JPH09169653A - キチン止血剤 - Google Patents

キチン止血剤

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JPH09169653A
JPH09169653A JP7334615A JP33461595A JPH09169653A JP H09169653 A JPH09169653 A JP H09169653A JP 7334615 A JP7334615 A JP 7334615A JP 33461595 A JP33461595 A JP 33461595A JP H09169653 A JPH09169653 A JP H09169653A
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chitin
hemostatic agent
hemostatic
bleeding
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JP7334615A
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Inventor
Keiji Okada
圭史 岡田
Ryoichi Tsuruya
良一 鶴谷
Nobuyuki Tanimoto
信行 谷本
Masaya Yoshimura
昌也 吉村
Akihiko Hasegawa
明彦 長谷川
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Unitika Ltd
Original Assignee
Unitika Ltd
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    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61LMETHODS OR APPARATUS FOR STERILISING MATERIALS OR OBJECTS IN GENERAL; DISINFECTION, STERILISATION OR DEODORISATION OF AIR; CHEMICAL ASPECTS OF BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES; MATERIALS FOR BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES
    • A61L2400/00Materials characterised by their function or physical properties
    • A61L2400/04Materials for stopping bleeding

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  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の止血剤では対応できないような外科的
手術における出血部位や血液が湧き出る出血部位に対し
ても、優れた止血効果を示す止血剤を提供する。 【解決手段】 配向度が50%〜98%のキチン繊維からな
るキチン止血剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はキチン止血剤に関す
るものであり、さらに詳しくは外科的手術における切開
創や切除創及び肝臓や膵臓等の臓器実質や関節手術にお
ける膝蓋骨等の骨切り面からの出血に対して効果的な止
血作用を有するキチン止血剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、外科的手術における各種臓器等か
らの出血は大きな問題である。これらの出血に対する止
血方法としては、圧迫、結紮、縫合、電気凝固法、レー
ザー凝固法、赤外線凝固法、冷凍法の他、種々の止血剤
を用いる方法が適用されている。動脈性の激しい出血の
場合、結紮、縫合等による止血が常法であるが、結紮、
縫合は出血部位が脆弱な場合や毛細血管等の微小血管か
らの滲み出るような出血には用いることができない。ま
た、電気凝固法、レーザー凝固法、赤外線凝固法、冷凍
