JP3712092B2 - ポリウレタン弾性繊維およびその製造方法 - Google Patents
ポリウレタン弾性繊維およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンと特定のリン化合物とからなる熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融紡糸してなる弾性繊維およびその製造方法に関する。
より詳細には耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性、弾性回復性などの諸性能に優れたポリウレタン弾性繊維およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリウレタンの製造に際しては、ソフトセグメントを構成する原料としてポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどの各種高分子ポリオールが使用されている。なかでも、ポリエステルポリオールは、得られる熱可塑性ポリウレタンが力学的特性に優れているため、広く使用されている。
【0003】
ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール(ポリ炭酸エステルポリオール)などのエステル系高分子ポリオールは、通常、ポリカルボン酸もしくはそのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体とポリオールとを直接エステル化反応またはエステル交換反応により重縮合反応させるか、あるいはラクトンを開環重合反応させることにより製造される。これらのエステル系高分子ポリオールを与えるエステル化反応の触媒(エステル化触媒)としては、チタン系化合物が高活性であることから広く用いられている。
しかしながら、チタン系エステル化触媒を使用して製造されたエステル系高分子ポリオールを、該触媒が十分に失活しないまま用いて製造された熱可塑性ポリウレタンは、溶融重合中および溶融紡糸中にハードセグメントとソフトセグメント間でのエステル−ウレタン交換反応が起こり、ポリウレタン分子鎖におけるブロック性が低下(すなわち、部分的にランダム化)するため、かかる熱可塑性ポリウレタンから得られる弾性繊維は、耐熱性、耐熱水性および耐加水分解性などの各種性能に劣ったものになる。
【0004】
このような問題点を改良するため、チタン系エステル化触媒を使用して製造されたエステル系高分子ポリオールに、▲1▼水を加えた後、加熱することによりチタン系エステル化触媒を失活させる方法(WO92/19800号公報、WO94/25529号公報参照)、▲2▼該高分子ポリオールに水を加えて加熱した後、式;( RO) n P( O) m ( OH) 3-n (式中、mは0または1、nは0、1または2、Rは炭化水素基を表す)で示されるリン化合物を添加する方法(特開平5−239201号公報)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼による方法ではチタン系エステル化触媒の失活は不完全であり、さらに、一旦失活した触媒活性が、溶融紡糸中に回復する傾向がある。たとえば、ハ−ドセグメントの含有量が多いポリウレタンや、部分的に架橋が導入されたポリウレタンを溶融紡糸する際などのように高温で溶融紡糸する必要がある場合や、あるいは細繊度の糸を製造する際のように紡糸パック内の溶融滞留時間が30〜60分と長い場合には、上記▲1▼の方法で得られた高分子ポリオ−ルを用いて製造された熱可塑性ポリウレタンでは、溶融紡糸中に熱可塑性ポリウレタンを構成するハ−ドセグメントとソフトセグメントのランダム化は進行するため、耐熱性、耐熱性等が劣った弾性繊維しか得られない。
【0006】
さらに、紡糸時の溶融滞留中に、一旦失活したチタン系エステル触媒の活性が回復し、これが加水分解触媒として作用するので耐加水分解性が劣った弾性繊維しか得られないのである。
このような弾性繊維は、たとえば高温染色条件で染色されるポリエステル繊維や、加工中に高温で熱処理されるポリアミド繊維等との混繊、混紡、交織等では、耐熱水性、耐加水分解性、耐熱性等の点で不十分であり、用途展開上大きな制約がある。
【0007】
また、活性水素を含有しているリン化合物を添加する上記▲2▼の方法で得られた高分子ポリオ−ルを用いて製造された熱可塑性ポリウレタン弾性繊維は、該リン化合物が酸性を示すために加水分解性が起こり易くなり、耐加水分解性に劣る問題点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性、弾性回復性等に優れたポリウレタン弾性繊維を提供することであり、その製造方法をも提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、チタン系エステル化触媒を使用して製造されたエステル系高分子ポリオ−ルであって、該触媒を失活させた該高分子ポリオ−ルを一構成要件とする熱可塑性ポリウレタンに特定のリン化合物を配合してなる熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融紡糸してなるポリウレタン弾性繊維を提供することによって達成される。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明における熱可塑性ポリウレタン(I)は、エステル系高分子ポリオ−ル(a)成分、有機ジイソシアネ−ト(b)成分および鎖伸長剤(c)成分から構成される。
【0011】
