JPH09213654A - 半導体の電極材料、半導体装置およびその製造方法 - Google Patents

半導体の電極材料、半導体装置およびその製造方法

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JPH09213654A
JPH09213654A JP1494296A JP1494296A JPH09213654A JP H09213654 A JPH09213654 A JP H09213654A JP 1494296 A JP1494296 A JP 1494296A JP 1494296 A JP1494296 A JP 1494296A JP H09213654 A JPH09213654 A JP H09213654A
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semiconductor
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JP1494296A
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Shigeo Yoshii
重雄 吉井
Toshiya Yokogawa
俊哉 横川
Yoichi Sasai
洋一 佐々井
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Panasonic Holdings Corp
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 オフセット電圧の低く、接触抵抗の低い良好
な半導体の電極材料を提供し、さらに前記電極材料を用
いた半導体装置を提供する。 【解決手段】 p型II-VI族化合物半導体である、窒素を
添加したp型ZnSe膜3上に、抵抗加熱蒸着によりNi層2
を形成する。次にAu-Ag合金層1を形成する。150℃以上
の温度で熱処理をする。このII-VI族化合物半導体の電
極材料は、オフセット電圧がなく、接触抵抗の低いオー
ミックな電流-電圧特性となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体の電極材料お
よび半導体装置に関し、特にp型II-VI族半導体の電極材
料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のp型II-VI族半導体の電極として
は、以下のものがある。
【0003】II−VI族半導体であるp型ZnSeの電極とし
ては、Au電極や、Pdを介して形成したAu電極、Pt電極が
用いられてきた(例えば、Au電極についてはアプライド
・フィジックス・レター、1988年52巻57ページ
参照、Pdについては、特開平6−188524号公報
参照)。
【0004】また、p型ZnSe上にp型ZnSe/p型ZnTeの疑
似グレーディッド積層構造を介してp型ZnTe層を作製
し、前記p型ZnTe上に金属電極を形成する方法が用いら
れてきた(例えば、エレクトロニクス・レター、199
3年29巻878ページ参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】Au電極や、Pdを介して
形成したAu電極、Pt電極を用いる方法では、金属とp型Z
nSeの界面にショットキー障壁が生じ、またp型ZnSeのキ
ャリア密度が1017〜1018cm-3以下と十分でないため、オ
ーミックな電流-電圧特性が得られなず、接触抵抗も高
かった。
【0006】p型ZnSe上にp型ZnSe/p型ZnTeの疑似グレ
ーディッド積層構造を介してp型ZnTe層を作製し、前記p
型ZnTe上に金属電極を形成する方法では、p型ZnSeとp型
ZnTeの間に大きなバンドオフセットが存在するため、接
触抵抗が103Ωcm2以上と高かった。またこの方法では、
ZnSeとZnTeの格子定数が大きく異なり、約7%もの格子
不整合が存在するため、ZnTeを含むコンタクト層で数多
くの結晶欠陥が発生し、電極特性が経時変化するなど安
定性および信頼性が低かった。
【0007】本発明は、良好なオーム性接触を示し、接
触抵抗の低く、さらに安定性・信頼性の高いp型II−VI
族半導体の電極材料およびその製造方法を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するために、p型II−VI族半導体上に、少なくともN
iあるいはPdを含む層と、少なくともAgを含む層を設け
ることを特徴とする半導体の電極材料である。
【0009】また、本発明は、p型II−VI族半導体上
に、少なくともNiあるいはPdを含む層と、少なくともCu
を含む層を設けることを特徴とする半導体の電極材料で
ある。
【0010】また、本発明は、p型II−VI族半導体上
に、少なくともTeを含む層と、少なくともNiあるいはPd
