JP3072185B2 - ポリウレタン弾性繊維 - Google Patents

ポリウレタン弾性繊維

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JP3072185B2
JP3072185B2 JP4176078A JP17607892A JP3072185B2 JP 3072185 B2 JP3072185 B2 JP 3072185B2 JP 4176078 A JP4176078 A JP 4176078A JP 17607892 A JP17607892 A JP 17607892A JP 3072185 B2 JP3072185 B2 JP 3072185B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステル繊維の染
色条件である高温高圧染色が可能である耐熱水性に優れ
たポリウレタン弾性繊維に関する。すなわち、本発明の
ポリウレタン弾性繊維は従来のナイロン、綿との混用の
みならず、ポリエステル繊維との混用が可能である。
【0002】
【従来の技術】ポリウレタン弾性繊維の製造法として
は、乾式紡糸法や湿式紡糸法、溶融紡糸法が知られてい
る。最近は、溶融紡糸法により得られるポリウレタン弾
性繊維が細デニル化が可能なこと、透明性が良好なこ
と、コストが低いことなどから注目され、生産量が伸び
ている。しかしながら、溶融紡糸法により得られるポリ
ウレタン弾性繊維は本質的な欠点として、乾式紡糸法に
より得られるポリウレタン弾性繊維に比べて、耐熱性、
耐熱水性に劣ることである。従って、この耐熱性と耐熱
水性の改良が溶融紡糸法により得られるポリウレタン弾
性繊維の大きな課題であった。本発明者らは、側鎖を有
するポリエステル傾向分子ジオールを用いた、耐熱性や
対熱水性に優れた溶融紡糸ポリウレタン弾性繊維を特開
平3−220311号公報に提案している。ここに記載
の弾性繊維はポリエステルジオールのカルボン酸成分と
してアゼライン酸やセバシン酸等を用いてエステル基濃
度を低くすることにより耐熱性、耐熱水性などの性能の
確保をはかったものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のアゼライン酸や
セバシン酸を用いたポリエステル系ポリウレタンはそれ
なりに優れた性能を有してはいるが、これらの酸成分は
高価であり、得られる弾性繊維も高価なものとなり実用
上問題があった。本発明は、アジピン酸等のより安価な
酸成分を原料として、耐塩素性や耐光性に優れかつ弾性
回復性、耐熱性、耐熱水性のすべてに優れるとともに、
ポリエステル繊維と同時に高温高圧染色ができるポリウ
レタン弾性繊維を工業的に安定に提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、ポリエステル
ジオール(A)、有機ジイソシアナート(B)および鎖伸長
剤(C)を重合して得られるポリウレタンよりなるポリウ
レタン弾性繊維であって、該ポリエステルジオール成分
(A)が下記(I)式を満足する分子量(M)が2300〜5
000のポリエステルジオールであり、かつその構成成
分であるジオールが、3−メチル−1、5−ペンタンジ
オールを全ジオール成分に対して30モル%以上含有す
るポリエステルジオールであり、さらに弾性繊維を構成
するポリウレタンが下記の(II)および(III)の関係式を
満足することを特徴とするポリウレタン弾性繊維であ
る。 5.1≦全炭素数/エステル結合数≦5.35 …………(I) (ここで全炭素数とは、ポリエステルジオールに含まれ
る炭素のうち、エステル結合に含まれる炭素を除いた残
りの炭素の合計数である) 54%≦長鎖ハードセグメント含有率≦75% …………(II) (ここで長鎖ハードセグメント含有率とは、弾性繊維を
構成するポリウレタンの(A)成分をアルカリ−メタノー
ル溶液で分解除去後、取り出した(B)および(C)から構
成される成分とそれらとウレタン結合で連結された(A)
の末端ジオール成分からなる全ハードセグメント構成成
分に対する、(B)と(C)の繰り返し単位数が3以上の長
鎖ハードセグメントの割合を示す) 長鎖ハードセグメント含有量の溶融加熱保持率≧80% …………(III) (ここで、長鎖ハードセグメント含有量の溶融加熱保持
率とは、弾性繊維を構成するポリウレタンを、230℃
