JPH09203241A - 耐震壁 - Google Patents

耐震壁

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JPH09203241A
JPH09203241A JP1417896A JP1417896A JPH09203241A JP H09203241 A JPH09203241 A JP H09203241A JP 1417896 A JP1417896 A JP 1417896A JP 1417896 A JP1417896 A JP 1417896A JP H09203241 A JPH09203241 A JP H09203241A
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章 多賀
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輝武 今村
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茂 吉野
Naohiro Yoshida
直弘 吉田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水平荷重によるせん断座屈を防止でき、しか
もせん断力に対する耐力と水平方向の曲げ剛性の調整が
容易にできる耐震壁を提供する。 【構成】 建物の骨組を構成する上下の大梁2に接合さ
れた鋼板3に上下方向に延びる複数のスリット4を上下
2段に分けて設けてなる。鋼板3の中間部分がスリット
4によって複数の柱状部3aに分割されるため、せん断
座屈耐力に対して曲げ耐力が小さくなり、鋼板3のせん
断座屈を防止できる。スリットの幅、長さ、間隔等を変
えることで耐力と剛性を容易に調整することができるの
で、骨組の振動特性を考慮した構造設計を容易に行うこ
とができる。構造単純、製造容易であり、鋼板壁である
ため施工性も良い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ビルディングの
骨組に取り付けられる耐震壁に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ビルディングの骨組は、高張力鋼
や高強度コンクリートなどの構造用新素材の使用によ
り、骨組の構成部材の軽量化、スレンダー化が図られて
いる。そして、構成部材のスレンダー化に伴い骨組の水
平剛性が低下するため、その対策の一つとして、骨組の
上下の梁の間に耐震壁が設けられている。
【0003】耐震壁には、水平力が比較的小さな場合は
骨組の振動特性から要求される剛性を保って骨組の層間
変位を抑制すると同時に、大地震の発生時など過度な水
平力が作用する場合には、安定して振動エネルギーを吸
収することが要求される。
【0004】そこで、このような要求を満たすべく各種
の耐震壁構造が開発され、主に、RC耐震壁と鋼板耐震
壁とが実用化されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、RC耐震壁
は、水平荷重によるせん断力に対する耐力と水平方向の
曲げ剛性の調整が困難で、降伏後に安定した復元力特性
を求めるのは容易でない。また、構造上重量が過大にな
るというな欠点がある。改良型としてRC耐震壁の各所
にスリットを設けたものも開発されているが、施工性が
非常に悪く、また重量が過大という欠点も改善されな
い。
【0006】一方、鋼板耐震壁の場合は、重量及び施工
性に関しての問題は改善されるが、安定した復元力を得
るためには、せん断座屈を防止する必要があり、壁面全
体に格子状などの補強リブを設ける必要があるため、生
産性が悪く、製造コストが高いという欠点がある。ま
た、耐力と水平剛性の調整が困難であるという欠点もあ
る。
【0007】本発明は、上記従来技術の欠点を解消する
ために創案されたものであり、単純な構造でせん断座屈
を防止でき、水平荷重によるせん断力に対する耐力と水
平方向の曲げ剛性の調整が容易にできる耐震壁を提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
建物の骨組を構成する上下の梁を鋼板で連結してなる耐
震壁において、前記鋼板には上下方向に延びるスリット
が上下2段に分けて設けられていることを特徴としてい
る。
【0009】この請求項1記載の発明によれば、耐震壁
