JPH09104901A - 流動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物およびその製造方法 - Google Patents

流動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物およびその製造方法

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JPH09104901A
JPH09104901A JP8223181A JP22318196A JPH09104901A JP H09104901 A JPH09104901 A JP H09104901A JP 8223181 A JP8223181 A JP 8223181A JP 22318196 A JP22318196 A JP 22318196A JP H09104901 A JPH09104901 A JP H09104901A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 室温および温間において、優れた流動性が得
られ、さらには成形時の抜出力低減が可能な成形性が改
善された粉末冶金用鉄基粉末混合物およびその製造方法
の提供。 【解決手段】 鉄基粉末と潤滑剤と合金用粉末を含む鉄
基粉末混合物において、前記鉄基粉末、潤滑剤および合
金用粉末から選ばれる1種以上が、好ましくは、オルガ
ノアルコキシシラン、オルガノシラザン、シリコーンオ
イル、チタネート系カップリング剤、フッ素系カップリ
ング剤および鉱物油から選ばれる1種以上である表面処
理剤によって被覆された粉末である流動性および成形性
に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物、およびその製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄粉、合金鋼粉な
どの鉄基粉末に、予め潤滑剤、黒鉛粉、銅粉などを添
加、混合した粉末冶金用鉄基粉末混合粉に関し、さらに
詳しくは、前記添加物の偏析および発塵(ダスト)の発
生が少なく、かつ常温から 200℃程度の温度までの広い
温度範囲で流動性および成形性が極めて優れた粉末冶金
用鉄基粉末混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】粉末冶金用鉄基粉末混合物は、鉄粉に銅
粉、黒鉛粉、燐化鉄粉などの合金粉末と、さらに必要に
応じて切削性改善用粉末に加えて、ステアリン酸亜鉛、
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛などの潤滑
剤を混合して製造するのが一般的である。このような潤
滑剤は金属粉末との混合性や焼結時の散逸性などから選
択されてきた。
【0003】近年、焼結部材に対する高強度化の要求の
高まりと共に、特開平 2−156002号、特公平 7−103404
号、USP 第 5,256,185号、USP 第 5,368,630号公報に開
示されたように、金属粉末を加熱しつつ成形することに
より、成形体の高密度かつ高強度化を可能にする温間成
形技術が提案された。該成形法における潤滑剤は、金属
粉末との混合性、焼結時の散逸性といった観点以外に、
加熱時の潤滑性が重視されている。
【0004】すなわち、融点の異なる複数種の潤滑剤の
混合物を金属粉末に混合することにより、温間成形時に
潤滑剤の一部を溶融させて金属粉末粒子間に潤滑剤を均
一に分散させ、粒子間および成形体と金型の間の摩擦抵
抗を下げ、成形性を向上させるものである。しかし、こ
のような金属粉末混合物は、以下のような欠点を有す
る。
【0005】すなわち、まず、このような金属粉末混合
物は原料混合物が偏析を生じる問題点があることであ
る。偏析について述べると、粉末混合物は粒径、粒子形
状および粒子密度の異なる粉末を含んでいるため、混合
後の輸送、ホッパへの装入、払出し、または成形処理な
どの際に、容易に偏析が生じてしまう。
【0006】例えば、鉄基粉末と黒鉛粉との混合物は、
トラック輸送中の振動によって、輸送容器内において偏
析が起こり、黒鉛粉が浮かび上がることは良く知られて
いる。また、ホッパに装入された黒鉛はホッパ内偏析の
ため、ホッパより排出する際、排出の初期、中期、終期
でそれぞれ黒鉛粉の濃度が異なることも知られている。
【0007】これらの偏析に起因して、製品は組成にば
らつきを生じ、寸法変化および強度のばらつきが大きく
なり、不良品発生の原因となる。また、黒鉛粉などはい
ずれも微粉末であるため、混合物の比表面積を増大さ
せ、その結果、流動性が低下する。このような流動性の
低下は、成形用金型への充填速度を低下させるため、圧
粉体の生産速度を低下させてしまうという欠点もある。
【0008】このような粉末混合物の偏析を防止する技
術として、特開昭56−136901号公報や特開昭58− 28321
号公報に開示されたような結合剤を用いる技術がある
が、粉末混合物の偏析を充分に改善するように結合剤の
添加量を増加させると、粉末混合物の流動性が低下する
問題点がある。また、本発明者らは、先に特開平 1−16
5701号公報、特開平 2− 47201号公報において、金属石
鹸またはワックスとオイルとの共溶融物を結合剤として
用いる方法を提案した。
【0009】これらの技術は、粉末混合物の偏析と発塵
を格段に低減することができると共に、流動性を改善す
ることができるものである。しかし、これらの方法では
上述の偏析を防止する手段に起因して、粉末混合物の流
動性が経時的に変化する問題があった。そこで、さらに
本発明者らは特開平 2− 57602号公報において提案した
ような、高融点のオイルと金属石鹸の共溶融物を結合剤
に用いる方法を開発した。その技術は、共溶融物の経時
変化が少なく、粉末混合物の流動性の経時的な変化が低
減されるものである。しかし、その技術では常温では固
体である高融点の飽和脂肪酸と金属石鹸とを鉄基粉末と
混合するので、粉末混合物の見掛け密度が変化するとい
う別の問題があった。
【0010】この問題を解決するため本発明者らは特開
平 3−162502号公報にて、鉄基粉末表面を脂肪酸で被覆
した後、鉄基粉末表面に添加物を脂肪酸と金属石鹸との
共溶融物で付着させ、さらにその外表面に金属石鹸を添
加するという方法を提案した。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平 2− 57602
号公報や特開平 3−162502号公報の技術によって、偏
析、発塵等の問題はかなり解決した。しかしながら、流
動性、とりわけ混合粉末を150℃程度まで加熱し、同じ
く加熱した金型内へ充填した後成形する、いわゆる温間
成形における加熱時の流動性が不十分であった。
【0012】温間成形における成形性を改善した、特開
平 2−156002号公報、特開平 7−103404号公報、USP 5,
256,185 号公報、およびUSP 5,368,630 号公報において
も、低融点の潤滑剤成分が粒子間に液架橋を形成するた
め、金属粉末混合粉の温間での流動性は悪い。流動性が
不十分な場合、前述のように圧粉成形体の生産性を阻害
するばかりでなく、金型内への充填が一様にならず、圧
粉成形体の密度分布にばらつきを生じ、結果的に焼結体
の特性変動の原因となるという問題を有し、この解決が
課題となっていた。
【0013】本発明の第一の課題は、室温のみならず、
温間においても流動性が優れる粉末冶金用鉄基粉末およ
びその製造方法を提供することである。前記した特開平
2−156002号公報などで開示された温間成形技術は、高
密度かつ高強度の鉄基粉末成形体の製造法であるが、成
形時の抜出力が高いという難点があり、成形体表面のキ
ズの発生や金型の寿命の短命化といった問題があった。
【0014】本発明の第二の課題は、室温および温間に
おいて成形時の抜出力低減が可能な成形性が改善された
粉末冶金用鉄基粉末混合粉末およびその製造方法を提供
することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】まず、第一の課題解決の
ため、本発明者らは、潤滑剤等の有機化合物を混合した
金属粉末の流動性が混合していない金属粉末に比べて極
端に悪くなる原因について研究した。その結果、金属粉
末と有機化合物の摩擦抵抗および付着力が大なるためで
あることを知見し、両者の摩擦抵抗・付着力の低減策を
種々検討した。
【0016】その結果、高温領域(200 ℃程度)まで安
定なある種の有機化合物で金属粉末粒子の表面を表面処
理(被覆)すれば、摩擦抵抗が低減し、さらには、金属
粉末粒子表面の表面電位を有機化合物(前記表面処理剤
を除く)の表面電位に近づけて、混合時における異種粒
子間の接触帯電が抑制され、静電気力による粒子間付着
が阻止されることを突き止めた。
【0017】また、第2の課題である成形性の改善のた
めに、種々の固体潤滑剤の効果を把握し、室温および
温間においては、層状の結晶構造を有する無機または有
機化合物が、また、温間では100 ℃以上で塑性変形を
する熱可塑性樹脂またはエストラマーが、成形時の抜出
力を低減し、成形性を向上させることを見出した。さら
に、流動性の改善のために施す上記表面処理によって、
金属粉末表面を被覆することが、副次的に成形時の抜出
力を低減し、成形性を向上させる効果をも有することを
見出した。
【0018】すなわち、第1の発明は、鉄基粉末と潤滑
剤と合金用粉末を含む鉄基粉末混合物において、前記鉄
基粉末、潤滑剤および合金用粉末から選ばれる1種以上
が表面処理剤によって被覆された粉末であることを特徴
とする流動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末
混合物である。第2の発明は、鉄基粉末と潤滑剤と合金
用粉末を含む鉄基粉末混合物において、前記鉄基粉末、
潤滑剤および合金用粉末から選ばれる1種以上が表面処
理剤によって被覆され、前記合金用粉末として少なくと
も黒鉛粉末を、前記潤滑剤として少なくとも金属石鹸お
よび脂肪酸アミドを含み、黒鉛粉末の含有率が0.05〜1
wt%、脂肪酸アミドの含有率が0.01〜1.0wt %、金属石
鹸の含有率が0.01〜1.0wt %であることを特徴とする流
