JPH09209821A - シリンダブロックとシリンダヘッドとの結合構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 シリンダボアの周囲に形成したウォータジャ
ケットがシリンダヘッド取付面上で開口するオープンデ
ッキ形のシリンダブロックの剛性を高める。 【解決手段】 シリンダライナ10を圧入するシリンダバ
レル８の周囲にウォータジャケットを形成してシリンダ
ヘッド取付面12上で開口させる。シリンダヘッド16の結
合面18に直方体形状の凸部27を突出させる。凸部27をウ
ォータジャケット９内に嵌合し、シリンダブロック５と
シリンダヘッド16とを結合させてシリンダヘッドボルト
（図示せず）で締結する。凸部27をボルト37によってシ
リンダブロック本体６の側壁およびシリンダバレル８に
締結する。シリンダバレル８とシリンダブロック本体６
の側壁とが凸部27によって結合されるので、シリンダブ
ロック５の剛性が高まり、エンジンの振動および騒音の
発生を抑制することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、オープンデッキ形
のシリンダブロックとシリンダヘッドとの結合構造に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般にアルミニウム合金製のエンジンの
シリンダブロックでは、薄肉の耐摩性材料からなるシリ
ンダライナが組込まれており、このシリンダライナによ
ってピストンが嵌装されるシリンダボアが形成されてい
る。この種のシリンダブロックには、例えば図７に示す
シリンダブロック１のように、冷却水を循環させるため
にシリンダライナ２の外周部に形成されたウォータジャ
ケット３がシリンダヘッド取付面４（以下、デッキ面４
という）上で開口された構造のオープンデッキ形のもの
がある。

【０００３】オープンデッキ形のシリンダブロック１
は、デッキ面４が開口しているので、アルミニウム合金
等で鋳造する場合、ダイカスト法によって容易に製造す
ることができる反面、デッキ面が閉じた構造のクローズ
ドデッキ形のシリンダブロックに比して剛性が低く、振
動、騒音を発生しやすいという欠点がある。

【０００４】そこで、従来、オープンデッキ形のシリン
ダブロックの剛性を高めるための構造として、例えば、
デッキ面のウォータジャケットの開口部の一部あるいは
全体に閉止体を嵌合して溶接するようにしたものが提案
されている（特開昭58−74850 号公報、特開昭59−3142
号公報、特開昭59−3143号公報、特開平１−100352号公
報、特開平１−147145号公報、実開平２−105557号公
報、実開平２−105558号公報、実開平３−110156号公報
等参照）。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報記載のデッキ面のウォータジャケットの開口部に閉止
体を嵌合して溶接するようにしたものでは、溶接工程に
手間およびコストがかかるため、シリンダブロックの生
産性の低下および製造コストの上昇を招くことになる。
また、ダイカスト法によって鋳造したシリンダブロック
本体は、内部に多少ガスを巻込んでいる場合が多く、こ
のガスによって溶接不良が生じやすいという問題があ
る。

【０００６】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもの
であり、オープンデッキ形のシリンダブロックの剛性を
高めることができるシリンダブロックとシリンダヘッド
との結合構造を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、請求項１の発明は、シリンダボアの周囲に形成さ
れたウォータジャケットがシリンダヘッド取付面上で開
口するオープンデッキ形のシリンダブロックとシリンダ
ヘッドとの結合構造であって、前記シリンダヘッドの前
記シリンダヘッド取付面との結合面に凸部を形成し、該
凸部を前記ウォータジャケットの開口部に嵌合させたこ
とを特徴とする。

【０００８】このように構成したことにより、シリンダ
ブロックのウォータジャケットの内壁と外壁とが凸部に
よって結合されるのでシリンダブロックの剛性が高ま
る。

【０００９】また、請求項２の発明は、上記請求項１の
構成に加えて、シリンダヘッドの凸部とシリンダブロッ
クとをボルトによって締結したことを特徴とする。

【００１０】このように構成したことにより、シリンダ
ブロックの剛性が高まるとともに、シリンダブロックと
シリンダヘッドとの結合が強固になる。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて詳細に説明する。

【００１２】図１ないし図３に示すように、シリンダブ
ロック５は、直列４気筒エンジン用のオープンデッキ形
の構造であって、シリンダブロック本体６に、直列に配
置され側部が互いに連通された円柱状のボア７が形成さ
れている。各ボア７内には、円筒状のシリンダバレル８
が同心上に立設されており、これら４つのシリンダバレ
ル８は、その側面部が互いに結合されている。そして、
ボア７内のシリンダバレル８の周囲に、冷却水を循環さ
せるためのウォータジャケット９が形成されている。シ
リンダバレル８内には、それぞれ薄肉の耐摩性材料から
なりピストン（図示せず）が嵌装されるシリンダボア10
を形成する円筒状のシリンダライナ11が圧入または鋳包
まれている。

