JPH0881826A - ポリウレタン弾性繊維巻糸体及びその製造法 - Google Patents

ポリウレタン弾性繊維巻糸体及びその製造法

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JPH0881826A
JPH0881826A JP21539494A JP21539494A JPH0881826A JP H0881826 A JPH0881826 A JP H0881826A JP 21539494 A JP21539494 A JP 21539494A JP 21539494 A JP21539494 A JP 21539494A JP H0881826 A JPH0881826 A JP H0881826A
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JP
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melt
fiber
elastic fiber
polyurethane
polyurethane elastic
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JP21539494A
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English (en)
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Michihiro Ishiguro
通裕 石黒
Kimio Nakayama
公男 中山
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 溶融紡糸性に優れ、また耐熱水性、弾性回復
性等の繊維性能及び均質性に優れるため、ナイロン繊維
やポリエステル繊維等と交編織して高温染色した場合
に、密度斑、経筋等の発生が起こらないポリウレタン弾
性繊維巻糸体を提供する。 【構成】 エステル化触媒を用いて重合反応を行った
後、該エステル化触媒の活性を低下させて得られた高分
子ジオ−ルを用い、スズ化合物存在下に重合してなる熱
可塑性ポリウレタンを溶融紡糸し、繊維中の含有水分を
500ppm以下となる条件下で加熱熟成することによ
り、長鎖ハ−ドセグメント保持率85%以上、対数粘度
保持率80%以上、内層部、中層部および外層部の13
0℃における貯蔵弾性率の差が7%以下の優れたポリウ
レタン弾性繊維巻糸体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性ポリウレタン
を溶融紡糸して得られるポリウレタン弾性繊維巻糸体及
びその製造法に関する。詳しくは、耐熱水性や弾性回復
率などの各種物性及び均質性に優れたポリウレタン弾性
繊維巻糸体及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ポリウレタン弾性繊維の製造
方法としては、乾式紡糸法や湿式紡糸法、溶融紡糸法が
知られている。なかでも、溶融紡糸法により得られた繊
維は、繊維性能(熱セット性、耐摩耗性、透明性等)が
優れていること、経済的であることなどの理由から注目
されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、溶融押出しさ
れた直後のポリウレタンは、熱的にイソシアナ−ト基と
水酸基との解離が生じて分子量が低下しており、吐出後
に冷却されるに伴ってウレタン結合が再形成(分子量が
回復)されて紡糸引取りが可能となる。従って、分子量
の回復が遅い場合には断糸が起こりやすく、さらに巻き
取られた繊維が膠着して解舒不良等が生じる問題があっ
た。また、溶融紡糸により得られたポリウレタン繊維は
強固なハ−ドセグメントが形成され難く、乾式紡糸や湿
式紡糸に比して、高温下からの回復性、抵抗力等の耐熱
性、耐熱水性等が劣る傾向があった。以上の問題を解決
するために、熱可塑性ポリウレタンを溶融紡糸し、チ−
ズ等に巻き取った後、60〜150℃で1〜24時間熱
処理して固相重合を行う方法が知られているが、同一チ
−ズ内の均質性の問題があり、ナイロン、ポリエステル
等の他の繊維と交編織して高温高圧染色した場合、密度
斑、経筋が発生しやすくなっていた。本願発明は、かか
る問題を解決し、優れたポリウレタン弾性繊維巻糸体及
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意研究
により、熱可塑性ポリウレタンを溶融紡糸して巻き取っ
たポリウレタン弾性繊維巻糸体であって、該ポリウレタ
ン弾性繊維がスズ金属換算で0.1〜5ppmのスズ原
子を含み、該ポリウレタン弾性繊維を220℃で60分
間溶融処理した場合における熱可塑性ポリウレタンの長
鎖ハ−ドセグメント(1個の有機ジイソシアネ−ト成分
と1個の鎖伸長剤成分とからなる繰り返し単位が3個以
上含まれるハ−ドセグメント)の保持率が85%以上で
あり、かつ220℃で6分間溶融処理後に溶融押出し
し、次いで20℃、60%RH(相対湿度)で24時間
放置した場合における対数粘度の保持率が80%以上で
あり、かつ該巻糸体の内層部、中層部および外層部の1
30℃における貯蔵弾性率の差が7%以下であるポリウ
レタン弾性繊維巻糸体を見出だし、その製造方法とし
て、エステル化触媒を用いて重合反応を行った後、該エ
ステル化触媒の活性を低下させることにより得られた高
分子ジオ−ルと、、有機ジイソシアナ−ト及び鎖伸長剤
とをスズ化合物の存在下に溶融重合し、得られた熱可塑
性ポリウレタン組成物を溶融紡糸して巻き取ったポリウ
レタン弾性繊維を、該弾性繊維中の水分が500ppm
以下となる条件下で加熱熟成することを見出だしたもの
である。本発明は、紡糸性が良好で、かつ同一チ−ズ内
の耐熱性、耐熱水性等の均質性に優れたポリウレタン弾
性繊維を提供するものである。本発明によれば、ナイロ
ン、ポリエステル等の他の繊維と共に高温高圧で染色し
