JPH09124427A - 新規微生物菌株を用いたイネ苗の立枯性病害防除剤及び防除方法 - Google Patents

新規微生物菌株を用いたイネ苗の立枯性病害防除剤及び防除方法

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JPH09124427A
JPH09124427A JP7281000A JP28100095A JPH09124427A JP H09124427 A JPH09124427 A JP H09124427A JP 7281000 A JP7281000 A JP 7281000A JP 28100095 A JP28100095 A JP 28100095A JP H09124427 A JPH09124427 A JP H09124427A
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cab
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佳則 角田
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清子 石井
Akira Ouchi
昭 大内
Koji Nishiyama
幸司 西山
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NORIN SUISANSYO CHUGOKU NOGYO
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 シュードモナス・エスピー(Pseudomonas
sp.) CAB-02を有効成分として含有することを特徴とす
る、イネ苗の立枯性病害防除剤。該病害防除剤を、浸種
時の種籾の浸漬液に添加することを特徴とするイネ苗の
立枯性病害防除方法、又は該病害防除剤を含む懸濁液
に、浸種後の種籾を播種直前に浸漬することを特徴とす
るイネ苗の立枯性病害防除方法、又は該病害防除剤を、
生育期のイネに散布することを特徴とする、もみ枯及び
イネ苗の立枯性病害防除方法。イネ苗の立枯性病害防除
能を有する、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas s
p.) CAB-02。 【効果】 本発明のイネ立枯病防除剤は、イネもみ枯細
菌病菌による苗腐敗症、イネ苗立枯細菌病およびイネば
か苗病の3重要病害に対して発病を強く抑制する作用が
あり、現在これらの病害を対象として使用されている農
薬と比べ同等以上の防除効果が期待できる。また、種籾
浸種時の1回の処理で上記3病害の同時防除が可能であ
り、現行のように数種類の薬剤を混用して使用する必要
がなく、農薬による環境汚染の心配がなくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イネ苗の立枯性病
害に対する防除能を有する新規微生物菌株、及びそれを
用いたイネ苗の立枯性病害防除剤及び病害防除方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】イネ苗の立枯性病害である、イネもみ枯
細菌病菌による苗腐敗症、イネ苗立枯細菌病、イネばか
苗病はいずれもイネの育苗時に発生する種子伝染性の病
害である。特に加温箱育苗時において、前2者は幼苗の
腐敗と萎凋枯死を、ばか苗病は幼苗腐敗や徒長苗を生
じ、これらの病害が発生した苗は移植不能となり廃棄す
る他ない。幼苗腐敗等の被害が発生しない場合でも、保
菌した苗を本田に移植すれば、もみ枯細菌病については
もみ枯症発生の原因となり、ばか苗病については不稔や
枯死株発生の原因となる。苗立枯細菌病の本田での被害
は解明されていないが、いずれにしてもこのようなイネ
から収穫した種子は保菌しているため、次年度の病害発
生の伝染源となる。これらの3病害はいずれも例年全国
各地で発生し、多くの被害をもたらしており、水稲栽培
上の重要病害として位置づけられている。しかしなが
ら、これらの病害に対して抵抗性のあるイネ品種は存在
しない。イネばか苗病では数種の有効な種子消毒薬剤が
実用に供せられているものの、薬剤耐性菌の問題があ