【００１３】シリンダブロック本体６のシリンダヘッド
取付面12（以下、デッキ面12という）には、前述のウォ
ータジャケット９が開口され、また、オイルおよびブロ
ーバイガスを通すための通路13が開口されており、さら
に、ボア７の周囲に複数（図示のものでは10個）のネジ
穴14が設けられている。そして、デッキ面12には、ガス
ケット15を介してシリンダヘッド16が取付けられてい
る。シリンダヘッド16は、ボルト穴17（図４参照）に挿
通させたシリンダヘッドボルト（図示せず）をデッキ面
10のネジ穴14に螺着させてシリンダブロック６に締結さ
れている。

【００１４】図４にも示すように、シリンダヘッド16の
シリンダブロック６との結合面18には、シリンダボア10
に対向させて燃焼室19が形成されており、燃焼室19には
吸気ポート20、排気ポート21および点火プラグ取付孔22
が連通されている。また、結合面18には、シリンダブロ
ック本体６のウォータジャケット９に対向させて冷却水
通路23が開口され、また、通路13に対向させてオイルお
よびブローバイガスを通すための通路24が開口されてい
る。

【００１５】シリンダブロック本体６には、４つのシリ
ンダバレル８に対向する両側壁の内面のデッキ面12側の
端部に、それぞれ各シリンダバレル８の軸線に対向する
平坦面25a を形成する凹部25が設けられている。また、
シリンダバレル８の外周面のデッキ面12側の端部には、
凹部25の平坦面25a に対向するこれと平行な平坦面26が
形成されている。そして、凹部25の平坦面25a と平坦面
26とで、ウォータジャケット９内において直方体形状の
凸部27（後述）を嵌合させる嵌合部28を形成している。

【００１６】シリンダヘッド16の結合面18には、シリン
ダブロック本体６の嵌合部28に対向する部位に直方体形
状の凸部27が突出されている。凸部27は、図に示すよう
にシリンダヘッド16と一体に形成してもよく、また、別
体としてボルト等によってシリンダヘッド16に結合させ
るようにしてもよい。そして、凸部27を嵌合部28に嵌合
させてシリンダヘッド16とシリンダブロック５とが結合
されている。なお、ガスケット15には、図５に示すよう
に、シリンダボア10と燃焼室19とを連通させる孔29、ウ
ォータジャケット９と冷却水通路23とを連通させる孔3
0、オイルおよびブローバイガスを通すための通路13，2
4間を連通させる孔31およびシリンダヘッドボルトを挿
通させる孔32に加えて凸部27を挿通させるための孔33が
設けられている。

【００１７】図２に示すように、シリンダヘッド16の凸
部27、シリンダブロック本体６の側壁およびシリンダバ
レル９には、対向する位置にそれぞれボルト孔34、ボル
ト孔35およびネジ穴36が設けられており、ボルト孔34，
35にボルト37を挿通させてネジ穴36に螺着することによ
って凸部27と嵌合部28とが締結されている。なお、シリ
ンダブロック本体６のボルト孔34とボルト37との隙間
（0.15mm以下が好ましい）は、シール剤（エポキシ系樹
脂、フェノール系樹脂等）、シールワッシャ等のシール
手段（図示せず）によってシールされている。また、ボ
ルト孔34，35およびネジ穴36は、シリンダブロック本体
６とシリンダヘッド16とを組み付けた状態で共加工する
か、あるいは、シリンダブロック本体６とシリンダヘッ
ド16との位置決めを行うノックピン穴等の位置決め手段
を基準として別々に加工することによって設けることが
できる。

【００１８】また、凸部27と嵌合部28とは、上記のほ
か、図６に示すように、シリンダブロック本体６の側壁
および凸部27の対向する位置にそれぞれボルト孔34およ
びネジ穴38を設け、ボルト孔34にボルト39を挿通させて
ネジ穴38に螺着することによって締結するようにするこ
ともできる。

