JPH09169096A - 化粧シ−トの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 透明な熱可塑性合成樹脂フイルムを用いて、
表面にエンボスワイピング加工による凹凸模様が施さ
れ、裏面に前記エンボス模様に同調した印刷絵柄模様を
有する意匠性に優れた、裏面が平滑で基材に容易に接着
可能な化粧シートを製造する方法を提供することにあ
る。 【解決手段】 熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイルム
上に、成形性に優れた合成樹脂フイルムを重ね合わせた
状態で加熱、加圧して、前記成形性に優れた合成フイル
ム上にエンボス凹部を形成し、前記エンボス凹部にワイ
ピングにより着色インキを充填した後、前記熱寸法安定
性に優れた合成樹脂フイルムを成形性に優れた合成樹脂
フイルムから剥離する。さらに前記成形性に優れた合成
樹脂フイルムのエンボス凹部の成形されていない面に絵
柄印刷層を形成する化粧シートの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種家具類や、建
築内装材等に、装飾あるいは表面保護の目的で貼着され
る、印刷絵柄に同調したエンボスワイピングが形成され
た意匠効果の優れた、裏面の平滑な化粧シートの製造方
法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来この種の化粧シートに用いられる基
材には、特に、該化粧シートが接着される被接着対象物
の表面形状にフィットして接着させることができる柔軟
性が要求される。このような材料適性を具備する化粧シ
ート用基材としては、塩化ビニルフイルムが用いられて
いる。この塩化ビニルフイルムは、上記の柔軟性に加え
て、他の材料適性、すなわち、エンボス加工等の加工性
や、着色性、接着性にも優れている。しかし、耐溶剤性
に劣るためエンボス賦形後ワイピング加工を施すと、図
３に示すようにエンボス凹部が施された基材シートの膜
厚の薄くなった部分が、ワイピングインキ中の残存溶剤
で膨潤し、変形し易い。従って、化粧シートの裏面が凹
凸に変形し平滑性がなくなり、合板等の基板に貼合せる
場合接着不良を起こしやすいという問題があった。

【０００３】また、印刷絵柄模様とエンボスの凹凸模様
が同調した化粧シートを作製する方法として、絵柄の転
写と同時にエンボスを絵柄印刷層に同調させて施す方法
が提案されているが、転写シートに掛かるテンションを
調整することにより絵柄印刷層とエンボスを合わせる手
法のため、転写およびエンボスの際の熱の影響により転
写シートの伸縮が発生し、見当合わせに時間がかかり、
ロスが多いという問題があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる問題点
に鑑みて成されたものであって、その目的とするところ
は、透明な熱可塑性合成樹脂フイルムを用いて、表面に
エンボスワイピング加工による凹凸模様が施され、裏面
に前記エンボス模様に同調した印刷絵柄模様を有する意
匠性に優れた、裏面が平滑で基材に容易に接着可能な化
粧シートを製造する方法を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の化粧シートの製造方法は、(1) 熱寸法安定
性に優れた合成樹脂フイルム上に、成形性に優れた合成
樹脂フイルムを重ね合わせた状態で加熱、加圧して、前
記成形性に優れた合成樹脂フイルム上にエンボス凹部を
形成する工程、(2) 前記エンボス凹部にワイピングによ
り着色インキを充填する工程、(3) 前記熱寸法安定性に
優れた合成樹脂フイルムを成形性に優れた合成樹脂フイ
ルムから剥離する工程、(4) 前記成形性に優れた合成樹
脂フイルムの前記エンボス凹部の形成されていない面
に、絵柄印刷層を形成する工程からなることを特徴とす
るものである。この製造方法とすることにより、熱寸法
安定性に優れた合成樹脂フイルムが、エンボス凹部に充
填された着色インキが硬化するまで成形性に優れた合成
樹脂フイルムに仮接着の状態で裏打ちされているため
に、着色インキ中の溶剤によるエンボス凹部が施された
基材シート裏面の膨潤、変形が抑えられ、裏面の形状に
変形のない平滑性に優れた化粧シートが得られる。しか
も、加熱・加圧のエンボス加工時にもフイルムの寸法が
安定しているため、エンボスピッチを寸法精度よく賦形
することが可能である。