を構成する鋼板の上下方向における中間部分が上段側の
スリットと下段側のスリットとの間の部分を残して水平
方向に複数に分割されるため、スリットが設けられてい
ない場合と比較してせん断座屈耐力に対して曲げ耐力が
小さくなり、鋼板のせん断座屈を防止できる。したがっ
て、鋼板壁面に補強リブを設けることなく、せん断座屈
を防止し、降伏後の安定した復元力特性を得ることがで
きるようになる。
【0010】また、鋼板の板厚や、スリットの幅、長
さ、数、水平方向におけるスリット同士の間隔、上段の
スリットと下段のスリットとの間隔等を変えることによ
り、耐力と剛性を容易に調整することができるので、骨
組の振動特性を考慮した構造設計を容易に行うことがで
きる。上段側のスリットと下段側のスリットとの間の鋼
板部分は分割されずに水平方向(左右方向)に延びる一
体的な鋼板壁要素として残されているので、左右のスリ
ット間隔を狭くした場合でも、鋼板耐震壁の耐力及び剛
性をさほど低下させることなく、安定した復元力特性を
得ることができる。また、構造が極めて単純であるため
製造が容易であり、鋼板壁であるため施工性も良い。
【0011】請求項2記載の発明は、建物の骨組を構成
する上下の梁を鋼板で連結してなる耐震壁において、前
記鋼板には上下方向に延びるスリットが水平方向に千鳥
状に並べて設けられていることを特徴としている。
【0012】この請求項2記載の発明によれば、耐震壁
を構成する鋼板の上下方向における中間部分が水平方向
に千鳥状に配置された複数のスリットによって互い違い
に複数に分割されるため、スリットが設けられていない
場合と比較してせん断座屈耐力に対して曲げ耐力が小さ
くなり、鋼板のせん断座屈を防止できる。したがって、
鋼板壁面に補強リブを設けることなく、せん断座屈を防
止し、降伏後の安定した復元力特性を得ることができる
ようになる。
【0013】また、鋼板の板厚や、スリットの幅、長
さ、数、水平方向におけるスリット同士の間隔、等を変
えることにより、耐力と剛性を容易に調整することがで
きるので、骨組の振動特性を考慮した構造設計を容易に
行うことができる。スリットが千鳥状に互い違いに配置
されているので、細かい間隔でスリットを並設した場合
でも、鋼板耐震壁の耐力及び剛性を低下させることな
く、安定した復元力特性を得ることができる。また、こ
の場合も構造が極めて単純であるため製造が容易であ
り、鋼板壁であるため施工性も良い。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態につ
いて図面を参照して説明する。
【0015】[第1の実施の形態]図1はこの発明の第
1の実施の形態における耐震壁の構造を示す正面図であ
る。同図において、1、1はビルディングの骨組を構成
する柱、2、2は柱1、1に掛け渡して水平に設けられ
た大梁であり、上下の大梁2、2の間に矩形状の鋼板3
を取り付けることにより耐震壁が形成されている。柱
1、1には、高強度材料を用いた遠心成形コンクリート
充填鋼管が使用されている。大梁2、2には、H形鋼材
が使用されている。鋼板3は、大梁2、2に対し溶接又
はボルト固定等の方法で接合保持されており、柱1、1
には接合されていない。
【0016】鋼板3には、上下方向に延びるn個(この
例では16個)のスリット4、4、・・が水平方向に等
間隔に、上下2段に配置されており、これにより鋼板3
の上下方向中間部の上段側と下段側がそれぞれn/2+
1個(この例では9個)の柱状(短冊状)部3a,3
a、・・に分割されている。スリット4、4、・・は、
工場での加工により形成されたものである。
【0017】上記のように、耐震壁を構成する鋼板3の
上下方向中間部がスリット4、4、・・により分割され
ていることにより、スリット4、4、・・が設けられて
いない場合と比較してせん断座屈耐力に対して曲げ耐力
が小さくなり、鋼板のせん断座屈を防止できる。したが
って、せん断座屈を防止し降伏後の安定した復元力特性
を得ることができるようになり、大地震などにより過大
な水平荷重が作用した場合でも、安定して振動エネルギ
ーを吸収し、優れた耐震効果を発揮する。
【0018】そして、この実施の形態の耐震壁によれ
ば、鋼板3の板厚tや、スリット4、4、・・の長さ
l、幅ts、数n、スリット同士の左右の間隔b及び上
下の間隔d等を変えることにより、水平荷重によるせん
断力に対する耐力と水平方向の曲げ剛性を容易に調整す
ることができる。その結果、骨組の振動特性を考慮した