【００１９】以上のように構成した本実施形態の作用に
ついて次に説明する。

【００２０】シリンダヘッド16の結合面18に突出させた
凸部27をシリンダブロック５のウォータジャケット９に
形成した嵌合部28に嵌合させてボルト37または39によっ
て締結することにより、シリンダバレル８（ウォータジ
ャケット９の内壁）とシリンダブロックの側壁（ウォー
タジャケットの外壁）とが凸部27によって結合されるの
で、シリンダブロック５の剛性が高まり、エンジンの振
動および騒音の発生を抑制することができる。このと
き、シリンダライナ11に嵌装されたピストンから受ける
クランクシャフト（図示せず）の軸線に対して直交する
方向の力は、シリンダバレル８から凸部27を介してシリ
ンダブロック本体６の側壁に伝えられるので、この力に
対するシリンダブロック５の剛性を高めることができ、
振動および騒音の発生を効果的に抑制することができ
る。さらに、シリンダブロック５とシリンダヘッド16と
の結合を強固にして気密性を高めることができる。ま
た、溶接工程が不要であるため、ウォータジャケットの
開口部に閉止体を溶接する従来例に対して製造コストが
安く、溶接不良が発生することもない。

【００２１】なお、上記実施形態では、シリンダヘッド
16の凸部27は、加工性を考慮して直方体形状としている
が、シリンダブロック本体６のデッキ面12のウォータジ
ャケット９の開口部の形状に対応した円弧状に形成し、
シリンダブロック本体６側のの嵌合部28を省略してウォ
ータジャケット９の開口部に直接嵌合させるようにする
こともできる。

【００２２】また、一般に、アルミニウム合金製のシリ
ンダヘッドは、AC4A、AC4B、AC4C、AC4CH 、AC4D等で金
型鋳造または低圧鋳造によって製造されており、その熱
膨張係数は、22.0〜23.0×10^-6／Ｋ（20℃〜 200℃）で
あり、アルミニウム合金ダイカスト製（ADC12 ）のシリ
ンダブロックの熱膨張係数21.0×10^-6／Ｋ（20℃〜 200
℃）よりも充分大きいので、エンジンの運転中（温間
時）には、凸部27と嵌合部28との間の隙間が大きくなる
ことがない。したがって、上記実施形態では、凸部27を
ボルト37によって嵌合部28に締結しているが、ボルト37
を省略しても振動、騒音の発生を抑制することができ
る。

【００２３】さらに、上記実施形態では、一例として直
列４気筒エンジン用のシリンダブロックとシリンダヘッ
ドとの結合構造について説明しているが、本発明は、そ
の他の多気筒エンジンおよび単気筒エンジン用のものに
も同様に適用することができる。

【００２４】

【発明の効果】以上詳述したように、請求項１に係るシ
リンダブロックとシリンダヘッドとの結合構造によれ
ば、シリンダヘッドの凸部をシリンダブロックのウォー
タジャケットの開口部に嵌合させたことにより、ウォー
タジャケットの内壁と外壁とが凸部によって結合される
ので、シリンダブロックの剛性が高まって、エンジンの
振動および騒音の発生を抑制することができる。

【００２５】また、請求項２に係るシリンダブロックと
シリンダヘッドとの結合構造によれば、上記に加えて、
凸部とシリンダブロックとをボルトで締結したことによ
り、シリンダブロックの剛性が高まるとともに、シリン
ダブロックとシリンダヘッドとの結合が強固になり、気
密性を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係るシリンダブロックお
よびシリンダヘッドの縦断面図である。

【図２】図１の要部の拡大図である。

【図３】図１のシリンダブロック上面図である。

【図４】図１のシリンダヘッドの下面図である。

【図５】図１の装置のガスケットの平面図である。

【図６】本発明の他の実施形態のシリンダブロックとシ
リンダヘッドとの結合構造を示す要部の縦断面図であ
る。

【図７】オープンデッキ形のシリンダブロックを一部破
断して示す斜視図である。

【符号の説明】

５ シリンダブロック ９ ウォータジャケット 12 シリンダヘッド取付面 16 シリンダヘッド 18 結合面 27 凸部 37 ボルト 39 ボルト

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダボアの周囲に形成されたウォー
   タジャケットがシリンダヘッド取付面上で開口するオー
   プンデッキ形のシリンダブロックとシリンダヘッドとの
   結合構造であって、前記シリンダヘッドの前記シリンダ
   ヘッド取付面との結合面に凸部を形成し、該凸部を前記
   ウォータジャケットの開口部に嵌合させたことを特徴と
   するシリンダブロックとシリンダヘッドとの結合構造。
2. 【請求項２】 シリンダヘッドの凸部とシリンダブロッ
   クとをボルトによって締結したことを特徴とする請求項
   １に記載のシリンダブロックとシリンダヘッドとの結合
   構造。