【０００６】また、(1) 熱寸法安定性に優れた合成樹脂
フイルム上に、成形性に優れた合成樹脂フイルムを重ね
合わせた状態で加熱、加圧して、前記成形性に優れた合
成樹脂フイルム上にエンボスピッチマークを有するエン
ボス凹部を形成する工程、(2) 前記エンボスピッチマー
クを有するエンボス凹部にワイピングにより着色インキ
を充填する工程、(3) 前記熱寸法安定性に優れた合成樹
脂フイルムを成形性に優れた合成樹脂フイルムから剥離
する工程、(4) 前記成形性に優れた合成樹脂フイルムの
前記エンボスピッチマークを有するエンボス凹部の形成
されていない面に、前記エンボスピッチマークを基準に
して絵柄印刷層を見当合わせして形成することを特徴と
することが好ましいものである。この製造方法とするこ
とにより、エンボスピッチマークが読み取り易くなり、
絵柄印刷層を見当精度よく印刷することができ、エンボ
ス凹部と絵柄印刷層とが良く同調した意匠性に優れた化
粧シートが得られる。

【０００７】更に、前記熱寸法安定性に優れた合成樹脂
フイルムが、２軸延伸ポリエチレンテレフタレートから
なることを特徴とすることが好ましいものである。

【０００８】更に、前記成形性に優れた合成樹脂フイル
ムが、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポ
リエチレンからなることを特徴とすることがより好まし
いものである。

【０００９】

【発明の実施の形態】図１は本発明に係わる化粧シート
の製造方法によって得られた化粧シートを示す断面図、
図２は本発明の化粧シートの製造工程を説明する断面図
であって、１は成形性に優れた合成樹脂フイルム、２は
熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイルム、３はエンボス
凹部、４は着色インキ層、５は艶調整層、６は絵柄印刷
層、７は隠蔽ベタ印刷層、１０は化粧シートをそれぞれ
表している。

【００１０】本発明による化粧シート１０の構成として
は、図１に示すように、一方の面に隠蔽ベタ印刷層７、
絵柄印刷層６が順次形成された成形性に優れた合成樹脂
フイルム１のもう一方の面にエンボスによるエンボス凹
部３が形成され、該エンボス凹部にワイピングにより着
色インキ４を充填し、しかるのちに艶調整層５を設けた
構成からなり、絵柄印刷層６、隠蔽ベタ印刷層７が設け
られている化粧シート１０の下面は平滑に形成され、し
かも絵柄印刷層６と着色インキ４が充填されたエンボス
凹部３が同調している。

【００１１】次に、上記構成の化粧シート１０の製造方
法について説明する。先ず、本発明では、図２（イ）に
示すように、熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイルム２
の上に成形性に優れた合成樹脂フイルム１を重ね合わ
せ、重ね合わせた状態で加熱、加圧して図２（ロ）に示
すように、成形性に優れた合成樹脂フイルム１にエンボ
ス凹部３を形成する。この時成形性に優れた合成樹脂フ
イルム１に設けられたエンボス凹部３のピッチは熱寸法
安定性に優れた合成樹脂フイルム２によって安定する。
続いて図２（ハ）に示すように、熱寸法安定性に優れた
合成樹脂フイルム２を積層したままでエンボス凹部３に
ワイピングにより着色インキ４を充填し、更に艶調整層
５を形成した。この時熱寸法安定性に優れた合成樹脂フ
イルム２を積層したままの状態のために着色インキ４に
よる成形性に優れた合成樹脂フイルム１の膨潤が抑えら
れる。次いで図２（ニ）に示すように、熱寸法安定性に
優れた合成樹脂フイルム２を剥離し、成形性に優れた合
成樹脂フイルム１のエンボスワイピングの形成されてな
い面に、絵柄印刷層６及び隠蔽ベタ印刷層７を形成する
ことにより、図１に示した化粧シート１０と同様の構成
が得られる〔図２（ホ）〕。

【００１２】成形性に優れた合成樹脂フイルム１のエン
ボスワイピングの形成されてない面に、絵柄印刷層６を
設ける場合、予め、該成形性に優れた合成樹脂フイルム
１の絵柄印刷層６及び隠蔽ベタ印刷層７を設けない両側
の非印刷部にエンボス柄の１ピッチに１つの見当合わせ
用エンボスピッチマークを設け、ワイピングによってエ
ンボスピッチマークを着色し、艶調整層５を設けた後、
熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイルム２を剥離し、成
形性に優れた合成樹脂フイルム１のエンボスワイピング
の形成されてない面に絵柄印刷層６及び隠蔽ベタ層７を
通常のグラビア印刷機で設ける。この時絵柄印刷層６の
柄位置は前記着色されたエンボスピッチマークを基準に
して見当合わせを行い印刷がてきるので、絵柄印刷層６
とエンボス凹部３とを容易に同調させることができる。