た場合の密度斑、経筋の発生を抑制できる。
【0005】本発明のポリウレタン弾性繊維巻糸体を構
成する熱可塑性ポリウレタンは、実質的に高分子ジオ−
ル成分(A)、有機ジイソシアナ−ト成分(B)および
鎖伸長剤(C)から構成される。本発明者等の検討によ
れば、エステル化触媒を使用して製造された高分子ジオ
−ルをそのまま(エステル化活性を低下させずに)用い
て製造された熱可塑性ポリウレタンを溶融紡糸すると、
ポリウレタン繊維性能の低下及び不均一化が生じること
が判明した。これは、ハ−ドセグメント内部が切断され
て形成された短鎖ジオ−ル成分と、高分子ジオ−ルに由
来するソフトセグメント内部が切断されて形成された短
鎖ジオ−ル末端との間でエステル交換反応が生じ、その
結果、ポリウレタン分子主鎖におけるブロック性の低下
(部分的なランダム化)が起こるためと考えられる。
【0006】しかしながら、高分子ジオ−ルをチタン系
触媒の活性低下処理に付した場合には、上記の問題は改
善されるものの、ハ−ドセグメント内部の切断により解
離したイソシアナ−ト基と水酸基とのウレタン化反応性
が低下して紡糸性等が悪化する。ポリウレタンは、溶融
状態では一部イソシアネ−ト基と水酸基に解離し、紡糸
ノズルから吐出後の冷却過程においてウレタン結合の再
形成(ポリウレタン分子量の回復)が行われて引取り可
能となる。従って、ウレタン化反応性が低下すると分子
量の回復性が低下し、その結果、紡糸性の悪化、膠着等
が起こり、得られる繊維の強伸度、耐熱性も低下するこ
ととなる。本発明者等は、ポリウレタンを溶融紡糸する
に当たって、熱可塑性ポリウレタン中のハ−ドセグメン
ト鎖長分布を溶融紡糸中に極力変化させないこと、及び
溶融紡糸後のポリウレタン分子量の速やかな回復が重要
であることを見出だした。
【0007】ポリウレタン弾性繊維における長鎖ハ−ド
セグメントの保持率は85%以上必要である。長鎖ハ−
ドセグメントの保持率は、ポリウレタン主鎖におけるブ
ロック性を表す指標となる。すなわち。保持率が低い場
合には、前述のような短鎖ジオ−ルのエステル交換反応
等によりウレタン主鎖に部分的なランダム化が生じてお
り、強伸度、耐熱性、耐加水分解性等に優れた繊維とは
なり得ない。本発明でいう長鎖ハ−ドセグメントの保持
率とは、ポリウレタン弾性繊維における全ハ−ドセグメ
ント基準での長鎖ハ−ドセグメントの含有率(重量%)
と、該ポリウレタン弾性繊維を220℃で60分間溶融
処理した場合における全ハ−ドセグメント基準での長鎖
ハ−ドセグメント(1個の有機ジイソシアナ−ト成分と
1個の鎖伸長剤成分とからなる繰り返し単位が3個以上
含まれるハ−ドセグメント)の含有率(重量%)をそれ
ぞれ測定し、前者に対する後者の割合を示したものであ
る。
【0008】ポリウレタン弾性繊維におけるハ−ドセグ
メントの定量は、該ポリウレタン弾性繊維を少量のテト
ラヒドロフランで膨潤後、0.01N−水酸化カリウム
のメタノ−ル溶液中で50℃、5日間攪拌することによ
り、高分子ジオ−ル成分(A)中のエステル結合を完全
に分解し、ハ−ドセグメント成分を取り出すことにより
可能である。すなわち、該ハ−ドセグメント成分は有機
ジイソシアナ−ト成分(B)と短鎖ジオ−ル成分(C)
とのn個の繰り返し単位に(B)成分が1個反応した
[(B)−(C)]n−(B)と示される単位から構成
されるか、または(B)成分1個から構成され、かつ分
子鎖両末端に(A)成分の末端構成成分であった短鎖ジ
オ−ルがウレタン結合した構造を有するウレタンジオ−
ル化合物に変換されたものである。
【0009】第1図は、この発明にかかる実施例1のポ
リウレタン弾性繊維のハ−ドセグメント鎖長分布を示す
図(GPCチャ−ト)である。図中の各ピ−クにつけた
番号は、ハ−ドセグメントの基本構成成分であるMDI
と1,4−ブタンジオ−ル(BD)の繰り返し単位の数
を示す。ただし、この例では繰り返し数が4以上ではピ
−クが明確に分割されなかったため、繰り返し数が4以
上であるものはすべて仮に4と表記している。すなわち
第1図において0〜4の整数を付して示したハ−ドセグ
メントの構造は次ぎの通りである。 0:MPD−MDI−MPD 1:MPD−(MDI−BD)1 −MDI−MPD 2:MPD−(MDI−BD)2 −MDI−MPD 3:MPD−(MDI−BD)3 −MDI−MPD 4:MPD−(MDI−BD)n −MDI−MPD
(n≧4)
【0010】また、ポリウレタン弾性繊維の対数粘度の
保持率は80%以上必要である。対数粘度の保持率と
は、紡糸直後の分子量回復性を表す指標であり、80%
未満の場合には分子量の回復性が低く、紡糸性及び強伸
度等の繊維性能が不十分なものとなる。本発明でいう対
数粘度の保持率とは、ポリウレタン弾性繊維を220℃
で6分間溶融処理後に溶融押出しし、次いで20℃、6
0%RH(相対湿度)で24時間放置した場合における
対数粘度の保持率を示す。なお、溶融処理は、ポリウレ
タン弾性繊維を脱水乾燥後、ラボプラトミルで220℃
で60分間、溶融状態で混練することにより行うことが
できる。上記のような優れたポリウレタン繊維を得るた
めには、熱可塑性ポリウレタンにおけるエステル化触媒
の活性が十分に低く、かつ0.1〜5ppmの適切な濃
度のスズ化合物を含有させることが必要である。すなわ
ち、エステル化触媒の活性を低下させることによりポリ
ウレタン主鎖のランダム化を抑制し、分子量回復性を向
上させるために、スズ化合物を特定量含有させるもので
ある。スズ化合物の含有量が少ない場合には、溶融紡糸
時に低下したポリウレタンの分子量が回復しにくいた
め、断糸、膠着などがおこりやすく得られる繊維の性能
も低下し、対数粘度保持率も低いものとなる。逆に、5
ppmをこえると、溶融紡糸中におけるポリウレタン分
子中の長鎖ハ−ドセグメント含有率の低下が著しいた
め、繊維の耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性等の性能が
低下しやすい。
【0011】スズ化合物としては、ウレタン化触媒活性
を発揮し得るものが使用される。例えば、オクチル酸ス