る。また、イネもみ枯細菌病とイネ苗立枯細菌病では未
だ安定して高い効果を示す薬剤が見出されていない。さ
らに近年、種子消毒剤の廃液が環境汚染源として、その
処理が問題となっている。そのため、これらの病害の防
除にあたっては、防除効果が高く、水質汚濁性の少ない
防除資材の開発が不可欠である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、イネ
苗の立枯性病害であるイネもみ枯細菌病菌による苗腐敗
症、イネ苗立枯細菌病、イネばか苗病に対して優れた防
除効果を発揮し得、かつ環境の汚染もないイネ苗の立枯
性病害の防除する手段を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、上記イネ苗の
立枯性病害の防除に優れた効果を発揮しうるシュードモ
ナス属に属する新規な微生物菌株を見いだし、本発明を
完成した。
【0005】即ち、本発明は、シュードモナス・エスピ
ー(Pseudomonas sp.) CAB-02を有効成分として含有する
ことを特徴とする、イネ苗の立枯性病害防除剤である。
本発明はまた、上記のイネ苗の立枯性病害防除剤を、浸
種時の種籾の浸漬液に添加することを特徴とするイネ苗
の立枯性病害防除方法、又は上記のイネ苗の立枯性病害
防除剤を含む懸濁液に、浸種後の種籾を播種直前に浸漬
することを特徴とするイネ苗の立枯性病害防除方法、又
は上記のイネ苗の立枯性病害防除剤を、生育期のイネに
散布することを特徴とする、イネ苗のもみ枯及び立枯性
病害防除方法である。更に、本発明は、イネ苗の立枯性
病害防除能を有する、シュードモナス・エスピー(Pseud
omonas sp.) CAB-02である。以下、本発明を詳細に説明
する。
【0006】
【発明の実施の態様】本発明に用いる微生物は、イネ苗
の立枯性病害防除能を有するシュードモナス・エスピー
(Pseudomonas sp.)CAB-02(以下、CAB-02菌株という)
である。
【0007】CAB-02菌株は、広島県福山市、中国農業試
験場圃場内のイネから分離・収集した約700菌株の細菌
について、イネもみ枯細菌病菌による苗腐敗症を指標と
した生物検定を行い、発病抑制力の強い細菌を選抜した
結果得られたものである。
【0008】CAB-02 菌株は、形態を光学顕微鏡又は電
子顕微鏡で観察した結果、細胞の大きさは1〜4μmの
桿菌で、細胞の多形性はなく、数本以上の極鞭毛を有
し、運動性を有するという特徴を示した。また、グラム
反応は陰性で、内生胞子を形成せず、PHB顆粒を蓄積し
なかった。その他の細菌学的性質については、次に示す
とおりである。
【0009】1.培養的性質 CAB-02菌株の各種培地における生育状態は次の通りであ
る。観察は28℃、3日培養後に行った. 肉汁寒天平板培養 集落の性状は、白色、円形、全縁丘状、表面平滑で、湿
光を有し、バター質である。水溶性の色素は産生しな
い。 肉汁液体培養 培地は、全面濁り、白色の皮膜を形成する。
【0010】2.生理・生化学的性質 一般的性質 酸素との関係 好気性 非水溶性色素の産生 − 黄緑色蛍光色素の産生 − ピオシアニンの産生 − ゼラチンの液化 − カタラーゼ活性 + オキシダーゼ活性 + ウレアーゼ活性 + 硝酸塩の還元 + 硝酸呼吸能 − レバンの産生 − デンプンの加水分解 − クエン酸の利用 + 乳酸の利用 + グルコン酸の酸化 − エクスリンの加水分解 − アルギニンの加水分解 − pH3.5での生育 − 生長素要求性 なし 生育速度 速い ジャガイモ塊茎の腐敗 −
【0011】 グルコースの分解様式(ヒュ−ライフ
ソン(Hugh-Laifson)法による、30℃、7日間) 条 件 生 育 酸の生成 ────────────────── 嫌気的条件 − − 好気的条件 + +
【0012】 生育温度(肉汁液体培地、7日間) 温 度 生 育 ───────────── 4℃ − 10℃ + 15℃ + 20℃ + 25℃ + 30℃ + 40℃ + 41℃ + 42℃ +
【0013】 耐食塩性 濃 度 生 育 ───────────── 1% + 2% + 3% + 4% − 5% −