を含む層と、少なくともAgを含む層を設けることを特徴
とする半導体の電極材料である。
【0011】また、本発明は、p型II−VI族半導体上
に、少なくともTeを含む層と、少なくともNiあるいはPd
を含む層と、少なくともCuを含む層を設けることを特徴
とする半導体の電極材料である。
【0012】
【発明の実施の形態】従来、p型ZnSe等のp型II−VI族半
導体は、そのキャリア密度が1018cm-3以下と低く、また
金属とp型II−VI族半導体とのフェルミ準位の不一致の
ためオーミックな金属電極を作製することが困難であっ
た。ZnTeでは金属との界面で比較的障壁が小さく、また
p-ZnTeのキャリア密度を高めることができるので、比較
的容易にp型電極を作製できたが、特にZnSeやZn1-xMgxS
ySe1-y混晶(0≦x≦1、0≦y≦1)等の、短波長光源に利
用可能なワイドギャップ材料に対して直接にオーミック
な特性を持つp型の金属電極を作製できなかった。p型Zn
Se上にp型ZnSe/p型ZnTeの疑似グレーディッド積層構造
を介してp型ZnTe層を作製し、前記p型ZnTe上に金属電極
を形成する電極形成法でも、格子不整とバンドオフセッ
トが大きいため、接触抵抗・信頼性共に不十分なもので
あった。
【0013】本発明は、p型II−VI族半導体上に、少な
くともNiあるいはPdを含む層と、少なくともAgを含む層
を設けることを特徴とする半導体の電極材料である。
【0014】この構成を用いることによりp型II−VI族
半導体に対する良好なオーミック電極が得られた。この
原理は次のように考えられる。NiあるいはPdを含む層を
界面に存在することにより、Agをp型II−VI族半導体と
金属の界面に高濃度に拡散させることができた。Niおよ
びPdは、p型II−VI族半導体表面の酸化層を還元・除去
し、また界面での反応により相互拡散を促進していると
考えられる。AgはII−VI族半導体結晶中で、II族元素位
置を占めることによりアクセプタ準位を形成し、アクセ
プタが高濃度に添加された領域がp型II−VI族半導体/
金属界面に形成されたので、その結果、オーミックな電
極を形成することができたと考えられる。Niを用いる場
合、Ni自身がZnSe内に拡散した場合、アクセプタ準位を
形成している可能性もある。Pdは、Niに比べて比較的低
い温度でZnSeと合金化することができると考えられる。
【0015】また、p型II−VI族半導体上に、少なくと
もNiあるいはPdを含む層と、少なくともCuを含む層を設
ける構成によってもp型II−VI族半導体に対する良好な
オーミック電極が得られた。この構成では、Cuが界面に
拡散し、アクセプタ準位を形成していると考えられる。
Cuは、ZnSe中でのアクセプタ準位はAgに比べて深いが、
原子サイズが小さく、ZnSe中での拡散が容易であるた
め、Agを用いる場合より高濃度な拡散領域より低温で形
成することができる。
【0016】また、p型II−VI族半導体上に、少なくと
もTeを含む層と、少なくともNiあるいはPdを含む層と、
少なくともAgを含む層を設ける構成により、さらに接触
抵抗の低いオーミック電極が得られた。この構成では、
TeがNiあるいはPdと反応することによりさらにAgの拡散
を促進し、またTe自身がp型II−VI族半導体中に拡散す
ることによってII−VI族半導体のバンドギャップを減少
させていると考えられる。
【0017】また、p型II−VI族半導体上に、少なくと
もTeを含む層と、少なくともNiあるいはPdを含む層と、
少なくともCuを含む層を設ける構成により、接触抵抗の
低いオーミック電極が得られた。この構成では、Cuの拡
散がTeとNiの反応により促進されており、またTe自身が
p型II−VI族半導体中に拡散することによってII−VI族
半導体のバンドギャップを減少させていると考えられ
る。
【0018】本発明の半導体の電極材料は、金属多層膜
をp型II−VI族半導体上に直接形成されており、内部に
格子不整やバンドオフセットを持つヘテロ半導体界面な
どを持たないので格子欠陥が発生せず、電気的特性の再
現性および信頼性が高く、さらに機械的な強度や密着性
の高いものが得られた。
【0019】本発明の半導体の電極材料、半導体装置お
よびその製造方法は、特に短波長の半導体レーザ素子や
発光ダイオード等の発光素子、短波長受光素子、光変調
素子等に有用である。
【0020】本発明の、p型II−VI族半導体としては、
Zn、Cd、Mgから選ばれる少なくとも一つのII族元
素と、S、Seから選ばれる少なくとも一つのVI族元素
からなる化合物を用いるにより構成されることにより、
広い範囲の格子定数やバンド幅を形成することができ、
また短波長の光機能素子を構成することが出来る。
【0021】また、本発明の、p型II−VI族半導体とし
てはZnXCd1-XYSe1-Y、ZnXCd1-XY
1-Y、ZnXMg1-XYSe1-Y(0≦X≦1、0≦Y