ズ、モノメチルスズメルカプト酢酸塩、モノブチルスズ
トリアセテ−ト、モノブチルスズモノオクチレ−ト、モ
ノブチルズズモノアセテ−ト、モノブチルスズマレイン
酸塩、モノブチルスズマレイン酸ベンジルエステル塩、
モノオクチルスズマレイン酸塩、モノオクチルスズチオ
ジプロピオン酸塩、モノオクチルスズトリス(イソオク
チルチオグリコ−ル酸エステル)、モノフェニルスズト
リアセテ−ト、ジメチルスズマレイン酸エステル塩、ジ
メチルスズビス(エチレングリコ−ルモノチオグリコレ
−ト)、ジメチルスズビス(メルカプト酢酸)塩、ジメ
チルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸)塩、ジメ
チルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテ−ト)、
ジブチルスズジアセテ−ト、ジブチルスズジオクトエ−
ト、ジブチルスズジステアレ−ト、ジブチルスズジラウ
レ−ト、ジブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズマレ
イン酸塩ポリマ−、ジブチルスズマレイン酸エステル
塩、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸)、ジブチルス
ズビス(メルカプト酢酸アルキルエステル)塩、ジブチ
ルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸アルコキシブ
チルエステル)塩、ジブチルスズビスオクチルチオグリ
コ−ルエステル塩、ジブチルスズ(3−メルカプトプロ
ピオン酸)塩、ジオクチルスズマレイン酸塩、ジオクチ
ルスズマレイン酸塩、ジオクチルスズマレイン酸塩ポリ
マ−、ジオクチルスズジウラレ−ト、ジオクチルスズビ
ス(イソオクチルメルカプトアセテ−ト)、ジオクチル
スズビス(イソオクチルチオグリコ−ル酸エステル)、
ジオクチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸)塩
等のアシレ−ト化合物、メルカプトカルボン酸塩などを
挙げることができる。上記のスズ化合物のなかでも、ジ
ブチルスズジアセテ−ト、ジブチルスズジラウレ−ト等
のジアルキルスズジアシレ−ト、ジブチルスズビス(3
−メルカプトプロピオン酸エトキシブチルエステル)塩
等のジアルキルスズビスメルカプトカルボン酸エステル
塩などが好ましい。
【0012】エステル化触媒の活性低下方法としては、
エステル化触媒含有高分子ジオ−ルからのエステル触媒
の分離、除去には通常繁雑な工程を伴うため、簡便さの
点から、失活処理に付することが好ましい。失活処理方
法としては、エステル化触媒を含む高分子ジオ−ルを加
熱条件下に水と接触させる方法が好ましい。水の添加量
は、処理に付する高分子ジオ−ル種類、エステル触媒の
種類、量等に応じて適宜選択することができるが、高分
子ジオ−ルの重量に基づいて、約1重量%以上が好まし
く、1.5重量%以上がより好ましい。水添加量の上限
は特に限定されないが、添加量が多いと除去が煩雑にな
るので、5重量%以下に止めるのが好ましい。また、水
と接触させる際の加熱温度としては、70〜150℃、
特に90〜130℃が好ましい。70℃未満では、エス
テル化触媒の活性低下が不十分となることがあり、15
0℃をこえると高分子ジオ−ルの分解を伴うことがあ
る。100℃以上に加熱する場合は、加圧下で行っても
よく、水を水蒸気の形態で加えてもよい。加熱処理時間
は、特に限定されないが、通常1〜3時間程度で十分で
ある。水によりエステル化触媒を失活させた後は、減圧
下での加熱乾燥等の任意の方法により、高分子ジオ−ル
から水を除去することができる。
【0013】また、該触媒含有ジオ−ルにリン酸、リン
酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合
物を添加することにより失活処理を行うこともできる。
ただし、後者の方法では、処理後の高分子ジオ−ル及び
それからなる熱可塑性ポリウレタンの耐加水分解性の低
下が生じやすい点で不利である。失活処理は、重合反応
にそのまま引き続いて行ってもよく、重合反応後、所望
の期間をおいて行ってもよい。なお、高分子ジオ−ルを
製造するためのエステル化反応(エステル交換反応、直
接エステル化反応、開環重合等のエステル形成反応)に
おいては、反応促進のためにチタン系エステル化触媒を
使用することが好ましい。本発明にいう「エステル化」
とは、アルコ−ルとカルボン酸のエステル形成性誘導体
とのエステル交換及びラクトンの開環重合を包含するエ
ステル形成反応を意味する。
【0014】チタン系エステル化触媒としては、一般に
ポリエステル、ポリカ−ボネ−ト等のエステル系高分子
製造に使用し得ることが知られているものが使用でき
る。好ましいチタン系エステル化触媒としては、チタン
酸、テトラアルコキシチタン化合物、チタンアシレ−ト
化合物、チタンキレ−ト化合物等を挙げることができ
る。具体的には、テトライソプロピルチタネ−ト、テト
ラ−n−ブチルチタネ−ト、テトラ−2−エチルヘキシ
ルチタネ−ト、テトラステアリルチタネ−ト等のテトラ
アルコキシチタン化合物;ポリヒドロキシチタンステア
レ−ト、ポリイソプロポキシチタンステアレ−ト等のチ
タンアシレ−ト化合物;チタンアセチルアセトネ−ト、
トリエタノ−ルアミンチタネ−ト、チタンアンモニウム
ラクテ−ト、チタンエチルラクテ−ト、チタンオクチレ
ングリコレ−ト等のチタンキレ−ト化合物などが例示さ
れる。
【0015】チタン系エステル化触媒の使用量として
は、目的とする高分子ジオ−ルの製造及びその後の熱可
塑性ポリウレタンの製造への使用に適した割合を適宜選
択して採用すればよく、特に限定されないが、ポリエス
テルジオ−ルの場合、その原料(ジカルボン酸類と短鎖
ジオ−ルの合計量)に対して、約0.1〜50ppm、
より好ましくは約1〜30ppmとする。触媒の使用量
が少なすぎると、エステル系高分子ジオ−ルの生成に極
