JPH10337302A - 鼓膜欠損閉鎖促進材及びその製造方法 - Google Patents

鼓膜欠損閉鎖促進材及びその製造方法

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JPH10337302A
JPH10337302A JP9148910A JP14891097A JPH10337302A JP H10337302 A JPH10337302 A JP H10337302A JP 9148910 A JP9148910 A JP 9148910A JP 14891097 A JP14891097 A JP 14891097A JP H10337302 A JPH10337302 A JP H10337302A
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chitin
tympanic membrane
nonwoven fabric
eardrum
closure
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Akihiko Hasegawa
明彦 長谷川
Keiji Okada
圭史 岡田
Masaya Yoshimura
昌也 吉村
Nobuyuki Tanimoto
信行 谷本
Ryoichi Tsuruya
良一 鶴谷
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Unitika Ltd
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Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた鼓膜再生機能を有し、かつ簡便な操作
で使用することができる鼓膜欠損閉鎖促進材及びその製
造方法を提供する。 【解決手段】 バインダー溶液とキチン繊維から形成さ
れた不織布からなることを特徴とする鼓膜欠損閉鎖促進
材、及びバインダー溶液中にキチン繊維を分散させた
後、該分散液を抄紙することを特徴とする鼓膜欠損閉鎖
促進材の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鼓膜欠損閉鎖促進材
に関するものであり、さらに詳しくは、外傷による鼓膜
穿孔や耳科手術における切開創等の鼓膜欠損部に対して
用いる鼓膜欠損閉鎖促進材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鼓膜は聴覚器官の一部分であり、外耳道
と鼓室との間にはさまれた中胚葉成分から形成されてい
るが、これは経時的に徐々に薄くなり、鼓室の外側壁の
大部分を形成するようになる。また、鼓膜は鼓室と外耳
道を分けている薄い緊張性の膜であり、外耳と中耳の境
界を構成している。鼓膜の組織は、外側が外胚葉(外鰓
弓の陥凹)に被われ、内側が内胚葉(耳管上皮)に被わ
れており、3層より成る。外側は重層扁平上皮で外耳道
の皮膚の続きであり、中層は線維束、内側は単層扁平上
皮で中耳粘膜の一部である。
【0003】鼓膜穿孔とは、鼓膜に裂傷や穿孔等の欠損
を生ずる症状である。その原因としては、耳かき・マッ
チの軸・鉛筆や外耳道異物等による直接的(direct)な
ものと、平手打ち・爆発による外耳道内気圧の瞬間的激
変や耳管通気損傷・破裂による間接的(indirect)なも
のに分けられる。また、中耳手術等の耳内手術の際には
鼓膜を切開して手術操作を行うため、必然的に鼓膜が欠
損する。さらに、慢性中耳炎治癒後の後遺症として鼓膜
に穿孔が生じることもある。上記のごとく鼓膜の損傷を
一括して、本発明では鼓膜欠損と呼称する。
【0004】欠損した鼓膜は一般的には自然に再生する
ものである。再生を促進するために辺縁を三塩化酢酸や
プロタルゴール液等で腐食させるが、既に縮小しなくな
っていると判定される場合は、鼓膜形成術で閉鎖する
か、または閉鎖材を用いて欠損部の閉鎖を行う。鼓膜形