動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物で
ある。
【0019】本発明における鉄基粉末としては、アトマ
イズ鉄粉または還元鉄粉などの純鉄粉、または部分拡散
合金化鋼粉または完全合金化鋼粉などが例示される。前
記表面処理剤としては、オルガノアルコキシシラン、オ
ルガノシラザン、シリコーンオイル、チタネート系カッ
プリング剤、フッ素系カップリング剤、または鉱物油の
群の中から選ばれた1種以上が好適である。
【0020】オルガノアルコキシシランとは、R4-m
Si(OCn 2n+1m 〔Rは有機基、n、mは整数、
m=1〜3)なる構造を有する物質で、Rは置換基を有
していても有していなくても良いが、本発明において
は、特に非置換のものが、より好ましい。前記した置換
基としては、アクリル基またはエポキシ基またはアミノ
基であるオルガノアルコキシシランから選ばれる1種以
上であることがより好ましい。
【0021】オルガノシラザンとしては、一般式R n Si
(NH2)4-n、(R3Si)2NH 、R3SiNH(R2SiNH)n SiR3、(R2SiN
H)n 、R3SiNH(R2SiNH)n SiR3で表されるオルガノシラザ
ンが例示される。前記した鉱物油としては、アルキルベ
ンゼンがより好ましい。前記第1の発明、第2の発明に
おいては、前記潤滑剤が、層状の結晶構造を有する無機
化合物、層状の結晶構造を有する有機化合物、熱可塑性
樹脂、熱可塑性エラストマー、脂肪酸アミドおよび金属
石鹸から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0022】前記層状の結晶構造を有する無機化合物と
しては、黒鉛、フッ化炭素およびMoS2から選ばれる1種
以上が好ましく、また、前記層状の結晶構造を有する有
機化合物としては、メラミン−シアヌル酸付加化合物
(MCA)またはN−アルキルアスパラギン酸−β−ア
ルキルエステルが好ましい。前記熱可塑性樹脂として
は、粒径が30μm 以下の粉末状のポリスチレン、ナイロ
ン、ポリエチレンおよびフッ素樹脂から選ばれる1種以
上が好ましい。
【0023】前記熱可塑性エラストマーとしては、粒径
が30μm 以下の粉末状の熱可塑性エラストマーが好まし
い。さらに、前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系
熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラスト
マー、アミド系熱可塑性エラストマーおよびシリコーン
系熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上であるこ
とが、より好ましい。
【0024】前記脂肪酸アミドとしては、脂肪酸モノア
ミドおよび脂肪酸ビスアミドから選ばれる1種以上が好
ましい。さらに、前記第1の発明、第2の発明において
は、前記潤滑剤として少なくとも黒鉛を含むことが、よ
り好ましい。前記した第1の発明、第2の発明の鉄基粉
末混合物は、下記に示す第3の発明〜第6の発明の製造
方法で製造することができる。
【0025】すなわち、第3の発明は、特に、流動性に
優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法であり、そ
の構成要件は、少なくともいずれかが表面処理剤で被覆
された鉄基粉末および合金用粉末に、脂肪酸、脂肪酸ア
ミド、金属石鹸、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマ
ー、層状の結晶構造を有する無機化合物および層状の結
晶構造を有する有機化合物である潤滑剤の中から選ばれ
る1種以上を加えて1次混合する工程、該1次混合後の
混合物を前記した潤滑剤の内少なくとも1種の潤滑剤の
融点以上に加熱しつつ攪拌し、該潤滑剤を溶融させる工
程、該溶融工程後に得られた混合物を混合しながら冷却
し、前記鉄基粉末の表面に前記潤滑剤によって前記合金
用粉末を固着させる工程、該工程において得られた合金
用粉末が固着された鉄基粉末を含有する混合物に、さら
に、金属石鹸、熱可塑性樹脂、脂肪酸アミド、熱可塑性
エラストマー、層状の結晶構造を有する無機化合物粉末
および層状の結晶構造を有する有機化合物粉末の中から
選ばれる1種以上を加えて2次混合する工程とからなる
ことを特徴とする流動性および成形性に優れた粉末冶金
用鉄基粉末混合物の製造方法である。
【0026】さらに本発明においては、前記第3の発明
における前記潤滑剤として脂肪酸アミドを必須とした下
記第4の発明により、流動性および成形性に優れた粉末
冶金用鉄基粉末混合物の製造が可能となった。第4の発
明は、少なくともいずれかが表面処理剤で被覆された鉄
基粉末および合金用粉末に、(1) 脂肪酸アミドおよび
(2) 該脂肪酸アミドよりも融点の高い、金属石鹸、熱可
塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、層状の結晶構造を有
する無機化合物および層状の結晶構造を有する有機化合
物である潤滑剤の中から選ばれる1種以上を加えて1次
混合する工程、該1次混合工程で得られた混合物を前記
脂肪酸アミドの融点以上に加熱しつつ攪拌し、前記脂肪
酸アミドを溶融させる工程、該溶融工程後に得られた混
合物を混合しながら冷却し、前記鉄基粉末の表面に前記
潤滑剤によって前記合金用粉末を固着させる工程、該工
程において得られた合金用粉末が固着された鉄基粉末を
含有する混合物に、さらに、金属石鹸、熱可塑性樹脂、
脂肪酸アミド、熱可塑性エラストマー、層状の結晶構造
を有する無機化合物粉末および層状の結晶構造を有する
有機化合物粉末の中から選ばれる少なくとも1種を加え
て2次混合する工程とからなることを特徴とする流動性
および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造
方法である。
【0027】さらに本発明によれば、前記第3の発明、
第4の発明における前記表面処理を、前記した1次混合
の後で行うこともできる。すなわち、第5の発明は、鉄
基粉末および合金用粉末に、脂肪酸、脂肪酸アミド、金
属石鹸、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、層状の
結晶構造を有する無機化合物および層状の結晶構造を有
する有機化合物である潤滑剤の中から選ばれる1種以上
を加えて1次混合する工程、該1次混合工程で得られた
混合物を前記した潤滑剤の内の少なくとも1種の潤滑剤
の融点以上に加熱しつつ攪拌して、該潤滑剤を溶融させ
る工程、該溶融工程で得られた混合物を混合しながら冷
却し、冷却過程の100 〜140 ℃の温度域で表面処理剤を
添加混合する工程、該工程で表面処理剤が添加混合され
た混合物に、さらに、金属石鹸、熱可塑性樹脂、脂肪酸
アミド、熱可塑性エラストマー、層状の結晶構造を有す
る無機化合物粉末および層状の結晶構造を有する有機化
合物粉末の中から選ばれる1種以上を加えて2次混合す
る工程とからなることを特徴とする流動性および成形性
に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法である。
【0028】さらに本発明においては、前記第5の発明
における前記潤滑剤として脂肪酸アミドを必須とした下
記第6の発明により、流動性および成形性に優れた粉末
冶金用鉄基粉末混合物の製造が可能となった。すなわ
ち、第6の発明は、鉄基粉末および合金用粉末に、(1)
脂肪酸アミドおよび(2) 該脂肪酸アミドよりも融点の高
い、金属石鹸、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、
層状の結晶構造を有する無機化合物および層状の結晶構
造を有する有機化合物である潤滑剤の中から選ばれる1
種以上を加えて1次混合する工程、該1次混合工程で得
られた混合物を前記脂肪酸アミドの融点以上に加熱しつ
つ攪拌し、前記脂肪酸アミドを溶融させる工程、次いで
冷却して冷却過程の100 〜140 ℃の温度域で表面処理剤
を添加混合する工程、該工程で得られた表面処理剤が添
加された混合物に、さらに、金属石鹸、熱可塑性樹脂、
脂肪酸アミド、熱可塑性エラストマー、層状の結晶構造
を有する無機化合物粉末および層状の結晶構造を有する
有機化合物粉末の中から選ばれる1種以上を加えて2次
混合する工程とからなることを特徴とする流動性および
成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法で
ある。
【0029】前記第3の発明、第4の発明、第5の発
明、第6の発明においては、前記表面処理剤が、オルガ
ノアルコキシシラン、オルガノシラザン、シリコーンオ
イル、チタネート系カップリング剤、フッ素系カップリ
ング剤および鉱物油から選ばれる1種以上であることが
好ましい。本発明の鉄基粉末混合物に含まれる合金用粉
末には、少なくとも黒鉛粉末または銅粉末または亜酸化
銅粉末を含むことにより焼結体の強度を上昇させること
ができる。
【0030】本発明の鉄基粉末混合物に含まれる潤滑剤
として、脂肪酸アミドと金属石鹸との共溶融物、または
融点の異なる2種以上のワックス、または脂肪酸アミド
の部分溶融物を使用することにより、当該鉄基粉末混合
物の偏析、発塵が効果的に防止され、かつ流動性、成形
性がさらに向上する。なお、脂肪酸アミドとしてはエチ
レンステアリン酸ビスアミドがとりわけ好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。本発明は、鉄基粉末と潤滑剤と合金用粉末を含む
鉄基粉末混合物において、前記鉄基粉末、潤滑剤および
合金用粉末から選ばれる1種以上が表面処理剤によって
被覆された粉末から構成される流動性および成形性に優
れた粉末冶金用鉄基粉末混合物である。
【0032】本発明における鉄基粉末としては、アトマ
イズ鉄粉または還元鉄粉などの純鉄粉、または部分拡散
合金化鋼粉、または完全合金化鋼粉、またはこれらの混
合粉などが例示される。本発明の前記した表面処理剤の
添加率、および鉄基粉末混合物中における、前記した潤
滑剤、合金用粉末の各含有率は下記の範囲であることが
好ましい。
【0033】表面処理剤の添加率は、処理粉末100wt %
に対して、0.001 〜1.0 wt%であることが好ましい。0.
