図である。
【図4】上記ドリル本体に嵌合されたカラーを示す右側
面図である。
【図5】上記工具保持装置の構成要素であるスリーブを
示す左側面図である。
【図6】上記スリーブを示す正面図(一部断面)であ
る。
【図7】上記ドリルホルダのスリーブへの取付けを説明
する図である。
【図8】第一,第二発明に共通の別の実施形態である工
具保持装置のドリルホルダとスリーブとの係合部分を取
り出して示す正面断面図である。
【図9】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態であ
る工具保持装置を示す正面図(一部断面)である。
【図10】図9に示す工具保持装置の構成要素であるド
リルホルダを示す正面図(一部断面)である。
【図11】図10に示すドリルホルダに形成された係合
溝を示す正面図である。
【図12】図10に示すドリルホルダに形成されたカム
溝を示す正面図である。
【図13】図9に示すドリルホルダのスリーブへの取付
け時におけるドリルホルダ,スリーブおよびカラーの操
作を概略的に説明する図である。
【図14】図9に示すドリルホルダのスリーブからの取
外し時におけるドリルホルダ,スリーブおよびカラーの
操作を概略的に説明する図である。
【図15】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態で
ある工具保持装置の構成要素であるドリルホルダがスリ
ーブに取り付けられた状態を示す正面図(一部断面)で
ある。
【図16】上記工具保持装置の当接状態維持装置がドリ
ルホルダとスリーブとを軸方向において当接させるとと
もに、係合片が片傾斜切欠に係合した状態を示す正面断
面図である。
【図17】上記係合片が片傾斜切欠に係合した状態を示
す図である。
【図18】図15に示すドリルホルダのホルダ本体の正
面図である。
【図19】図15に示すホルダ本体の左側面図である。
【図20】上記当接状態維持装置を構成するカラーを示
す正面図(一部断面)である。
【図21】図20に示すカラーの平面図である。
【図22】図20に示すカラーの右側面図である。
【図23】図20に示すカラーの左側面図である。
【図24】上記当接状態維持装置を構成する係合部材を
示す右側面図である。
【図25】上記係合部材を示す正面断面図である。
【図26】上記係合部材を示す平面図である。
【図27】上記係合部材を示す平面断面図である。
【図28】上記当接状態維持装置を構成する可動スリー
ブを示す正面図(一部断面)である。
【図29】上記可動スリーブを示す左側面図である。
【図30】図15に示すスリーブの片傾斜切欠が形成さ
れた先端部を示す正面図である。
【図31】図15に示すスリーブを示す左側面図であ
る。面図である。
【図32】図15に示すドリルホルダのスリーブへの取
付け時におけるカラーの係合片,係合部材の係合突部,
可動スリーブの突部,スリーブの片傾斜切欠および嵌合
切欠の回転方向における位相を説明する図である。
【図33】図15に示すドリルホルダのスリーブへの取
付けを説明する図である。
【図34】図15に示すドリルホルダのスリーブからの
取外しを説明する図である。
【図35】第一係合切欠,第二係合切欠および係合片の
別の態様を示す正面図である。
【図36】第一係合切欠,第二係合切欠および係合片の
更に別の態様を示す正面図である。
【図37】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態で
ある工具保持装置のドリルホルダのスリーブへの嵌合開
始状態を示す正面断面図である。
【図38】図37に示す工具保持装置の構成要素である
ドリルホルダのカラーが嵌合された先端部分を示す正面
図である。
【図39】図37に示す工具保持装置の構成要素である
スリーブの片傾斜切欠が形成された先端部を示す正面図
である。
【図40】図38に示すカラーの係合片が図35に示す
スリーブの片傾斜切欠に嵌合部された状態を示す正面図
である。
【図41】図37に示すドリルホルダ全体を示す正面図
(一部断面)である。
【図42】図37に示すドリルホルダの左側面図であ
る。
【図43】図37に示すドリルホルダの右側面図であ
る。
【図44】図37に示すスリーブ内に引付け力付与装置
が取り付けられた状態を示す拡大正面断面図である。
【図45】上記引付け力付与装置を取り出して示す拡大
正面断面図である。
【図46】図37に示す工具保持装置の可動スリーブの
カム突起周辺を示す正面図である。
【図47】上記可動スリーブを示す平面図である。
【図48】図37に示す工具保持装置のドリルホルダを
図37の状態から更にスリーブに嵌合した状態を示す図
である。
【図49】図37に示す工具保持装置のドリルホルダを
図48の状態から第一角度回転させた状態を示す図であ
る。
【図50】図37に示す工具保持装置のドリルホルダを
図49の状態から第二角度回転させてスリーブに取り付