≦1)等のII−VI族半導体混晶をも用いることができ、
この場合格子定数は0.53nmから0.67nmの範
囲内で自由に変化させることができる。
【0022】特にZnXMg1-XYSe1-Y(0≦X≦
1、0≦Y≦1)を用いることにより、GaAs基板に格子
整合した半導体素子や、短波長発光素子等を構成するこ
とができる。
【0023】またp型Zn1-x-zMgxCdzSe(0≦x≦1、0≦
z≦1)を用いることにより、InP基板に格子整合した半
導体素子や、短波長発光素子等を構成することができ
る。
【0024】また本発明の、p型II−VI族半導体の製法
としては、分子線エピタキシャル成長(MBE)法およ
び、ラジカル窒素ドーピング法により製造することがで
きる。
【0025】また本発明の、p型II−VI族半導体の製法
としては、例えば有機金属気相成長法(MOVPE)等により
製造することもできる。
【0026】また本発明の、半導体電極の製造方法にお
いて、150℃から400℃の温度範囲で熱処理を行うことに
より、界面反応を十分に進めることができ、またII-VI
族化合物半導体の結晶性を損傷することがないので好ま
しい。さらにMBE法により作製されたp型II−VI族半
導体に対しては200℃から300℃の温度範囲で特に良好な
特性が得られた。
【0027】また本発明の、半導体電極の製造方法にお
いて、金属層を設ける工程の前に、p型II−VI族半導体
表面を少なくとも臭素を含む水溶液により処理すること
により、表面平坦性は低下するが、界面の拡散反応を促
進させ、接触抵抗を低減することができた。一方、前述
の表面処理を行わない場合は、表面処理した場合に比べ
接触抵抗が高くなるが、電極の表面平坦性が向上するの
で、微細な形状の電極を作製する用途に対して好まし
い。
【0028】以下、本発明の電極材料と半導体素子につ
いて具体的に説明する。 (実施の形態1)本実施の形態ではまず、II−VI族半導
体であるZnSeの単結晶薄膜をGaAs基板上に分子線エピタ
キシャル成長(MBE)法により作製した。成長時には
活性窒素分子を導入するラジカルドーピング法によって
窒素を添加し、ZnSeをp型化した。
【0029】基板をMBE装置より取り出して、真空蒸
着によりp型ZnSe層の上にNiを100Å、Agを100Å、Agを2
0%含有するAu-Ag合金を2000Å蒸着し、直径1mmのドット
状にAu-Ag/Ni電極を形成した。図1にこの電極の構造を
示す。また、比較のため同じ形状でPdを100Å、Auを200
0Å蒸着し従来のAu/Pd電極を作製した。各々の電極は、
アニールしない状態および窒素雰囲気中で150℃〜300℃
の温度でアニールを行った状態で、特性を評価した。電
極の性能はドット状電極間の電流ー電圧(I−V)特性
を測定することにより調べた。
【0030】その結果を図2と図3に示す。図2は従来
のAu/Pd電極のI−V特性5および、それを200℃で5分
間アニールした電極のI−V特性6である。アニールし
たことにより電極の特性は多少改善されてはいるが、そ
れでもI−V特性のオフセット電圧は7V程度有り、シ
ョットキー的な特性を示している。またその微分抵抗値
は10KΩ程度と高い。
【0031】Au-Ag/Ni電極では、アニールしない状態で
はオフセット電圧は5V程度まで減少したもののやはり
ショットキー的な特性を示していたが、150℃以上のア
ニールによりオフセット電圧・微分抵抗の減少が観測さ
れ、250℃5分間のアニールの後はほぼオーミックなI
−V特性が得られた。
【0032】図3に、250℃5分間のアニールの後のAu-
Ag/Ni電極のI−V特性を示す。接触抵抗の値は2.7K
Ωであり、Au/Pd電極に比べて3分の1以下の低い接触
抵抗が得られ、しかもI−V特性が原点を通る線形を示
していることから良性のオーム性電極が得られているこ
とがわかる。
【0033】また、作製された電極は半導体との密着性
および均一性がが高く、表面が平坦で機械的に安定して
おり、容易にワイヤボンディング等の配線を行うことが
出来た。
【0034】透過型電子顕微鏡による観察では電極近傍
での格子欠陥の発生は認められず、電気的特性も安定し
ており良好な再現性および信頼性が得られた。さらに、
Auger分析により測定したところ、250℃20分間のアニー
ルによりAgが電極界面に拡散・移動し、高濃度添加領域
を形成していることが観測された。
【0035】以上のように、p型ZnSe上にAu-Ag/Ni電極
を蒸着により作製し、アニールすることにより低抵抗で
かつオーム性の良好な電極を得ることができた。
【0036】図4は、II−VI族半導体からなる半導体レ
ーザー素子の断面構造図である。電流注入部では、p型Z
nMgSSeクラッド層10上にAu-Ag合金層7およびNi層8
が形成されている。このレーザー素子は、波長495n
m、閾値電流58mAで発振し、このとき素子電圧は1
0Vであった。
【0037】これに対して、同じレーザー構造、ストラ