001wt %未満の場合は、流動性が低下し、1.0 wt%超え
の場合も流動性が低下する。潤滑剤の含有率は、合計量
として、鉄基粉末100wt %に対して0.1 〜2.0wt %であ
ることが好ましい。
【0034】0.1 wt%未満の場合は、成形性が低下し、
2.0wt %超えの場合は圧粉密度が低下し、圧粉体の強度
が低下する。合金用粉末の含有率は、鉄基粉末100wt %
に対して0.1 〜10wt%であることが好ましい。これは、
黒鉛粉末、Cu、Mo、Niなどの金属粉末、B粉末などの合
金用粉末を0.1 wt%以上含有することにより、得られる
焼結体の強度が優れるためであり、逆に10wt%を超える
と焼結体の寸法精度が低下するためである。
【0035】また、本発明の鉄基粉末混合物中には、前
記潤滑剤の一部または全てとして、金属石鹸および脂肪
酸アミドから選ばれる1種以上を含有することが好まし
い。前記金属石鹸の含有率は、好ましくは、ステアリン
酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ヒドロキシステアリン
酸リチウム、ラウリン酸カルシウムなどから選ばれる金
属石鹸を、鉄基粉末混合物中に鉄基粉末100wt %に対し
0.01〜1.0 wt%の含有率で含むことが、より好ましい。
【0036】これは、金属石鹸を0.01wt%以上含有する
ことにより、流動性が改善され、逆に1.0 wt%を超える
と圧粉体の強度が低下するためである。前記脂肪酸アミ
ドの含有率は、好ましくは、脂肪酸モノアミドおよび脂
肪酸ビスアミドから選ばれる脂肪酸アミドを、鉄基粉末
混合物中に鉄基粉末100wt %に対し0.01〜1.0wt %の含
有率で含むことが好ましい。
【0037】これは、脂肪酸アミドを0.01wt%以上含有
することにより、成形性が向上し、逆に1.0 wt%を超え
ると圧粉体の密度が低下するためである。以下、さら
に、本発明の前記した構成に伴う効果発現の理由につい
て述べる。前述のように、潤滑剤等の有機化合物を混合
した金属粉末の流動性は、混合していない金属粉末に比
べて極端に悪くなる。
【0038】これは、金属粉末と有機化合物の間の摩擦
抵抗および付着力が大なるためであり、金属粉末の表面
をある種の有機化合物で表面処理(被覆)して摩擦抵抗
を減少するとともに、金属粉末表面の表面電位を有機化
合物(前記表面処理剤を除く)表面電位に近づけて混合
時における異種粒子間の接触帯電を抑制することで、静
電気力による粒子間付着を阻止し、両者の複合効果によ
り混合粉末の流動性を改善することができる。とりわ
け、温間成形にも対応し得るように常温から200℃程度
の温度領域まで安定した流動性を確保することができ
る。
【0039】次に、オルガノアルコキシシラン、オルガ
ノシラザン、シリコーンオイル、チタネート系カップリ
ング剤、フッ素系カップリング剤または鉱物油を鉄基粉
末の表面に被覆することにより流動性が広い温度領域に
渡って改善される理由についてさらに詳細に述べる。な
お、前記オルガノアルコキシシランの有機基は、置換基
を有していても有していなくても良い。
【0040】上記表面処理剤は、嵩高な分子構造により
潤滑機能を有する上、脂肪酸や鉱物油等に比べ、高温域
で安定なため、室温からおよそ200 ℃の広い温度範囲で
潤滑機能を発揮する。特に、オルガノアルコキシシラ
ン、オルガノシラザン、およびチタネート系またはフッ
素系カップリング剤は、金属粉末表面に存在する水酸基
と前記表面処理剤分子中、所定の官能基との縮合反応に
より金属粉末粒子表面に有機化合物が化学結合すること
により表面改質を行うもので、高温においても粒子表面
から剥がれたり流れることがなく、高温での表面改質効
果が顕著である。
【0041】オルガノアルコキシシランとしては、有機
基が非置換のもの、有機基の置換基がアクリル基、エポ
キシ基、アミノ基のいずれでもよいが、特に非置換のも
のが好ましい。これらは異種のものを混合して使用する
こともできるが、エポキシ基を有するものとアミド基を
有するものは互いに反応し、変質するので混合には適さ
ない。
【0042】なお、オルガノアルコキシシランの中のア
ルコキシ基(Cn 2n+1O−)の数は、少ない方が好ま
しい。有機基が非置換のものとしては、メチルトリメト
キシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニル
ジメトキシシランが例示される。また、有機基の置換基
がアクリル基のものとしては、γ−メタクリロキシプロ
ピルトリメトキシシラン、エポキシ基のものとしては、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノ
基のものとしては、N−β(アミノエチル)γ−アミノ
プロピルトリメトキシシランなどを使用できる。
【0043】また、上記オルガノアルコキシシランの中
では、有機基中の水素の一部がフッ素に置換された所謂
フッ素系カップリング剤の使用も可能である。チタネー
ト系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソス
テアロイルチタネートを使用することができる。オルガ
ノシラザンとしては、アルキルシラザンが好ましく、分
子量の大きいポリオルガノシラザンも使用できる。
【0044】表面処理剤としてシリコーンオイルおよび
鉱物油が好ましいのは以下の理由による。表面処理剤と
してシリコーンオイルおよび鉱物油が好ましいのは、嵩
高で粉末粒子表面に吸着した場合、粒子間の摩擦抵抗を
下げて流動性を改善し、さらに熱的安定性から、広い温
度領域で潤滑効果を有するためである。
【0045】なお、表面処理剤として使用できるシリコ
ーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチ
ルフェニルシリコーンオイル、メチル水素シリコーンオ
イル、環状ポリメチルシロキサン、アルキル変性シリコ
ーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、シリコーン
ポリエーテル共重合体、脂肪酸変性シリコーンオイル、
エポキシ変性シリコーンオイル、フロロシリコーンオイ
ル、鉱物油としては、アルキルベンゼンが例示される。
ただし、これに限定されるものではない。
【0046】常温から200 ℃程度の広い温度領域に渡っ
て流動性が安定した鉄基粉末混合物において、鉄基粉末
と合金用粉末を固着する有機化合物(いわゆる潤滑剤
等)としては、融点の異なる2種以上のワックス、特に
アミド系潤滑剤の部分溶融物であることが好ましい。本
発明者らが特開平3−162502号公報で開示した脂肪酸と
金属石鹸との共溶融物を用いる方法は、共溶融状態にお
いて融体が毛細管現象により添加物粒全体をコーティン
グし、鉄基粉末に強固に付着させるので最適である。融
点の異なる2種以上のワックスやアミド系潤滑剤の部分
溶融物も同様な理由により好ましい。
【0047】次に、層状の結晶構造を有する無機または
有機化合物を鉄基粉末および合金用粉末に混合すること
により、成形時の抜出力が低減され、成形性が改善され
る理由について述べる。層状の結晶構造を有する化合物
の潤滑作用については、本発明の場合、成形時に剪断応
力を受けた上記物質が、結晶面に沿ってヘキ開しやす
く、そのため、成形体内部の粒子間の摩擦抵抗の低減、
あるいは成形体と金型間でのすべりやすさを生じるため
と考えられる。
【0048】層状の結晶構造を有する無機化合物として
は、黒鉛、MoS2、フッ化炭素のいずれでもよく、粒度は
細かい程、抜出力の低減に有効である。層状の結晶構造
を有する有機化合物としては、メラミン−シアヌル酸付
加化合物(MCA)またはN−アルキルアスパラギン酸
−β−アルキルエステルを使用することができる。
【0049】熱可塑性樹脂または熱可塑性エストラマー
を鉄基粉末および合金用粉末に混合することにより、成
形時とりわけ温間成形時の抜出力が低減する理由を述べ
る。熱可塑性樹脂の特徴は、温度上昇とともに降伏応力
が下がり、より低い圧力によって容易に変形する点であ
る。粒子状の熱可塑性樹脂を金属粉末に混合し、加熱し
つつ成形する温間成形において、熱可塑性樹脂粒子は、
金属粒子間、あるいは金属粒子と金型壁面に於いて、容
易に塑性変形し、結果的に金属面相互の摩擦抵抗を低減
する。
【0050】熱可塑性エストラマーとは、熱可塑性樹脂
(硬質相)とゴム構造を持った高分子(軟質相)との混
相組織を有する材料であり、温度上昇とともに硬質相で
ある熱可塑性樹脂の降伏応力が低下し、より低い応力で
容易に変形する。したがって、粒子状の熱可塑性エスト
ラマーを金属粒子に混合し、温間成形に供した際の効果
は、上述の熱可塑性樹脂と同様である。
【0051】熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ナ
イロン、ポリエチレンまたはフッ素樹脂の粒子が好適で
ある。熱可塑性エストラマーとしては、硬質相として、