成術は鼓室内病変がない場合に行うものである。これ
は、鼓膜欠損部を移植組織片(皮膚、静脈片、側頭筋膜
等)で塞ぐか、鼓膜全体を移植組織片で置き換える方法
である。しかし、手術に対して消極的な患者も少なから
ず存在し、安易に行えるものではない。被覆材により閉
鎖する方法では、被覆材が異物の侵入を防止し、また、
鼓膜がその表面に沿って再生する足場を提供することが
できる。このような鼓膜穿孔の閉鎖には、従来より種々
の材料が使用されてきた。19世紀より綿、ガーゼ片、ゴ
ム膜やゴム球、紙片、コロジオン膜、卵膜等が使用され
ており、今世紀に入ってはセロファン、ポリテトラフル
オロエチレン、シリコーン膜、コラーゲン、フィブリン
膜等の天然由来物の加工品や人工材料が使用され始め
た。生体由来材料としては、自家移植片として耳後部・
外耳道の皮膚や口唇粘膜、骨膜、側頭筋膜、静脈弁、脂
肪組織、鼻中隔軟骨膜と軟骨、鼓膜、脳硬膜等の自家組
織等があり、異種移植片としては豚の膀胱、魚の浮き
袋、子ウシの腹膜や筋膜、凍結乾燥豚皮等がある。
【0005】このように、鼓膜欠損閉鎖促進材として各
種の材料が使用されてきた。特に今世紀後半に使用され
始めた生体由来物は、その生体親和性及び創傷治癒促進
効果を利用して、元々外傷に対する被覆材として使用さ
れてきたものであり、その創傷治癒促進効果を応用して
鼓膜の再生に使用されたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の鼓膜欠
損閉鎖促進材では、鼓膜の再生閉鎖作用が小さく、鼓膜
への密着性も良好ではなかった。例えば、ポリテトラフ
ルオロエチレンでは重ね合わせて使用することは容易で
はなかった。そのため、貼り替えを要することも多い等
の問題点を有しており、患者及び医師の負担が大きく、
良好な使用感を得るためには依然として改良の余地があ
った。コラーゲンフィルムにフィブリン糊を付けたもの
も使用されているが、価格的に高く、操作性も良好なも
のではなかった。自家組織は移植片としての生体親和性
等の性能は優れているが、採取と使用までの保存に慎重
を期する必要があり、安全で保存性のよいものが求めら
れていおり、また、品質の一定したものを供給すること
が困難である。その上、鼓膜穿孔の閉鎖には数十日間か
かるため、生体組織では貼付後にも感染や腐敗の不具合
が生じることが多かった。本発明は、優れた鼓膜再生機
能を有し、かつ簡便な操作で使用することができる鼓膜
欠損閉鎖促進材及びその製造方法の提供を目的とするも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、このよう
な課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、バイン
ダー溶液とキチン繊維から形成された不織布、特に、バ
インダー溶液中にキチン繊維を分散させた分散液を抄紙
して得られた不織布を鼓膜欠損閉鎖促進材として用いた
場合、該鼓膜欠損閉鎖促進材は周辺鼓膜へよく密着し、
優れた鼓膜欠損閉鎖促進効果、鼓膜再生機能を有し、か
つ簡便な操作で使用できることを見いだし、本発明に到
達したものである。すなわち、本発明は、バインダー溶
液とキチン繊維から形成された不織布からなることを特
徴とする鼓膜欠損閉鎖促進材、及びバインダー溶液中に
キチン繊維を分散させた後、該分散液を抄紙することを
特徴とする鼓膜欠損閉鎖促進材の製造方法を要旨とする
ものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】本発明におけるキチンとは、甲殻類・甲虫
類の外骨格、イカの軟甲等を塩酸処理ならびにカ性ソー
ダ処理することにより脱石灰、脱蛋白されて得られるポ
リ−N−アセチル−D−グルコサミン及びその誘導体を
いう。誘導体としては、例えばキチンのアセチルアミノ
基の一部又は全部が脱アセチル化した脱アセチル化キチ
ン及びキトサン、エーテル化物、エステル化物、カルボ