法については、その有効性は認められているものの、い
ずれの方法を行う場合にも高価な装置を必要とし、また
出血部位が広い範囲に及ぶ際には使用しにくい点は否め
ない。圧迫止血は、細い血管からの出血には非常に有効
であるが、圧迫することが困難な狭い術野では使えず、
また、止血に比較的時間を要する等の問題点がある。そ
れ故、手術のように時間が限られる場合では、これらの
問題点を補い手術を円滑に行うため、種々の止血剤が用
いられているのが現状である。例えば、ゼラチンや微線
維性コラーゲンを原材料とする止血剤が市販されてい
る。ゼラチンはスポンジ状のものが市販されており、血
液を吸収することで膨化し、出血面に付着することによ
って止血効果を示すものである。酸化セルロースは綿状
のものが市販されており、血液に接すると血中のヘモグ
ロビンと強い親和力を有するため凝血塊を形成し、止血
に至るものである。微線維製コラーゲンはフラワータイ
プとシートタイプのものが市販されており、血液に接す
ると血小板を活性化し、活性化された血小板がコラーゲ
ンに付着し凝集塊を形成することで止血に至るものであ
る。また、特開昭63−211232号公報には、キチン又はキ
チン誘導体の塩酸塩に止血作用のあることが記載されて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
止血剤は、圧迫できない出血部位等に付与した場合、湧
き出る血液で止血剤が付着する前に洗い流されてしまう
ため、その止血効果を十分に発揮することができない等
の問題点を有しており、迅速な止血を行うためには以前
として改良の余地があった。本発明は、従来の止血剤で
は対応できないような外科的手術における出血部位や血
液が湧き出る出血部位に対しても、優れた止血効果を示
すキチン止血剤を提供することを目的とするものであ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、このよう
な課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、配向度
が50%〜98%のキチン繊維からなる止血剤を出血部位に
適用することにより、止血剤が急速にゲル化し、出血部
位に強く付着し、湧き出るような血液でも洗い流され
ず、迅速で確実な止血を行うことができることを見いだ
し、本発明に到達したものである。すなわち、本発明
は、配向度が50%〜98%のキチン繊維からなるキチン止
血剤を要旨とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明におけるキチンとは、甲殻
類及び甲虫類等の外骨格を塩酸処理ならびにカ性ソーダ
処理することにより脱石灰、脱蛋白されて得られるポリ
−N−アセチル−D−グルコサミン及びその誘導体をい
う。誘導体としては脱アセチル化キチンおよびキトサン
等が挙げられる。
【0006】キチンの脱アセチル化はキチンをアルカリ
処理するという周知の方法により行うことができる。こ
の際、使用するアルカリ溶液の濃度、処理温度、処理時
間等を適宜変えることにより脱アセチル化度は容易に調
整することが可能である。本発明におけるキチンの好ま
しい脱アセチル化度は20%〜90%であり、さらに好まし
くは40%〜85%であり、最も好ましくは50%〜70%であ
る。
【0007】脱アセチル化度が20%未満では、出血部位
に適用してもゲル化しにくく、十分な止血効果が得られ
ないことがあり、90%を越えると、出血部位に適用して
も血液によって溶解されることがある。
【0008】ここで、脱アセチル化度とは以下に示す方
法で測定した値をいう。試料約2gを2N−塩酸水溶液
200ml中に投入し、室温で30分間撹拌する。次に、ガラ
スフィルターで濾過し、塩酸水溶液を除去した後、200m
l のメタノール中に投入して30分間撹拌し、ガラスフィ
ルターで濾過後、フレッシュなメタノール 200ml中に投
入し、30分間撹拌する。このメタノールによる洗浄操作
を4回繰り返した後、風乾及び真空乾燥する。乾燥後、
約 0.2gを精秤し、100ml の三角フラスコに取り、イオ
ン交換水40mlを加えて30分間撹拌する。次いで、この溶
液をフェノールフタレインを指示薬として 0.1N−カ性
ソーダ水溶液で中和滴定する。脱アセチル化度(A)は
次式によって求められる。
