JPH09161741A - 密閉型アルカリ蓄電池 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温において酸素や電解液の存在下でも絶縁
ガスケットの分解破損が抑制され、漏液性に優れ、容量
低下も少ない密閉型アルカリ蓄電池を提供する。 【解決手段】 密閉型アルカリ蓄電池の外装缶と封口板
との間にポリアミド製絶縁ガスケットを配置し、この絶
縁ガスケットの電池内に露出した部分にポリブテンを塗
布した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ニッケル−カドミ
ウム蓄電池やニッケル−水素蓄電池などの密閉型アルカ
リ蓄電池に用いられる絶縁ガスケットの改良に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】各種の電源として用いられているアルカ
リ蓄電池においては、一般にケ−ス（外装缶）と蓋（封
口板）をそれぞれ負極と正極の端子とするために両者間
の絶縁が必要であり、またこの部分からの漏液防止を兼
ねて、この封口板と外装缶の間に絶縁ガスケットが用い
られている。その最も一般的な構成としては、封口板の
円周部に合成樹脂製のリングをはめ込んでおき、このリ
ングを締め付けるように外装缶をかしめて固定してい
る。

【０００３】絶縁ガスケットの材料としては、耐電解液
性と絶縁性を考慮して最も汎用な合成樹脂であるポリオ
レフィンとくにポリエチレンが使われてきた。そして封
口板と外装缶との接触性を良くするためにこれらと絶縁
ガスケットとの間にはシール材が使用されていた。しか
し、その後成型が容易で、封口板と外装缶との接触性も
向上するポリアミド（ナイロン）製の絶縁ガスケットが
用いられてきた。さらにガスケットとしての耐熱特性を
もたせるために、ポリサルフォンを使用することが提案
されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ニッケル−カドミウム
蓄電池やニッケル−水素蓄電池を通常の条件で使用して
いる間は、これらポリアミドあるいはポリサルフォン製
の絶縁ガスケットは何ら問題なくその機能を発揮してき
た。

【０００５】ところが最近では電池用途の広がりや機器
の小型化などが進み、例えば夏期において自動車の内部
に電池使用機器が置かれた場合や、太陽電池の蓄電用と
して夜間や雨天の際に使う電池、屋外に設置された機器
用電池等は、機器からの熱も加わって７０〜８０℃のよ
うな高温にさらされるようになった。そこで、このよう
な雰囲気に電池を置いて連続充電を行なってみたところ
２年未満で、絶縁ガスケットの電池内部に露出した部分
が分解していることがわかった。この分解により、ガス
ケット部より漏液を起こし、内部抵抗が上昇して容量低
下に至っていた。

【０００６】その理由として、高温で連続充電を行なう
ことにより、電池内部に過剰の酸素が発生するとともに
電解液の水分により、ガスケットが加水分解を受けたこ
とによると思われる。耐熱性に優れているといわれてい
るポリサルフォン製の絶縁ガスケットでもこのような過
酷な条件のもとでは劣化や破損が著しいことも確認し
た。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は封口板と外装缶
との間に設置されたポリアミド製絶縁ガスケットの電池
内部に露出した部分に、耐電解液性、耐熱性に優れた絶
縁性の液状ポリマー、例えばポリブテンを塗布したもの
である。ここで用いるポリブテンは、とくにその性状は
限定されないが、取扱いの点から４０℃での動粘度が５
００〜１０，０００ｃ・Ｓ・ｔのものが好ましい。

【０００８】

【発明の実施の形態】ポリアミドやポリサルフォン製の
絶縁ガスケットは、これを組み込んだ電池を高温下で連
続充電を行なうことにより、電池内部に露出した部分か
ら破壊され、その破壊された部分より漏液を起こし、ま
た絶縁抵抗も低下して容量低下をもたらした。この絶縁
ガスケットの分解による破壊は、熱に加えて、充電によ
り発生する過剰の酸素と電解液の水分の存在により、大
幅に加速されたことによる。

【０００９】しかし、ポリアミドは成型性がよく、封口
板や外装缶との間のシール性も良好であるので通常の使
用では問題がなく、ぜひ採用したい材料である。したが
ってこの材料を用いてしかも簡単な手段で高温、連続充
電のような過酷な条件に耐える絶縁ガスケットの構成が
望まれる。

【００１０】本発明は、そのための有効な手段を提供す
るものである。ポリアミドの分解（加水分解）速度を低
下させるためには、酸素および水分が、ガスケットに吸
着することを妨げることが有効である。そのために、ガ
スケットの電池内部に露出した部分に、絶縁性液状ポリ
マーとくにポリブテンを塗布する。

【００１１】ポリブテンはイソブチレンを主体とし一部
にｎ−ブテンが反応した長鎖状炭化水素共重合物質であ
り、液状のポリマーである。その末端の２重結合は極め
て安定であり、酸素やアルカリ等に強い抵抗力を持って
いる。