けた状態を示す図である。
【図51】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態で
ある工具保持装置を示す正面図(一部断面)である。
【図52】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態で
ある工具保持装置を示す正面図(一部断面)である。
【図53】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態で
ある工具保持装置を示す正面図(一部断面)である。
【図54】第一,第二発明に共通の更に別の実施形態で
ある工具保持装置を示す正面図(一部断面)である。
【図55】当接型相対回転阻止装置を2つ備えた工具保
持装置において、第一部材と第二部材との相対回転が完
全に阻止される理由を説明する図である。
【図56】当接型相対回転阻止装置を2つ備えた別の工
具保持装置において、第一部材と第二部材との相対回転
が完全に阻止される理由を説明する図である。
【符号の説明】
10 スリーブ 16 端面 18 嵌合穴 36 ドリルホルダ 38 嵌合軸部 40 ドリル 42 工具保持部 112 端面 114 係合突部 120 カラー 132 鋼球 138 カム溝 146 引張コイルスプリング 174 係合切欠 180 一方向クラッチ 190 ドリルホルダ 196 係合突部 300 ドリルホルダ 302 スリーブ 306 一方向クラッチ 318 工具保持部 320 カラー 380 カム溝 398 鋼球 408,410 端面 420 スリーブ 422 ドリルホルダ 434 幅一定切欠 444 係合片 470 係合部材 486 鋼球 490 可動スリーブ 502 圧縮コイルスプリング 520 片傾斜切欠 522,528 端面 530 一方向クラッチ 570 スリーブ 572 ドリルホルダ 582 係合片 588 幅一定切欠 596 嵌合軸部 598 一方向クラッチ 614 片傾斜切欠 615,622 端面 680 係合部材 720 圧縮コイルスプリング 740 力変換装置 800 ドリルホルダ 806 嵌合軸部 822 係合突部 824 スリーブ 826 嵌合穴 834 一方向クラッチ 900 ドリルホルダ 901 嵌合軸部 912 スリーブ 916 嵌合穴 922 一方向クラッチ 950 スリーブ 952 嵌合穴 956 第一一方向クラッチ 960 第二一方向クラッチ 964 ドリルホルダ 966 嵌合軸部 1000 ドリルホルダ 1002 嵌合軸部 1018 第一一方向クラッチ 1020 スリーブ 1036 嵌合穴 1042 第二一方向クラッチ 1052 当接面 1054 端面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 笹森 竹房 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 加藤 泰男 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 高崎 多弘 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第一嵌合部を備えて工作機械側に固定さ
    れる第一部材と、 前記第一嵌合部と相対回転可能かつ軸方向に相対移動可
    能に嵌合される第二嵌合部と、加工工具保持部とを備え
    た第二部材と、 前記第一,第二嵌合部の嵌合状態においてそれら第一,
    第二嵌合部の限られた距離を超える軸方向の相対移動を
    阻止する軸方向移動限定装置とを含む工具保持装置にお
    いて、 前記第一嵌合部と前記第二嵌合部との相対回転を正逆両
    方向において遊びなく阻止する相対回転完全阻止装置を
    設けたことを特徴とする工具保持装置。
  2. 【請求項2】 前記相対回転完全阻止装置が、前記第一
    部材と前記第二部材との間に設けられ、前記第二部材の
    前記第一部材に対する加工抵抗に基づく向きの相対回転
    は許容するが、逆向きの相対回転は阻止する一方向クラ
    ッチを含む請求項1に記載の工具保持装置。
JP3471496A 1996-02-22 1996-02-22 工具保持装置 Pending JPH09225710A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20210142202A (ko) * 2019-06-12 2021-11-24 제지앙 둔안 아트피셜 인바이런먼트 컴퍼니 리미티드 전자 팽창 밸브
CN114197913A (zh) * 2021-12-23 2022-03-18 四川仟坤建设集团有限责任公司 一种房建墙体抗震加固结构及其施工方法

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