【0009】A(%)=〔(2.03×f×b×10-2)/
(a+0.055 ×f×b×10-2)〕×100
【0010】ただし、aは試料の重量(g)、fは 0.1
N−カ性ソーダ水溶液の力価、bは0.1N−カ性ソーダ
水溶液の滴定量(ml)である。
【0011】キチン繊維を製造するには、キチンの溶液
をステンレスネット等で濾過して未溶解分や異物を除去
した後、ギヤーポンプ等で輸送、計量し、ノズルから凝
固液中に吐出して凝固させればよい。凝固した糸条は、
例えば、回転ローラー等で2〜50m/min 程度の速度で
引き取り、ワインダー等によって捲き取り、さらに洗浄
を行って、糸条中に含まれる溶剤を十分除去した後、乾
燥させればよい。
【0012】キチン溶液を調製する際の溶剤としては、
キチンの脱アセチル化度が低い場合には、例えば、トリ
クロロ酢酸とハロゲン化炭化水素との混合溶液やジメチ
ルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンと塩化リチ
ウムとの混合溶液が用いられ、キチンの脱アセチル化度
が高い場合には、酢酸等の希酸の水溶液が用いられる。
【0013】また、凝固液としては、水、メタノール、
エタノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、
メチルエチルケトン等のケトン類等が好適に用いられる
が、廃液処理の点から水が好ましい。
【0014】キチンを溶解する溶媒の種類、キチン溶液
の濃度、凝固液の種類及び温度、ノズルからの吐出速
度、ローラーの引き取り速度を適宜変えることにより種
々の配向度のキチン繊維を製造することが可能である。
【0015】例えば、溶媒としてジメチルアセトアミド
と塩化リチウムとの混合溶液、キチン溶液の濃度を約10
重量%、凝固液として水、凝固液の温度を70〜80℃、吐
出速度を約10g/min 、ローラーの引き取り速度を約10
m/min にすることによって、配向度約90%のキチン繊
維を得ることができる。また、上記条件のうち、吐出速
度を約25g/min 、ローラーの引き取り速度を約20m/
min とすることによって、配向度約98%のキチン繊維を
得ることができる。
【0016】本発明のキチン止血剤を構成するキチン繊
維の配向度は、ゲル化した際のゲル強度と密接な関わり
がある。配向度が高いものは、ゲル強度も高くなるの
で、優れた止血効果を発揮し、また、止血に要する時間
も短く、手術時間を短縮化することができるので、より
好ましい。
【0017】本発明のキチン止血剤を構成するキチン繊
維の配向度は50%〜98%であり、好ましくは60%〜98%
であり、さらに好ましくは70%〜98%である。配向度が
50%未満では、キチン止血剤がゲル化した際のゲル強度
が弱くなり、湧き出る血液で流されることがあり、配向
度が98%を越えると、キチン止血剤の吸水力が低下し、
ゲル化に要する時間が長くなるため、ゲル化する前に流
されることがある。
【0018】ここで、配向度とは以下に示す方法で測定
した値をいう。X線回折装置を用いてブラッグ角(2
θ)における試料の半価幅(α)を求める。配向度
(B)は次式により求められる。
【0019】B(%)=〔( 180−α)/ 180〕×100
【0020】X線回折装置としては、例えば、 MXP−3
(マックサイエンス製)等を用いることができる。
【0021】本発明のキチン止血剤に用いるキチンは脱
アセチル化されたアミノ基が塩酸、硝酸、硫酸、リン酸
等の酸類と塩を形成していることが好ましく、これらの
中でも塩酸塩は吸水倍率が高いので、特に好ましい。こ
のようなキチンの塩を形成する方法としては、例えば、
キチン繊維を酸で処理して塩にする方法や、キチン繊維
を塩化水素等のガスに暴露する方法等が挙げられる。キ
チン繊維を酸で処理して塩にするには、例えば、キチン
繊維を0.1 〜10Nの酸に浸漬した後、濾過を行い、余分
な酸を除去した後、メタノールやエタノール等のアルコ
ール類で洗浄し、乾燥させればよい。
【0022】本発明のキチン止血剤の形態は特に限定さ
れるものではなく、使用する出血部位に応じて好適な形
態を取ればよいが、出血面は凸凹した不整な面が多いこ
とを勘案すると、これらの出血面にも良好に密着する綿
状体やフェルト状体(厚手のシート状)が好ましい。
【0023】本発明のキチン止血剤を綿状体に作製する
