JPH0116333B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、多気筒エンジンのシリンダヘツドの
構造、とくにシリンダブロツク本体とガスケツト
を介して接するシリンダヘツド下壁の支持構造の
改良に関するものである。

一般に、シリンダヘツドは、上壁と下壁とを有
し、上壁と下壁との間を、吸、排気弁の弁軸を保
持する保持壁および吸、排気ポートを形成するポ
ート壁もしくはポート壁単独で結合した壁構造を
有し、複数のヘツドボルトで上壁を締結すること
により、ガスケツトを介してシリンダブロツク本
体に固定するようにしている。

この場合、シリンダヘツドは、燃焼室内の圧
力、とくに爆発行程における過大な燃焼圧力を受
けており、この圧力で下壁が上向きに変形し、シ
リンダヘツドとシリンダブロツクとの間に間隙を
生じて、両者の間に介在させたガスケツトのシー
ル性を悪化させ、エンジン冷却水および燃焼ガス
の漏洩を誘起するといつた問題があつた。

従来、下壁に対する支持剛性をたかめるため、
上壁をシリンダヘツドの幅方向に下向きに凸にわ
ん曲させたものが知られている。（実開昭52−
32614号公報参照）。

かかる上壁構造は、上壁の支持剛性をたかめる
うえで確かに有効であるが、燃焼室の周囲に配設
されるヘツドボルトの締付力との関係で考える
と、ヘツドボルトの下向きの締付力は、上壁のわ
ん曲方向には作用するもののわん曲していない長
手方向には上壁とヘツドボルトとが直交するため
実際上作用せず、このため、ヘツドボルトの締付
力を燃焼室中央の下壁部分に均一にかつ有効に集
中することができず、下壁の上向きの変形を必要
十分に防止することができない欠点があつた。

本発明は、かかる問題に鑑みてなされたもので
あつて、 上壁の支持剛性をより一層たかめることがで
き、しかもヘツドボルトの締付力を下壁の燃焼室
部分に均一に集中させることができ、したがつ
て、下壁の上向きの変形を確実に防いでガスケツ
トによるシール性を有効に維持することができる
シリンダヘツド構造を提供することを基本的な目
的としている。

このため、本発明においては、上壁を例えばポ
ート壁を介して下壁のシリンダボアと対向した上
向きに凸形状の凹部に接続すると共に、上壁と下
壁とを連結する側壁の内側で、かつ、各燃焼室の
周囲に複数のヘツドボルトを配設し、かつ、この
ヘツドボルトによつて囲まれる各燃焼室に対応し
た上壁部分を各ヘツドボルトの近傍まで下向きに
凸の球面形状、すなわち、各ヘツドボルト近傍か
ら燃焼室へ向つて凹状にわん曲する球面形状とし
たことを基本的な特徴としている。

かかる上壁構造とすれば、各ヘツドボルトの締
付力は、上壁の球面構造を媒介として、燃焼室の
中央部に向けて求心的にかつ均一に作用させるこ
とができ、燃焼室中央付近において上壁と下壁と
を結合する例えばポート壁を介して下壁を大きな
支持力で押圧保持し、その結果、下壁の上向きの
変形を確実に防止することができるのである。

以下、図示の実施例に基づいて本発明をより具
体的に説明する。

第１図において、１はシリンダヘツド、２は側
壁３によつて周囲が囲まれた上壁、４，…，４は
側壁３の内側にあつて各気筒を区画する矩形の各
コーナ部に該当して上壁２に設けた各ボス部５の
ボルト穴（図示せず）に貫通してシリンダヘツド
１をシリンダブロツクにガスケツトを介して固定
するヘツドボルト、６，７はシリンダヘツド１の
長手方向において隣接するヘツドボルト４，４の
ほぼ中間に形成された吸，排気弁の弁軸を保持す
るための保持壁、８，…，８はシリンダヘツド１
の幅方向に対向した各一対のヘツドボルト４，４
間にあつて、第２図に示すように、カムシヤフト
用の軸穴９を形成する保持台である。

上記上壁２は、第１図にハツチングで囲つて示
すように、各気筒ごとにそのほぼ全域を下向きに
凸、すなわち、燃焼室１９に向かつて凹状にわん
曲する球面部１０として形成してあり、各球面部
１０は、シリンダヘツド１の長手方向において相
対向する各一対の保持台８，８によつて区切ら
れ、シリンダヘツド１の幅方向には、両側の側壁
３に連続し、上記の保持台６，７は球面部１０内
に連続して形成されている。

上記の球面部１０は、第３図に示すように、
吸，排気ポート１１，１２を画成するポート壁１
３によつて、シリンダブロツク１４にガスケツト
１５を介して取付けられるシリンダヘツド１の下
壁１６に結合されており、その結果、各ヘツドボ
ルト４の締付力は、各ボス部５に連続する球面部
１０からポート壁１３を介して下壁１６に伝達さ
れる。この下壁１６は、第２図および第４図に示
すようにその周囲で側壁３を介して上壁２に連結
される一方、シリンダブロツク１４の各シリンダ
１７のシリンダボアに該当する部分が上向きに凸
の凹部１８（第２図参照）として形成され、シリ
ンダ１７とともに燃焼室１９を形成している。上
記保持壁６，７の軸穴に弁ガイド２０，２１を介
して保持した吸気弁２２，排気弁２３の開閉作動
で、吸気ポート１１から燃焼室１９に吸気を供給
し、或いは排気ポート１２から排気ガスを外部に
排出する。