スチレン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂またはシリ
コーン樹脂が好適であり、とくにスチレン−アクリル、
スチレン−ブタジエン重合体が良好である。
【0052】なお、上記熱可塑性樹脂または熱可塑性エ
ラストマーの粒子サイズは30μm 以下が好適であり、望
ましくは5〜20μm が最適である。30μm 超えの場合、
金属粒子間に樹脂またはエストラマー粒子が十分に分散
せず、潤滑効果が発揮されないためである。以上、本発
明における表面処理剤の流動性改善効果および潤滑剤の
成形性改善効果について述べたが、本発明において流動
性改善を目的として用いた前記した表面処理剤の添加に
より、成形時の抜出力の低減という副次的効果が見出さ
れたので、その機構について述べる。
【0053】温間成形などの高密度成形においては、成
形体の密度が上がるため、成形時にしばしば成形体表面
の金属粉末の金型壁面への圧着が起こり、成形体抜出し
時の抜出力の増大、成形体のキズなどの原因となる。こ
れに対し、前記した表面処理剤により、金属粉末表面を
予め被覆した場合、成形時には金型壁面と成形体表面の
金属粉末間に被膜が存在するため、成形体表面粒子の金
型への圧着が防止され、抜出力が低減され、さらには成
形体のキズの発生などの問題が解消されるものと考えら
れる。
【0054】本発明の粉末冶金用鉄基粉末混合物の具体
的な製造方法としては、下記実施例に例示する方法を用
いることが好ましい。
【0055】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明
する。 〔実施例1〕各種オルガノアルコキシシランまたはオル
ガノシラザンまたはチタネート系あるいはフッ素系カッ
プリング剤をエタノール中に、シリコーンオイルまたは
鉱物油をキシレン中にそれぞれ溶解し、平均粒径78μm
の粉末冶金用鉄粉、または平均粒径23μm 以下の天然黒
鉛、または平均粒径25μm 以下の銅粉に適量噴霧した。
【0056】得られた各粉末それぞれを高速ミキサーで
攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混合した後、
溶媒を真空乾燥機にて除去し、さらに前記シラン、シラ
ザンまたはカップリング剤を噴霧したものは、約100 ℃
で1時間加熱した。以上の処理を予備処理A1と記す。
予備処理A1で添加した表面処理剤の種類および添加量
を表1に示す。
【0057】表1中の表面処理剤の欄に記載した記号の
内容は、表14に示す通りである。予備処理A1を施し
た、あるいは予備処理A1を施さない平均粒径78μm の
粉末冶金用鉄粉と、予備処理A1を施した、あるいは予
備処理A1を施さない平均粒径23μm 以下の天然黒鉛
と、予備処理A1を施した、あるいは予備処理A1を施
さない平均粒径25μm 以下の銅粉を混合し、エチレンス
テアリン酸モノアミド0.2 重量%、エチレンステアリン
酸ビスアミド0.2 重量%を添加し、混合しながら110 ℃
で加熱し、さらに混合しながら85℃以下に冷却した。
【0058】得られた各粉末混合物に対し、エチレンス
テアリン酸モノアミド0.2 重量%、ステアリン酸亜鉛0.
15重量%を添加し、均一に攪拌混合後、混合機から排出
した(発明例1〜11)。比較のために、上記予備処理A
1を施さない平均粒径78μm の粉末冶金用鉄粉、平均粒
径23μm 以下の天然黒鉛、および平均粒径25μm 以下の
銅粉を用いて同様に上記の処理を行い、粉末混合物を得
た(比較例1)。
【0059】次に、得られた各粉末混合物100 gを、室
温の条件下、排出孔径5mmΦのオリフィスから排出し、
排出終了までの時間(流動度)を測定し、流動性を調べ
た。実験結果を表1に示す。表1に示す比較例1と発明
例1〜11の比較で明らかなように、表面処理剤による処
理を施した場合、混合粉の流動性が格段に改良されてい
る。
【0060】
【表1】
【0061】〔実施例2〕平均粒径78μm の粉末冶金用
鉄粉、平均粒径23μm 以下の天然黒鉛、平均粒径25μm
以下の銅粉を混合し、各種オルガノアルコキシシランま
たはオルガノシラザンまたはチタネート系あるいはッ素
系カップリング剤またはシリコーンオイルまたは鉱物油
を適量噴霧した。
【0062】上記した異なる表面処理剤が被覆された各
粉末混合物それぞれを、高速ミキサーで攪拌翼回転数:
1000rpm の条件下、1分間混合した後、オレイン酸0.1
重量%、ステアリン酸亜鉛0.3 重量%を添加し、混合し
ながら110 ℃で加熱した後、85℃以下に冷却した。以上
の処理を予備処理B1と記す。
【0063】予備処理B1で添加した表面処理剤の種類
および添加量を表2に示す。表2中の表面処理剤の欄に
記載した記号の内容は、表14に示す通りである。得られ
た各粉末混合物に対し、ステアリン酸亜鉛0.4 重量%を
添加し、均一に攪拌混合後、混合機から排出した(発明
例12〜17)。比較のために、平均粒径78μm の粉末冶金
用鉄粉、平均粒径23μm 以下の天然黒鉛、および平均粒
径25μm 以下の銅粉を混合し、上記予備処理B1中、表
面処理剤を添加しないで同様に上記の処理を行い、粉末
混合物を得た(比較例2)。
【0064】次に、得られた各粉末混合物100 gを、室
温の条件下、排出孔径5mmΦのオリフィスから排出し、
排出終了までの時間を測定し、実施例1と同様に流動性
を調べた。実験結果を表2に示す。表2に示す比較例2
と発明例12〜17の比較で明らかなように、表面処理剤に
よる処理を施した場合、混合粉の流動性が格段に改良さ
れている。
【0065】
【表2】
【0066】〔実施例3〕平均粒径78μm の粉末冶金用
鉄粉、平均粒径23μm 以下の天然黒鉛、平均粒径25μm
以下の銅粉に、エチレンステアリン酸モノアミド0.2 重
量%、エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%を添
加し、混合しながら110 ℃で加熱した後、さらに各種オ
ルガノアルコキシシランまたはオルガノシラザンまたは
チタネート系あるいはフッ素系カップリング剤、シリコ
ーンオイルまたは鉱物油を適量噴霧した。
【0067】上記した各種の表面処理剤が被覆された各
粉末混合物それぞれを、高速ミキサーで攪拌翼回転数:
1000rpm の条件下、1分間混合した後、85℃以下に冷却
した。以上の処理を予備処理C1と記す。予備処理C1
で添加した表面処理剤の種類および添加量を表3に示
す。
【0068】表3中の表面処理剤の欄に記載した記号の
内容は、表14に示す通りである。得られた粉末混合物に
対し、エチレンステアリン酸モノアミド0.2 重量%、ス
テアリン酸亜鉛0.15重量%を添加し、均一に攪拌混合
後、混合機から排出した(発明例18〜22)。比較のため
に、平均粒径78μm の粉末冶金用鉄粉、平均粒径23μm
以下の天然黒鉛、および平均粒径25μm 以下の銅粉を使
用し、上記予備処理C1中、表面処理剤を添加しないで
同様に上記の処理を行い、粉末混合粉を得た(比較例
3)。
【0069】次に、得られた各粉末混合物100 gを、室
温の条件下、排出孔径5mmΦのオリフィスから排出し、
排出終了までの時間を測定し、実施例1と同様に流動性
を調べた。実験結果を表3に示す。表3に示す比較例3
と発明例18〜22の比較で明らかなように、表面処理剤に
よる処理を施した場合、混合粉の流動性が格段に改良さ
れている。
【0070】
【表3】
【0071】〔実施例4〕各種オルガノアルコキシシラ
ンまたはオルガノシラザンまたはチタネート系あるいは
フッ素系カップリング剤をエタノール中に、シリコーン
オイルまたは鉱物油をキシレン中にそれぞれ溶解し、平
均粒径約80μm の粉末冶金用合金鋼粉(完全合金化鋼
粉)、あるいは平均粒径23μm 以下の天然黒鉛に適量噴
霧した。
【0072】得られた各粉末それぞれを高速ミキサーで
攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混合した後、
溶媒を真空乾燥機にて除去し、さらに前記シラン、シラ
ザンまたはカップリング剤を噴霧したものは、約100 ℃
で1時間加熱した。以上の処理を予備処理A2と記す。
予備処理A2で添加した表面処理剤の種類および添加量
を表4に示す。
【0073】表4中の表面処理剤の欄に記載した記号の
内容は、表14に示す通りである。予備処理A2を施し
た、あるいは予備処理A2を施さない平均粒径約80μm
の粉末冶金用合金鋼粉と、予備処理A2を施した、ある
いは予備処理A2を施さない平均粒径23μm 以下の天然
黒鉛を混合し、エチレンステアリン酸モノアミド0.1 重
量%、エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%、ス
テアリン酸リチウム0.1 重量%を添加し、混合しながら
160 ℃で加熱し、さらに混合しながら85℃以下に冷却し
た。
【0074】得られた各粉末混合物に対し、ステアリン
酸リチウム0.4 重量%を添加し、均一に攪拌混合後、混
