JPH089722A - マルチ移植機のシートの敷設方法およびそのシート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目 的】 マルチ移植機で敷設されるシートに接着手
段を施すことにより、重合部における剥離を防止する。 【構 成】 機体１に搭載したシートＳを繰り出して地
面に敷設すると共に、敷設されたシートＳに苗等の移植
物を移植するマルチ移植機Ａに用いるシートＳに、この
シートＳがその端部を重ねて敷設される際に敷設された
互いのシートＳが強制的に接合されて接着力を高める接
着手段を施した。この接着手段はシートＳの側端部に沿
って所定間隔に穿設した小径の穴又はスリットあるいは
シートＳに磁性体を設けることによって構成される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、敷設装置により地面に
敷設されたシートに苗等の移植物を移植するマルチ移植
機におけるシート敷設方法とそのシートに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、稲作又は畑作等の圃場において紙
又はビニールフィルム等で形成されたシートを圃場面に
敷設した状態で、このシートの上から移植爪により苗を
貫通させて植え付ける、いわゆるマルチ移植栽培が、雑
草の繁茂を防止し省力的で且つ作物の育成を助長する効
果的な栽培方法として実施されている。

【０００３】これを機械的に行うマルチ移植機は、走行
機体の後部にロール巻きに支持したシートを繰り出して
敷設するシート敷設装置と、地面に敷設されたシートに
苗等の移植物を移植する移植部とから構成されており、
近年、このシートとしてダンボール紙等を素材とした再
生紙が用いられるようになってきた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記マルチ移植機によ
るシートの敷設作業が水田圃場の全面を覆って雑草の発
生を防止することを目的とする場合は、既に敷設したシ
ートの側端部上に次に敷設する隣設シートの側端部を重
ねて敷設されるものであり、相隣る両シート間に隙間を
生ずることによる雑草等の繁茂を防止するようにしてい
る。

【０００５】しかし、田面条件によって水田の水の具合
が一定でなく、乾燥した部分ないしは水が少ない部分が
ある場合には、従来のシートはその重合部において、水
を充分に含浸することができずに互いの接着が難しく離
間した状態となり、この部分から風によってめくられて
シートが剥がされる等の問題があった。そこで本発明
は、前記敷設されたシートのめくれの問題点を解消する
ことのできるマルチ移植機用のシートを提供しようとす
るものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、機体１に搭載したシートＳを繰り出して地
面に敷設すると共に、敷設されたシートＳに苗等の移植
物を移植するマルチ移植機Ａ用のシートＳを、このシー
トＳがその側端部を重ねて敷設される際、敷設された互
いのシートＳが強制的に接合し接着力を高める接着手段
を施したマルチ移植機のシートの敷設方法を提供するも
のである。

【０００７】また、シートＳに施す接着手段として、こ
のシートＳの側端部に沿って所定間隔に穿設した小径３
０の穴、又はスリット３２であることを特徴としてい
る。さらに、シートＳに施す接着手段としてこのシート
Ｓの表面に磁性体３５を塗布するか、或いは、内部に磁
性体３５を混入したものを使用する。

【０００８】

【作 用】機体から繰り出されるシートＳはマルチ移植
機Ａで繰り出されて地面に敷設される。そして、既敷設
のシートＳの側端部に重ねて敷設されるシートＳは、接
着手段３１を介して接着力を高められた状態で既敷設の
シートＳに強制的に密着させられるので、重合部におけ
るめくれを防止することができ、風によってシートが剥
がされることを抑制ないしは防止できる。また、シート
Ｓは地面との密着が的確に行われるので、機体の進行に
伴う滑りを生ずることなく効率的に移植作業を行うこと
ができる。

【０００９】

【実 施 例】本発明の実施例を図面を参照して説明す
る。１はマルチ移植機Ａを備えた乗用田植機Ｂの機体で
あり、前輪２及び後輪２ａを有し、前部にエンジン３
を、後部寄りに運転席４を設置すると共に、機体１の後
部に移植部Ｃとその前方側低部にマルチ装置（シート敷
設装置）５を有するマルチ移植機Ａを油圧で上下動させ
る昇降リンク機構６で昇降可能に支持して構成してい
る。

【００１０】前記移植部Ｃは伝動ケース７上に前高後低
状に斜設したマット苗搭載用の苗載台８と、この苗載台
８の下端部に位置して一株分づつの苗を掻取り圃場に植
えつける移植爪９を５条分設けると共に、前記伝動ケー
ス７の下部の前方にロール巻きにしたシートＳの収納部
１０、及びロールフロート（ロール）１１等よりなるシ
ートＳの敷設装置としてのマルチ装置５を設けている。