で60分間溶融状態で混練りし、その前後の長鎖ハード
セグメント含有量の変化を保持率で示したものである)
【0005】弾性繊維を構成するポリウレタンの(A)、
(B)、(C)成分のうち、ハードセグメント構成成分は
(B)と(C)である。但し本発明におけるハードセグメン
トとは、弾性繊維を構成するポリウレタンを少量のテト
ラヒドロフラン(THF)で膨潤後、0.01NKOH
のメタノール溶液中で50℃、7日間の攪拌下に(A)成
分を完全に分解したのち、取り出した(B)および(C)か
ら構成されるウレタン結合を含む成分とそれらの末端イ
ソシアナート基が(A)成分の末端ジオールと反応してウ
レタン結合で連結された部分をも含むものである。即
ち、上記条件でのアルカリ分解後、有機ジイソシアナー
ト骨格およびそのウレタン結合を有する化合物をすべて
含むものである。また、長鎖ハードセグメント含有率と
は、そのようにして取り出した全ハードセグメントに対
する(B)と(C)からなる繰り返し単位数が3以上からな
る長鎖ハードセグメントの割合を言う。この割合が54
%以上かつ75%以下であることが重要である。54%
以下であると、耐熱性、耐熱水性、耐久性などの性能が
著しく劣る。75%以上になると耐熱性は向上するが、
伸度、弾性回復性が低くなり、さらに加工工程で多くの
問題を生じる。
【0006】また、長鎖ハードセグメント含有量の溶融
加熱保持率とは、弾性繊維を構成するポリウレタンを脱
水後、ラボプラストミル(東洋精機社製)で230℃で
60分間、溶融状態で混練りし、その前後のポリウレタ
ンについて上記のアルカリ分解法により長鎖ハードセグ
メント含有量を求め、その変化を保持率で示したもので
ある。
【0007】弾性繊維の耐熱性、耐熱水性を確保するた
めには、ポリウレタンのハードセグメントの含有量を多
くすることが必要であるが、特に長鎖ハードセグメント
含有量が重要である。同時に、溶融紡糸中において長鎖
ハードセグメント含有量が減少しにくいことが要求され
る。長鎖ハードセグメントの溶融加熱保持率が80%よ
り低い弾性繊維では、ポリウレタンのハードセグメント
含有量を増大することにより長鎖ハードセグメント含有
量を54%以上にしても、耐熱性、耐熱水性が劣るだけ
でなく、固くて伸度が低くかつ弾性回復性が劣り、糸品
質がばらつくことを見出だした。特に、弾性糸を200
%伸長した状態で130℃で30分熱水処理した後の残
留応力Rを0.0075g/dr以上にし、耐熱水性およ
び耐熱性を確保するためには、長鎖ハードセグメント含
有率が少なくとも54%以上必要であり、かつ長鎖ハー
ドセグメント含有量の溶融加熱保持率が80%以上であ
ることが重要である。
【0008】本発明の(II)、(III)の関係式達成の一つ
の手段として、該ポリエステルジオールのウレタン化反
応速度定数があり、ポリエステルジオールと4,4'−ジ
フェニルメタンジイソシアナート(MDI)との90℃
でのみかけの反応速度定数(k)が重要である。長鎖ハー
ドセグメント含有率および長鎖ハードセグメント含有量
の溶融加熱保持率は、ポリエステルジオール中のエステ
ル結合濃度とポリエステルジオールのMDIとのみかけ
の反応速度定数(k)によって決まる。
【0009】即ち、ポリウレタンの原料であるポリエス
テルジオールを製造する際に使用した触媒の失活が完全
でないと、高温での溶融滞留により、ポリウレタンの長
鎖ハードセグメント含有量が経時的に減少し、それと共
に耐熱性、耐熱水性が低下していくことを認めた。そこ
で、ポリエステルジオール製造時に使用された触媒を十
分に失活し、ポリエステルジオールと4,4'−ジフェニ
ルメタンジイソシアナートとのみかけの反応速度定数
(k)と、ポリエステルジオールの分子量(M)とが、関係
式 0<k≦0.0000588M−0.035 …………(IV) を満足するポリエステルジオールを用いることにより、
ポリウレタン重合〜紡糸時の溶融滞留時間が60分以上
の長時間になっても、弾性糸の品質・性能が安定化する
ことを見いだした。これによって、糸斑、糸切れも非常
に少なくなり、かつ耐熱性、耐熱水性が改良され、弾性
繊維の加工時における耐高温加工性、分散染料による高
温染色安定性等が改良され、総合的な糸品位が大きく向
上した。これにより、ポリエステルと混用可能な弾性繊
維を工業的規模で安定に製造することが可能になった。
関係式(IV)を満足しないポリエステルジオールを使用し