めて長い時間を要するようになり、得られた、高分子ジ
オ−ルに着色が生じることがある。一方、触媒の添加量
が多すぎると、余剰分のチタン系エステル化触媒が高分
子ジオ−ルの生成促進に寄与しないのみならず、むしろ
高分子ジオ−ル合成後における触媒活性低下を困難にす
るので好ましくない。高分子ジオ−ル製造のエステル化
触媒としては、スズ系エステル化触媒も知られている。
しかしながら、スズ系エステル化触媒は、チタン系に比
べエステル化活性触媒が低いため、スズ系エステル化触
媒をチタン系触媒程度の低濃度で高分子ジオ−ルの製造
に使用しても、重合に長時間を要するため実用的でな
い。スズ系触媒を高濃度で使用した場合、製造時間の短
縮は可能であるが、長鎖セグメント保持率が低下しやす
くなるため好ましくない。
【0016】また、高分子ジオ−ルにおけるチタン系エ
ステル化触媒の残存活性の程度及びスズ化合物の添加に
よるウレタン化反応の活性化の程度は、例えば、該高分
子ジオ−ルと4、4´−ジフェニルメタンンジイソシア
ネ−ト(MDI)との90℃でのみかけの反応速度定数
(k)により評価できる。エステル化触媒の活性を十分
低下させた場合であっても、適度のスズ化合物が存在す
ることにより、ウレタン化触媒が活性化され、みかけの
反応定数kは高められる。kは、0.2〜3.0が好ま
しく、0.3〜2.0がより好ましい。kが3.0をこ
える場合は、ウレタン化反応のみならずエステル−ウレ
タン交換反応も同時に促進されるため、ハ−ドセグメン
トとソフトセグメントの比率が設計とは異なる分子とな
ってしまい、所望の性能が得られない場合が生じる。逆
に、kが0.2未満の場合は、ウレタン化反応自体が十
分に進行せず、十分な性能が得られない場合が生じる。
なお、kは下記の数式1に従って求めた。
【0017】
【数1】
【0018】以上のように、本発明においては、エステ
ル化触媒の活性を十分低下させること及びスズ化合物を
配合することが極めて重要であり、かかる方法により、
長鎖ハ−ドセグメントの保持率85%以上、対数粘度の
保持率80%以上の優れたポリウレタン繊維を得ること
ができる。しかしながら、かかる繊維を巻き取った糸巻
体には、同一チ−ズ内の均質性に問題がある。一般に、
巻き取られたポリウレタン繊維には、未反応のイソシア
ナ−ト基と水酸基が残っており、紡糸後、60〜80℃
程度で1〜48時間、熱処理を施して、再結合反応を促
進させることが行われている。再結合反応としては、イ
ソシアナ−ト基が水酸基、水と反応しウレタン結合、ウ
レア結合を生成する反応や、イソシアナ−ト基がさらに
ウレタン結合、ウレア結合と反応しアロハナ−ト結合、
ビュレット結合などの架橋を形成する反応があり、これ
らの反応により弾性回復性及び耐熱水性が改善される。
【0019】本発明者等は、以上のような固相重合を行
う際、ポリウレタン弾性繊維に含まれる水分量が多くな
ると、イソシアナ−ト基の水酸基や水との反応が同一チ
−ズ内の各層において変動し、ナイロンやポリエステル
繊維と交編織して高温染色した場合に密度斑や経筋が発
生することを見出だした。溶融紡糸直後のポリウレタン
弾性繊維の水分率を低くしても、熱処理や熱処理室への
移動時の雰囲気の相対湿度が高い場合には、ポリウレタ
ン弾性繊維の吸湿性が高いためチ−ズ内の水分率は不均
一となる。水分を多く含有する部分では、繊維を構成す
るイソシアナ−ト基と水が反応して鎖伸長が起こり、ポ
リウレタン弾性繊維のミクロ相分離性、ハ−ドセグメン
トの凝集性は阻害される。従って、水含有率の高い部分
程、ミクロ相分離等が阻害されて繊維性能が低下して、
同一チ−ズ内でので繊維性能が不均一となる。
【0020】本発明においては、このようなハ−ドセグ
メントの凝集状態等の不均一性を評価する指標として1
30℃における貯蔵弾性率(動的粘弾性)を用いること
及び貯蔵弾性率の差は7%以下、特に5%以下が好まし
いことを見出だした。かかる巻糸体を用いた場合には、
ナイロンなどの交編織物を高温染色するとき、溶融紡糸
したポリウレタン弾性繊維の密度斑や経筋の発生が抑制
できる。
【0021】貯蔵弾性率の差が大きい場合には、高温染
色時にポリウレタン弾性繊維が部分的に劣化したり染色
時の不均一な伸長からの回復に斑が出たりして密度斑や
経筋の原因となる。また、ポリエステル繊維と交編織し
て120〜130℃での高温高圧染色を行う場合には、
130℃における貯蔵弾性率の差が7%以下であるだけ
でなく、130℃における貯蔵弾性率が6.0×107
dyne/cm2 以上であることが好ましい。貯蔵弾性
率が7%以下の均質性に優れたポリウレタン弾性繊維巻
糸体は、例えば該弾性繊維に含まれる水分率を500p
pm以下の条件下で熱処理することにより得ることがで
きる。熱処理は、60〜150℃程度の温度で1〜48
時間程度行うのが好ましい。かかる熱処理により、弾性
回復性、耐熱水性等の性能及び均質性に優れた繊維を得
ることができる。
【0022】水分率を500ppm以下にする方法とし
ては、溶融紡糸から熱処理までの全工程を水分率500
ppm以下に維持できる低湿度下で取り扱う、あるいは
熱処理に先だって、ポリウレタン弾性繊維中の水分率を
500ppm以下に脱水する等の方法がある。脱水方法
としては、好ましくは80℃以下、より好ましくは、5
0℃以下の温度で減圧により脱水する。脱水時の温度が
80℃をこえると、脱水と共に上記の反応が一部進行
し、脱水速度によって得られるポリウレタン弾性繊維が
不均一なものとなることがある。
【0023】本発明で用いる高分子ジオ−ル成分(A)
としては、ポリエステルジオ−ル、ポリエステルポリカ
−ボネ−トジオ−ル、ポリカ−ボネ−トジオ−ル等のエ
ステル系高分子ジオ−ル(分子主鎖両末端に水酸基を有
するエステル系高分子)から誘導される成分が好まし
い。該高分子ジオ−ルの数平均分子量は500〜100
00の範囲が好ましい。上記ポリエステルジオ−ルは、
通常ジカルボン酸またはそのエステル、無水物等のエス
テル形成性誘導体と短鎖ジオ−ルと直接エステル化反応
もしくはエステル交換反応させるか、あるいはラクトン
