JP2585508Y2 - マルチ移植機におけるシート切断装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案はマルチ移植機にて圃場面
に敷設されたシートを切断する切断装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、稲作或いは畑作等の圃場におい
て、ビニールフィルム等のシート又は紙資材をベースと
したシートを圃場面に敷設した状態で苗を移植爪により
シート上方から貫挿させて圃場に植付けるようにしたマ
ルチ移植栽培法が知られ、除草剤を不要として環境保護
を図りながら雑草の繁茂を抑制して作物の良好な育成を
促進するとともに、栽培管理の簡略化と省力化を達成で
きる手段として注目されている。

【０００３】上記栽培法を機械的に行なうマルチ移植機
は、一般に走行機体の後方に移植部を昇降自在に装着
し、そのシート支持部に収納横架されたシート部材を順
次後方に繰り出して、橇型フロート又は転輪フロート等
の敷設装置で押圧案内して圃場面を覆うように敷設し、
移植爪により苗をシート部材の上方から圃場面に植え付
けるようにしている。

【０００４】そして一行程のマルチ移植作業が完了され
機体を転換し次行程の作業に移る場合にはその都度敷設
されたシートを移植部の後方で切断して次行程のマルチ
移植作業が行なわれる。従来、上記敷設シートの切断作
業は補助者が手作業で切断していたのて、本願出願人は
移植部の後方にシート巾に横設したカッターを運転席か
ら昇降操作可能に構成して機械的に切断するようにして
省力化を図った。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】然し上記構成のカッタ
ーは機械的に切断するので便利である反面、シートを切
断しない非切断の上昇位置にある通常状態においはて、
上記カッターは機体の後方で人体に接触し易い位置で刃
物が露出した状態にあるので危険を伴う問題がある。そ
のためカッターに安全カバーの装着が必要とされるが、
このカバーを設けると切断時にはその都度取り外さなけ
ればならず、煩雑な作業が付加されることになる。

【０００６】そこで本考案は上記の実情に鑑み、非切断
時のカバーを適確に行なうとともにこのカバーを切断時
には自動的にカバー位置から退避させることにより敷設
シートを煩雑な作業を行なうことなく良好に切断するこ
とのできる安全で能率の高いマルチ移植作業ができるマ
ルチ移植機におけるシート切断装置の提供を目的とする
のである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めの本考案によるマルチ移植機におけるシート切断装置
は支持部に収納横架されたシート部材を繰り出して圃場
面に敷設しながら走行し、移植爪により苗をシート上か
ら圃場面に植え付けるようにした移植機において、上記
シートを切断するカッターを昇降可能に横設するととも
に、このカッターに沿わせて上下方向に可動自在となる
カバー体を、前記カッターが上昇した非切断状態におい
ては下動してカッター刃先を覆う安全カバーとなるとと
もに、下降した切断状態においては上動して刃先を露出
させシートを切断可能とするように構成している。

【０００８】

【考案の作用】移植により敷設されたシートＳ上に切断
装置１２を下動させると、カバー体１５は敷設シート面
に接当してカッター１４のみが圃場面に入り込むので、
シートＳを巾方向に適確に切断することができる。また
切断装置１２を上昇復帰させるとカバー体１５はカッタ
ー１４を自動的に覆うので、切断時及び非切断時のカバ
ー体１５の操作を不要として安全で能率のよいマルチ移
植作業を遂行できる。

【０００９】

【実 施 例】図面において１２はシートＳを田面に敷
設する際にその始端部を田面に押圧して固定する押圧装
置であり、移植部Ｃの適所に中途部を回動枢支１３ａさ
れた平面視方形状な支扞１３の後端部に、シート切断用
のカッター１４を取りつけるとともに押圧面Ｈを有し、
縦方向に切断代Ｌだけ移動させるための長孔１５ａを有
する押圧片１５を、このカッター１４の前側面全巾にス
ライドピン（あるいはボルト）１６を前記長孔１５ａを
通して着脱可能に取り付けている。