たポリウレタンは、溶融紡糸後に長鎖ハードセグメント
含有率が低下し、耐熱性、耐熱水性が低下する。
【0010】さらに上記の効果が明確にかつ顕著に発現
されるためには、みかけの反応速度定数の低下と共にポ
リエステルジオールの分子量が2300〜5000であ
り、そのエステル結合濃度が本発明の範囲内にあるこ
と、即ち、(I)式を満足することおよびその構成成分で
あるジオールが3−メチル−1、5−ペンタンジオール
を全ジオール成分に対して30モル%以上含有するポリ
エステルジオールであることが重要であることも明確に
なった。3−メチル−1、5−ペンタンジオールが全ジ
オール成分に対して30モル%より少なくなると、伸度
及び低温での弾性回復性が低下する。
【0011】なお、ウレタン化反応速度は水酸基とイソ
シアナート基のそれぞれの濃度の一次に比例する。従っ
て、本発明におけるみかけの反応速度定数の決定法は、
ポリエステルジオールとMDIを3:1のモル比で仕込
み、90℃に保ちながら攪拌し時間経過とともに反応物
の一部をとり、1/100規定ジ−n−ブチルアミンの
DMF溶液を一定量加えて溶解後、1/100規定塩酸
のメタノール溶液でブロムフェノールブルーを指示薬と
して中和滴定を行うことによりイソシアナート基の残存
量を求め、下記のみかけの2次反応速度定数を求める式
に従って計算した。 [1/(a−b)]・ln[b(a−x)/a(b−
x)]=kt k:反応速度定数 t:反応時間(分) a:[OH]初濃度 b:[NCO]初濃度 x:tにおける[NHCOO]濃度
【0012】ポリエステルジオールのみかけの反応速度
定数を小さくする方法として、例えば、ポリエステルジ
オールに対し1.0〜4.0%の水を加え80〜150℃
で約2時間攪拌する、100℃〜150℃で水蒸気を通
して攪拌するなどによって行うことができる。
【0013】また、これらのポリエステルジオールの分
子量は、耐熱性と耐熱水性を向上させるために2300
以上が好ましく、伸度、弾性回復性、紡糸性などからは
5000以下が好ましく、より好ましくは4000以下
である。
【0014】本発明で用いるポリエステルジオールは、
式 −O−R1−O− (式中R1は2価の有機基を表す)で示されるジオール
単位、および式
【化1】 (式中R2は2価の有機基を表す)で示されるジカルボ
ン酸単位からなるポリエステルジオールである。
【0015】耐熱性、耐熱水性、耐寒性、弾性回復性及
び長鎖ハードセグメント含有量の溶融加熱保持率を向上
させるためには、上記のジオール単位として、3−メチ
ル−1,5−ペンタンジオールが30モル%以上である
ことが必要である。3−メチル−1,5−ペンタンジオ
ールとともに用いられるジオールとしては、1,4−ブ
タンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチ
ルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプ
タンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル
−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、
1,10−デカンジオールなどの炭素数4〜11のジオ
ールが挙げられる。
【0016】上記ジカルボン酸単位を与える化合物とし
ては脂肪族ジカルボン酸が好ましく、特にアジピン酸が
好ましい。50モル%以下であれば炭素数5〜12の飽
和脂肪族または芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸
を共重合しても何等差し支えない。具体的には、グルタ
ル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシ
ン酸、デカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル
酸などがある。いずれにしても、ジオールの組み合わせ
については、 5.1≦全炭素数/エステル結合数≦5.35 の範囲にあることが必須であり、5.1より小さいと耐
熱性、耐熱水性の低下が大きく、5.35より大きい
と、低温での弾性回復性、伸度、紡糸性が非常に低下し
糸切れが多発する。好ましくは 5.2≦全炭素数/エ
ステル結合数≦5.3である。
【0017】ポリエステルジオールとして2種類以上の
