JPH09113284A - 光ファイバコイル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 光ファイバ外周に方向性のある側圧がかから
ないように特別の巻き方をすることなく、自然の状態で
コイル状に光ファイバを巻くだけで偏波分散が充分に小
さくなっている光ファイバコイルを提供する。 【解決手段】 所定の周期で樹脂被覆４が偏肉している
単ーモード光ファイバ心線１がリール２にコイル状に巻
き回されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、分散補償光ファイ
バ、光増幅用希土類ドープ光ファイバ、ジャイロ等のセ
ンサー用光ファイバ等に形成された光ファイバコイルに
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】光ファイバは光伝送線路そのものとして
使用される以外にも光伝送路の分散を補償する負の高分
散光ファイバ（分散補償ファイバ）、光増幅用希土類ド
ープ光ファイバ、ジャイロ等のセンサー用光ファイバ等
として用いられることがある。これら分散補償光ファイ
バ、光増幅用希土類ドープ光ファイバ、ジャイロなどの
センサー用光ファイバ等は、装置内へ組み込むため、通
常コイル状に小さく巻いて使用される。しかしながら光
ファイバをコイル状に巻く際に小さく巻き過ぎると、光
ファイバに曲がりや側圧が加わり、複屈折が生じて偏波
分散が増加する現象が生ずる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】偏波分散は、信号光の
歪みが上乗せされ、通信や光センサーとして使用する場
合の大きな問題となる。特に超高速伝送システムにおい
ては、伝送距離を制限する重要な要因であり、これを抑
制するための技術が鋭意検討されている。最も有効な手
段として、コイルの片端にファラデー回転板をつけ、偏
波面を９０°回転させて光を戻す反射方法が提案されて
いる。

【０００４】この方法は偏波分散を完全に相殺できるも
のの、反射ミラーと回転板が高価なため、ー般に導入す
ることは困難となっている。実用的で簡便な方法として
は、光ファイバ外周に方向性のある側圧がかからないよ
うな巻き方をするのがよいが、現在まで偏波分散の増加
を充分に抑制できる手法は提案されていないのが実情で
ある。

【０００５】本発明は上記の課題を解決し、光ファイバ
外周に方向性のある側圧がかからないように特別の巻き
方をすることなく、自然の状態でコイル状に光ファイバ
を巻くだけで偏波分散が充分に小さくなっている光ファ
イバコイルを提供することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は上記の課題を解
決するために以下のような手段を有している。

【０００７】本発明の請求項１の光ファイバコイルは、
光ファイバ心線の樹脂被覆の偏肉方向がその長手方向に
おいて変化している単ーモード光ファイバ心線がリール
にコイル状に巻き回されていることを特徴とする。

【０００８】本発明の請求項２の光ファイバコイルは、
前記樹脂被覆の偏肉方向の変化が９０°以上であること
を特徴する。

【０００９】本発明の請求項３の光ファイバコイルは、
前記樹脂被覆の偏肉方向の変化の周期が２０ｍ以内であ
ることを特徴とする。

【００１０】本発明の請求項４の光ファイバコイルは、
前記樹脂被覆の偏肉方向の変化は一定の周期を有するこ
とを特徴とする。

【００１１】本発明の請求項５の光ファイバコイルは、
前記樹脂被覆の偏肉方向の変化はランダムな周期を有す
ることを特徴とする。

【００１２】本発明の請求項１の光ファイバコイルによ
れば、単ーモード光ファイバ心線の樹脂被覆の偏肉方向
がその長手方向において変化しているので、この光ファ
イバ心線を用いてコイルを作製すると、樹脂被覆の偏肉
により、所定の張力をかけてリールに巻くと、光ファイ
バ心線の肉厚の薄い方が自然にリール側に来る。

【００１３】従って、この光ファイバコイルは樹脂被覆
の肉厚の薄い側から厚い側に抜ける方向に光ファイバに
側圧がかかり、曲がりによる応力も同様の形でかかる。
しかしながら、本発明では樹脂被覆の肉厚の薄い部分が
光ファイバ心線断面の外周方向でその長手方向において
変化している、すなわち偏肉方向が変化しているため、
光ファイバ心線断面から見て側圧や曲がりによる応力が
一方向にかかることがないので、複屈折が生じ難くなり
偏波分散の増加が抑制される。

