JPH09165204A - ヨウ化水素の純度保持法 - Google Patents

ヨウ化水素の純度保持法

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JPH09165204A
JPH09165204A JP7326909A JP32690995A JPH09165204A JP H09165204 A JPH09165204 A JP H09165204A JP 7326909 A JP7326909 A JP 7326909A JP 32690995 A JP32690995 A JP 32690995A JP H09165204 A JPH09165204 A JP H09165204A
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佐々木  賢樹
Naoki Asashige
朝重  直樹
Eiichi Sagawa
栄一 佐川
Mitsuo Nakamura
光雄 中村
Masahiro Omura
正弘 大村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヨウ化水素に不純物の混入してしまうことを
防止し、高純度なヨウ化水素の状態に維持することを可
能とする方法の提供。 【解決手段】 内面が研磨処理されたステンレス鋼製の
ボンベにヨウ化水素を封入する。 【効果】 ヨウ化水素を断続的に使用する場合において
も、あるいは長期に渡る貯蔵を行う場合においても、そ
の純度は低下するようなことがなく、常に高度に保持さ
せておくことが可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヨウ化水素に不純
物の混入することを防止し、ヨウ化水素を高純度の状態
に保持する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、特に半導体産業の分野において、
ヨウ化水素はエッチング剤として極めて有用であるとい
うことが認められているが、このような分野に使用され
るヨウ化水素においては通常の反応試剤などに用いられ
るものとは異なり、いわゆる4ナイン若しくは5ナイ
ン、又はそれ以上のものといった、極めて高純度なもの
が要求される。
【0003】このようなヨウ化水素は、通常は液化ガス
としてボンベに充填され、必要時に導管に導出されて使
用に供される。しかしながら、一般に液化ガスを充填す
るボンベにおいては通常、材質が鋼製でマンガン 1.5重
量%程度を含み(以下、マンガン鋼という)、この継目
なしのものが耐食性に優れるものとして多用されるが、
このような一般的なボンベにヨウ化水素を充填し、保存
又は輸送等を行った場合は、封入されているヨウ化水素
の純度が顕著に悪化していくという問題がある。
【0004】すなわち、純度の悪化をもたらす原因は、
マンガン鋼の表面若しくは内部に残る微量の水分又は酸
素などが作用するためと考えられ、これらがヨウ化水素
中に溶出、加えてこのような不純物を含んだヨウ化水素
は更なるボンベ内面の腐食を助長するようになるため、
封入されているヨウ化水素の純度が次第に悪化していく
と考えられている。しかし、マンガン鋼の表面又は内部
に残存する水分、酸素など、ヨウ化水素の純度を悪化さ
せる原因となる成分を、このようなボンベから完全に除
くことは極めて困難なことである。
【0005】このような状況下において、現在、半導体
の高集積化などに伴い、使用されるヨウ化水素は不純物
のない極めて高純度なものが要求され、特に金属分混入
の許容量については重量ppb (以下、wtppb と記す)オ
ーダーという非常に厳しい制限がつけられる。そのた
め、上記したようなボンベでは半導体製造用などのヨウ
化水素を取り扱う上において不適当である。更には、こ
のようなボンベにヨウ化水素を長期間保存したり、又は
ボンベに封入したヨウ化水素を断続的に導出し使用する
などの場合は、ヨウ化水素ガス中の金属分混入量がより
顕著に増加する傾向があり、通常、ヨウ化水素ガス中の
金属分を数十wtppb 以下におさえておくということは困
難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ヨウ
化水素をボンベに貯蔵又はボンベより導出して使用する
に際し、ヨウ化水素又はそのガス中に不純物の混入して
しまうことを防止し、高純度なヨウ化水素の状態に維持
することを可能とする方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明者らはまず、マンガン鋼からなるボンベの
内面に注目し、様々な処理を試みる研究を行った。その
結果、内面が研磨処理されたマンガン鋼製のボンベに高
純度ヨウ化水素を封入した場合は、ボンベ内面の腐食の
程度は減少するものの、高純度のヨウ化水素の状態に長
期間維持するという前記した目的を達成する上では遠く
及ばないものであった。
【0008】更に本発明者らは上記ヨウ化水素の封入に
用いたボンベを調べたところ、その内面は全面にわたっ
てほぼ紫色を呈しており、ヨウ素の固着のあることを認
めた。このような、ヨウ素が遊離する現象は現在のとこ
ろ定かではないが、マンガン鋼の表面ではヨウ化水素の
分解が促進されてしまい、その結果、ボンベ内面にヨウ
素が固着するのではないかと考えられる。加えてヨウ素
は一般の金属類に対し強力な腐食性を示す物質であり、
このようなヨウ素の遊離現象がある場合は、封入された