ポリエステルジオールを用いる場合には、ポリエステル
ジオールを混合して用いる場合の外、それぞれのポリエ
ステルジオールを用いて別々に重合したポリウレタンを
混合して用いる場合も本発明の範囲に含むものである。
【0018】本発明で使用されるポリエステルジオール
は、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブ
チレンテレフタレートの製造において用いられる公知の
方法と同様の方法、即ちエステル交換または直接エステ
ル化とそれに続く溶融重縮合反応にて製造可能である。
【0019】本発明において使用される適当な有機ジイ
ソシアナートとしては、芳香族、脂肪族もしくは脂環族
ジイソシアナートが挙げられ、具体的には4,4'−ジフ
ェニルメタンジイソシアナート、p−フェニレンジイソ
シアナート、トルイレンジイソシアナート、1,5−ナ
フチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナー
ト、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイ
ソシアナート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソ
シアナート等の分子量500以下のジイソシアナートが
例示される。好ましくは、4,4'−ジフェニルメタンジ
イソシアナートである。
【0020】また、本発明において、使用される鎖伸長
剤としてはポリウレタン業界における常用の連鎖成長
剤、即ちイソシアナートと反応しうる水素原子を少なく
とも2個含有する分子量400以下の低分子化合物、例
えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プ
ロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−
メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ビス(2−
ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサ
ンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタ
レート、キシリレングリコールなどのジオール類が挙げ
られる。これらの鎖伸長剤は単独でまたは、2種以上を
混合して使用しても良い。最も好ましい鎖伸長剤は、
1,4−ブタンジオールおよび/または1,4−ビス(2
−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンである。
【0021】ポリエステルジオール、有機ジイソシアナ
ートおよび鎖伸長剤を重合してポリウレタンを製造する
方法に関しては、公知のウレタン化反応の技術を採用す
ることもできる。本発明者らの研究によれば、なかで
も、実質的に不活性溶媒の不存在下で溶融重合すること
が好ましく、特に、多軸スクリュー型押出機を用いる連
続溶融重合が好ましいことが判明した。本発明に用いる
ポリウレタンは、実質的に、(a)ポリエステルジオー
ルから分子両末端の水酸基中の2個の水素原子が除かれ
た形の2価の構造単位、
【0022】(b)有機ジイソシアナートに由来する一
般式
【化2】 (式中、R3は2価の有機基である。)で示される構造
単位、(c)鎖伸長剤の分子両末端の有機ジイソシアナ
ートと反応し得る2個の水素原子が除かれた形の2価の
構造単位よりなりる。ここで、該(a)と(c)の構造
単位は(b)の構造単位とウレタン結合を形成してお
り、また、(b)の構造単位の一部は他の(b)の構造
単位の一部とアロハナート結合を形成している場合があ
るものと考えられる。
【0023】このようにして得られるポリウレタンは、
一度ペレット化したのち溶融紡糸するか、あるいは、溶
融重合して得られるポリウレタンを溶融状態のまま直接
紡糸口金を通して紡糸する方法が採用しうる。紡糸安定
性の点からは重合直結紡糸が好ましい。本発明のポリウ
レタン弾性繊維を溶融紡糸により得る場合、紡糸温度は
250℃以下、より好ましくは、200℃以上235℃
以下で紡糸することが実際的である。
【0024】このようにして得られたポリウレタン弾性
糸は実際の使用に際してはそのまま裸糸として使用され
たり、他繊維で被覆して被覆糸として使用される。他繊