キシメチル化物、ヒドロキシエチル化物、O−エチル化
物等が挙げられ、具体例としては[ポリ(N−アセチル
−6−O(2’−ヒドロキシエチル)−D−グルコサミ
ン)]、[ポリ(N−アセチル−6−O(エチル)−D
−グルコサミン)]等が挙げられる。
【0010】キチンの脱アセチル化はキチンをアルカリ
処理するという周知の方法により行うことができる。こ
の際、使用するアルカリ溶液の濃度、処理温度、処理時
間等を適宜変えることにより脱アセチル化度は容易に調
整することが可能である。
【0011】なお、脱アセチル化度とは以下に示す方法
で測定した値をいう。試料約2gを2N−塩酸水溶液 2
00ml中に投入し、室温で30分間撹拌する。次に、ガラス
フィルターで濾過し、塩酸水溶液を除去した後、200ml
のメタノール中に投入して30分間撹拌し、ガラスフィル
ターで濾過後、フレッシュなメタノール 200ml中に投入
し、30分間撹拌する。このメタノールによる洗浄操作を
4回繰り返した後、風乾及び真空乾燥する。乾燥後、約
0.2gを精秤し、容量 100mlの三角フラスコに取り、イ
オン交換水40mlを加えて30分間撹拌する。次いで、この
溶液をフェノールフタレインを指示薬として 0.1N−カ
性ソーダ水溶液で中和滴定する。脱アセチル化度(A)
は次式によって求められる。
【0012】A(%)=〔(2.03×f×b×10-2)/
(a+0.055 ×f×b×10-2)〕×100
【0013】ただし、aは試料の重量(g)、fは
0.1N−カ性ソーダ水溶液の力価、bは0.1N−カ性
ソーダ水溶液の滴定量(ml)である。
【0014】本発明に用いるキチン繊維としては、キチ
ンの長繊維、長繊維を切断した短繊維、及びフィブリル
が含まれる。フィブリルとは小繊維を意味するが、本発
明では長さ及び幅の不定な糸状構造物またはその集合体
をいう。
【0015】上記キチン繊維は、まず、キチン粉末から
キチン溶液を調製し、次に、キチン溶液を紡糸またはフ
ィブリル化することにより作製できる。キチン溶液を調
製する際の溶剤としては、キチンまたは脱アセチル化度
の低いキチンの場合には、例えば、トリクロロ酢酸とハ
ロゲン化炭化水素との混合溶液やジメチルアセトアミド
及び/またはN−メチルピロリドンと塩化リチウムとの
混合溶液が用いられ、キチンの脱アセチル化度が高い場
合には、酢酸等の希酸の水溶液が用いられる。
【0016】また、凝固液としては、キチンまたは脱ア
セチル化度の低いキチンでは水、メタノール、エタノー
ル、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエ
チルケトン等のケトン類等が好適に用いられるが、廃液
処理の点から水が好ましい。また脱アセチル化度の高い
キチンまたはキトサンの場合には、水酸化ナトリウム水
溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液が用いら
れる。
【0017】キチンの長繊維を製造するには、キチンの
溶液をステンレスネット等で濾過して未溶解分や異物を
除去した後、ギヤーポンプ等で輸送、計量し、ノズルか
ら凝固液中に吐出して凝固させればよい。凝固した糸条
は、例えば、回転ローラー等で2〜50m/min 程度の速
度で引き取り、ワインダー等によって捲き取り、さらに
洗浄を行い、糸条中に含まれる溶剤を十分除去した後、
乾燥させればよい。長繊維を所要の長さに切断すること
により短繊維が得られる。
【0018】キチンフィブリルを作製するには、キチン
溶液と水を高速で撹拌混合し、凝固洗浄すれはれよい。
この際、凝固液として用いる水の温度が高いほど大きな
フィブリルが作製でき、また、低いほど凝固時間が長く
なり細片で均一な大きさのフィブリルが作製できる。
【0019】混合速度としては、例えば、日本精機株式
会社製のマルチニーダーを用いた場合、300rpm以上が好
ましい。キチン溶液と水の混合比は、好ましくはキチン
溶液1に対して水が 0.5〜2、さらに好ましくは1〜1.