ヨウ化水素の更なる純度低下のあることは明白である。
【0009】そこで本発明者らは、種々の材質からなる
試験片を様々に処理し、ヨウ化水素に対する耐腐食性試
験を長期に渡り行い、各々腐食の程度及びそれらの表面
状態を観察するとともに、試験に供したヨウ化水素中の
不純物増加を調査し、鋭意研究を行ってきた。
【0010】その結果、ボンベはクロムを12%程度以上
含む鋼(以下、ステンレス鋼と呼ぶ)の材質からなるも
のであって、しかも内面が鏡面のように研磨されたもの
を用い、これに高純度ヨウ化水素を封入した場合は、内
表面に何らの色変化及びヨウ素の固着現象を起こすこと
がなく、また封入されたヨウ化水素の純度は悪化するこ
とが極めて少なく、高純度ヨウ化水素の長期に渡る保存
又は断続的に導出して使用する場合においても、常に高
純度の状態に維持できるものであることを見出し、本発
明を完成するに至った。
【0011】すなわち、本発明は、内面が研磨処理され
たステンレス鋼製のボンベにヨウ化水素を封入すること
を特徴とするヨウ化水素の純度保持法である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明を実施するに際し、上記し
たようなボンベを得るには、種々の公知技術又はそれら
の応用技術を採用することにより達成される。すなわ
ち、ステンレス鋼製のボンベ内面を研磨処理するには、
空気などの気流と共に砂を吹き付けるサンドブラスト
法、液体ホーニング法、電解研磨法、又は粒子の転動に
よる研磨方法などがある。本発明ではこれらのうちで
も、ボンベ中に多数の球状粒子、例えばセラミック粒子
を入れた後、該ボンベを軸心方向に回転させてその内面
を研磨加工する、いわゆるバレル研磨法により処理され
たステンレス鋼製のボンベを用いるのがより好ましい。
このようなボンベの材質としては、通常、オーステナイ
ト系ステンレス鋼として広い範囲で用いられているSU
S−304、SUS−316、又はSUS−316Lか
らなるものを十分に使用することができる。
【0013】本発明において、ステンレス鋼製のボンベ
における内面処理の程度は、通常、内部が全面に渡り、
ザラつきがなく、鏡面のような状態であるなら高純度ヨ
ウ化水素の純度保持には顕著に差が現れるが、ヨウ化水
素を長期に渡り保存する、又は封入されているヨウ化水
素を断続的に使用する、などを考慮した場合、内面は、
あらさ(日本工業規格 JIS-B-0601(1955) に規定された
表面あらさの定義をいう。以下同じ)3μm以下にまで
研磨処理されていることが非常に好ましい。すなわち、
このように内面が処理されたステンレス鋼製のボンベを
用いた場合は、ヨウ化水素を長期に渡り保存したり、又
は封入されたヨウ化水素を断続的に使用する場合であっ
ても、その純度の低下は全くないか、若しくは純度の低
下があっても格段にその割合を小さなものとすることが
できるからである。
【0014】また、本発明を実施するに際し、当該ボン
ベに付設される弁においても防食処理を施されたものを
用いることが好ましく、例えば、少なくともヨウ化水素
との接ガス部が研磨処理されたステンレス鋼製の弁、又
は接ガス部が金、ニッケル若しくはポリフッ化エチレン
系の樹脂で被覆されている弁を用いるのがよい。ステン
レス鋼製の弁を用いる場合は、SUS−304、SUS
−316、又はSUS−316Lなどからなる材質のも
のが使用でき、少なくとも接ガス部はあらさ3μm以下
にまで研磨処理されているものを用いるのが好ましい。
【0015】本発明によれば、長期に渡るヨウ化水素の
保存をした場合でも、又はボンベ内のヨウ化水素を断続
的に使用する場合であってもその純度は低下してしまう
ようなことはなく、高純度のヨウ化水素をほぼそのまま
の状態で維持することを可能とするものであるが、ヨウ
化水素をこれより導出し使用するに際して、付帯する他
の機器、配管などに関しても、少なくともその接ガス部
分は防食処理されたものを用いることが重要である。す
なわち、ボンベに充填されたヨウ化水素を実際に使用す
る場合は、通常、ガスの調圧器、圧力計、又は流量計な
どの機器類の設けられることが多いが、それらのヨウ化
水素と接触する可能性のある部分の全て、及び配管の内
面を防食処理しておくのが好ましい。
【0016】
【実施例】以下、実施例により本発明の有用性をより詳
細に説明する。本実施例における実験を行った際の装置
の接続及びガスの流れについては図1に示すとおりであ
る。
【0017】使用したボンベについては、材質がSUS
−304からなるものでその内面をバレル研磨法により
あらさ12μmまで処理したもの(以下、12Sと表示)、
同6μmまで処理したもの(以下、6Sと表示)、同3
μmまで処理したもの(以下、3Sと表示)、及び同1
μmまで処理したもの(以下、1Sと表示)の各々につ
いて試験し、その結果を表1及び表2中に実験No1〜5
として示した。
【0018】また、マンガン鋼の材質からなるボンベの
もので、その内面をバレル研磨法によりあらさ1μmま
で処理されたもの(以下、M(1S)と表示)、及び同12μ
mまで処理されたもの(以下、M(12S) と表示)を使用
した例を比較例とし、表1及び表2中に実験No6,7,
8として示した。
【0019】図1に示す装置の接続及びガスの流れにお
いて、弁2については材質がSUS−316Lからなる
ものでその接ガス部が、あらさ1μmまで処理されてい
るもの(以下、Kと表示)、又は全く処理されていない
もの(以下、Nと表示)のいずれかのものを用いて試験