維としては、ポリアミド繊維、ウール、綿、ポリエステ
ル繊維など従来公知の繊維をあげることができるが、な
かでも本発明ではポリエステル繊維が用いられる。
【0025】また、本発明のポリウレタン弾性繊維は、
染着タイプの分散染料を0.01重量%以上含有したも
のも含まれるものである。分散染料を含有させる方法と
して、例えばポリウレタン弾性繊維をポリエステル繊維
と混用加工し、分散染料を用いて110〜130℃で染
色することによっても得られる。また本発明のポリウレ
タン弾性繊維は110〜130℃で染色しても、ポリウ
レタン弾性繊維が切断せず、耐熱性や耐熱水性が良好で
あり、良好な伸縮性が残る画期的な素材である。さらに
本発明のポリウレタン弾性繊維は、分散染料で淡色ある
いは濃色に染めた場合でも、染色堅牢性が非常に優れる
という大きな特徴を有する。
【0026】次に本発明に使用する分散染料について述
べる。分散染料を使用するのは、共用する他繊維との同
色性を得るためであり、目むき防止や色の再現性を高め
るためである。分散染料としてはキノン系とアゾ系が知
られている。本発明に用いる染着タイプの分散染料と
は、本発明に用いられている任意の1種のポリウレタン
弾性糸を2%owfで130℃で60分染色した時に染着
した染料が還元洗浄を行った後水洗、乾燥後、40重量
%以上(重量減少から測定)以上残る染料である。
【0027】すなわち、任意の1種のポリウレタン弾性
糸については、その弾性糸について染色を試み、染着タ
イプの分散染料であるか否かを判別する。 還元洗浄条件 ハイドロサルファイド 3g/l ソーダ灰 2g/l アミラジン 1g/l 浴 比 1:30 温 度 80℃×20分
【0028】現在市販されている溶融紡糸法によるポリ
ウレタン弾性糸は110℃以上の高温高圧染色に耐える
ものがなく、少なくとも110℃以上の高温高圧染色が
必要なポリエステルとの共用は不可能である。また、1
10℃未満では十分な濃色化は困難であったり染色堅牢
性が不良であったりする。110℃以上の高温高圧染色
に耐えるものが無いとは110℃以上の高温高圧染色で
溶断したり、伸縮性が無くなることを言う。この点、本
発明のエステル系ポリウレタン弾性繊維は前述のごとく
110℃〜130℃の高温高圧染色が可能であり、従っ
て、染色堅牢性が非常に優れるという大きな複合効果を
見出だした。
【0029】本発明のポリウレタン弾性繊維は、従来ポ
リウレタン弾性糸と混用が出来なかったポリエステル繊
維との混用を可能とし、高温で染色できるポリエステル
繊維による被覆弾性糸およびポリエステル繊維とポリウ
レタン弾性糸よりなる布帛となしうるのである。これら
の産業上の利用分野としては、以下のものが挙げられ
る。 衣料用;水着、スキ−ウェアー、サイクリングウェア
ー、レオタード、ランジェリー、ファンデ−ション、肌
着。 雑品;パンティストッキング、靴下、サポ−タ−、帽
子、手袋、パワーネット、包帯。 非衣料;テニスラケットのガット、一体成形加工用カー
シート地糸、ロボットアーム用金属被覆糸。
【0030】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。なお、実施例中の長鎖ハードセグメント含有率およ
び長鎖ハードセグメント含有量の溶融加熱保持率、耐熱
水性(応力=R)、瞬間弾性回復率比は、以下の方法に
より測定した。
【0031】o長鎖ハードセグメント含有率 弾性糸2gをn−へキサン50mlで2時間、超音波洗浄
し乾燥した後、その弾性糸1.50gを精秤し、THF
5mlを加え、サンプルを膨潤させる。2時間後、0.0
1規定KOHのメタノール溶液25mlを加え、50℃、
5日間の攪拌下にポリエステルジオールを完全に分解す
る。分解後、50℃2時間以内で溶媒を蒸発除去し、さ
らに1000mlの水に入れたのち、析出したハードセグ
メントを濾紙で濾過する。このようにして取り出したハ
ードセグメントをGPCで分析し、全ハードセグメント
に対する長鎖ハードセグメント(有機ジイソシアナート
と鎖伸長剤からなる繰り返し単位が3以上のハードセグ
メント)の含有率(GPCピーク面積分率)の割合を求
める。
【0032】oハードセグメントのGPC分析法 上記方法で取り出したハードセグメントを十分乾燥後均
一にし、その0.0200gを秤取し、NMP2.0ml、
THF6.0mlを加えて溶解する。GPCの測定に以下