には、キチンの繊維を適当な繊維長にカットし、アルカ
リを用いて脱アセチル化処理を施した後、酸で処理し、
余分な酸を除去、乾燥後、解繊機で解繊し嵩高い綿状に
加工すればよい。解繊機で解繊することにより、綿状体
の嵩比重を小さくして、嵩高い止血剤を得ることができ
るだけでなく、綿状体を構成するキチン繊維の分布を均
一にすることができるので、得られた止血剤は使用しや
すくなり、また、出血部位に適用した場合にも均一にゲ
ル化しやすくなる。綿状体の嵩比重は、適宜調整すれば
よいが、好ましくは 0.005〜0.02g/cm3である。
【0024】解繊機としては、金属ブラシ、ミキサー、
メッシュ付きエアー分散機、オープナー、カード機、ミ
ル等を用いることができる。解繊機で解繊する条件とし
ては、例えば、オープナーを用いた場合、ディッシュプ
レートとスパイクローラーの間隔、デリベリローラーの
回転数と針の太さ、スパイクローラーの回転数と針の太
さ及び解繊時間を調整することにより、解繊の度合いを
コントロールすることができる。カード機を用いた場
合、用いるカード(太繊維用、細繊維用)を適宜交換す
ることにより、得られた綿状体の嵩高さを変えることが
できる。
【0025】本発明のキチン止血剤をフェルト状体にす
るには、上記綿状体を作製する操作において、解繊機で
解繊する代わりに、プレス器にて加圧成型すればよい。
プレス器としては、例えば、シートマシン(熊谷理機工
業社製)等を用いることができる。プレス器にて加圧成
形する際、例えば、加圧時間、加圧圧力等を適宜変更す
ることにより、任意の厚みのシートを作製することが可
能である。
【0026】本発明におけるキチン止血剤のうち、吸水
倍率が高いものは、少量の止血剤で出血部位をカバーす
ることが可能であり、また、出血部位に付与した際のゲ
ル化速度も速くなるので、迅速な止血を行う場合に好適
である。本発明の止血剤の吸水倍率は、好ましくは50〜
300倍である。吸水倍率が50倍未満であれば、使用する
止血剤の量を増やさなければ十分な止血が得られにくい
場合があり、少量の止血剤しか使用できない狭小な出血
部位に使用しにくいことがある。吸水倍率が 300倍を越
えれば、止血剤の一部がゲル状にならず、血液に溶解す
ることがある。
【0027】ここで、吸水倍率とは以下に示す方法で測
定した値をいう。65℃で3時間乾燥した試料を 0.2g秤
量しビーカーに入れ、これに蒸留水 100mlを注ぎ5分間
放置する。ティーバッグを1分間蒸留水に浸漬し、次い
で1分間水切りし、重量を測定する(Xgとする)。吸
水した試料をティーバッグに入れ、5分間水切りし、重
量を測定する(Ygとする)。次式にて吸水倍率を求め
る。
【0028】吸水倍率=(Y−X)/0.2
【0029】本発明におけるキチン止血剤が吸水しゲル
化した際のゲル強度は、好ましくは2〜30(g/cm2
である。ゲル強度は高いほど望ましい。実際の止血の際
には感染の危険性を出来るだけ低くするため、付与した
止血剤のうち止血に関与していない余剰分を止血操作終
了後、洗い流して除去することが望ましいが、ゲル強度
が2(g/cm2 )未満では、余剰な止血剤を洗い流す
際、止血に関与している部分の止血剤も一緒に流されて
しまい、再出血を起こすこともある。また、ゲル強度が
30(g/cm2 )を越えると、ゲル化に要する時間が長く
なり、完全にゲル化する前に、止血剤の一部が血液で流
される場合がある。
【0030】ここで、ゲル強度とは、吸水してゲル化し
た液を排除するのに要した力(g)を単位面積当たり(c
m2) で表示したものであり、以下に示す方法で測定した
値をいう。底部密閉型の円筒容器に試験液(ゲル化した
試料)を入れ、この上に円筒よりやや小さい円盤を乗
せ、この円盤に荷重を掛けて円盤が規定の距離 (3cm)
迄沈むのに要する荷重を読みとり、円盤の接液面積で除
した値をゲル強度とする。
【0031】本発明の止血剤は脳神経外科、整形外科、
呼吸器外科、消化器外科、形成外科、心臓血管外科、耳
鼻咽喉科、肛門外科、泌尿器科、産婦人科、口腔外科等
の通常外科的手術に伴う出血部位に用いることが可能
で、主として、胃、食道、肝臓、膵臓、脾臓、胸骨剥離
面、仙骨前面、脊椎、脊髄、小腸、大腸、胆のう、腎
臓、心臓、膀胱、子宮、肛門、硬膜表面、硬膜近傍骨
部、大腿骨や脛骨、膝蓋骨等の関節手術における骨切り
面等に用いることができる。