を開環重合させることにより製造することができる。
【0024】ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、
ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、
1,10−デカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボ
ン酸;イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボ
ン酸等を挙げることができる。ジカルボン酸またはその
エステル形成性誘導体(以後これらを総称して「ジカル
ボン酸類」ということがある)は、1種類のみを使用し
てもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0025】また、ジオ−ル成分は、特に限定されるも
のではないが、具体的には、エチレングリコ−ル、ジエ
チレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、プロピレ
ングリコ−ル、1、4−ブタンジオ−ル、2−メチル−
1,3−プロパンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、
1、5−ペンタンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペン
タンジオ−ル、1、6−ヘキサンジオ−ル、1,8−オ
クタンジオ−ル、2−メチル−1,8−オクタンジオ−
ル、1、9−ノナンジオ−ル、1,10−デカンジオ−
ルなどの脂肪族ジオ−ル;シクロヘキサンジメタノ−
ル、シクロヘキサンジオ−ル等の脂環族ジオ−ル、メタ
キシリレングリコ−ル、パラキシリレングリコ−ル、ビ
スヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族2価アルコ−
ル等を挙げることができる。短鎖ジオ−ルは1種類のみ
を使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよ
い。またラクトンの例としては、ε−カプロラクトン、
β−メチル−δ−バレロラクトンなどを挙げることがで
きる。
【0026】上記ポリカ−ボネ−トジオ−ルは、常法に
従って、例えば、短鎖ジオ−ルとジアルキルカ−ボネ−
ト、アルキレンカ−ボネ−ト、ジアリ−ルカ−ボネ−ト
等のカ−ボネ−ト化合物とをエステル交換法により重縮
合反応させることにより製造できる。ここで短鎖ジオ−
ルとしては、ポリエステルジオ−ル製造原料として先に
例示したような短鎖ジオ−ルが挙げられる。またジアル
キルカ−ボネ−トとしてはジメチルカ−ボネ−ト、ジエ
チルカ−ボネ−ト等、アルキレンカ−ボネ−トとしては
エチレンカ−ボネ−ト等、ジアリ−ルカ−ボネ−トとし
てはジフェニルカ−ボネ−ト等がそれぞれ例示される。
【0027】上記ポリエステルポリカ−ボネ−トジオ−
ルは、常法に従って、例えば、短鎖ジオ−ル、ジカルボ
ン酸類およびカ−ボネ−ト化合物を同時に反応(エステ
ル交換反応またはそれと直接エステル化反応)に付する
ことにより製造することができる。またポリエステルポ
リカ−ボネ−トジオ−ルは、あらかじめ上記のごとき方
法によりポリエステルジオ−ル及びポリカ−ボネ−トジ
オ−ルをそれぞれ合成し、次いで、それらをカ−ボネ−
ト化合物と反応させるかまたはジオ−ルおよびジカルボ
ン酸類と反応させることによって製造することもでき
る。
【0028】本発明の効果を十分に発揮させるために
は、高分子ジオ−ル成分におけるエステル基(炭酸エス
テル基)濃度が低いほうが有利である。このため、高分
子ジオ−ルの製造原料として使用するジカルボン酸とし
ては、アジピン酸、アゼライン酸等の炭素数6以上のジ
カルボン酸が好ましく、また、短鎖ジオ−ルとしては
1,4−ブタンジオ−ル、3−メチル−1,5ペンタン
ジオ−ル等の炭素数4以上の短鎖ジオ−ルが好ましい。
【0029】本発明における有機ジイソシアナ−ト成分
(B)は、有機イソシアナ−トから誘導される。該有機
ジイソシアナ−トとしては、4、4´−ジフェニルメタ
ンジイソシアナ−ト、p−フェニレンジイソシアナ−
ト、トルイレンジイソシアナ−ト、1,5−ナフタレン
ジイソシアナ−ト、キシリレンジイソシアナ−トなどの
芳香族ジイソシアナ−ト;イソホロンジイソシアナ−
ト、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナ−
トなどの脂環族ジイソシアナ−トなどの分子量500以
下のジイソシアナ−トが挙げられ、4、4´−ジフェニ
ルメタンジイソシアナ−トが特に好ましい。
【0030】また、本発明における鎖伸長剤成分(C)
としては、イソシアナ−トと反応し得る活性水素原子を
少なくとも2個含有する低分子化合物から誘導される。
好ましい例としては、1、4−ブタンジオ−ル、1,6
−ヘキサンジオ−ル、1,9−ノナンジオ−ル、1,4
−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシ
リレングリコ−ルなどの分子量400以下のジオ−ル化
合物が挙げられる。使用する高分子ジオ−ル(A)、有
機ジイソシアナ−ト(B)、鎖伸長剤(C)のモル比B
/(A+C)が1.00〜1.15のイソシアナ−ト過
剰系で重合した熱可塑性ポリウレタン、あるいは、紡糸
時にポリイソシアナ−ト化合物を添加混合し、モル比B
/(A+C)が1.00〜1.15のイソシアナ−ト過
剰としたポリウレタンを溶融紡糸することにより製造す
ることが好ましい。
【0031】ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレ
タンの重合度は、n−ブチルアミンを1重量%含むジメ
チルホルムアミド溶液に、濃度0.5g/dlとなるよ
うに溶解させた溶液において、30℃で測定したときの
対数粘度が0.5〜1.8dl/g、特に0.7〜1.