【００１１】また前記収納部１０は５条分の植え付け巾
より広い移植部Ｃの機巾相当のシートＳをロール状に巻
き込んだ状態から前記ロールフロート１１により地面に
ロール掛けによって押接しながら繰り出し、この繰り出
されたシートＳはイコライザ機構Ｅで揺動及び回動可能
に支架された先行ロール１１ａ及び後行ロール１１ｂに
よって地面に沿って押圧力を調整しながら敷設するよう
にしている。

【００１２】なお、前記ロールフロート１１はシートＳ
を地面に押接して敷設する際に先行ロール１１ａと後行
ロール１１ｂが地面の凹凸に沿って上下動する、いわゆ
るイコライザ機構Ｅの支持アームの動きをセンサ（図示
せず）が検出し、前記昇降リンク機構６を油圧制御して
マルチ移植機Ａを上下動させ、移植部Ｃの植え付け深さ
を一定とするように連繋動作し、マルチ移植機Ａの昇降
動作を指令する感知装置として構成している。

【００１３】また、ロールフロート１１の後方両側には
後ロール１１ｅを設け、敷設されたシートＳの両端部を
地面に押接して端部から剥がれることを防止し、良好な
敷設作業を行うと共にシートＳの浮き上がりを防止する
ようにしている。１２はシートＳの下面を支持するガイ
ド杆であり、収納部１０から繰り出されるシートＳをロ
ールフロート１１との間で垂れ下がりを防止しながら田
面に案内している。

【００１４】また、地面Ｇに敷設されたシートＳを移植
爪９の後方で巾方向に切断するカッタ１３は、マルチ移
植機Ａの適所に昇降可能に枢支された支持杆１３ａの後
端部に取り付けて、運転席４に設置した昇降レバー１３
ｂの操作により切断可能に昇降操作されるようになって
いる。２０は運転席４の両側に配設された補給用のシー
トＳを収容する補助収納部であり、図２に示す如く支点
２１ａを中心として機体１の側方に張り出すように支持
された取付機枠２１に、図３に示すように湾曲状の受金
２２を適数個固着して設け、この受金２２の外側端にヒ
ンジ２３を介して複数個に分割されたカバー２４を開閉
可能に止着している。

【００１５】図３に示すように、このカバー２４はその
中程部位をヒンジ２５で連結し、このカバー２４を開く
ことにより点線に示すように階段状に開動固定すること
ができるようにしている。これによりオペレータは運転
席４の乗降の際に階段状となるカバー２４を昇降ステッ
プとして利用し、地面Ｇより、また地面Ｇへの乗降を安
全且つ容易に行うことができるようにしている。

【００１６】図３（Ａ）は湾曲状のカバー２４の実施例
を、同図（Ｂ）は角型状のカバー２４の実施例をそれぞ
れ示している。次に図４及び図５を参照してシートＳの
構成について説明する。図４（Ａ）のシートＳはその両
側端部に沿って小径の穴３０を所定間隔を有して穿設し
た接着手段３１が設けてあり、図４（Ｂ）に示すように
左側に敷設されたシートＳの側端部に一部重合させて右
側のシートＳが敷設されるとき、このシートＳの穴３０
から水及び泥土並びに空気を上方に通過させて抜き出す
ことにより、シートＳを地面に速やかに沈めると共に、
両シートＳ，Ｓを密着させ、且つ上側のシートＳの表面
から水を含浸させて、上側のシートＳの接着力を高めこ
の部におけるめくれを防止し、風によってシートＳが剥
がされることのないように敷設できるようにしている。

【００１７】上記接着手段３１は水がシートＳの裏面よ
り表面に滲み出す機能を持つものであれば良く、図４
（Ｃ）に示すようなスリット３２でもよく、また、この
スリット３２はこの部から雑草が生えない程度の大きさ
でシートＳの全面に所定間隔に設けることにより、水の
通過を促進してシートＳを速やかに地面Ｇに定着させ、
空気溜まり等のない状態で地面Ｇに密着させ且つ重合部
の接着力を向上させるように良好に敷設することができ
る。

【００１８】図５に示すシートＳはその製造工程におい
て、磁性材料の粉体からなる磁性体３５を接着手段３１
として再生紙材中に均一に混入させ紙シートに形成した
実施例であり、該シートＳを地面に敷設することにより
重合して敷設される重合部の接着力を向上させることが
でき、またその全面は地中に含有する鉄成分と吸引し合
うことにより、地面との密着性を図り良好に敷設するこ
とができる。