【0014】 各種炭素源の利用性 グルコース + フルクトース + キシロース + L-アラビノース + ガラクトース + マンノース + ラムノース − D-リボース + スクロース + マルトース + ラクトース + トレハロース + D-マンニトール + D-ソルビトール + イノシトール + エリトリトール − ガラクチトール + アドニトール − エタノール − 2,3-ブチレングリコール + プロピレングリコール − ゲラニオール − ベタイン + β−アラニン + L-アルギニン + L-バリン + トリプタミン塩酸塩 − L-酒石酸 + D-酒石酸 + m-酒石酸 + マロン酸 + メサコン酸 + シトラコン酸 + レブリン酸 + 安息香酸 − ヒドロキシ安息香酸 + プロピオン酸 − n-酪酸 − グリコール酸 + dl−リンゴ酸 + n-カプリン酸 + アジピン酸 +
【0015】以上の細菌学的性質のうち、(1)グラム陰
性の桿菌である、(2)オキシダーゼ活性が陽性である、
(3)極鞭毛を有し活発に運動する、(4)好気性である、
(5)酸化的にのみグルコースを分解する、(6)内生胞子の
形成が認められない等の特徴から、CAB-02菌株はPseudo
monas属に属すると判断される。また、前記の諸性質を
もとに「Bergey's Manual of Determinative Bacteriol
ogy」第9版により検索した結果、現在記載されているP
seudomonas属細菌の中にはCAB-02菌株と類似の性質を持
つ種は認められなかった。したがって、本発明者らはCA
B-02菌株をPseudomonas sp. CAB-02と命名し、工業技術
院生命工学工業技術研究所にFERM P-15237号として寄託
した。
【0016】CAB-02菌株の培養には、特別な方法を用い
る必要はなく、シュードモナス属に属する公知の菌株と
同様の方法を用いることができる。培地としては、生育
可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育促進物質
を適当に含有する培地であれば、合成培地、天然培地の
いずれも用いることができる。具体的な培地を例示する
と、普通寒天培地、キングB培地、PSA(ジャガイモ
・ショ糖・寒天)培地、PDA(ジャガイモ・デキスト
ロース・寒天)培地、PPGA(ジャガイモ・ペプトン
・グルコース・寒天)培地、YMA(イースト・マルト
ース・寒天)培地、YPGA(イースト・ペプトン・グ
ルコース・寒天)培地等を挙げることができる。培養に
際しては、温度を15〜42℃、好ましくは28〜30
℃、pHを6.0〜7.5、好ましくは6.8〜7.0
に維持することが望ましい。
【0017】一般に、イネ種籾は、播種前に冷水または
温湯からなる浸漬液に48〜96時間程度浸漬すること
(これを浸種いう)により種籾に水分を吸収させ、酵素
活性を高め催芽をはかることで播種後の出芽を容易にす
る。
【0018】本発明の菌株を用いたイネ苗の立枯性病害
防除方法は、本菌株菌体を浸種時の種籾の浸漬液に添加
するか、又は浸種後の種籾を播種直前に本菌株菌体の懸
濁液中に浸漬することにより行う。また、イネもみ枯細
菌病に対しては生育期のイネに本菌株菌体を散布しても
よい。
【0019】本発明の菌株を上記の防除方法に使用する
場合、上記浸漬液又は懸濁液中に、菌体として107
/ml以上、好ましくは108 個/ml以上添加又は懸濁す
るのが適当である。また、上記浸漬液又は懸濁液中での
種籾の処理条件は、浸漬液へ浸漬する場合は15〜35
℃、好ましくは20〜30℃にて48〜96時間、好ま
しくは48〜72時間、懸濁液へ浸漬する場合は、15
〜35℃、好ましくは20〜30℃にて 瞬時〜24時
間、好ましくは1〜24時間が例示される。
【0020】本発明の病害防除剤は、微生物をそのまま
使用してもよいが、一般には農薬に使用可能な固体担体
又は液体担体と混合して、液剤、カプセル剤、凍結乾燥
アンプル剤などの製剤形態に調製して使用される。微生
物としては、通常は菌体を用い、菌体の濃度は、液剤で
あれば107 〜1010個/ml、好ましくは108 〜10
9 個/mlとするの適当である。
【0021】本発明の防除対象となる病害としては、イ