5 である。洗浄操作は濾過又は遠心分離、温水又は煮沸
の1つ以上を組み合わせて行うことができる。
【0020】本発明に用いるバインダーとしては、例え
ば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロー
ス、ゼラチン、デンプン、アクリル酸エステル、酢酸ビ
ニル、エチレン・酢酸ビニル共重合物、塩化ビニル、天
然ゴム、合成ゴム、ペクチン、フィブリン等が挙げられ
るが、けん化度が比較的低いポリビニルアルコール、例
えば、けん化度が65%付近のものが好適である。
【0021】バインダーは原料の段階では、繊維状、顆
粒状、液状のいずれの形状のものでもく、不織布を作製
する際、キチン繊維を分散させる液体に溶解すればよ
い。本発明に用いるバインダー溶液の濃度としては、好
ましくは2〜30%、さらに好ましくは5〜20%であ
る。
【0022】本発明では、上記バインダーを単独で用い
てもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0023】本発明に用いる不織布は、上記キチン繊維
とバインダー溶液から、一般の抄紙法と同様の方法で作
製することができる。すなわち、短繊維に切断したキチ
ン長繊維やキチンフィブリルをバインダー溶液中に分散
させた後、汎用の連続式抄紙機やバッチ式抄紙機により
作製することができる。その際、キチンと液体中に溶解
しているバインダーとの重量比が10:90〜90:1
0の範囲で使用するのが好ましい。
【0024】バッチ式で不織布を製造する場合、上記の
比率のキチン及びバインダーを過剰量の水中に均一に常
温で分散させ、下部から20〜 200メッシュのフィルター
を通じて水を抜き取り、フィルター上に分散していた繊
維を積層させ、その薄片を加圧圧縮して水を絞った後、
ローラー型加熱圧縮式乾燥機で、好ましくは100 〜180
℃で回転加熱ローラーと厚手の布の間で圧着させなが
ら、好ましくは3〜20分間乾燥させればよい。
【0025】本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材は、水溶性の
バインダーを用いて成形しているので、使用時に生理食
塩水や抗生剤含有水性点耳薬等を滴下した際にバインダ
ーが粘着性を生じ、閉鎖材を耳内に接着することができ
る。また、除去する際も上記液体で浸潤させると、糊剤
の役割を果たしていたバインダーが溶解するため、除去
することができる。
【0026】本発明に用いる不織布の厚みとしては、例
えば、0.01mm〜0.5 mmの範囲で適当な厚さのものが作製
できる。この厚みのものは鼓膜欠損部に貼付したとき、
破損した鼓膜の機能を補助することができ、また、薄い
ほど振動をよく伝えるので患者はよく聞こえる。しか
し、あまり薄すぎると留置操作が困難となるので、好ま
しくは0.05〜 0.2mm前後、さらに好ましくは0.08mmのも
のが操作上及び使用効果においても好適である。この厚
みのものは極小吸引管を用いると剥がれることなく下の
分泌物や血液を吸引できる。
【0027】厚みの調節は、抄紙液中のキチン繊維また
はフィブリル及びポリビニルアルコールの量を調整する
ことにより可能である。例えば、10000cm2の抄紙網を用
いて、キチン繊維90g及び繊維状ポリビニルアルコール
10gを分散した抄紙液で抄紙した場合は、厚さ約0.08mm
の不織布が作製できるし、キチン繊維とポリビニルアル
コールの量を増加させるか、抄紙網の面積を小さくする
と、厚い不織布が作製できる。
【0028】本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材は、例えば直
径6mm、9mm等の円形等、鼓膜穿孔を閉鎖する際に適当
な寸法及び形状に切り抜き、滅菌袋に1枚ないし複数枚
を包装して滅菌しておけば、必要な際に開封して直ちに
使用することができる。使用の際は袋より取り出し、生
理食塩水等で湿潤させた後、ピンセット等を用いて穿孔
部に貼付すると良い。滅菌器及び滅菌袋その他の器具は
医療用として一般的に使用されているものを用いること
ができる。
【0029】本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材は、貼付時の
固定が容易となり、また貼付後は交換の必要性が極度に
低くなるため、医師の負担が低減され、キチンの創傷治