6dl/gであることが好ましい。この範囲とすること
により耐熱水性、弾性回復性に優れた繊維となる。
【0032】本発明のポリウレタン繊維は、例えば、エ
ステル触媒を使用して重合反応を行った後、該エステル
化触媒の活性を低下させることにより得られた高分子ジ
オ−ルと、有機イソシアナ−トおよび鎖伸長剤を所定濃
度のスズ化合物の存在下に重合し、得られたポリウレタ
ンを溶融紡糸するのがウレタン化重合時間が短縮される
点などから好ましい。高分子ジオ−ルへのスズ系ウレタ
ン化触媒の添加は、高分子ジオ−ルを必要に応じて加熱
下において、攪拌しながら、スズ系ウレタン化触媒を添
加することにより行うことができる。
【0033】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれにより何等限定されるものではな
い。
【0034】[高分子ジオ−ルのイソシアナ−ト基との
反応性]反応容器に高分子ジオ−ルと4,4´−ジフェ
ニルメタンジイソシアナ−トとを3:1のモル比で仕込
み、90℃の条件下に攪拌しながら、一定時間ごとに反
応物の一部を採取した。これに0.01N−ジ−n−ブ
チルアミンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液の一定
量を加えて溶解した後、0.01N塩酸のメタノ−ル溶
液でブロムフェノ−ルブル−を指示薬として中和滴定を
行うことによって該時間ごとのイソシアナ−ト基の残存
量を求めた。この残存量から各時間ごとのウレタン基の
濃度を算出した。ウレタン化反応速度は、水酸基とイソ
シアナ−ト基の各々の濃度の一次に比例することから、
上記で求めたウレタン基の濃度を下記の数式に代入し
て、二次反応速度定数(k)を算出した。
【0035】kt={1/(a−b)}ln[b(a−
x)/a(b−x)] k:反応速度定数(リットル/mol・分) t:反応時間(反応物の採取時間)(分) a:水酸基の初濃度(mol/リットル) b:イソシアナ−ト基[−NCO]の初濃度(mol/
リットル) x:tにおけるウレタン基[−NHCOO−]の濃度
(mol/リットル)
【0036】[対数粘度]ポリウレタン弾性繊維から採
取した試料を濃度0.5g/dlになるようにn−ブチ
ルアミンを1重量%含むN,N−ジメチルホルムアルデ
ヒドに溶解し、20℃で24時間経過後にウベロ−デ型
粘度計で、その溶液の30℃における落下時間を測定
し、下記の式により対数粘度を算出した。 対数粘度={ln(t/t0 )}/c t :試料溶液の落下秒数 t0 :n−ブチルアミンを1重量%含むN,N−ジメチ
ルホルムアミド溶液の落下秒数 c :試料濃度(約0.5g/dl)
【0037】[長鎖ハ−ドセグメント含有率]ポリウレ
タン弾性繊維2gにテトラヒドロフラン(THF)5m
lを加え、サンプルを膨潤させた。2時間後、0.01
N−水酸化カリウムのメタノ−ル溶液25mlを加え、
50℃、5日間の攪拌下にエステル結合を分解させた。
分解後、50℃、2時間以内に溶媒を蒸発除去し、残留
物を1000mlの水に入れた後、析出したハ−ドセグ
メントを濾紙で濾過した。このハ−ドセグメントを十分
乾燥後、その0.020gを秤取し、N−メチルピロリ
ドン(NMP)2.0mlおよびTHF6.0mlを加
えて溶解し、以下の装置および条件でGPC分析を行っ
た。 島津製高速液体クロマトグラフ LC−9A 島津製カラムオ−ブン CTO−6A(40
℃) 島津製高速液体クロマトグラフ用示差屈折計検出器 R
ID−6A 島津製クロマトパック C−R4A カラム;昭和電工製 Shodex GPC
KF−802 昭和電工製 Shodex GPC KF−
802.5
【0038】サンプル20μlを注入し、溶媒(TH
F)の流量は1.0ml/minとした。測定後の解析
には、溶出曲線とベ−スライン間の面積を求め、分離が
完全でないピ−クについては、第1図のように垂直分割
して処理した。また、鎖伸長剤あるいは有機ジイソシア
ナ−トとして2種以上を混合して用いたときには、各ピ
−クにショルダ−部を生じる場合があるが、通常、ピ−
クの分割処理には支障ない。このようにして、有機ジイ
ソシアナ−トと鎖伸長剤からなる繰り返し単位が3以上
のハ−ドセグメントを長鎖セグメントと規定し、全ハ−
ドセグメントに対する長鎖ハ−ドセグメントのGPC面
積分率を長鎖ハ−ドセグメント含有率とした。
【0039】[長鎖ハ−ドセグメントの保持率]ポリウ
レタン弾性繊維60gを90℃で3時間、真空脱水後、
ラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて、窒素雰囲
気下に、220℃で60分間、溶融状態で混練した後の
ポリウレタンについて、前記と同様にして長鎖ハ−ドセ
グメント含有率を求めた。混練前のポリウレタン弾性繊
維における長鎖ハ−ドセグメント含有率に対する混練後
の長鎖ハ−ドセグメント含有率の割合を溶融加熱保持率
とした。
【0040】[対数粘度保持率]90℃で3時間、真空
脱水したポリウレタン弾性繊維2gをフロ−テスタ−
(島津製CFT−500形)中に220℃で6分間溶融
保持した後、溶融押出し、ついで20℃、60%の相対
湿度下に24時間放置した。該溶融保持前の対数粘度に
対する放置後の対数粘度の割合を求め、これを対数粘度
保持率とした。
【0041】[強伸度]JIS L−1013に従って
測定した。
【0042】[弾性回復率]試料を300%伸長し10
分間保持した後、張力を除き、2分間放置した後の弾性
回復率(%)を下記式に従って算出した。 弾性回復率={1−(L−L0 )/L0 }×100 L :張力除去後2分間放置した後の試料の長さ L0 :伸長前の試料の長さ
【0043】[耐加水分解性]40drのポリウレタン
弾性繊維を自然長の状態で、70℃、95%の相対湿度
下に35日間放置した。その前後における弾性繊維の破
断強度を測定し、該放置前の強度に対する放置後の強度
の保持率を求め、これを耐加水分解性の尺度とした。
【0044】[耐熱水性]弾性繊維試料を木枠等を利用
し、300%伸長した状態で固定し、140℃で2分間
乾熱処理した後、引き続き加圧下130℃の熱水で30
分間処理を行い、200%伸長のまま測定したときの応
力をR(g/80dr)で示す。また、応力解放直後の
試料の長さを測定し、次式に従い残留歪みを計算し、S
(%)で示した。残留歪みSは熱水処理後の試料の伸び
を表す尺度であり、この値が小さいほど好ましい。 S={(L−L0 )/2L0 }×100 L :熱水処理後の試料の長さ L0 :熱水処理前の試料の長さ
【0045】[断糸率]紡糸時における断糸率を下記の
基準で評価した。 ○:断糸回数が0.01回/kg(ポリウレタン)以下 △:断糸回数が0.01〜0.05回/kg(ポリウレ
タン) ×:断糸回数が0.05回/kg(ポリウレタン)以上
【0046】[貯蔵弾性率]長さ60mmのポリウレタ
ン弾性繊維33〜37mgを、厚さ1.0mm、幅5.