【００１２】しかも、酸素、アルカリ等に強い抵抗力を
持つ通常の汎用樹脂は可溶性であってもそれは有機溶媒
にのみ可溶で水には溶けないので、有機溶媒を必要とし
て工業的にはコスト高になり、使用済みの有機溶媒の処
理も必須条件となる。また樹脂のエマルジョンやディス
パージョンを用いると、これをフィルムにするためには
樹脂の融点以上の加熱が必要であり、工程が複雑にな
る。ところがポリブテンはそれ自体が液状であることか
ら溶媒に溶かす必要はなく、そのままガスケットの電池
内部に露出した部分に塗布するだけで良い。また仮にそ
の一部が垂れ落ちて電極群に触れても主成分がポリオレ
フィンであることから分子中に有害な、例えばニトロ基
やハロゲン基やあるいは悪影響が心配されるアミノ基、
カルボニル基、スルホン基などの基がなく、したがって
電池群への悪影響は全く無い。

【００１３】以下に本発明の実施例を説明する。図１
は、ニッケル−カドミウム蓄電池やニッケル−水素蓄電
池などの一般的な円筒状電池の上部断面図である。図１
おいて１は正極、負極およびセパレータからなる渦巻状
の電極群、２はこれを収容した外装缶、３が封口板であ
り、電池としての端子を兼ねるとともに内部に安全弁４
を設けている。５が本発明の特徴とするポリアミド製絶
縁ガスケットであり、組立封口板３の周縁部に設置され
ている。このガスケットの電池内部に露出した６の部分
にポリブテンを塗布した。ポリブテンの分子式は、次の
（化１）に示す通りである。

【００１４】

【化１】

【００１５】本実施例では対象電池をニッケル−カドミ
ウム蓄電池の単３型とし、ガスケットに塗布するポリブ
テンとしては日本石油製のポリブテン、平均分子量９７
０、４０℃での動粘度９，６００ｃ・Ｓ・ｔの商品番号
ＨＶ−１００を選び、これをガスケット５の電池の内側
に露出する６の部分全体に０．３ｍｌ塗布した。この電
池をＡとし、比較のためにポリブテンを塗布しないポリ
アミド製絶縁ガスケットを用い、他はすべて電池Ａと同
じ構成とした電池をＢとした。Ａ、Ｂ各電池１００セル
を用い、雰囲気温度を７５℃とし、０．１５Ｃの電流で
連続的に充電し、７２時間ごとに０．２Ｃの電流で１．
０Ｖまで放電し、その後休止１時間後に再度充電という
サイクル条件で電池の特性変化を調べた。

【００１６】その結果電池Ｂでは１．５年後に１０％の
セルにおいてガスケットの封口部分に電解液の結晶が認
められ、２年後にはこれが６０％に拡大した。一方、電
池Ａでは１．５年後に変化は無く、２年後に５％のセル
の封口部分にごく少量の結晶が認められた。また、２年
後に調べた容量低下は電池Ｂでは平均で６５％まで低下
していたが、Ａでは８５％を保っていた。この後電池を
分解して絶縁ガスケットの劣化破損状況を観察した結
果、Ｂでは電池内に露出した部分は破壊が著しく原形を
保っていなかったが、Ａではほぼ原形を保っていて破損
の程度は軽微であった。

【００１７】この結果からポリアミド製絶縁ガスケット
の電池内に露出した部分にポリブテンを塗布したことに
より、高温でしかも酸素や電解液の存在下でも絶縁ガス
ケットの加水分解に起因した破損が抑制され、封口性、
絶縁性とも良好に維持できたことが明かである。

【００１８】

【発明の効果】このように外装缶と封口板との間にポリ
アミド製絶縁ガスケットを用い、この絶縁ガスケットの
電池内に露出した部分に絶縁性液状ポリマ−を塗布した
ことにより、高温で酸素や電解液の存在下でも絶縁ガス
ケットの分解破損が抑制され、耐漏液性に優れ、容量低
下も少ない密閉型アルカリ蓄電池を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の円筒状電池の上部断面図

【符号の説明】

１ 電極群 ２ 外装缶 ３ 封口板 ４ 安全弁 ５ ポリアミド製絶縁ガスケット ６ ポリブテン

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】封口板と外装缶との間に設置された絶縁ガ
   スケットの電池内部に露出する部分に、耐電解液性、耐
   熱性の優れた絶縁性液状ポリマーを塗布したことを特徴
   とする密閉型アルカリ蓄電池。
2. 【請求項２】絶縁性液状ポリマ−がポリブテンである請
   求項１記載の密閉型アルカリ蓄電池。
3. 【請求項３】ポリブテンの分子量が４００〜１、０００
   で４０℃での動粘度が５００〜１０、０００ｃ・Ｓ・ｔ
   である請求項２記載の密閉型アルカリ蓄電池。