【００１９】また該磁性体３５は一般に黒色糸であるこ
とから、製造されたシートＳは顔料として作用して黒色
化することができ、太陽熱の吸収を促進して地熱を上げ
て苗Ｐの活着を促進し得る利点がある。なお、前記磁性
体３５は適宜な塗料中に混入させて、この塗料をシート
Ｓの接合側の端部に筋状に塗布して接着手段を形成する
こともできる。

【００２０】従って、乗用田植機Ｂを前進走行させてマ
ルチ移植作業を行うとき、シートＳはロールフロート１
１により地面Ｇに押接された状態で繰り出され、この地
面Ｇの凹凸に適応して上下動しながら敷設され、その両
側を後ロール１１ｅで転圧して良好に敷設される。この
後敷設されたシート面に苗が植付爪９によって移植され
る。

【００２１】このとき図４（Ｂ）に示すように、枕地側
（右側）から敷設されるシートＳはその左側端に、次位
に敷設される左側のシートＳが重ねられて敷設され以
後、両者の端部が重なるように順次敷設されてマルチ移
植作業が遂行される。即ち、左側のシートＳが右側のシ
ートＳに側端部を重ねて敷設されるとき、この該シート
Ｓは接着手段３１により既敷設のシートＳに強制的に密
着するので、シートＳの接着力を高めこの部におけるめ
くれを防止することができ、風によってシートＳが剥が
されることを防止する。

【００２２】また、シートＳは地面との密着が的確に行
われるので機体の進行に伴う滑りが抑制されて既に地面
Ｇに植付けた苗の押し倒し等のトラブルを生ずることな
く良好な移植作業を遂行することができる。

【００２３】

【発明の効果】本発明は以上説明した構成により以下の
効果を操作することができる。 イ）請求項１の発明により、既に敷設されたシートの側
端部に重ねて敷設されるシートは本発明の接着手段によ
り、既に敷設されたシートに接着力を高められて強制的
に密着させられるので、重合部におけるめくれを防止す
ることができ、風によってシートが剥がされることを的
確に防止することができる。

【００２４】また、シートは地面との密着が良好に行わ
れるので機体の進行に伴う滑りが抑制され、既に植付け
た苗の押し倒し等のトラブルを生ずることなく、良好な
移植作業を遂行することができ苗の健全な育成を促進さ
せる。 ロ）請求項２の発明により、シートが敷設されるとき接
着手段の穴から水及び泥土並びに空気等を上方に抜き出
すことができ、シートを地面に速やかに敷設すると共に
両シートを密着させてシートの接着力を高めることがで
きるので、重合部におけるめくれを防止しながらシート
の敷設作業を良好に行うことができる。

【００２５】また、空気溜まり等のない状態でシートを
地面に密着させて苗の育成を促進することができると共
に、シートを簡単且つ廉価に製作することができる。 ハ）請求項３の発明により、シートは接着手段の磁性体
により重合して敷設される重合部の接着力を向上させる
ことができ、また磁性体は地中に含有する鉄成分と吸引
し合うことによりシートの密着性を図ることができ、良
好に敷設されると共にシートの剥離等を防止することが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明実施例を備えたマルチ移植機の側面図で
ある。

【図２】図１のマルチ移植機の平面図である。

【図３】（Ａ）は補助収納部の第１の実施例を示す断面
図、（Ｂ）は補助収納部の第２実施例を示す断面図であ
る。

【図４】（Ａ）はシートの第１実施例を示す斜視図、
（Ｂ）は前記（Ａ）図の敷設状態を示す平面図であり、
そして（Ｃ）は第１実施例の変形例を示す斜視図であ
る。

【図５】（Ａ）はシートの第２実施例を示す斜視図、
（Ｂ）は前記（Ａ）の敷設状態を示す断面図である。

【符号の説明】

Ａ マルチ移植機 Ｓ シート ３０ 穴 ３１ 接着手段 ３２ スリット ３
５ 磁性体

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 機体１に搭載したシートＳを繰り出して
   地面に敷設すると共に、敷設されたシートＳに苗等の移
   植物を移植するマルチ移植機Ａ用のシートＳを、該シー
   トＳがその側端部を重ねて敷設する方法において、敷設
   された互いのシートＳが強制的に接合し接着力を高める
   接着手段を施してあるマルチ移植機のシート敷設方法。
2. 【請求項２】 シートＳに施す接着手段としてこのシー
   トＳの側端部に沿って所定間隔に穿設した小径３０の
   穴、又はスリット３２であるマルチ移植機用シート。
3. 【請求項３】 シートＳに施す接着手段としてこのシー
   トＳの表面に磁性体３５を塗布するか、或いは、内部に
   磁性体３５を混入してなるマルチ移植機用シート。