癒促進効果を最大限に発揮させることができる。
【0030】また、本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材の製造
方法は、抄紙してシートを作製した後に糊剤を塗布する
方法と比較すると工程が少なく、作製時間を短縮するこ
とができる。糊剤を使用せずにキチンシートを作製し、
使用の際に糊剤を付与する方法と比較しても、医療従事
者側の負担を軽くすることができる。また、キチン質が
糊剤によって完全に被覆されていないため、鼓膜欠損部
に貼付したとき鼓膜欠損部にキチンが直接接触する割合
が大きく、キチンの細胞増殖作用による鼓膜の再生が促
進される。
【0031】キチンは多糖であるため生体となじみがよ
く、皮膚損傷部の治癒を促進する効果が種々の研究によ
り明らかとなっている。キチン溶液から製膜した透明な
キチンフィルムを細胞培養の基材としてマウス由来線維
芽細胞を培養したところ良好な増殖がみられ、コラーゲ
ンフィルムよりも増殖能が優れるという結果も得られて
いる。このように、キチンは生物細胞の増殖に好ましい
効果を有していることが確認されているので、鼓膜細胞
の増殖にも好ましい影響を与えていると推測される。
【0032】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的
に説明する。
【0033】実施例1 キチン粉末(三栄工業株式会社製)をジメチルアセトア
ミドと塩化リチウムからなる溶媒に溶解し、キチン濃度
8重量%の溶液を得た。得られた溶液は1400メッシュの
ステンレスネットで濾過し、放置脱泡のうえタンクに入
れ加圧下でギヤーポンプにて輸送し、1000ホールのノズ
ル(直径0.04mm)から70℃の水中に12g/minの割合で吐
出して、11 m/minの速度で回転ローラーに引き取り、湿
式紡糸を行った。得られた糸条を水で洗浄後、乾燥して
0.8単糸デニールの繊維を作製した。けん化度65%、重
合度 200〜300 のポリビニルアルコール(商品名:UM
R−10M、ユニチカケミカル株式会社製)450gを水1
Lに溶解した。この溶液に1.0 デニール、平均長さ12mm
のキチン繊維10.0gを分散し、網に掬いとって水分を除
去することにより抄紙した。クリーン下で12時間風乾
し、鼓膜欠損閉鎖促進材を作製した。この閉鎖材全体に
対する糊剤の重量比は30%であった。
【0034】上記の鼓膜欠損閉鎖促進材を紫外線滅菌の
後、使用時まで滅菌袋に保存し、鼓膜穿孔の閉鎖に使用
した。患者は22才の男性で、左鼓膜に穿孔を有してい
た。穿孔端の捲れ込んだ皮膚を翻転しながら処置を行な
った。42日後には鼓膜は良好に再生されていた。閉鎖材
は処置時から治癒まで剥がれることなく鼓膜に付着して
おり、除去の際、蒸留水を滴下すると鼓膜に影響を与え
ず短時間で剥離することができた。
【0035】実施例2、比較例1 実施例1で作製した鼓膜欠損閉鎖促進材を紫外線滅菌
後、使用まで無菌に保った後、以下の操作により雑種成
犬の鼓膜穿孔症例に使用した。雑種成犬の両耳鼓膜を穿
刺針により直径3mmの大きさに穿孔した。左耳の鼓膜穿
孔縁周囲を局所麻酔し、顕微鏡下に穿孔縁を除去し、ト
リクロル酢酸で穿孔縁を腐食して、実施例1の鼓膜欠損
閉鎖促進材を直径6mmに切り取りパッチした(実施例
2)。対照としてコラーゲン膜(メイパック、明治製菓
株式会社製)を同様に直径6mmに切り取り、左耳と同様
の前処置を行なった右耳鼓膜穿孔部に貼付した(比較例
1)。その結果、本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材を貼付し
た左耳鼓膜では、21日後に欠損閉鎖促進がみられた。ま
た、治癒までの期間、閉鎖材を貼付したままで一度も交
換する必要がなかった。一方、比較例1のコラーゲン膜
を貼付した右耳鼓膜では、途中、脱落により閉鎖材を数
回交換せざるを得ず、21日後にも穿孔の閉鎖は完了して
いなかった。また、閉鎖材の一部分に融解がみられた。
以上の結果から、本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材はコラー
ゲンと比較して鼓膜欠損の閉鎖効果に優れることが明ら
かである。
【0036】実施例3 耳かきによって受傷した8才、女性の左耳の鼓膜穿孔に
本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材を使用した。実施例1で作