【００１０】なお、図２及び図３に示すようにカッター
１４が非切断状態の時は押圧片１５が下がってその下部
でカッター１４の刃先部を覆うようになっている。また
支扞１３はスプリング等の適宜な支持手段により通常は
実線状態に保持され、前端部に形成したレバー部１３ｂ
を矢印方向に持ち上げて回動させると、押圧装置１２部
が下動して点線状態の押圧姿勢となるように構成されて
いる。

【００１１】なお、前記押圧装置１２及びカッター１４
の昇降動作は、前記支扞１３を伝動ケース６の駆動力で
回動させるようにして運転席３に設けた操作レバー１３
ｃで操作可能に構成するとさらに便利となるものであ
る。上記の構成においてマルチ移植作業は以下のように
して行なわれる。先ず移植部Ｃをリフトアップした状態
において、支持部９に設置されたシートロールからシー
トＳが先行ロール１０ａ下に至るように繰り出した後、
移植部Ｃを田面に下降させた状態で機体１を走行させ
る。するとシートＳはローラフロート１０と田面間に押
接挟持されて繰り出され、その始端部が押圧装置１２の
直下に至ることとなる。

【００１２】このとき押圧装置１２のレバー部１３ｂを
矢印方向に操作して押圧片１５を下動させると、図４に
示すようにこの押圧片１５の押圧面ＨがシートＳの始端
部を全巾にわたり押圧して田面Ｄに押し込み埋設状態に
固定する。従ってシートＳは田面Ｄへの敷設初期におい
て始端部がしっかりと田面Ｄに埋め込み状態に固定され
るので、機体走行初期のシートＳの引きズレのない状態
で良好に敷設されるとともに、敷設初期においてシート
Ｓを充分に田面Ｄに密着させて速やかに湿潤させるの
で、シートＳの田面Ｄへの固定効果に併せて移植爪８に
よりシートＳを貫通して行なわれる植付け作業が苗傷み
のない状態で良好に行なうことができる。

【００１３】また上記押圧片１５は昇降動作されるカッ
タ１４に一体的に取り付ける場合には取付部の構成が兼
用化されて簡単且つ互いの剛性を高めて廉価に製作でき
る。そして図４に示すように押圧片１５の押圧面Ｈがシ
ートＳの始端部近傍を押圧するとき、カッタ１４の波形
の刃先はシートＳを完全に切断することなくその始端部
を押圧片１５の後方でより深く埋め込むように作用する
ので具合がよい。

【００１４】なお、シートＳの始端部を押圧片１５で押
圧して田面Ｄに埋め込んだ状態ではこのシートＳの一部
がカッタ１４の刃先で点線状に切断されている。この状
態から押圧状態から更に押圧すると、押圧片１５の押圧
面Ｈで押圧支持されているシートＳは完全に切断される
ようになっている。このときローラフロート１０で敷設
されるシートＳは、先ず表面が平滑な先行ローラ１０ａ
によりその全巾のしわを伸ばすように繰り出されて地面
に均等に押接された後、この部分が田面Ｄに接してやゝ
湿潤した状態となり、後続の後行ロール１０ｂにより再
転圧され、リング体１０ｂとしたローラフロート１０
（押圧部材）により植付け軌跡条をさらに深く押圧し、
田面Ｄが柔らかい場合には凹状にシートＳを埋め込んだ
状態で植付面Ｒを形成して敷設される。

【００１５】従って植付部分のシートＳは水田等の田面
Ｄに押圧されて密着され、例えば水張りが不足気味な田
面Ｄにおいてもより確実、且つ速やかに湿潤され、紙資
材で形成されるシートＳを膨軟させるので、移植爪８は
苗を把持した状態において植付面Ｒが苗を傷めることな
く容易に突き抜かれて能率のよいマルチ移植作業を行な
うことを可能とするものである。