【００１４】本発明の請求項２の光ファイバコイルによ
れば、前記樹脂被覆の偏肉方向の変化が９０°以上であ
るので、光ファイバ心線断面から見て水平軸および垂直
軸方向に発生する側圧や曲がりによる応力の方向は確実
に平均化され複屈折が生じ難くなり偏波分散の増加が抑
制される。

【００１５】本発明の請求項３の光ファイバコイルによ
れば、偏波分散を生じさせる不均一な応力の付与を確実
に防ぐことができる。すなわち、樹脂被覆の偏肉方向が
変化することによって複屈折は生じ難くなり偏波分散の
増加は抑制されるが、この偏肉の周期性も間隔が長すぎ
ると、ー度縮体の解けたモード間の結合が非常に起き難
くなり、かえって偏波分散を大きくすることもある。し
かしながら、樹脂被覆の偏肉方向の変化の周期が２０ｍ
以内であれば、偏波分散の増加が抑制された効果が持続
することになる。

【００１６】本発明の請求項４の光ファイバコイルは、
光ファイバに樹脂被覆を塗布する際に被覆装置を一定の
周期で振動することによって、樹脂被覆の偏肉方向の変
化の周期を一定にした光ファイバ心線を容易に得ること
ができる。また、この光ファイバ心線を用いて光ファイ
バコイルを形成することにより、複屈折が生じ難く偏波
分散の増加が抑制される光ファイバコイルを製造するこ
とが容易となる。

【００１７】本発明の請求項５の光ファイバコイルは、
光ファイバに樹脂被覆を塗布する際に被覆装置をランダ
ムに振動することによって、樹脂被覆の偏肉の周期をラ
ンダムにした光ファイバ心線を容易に得ることができ
る。また、この光ファイバ心線を用いることにより、複
屈折が生じ難く偏波分散の増加が抑制される光ファイバ
コイルを製造することが容易となる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下に本発明を実施の形態により
詳細に説明する。図１は本発明の光ファイバコイルの一
実施の形態を示すもので、光ファイバ心線１として、偏
波分散が大きくなり易い分散補償光ファイバを用いた。
２はリールである。この分散補償光ファイバの屈折率分
布はΔ＝３％のステップ形で、コア径は２．５μｍであ
る。この分散補償光ファイバは、コアの真円度が出し難
く、コアとクラッドの線膨張係数も大きく異なるため、
断面方向で不均一な歪みがかかり易いものである。

【００１９】図２は、分散補償光ファイバを線引して光
ファイバ心線１を製造する線引き装置１０である。線引
き装置１０は、線引き炉１１、１層目の樹脂を被覆する
ダイス１２、樹脂硬化炉１３、２層目の樹脂を被覆する
ダイス１４、樹脂硬化炉１５及び巻き取りリール１６を
備えている。図２において１７は光ファイバ母材であ
る。

【００２０】上記の線引き装置１０で分散補償光ファイ
バ３を線引する際に、ダイス１２で１層目の樹脂を被覆
して樹脂硬化炉１３で硬化させた後に、２層目の樹脂を
被覆する際に２層目のダイス１４を周期的に振動させて
被覆に偏肉を生じさせて樹脂硬化炉１５で硬化させて、
所定の周期で樹脂被覆が偏肉している単ーモードの分散
補償光ファイバ心線１を後述の組み合わせで製造した。

【００２１】製造した分散補償光ファイバ心線１の光フ
ァイバ３の外径は１２５μｍで、被覆径は２５０μｍと
した。樹脂被覆の偏肉は光ファイバ３と被覆樹脂の中心
のズレで定義するが、光ファイバ３の長手方向のどこで
も１０μｍ以上とした。樹脂被覆の偏肉の方向の変化量
として１３５°、９０°、４５°、０°の４方向で、ま
た長手方向の周期は５、１０、２０、５０、１００ｍの
４周期を表１に示すように組み合わせた。

【００２２】得られた各々の光ファイバ心線１を２ｋ
ｍ、直径４００ｍｍのリールに巻き付けた場合と、直径
４０ｍｍのリールに巻き付けた場合での光ファイバ心線
１の偏波分散の違いを比較した。ここで、巻き付け張力
は２０ｇｆとしている。それぞれの偏波分散の測定結果
を表１に示す。樹脂被覆の偏肉方向の変化が９０°以上
で、その周期が２０ｍ以内のときにはリールの直径にか
かわらず、光ファイバ心線１の偏波分散が小さくなって
おり、同時に曲げ径が小さくなった時の増加量も極端に
小さくなった。これは、樹脂被覆の偏肉方向が周期的に
変化するので、光ファイバ３の長手方向に方向性のある
応力が付加され難いので、直径の小さなリールに巻いた
状態でも偏波分散が小さくなったことによるものである
と考えられる。