を行い、表1及び表2中では「弁内」として示した。ま
た、配管5の内面、ニードル弁4、及び流量計6内など
のヨウ化水素と接触する部分については、ニッケル又は
ニッケルメッキ施工された材料のものを用い、接続部の
ガスケット類はテフロン製のものを用いた。
【0020】操作及びガスの分析の条件は以下のとおり
である。まず、高純度ヨウ化水素の充填されたボンベ1
の弁2を開き、ヨウ化水素ガスを調圧器3に導いた後、
該ガスをニードル弁4で一定流量下10分間流した後のガ
ス中の分析値を「ガス通気直後」として表1中に記して
ある。
【0021】また、ヨウ化水素の断続使用試験について
は、ニードル弁4で一定流量下に30分間流した後、ニー
ドル弁4を閉めて一晩放置するという操作を少なくとも
10回は繰り返し、その後、10分間ガスを流した後のガス
中の分析値を「断続使用操作」として表1中に記した。
【0022】ヨウ化水素の長期保存試験については、上
記の断続使用試験を行った後、そのまま放置させ、一ヶ
月経過後に10分間ガスを流した後にそのガスを分析し、
「一ヶ月経過後」として表2中に記した。これを更に二
ヶ月間放置した後、同様に操作しガスを分析した結果を
「三ヶ月経過後」として表2中に記した。
【0023】なお、ガスの分析はイオンプラズマ発光分
析装置を用いた。また、表1及び表2中における「ボ
内」とはボンベ内部を意味するものである。
【0024】
【表1】 (実験No6,7,8は比較例である。)
【0025】
【表2】 (実験No6,7,8は比較例である。)
【0026】次いで、上記三ヶ月の長期保存試験を行っ
た後の各々のボンベ封入ガスをパージし、それらの内部
を内視鏡を用いて観察したところ、実験No6,7及び8
に用いられたマンガン鋼製のボンベにおいては、その内
表面が全面にわたり紫色を呈しており、単体ヨウ素の付
着しているのが観察された。これに対し、実験No1〜5
に用いられたステンレス鋼製のボンベにおいてはこのよ
うな色変化が何ら認められず、使用開始前の金属肌の状
態と同様であった。
【0027】
【発明の効果】以上、実施例の結果からも明らかなよう
に、本発明に記載の構成とすることにより、ヨウ化水素
を断続的に使用した場合であっても、あるいは長期に渡
る貯蔵を行う場合においても、その純度は低下するよう
なことがなく、常に高度に保持させておくことが可能で
ある。また、特に、ボンベ内面があらさ3μm以下にま
で研磨処理されたステンレス鋼製のボンベを用いるとす
ることにより、ヨウ化水素中に含まれる金属分は、常に
10wtppb 未満におさえることが可能になるという、更な
る格段に優れた効果が奏されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に記載の実施例で行った装置の概略
図、及びヨウ化水素の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・ボンベ 2・・・弁 3・・・調圧器 4・・・流量調節用ニードル弁 5・・・配管 6・・・流量計 7・・・イオンプラズマ発光分析装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 光雄 千葉県茂原市東郷1900番地 三井東圧化学 株式会社内 (72)発明者 大村 正弘 千葉県茂原市東郷1900番地 三井東圧化学 株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内面が研磨処理されたステンレス鋼製の
    ボンベにヨウ化水素を封入することを特徴とするヨウ化
    水素の純度保持法。
  2. 【請求項2】 内面の表面あらさが3μm以下まで研磨
    処理されたボンベを用いる請求項1記載のヨウ化水素の
    純度保持法。
  3. 【請求項3】 材質がSUS−304、SUS−31
    6、又はSUS−316Lのステンレス鋼からなるボン
    ベを用いる請求項1又は2記載のヨウ化水素の純度保持
    法。
  4. 【請求項4】 ボンベに付設する弁として、接ガス部の
    材質はステンレス鋼であるものを用い、かつその接ガス
    部表面が、あらさ3μm以下まで研磨処理されたものを
    用いる請求項1〜3いずれかに記載のヨウ化水素の純度
    保持法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004270917A (ja) * 2002-08-05 2004-09-30 Mitsui Chemicals Inc ハロゲン系ガス充填容器およびこれに充填されたガス並びに充填容器の処理方法
US8590705B2 (en) 2010-06-11 2013-11-26 Air Products And Chemicals, Inc. Cylinder surface treated container for monochlorosilane
WO2024106318A1 (ja) * 2022-11-18 2024-05-23 住友精化株式会社 金属容器、ヨウ化炭化水素充填容器及びヨウ化炭化水素

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WO2024106318A1 (ja) * 2022-11-18 2024-05-23 住友精化株式会社 金属容器、ヨウ化炭化水素充填容器及びヨウ化炭化水素

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