【００１３】本発明の化粧シート１０に使用する熱寸法
安定性に優れた合成樹脂フイルム２としては、ロールエ
ンボス加工装置の加熱ロール、加圧ロールの表面温度に
耐えうる耐熱性、寸法安定性に優れた熱可塑性樹脂フイ
ルムが適当であり、２軸延伸ポリエチレンテレフタレー
トフイルム、２軸延伸ポリブチレンテレフタレートフイ
ルム、２軸延伸ポリプロピレンフイルム等が使用でき、
厚みとしては、２５〜１００μｍか好ましいが、コス
ト、加工性を考慮すると３８〜５０μｍの２軸延伸ポリ
エチレンテレフタレートフイルムが最も好ましいもので
ある。

【００１４】成形性の良好な合成樹脂フイルム１として
は、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン系樹脂、アクリル
系樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性合成樹脂フイルム
が挙げられ、中でもエンボス加工適性に優れたポリ塩化
ビニルフイルムが好ましく、厚みとしては、８０〜１５
０μｍが好ましく用いられる。

【００１５】次に、成形性の良好な合成樹脂シート１の
エンボス凹部３に充填される着色インキ４としては、例
えば、天然樹脂又はその変性樹脂類、セルロース誘導体
類、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエス
テル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂類をベヒ
クルの構成材料とし、ベヒクル中に着色顔料、体質顔
料、可塑剤等を添加して成るインキが用いられる。使用
されるベヒクルとしてはウレタン２液硬化型のものが好
適に用いられる。ワイピング法としては、ドクターブレ
ード法、ロールコート法など、従来から使用されている
ワイピング法のいずれによっても良い。

【００１６】艶調整層５は無色の透明であつても、ある
いは着色透明であっても、更に艶消しの透明であっても
よく、化粧シート表面の光沢度を調整するために設ける
ものであるが、表面保護の役割もある。艶調整層５は適
宜のベヒクルを用いた塗料を塗布する事により形成さ
れ、該ベヒクルとしてはフェノール樹脂、不飽和ポリエ
ステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱
硬化性樹脂の１種又は２種以上の混合樹脂を用いること
が出来る。艶調整層５を形成する塗料には通常、適量の
艶消剤を分散させて所望の光沢度を与えるが艶消剤とし
ては、マイカ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケ
イソウ土、ケイ砂、シラスバルーン等が用いられる。上
記塗料の塗布方法としては、グラビアコート、ロールコ
ート、エアナイフコート等の方式が用いられる。

【００１７】絵柄印刷層６及び隠蔽ベタ印刷層７の形成
に用いられるインキとしては、公知の顔料、染料等の着
色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、硬化剤等とバ
インダーを必要に応じて適宜混合したものであり、バイ
ンダーとしては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポ
リメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、イソシア
ネート化合物とポリオール化合物、不飽和ポリエステル
樹脂等の常温硬化または熱硬化性樹脂等のものが使用で
きる。また顔料としては、通常使用される有機系または
無機系の顔料が使用でき、アルミニウム粉末、酸化チタ
ン被覆雲母等の光輝性を有するものを用いると、光輝性
のある絵柄模様を持った化粧シートが得られる。