の機器およびカラムを用いた。 島津高速液体クロマトグラフ LC−9A 島津カラムオーブン CTO−6A(40℃) 島津高速液体クロマトグラフ用示差屈折計検出器 RI
D−6A 島津クロマトパック C−R4A カラム Shodex GPC KF−802 Shodex GPC KF−802.5 サンプル20μl(インジェクタで調整)を測定し、媒
体(THF)の流量は1.0ml/minとした。測定後の解
析には、溶出曲線とベースライン間の面積を求め、分離
が完全でないピークについては、図1のように垂直分割
して処理する。鎖伸張剤あるいは有機ジイソシアネート
として2種類以上を混合して用いたときには、各ピーク
にショルダー部を生じる場合があるが、通常、ピークの
分割処理には支障ない。
【0033】o長鎖ハードセグメント含有量の溶融加熱
保持率 長鎖ハードセグメント含有量の溶融加熱保持率とは、弾
性繊維100gを5000ccのn−ヘキサンで10分間
超音波洗浄後、そのポリウレタン弾性糸90gを90℃
24時間真空で乾燥脱水後、窒素雰囲気下、ラボプラス
トミル(東洋精機社製)で、230℃で60分間、溶融
状態で混練りし、混練り前後のポリウレタンを、前記と
同様のアルカリ分解法によりハードセグメントを取り出
し、そのうちの繰り返し単位数3以上の長鎖ハードセグ
メント含有量の変化を保持率で示したものである。
【0034】o耐熱水性 試料(弾性糸)を木枠を使用し200%伸長した状態で
130℃で30分熱水処理し、200%伸長のままの応
力をインストロンを使用して測定。その応力をRで示し
た。
【0035】o瞬間弾性回復率比 −10℃および20℃における200%伸長後の瞬間弾
性回復率をそれぞれ求め、その比を求めた。瞬間弾性回
復性とは、200%伸長後2分間保持し、応力を除去し
た直後の戻り性を意味する(JIS L−1096を応
用した)。 瞬間弾性回復率=100×[nl−(l'−l)]/n
l (nは伸長比。l:初期長さ、l':応力除去後の長
さ。伸長、除重速度は500mm/min) 瞬間弾性回復率比=−10℃での瞬間弾性回復率/20
℃での瞬間弾性回復率
【0036】用いた化合物は略号を用いて示したが、略
号と化合物の関係は表1の通りである。
【表1】 略号 化合物 EG エチレングリコール BD 1,4−ブタンジオール HD 1,6−ヘキサンジオール MPD 3−メチル−1,5−ペンタンジオール AD アジピン酸 MDI 4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナート
【0037】参考例1 (ポリエステルジオールの製
造) MPD1416gとアジピン酸1460g(MPD/A
Dのモル比=1.2/1)を常圧下に窒素ガスを通じつ
つ約200℃の温度で縮合により生成した水を留去しな
がらエステル化を行った。ポリエステルの酸価が約10
以下になった時に、触媒であるテトライソプロピルチタ
ネートをポリエステルに対し20ppm添加し、真空ポ
ンプにより徐々に真空度を上げ反応を行い、酸価0.
2、分子量2500のポリエステルジオールを得た。温
度を100℃に低下したあと、生成したポリエステルジ
オールに対して、3%の水を添加して2時間攪拌して、
チタン触媒を失活した。失活後、添加した水を減圧下で
留去し分子量2500、酸価0.2のポリエステルジオ
ールAを製造した。製造したポリエステルジオールAと
MDIとの90℃でのみかけの反応速度定数は、0.0
5(l/mol・min)であった。なお、みかけの反応速度
定数の決定は、先に記載の方法に従って実施した。
【0038】参考例2 チタン触媒失活のため加える水分量を、製造したポリエ
ステルジオールに対して0.5%とする以外は、参考例
1に記載の方法で分子量2500のポリエステルジオー
ルを合成した。みかけの反応速度定数は0.55(l/m
ol・min)であった(ポリエステルジオールB)
【0039】参考例3〜8 ジオール成分を表2に示したものを用いること以外は、
参考例1と同様にして、ポリエステルジオールC〜Hを
得た。みかけの反応速度定数は表2に記載の通りであ
る。
【0040】
【表2】 X:全炭素数/カーボネート結合数 水添加量:ポリカーボネートジオールに対する重量%
【0041】実施例1 それぞれ80℃に加熱したポリエステルジオールAおよ
び1,4−ブタンジオールと、50℃に加熱溶融したM
DIとを、表3に示す組成となるように定量ポンプによ