イプ形状、発振波長を持つが、Au-Ag合金層7およびNi
層8を持たず、p型ZnSSeクラッド層10上にAu/Pd電極
を形成したレーザー素子では、閾値電流65mAで発振
し、このときの素子電圧は33Vであった。
【0038】したがって、Au-Ag/Ni電極を用いることに
より、素子電圧を約20V低下することができた。これ
により、出力20mWのときの素子効率は、約3倍に向
上することができ、素子の発熱量は3分の1以下に減少
した。
【0039】従来のII−VI族半導体レーザーは、電極で
の発熱が大きいので電流注入部の温度が上昇してしま
い、寿命が限られていた。しかし、本発明による電極を
用いた半導体レーザーは電極での発熱量が減少したの
で、その寿命を1.2倍から3倍長くすることができ
た。
【0040】以上のように、II−VI族半導体レーザーの
上部のp型ZnMgSSeクラッド層10上に、Au-Ag合金層7
およびNi層8がある電極を用いることにより、素子の駆
動電圧を低下させて素子効率を向上させることができ
た。
【0041】本実施の形態ではNi層を使用しているが、
Niの代わりにPdを用いても同様の結果が得られた。
【0042】また、本実施の形態ではAgを20%含有するA
u-Ag合金を使用しているが、Au-Ag合金の代わりに、Au
とAgの積層膜を用いても同様の結果が得られた。
【0043】しかし、NiあるいはPdを用いない、Au-Ag
合金のみの電極や、Au/Ag積層膜のみの電極ではAu/Pd電
極と同様の高いオフセット電圧と高抵抗を持つI-V特性
を示し、前述のような効果は認められなかった。
【0044】また、本実施の形態では電極の最上部がAu
-Ag合金となっているが、この上にAu、Pt、Ti、Cr 等の
層を重ねることにより、さらに機械的強度、ボンディン
グの信頼性、耐候性を高める事が出来る。
【0045】また、本実施の形態では前述のMBE法に
より作製したII-VI族化合物半導体を用いているが、本
発明は、他の方法、例えば有機金属気相成長法(MOVPE)
等により作製したII-VI族化合物半導体にも用いること
が出来る。
【0046】(実施の形態2)本実施の形態ではまず、
前述のMBE法により作製したp型ZnSe層を、室温で臭
素水およびリン酸を含む水溶液に浸して表面処理を行っ
た。
【0047】次に、前記p型ZnSe層の上に、真空蒸着に
よりTeを100Å、Niを100Å、Agを100Å、Agを20%含有す
るAuを2000Å蒸着し、直径1mmのドット状にAu-Ag/Ni/Te
電極を形成した。
【0048】図5にこの電極の構造を示す。作製した電
極は、窒素雰囲気中で150℃〜300℃の温度でアニールを
行いI−V特性を評価した。
【0049】Au-Ag/Ni/Te電極は、アニールしない状態
ではオフセット電圧は2V程度まで減少したもののやは
りショットキー的な特性を示していたが、150℃以上の
アニールによりオフセット電圧・微分抵抗の減少が観測
され、250℃20分間のアニールの後はオーミックなI−
V特性が得られた。
【0050】図6にアニール後のAu-Ag/Ni/Te電極のI
−V特性を示す。その抵抗値は1.3KΩであり、Au/Pd
電極に比べて7分の1以下の低い接触抵抗が得られ、し
かもI−V特性が原点を通る線形を示していることから
良性のオーム性電極が得られていることがわかる。
【0051】さらに、Auger分析により測定したとこ
ろ、250℃20分間のアニールによりAgが電極界面に拡散
・移動し、高濃度添加領域を形成していることが観測さ
れた。また、Au-Ag/Ni/Te電極では、Au-Ag/Ni電極に比
べてさらに高濃度にのAgの拡散が観測され、Teの存在に
よりAgの拡散反応が促進されていることが観測された。
以上のように、p型ZnSe上にAu-Ag/Ni/Te電極を蒸着によ
り作製し、アニールすることにより低抵抗でかつオーム
性の良好な電極を得ることができた。
【0052】本実施の形態2では、金属層の形成前に臭
素系の水溶液で表面処理しているが、表面処理無しに直
接金属層を作製しても同様の結果が得られた。この場
合、表面処理した場合に比べ接触抵抗が少し高くなる
が、電極の表面平坦性は高くなるので、微細な形状の電
極を作製する用途に対して利用価値が高い。
【0053】図7は、II−VI族半導体からなる半導体レ
ーザー素子の断面構造図である。電流注入部では、p型Z
nMgSSeクラッド層10上にAu-Ag合金層7、Ni層8およ
びTe層19が形成されている。このレーザー素子は、波
長495nm、閾値電流60mAで発振し、このとき素
子電圧は5Vであった。
【0054】したがって、Au-Ag/Ni電極を用いることに
より、素子電圧を20V以上低下することができた。こ
れにより、出力20mWのときの素子効率は、約3倍に
向上することができ、素子の発熱量は3分の1以下に減
少した。
【0055】この発熱量の減少により、素子寿命を1.