【００１６】なお、シートＳをビニールシートにした場
合においては、リング体１０ｂによって形成された凹状
の植付け軌跡条に水を溜める保水効果を生ずることがで
き、またこの部分が地面と良好に密着することになり、
風等で剥離され振動等の悪影響を与えることなくできる
ので、作物の育成を良好に行なうことができる。このよ
うにして一行程のマルチ移植作業が遂行され、次行程に
向けて機体を転換しようとするときは、レバー部１３ｂ
を矢印方向に操作して切断装置１２を下動させると、カ
バー体１５は図２及び図３のカバー状態から図４に示す
ようにシートＳを敷設した田面Ｄに押圧面Ｈが接当して
長孔１５ａで融通され、カッター１４のみが下降してカ
バー体１５下端から先刃を出して田面Ｄに入り込み、シ
ートＳを巾方向に適確に切断することができる。

【００１７】そして再び上昇復帰動作をするとき、スラ
イドピン１６（あるいはボルト）は長孔１５ａ内とスラ
イドし、カバー体１５をカッター１４の刃先を覆わせた
状態にしながら上方に持ち上げるものである。従って敷
設シートを運転者が適確に切断して次行程に容易に方向
転換し二度マルチ移植作業を連続して能率よく遂行する
ことが安全にできる。

【００１８】なお、上記カバー体１５はその厚さ（押圧
面Ｈ）を大きくとり且つカッター１４の切断時に敷設さ
れたシートＳを地中に凹入させるように長孔１５ａを形
成することにより、シートＳ端部の圃場面への固定をよ
り確実にすることができる。また、カバー体１５は同様
な構成でカッター１４の前面側に設けてもよく、この場
合にはシートＳを敷設する初期の始端部の押圧固定具と
して便利に利用することができる。

【００１９】さらにカバー体１５は自重で下動させる他
カッター１４との間に下動動作付勢バネ（図示せず）を
設けてもよく、この場合にはカバー体１５の重量を軽く
しながら適確にカバーすることができる。

【００２０】

【考案の効果】本考案は上記のように構成したから、カ
ッター１４がシートＳを切断しない非切断時の上昇位置
においてはカバー体１５はカッター１４の刃先より下方
に位置して人体が直接刃先に触れることなく保護するの
で安全が確保される。そしてカッターが田面Ｄ（圃場
面）に下降した切断時においてはカッター１４の下降動
作で敷設されたシートＳ上で刃先を自動的に露出させる
ので、カバー体１５を除去のための手間を要することな
く適確にシートＳを切断することができ能率のよいマル
チ移植作業を遂行することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案実施例を備えたマルチ移植機の側面図で
ある。

【図２】シートの切断装置の後面図である。

【図３】図２の側面図である。

【図４】シートの切断状態を示す側面図である。

【符号の説明】

Ａ マルチ装置 Ｂ 乗用田植機（マルチ移植機）
Ｃ 移植部 Ｓ シート １ 機体 ８ 移植爪 ９ 支持部 １０ ローラフロート（敷設装置） １２ 切断装置
１３ 支杆 １４ カッター １５ カバー体 １６ スライド
ピン

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭63−193447（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭57−102966（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A01G 13/00 303 A01G 13/00 302

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 支持部に横向きに支持されたシート部材
   を繰り出して圃場面に敷設しながら走行し、移植爪によ
   り苗をシート上から圃場面に植え付けるようにした移植
   機において、上記敷設されたシートを切断するカッター
   を昇降可能に横設するとともに、このカッターに沿わせ
   て上下方向に可動自在となるカバー体を、前記カッター
   が上昇した非切断状態においては下動してカッター刃先
   を覆う安全カバーとなるとともに、下降した切断状態に
   おいては上動して刃先を露出させシートを切断可能とす
   るように構成したことを特徴とするマルチ移植機におけ
   るシート切断装置。