り2軸押出機に連続的に供給し、連続溶融重合を行い、
生成したポリウレタンをストランド状に水中に押し出
し、カットしてペレットとした。このペレットを80℃
20時間真空乾燥し、通常の単軸押出機付き紡糸機によ
り、紡糸温度215℃、紡糸速度500m/minで、4
0デニールの弾性糸を得た。巻き取られた弾性糸を、低
湿下において、80℃で20時間熟成し、さらに室温、
60%の湿度下に3日間の熟成を続け、各種物性を測定
したところ、表3に示すように好ましいものであった。
さらにこの弾性糸をアルカリ分解し、取り出したハード
セグメントをGPC分析した。長鎖ハードセグメント含
有率および長鎖ハードセグメントの溶融加熱保持率を測
定し、同時に表3にまとめた。
【0042】
【表3】
【0043】得られた弾性繊維のハードセグメント鎖長
分布(GPCチャート)を図1に示した。図中の各ピー
ク番号は、ハードセグメントの基本構成成分である4,
4'−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)に
結合した1,4−ブタンジオール(BD)の繰り返し数
であり、5のピークには、繰り返し数が5以上のものを
含んでいる。すなわち、図中の0〜5で示したピークの
ハードセグメント構造は次の通りである。 0:MPD−MDI−MPD (n=0) 1:MPD−(MDI−BD)1 −MDI−MPD (n=1) 2:MPD−(MDI−BD)2 −MDI−MPD (n=2) 3:MPD−(MDI−BD)3 −MDI−MPD (n=3) 4:MPD−(MDI−BD)4 −MDI−MPD (n=4) 5:MPD−(MDI−BD)n −MDI−MPD (n≧5) 弾性繊維のハードセグメント鎖長分布のピーク面積分率
(%)は、 であり、長鎖ハードセグメント含有率(%)は、40+
12+14=66(%)である。
【0044】実施例2〜4 実施例1と同様にして、表3に示す組成のポリウレタン
を合成し、ペレット化せずそのまま、紡糸頭に供給し、
210〜225℃で、紡糸速度500m/minで紡糸
し、80デニール/2フィラメントのポリウレタン繊維
を得た。これらを実施例1と同様の条件で熟成し、得ら
れた弾性繊維の各種性能を実施例1と同様の方法で測定
した。
【0045】比較例1〜4 実施例1と同様にして、表3に示す組成のポリウレタン
弾性繊維を製造した。本発明のポリウレタン弾性繊維に
比べ、耐熱水性、瞬間弾性回復率、伸度のうち2つ以上
が劣っている。
【0046】実施例5 実施例1で得られた弾性繊維を20ゲージの筒編機で編
成し、次の条件で染色した。 精練リラックス:80℃×1分 染色 染色機:ドラム染色機 染料 :Sumikaron Red E-RPD(キノン系住友化学社製)2.0%owf 分散助剤:Disper TL(明成化学工業製) 1g/l PH調節剤:硫酸アンモニウム 1g/l 酢酸 1g/l 浴比: 1:30 温度: 40℃から30分かけて130℃に昇温し、130℃でさらに30 分維持 還元洗浄 還元剤組成:ハイドロサルファイド 3g/l ソーダ灰 2g/l アミラジン(第1製薬製) 1g/l 浴比: 1:30 温度: 80℃×20分
【0047】続いて、良く水洗乾燥した後、染色堅牢度
を測定した。結果は、下記の通り測定したすべての染色
堅牢性が良好であり、通常衣料として要求される3級を
全てクリアしており、非常に良好であった 洗濯堅牢性(JIS L−0844A2法) :4級
(汚染) 水堅牢度 (JIS L−0846B法) :4級
(汚染) 汗堅牢度 (JIS L−0848A法) :4級
(汚染) 耐光堅牢度(JIS L−0842カーボンアーク第3
露光法):4〜5級また、この布帛のパワー感も良好で
あった。
【0048】実施例6〜8、比較例5〜8 実施例2〜4及び比較例1〜4で得られた弾性繊維を実
施例5と同様にして染色し、染色堅牢度及びパワー感を
評価し、その結果を表4に示した。比較例のものは本発
明のポリウレタン弾性繊維に比べ、染色堅牢度及び布帛
のパワー感に劣っている。
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】本発明のポリウレタン弾性繊維は、前述
のごとく110℃〜130℃の高温高圧染色が可能であ
るため、従来ポリウレタン弾性糸と混用が出来なかった
ポリエステル繊維との混用を可能とし、高温で染色でき
るポリエステル繊維による被覆弾性糸およびポリエステ