ネ苗の立枯性病害である、イネもみ枯細菌病菌による苗
腐敗症、イネ苗立枯細菌病、イネばか苗病等を挙げるこ
とができる。
【0022】
【実施例】以下に本発明の実施例、試験例、製剤例を示
し、さらに具体的に説明するが,本発明はこれらに何ら
限定されるものではない。 〔実施例〕 CAB-02菌株の選抜 広島県福山市、中国農業試験場圃場内のイネから分離・
収集した約700菌株の細菌について、イネもみ枯細菌病
菌による苗腐敗症を指標とした生物検定を行い、発病抑
制力の強い細菌を選抜した。具体的には、圃場から採取
したイネおよび籾を滅菌水中で洗浄し、その洗液を寒天
平板上で培養して出現した細菌の集落を単離して保存
し、供試細菌とした。105cfu/mlのイネもみ枯細菌病菌
と108cfu/mlの供試細菌との混合細菌液に健全な種籾を
浸漬後播種し、6日後に発病調査を行ったところ、苗腐
敗症の発生を抑制する細菌株がいくつか認められた。中
でも著しく強い抑制力を発揮したCAB-02菌株を選抜し
た。
【0023】〔試験例1〕 イネもみ枯細菌病菌による
苗腐敗症に対する発病抑制効果(病原細菌液を用いた種
籾接種による試験) (1)試験方法 CAB-02菌株とイネもみ枯細菌病菌(MAFF 301441)を供試
した。濃度を105cfu/mlに調整した病原細菌液に、CAB-0
2菌株を濃度が108cfu/mlになるように添加して混合細菌
液とし、その中で健全種籾(品種金南風)を10℃で3日
間浸種した後播種する区(区) およびあらかじめ同一
条件で浸種した種籾を播種直前に約1時間混合細菌液中
に浸漬して播種する区(区)を設けた。また、それぞ
れの対照として病原細菌のみを105cfu/mlに調整した菌
液で処理する区を設けた。育苗は32℃の湿室で行い、6
日後から苗腐敗症の発病程度を調査した。試験には直径
3cmの容器を用い、1区20粒播種×3ポットとし、6回
反復した。
【0024】(2)試験結果 病原細菌液のみを処理した区では本病が激発し、発病苗
率100%、発病度は99以上であった。CAB-02菌株を添加し
た混合細菌液を処理した区では全く発病が認められず、
本菌株の添加により高い発病抑制効果が認められた(表
1参照)。また、CAB-02菌株を添加した区の苗の生育は
正常であり、本菌株の添加による悪影響は認められなか
った。
【0025】
【表1】 イネもみ枯細菌病菌による苗腐敗症に対する発病抑制効果 (病原細菌液を用いた種籾接種による試験) ──────────────────────── 処 理 発病苗率 発病度1)防除価2) (%) ──────────────────────── (区) 3日間浸漬 病原細菌+CAB-02菌株 0 0 100 病原細菌のみ 100 99.4 ──────────────────────── (区) 播種直前1時間浸漬 病原細菌+CAB-02菌株 0 0 100 病原細菌のみ 100 99 ──────────────────────── 1)発病度=((4A+3B+2C+D)/(4×調査苗数))×100 〔A:草丈3cm以内・腐敗が2/3以上に及ぶ発病苗,B:草丈3cm 以内・腐敗が2/3未 満の発病苗,C:草丈3.1 〜5.0cmの発病苗,D:草丈5.1cm以上の発病苗〕 2)防除価=((A-B)/A)×100 〔A:病原細菌のみ処理した区の発病度,B:混合細 菌液を処理した区の発病度〕
【0026】〔試験例2〕 イネもみ枯細菌病菌による
苗腐敗症に対する発病抑制効果(自然感染籾を用いた試
験) (1)試験方法 イネもみ枯細菌病の自然感染籾(品種金南風、保菌籾率
約20%)を供試し、濃度が108cfu/mlのCAB-02菌株の細
菌液中で10℃3日間浸種した後播種する区(区) 、お
よびあらかじめ浸種・吸水させた種籾を播種直前に約1
時間細菌液中に浸漬して播種する区(区)を設けた。
また、それぞれの対照としてCAB-02菌株を添加しない区
を設けた。育苗は32℃の湿室で行い、6日後から苗腐敗
症の発病程度を調査した。試験には11×16cmの容器を用
い、1区当り約750粒播種、3反復とした。
【0027】(2)試験結果 対照区では発病苗率で84.3〜86.3%、発病度で27.7〜53.