5倍から7倍長くすることができた。
【0056】以上のように、II−VI族半導体レーザーの
上部のp型ZnMgSSeクラッド層10上に、Au-Ag合金層7
およびNi層8よびTe層19がある電極を用いることによ
り、素子の駆動電圧を低下させて素子効率を向上させる
ことができた。
【0057】本実施の形態1および2ではNi層を使用し
ているが、Niの代わりにPdを用いても同様の結果が得ら
れた。
【0058】また、本実施の形態1および2ではAgを20
%含有するAu-Ag合金を使用しているが、Au-Ag合金の代
わりに、AuとAgの積層膜を用いても同様の結果が得られ
た。
【0059】しかし、NiあるいはPdを用いない、Au-Ag
合金のみの電極や、Au/Ag積層膜のみの電極ではAu/Pd電
極と同様の高いオフセット電圧と高抵抗を持つI-V特性
を示し、前述のような効果は認められなかった。また、
NiあるいはPdを用いない、Au-Ag/Te電極や、Au/Ag/Te積
層膜の電極では高抵抗となってしまい、良好な電極は作
製できなかった。
【0060】(実施の形態3)本実施の形態ではまず、
前述のMBE法により作製したp型ZnSe層上に、真空蒸
着によりPdを100Å、Cuを20%含有するAuを2000Å蒸着
し、直径1mmのドット状にAu-Cu/Pd電極を形成した。
【0061】図8にこの電極の構造を示す。作製した電
極は、窒素雰囲気中で150℃〜300℃の温度でアニールを
行いI−V特性を評価した。
【0062】Au-Cu/Pd電極は、アニールしない状態では
オフセット電圧は2V程度まで減少したもののやはりシ
ョットキー的な特性を示していたが、150℃以上のアニ
ールによりオフセット電圧・微分抵抗の減少が観測さ
れ、250℃20分間のアニールの後はオーミックなI−V
特性が得られた。
【0063】図9にアニール後のAu-Cu/Pd電極のI−V
特性を示す。その抵抗値は2.3KΩであり、Au/Pd電極
に比べて4分の1以下の低い接触抵抗が得られ、しかも
I−V特性が原点を通る線形を示していることから良性
のオーム性電極が得られていることがわかる。
【0064】また、作製された電極は半導体との密着性
および均一性がが高く機械的に安定しており、容易にワ
イヤボンディング等の配線を行うことが出来た。
【0065】透過型電子顕微鏡による観察では電極近傍
での格子欠陥の発生は認められず、電気的特性も安定し
ており良好な再現性および信頼性が得られた。
【0066】さらに、Auger分析により測定したとこ
ろ、250℃20分間のアニールによりCuが電極界面に拡散
・移動し、高濃度添加領域を形成していることが観測さ
れた。以上のように、p型ZnSe上にAu-Cu/Pd電極を蒸着
により作製し、アニールすることにより低抵抗でかつオ
ーム性の良好な電極を得ることができた。
【0067】図10は、II−VI族半導体からなる半導体
レーザー素子の断面構造図である。電流注入部では、p
型ZnMgSSeクラッド層10上にAu-Cu合金層22およびPd
層21が形成されている。このレーザー素子は、波長4
95nm、閾値電流59mAで発振し、このとき素子電
圧は9Vであった。
【0068】したがって、Au-Cu/Pd電極を用いることに
より、素子電圧を20V以上低下することができた。こ
れにより、出力20mWのときの素子効率は、約3倍に
向上することができ、素子の発熱量は3分の1以下に減
少した。
【0069】この発熱量の減少により、素子寿命を1.