【0032】本発明の止血剤を上記の出血部位に付与す
ると、急速にゲル化し、出血部位に強く付着するので、
湧き出るような出血に対しても短時間で確実な止血を行
うことができる。
【0033】また、止血完了後、感染の危険性を少なく
するため、余剰の止血剤を洗浄により除去するが、洗浄
に用いる液としては、例えば、生理食塩液等が挙げられ
る。
【0034】本発明の止血剤は、止血完了後、余剰の止
血剤を洗浄により除去する際、止血に関与している部分
の止血剤が余剰の止血剤と共に流されることがないの
で、再出血を起こさず、極めて好適である。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的
に説明する。なお、配向度はX線回折装置 MXP−3(マ
ックサイエンス製)を用いて測定した。
【0036】実施例1、実施例2、比較例1 キチン粉末(三栄工業株式会社製)をジメチルアセトア
ミドと塩化リチウムからなる溶媒に溶解し、キチン濃度
8重量%の溶液を得た。得られた溶液は1400メッシュの
ステンレスネットで濾過し、放置脱泡のうえタンクに入
れ加圧下でギヤーポンプにて輸送し、1000ホールのノズ
ル(直径0.04mm)から70℃の水中に12g/min の割合で
吐出して、11m/min の速度で回転ローラーに引き取
り、湿式紡糸を行った。得られた糸条を水で洗浄後、乾
燥することにより 0.8単糸デニールの繊維を作製した。
得られたキチン繊維の配向度を測定したところ90%であ
った。このキチン繊維を5mm長に細断後、30%のカ性ソ
ーダ水溶液中で 120℃にて1時間処理を行った。処理
後、中和、洗浄、乾燥を行って綿状体を得た。得られた
綿状体を構成するキチン繊維の脱アセチル化度は61%で
あった。この綿状体を2N塩酸溶液に20℃で30分間浸潰
した後、ブフナーロート及びアスピレータを用いて吸引
濾過し、メタノールを用いて10分間の洗浄を4回繰り返
した。30℃で24時間乾燥させた後、解繊機で嵩高処理を
行い、キチン繊維からなる綿状の止血剤を得た。得られ
た止血剤を構成するキチン繊維の配向度を測定したとこ
ろ86.7%であった(実施例1)。
【0037】実施例1において、放置脱泡後得られたキ
チン溶液を、窒素ガスを用いて爆気させた30℃の水中に
流し込み、キチンのフィブリルを作製した。得られたキ
チンのフィブリルの配向度を測定したところ48%であっ
た。このフィブリルを実施例1と同様にカ性ソーダ水溶
液及び塩酸溶液で処理後、洗浄、乾燥を行い、解繊機で
嵩高処理を行って綿状の止血剤を得た。得られた止血剤
を構成するキチンフィブリルの配向度を測定したところ
46.4%であった(比較例1)。
【0038】また、実施例1において、放置脱泡後得ら
れたキチン溶液を、口径3mmの注射器を用いて手圧によ
り60℃の水中に押し出し、凝固させた後、水で洗浄し、
乾燥することにより細いロッド状のキチン成形体を得
た。得られたキチン成形体を糸状に細断したものを5mm
長にカットし、上記と同様にカ性ソーダ水溶液及び塩酸
溶液で処理後、洗浄、乾燥を行い、解繊機で嵩高処理を
行って綿状の止血剤を得た。得られた止血剤を構成する
糸状キチンの配向度を測定したところ59%であった(実
施例2)。
【0039】上記方法により得られた配向度の異なる綿
状の止血剤の止血効果を以下に示す実験により確かめ
た。体重 5.8kgの雑種成犬の腹部を切開し肝臓を取り出
した後、縦1cm、横2cm、厚み1mmの切除創を3カ所に
作製し出血させた。それぞれの出血部位に実施例1の止
血剤、実施例2の止血剤、比較例1の止血剤をそれぞれ
35mg付与した。
【0040】比較例1の止血剤は湧き出る血液で洗い流
され、その止血効果を発揮することができなかった。実
施例1、実施例2の止血剤を付与した創では、止血剤が
急速にゲル化し、創に密着して止血効果を発揮した。ま
た、実施例1、実施例2の止血剤を創に付与してから止
血に要した時間は、それぞれ2分、10分であった。
【0041】次に、そのままの状態で30分間放置した
後、創の状態を観察したところ、実施例1、実施例2の
止血剤を付与した創は共に止血された状態を維持してお
り、再出血等は認められなかった。また、止血に関与し
ていない余剰な止血剤を、生理食塩水を用いて洗浄、除
去しても創は止血されたままであった。
【0042】以上の結果から,本発明の止血剤は、血液