6の多発条件下であったが、CAB-02菌株を添加した場合
には、3日間浸漬では発病苗率0、播種直前の1時間浸
漬でもほとんど発病は認められず、自然感染籾に対して
も高い発病抑制効果のあることが確認された(表2参
照)。また、CAB-02菌株を添加した区の苗の生育は正常
であり、悪影響は認められなかった。
【0028】
【表2】 イネもみ枯細菌病菌による苗腐敗症に対する発病抑制効果 (自然感染籾を用いた試験) ──────────────────────── 処 理 発病苗率(%) 発病度1)防除価2) ──────────────────────── (区) 3日間浸種 CAB-02菌株液 0 0 100 対照(水) 84.3 27.7 ──────────────────────── (区) 播種直前1時間浸種 CAB-02菌株液 0.7 0.2 99.6 対照(水) 86.3 53.6 ──────────────────────── 1)発病度の計算方法は表1に同じ 2)防除価=((A-B)/A)×100 〔A:無処理区の発病度,B:CAB-02処理区の発病度 〕
【0029】〔試験例3〕 イネ苗立枯細菌病に対する
発病抑制効果 (1)試験方法 イネ苗立枯細菌病菌(MAFF 301723)の濃度を105cfu/mlに
調整した病原細菌液に、CAB-02菌株を濃度が108cfu/ml
になるように添加して混合細菌液とし、これにあらかじ
め10℃3日間浸種した健全種籾(品種金南風)を播種直
前に約1時間浸漬して播種した。対照として病原細菌の
みを105cfu/mlに調整した菌液に浸漬して播種する区を
設けた。育苗は32℃の湿室で行い、6日後から発病程度
を調査した。試験には11×16cmの容器を用い、1区当り
約750粒播種、6反復とした。
【0030】(2)試験結果 病原細菌液のみに浸漬した籾では本病が激発し、発病苗
率100%、発病度99以上であった。CAB-02菌株を添加する
と全く発病が認められず、高い発病抑制効果が認められ
た(表3参照)。また、CAB-02菌株を添加しても苗の生
育は正常であり、悪影響は認められなかった。
【0031】
【表3】 1)発病度の計算方法は表1に同じ2) 防除価=((A-B)/A)×100 〔A:病原細菌のみ処理区の
発病度,B:CAB-02菌株処理区の発病度〕
【0032】〔試験例4〕 イネばか苗病に対する発病
抑制効果 (1)試験方法 イネばか苗病の自然感染籾(品種吉備の華、発病茎のベ
ノミル耐性菌株率約11%)を供試し、濃度が108cfu/ml
のCAB-02菌株の細菌液中で10℃3日間浸種した後播種し
た。また、対照としてCAB-02菌株を添加しない区を設け
た。育苗は32℃の湿室で6日間、その後ガラス室で約2
週間管理し、発病状況を調査した。試験には11×16cmの
容器を用い、1区当り約750粒播種、3反復とした。
【0033】(2)試験結果 対照区の徒長苗率は67.4%、腐敗枯死を含めた発病苗率
では93.0%と本病が多発した。CAB-02菌株の菌液に処理
した籾は、徒長苗率1.1%、発病苗率5.3%と著しく発病
率が減少し、本菌株はイネばか苗病に対しても高い発病
抑制効果のあることが確認された(表4参照)。また、
CAB-02菌株を添加した区の苗の生育は正常であり、悪影
響は認められなかった。
【0034】
【表4】 イネばか苗病に対する発病抑制効果 ────────────────────────────────── 徒長苗率 腐敗枯死苗率発 発病苗率1) 防除価2) 処 理 ────────── (%) (%) (%) 徒長苗 発病苗 ────────────────────────────────── CAB-02菌株液 1.1 4.2 5.3 98.4 94.3 対照(水) 67.4 25.6 93.0 ────────────────────────────────── 1)発病苗率=徒長苗率+腐敗枯死苗率 2)防除価=((A-B)/A)×100 〔A:対照区の発病度,B:CAB-02処理区の発病度〕
【0035】〔試験例5〕 生育期のイネ葉鞘内におけ
るイネもみ枯細菌病菌増殖抑制効果 (1)試験方法 CAB-02菌株とイネもみ枯細菌病菌(MAFF 301441)を供試
した。CAB-02菌株と病原細菌の濃度をそれぞれ106cfu/m
lに調整した混合細菌液を、生育期のイネの葉鞘内に注
入接種し、1〜3週間後における病原細菌検出茎率を、
葉鞘内側を脱脂綿でこすり取り、選択培地上に画線培養
する方法(脱脂綿こすり取り法)により調査した。試験
は年次を変え2回反復した。
【0036】(2)試験結果 生育期のイネ葉鞘内に病原細菌液のみを接種した場合に
は、2〜3週間後でも高率に病原細菌が検出された。こ
れに対し、CAB-02菌株を同時接種すると、試験により差
はあるものの、時間の経過とともに病原菌の検出茎率が
低下する傾向が認められた(表5参照)。このことか
ら、生育期にCAB-02菌株を接種することにより、本田の
イネ体上での病原菌密度を制御し、本田に発生するもみ
枯及びその籾を種子とした場合に発生する立枯性病害を
防除することが可能と考えられた。
【0037】