構造設計を容易に行うことができるようになる。
【0019】例えば、鋼板3の各柱状部3a(点線によ
るハッチングを施した部分)の耐力Qは次式(1)、
(2)により計算できるので、各柱状部3aの耐力と、
鋼板3の上下両端部(スリットが設けられていない部
分)の耐力とに基づいて、鋼板3全体としての耐力を計
算することができる。
【0020】
【数1】
【0021】ここで、σy は鋼材の降伏応力度、My は
降伏曲げ耐力である。
【0022】また、鋼板3の剛性(弾性)Kに関して
は、柱状部3a、3a、・・の曲げ剛性Kb、柱状部3
a、3a、・・のせん断剛性KG1、鋼板3の上下両端
部F(スリットが設けられていない部分)のせん断剛性
KG2、鋼板3の中間部(一体壁部)のせん断剛性KG
3を求めることにより、1/(1/Kb+1/KG1+
1/KG2+1/KG3)として概算できる。
【0023】特に、この実施の形態の耐震壁では、スリ
ット4、4、・・を上下2段に分けて配置し、上下のス
リット間に一体壁部を残すようにしたので、左右のスリ
ット4、4、・・同士の間隔bを狭くして耐震壁の復元
力特性の向上を図った場合でも、耐震壁としての鋼板3
の耐力及び剛性をさほど低下させることなく、安定した
復元力特性を得ることができる。したがって、この実施
の形態の耐震壁を用いることにより、経済性、居住性に
優れた建築が可能となる。
【0024】この実施の形態の耐震壁は、上記のように
優れた特性を持つと同時に、構造が極めて単純であるた
め製造が容易であり、従来の格子状リブ付耐震鋼板と比
較して製造コストを安くできる。また、工場で制作する
ため品質が安定し、現場での取付が簡単で施工性が非常
に良い。そして、この耐震壁の使用により、例えば高強
度材料でスレンダーになった遠心成形コンクリート充填
鋼管柱の特性を十分に引き出すことができる。この耐震
壁は、中層建物から超高層建物にいたる広範な建築物の
防振要素として適用できる。
【0025】[第2の実施の形態]図2はこの発明の第
2の実施の形態における耐震壁の構造を示す正面図であ
る。
【0026】この実施の形態の耐震壁を構成する鋼板3
には、上下方向に延びるn個(この例では8個)の同じ
長さのスリット5a、5b、・・、5hが水平方向に等
間隔に、1つ置きに上下させて千鳥状に配置されてい
る。これにより鋼板3の上下方向中間部は、相隣設する
スリット間(5aと5bとの間、5bと5cとの間、・
・、5gと5hとの間)に位置する7つの柱状部3p,
3p、・・(図2中、点線によるハッチングを施した部
分)と、1つ置きに設けられたスリット間(5aと5c
との間、5bと5dとの間、・・、5fと5hとの間)
及び左右から2番目のスリット5b、5gと鋼板3の左
右両端との間に位置する8つの柱状部3q、3q、・・
(図2中、一点鎖線によるハッチングを施した部分)
と、左右両端のスリット5a、5hと鋼板3の左右両端
との間に位置する2つの柱状部3r、3r(図2中、二
点鎖線によるハッチングを施した部分)とに分割されて
いる。スリット4、4、・・は、工場での加工により形
成されたものである。
【0027】上記のように、耐震壁を構成する鋼板3の
上下方向中間部がスリット4、4、・・により分割され
ていることにより、スリット4、4、・・が設けられて
いない場合と比較してせん断座屈耐力に対して曲げ耐力
が小さくなり、鋼板のせん断座屈を防止できる。したが
って、せん断座屈を防止し降伏後の安定した復元力特性
を得ることができるようになるため、大地震などにより
過大な水平荷重が作用した場合でも、安定して振動エネ
ルギーを吸収し、優れた耐震効果を発揮する。
【0028】そして、この実施の形態の耐震壁によれ
ば、鋼板3の板厚tや、スリット4、4、・・の長さ
l、幅ts、数n、隣接するスリット同士の間隔b及び
上下方向の位置ずれ量g、等を変えることにより、水平
荷重によるせん断力に対する耐力と水平方向の曲げ剛性
を容易に調整することができる。その結果、骨組の振動
特性を考慮した構造設計を容易に行うことができるよう
になる。
【0029】例えば、鋼板3の耐力に関しては、各柱状
部3p、3q、3rのそれぞれの耐力と、鋼板3の上下
両端部F(スリットが設けられていない部分)の耐力と
に基づいて、鋼板3全体としての耐力を計算することが
できる。
【0030】また、鋼板3の剛性(弾性)Kに関して
は、鋼板3の柱状部3p、3q、3rが設けられている
部分の曲げ剛性Kbおよびせん断剛性MG1、鋼板3の