2倍から4倍長くすることができた。
【0070】以上のように、II−VI族半導体レーザーの
上部のp型ZnMgSSeクラッド層10上に、Au-Cu合金層2
2およびPd層21がある電極を用いることにより、素子
の駆動電圧を低下させて素子効率を向上させることがで
きた。
【0071】本実施の形態3ではPd層を使用している
が、Pdの代わりにNiを用いても同様の結果が得られた。
【0072】(実施の形態4)本実施の形態ではまず、
前述のMBE法により作製したp型ZnSe層を、室温で臭
素水およびリン酸を含む水溶液に浸して表面処理を行っ
た。
【0073】次に、前記p型ZnSe層の上に、真空蒸着に
よりTeを100Å、Niを100Å、Cuを100Å、Cuを20%含有す
るAuを2000Å蒸着し、直径1mmのドット状にAu-Cu/Ni/Te
電極を形成した。
【0074】図11にこの電極の構造を示す。作製した
電極は、窒素雰囲気中で150℃〜300℃の温度でアニール
を行いI−V特性を評価した。
【0075】Au-Cu/Ni/Te電極は、アニールしない状態
ではオフセット電圧は2V程度まで減少したもののやは
りショットキー的な特性を示していたが、150℃以上の
アニールによりオフセット電圧・微分抵抗の減少が観測
され、250℃20分間のアニールの後はオーミックなI−
V特性が得られた。
【0076】図12にアニール後のAu-Cu/Ni/Te電極の
I−V特性を示す。その抵抗値は0.9KΩであり、Au/
Pd電極に比べて10分の1以下の低い接触抵抗が得ら
れ、しかもI−V特性が原点を通る線形を示しているこ
とから良性のオーム性電極が得られていることがわか
る。
【0077】さらに、Auger分析により測定したとこ
ろ、250℃20分間のアニールによりCuが電極界面に拡散
・移動し、高濃度添加領域を形成していることが観測さ
れた。また、Au-Cu/Ni/Te電極では、Au-Cu/Ni電極に比
べてさらに高濃度にのCuの拡散が観測され、Teの存在に
よりCuの拡散反応が促進されていることが観測された。
以上のように、p型ZnSe上にAu-Cu/Ni/Te電極を蒸着によ
り作製し、アニールすることにより低抵抗でかつオーム
性の良好な電極を得ることができた。
【0078】本実施の形態4では、金属層の形成前に臭
素系の水溶液で表面処理しているが、表面処理無しに直
接金属層を作製しても同様の結果が得られた。この場
合、表面処理した場合に比べ接触抵抗が少し高くなる
が、電極の表面平坦性は高くなるので、微細な形状の電
極を作製する用途に対して利用価値が高い。
【0079】図13は、II−VI族半導体からなる半導体
レーザー素子の断面構造図である。電流注入部では、p
型ZnMgSSeクラッド層10上にAu-Cu合金層22、Ni層8
およびTe層19が形成されている。このレーザー素子
は、波長495nm、閾値電流61mAで発振し、この
とき素子電圧は4Vであった。
【0080】したがって、Au-Cu/Ni電極を用いることに
より、素子電圧を20V以上低下することができた。こ
れにより、出力20mWのときの素子効率は、約3倍に
向上することができ、素子の発熱量は3分の1以下に減
少した。
【0081】この発熱量の減少により、素子寿命を1.