製した鼓膜欠損閉鎖促進材を直径6mmの円形にカット
し、無菌水で湿潤させた後、経耳鏡的に穿孔部位にの
せ、位置を修正した後に余分な水分を吸引し鼓膜と密着
させた。外来通院であり処置後3日後に耳漏の有無を確
認後、乾燥していたので1週間毎に再診し鼓膜欠損閉鎖
促進材の接着状態を確認した。その結果、本発明の鼓膜
欠損閉鎖促進材の剥離はみられず、35日後には鼓膜は良
好に再生されていた。
【0037】実施例4、比較例2、比較例3、比較例4 日本国内において耳鼻科医10名を無作為に選び、実施
例1で得られた鼓膜欠損閉鎖促進材(実施例4)及びコ
ラーゲン不織布(比較例2)、フィブリン膜(比較例
3)、ポリテトラフルオロエチレン膜(比較例4)の使
用感について求評した。雑種成犬に麻酔をかけ、直径6
mmにカットした上記各材料を鼓膜上に置き、翌日剥離し
た。評価結果を表1に示した。評価項目は操作性、密着
性、剥離性である。10名のうち8名以上が良好と評価
した項目を◎、6〜7名が良好と評価した項目を○、4
〜5名が良好と評価した項目を△、3名以下の場合は×
で示した。
【0038】
【表1】
【0039】表1より、本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材は
優れた使用感を有することが明らかである。
【0040】(曲げ剛性試験)鼓膜欠損閉鎖促進材とし
て、実施例1で得られた鼓膜欠損閉鎖促進材、コラーゲ
ン不織布(比較例5)、ポリテトラフルオロエチレン膜
(比較例6)を用いて、各種鼓膜欠損閉鎖促進材の密着
性の比較を行なった。密着性は柔軟度の比較により行な
った。上記各材料について、KES-F2純曲げ試験機にて曲
げ剛性を測定した。まず、長さ 2.5cm、幅1cmの試料を
1cmの間隔のチャックに把持した。変形は曲率K=−2.
5 〜+2.5 (cm-1)の範囲で、等速度曲率の純曲げによ
り行なった。変形速度は0.50(cm-1)/secとした。試料
の単位長さ当たりの曲げモーメントをMとすると、単位
長さ当たりの曲げ剛性はM−K曲線の傾斜によって表さ
れる。この値が小さいほど柔軟度が高いことを示す。
【0041】上記測定結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】乾燥時の比較では本発明の鼓膜欠損閉鎖促
進材はコラーゲンシートと有意差がみられなかったが、
湿潤時の比較ではコラーゲンシートより有意に曲げ剛性
が低く、柔軟度が高かった。また、ポリテトラフルオロ
エチレンでは曲げ剛性に変化はなく、柔軟性の向上はみ
られなかった。これらの結果から、本発明の鼓膜欠損閉
鎖促進材は湿潤すると柔軟性が向上することが示され、
付着性の良さを裏付ける結果となった。
【0044】
【発明の効果】本発明の鼓膜欠損閉鎖促進材は、付着性
が良好であり、優れた鼓膜欠損閉鎖促進効果を示し、簡
便な操作で使用できる。また、本発明の鼓膜欠損閉鎖促
進材の製造方法は、容易に上記鼓膜欠損閉鎖促進材を製
造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷本 信行 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内 (72)発明者 鶴谷 良一 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バインダー溶液とキチン繊維から形成さ
    れた不織布からなることを特徴とする鼓膜欠損閉鎖促進
    材。
  2. 【請求項2】 バインダーがポリビニルアルコールであ
    ることを特徴とする請求項1記載の鼓膜欠損閉鎖促進
    材。
  3. 【請求項3】 バインダー溶液中にキチン繊維を分散さ
    せた後、該分散液を抄紙することを特徴とする鼓膜欠損
    閉鎖促進材の製造方法。
  4. 【請求項4】 バインダーがポリビニルアルコールであ
    ることを特徴とする請求項3記載の鼓膜欠損閉鎖促進材
    の製造方法。
JP9148910A 1997-06-06 1997-06-06 鼓膜欠損閉鎖促進材及びその製造方法 Pending JPH10337302A (ja)

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