0mmになるように均一に並べ、両端を接着剤で接着
し、動的粘弾性測定装置(レオロジ社製:FTレオスペ
クトラ−DVE−V4型)を用い、周波数11HZ 、昇
温温度3℃/分で貯蔵弾性率Eの温度分散を測定した。
【0047】[染色後の経筋]40dのナイロン繊維又
はポリエスエル繊維のツ−ウエイトリコットの振り糸と
して、同一チ−ズの最外層、中層、最内層のポリウレタ
ン弾性繊維が順次並ぶように挿入して編地を編成した。
これらの編地を下記条件で高温染色または高温高圧染色
した後の経筋の程度を下記の基準で評価した。 高温染色条件(ナイロン繊維): 染色温度 95℃ 染色時間 30分間 浴比 1/20 染料 Suminol Milling Brilliant Red BS 高温高圧染色条件(ポリエステル繊維): 染色温度 125℃ 染色時間 60分間 浴比 1/30 染料 Sumikaron Navy Blue SE-RPD 経筋の評価 ◎ 経筋の発生が見られない ○ 経筋の発生がほとんど見られない △ 経筋の発生がやや見られる × 経筋の発生が多数見られる
【0048】各測定は試料の同一チ−ズの最外層(チ−
ズ外周部分の最も外側から2mm以内)、最内層(最も
糸管に近いチ−ズ内側部分の糸管から2mm以内)、中
層(最外層と最内層の中間部分)の3層を行った。ただ
し、チ−ズ端面部分の端面から2mm以内は測定から除
外した。なお、フルチ−ズの大きさは、糸管から最外層
までのチ−ズ径が30mm,チ−ズ幅が40mmであ
る。
【0049】用いた化合物は略号を用いて示したが、略
号と化合物の関係は下記の通りである。 MPD :3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル BD :1,4−ブタンジオ−ル AD :アジピン酸 AZ :アゼライン酸 PMPA:MPDとADとから得られる数平均分子量2
000のポリエステルジオ−ル PMBA:MPD/BD=4/1とADとから得られる
数平均分子量2000のポリエステルジオ−ル PMAZ:MPDとAZとから得られる数平均分子量2
000のポリエステルジオ−ル MDI :4,4´−ジフェニルメタンジイソシアナ−
ト DBA :ジブチルスズジアセテ−ト DBL :ジブチルスズジラウレ−ト
【0050】参考例1(ポリエステルジオ−ルの製造) MPD3000g及びAD2920gを反応器に仕込
み、常圧下、200℃で生成する水を系外に留去しなが
らエステル化反応を行った。反応物の酸価が30以下に
なった時点でテトライソプロピルチタネ−ト90mを加
え、200〜100mmHgに減圧しながら反応を続け
た。酸価が1.0になった時点で真空ポンプにより徐々
に真空度を挙げて反応を完結させた。その結果、酸価が
0.1、数平均分子量2000のPMPA(PMPA−
A)4820gを得た。このPMPA2000の反応速
度定数を前述の方法により調べたところ、0.5(l/
mol・min)であった。
【0051】参考例2 (チタン系エステル化触媒の水
による失活) 参考例1で得られたPMPA−A1000gを100℃
に加熱し、これに水20g(2重量%)を加えて攪拌し
ながら2時間加熱してチタン系エステル化触媒を失活さ
せた後、減圧下で水を留去した。このような処理に付し
て得られたPMPA(PMPA−B)の反応速度定数は
0.08(l/mol・min)であった。
【0052】参考例3 (ポリエステルジオ−ルの製
造) MPD2200g、BD420gおよびAD2920g
を反応器に仕込み、参考例1と同様にエステル化反応を
行い、酸価が0.12、数平均分子量2000のPMB
A(PMBA−A)4710gを得た。これを参考例2
と同様にしてチタン系触媒を失活させた後、減圧下で水
を留去した。このような処理に付して得られたPMBA
(PMBA−B)の反応速度定数は0.1(l/mol
・min)であった。
【0053】参考例4 MPD3000g及びAZ3760gを反応器に仕込
み、常圧下、200℃で生成する水を系外に留去しなが
らエステル化反応を行った。反応物の酸価が30以下に
なった時点でテトライソプロピルチタネ−ト90mを加
え、200〜100mmHgに減圧しながら反応を続け
た。酸価が1.0になった時点で真空ポンプにより徐々
に真空度を挙げて反応を完結させた。その結果、酸価が
0.1、数平均分子量2000のPMAZ(PMAZ−
A)5700gを得た。このPMAZ2000の反応速
度定数を前述の方法により調べたところ、0.55(l
/mol・min)であった。このPMAZ−A100
0gを100℃に加熱し、これに水20g(2重量%)
を加えて攪拌しながら2時間加熱してチタン系エステル
化触媒を失活させた後、減圧下で水を留去した。このよ
うな処理に付して得られたPMAZ(PMAZ−B)の
反応速度定数は0.09(l/mol・min)であっ
た。
【0054】実施例1 参考例2で得られたPMPA2000(PMPA−B)
にジブチルスズジアセテ−ト3ppm(スズ金属として
1ppm)を加えPMPA−Cを得た。このPMPA−
Cの反応速度定数は0.5(l/mol・min)であ
った。30φでL/D=36の同軸方向に回転する二軸
スクリュ−型押出機に、80℃に加熱したPMPA−
C、80℃に加熱したBD,及び50℃に加熱溶融した
MDIをこれらのモル比が1:2:3.09となる割合
で、定量ポンプから連続的に仕込むことにより、240
〜250℃で連続溶融重合反応を行い、これをそのま
ま、紡糸機に供給し、紡糸温度220℃、冷却風露点1
0℃、紡糸速度500m/分で紡糸し、ボビンに巻き取
り、40d/1fのポリウレタン弾性繊維巻糸体を得
た。この繊維を40℃で5時間、圧力1Torrの減圧
下で脱水し、繊維中の含有水分量を300ppmにした
後、露点が−30℃の湿度下、90℃、24時間処理
し、さらに25℃、50%の湿度下に3日間放置して、
ポリウレタン弾性繊維巻糸体を得た。得られたポリウレ
タン弾性繊維の物性およびナイロンと交編織したものの
染色後の経筋を評価したところ、表1〜3に示す結果を
得た。
【0055】実施例2 参考例3で得られたPMBA2000(PMBA−B)
にジブチルスズジラウレ−ト10ppm(スズ金属とし
て1.9ppm)を加えPMBA−Cを得た。このPM
BA−Cの反応速度定数は0.9(l/mol・mi
n)であった。PMBA−Cを用いる以外は実施例1と
同様にして得られたポリウレタン弾性繊維巻糸体の評価
結果を表1〜3に示す。