【００２３】

【表１】

【００２４】また、この光ファイバ心線１を張力を掛け
て小径リールに巻いた場合には、図３に示すように被覆
４の薄い部分（矢印の部分）が自然にリール側、すなわ
ちコイル状の内側に来る。加えて光ファイバ断面で９０
°以上も偏肉の方向が変化しており、かつ短周期でその
偏肉の方向が変化するので、ー定方向だけに応力が付加
されることが防げる。従って、樹脂被覆のー定なものを
巻き付けたときに生ずる、偏波分散の増加は抑制され
る。また、樹脂被覆の偏肉方向がー定なものを巻き付け
たときにしばしば生ずる、非常に大きな偏波分散の増加
も抑制される。

【００２５】

【発明の効果】以上述べたように、本発明の請求項１の
光ファイバコイルによれば、光ファイバ心線の樹脂被覆
の偏肉方向がその長手方向において変化しているので、
光ファイバ心線断面から見ての側圧や曲がりによる応力
の方向は平均化され、複屈折が生じ難くなり偏波分散の
増加が抑制された偏波分散の小さな光ファイバコイルと
なる。

【００２６】本発明の請求項２の光ファイバコイルによ
れば、樹脂被覆の偏肉方向の変化が９０°以上であるの
で、光ファイバ心線断面から見て水平軸および垂直軸方
向に発生する側圧や曲がりによる応力の方向は確実に平
均化され複屈折が生じ難くなり偏波分散の増加が抑制さ
れた偏波分散の小さな光ファイバコイルとなる。

【００２７】本発明の請求項３の光ファイバコイルによ
れば、樹脂被覆の偏肉方向の変化がの周期が２０ｍ以内
であるので、偏波分散の増加が抑制された効果が持続す
る偏波分散の小さな光ファイバコイルとなる。

【００２８】本発明の請求項４の光ファイバコイルは、
光ファイバに樹脂被覆を塗布する際に被覆装置を一定の
周期で振動することによって、樹脂被覆の偏肉方向の変
化の周期を一定にした光ファイバ心線を容易に得ること
ができるので、この光ファイバ心線を用いることによ
り、複屈折が生じ難く偏波分散の増加が抑制された偏波
分散の小さな光ファイバコイルを製造することが容易と
なる。

【００２９】本発明の請求項５の光ファイバコイルは、
光ファイバに樹脂被覆を塗布する際に被覆装置をランダ
ムに振動することによって、樹脂被覆の偏肉方向の変化
の周期をランダムにした光ファイバ心線を容易に得るこ
とができるので、この光ファイバ心線を用いることによ
り、複屈折が生じ難く偏波分散の増加が抑制された偏波
分散の小さな光ファイバコイルを製造することが容易と
なる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の光ファイバコイルの一実施の形態を示
す斜視図である。

【図２】本発明の光ファイバコイルに用いる光ファイバ
心線の線引き装置の一例を示す概要図である。

【図３】本発明の光ファイバコイルの光ファイバ心線を
リールにコイル巻きする状態を示す説明図である。

【符号の説明】

１ 光ファイバ心線 ２ リール ３ 単ーモードの光ファイバ ４ 樹脂被覆 １０ 線引き装置 １１ 線引き炉 １２ １層目の樹脂を被覆するダイス １３ 樹脂硬化炉 １４ ２層目の樹脂を被覆するダイス ５ 樹脂硬化炉

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 光ファイバ心線の樹脂被覆の偏肉方向が
   その長手方向において変化している単ーモード光ファイ
   バ心線がリールにコイル状に巻き回されていることを特
   徴する光ファイバコイル。
2. 【請求項２】 前記樹脂被覆の偏肉方向の変化が９０°
   以上であることを特徴する請求項１に記載の光ファイバ
   コイル。
3. 【請求項３】 前記樹脂被覆の偏肉方向の変化の周期が
   ２０ｍ以内であることを特徴する請求項１または請求項
   ２に記載の光ファイバコイル。
4. 【請求項４】 前記樹脂被覆の偏肉方向の変化は一定の
   周期を有することを特徴する請求項１ないし請求項３に
   記載の光ファイバコイル。
5. 【請求項５】 前記樹脂被覆の偏肉方向の変化はランダ
   ムな周期を有することを特徴する請求項１ないし請求項
   ３に記載の光ファイバコイル。