が湧き出る創に対しても、優れた止血効果を示すことが
明らかである。また、本発明の止血剤を構成するキチン
繊維の配向度が高い方が短時間で止血できることも以上
の結果から明らかである。
【0043】実施例3、実施例4、比較例2 キチン粉末(三栄工業株式会社製)をジメチルアセトア
ミドと塩化リチウムからなる溶媒に溶解し、キチン濃度
7重量%の溶液を得た。得られた溶液は1400メッシュの
ステンレスネットで濾過し、放置脱泡のうえタンクに入
れ加圧下でギヤーポンプにて輸送し、1000ホールのノズ
ル(直径0.04mm)から80℃の熱水中に25g/min の割合
で吐出して、20m/min の速度で回転ローラーに引き取
り、湿式紡糸を行った。得られた糸条を水で洗浄後、乾
燥することにより 0.8単糸デニールの繊維を作製した。
得られたキチン繊維の配向度を実施例1と同様の方法に
より測定したところ98.3%であった。このキチン繊維を
5mm長に細断後、40%のカ性ソーダ水溶液中で 120℃に
て1時間処理を行った。処理後、中和、洗浄、乾燥を行
って綿状体を得た。得られた綿状体を構成するキチン繊
維の脱アセチル化度は69%であった。この綿状体を3N
塩酸溶液に20℃で30分間浸潰した後、ブフナーロート及
びアスピレータを用いて吸引濾過し、メタノールを用い
て10分間の洗浄を5回繰り返した。30℃で24時間乾燥さ
せた後、シートマシン(熊谷理機工業株式会社製)を用
いて 10kgf/cm2 で加圧成形し、キチンの繊維からなる
フェルト状の止血剤を得た。得られた止血剤を構成する
キチン繊維の配向度を測定したところ97.4%であった
(実施例3)。
【0044】次に、比較例1で解繊機にて解繊する前の
キチンのフィブリル状物を、実施例3と同様にシートマ
シンにて加圧成形し、シート状の止血剤を得た。得られ
た止血剤を構成するキチンフィブリルの配向度を測定し
たところ46.4%であった(比較例2)。
【0045】また、口径が1mmの注射器を用いる以外は
実施例2と同様の操作により作製した綿状の止血剤を、
実施例3と同様にシートマシンにて加圧成形し、シート
状の止血剤を得た。得られたシート状の止血剤を構成す
る糸状キチンの配向度を測定したところ68%であった
(実施例4)。
【0046】上記方法により得られた配向度の異なるシ
ート状の止血剤の効果を、実施例1、実施例2、比較例
1と同様の実験により確かめた。それぞれの出血部位に
実施例3の止血剤、実施例4の止血剤、比較例2の止血
剤を35mg付与した。
【0047】比較例2の止血剤は、比較例1の止血剤を
付与したときと同様に、湧き出る血液で洗い流され、そ
の止血効果を発揮することができなかった。実施例3、
実施例4の止血剤を付与した創では、止血剤が急速にゲ
ル化し、創に密着して止血効果を発揮した。また、実施
例3、実施例4の止血剤を創に付与してから止血に要し
た時間は、それぞれ1分、5分であった。
【0048】次に、そのままの状態で30分間放置した
後、創の状態を観察したところ、実施例3、実施例4の
止血剤を付与した創は共に止血された状態を維持してお
り、再出血等は認められなかった。また、止血に関与し
ていない余剰な止血剤を生理食塩水を用いて洗浄、除去
しても創は止血されたままであった。
【0049】以上の結果から,本発明の止血剤は、血液
が湧き出る創に対しても、優れた止血効果を示すことが
明らかである。また、本発明の止血剤を構成するキチン
繊維の配向度が高い方が短時間で止血できることも以上
の結果から明らかである。
【0050】
【発明の効果】本発明の止血剤は、外科的手術における
出血部位や血液が湧き出る出血部位に対しても、優れた
止血効果を示す。また、圧迫することが不可能な部位で
も、急速にゲル化することにより短時間に止血を完了す
ることが可能である。
フロントページの続き (72)発明者 吉村 昌也 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内 (72)発明者 長谷川 明彦 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配向度が50%〜98%のキチン繊維か
    らなるキチン止血剤。
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