合機から排出した(発明例23〜26)。比較のために、上
記予備処理A2を施さない平均粒径約80μm の粉末冶金
用合金鋼粉、平均粒径23μm 以下の天然黒鉛を用いて同
様に上記の処理を行い、粉末混合物を得た(比較例
4)。
【0075】次に、得られた各粉末混合物 100gを、20
〜140 ℃の所定の温度に加熱した後、排出孔径5mmΦの
オリフィスから排出し、排出終了までの時間を測定し、
実施例1と同様に流動性を調べた。実験結果を表4に示
す。表4に示す比較例4と発明例23〜26の比較で明らか
なように、表面処理剤による処理を施した場合、混合粉
の流動性が格段に改良されている。
【0076】
【表4】
【0077】〔実施例5〕平均粒径約80μm の粉末冶金
用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μm 以下の天然黒鉛
を混合し、各種オルガノアルコキシシランまたはオルガ
ノシラザンまたはチタネート系あるいはフッ素系カップ
リング剤、シリコーンオイルあるいは鉱物油を適量噴霧
した。
【0078】上記した各種表面処理剤が被覆された各粉
末それぞれを、高速ミキサーで攪拌翼回転数:1000rpm
の条件下、1分間混合した後、エチレンステアリン酸モ
ノアミド0.2 重量%、エチレンステアリン酸ビスアミド
0.2 重量%を添加し、混合しながら160 ℃で加熱した
後、85℃以下に冷却した。以上の処理を予備処理B2と
記す。
【0079】予備処理B2で添加した表面処理剤の種類
および添加量を表5に示す。表5中の表面処理剤の欄に
記載した記号の内容は、表14に示す通りである。得られ
た粉末混合物に対し、ヒドロキシステアリン酸リチウム
0.4 重量%を添加し、均一に攪拌混合後、混合機から排
出した(発明例28〜31)。比較のために、平均粒径約80
μm の粉末冶金用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μm
以下の天然黒鉛を混合し、上記予備処理B2中、表面処
理剤を添加しないで同様に上記の処理を行い、粉末混合
物を得た(比較例5)。
【0080】次に、得られた粉末混合物 100gを、20〜
140 ℃の所定の温度に加熱した後、排出孔径5mmΦのオ
リフィスから排出し、排出終了までの時間を測定し、実
施例1と同様に流動性を調べた。実験結果を表5に示
す。表5に示す比較例5と発明例28〜31の比較で明らか
なように、表面処理剤による処理を施した場合、混合粉
の流動性が格段に改良されている。
【0081】
【表5】
【0082】〔実施例6〕平均粒径約80μm の粉末冶金
用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μm 以下の天然黒鉛
を混合し、エチレンステアリン酸モノアミド0.2 重量
%、エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%を添加
し、混合しながら160 ℃で加熱したのち、約110 ℃に冷
却した。
【0083】得られた粉末混合物に、さらに各種オルガ
ノアルコキシシランまたはオルガノシラザンまたはチタ
ネート系あるいはフッ素系カップリング剤、シリコーン
オイルあるいは鉱物油を適量噴霧した。上記した各種表
面処理剤が被覆された各粉末混合物それぞれを、高速ミ
キサーで攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混合
した後、85℃以下に冷却した。
【0084】以上の処理を予備処理C2と記す。予備処
理C2で添加した表面処理剤の種類および添加量を表6
に示す。表6中の表面処理剤の欄に記載した記号の内容
は、表14に示す通りである。得られた各粉末混合物に対
し、ヒドロキシステアリン酸リチウム0.4 重量%を添加
し、均一に攪拌混合後、混合機から排出した(発明例32
〜34)。
【0085】次に、得られた粉末混合物 100gを、20〜
140 ℃の所定の温度に加熱した後、排出孔径5mmΦのオ
リフィスから排出し、排出終了までの時間を測定し、実
施例1と同様に流動性を調べた。実験結果を表6に示
す。表5、表6に示す比較例5と発明例32〜34の比較で
明らかなように、表面処理剤による処理を施した場合、
混合粉の流動性が格段に改良されている。
【0086】
【表6】
【0087】〔実施例7〕各種オルガノアルコキシシラ
ンまたはオルガノシラザンまたはチタネート系あるいは
フッ素系カップリング剤をエタノール中に、シリコーン
オイルまたは鉱物油をキシレン中にそれぞれ溶解し、平
均粒径約80μm の粉末冶金用部分拡散合金化鋼粉、また
は平均粒径23μm 以下の天然黒鉛に適量噴霧した。
【0088】得られた各粉末それぞれを高速ミキサーで
攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混合した後、
溶媒を真空乾燥機にて除去し、さらに前記シラン、シラ
ザンまたはカップリング剤を噴霧したものは、約100 ℃
で1時間加熱した。以上の処理を予備処理A2と呼ぶ。
予備処理A2で添加した表面処理剤の種類および添加量
を表7に示す。
【0089】表7中の表面処理剤の欄に記載した記号の
内容は、表14に示す通りである。予備処理A2を施し
た、あるいは予備処理A2を施さない平均粒径約80μm
の粉末冶金用合金鋼粉と、予備処理A2を施した、ある
いは予備処理A2を施さない平均粒径23μm 以下の天然
黒鉛を混合し、エチレンステアリン酸モノアミド0.1 重
量%、エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%、お
よび、さらに加えて熱可塑性樹脂または熱可塑性エラス
トマーまたは層状の結晶構造を持つ化合物のいずれかを
0.1 重量%添加し、混合しながら160 ℃で加熱し、さら
に混合しながら85℃以下に冷却し、粉末混合物を得た。
【0090】添加した潤滑剤(熱可塑性樹脂または熱可
塑性エラストマーまたは層状の結晶構造を持つ化合物)
の種類および添加量を表7に示す。表7中の潤滑剤の欄
に記載した記号の内容は表15に示す通りである。なお、
比較のために、上記予備処理A2を施さない平均粒径約
80μm の粉末冶金用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μ
m 以下の天然黒鉛を混合し、上記潤滑剤無添加で、同様
に上記処理を行い、粉末混合物を得た。
【0091】次に、得られた粉末混合物に対し、ステア
リン酸リチウムまたはヒドロキシステアリン酸リチウム
またはラウリン酸カルシウムのうち少なくとも1種を合
計量で0.2 重量%添加し、均一に攪拌混合後、混合機か
ら排出した(発明例35〜39、比較例6)。次に、得られ
た粉末混合物 100gを、20〜140 ℃の所定の温度に加熱
した後、排出孔径5mmΦのオリフィスから排出し、排出
終了までの時間を測定し、実施例1と同様に流動性を調
べた。
【0092】さらに、上記の流動性の調査と並行して、
上記の混合機から排出した粉末混合物を、150 ℃に加熱
しつつ、7ton/cm2 の成形圧力で11mmΦのタブレットに
成形し、成形時の抜出力と圧粉体密度を測定した。実験
結果を表7に示す。表7に示す比較例6と発明例35〜39
の比較で明らかなように、表面処理剤による処理を施し
た場合、混合粉の各温度での流動性が格段に改良されて
いる。
【0093】また、比較例6と発明例35〜39の比較で明
らかなように、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマ
ーまたは層状の結晶構造を持つ化合物を添加し、かつ表
面処理剤による処理を施した場合、圧粉体密度が向上
し、かつ抜出力が低減され、成形性が改善されている。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】〔実施例8〕平均粒径約80μm の粉末冶金
用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μm 以下の天然黒鉛
を混合し、各種オルガノアルコキシシランまたはオルガ
ノシラザンまたはチタネート系あるいはフッ素系カップ
リング剤、シリコーンオイルまたは鉱物油を適量噴霧し
た。
【0097】得られた各種粉末混合物それぞれを高速ミ
キサーで攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混合
した後、エチレンステアリン酸モノアミド0.2 重量%、
エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%、および、
さらに加えて熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー
または層状の結晶構造を持つ化合物のいずれかを0.1重
量%添加し、混合しながら160 ℃で加熱し、さらに混合
しながら85℃以下に冷却した。