なお、第２図、第３図において、２４，２５は
夫々シリンダヘツド１、シリンダブロツク１４に
設けた冷却水通路で、第３図に示すように、両冷
却水通路２４，２５は一部においてガスケツト１
５に設けた連通穴２６を介して相互に連通され、
冷却水を一連に循環させるようにしている。

上記のように、上壁２を球面部１０として形成
した場合、第４図に示すように、球面の高くなつ
た部分において各ボス部５が球面部１０に連続
し、ヘツドボルト４による締付力は、ボス部５を
介して、球面部１０に伝達される。この場合、締
付力はボス部５の周囲にほぼ等分に分配される
が、球面部１０の中心部を考えると、この中心部
には、側壁３の内側に配置された４隅のボス部５
から締付力が均一に集中する結果、大きな締付力
が燃焼室１９の周方向において均一に分布して作
用し、この中心部に作用する大きな締付力はポー
ト壁１３を介して下壁１６に作用する。このた
め、下壁１６は各気筒の爆発、燃焼に際して燃焼
室１９内に発生する高い燃焼圧力に対抗して変位
しないように保持され、ガスケツト１５との間に
間隙を生ずることなく、燃焼室１９の周囲のガス
ケツト１５を均等に押圧してガスケツト１５のシ
ール性を向上させることができ、燃焼ガスの漏洩
や連通口２６から冷却水が漏洩することはない。

また、上記のように、上壁２を複数の球面部１
０で構成すれば、上壁２の剛性は総ての方向にお
いて大幅に向上するため、上壁２を薄肉とするこ
とができ、制振構造としても有利であり、とくに
球面部１０をシリンダヘツド１の幅方向において
側壁３に連続させれば、側壁３に対する支持剛性
を高めることができ、シリンダヘツド１の上側に
取付けるロツカーカバーの制振にとつてもきわめ
て有利な構造とすることができる。

さらに、上記球面部１０はオイル溜めとして使
用でき、シリンダヘツド１の長手方向に沿つて配
設されるカムシヤフト（図示せず）の潤滑に供す
ることができる。

なお、上記の実施例では、球面部１０の全面に
おいて等しい曲率半径としたが、例えば、シリン
ダヘツド１の長手方向と幅方向とで曲率半径を若
干異ならせる等必らずしも完全な球面とする必要
はない。

また、上記実施例ではシリンダヘツド１の上壁
２と下壁１６とをポート壁１３で接続したものに
ついて本発明を適用したが、この他、吸、排気弁
の弁軸を保持する保持壁と吸、排気ポートを形成
するポート壁とでシリンダヘツドの上壁と下壁と
を接続するものについても適用できることは言う
までもない。

以上の説明から明らかなように、本発明は、多
気筒エンジンのシリンダヘツドにおいて、上壁と
下壁をその周囲で連結する側壁の内側にヘツドボ
ルトを配置する一方、上壁を各気筒ごとに気筒の
周囲に配設されるヘツドボルトの近傍から燃焼室
へ向つて凹状にわん曲する複数の球面部で構成し
たことを特徴とするエンジンのシリンダヘツド構
造を提供するものである。

本発明によれば、各気筒のシリンダの周囲に配
設される各ヘツドボルトの締付力は、上壁の球面
構造を媒介として、燃焼室の中央部に向けて集中
的に、かつ均一に作用し、上壁と接続されている
剛性のある下壁の凹部は、大きな支持力で押圧保
持されるためその支持力がシリンダボア外周部の
シリンダブロツクとの合せ部（ガスケツト配設部
分）に対向する下壁部分に均等に作用し、過大な
燃焼圧力を受けて下壁が上向きに変形して、シリ
ンダボア外周部のヘツドボルト間に対応する部分
の面圧が低下するのを防止できるので、ガスケツ
トのシール性を向上することができる。また、上
壁の燃焼室中央に対応する部分へ向けてヘツドボ
ルトの締付力が集中的に作用し、上壁自体に剛性
を高めることができるので、上壁をそれだけ薄肉
とすることができ、シリンダヘツドの軽量化を図
ることができ、制振構造としても有利なものとす
ることができるといつた利点を得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例にかかるシリンダヘ
ツドの部分平面図、第２図、第３図は夫々第１図
のＡーＡ線、Ｂ−Ｂ線方向の断面図、第４図はヘ
ツドボルトの締付力の分配構造を示すシリンダヘ
ツドの要部斜視説明図である。 １……シリンダヘツド、２……上壁、４……ヘ
ツドボルト、５……ボス部、６，７……保持壁、
１０……球面部、１１，１２……吸、排気ポー
ト、１３……ポート壁、１４……シリンダブロツ
ク、１５……ガスケツト、１６……下壁、１９…
…燃焼室。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シリンダヘツドの上壁を、側壁と、各気筒の
   吸、排気ポートを形成するポート壁もしくは各気
   筒の吸、排気弁の弁軸を保持する保持壁および
   吸、排気ポートを形成するポート壁とによつて、
   各気筒の燃焼室を形成するシリンダヘツドの下壁
   における各シリンダボアと対向した上向きに凸形
   状の凹部に接続するとともに、上記側壁の内側
   で、かつ、各シリンダの外周に各シリンダを取り
   囲むように複数個のヘツドボルトを配置する一
   方、各シリンダのヘツドボルトによつて略囲まれ
   るシリンダヘツドの上壁を、上記各ヘツドボルト
   近傍から燃焼室へ向つて凹状にわん曲する球面構
   造としたことを特徴とするエンジンのシリンダヘ
   ツド構造。