5倍から8倍長くすることができた。
【0082】以上のように、II−VI族半導体レーザーの
上部のp型ZnMgSSeクラッド層10上に、Au-Cu合金層2
2およびNi層8よびTe層19がある電極を用いることに
より、素子の駆動電圧を低下させて素子効率を向上させ
ることができた。
【0083】本実施の形態4ではNi層を使用している
が、Niの代わりにPdを用いても同様の結果が得られた。
【0084】また、本実施の形態3および4ではCuを20
%含有するAu-Cu合金を使用しているが、Au-Cu合金の代
わりに、AuとCuの積層膜を用いても同様の結果が得られ
た。
【0085】しかし、NiあるいはPdを用いない、Au-Cu
合金のみの電極や、Au/Cu積層膜のみの電極ではAu/Pd電
極と同様の高いオフセット電圧と高抵抗を持つI-V特性
を示し、前述のような効果は認められなかった。また、
NiあるいはPdを用いない、Au-Cu/Te電極や、Au/Cu/Te積
層膜の電極では高抵抗となってしまい、良好な電極は作
製できなかった。
【0086】また、本実施の形態1-4では半導体レー
ザー素子を取り上げているが、本発明は発光ダイオード
素子、フォトダイオード素子など他のII−VI族半導体素
子にも適用できる。
【0087】また、本実施の形態1-4ではストライプ
構造の単一量子井戸型半導体レーザーを取り上げている
が、本発明は埋め込み構造、多量子井戸型、イオン注入
による構造など他の構造のII−VI族半導体レーザーにも
適用できる。
【0088】また、本実施の形態1-4ではMBE法に
より作製したII-VI族化合物半導体を用いているが、本
発明は、他の方法、例えば有機金属気相成長法(MOVPE)
等により作製したII-VI族化合物半導体にも用いること
が出来る。
【0089】また、本実施の形態1-4では電極の最上
部がAu-Ag合金あるいはAu-Cu合金となっているが、この
上にAu、Pt、Ti、Cr 等の層を重ねることにより、さら
に機械的強度、ボンディングの信頼性、耐候性を高める
事が出来る。
【0090】
【発明の効果】本発明は、p型II−VI族半導体上に、少
なくともNiあるいはPdを含む層と、少なくともAgを含む
層を設けることにより、オーム性でかつ接触抵抗の低い
半導体の電極材料を提供する。
【0091】本発明は、p型II−VI族半導体上に、少な
くともNiあるいはPdを含む層と、少なくともCuを含む層
を設けることにより、オーム性でかつ接触抵抗の低い半
導体の電極材料を提供する。
【0092】本発明は、p型II−VI族半導体上に、少な
くともTeを含む層と、少なくともNiあるいはPdを含む層
と、少なくともAgを含む層を設けることにより、オーム
性でかつ接触抵抗の低い半導体の電極材料を提供する。
【0093】本発明は、p型II−VI族半導体上に、少な
くともTeを含む層と、少なくともNiあるいはPdを含む層
と、少なくともCuを含む層を設けることにより、オーム
性でかつ接触抵抗の低い半導体の電極材料を提供する。
【0094】またこれら電極を半導体装置のp型電極と
して用いることにより、動作電圧が低くて素子効率が高
く、発熱量の低い半導体装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の電極の構造を示す図
【図2】Au/Pd蒸着膜による電極と、それをアニールし
た電極の電流−電圧(I−V)特性図
【図3】本発明の実施の形態1の電極の電流−電圧(I
−V)特性図
【図4】本発明の実施の形態1のII−VI族半導体レーザ
ー素子の構造を示す図
【図5】本発明の実施の形態2の電極の構造を示す図
【図6】本発明の実施の形態2の電極の電流−電圧(I
−V)特性図
【図7】本発明の実施の形態2のII−VI族半導体レーザ
ー素子の構造を示す図
【図8】本発明の実施の形態3の電極の構造を示す図
【図9】本発明の実施の形態3の電極の電流−電圧(I
−V)特性図
【図10】本発明の実施の形態3のII−VI族半導体レー
ザー素子の構造を示す図
【図11】本発明の実施の形態4の電極の構造を示す図
【図12】本発明の実施の形態4の電極の電流−電圧
(I−V)特性図
【図13】本発明の実施の形態4のII−VI族半導体レー
ザー素子の構造を示す図
【符号の説明】
A 本発明の実施の形態1の電極材料 B 本発明の実施の形態1の半導体レーザ素子 C 本発明の実施の形態2の電極材料 D 本発明の実施の形態2の半導体レーザ素子 E 本発明の実施の形態3の電極材料 F 本発明の実施の形態3の半導体レーザ素子 G 本発明の実施の形態4の電極材料 H 本発明の実施の形態4の半導体レーザ素子 1 Au-Ag合金層 2 Ni層 3 p型ZnSe膜 4 GaAs基板 5 Au/Pdの蒸着電極(アニール後)のI−V特性 6 Au/Pdの蒸着電極(アニール無し)のI−V特性 7 Au-Ag合金層 8 Ni層 9 SiO2絶縁層 10 p型ZnMgSSeクラッド層 11 p型ZnSSe層 12 ZnCdSe活性層 13 n型ZnSSe層 14 n型ZnMgSSeクラッド層 15 n型ZnSe層 16 n型GaAs基板 17 In電極 18 Te層 19 Te層 20 Au-Cu合金層 21 Pd層 22 Au-Cu合金層