【0098】以上の処理を予備処理B2と記す。予備処
理B2で添加した表面処理剤、潤滑剤(熱可塑性樹脂ま
たは熱可塑性エラストマーまたは層状の結晶構造を持つ
化合物)の種類および添加量を表8に示す。表8中の表
面処理剤の欄に記載した記号の内容は表14に示す通りで
あり、また、潤滑剤の欄に記載した記号の内容は表15に
示す通りである。
【0099】次に、得られた粉末混合物に対し、ステア
リン酸リチウムまたはヒドロキシステアリン酸リチウム
またはラウリン酸カルシウムのうち少なくとも1種を合
計量で0.2 重量%添加し、均一に攪拌混合後、混合機か
ら排出した(発明例40〜43)。次に、得られた粉末混合
物 100gを、20〜140 ℃の所定の温度に加熱した後、排
出孔径5mmΦのオリフィスから排出し、排出終了までの
時間を測定し、実施例1と同様に流動性を調べた。
【0100】さらに、上記の流動性の調査と並行して、
上記の混合機から排出した粉末混合物を、150 ℃に加熱
しつつ、7ton/cm2 の成形圧力で11mmΦのタブレットに
成形し、成形時の抜出力と圧粉体密度を測定した。実験
結果を表8に示す。表7、表8に示す比較例6と発明例
40〜43の比較で明らかなように、表面処理剤による処理
を施した場合、混合粉の各温度での流動性が格段に改良
されている。
【0101】また、比較例6と発明例40〜43の比較で明
らかなように、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマ
ーまたは層状の結晶構造を持つ化合物を添加し、かつ表
面処理剤による処理を施した場合、圧粉体密度が向上
し、かつ抜出力が低減され、成形性が改善されている。
【0102】
【表9】
【0103】〔実施例9〕平均粒径約80μm の粉末冶金
用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μm 以下の天然黒鉛
を混合し、エチレンステアリン酸モノアミド0.2 重量
%、エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%、およ
び、さらに加えて熱可塑性樹脂または熱可塑性エラスト
マーまたは層状の結晶構造を持つ化合物のいずれかを0.
1 重量%添加し、混合しながら160 ℃で加熱したのち、
約110 ℃に冷却した。
【0104】得られた粉末混合物に、さらに各種オルガ
ノアルコキシシランまたはオルガノシラザンまたはチタ
ネート系あるいはフッ素系カップリング剤またはシリコ
ーンオイルまたは鉱物油を適量噴霧した。得られた各粉
末混合物それぞれを高速ミキサーで攪拌翼回転数:1000
rpm の条件下、1分間混合した後、85℃以下に冷却し
た。
【0105】以上の処理を予備処理C2と記す。予備処
理C2で添加した表面処理剤、潤滑剤(熱可塑性樹脂ま
たは熱可塑性エラストマーまたは層状の結晶構造を持つ
化合物)の種類および添加量を表9に示す。表9中の表
面処理剤の欄に記載した記号の内容は表14に示す通りで
あり、また、潤滑剤の欄に記載した記号の内容は表15に
示す通りである。
【0106】次に、得られた粉末混合物に対し、ヒドロ
キシステアリン酸リチウム0.4 重量%を添加し、均一に
攪拌混合後、混合機から排出した(発明例44〜48)。次
に、得られた粉末混合物 100gを、20〜140 ℃の所定の
温度に加熱した後、排出孔径5mmΦのオリフィスから排
出し、排出終了までの時間を測定し、実施例1と同様に
流動性を調べた。
【0107】さらに、上記の流動性の調査と並行して、
上記の混合機から排出した粉末混合物を、150 ℃に加熱
しつつ、7ton/cm2 の成形圧力で11mmΦのタブレットに
成形し、成形時の抜出力と圧粉体密度を測定した。実験
結果を表9に示す。表7、表9に示す比較例6と発明例
44〜48の比較で明らかなように、表面処理剤による処理
を施した場合、混合粉の各温度での流動性が格段に改良
されている。
【0108】また、比較例6と発明例44〜48の比較で明
らかなように、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマ
ーまたは層状の結晶構造を持つ化合物を添加し、かつ表
面処理剤による処理を施した場合、圧粉体密度が向上
し、かつ抜出力が低減されて、成形性が改善されてい
る。
【0109】
【表10】
【0110】
【表11】
【0111】〔実施例10〕各種オルガノアルコキシシ
ランまたはオルガノシラザンまたはチタネート系あるい
はフッ素系カップリング剤をエタノール中に、シリコー
ンオイルまたは鉱物油をキシレン中にそれぞれ溶解し、
平均粒径約80μm の粉末冶金用部分拡散合金化鋼粉、ま
たは平均粒径23μm 以下の天然黒鉛に適量噴霧した。
【0112】得られた各粉末それぞれを高速ミキサーで
攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混合した後、
溶媒を真空乾燥機にて除去し、さらに前記シラン、シラ
ザンまたはカップリング剤を噴霧したものは、約100 ℃
で1時間加熱した。以上の処理を予備処理A2と記す。
予備処理A2で添加した表面処理剤の種類および添加量
を表10に示す。
【0113】表10中の表面処理剤の欄に記載した記号の
内容は、表14に示す通りである。予備処理A2を施し
た、あるいは予備処理A2を施さない平均粒径約80μm
の粉末冶金用合金鋼粉と、予備処理A2を施した、ある
いは予備処理A2を施さない平均粒径23μm 以下の天然
黒鉛を混合し、エチレンステアリン酸モノアミド0.1 重
量%、エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%、お
よび、さらに加えて熱可塑性樹脂または熱可塑性エラス
トマーまたは層状の結晶構造を持つ化合物のいずれかを
0.1 重量%添加し、混合しながら160 ℃で加熱し、さら
に混合しながら85℃以下に冷却した。
【0114】添加した潤滑剤(熱可塑性樹脂または熱可
塑性エラストマーまたは層状の結晶構造を持つ化合物)
の種類および添加量を表10に示す。表10中の潤滑剤の欄
に記載した記号の内容は表15に示す通りである。次に、
得られた粉末混合物に対し、ステアリン酸リチウムまた
はヒドロキシステアリン酸リチウムまたはラウリン酸カ
ルシウムのうち少なくとも1種を合計量で0.2 重量%を
添加し、均一に攪拌混合後、混合機から排出した(発明
例49〜52)。
【0115】次に、得られた粉末混合物 100gを、20〜
140 ℃の所定の温度に加熱した後、排出孔径5mmΦのオ
リフィスから排出し、排出終了までの時間を測定し、実
施例1と同様に流動性を調べた。さらに、上記の流動性
の調査と並行して、上記の混合機から排出した粉末混合
物を、150 ℃に加熱しつつ、7ton/cm2 の成形圧力で11
mmΦのタブレットに成形し、成形時の抜出力と圧粉体密
度を測定した。
【0116】実験結果を表10に示す。表7、表10に示す
比較例6と発明例49〜52の比較で明らかなように、表面
処理剤による処理を施した場合、混合粉の各温度での流
動性が格段に改良されている。また、比較例6と発明例
49〜52の比較で明らかなように、熱可塑性樹脂または熱
可塑性エラストマーまたは層状の結晶構造を持つ化合物
を添加し、かつ表面処理剤による処理を施した場合、圧
粉体密度が向上し、かつ抜出力が低減されて、成形性が
改善されている。
【0117】
【表12】
【0118】〔実施例11〕平均粒径約80μm の粉末冶
金用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μm 以下の天然黒
鉛を混合し、各種オルガノアルコキシシランまたはオル
ガノシラザンまたはチタネート系あるいはフッ素系カッ
プリング剤またはシリコーンオイルまたは鉱物油を適量
噴霧した。
【0119】得られた各粉末混合物それぞれを高速ミキ
サーで攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混合し
た後、エチレンステアリン酸モノアミドを0.2 重量%、
エチレンステアリン酸ビスアミドを0.2 重量%添加し、
混合しながら160 ℃で加熱し、さらに混合しながら85℃
以下に冷却した。以上の処理を予備処理B2と記す。
【0120】予備処理B2で添加した表面処理剤の種類
および添加量を表11に示す。表11中の表面処理剤の欄に
記載した記号の内容は表14に示す通りである。次に、得
られた粉末混合物に対し、ステアリン酸リチウム0.1 重
量%、および、さらに加えて熱可塑性樹脂または熱可塑
性エラストマーまたは層状の結晶構造を持つ化合物のい
ずれか少なくとも1種である潤滑剤を合計量で0.2 重量
%添加し、均一に攪拌混合後、混合機から排出した(発
明例53〜56)。
【0121】添加した潤滑剤の種類および添加量を表11
に示す。表11中の潤滑剤の欄に記載した記号の内容は表
15に示す通りである。次に、得られた粉末混合物 100g
を、20〜140 ℃の所定温度に加熱した後、排出孔径5mm