上下両端部F(スリットが設けられていない部分)のせ
ん断剛性MG2を求めることにより、1/(1/Kb+
1/MG1+1/MG2)として概算できる。
【0031】この実施の形態の耐震壁では、鋼板3の中
間部を複数の柱状部3p、3q、3rに分割するスリッ
ト4、4、・・を水平方向に等間隔に千鳥状に配置した
ので、スリット4、4、・・同士の間隔bを狭くして復
元力特性の向上を図った場合でも、鋼板耐震壁の耐力及
び剛性を低下させることなく、安定した復元力特性を得
ることができる。したがって、この実施の形態の耐震壁
を用いることにより、経済性、居住性に優れた建築が可
能となる。
【0032】この実施の形態の耐震壁は、上記のように
優れた特性を持つと同時に、構造が極めて単純であるた
め製造が容易であり、従来の格子状リブ付耐震鋼板と比
較して製造コストを安くできる。また、工場で制作する
ため品質が安定し、現場での取付が簡単で施工性が非常
に良い。そして、この耐震壁の使用により、例えば高強
度材料でスレンダーになった遠心成形コンクリート充填
鋼管柱の特性を十分に引き出すことができる。この耐震
壁は、中層建物から超高層建物にいたる広範な建築物の
防振要素として適用できる。
【0033】なお、この発明に係る耐震壁は以上の実施
の形態に限定されるものではなく、窓や戸口が設けられ
る部分に耐震壁を設ける場合には、例えば図3に示すよ
うに、スリット付き鋼板3を分割したものを窓ユニット
6の両側に配置するようにしても、上記と同様の効果が
得られる。
【0034】また、この発明の耐震壁における柱及び梁
の構造種別は上述の構造にとらわれず、鉄骨鉄筋コンク
リート造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造及び各種合成構
造、木造にも使用できる。
【0035】
【発明の効果】以上要するに、この発明は以下のような
優れた効果を奏するものである。
【0036】請求項1記載の発明にあっては、耐震壁を
構成する鋼板に上下方向に延びるスリットを上下2段に
分けて設けたことにより、単純な構造でせん断座屈を防
止でき、水平荷重によるせん断力に対する耐力と水平方
向の曲げ剛性の調整が容易にできる耐震壁を提供するこ
とができる。
【0037】請求項2記載の発明にあっては、耐震壁を
構成する鋼板に上下方向に延びるスリットを水平方向に
千鳥状に並べて設けたことにより、単純な構造でせん断
座屈を防止でき、水平荷重によるせん断力に対する耐力
と水平方向の曲げ剛性の調整が容易にできる耐震壁を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態における耐震壁の
構造を示す正面図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態における耐震壁の
構造を示す正面図である。
【図3】この発明の耐震壁の別の取付形態を示す正面図
である。
【符号の説明】
1 柱 2 大梁(梁) 3 鋼板 4 スリット 5a〜5g スリット 6 窓ユニット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 E04B 2/56 605 E04B 2/56 605Z 605J 611 611B 632 632B 632C 632H 632M (72)発明者 多賀 章 東京都千代田区富士見二丁目10番26号 前 田建設工業株式会社内 (72)発明者 今村 輝武 東京都千代田区富士見二丁目10番26号 前 田建設工業株式会社内 (72)発明者 吉野 茂 東京都千代田区富士見二丁目10番26号 前 田建設工業株式会社内 (72)発明者 吉田 直弘 東京都千代田区富士見二丁目10番26号 前 田建設工業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 建物の骨組を構成する上下の梁を鋼板で
    連結してなる耐震壁において、前記鋼板には、上下方向
    に延びるスリットが上下2段に分けて設けられているこ
    とを特徴とする耐震壁。
  2. 【請求項2】 建物の骨組を構成する上下の梁を鋼板で
    連結してなる耐震壁において、前記鋼板には、上下方向
    に延びるスリットが水平方向に千鳥状に並べて設けられ
    ていることを特徴とする耐震壁。
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