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】p型II−VI族半導体上に、少なくともNiあ
    るいはPdを含む層と、少なくともAgを含む層を設けるこ
    とを特徴とする半導体の電極材料。
  2. 【請求項2】p型II−VI族半導体上に、少なくともNiあ
    るいはPdを含む層と、少なくともCuを含む層を設けるこ
    とを特徴とする半導体の電極材料。
  3. 【請求項3】p型II−VI族半導体上に、少なくともTeを
    含む層と、少なくともNiあるいはPdを含む層と、少なく
    ともAgを含む層を設けることを特徴とする半導体の電極
    材料。
  4. 【請求項4】p型II−VI族半導体上に、少なくともTeを
    含む層と、少なくともNiあるいはPdを含む層と、少なく
    ともCuを含む層を設けることを特徴とする半導体の電極
    材料。
  5. 【請求項5】p型II−VI族半導体上に、少なくともNiあ
    るいはPdを含む層を設ける工程と、少なくともAgを含む
    層を設ける工程とを含む半導体電極の製造方法。
  6. 【請求項6】p型II−VI族半導体上に、少なくともNiあ
    るいはPdを含む層を設ける工程と、少なくともCuを含む
    層を設ける工程とを含む半導体電極の製造方法。
  7. 【請求項7】p型II−VI族半導体上に、少なくともTeを
    含む層を設ける工程と、少なくともNiあるいはPdを含む
    層を設ける工程と、少なくともAgを含む層を設ける工程
    とを含む半導体電極の製造方法。
  8. 【請求項8】p型II−VI族半導体上に、少なくともTeを
    含む層を設ける工程と、少なくともNiあるいはPdを含む
    層を設ける工程と、少なくともCuを含む層を設ける工程
    とを含む半導体電極の製造方法。
  9. 【請求項9】150℃から400℃の温度範囲で熱処理を行う
    ことを特徴とする請求項5記載あるいは請求項6、7ま
    たは8記載の半導体電極の製造方法。
  10. 【請求項10】金属層を設ける工程の前に、p型II−VI
    族半導体表面を少なくとも臭素を含む水溶液により処理
    することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の
    半導体電極の製造方法。
  11. 【請求項11】p型II−VI族半導体と、金属電極層の間
    に、少なくともNiあるいはPdを含む層と、少なくともAg
    を含む層を介在させることを特徴とする半導体装置。
  12. 【請求項12】p型II−VI族半導体と、金属電極層の間
    に、少なくともNiあるいはPdを含む層と、少なくともCu
    を含む層を介在させることを特徴とする半導体装置。
  13. 【請求項13】p型II−VI族半導体と、金属電極層の間
    に、少なくともTeを含む層と、少なくともNiあるいはPd
    を含む層と、少なくともAgを含む層を介在させることを
    特徴とする半導体装置。
  14. 【請求項14】p型II−VI族半導体と、金属電極層の間
    に、少なくともTeを含む層と、少なくともNiあるいはPd
    を含む層と、少なくともCuを含む層を介在させることを
    特徴とする半導体装置。
  15. 【請求項15】p型II−VI族半導体が、Zn、Cd、M
    gから選ばれる少なくとも一つのII族元素と、S、Se
    から選ばれる少なくとも一つのVI族元素からなる化合物
    を用いるにより構成されることを特徴とする請求項1記
    載あるいは請求項2記載あるいは請求項3記載あるいは
    請求項4記載の半導体の電極材料。
  16. 【請求項16】p型II−VI族半導体が、Zn、Cd、M
    gから選ばれる少なくとも一つのII族元素と、S、Se
    から選ばれる少なくとも一つのVI族元素からなる化合物
    を用いるにより構成されることを特徴とする請求項5〜
    8のいずれかに記載の半導体電極の製造方法。
  17. 【請求項17】p型II−VI族半導体が、Zn、Cd、M
    gから選ばれる少なくとも一つのII族元素と、S、Se
    から選ばれる少なくとも一つのVI族元素からなる化合物
    を用いることにより構成されることを特徴とする請求項
    11〜14のいずれかに記載の半導体装置。
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