Φのオリフィスから排出し、排出終了までの時間を測定
し、実施例1と同様に流動性を調べた。
【0122】さらに、上記の流動性の調査と並行して、
上記の混合機から排出した粉末混合物を、150 ℃に加熱
しつつ、7ton/cm2 の成形圧力で11mmΦのタブレットに
成形し、成形時の抜出力と圧粉体密度を測定した。実験
結果を表11に示す。表7、表11に示す比較例6と発明例
53〜56の比較で明らかなように、表面処理剤による処理
を施した場合、混合粉の各温度での流動性が格段に改良
されている。
【0123】また、比較例6と発明例53〜56の比較で明
らかなように、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマ
ーまたは層状の結晶構造を持つ化合物を添加し、かつ表
面処理剤による処理を施した場合、圧粉体密度が向上
し、かつ抜出力が低減されて、成形性が改善されてい
る。
【0124】
【表13】
【0125】〔実施例12〕平均粒径約80μm の粉末冶
金用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μm 以下の天然黒
鉛を混合し、エチレンステアリン酸モノアミド0.2 重量
%、エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%を添加
し、混合しながら160 ℃で加熱したのち、約110 ℃に冷
却した。
【0126】得られた粉末混合物に、さらに各種オルガ
ノアルコキシシランまたはオルガノシラザンまたはチタ
ネート系あるいはフッ素系カップリング剤またはシリコ
ーンオイルまたは鉱物油を適量噴霧した。上記した各種
表面処理剤が被覆された各粉末混合物それぞれを、高速
ミキサーで攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混
合した後、85℃以下に冷却した。
【0127】以上の処理を予備処理C2と記す。予備処
理C2で添加した表面処理剤の種類および添加量を表12
に示す。表12中の表面処理剤の欄に記載した記号の内容
は、表14に示す通りである。次に、得られた粉末混合物
に対し、ステアリン酸リチウム0.1 重量%、および、さ
らに加えて熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーま
たは層状の結晶構造を持つ化合物のいずれか少なくとも
1種である潤滑剤を合計量で0.2 重量%添加し、均一に
攪拌混合後、混合機から排出した(発明例57〜59)。
【0128】添加した潤滑剤の種類および添加量を表12
に示す。表12中の潤滑剤の欄に記載した記号の内容は表
15に示す通りである。次に、得られた粉末混合物 100g
を、20〜140 ℃の所定の温度に加熱した後、排出孔径5
mmΦのオリフィスから排出し、排出終了までの時間を測
定し、実施例1と同様に流動性を調べた。
【0129】さらに、上記の流動性の調査と並行して、
上記の混合機から排出した粉末混合物を、150 ℃に加熱
しつつ、7ton/cm2 の成形圧力で11mmΦのタブレットに
成形し、成形時の抜出力と圧粉体密度を測定した。実験
結果を表12に示す。表7、表12に示す比較例6と発明例
57〜59の比較で明らかなように、表面処理剤による処理
を施した場合、混合粉の各温度での流動性が格段に改良
されている。
【0130】また、比較例6と発明例57〜59の比較で明
らかなように、表面処理剤による処理を施した場合、圧
粉体密度が向上し、かつ抜出力が低減されて、成形性が
改善されている。
【0131】
【表14】
【0132】〔実施例13〕平均粒径約80μm の粉末冶
金用部分拡散合金化鋼粉、平均粒径23μm 以下の天然黒
鉛を混合し、エチレンステアリン酸モノアミド0.2 重量
%、エチレンステアリン酸ビスアミド0.2 重量%を添加
し、混合しながら160 ℃で加熱したのち、約110 ℃に冷
却した。
【0133】得られた粉末混合物に、さらに各種オルガ
ノアルコキシシランまたはオルガノシラザンまたはチタ
ネート系あるいはフッ素系カップリング剤またはシリコ
ーンオイルまたは鉱物油を適量噴霧した。上記した各種
表面処理剤が被覆された各粉末混合物それぞれを、高速
ミキサーで攪拌翼回転数:1000rpm の条件下、1分間混
合した後、85℃以下に冷却した。
【0134】以上の処理を予備処理C2と記す。予備処
理C2で添加した表面処理剤の種類および添加量を表13
に示す。表13中の表面処理剤の欄に記載した記号の内容
は、表14に示す通りである。次に、得られた粉末混合物
に対し、ステアリン酸リチウム0.1 重量%、および、さ
らに加えて熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーま
たは層状の結晶構造を持つ化合物のいずれか少なくとも
1種である潤滑剤を合計量で0.2 重量%添加し、均一に
攪拌混合後、混合機から排出した(発明例60〜63)。
【0135】添加した潤滑剤の種類および添加量を表13
に示す。表13中の潤滑剤の欄に記載した記号の内容は表
15に示す通りである。次に、得られた粉末混合物 100g
を、20〜140 ℃の所定の温度に加熱した後、排出孔径5
mmΦのオリフィスから排出し、排出終了までの時間を測
定し、実施例1と同様に流動性を調べた。
【0136】さらに、上記の流動性の調査と並行して、
上記の混合機から排出した粉末混合物を、150 ℃に加熱
しつつ、7ton/cm2 の成形圧力で11mmΦのタブレットに
成形し、成形時の抜出力と圧粉体密度を測定した。実験
結果を表13に示す。表7、表13に示す比較例6と発明例
60〜63の比較で明らかなように、表面処理剤による処理
を施した場合、混合粉の各温度での流動性が格段に改良
されている。
【0137】また、比較例6と発明例60〜63の比較で明
らかなように、表面処理剤による処理のみを施した場合
にも、圧粉体密度が向上し、かつ抜出力が低減されて、
成形性が改善されている。
【0138】
【表15】
【0139】
【表16】
【0140】
【表17】
【0141】
【発明の効果】本発明によれば、常温のみならず温間に
おいても優れた流動性が得られる粉末冶金用鉄基粉末混
合物を提供することが可能となった。さらに本発明によ
れば、優れた流動性を有すると共に、常温および温間に
おいて、成形時の抜出力が低減され、成形性が改善され
た粉末冶金用鉄基粉末混合物を提供することが可能とな
った。

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄基粉末と潤滑剤と合金用粉末を含む鉄
    基粉末混合物において、前記鉄基粉末、潤滑剤および合
    金用粉末から選ばれる1種以上が表面処理剤によって被
    覆された粉末であることを特徴とする流動性および成形
    性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  2. 【請求項2】 前記表面処理剤が、オルガノアルコキシ
    シラン、オルガノシラザン、シリコーンオイル、チタネ
    ート系カップリング剤、フッ素系カップリング剤および
    鉱物油から選ばれる1種以上である請求項1記載の流動
    性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  3. 【請求項3】 前記オルガノアルコキシシランが置換ま
    たは非置換の有機基を有する請求項2記載の流動性およ
    び成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  4. 【請求項4】 前記有機基の置換基が、アクリル基また
    はエポキシ基またはアミノ基であるオルガノアルコキシ
    シランの内から選ばれる1種以上である請求項3記載の
    流動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合
    物。
  5. 【請求項5】 前記鉱物油が、アルキルベンゼンである
    請求項2記載の流動性および成形性に優れた粉末冶金用
    鉄基粉末混合物。
  6. 【請求項6】 前記潤滑剤が、脂肪酸アミドおよび/ま
    たは金属石鹸である請求項1〜5いずれかに記載の流動
    性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  7. 【請求項7】 前記潤滑剤が、さらに加えて、層状の結
    晶構造を有する無機化合物、層状の結晶構造を有する有
    機化合物、熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーか
    ら選ばれる1種以上を含む請求項6記載の流動性および
    成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  8. 【請求項8】 前記脂肪酸アミドが、脂肪酸モノアミド