ル繊維とポリウレタン弾性糸よりなる布帛となしうる。
本発明のポリウレタン弾性糸は以下の用途に有用であ
る。 衣料用;水着、スキ−ウェアー、サイクリングウェア
ー、レオタード、ランジェリー、ファンデ−ション、肌
着 雑品;パンティストッキング、靴下、サポ−タ−、帽
子、手袋、パワーネット、包帯 非衣料;テニスラケットのガット、一体成形加工用カー
シート地糸、ロボットアーム用金属被覆糸
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる弾性繊維のハードセグメント鎖
長分布(GPCチャート)の1例(実施例1のもの)で
ある。
【符号の説明】
0 ハードセグメントの基本構成成分であるMDIに結
合したBDの繰り返し数が0のピーク(構造単位 MPD-M
DI-MPD に相当) 1 ハードセグメントの基本構成成分であるMDIに結
合したBDの繰り返し数が1のピーク(構造単位 MPD-
(MDI-BD)1-MDI-MPD に相当) 2 ハードセグメントの基本構成成分であるMDIに結
合したBDの繰り返し数が2のピーク(構造単位 MPD-
(MDI-BD)2-MDI-MPD に相当) 3 ハードセグメントの基本構成成分であるMDIに結
合したBDの繰り返し数が3のピーク(構造単位 MPD-
(MDI-BD)3-MDI-MPD に相当) 4 ハードセグメントの基本構成成分であるMDIに結
合したBDの繰り返し数が4のピーク(構造単位 MPD-
(MDI-BD)4-MDI-MPD に相当) 5 ハードセグメントの基本構成成分であるMDIに結
合したBDの繰り返し数が5以上のピーク(構造単位 M
PD-(MDI-BD)n-MDI-MPD (n≧5)に相当)
【表4】

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステルジオール(A)、有機ジイソ
    シアナート(B)および鎖伸長剤(C)を重合して得られる
    ポリウレタンよりなるポリウレタン弾性繊維であって、
    該ポリエステルジオール成分(A)が下記(I)式を満足す
    る分子量(M)が2300〜5000のポリエステルジオ
    ールであり、かつその構成成分であるジオールが、3−
    メチル−1、5−ペンタンジオールを全ジオール成分に
    対して30モル%以上含有するポリエステルジオールで
    あり、さらに弾性繊維を構成するポリウレタンが下記の
    (II)および(III)の関係式を満足することを特徴とする
    ポリウレタン弾性繊維。 5.1≦全炭素数/エステル結合数≦5.35 …………(I) (ここで全炭素数とは、ポリエステルジオールに含まれ
    る炭素のうち、エステル結合に含まれる炭素を除いた残
    りの炭素の合計数である) 54%≦長鎖ハードセグメント含有率≦75% …………(II) (ここで長鎖ハードセグメント含有率とは、弾性繊維を
    構成するポリウレタンの(A)成分をアルカリ−メタノー
    ル溶液で分解除去後、取り出した(B)および(C)から構
    成される成分とそれらとウレタン結合で連結された(A)
    の末端ジオール成分からなる全ハードセグメント構成成
    分に対する、(B)と(C)の繰り返し単位数が3以上の長
    鎖ハードセグメントの割合を示す) 長鎖ハードセグメント含有量の溶融加熱保持率≧80% …………(III) (ここで、長鎖ハードセグメント含有量の溶融加熱保持
    率とは、弾性繊維を構成するポリウレタンを、230℃
    で60分間溶融状態で混練りし、その前後の長鎖ハード
    セグメント含有量の変化を保持率で示したものである)
  2. 【請求項2】 ポリエステルジオールと4,4'−ジフェ
    ニルメタンジイソシアナート(MDI)との90℃での
    みかけの反応速度定数(k)とポリエステルジオールの分
    子量(M)とが次の関係式(IV)を満足するポリエステルジ
    オールが用いられていることを特徴とする請求項1に記
    載のポリウレタン弾性繊維。 0<k≦0.0000588M−0.035 …………(IV)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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