【００１８】

【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。厚さ３８μｍの２軸延伸ポリエチレンテレフタ
レートフイルムと厚さ１５０μｍの透明塩化ビニルフイ
ルムとを重ねて、加熱条件１７０℃、ニップ圧２５kg／
cm² 、速度２０ｍ／分の条件でエンボスロールとシリコ
ンゴムロール間にて加熱エンボスを行い、透明塩化ビニ
ルフイルム面にエンボス凹部を賦形する。次に、エンボ
スによる凹部が表面に賦形された透明塩化ビニルフイル
ム面にアクリルポリオール／イソシアネート２液硬化型
着色インキをロールコート法によって塗工したあと、ド
クターブレードで凹部以外の部分に付着している着色イ
ンキを除去し、積層シートの表面に形成されている凹部
内に着色インキを充填、固化させるワイピング工程を行
った。更にこのシート上に艶調整層としてアクリルポリ
オール／イソシアネート２液硬化型インキを版深６０μ
ｍのグラビアロールにてコートしエンボス凹部以外の部
分に積層した。上記積層シートから２軸延伸ポリエチレ
ンテレフタレートフイルムを剥離した後、透明塩化ビニ
ルフイルムのエンボスワイピングが施されている反対の
面に塩酢ビ−アクリル系インキにて絵柄印刷層及び隠蔽
ベタ印刷層をグラビア輪転印刷機にて設ける。この時カ
ラーコントローラーでエンボスと印刷の見当マークを読
み取り、この情報によって見当合わせを行うことによ
り、エンボスと絵柄が同調した塩化ビニル化粧シートが
得られる。

【００１９】

【発明の効果】本発明は以上説明したように、熱寸法安
定性に優れた合成樹脂フイルム上に、成形性に優れた合
成樹脂フイルムを重ね合わせた仮接着の状態でエンボス
およびワイピングを行うので、着色インキに含まれる溶
剤によるフイルムの膨潤および変形が抑えられ、熱寸法
安定性に優れた合成樹脂フイルムを剥離した面が平滑な
ためインキの付着が均一に行われ意匠性に優れた化粧シ
ートとなり、また基材との貼合せにおいても接着剤が均
一に塗布できるため接着性に優れた化粧板が得られる。

【００２０】また、加熱・加圧のエンボス加工時にもフ
イルムの寸法が安定しているため、エンボスピッチの寸
法が精度よく賦形され、しかもエンボスピッチマークが
着色インキにより充填着色できるため、絵柄印刷層を見
当精度よく印刷することができ、エンボス凹部と絵柄印
刷層とが良く同調した意匠性に優れた化粧シートが得ら
れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる化粧シートの実施例の積層構成
を示す断面図である。

【図２】本発明に係わる化粧シートの製造方法の実施例
の工程を示す説明図である。

【図３】従来品の積層構成を示す断面図である。

【符号の説明】

１ 成形性に優れた合成樹脂フイルム ２ 熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイルム ３ エンボス凹部 ４ 着色インキ層 ５ 艶調整層 ６ 絵柄印刷層 ７ 隠蔽ベタ印刷層 １０ 化粧シート

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 (1) 熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイ
   ルム上に、成形性に優れた合成樹脂フイルムを重ね合わ
   せた状態で加熱、加圧して、前記成形性に優れた合成樹
   脂フイルム上にエンボス凹部を形成する工程、(2) 前記
   エンボス凹部にワイピングにより着色インキを充填する
   工程、(3) 前記熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイルム
   を成形性に優れた合成樹脂フイルムから剥離する工程、
   (4) 前記成形性に優れた合成樹脂フイルムの前記エンボ
   ス凹部の形成されていない面に、絵柄印刷層を形成する
   工程、からなることを特徴とする化粧シートの製造方
   法。
2. 【請求項２】 (1) 熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイ
   ルム上に、成形性に優れた合成樹脂フイルムを重ね合わ
   せた状態で加熱、加圧して、前記成形性に優れた合成樹
   脂フイルム上にエンボスピッチマークを有するエンボス
   凹部を形成する工程、(2) 前記エンボスピッチマークを
   有するエンボス凹部にワイピングにより着色インキを充
   填する工程、(3) 前記熱寸法安定性に優れた合成樹脂フ
   イルムを成形性に優れた合成樹脂フイルムから剥離する
   工程(4) 前記成形性に優れた合成樹脂フイルムの前記エ
   ンボスピッチマークを有するエンボス凹部の形成されて
   いない面に、前記エンボスピッチマークを基準にして絵
   柄印刷層を見当合わせして形成する工程、からなること
   を特徴とする化粧シートの製造方法。
3. 【請求項３】 前記熱寸法安定性に優れた合成樹脂フイ
   ルムが、２軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる
   ことを特徴とする請求項１、２記載の化粧シートの製造
   方法。
4. 【請求項４】 前記成形性に優れた合成樹脂フイルム
   が、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリ
   エチレンからなることを特徴とする請求項１〜３記載の
   化粧シートの製造方法。