    および脂肪酸ビスアミドから選ばれる1種以上である請
    求項6または7記載の流動性および成形性に優れた粉末
    冶金用鉄基粉末混合物。
  9. 【請求項9】 前記層状の結晶構造を有する無機化合物
    が、黒鉛、フッ化炭素およびMoS2から選ばれる1種以上
    である請求項7記載の流動性および成形性に優れた粉末
    冶金用鉄基粉末混合物。
  10. 【請求項10】 前記層状の結晶構造を有する有機化合物
    が、メラミン−シアヌル酸付加化合物および/またはN
    −アルキルアスパラギン酸−β−アルキルエステルであ
    る請求項7記載の流動性および成形性に優れた粉末冶金
    用鉄基粉末混合物。
  11. 【請求項11】 前記熱可塑性樹脂が、粒径が30μm 以下
    の粉末状のポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンおよ
    びフッ素樹脂から選ばれる1種以上である請求項7記載
    の流動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合
    物。
  12. 【請求項12】 前記熱可塑性エラストマーが、粒径が30
    μm 以下の粉末状の熱可塑性エラストマーである請求項
    7記載の流動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉
    末混合物。
  13. 【請求項13】 前記熱可塑性エラストマーが、スチレン
    系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラス
    トマー、アミド系熱可塑性エラストマーおよびシリコー
    ン系熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上である
    請求項7または請求項12に記載の流動性および成形性に
    優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  14. 【請求項14】 鉄基粉末と潤滑剤と合金用粉末を含む鉄
    基粉末混合物において、前記鉄基粉末、潤滑剤および合
    金用粉末から選ばれる1種以上が表面処理剤によって被
    覆され、前記合金用粉末として少なくとも黒鉛粉末を、
    前記潤滑剤として少なくとも金属石鹸および脂肪酸アミ
    ドを含み、黒鉛粉末の含有率が0.05〜1wt%、脂肪酸ア
    ミドの含有率が0.01〜1.0wt %、金属石鹸の含有率が0.
    01〜1.0wt %であることを特徴とする流動性および成形
    性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  15. 【請求項15】 前記表面処理剤が、オルガノアルコキシ
    シラン、オルガノシラザン、シリコーンオイル、チタネ
    ート系カップリング剤、フッ素系カップリング剤および
    鉱物油から選ばれる1種以上である請求項14記載の流動
    性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  16. 【請求項16】 少なくともいずれかが表面処理剤で被覆
    された鉄基粉末および合金用粉末に、脂肪酸、脂肪酸ア
    ミド、金属石鹸、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマ
    ー、層状の結晶構造を有する無機化合物および層状の結
    晶構造を有する有機化合物である潤滑剤の中から選ばれ
    る1種以上を加えて1次混合する工程、該1次混合後の
    混合物を前記した潤滑剤の内少なくとも1種の潤滑剤の
    融点以上に加熱しつつ攪拌し、該潤滑剤を溶融させる工
    程、該溶融工程後に得られた混合物を混合しながら冷却
    し、前記鉄基粉末の表面に前記潤滑剤によって前記合金
    用粉末を固着させる工程、該工程において得られた合金
    用粉末が固着された鉄基粉末を含有する混合物に、さら
    に、金属石鹸、熱可塑性樹脂、脂肪酸アミド、熱可塑性
    エラストマー、層状の結晶構造を有する無機化合物粉末
    および層状の結晶構造を有する有機化合物粉末の中から
    選ばれる1種以上を加えて2次混合する工程とからなる
    ことを特徴とする流動性および成形性に優れた粉末冶金
    用鉄基粉末混合物の製造方法。
  17. 【請求項17】 少なくともいずれかが表面処理剤で被覆
    された鉄基粉末および合金用粉末に、(1) 脂肪酸アミド
    および(2) 該脂肪酸アミドよりも融点の高い、金属石
    鹸、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、層状の結晶
    構造を有する無機化合物および層状の結晶構造を有する
    有機化合物である潤滑剤の中から選ばれる1種以上を加
    えて1次混合する工程、該1次混合工程で得られた混合
    物を前記脂肪酸アミドの融点以上に加熱しつつ攪拌し、
    前記脂肪酸アミドを溶融させる工程、該溶融工程後に得
    られた混合物を混合しながら冷却し、前記鉄基粉末の表
    面に前記潤滑剤によって前記合金用粉末を固着させる工
    程、該工程において得られた合金用粉末が固着された鉄
    基粉末を含有する混合物に、さらに、金属石鹸、熱可塑
    性樹脂、脂肪酸アミド、熱可塑性エラストマー、層状の
    結晶構造を有する無機化合物粉末および層状の結晶構造
    を有する有機化合物粉末の中から選ばれる少なくとも1
    種を加えて2次混合する工程とからなることを特徴とす
    る流動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合
    物の製造方法。
  18. 【請求項18】 鉄基粉末および合金用粉末に、脂肪酸、
    脂肪酸アミド、金属石鹸、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラ
    ストマー、層状の結晶構造を有する無機化合物および層
    状の結晶構造を有する有機化合物である潤滑剤の中から
    選ばれる1種以上を加えて1次混合する工程、該1次混
    合工程で得られた混合物を前記した潤滑剤の内の少なく
    とも1種の潤滑剤の融点以上に加熱しつつ攪拌して、該
    潤滑剤を溶融させる工程、該溶融工程で得られた混合物
    を混合しながら冷却し、冷却過程の100 〜140 ℃の温度
    域で表面処理剤を添加混合する工程、該工程で表面処理
    剤が添加混合された混合物に、さらに、金属石鹸、熱可
    塑性樹脂、脂肪酸アミド、熱可塑性エラストマー、層状
    の結晶構造を有する無機化合物粉末および層状の結晶構
    造を有する有機化合物粉末の中から選ばれる1種以上を
    加えて2次混合する工程とからなることを特徴とする流
    動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物の
    製造方法。
  19. 【請求項19】 鉄基粉末および合金用粉末に、(1) 脂肪
    酸アミドおよび(2)該脂肪酸アミドよりも融点の高い、
    金属石鹸、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、層状
    の結晶構造を有する無機化合物および層状の結晶構造を
    有する有機化合物である潤滑剤の中から選ばれる1種以
    上を加えて1次混合する工程、該1次混合工程で得られ
    た混合物を前記脂肪酸アミドの融点以上に加熱しつつ攪
    拌し、前記脂肪酸アミドを溶融させる工程、次いで冷却
    して冷却過程の100 〜140 ℃の温度域で表面処理剤を添
    加混合する工程、該工程で得られた表面処理剤が添加さ
    れた混合物に、さらに、金属石鹸、熱可塑性樹脂、脂肪
    酸アミド、熱可塑性エラストマー、層状の結晶構造を有
    する無機化合物粉末および層状の結晶構造を有する有機
    化合物粉末の中から選ばれる1種以上を加えて2次混合
    する工程とからなることを特徴とする流動性および成形
    性に優れた粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記表面処理剤が、オルガノアルコキシ
    シラン、オルガノシラザン、シリコーンオイル、チタネ
    ート系カップリング剤、フッ素系カップリング剤および
    鉱物油から選ばれる1種以上である請求項16〜19いずれ
    かに記載の流動性および成形性に優れた粉末冶金用鉄基
    粉末混合物の製造方法。
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