【表5】 CAB-02菌株を同時接種した葉鞘におけるイネもみ枯細菌病菌の検出程度 ──────────────────────── 接種後の病原細菌の 検出程度(%) 反復 処 理 ────────── 71) 14 21 ──────────────────────── 病原細菌+CAB-02菌株 0 0 − I 病原細菌 100 100 − ──────────────────────── 病原細菌+CAB-02菌株 100 − 60 II 病原細菌 70 − 90 ──────────────────────── 1)接種後日数
【0038】〔製剤例1〕 液剤 CAB-02菌株の菌体1014個、Tween 20(2g)を滅菌水
10L に加えて混合し、液剤を調製した。
【0039】〔製剤例2〕 カプセル剤 アルギン酸ナトリウム0.7%、カオリン5%、グリセリン15
% 、水79.3% 混合液1ml中に、 CAB-02 菌株の菌体10
10個を懸濁し、0.2 モル酢酸カルシウム溶液中に滴下し
てカプセル状生成物を得た。これを風乾し、カプセル剤
を調製した。
【0040】〔製剤例3〕 凍結乾燥アンプル剤 スキムミルク9%、グルタミン酸ナトリウム1.3%、水89.7
% 混合液1ml中に、 CAB-02 菌株の菌体1010個を懸濁
し、ガラス容器に入れて真空凍結乾燥後溶封し、凍結乾
燥アンプル剤を調製した。
【0041】
【発明の効果】本発明のイネ立枯病防除剤は、イネもみ
枯細菌病菌による苗腐敗症、イネ苗立枯細菌病およびイ
ネばか苗病の3重要病害に対して発病を強く抑制する作
用があり、現在これらの病害を対象として使用されてい
る農薬と比べ同等以上の防除効果が期待できる。また、
種籾浸種時の1回の処理で上記3病害の同時防除が可能
であり、現行のように数種類の薬剤を混用して使用する
必要がなく、農薬による環境汚染の心配がなくなる。ま
た、本発明のイネ立枯病防除剤を生育期のイネに散布す
れば、葉鞘内生育期に処理すれば、イネ体上(葉鞘内)
のイネもみ枯細菌病菌の密度を低下させる作用を有して
おり、抵抗性品種や特効的薬剤のない本病の病原菌密度
を本田で制御する生物的防除の可能性を提供する。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年10月31日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正内容】
【0005】即ち、本発明は、シュードモナス・エスピ
ー(Pseudomonas sp.)CAB-02を有効成分として含有する
ことを特徴とする、イネ苗の立枯性病害防除剤である。
本発明はまた、上記のイネ苗の立枯性病害防除剤を、浸
種時の種籾の浸漬液に添加することを特徴とするイネ苗
の立枯性病害防除方法、又は上記のイネ苗の立枯性病害
防除剤を含む懸濁液に、浸種後の種籾を播種直前に浸漬
することを特徴とするイネ苗の立枯性病害防除方法、又
は上記のイネ苗の立枯性病害防除剤を、生育期のイネに
散布することを特徴とする、もみ枯及びイネ苗の立枯性
病害防除方法である。更に、本発明は、イネ苗の立枯性
病害防除能を有する、シュードモナス・エスピー(Pseud
omonas sp.)CAB-02 である。以下、本発明を詳細に説明
する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】一般に、イネ種籾は、播種前に冷水または
温湯からなる浸漬液に48〜96時間程度浸漬すること
(これを浸種という)により種籾に水分を吸収させ、酵
素活性を高め催芽をはかることで播種後の出芽を容易に
する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大内 昭 茨城県つくば市並木2丁目14番301−1004 号 (72)発明者 西山 幸司 茨城県土浦市右籾2340番51号

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シュードモナス・エスピー(Pseudomonas
    sp.) CAB-02を有効成分として含有することを特徴とす
    る、イネ苗の立枯性病害防除剤。
  2. 【請求項2】 イネ苗の立枯性病害が、イネもみ枯細菌
    病菌による苗腐敗症、イネ苗立枯細菌病、イネばか苗病
    から成る群から選ばれた病害であることを特徴とする、
    請求項1に記載のイネ苗の立枯性病害防除剤。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のイネ苗の立枯性病
    害防除剤を、浸種時の種籾の浸漬液に添加することを特
    徴とする、イネ苗の立枯性病害防除方法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載のイネ苗の立枯性病
    害防除剤を含む懸濁液に、浸種後の種籾を播種直前に浸
    漬することを特徴とする、イネ苗の立枯性病害防除方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2記載のイネ苗の立枯性病
    害防除剤を、生育期のイネに散布することを特徴とす
    る、もみ枯及びイネ苗の立枯性病害防除方法。
  6. 【請求項6】 イネ苗の立枯性病害防除能を有する、シ
    ュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) CAB-02。
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