【0056】実施例3 参考例4で得られたPMAZ2000(PMAZ−B)
にジブチルスズジアセテ−ト3ppm(スズ金属として
1ppm)を加えPMAZ−Cを得た。このPMAZ−
Cの反応速度定数は0.5(l/mol・min)であ
った。PMAZ−Cを用いる以外は実施例1と同様にし
て得られたポリウレタン弾性繊維巻糸体の評価結果を表
1〜3に示す。
【0057】実施例4 参考例4で得られたPMAZ2000(PMAZ−B)
にジブチルスズジラウレ−ト5ppm(スズ金属として
1.7ppm)を加えPMAZ−Dを得た。このPMA
Z−Dの反応速度定数は0.8(l/mol・min)
であった。PMAZ−Dを用い、紡糸速度800m/分
で紡糸した以外は、実施例3と同様にして得られたポリ
ウレタン弾性繊維巻糸体の評価結果を表1〜3に示す。
【0058】実施例5 参考例4で得られたPMAZ2000(PMAZ−B)
にジブチルスズジアセテ−ト10ppm(スズ金属とし
て1.9ppm)を加えPMAZ−Eを得た。このPM
AZ−Eの反応速度定数は0.8(l/mol・mi
n)であった。PMAZ−Eを用いる以外は、実施例3
と同様にして得られたポリウレタン弾性繊維巻糸体の評
価結果を表1〜3に示す。
【0059】比較例1 PMPA−Cを用い、実施例1と同様にしてポリウレタ
ン弾性繊維巻糸体を得た。この繊維中の含有水分量は3
500ppmであった。これをそのまま、露点が−30
℃の湿度下、90℃、24時間処理し、さらに25℃、
50%の湿度下に3日間放置して、ポリウレタン弾性繊
維巻糸体を得た。得られたポリウレタン弾性繊維の物性
およびナイロンと交編織したものの染色後の経筋を評価
したところ表1〜3に示すように、内外層の物性差が大
きく、経筋の発生が激しかった。
【0060】比較例2 参考例2で得られたPMPA2000(PMPA−B)
を用いる以外は実施例1と同様にして得られたポリウレ
タン弾性繊維巻糸体の評価結果を表1〜3に示す。スズ
化合物を添加せずにポリウレタンを溶融紡糸した場合、
断糸率が高くなって、紡糸性に劣ることがわかる。
【0061】比較例3 チタン系エステル化触媒を失活していないPMPA−A
を用いる以外は実施例1と同様にして得られたポリウレ
タン弾性繊維巻糸体の評価結果を表1〜3に示す。チタ
ン系エステル化触媒の活性を低下させていない高分子ジ
オ−ルを用いて溶融紡糸した場合、得られる繊維は耐加
水分解性、耐熱水性に劣っていることがわかる。
【0062】比較例4 PMAZ−Cを用い、実施例3と同様にしてポリウレタ
ン弾性繊維巻糸体を得た。この繊維中の含有水分量は3
000ppmであった。これをそのまま、露点が−30
℃の湿度下、90℃、24時間処理し、さらに25℃、
50%の湿度下に3日間放置してポリウレタン弾性繊維
巻糸体を得た。得られたポリウレタン弾性繊維の物性及
びポリエステルと交編織したものの染色後の経筋を評価
したところ、表1〜3に示すように、内外層の物性差が
大きく、経筋の発生が激しかった。
【0063】比較例5 参考例4で得られたPMAZ2000(PMAZ−B)
にジブチルスズジアセテ−ト40ppm(スズ金属とし
て13.4ppm)を加えPMAZ−Fを得た。このP
MAZ−Fの反応速度定数は6.2(l/mol・mi
n)であった。PMAZ−Fを用いた以外は、実施例3
と同様にして、得られたポリウレタン弾性繊維巻糸体の
物性およびポリエステル繊維と交編織したしたものの、
染色後の経筋を評価したところ、表1〜3に示す結果を
得た。得られる弾性繊維は強度、耐熱水性、耐加水分解
性、断糸率に劣っていることがわかる。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【発明の効果】本発明のポリウレタン弾性繊維は、溶融
紡糸性に優れ、また耐熱水性、弾性回復性等の繊維性能
及び均質性に優れるため、ナイロン繊維やポリエステル
繊維等と交編織して高温染色した場合に、密度斑、経筋
等の発生が起こらない。このため、付加価値の高い交編
織染色製品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたポリウレタン弾性繊維のハ
−ドセグメント鎖長分布を示すGPCチャ−ト。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性ポリウレタンを溶融紡糸し巻き
    取ったポリウレタン弾性繊維巻糸体であって、該ポリウ
    レタン弾性繊維がスズ金属換算で0.1〜5ppmのス
    ズ原子を含み、該ポリウレタン弾性繊維を220℃で6
    0分間溶融処理した場合における熱可塑性ポリウレタン
    の長鎖ハ−ドセグメント(1個の有機ジイソシアネ−ト
    成分と1個の鎖伸長剤成分とからなる繰り返し単位が3
    個以上含まれるハ−ドセグメント)の保持率が85%以
    上であり、かつ220℃で6分間溶融処理後に溶融押出
    しし、次いで20℃、60%RH(相対湿度)で24時
    間放置した場合における対数粘度の保持率が80%以上
    であり、該巻糸体の内層部、中層部および外層部の13
    0℃における貯蔵弾性率の差が7%以下であることを特
    徴とするポリウレタン弾性繊維巻糸体。
  2. 【請求項2】 エステル化触媒を用いて重合反応を行っ
    た後、該エステル化触媒の活性を低下させることにより
    得られた高分子ジオ−ルと、有機ジイソシアナ−ト及び
    鎖伸長剤とをスズ化合物の存在下に溶融重合し、次いで
    得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融紡糸して巻
    き取ったポリウレタン弾性繊維を、該弾性繊維中の水分
    が500ppm以下となる条件下で加熱熟成することを
    特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023190074A1 (ja) * 2022-03-29 2023-10-05 三井化学株式会社 メルトブローン不織布及び衛生材料

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023190074A1 (ja) * 2022-03-29 2023-10-05 三井化学株式会社 メルトブローン不織布及び衛生材料

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