エステル系高分子ポリオ−ル(a)成分とは、エステル結合を分子内に有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有する高分子であり、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール (ポリ炭酸エステルポリオール)などを挙げることができる。該エステル系高分子ポリオ−ルの数平均分子量は1000〜8000であるのが好ましく、1200〜6000であるのがより好ましい。なお、本明細書でいう高分子ポリオールの数平均分子量は、いずれもJIS K 1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0012】
上記ポリエステルポリオ−ルは、たとえば、常法に従って、ポリカルボン酸またはそのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体とポリオールとを直接エステル化反応もしくはエステル交換反応に付すことにより得られる。
【0013】
ポリエステルポリオールの製造原料として用いられるポリカルボン酸としては、たとえばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの炭素数5〜12の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、炭素数が5〜12の脂肪族ジカルボン酸を使用するのが好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸を使用するのがより好ましい。さらに、前記したようなジカルボン酸と共に、少量の3官能以上のポリカルボン酸を併用することができる。3官能以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
ポリエステルポリオールの製造原料として用いられるポリオール成分としては、たとえばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの炭素数5〜12の分岐鎖状の脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。
さらに、前記したようなジオールと共に、少量の3官能以上のポリオールを併用することができる。3官能以上のポリオールとしては、たとえば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタン、ペンタエリスリトールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、トリメチロールプロパンを用いるのが好ましい。
【0015】
上記したポリカーボネートポリオールは、たとえば、ポリオールとジアルキルカーボネート、ジアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られる。ポリカーボネートポリオールの製造原料であるポリオールとしては、ポリエステルポリオールの製造原料として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、ジアルキレンカーボネートとしてはジエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0016】
上記したポリエステルポリカーボネートポリオールは、たとえば、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させることにより得られる。あるいは、予め上記した方法によりポリエステルポリオールを合成し次いでカーボネート化合物と反応させるか、またはポリカーボネートポリオールを合成し、次いでそれらをポリオールおよびポリカルボン酸と反応させることによって得られる。
【0017】
エステル系高分子ポリオールは、チタン系エステル化触媒を用いて製造されたものである。チタン系エステル化触媒としては、チタン酸、テトラアルコキシチタン化合物、チタンアシレート化合物、チタンキレート化合物などを挙げることができる。より具体的には、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのテトラアルコキシチタン化合物;ポリヒドロキシチタンステアレート、ポリイソプロポキシチタンステアレートなどのチタンアシレート化合物;チタンアセチルアセトネート、トリエタノールアミンチタネート、チタンアンモニウムラクテート、チタンエチルラクテート、チタンオクチレングリコレートなどのチタンキレート化合物などを挙げることができる。
【0018】
チタン系エステル化触媒の使用量は、目的とするエステル系高分子ポリオールの製造およびその後の熱可塑性ポリウレタンの製造への使用に適した使用量を適宜選択して採用すればよく、特に制限されないが、一般に、エステル系高分子ポリオールを形成するための原料成分の全重量に対して、約0.1〜50ppmの範囲内であるのが好ましく、約1〜40ppmの範囲内であるのがより好ましい。
チタン系エステル化触媒の使用量が少なすぎると、エステル系高分子ポリオールの生成に極めて長い時間を要するようになり、また得られたエステル系高分子ポリオールに着色を生ずることがある。一方、チタン系エステル化触媒の使用量が多すぎると、過剰分の触媒がエステル系高分子ポリオールの生成の促進に寄与しないのみならず、むしろエステル系高分子ポリオール合成後におけるチタン系エステル化触媒の十分な活性低下を困難にするので好ましくない。
【0019】
エステル系高分子ポリオール生成物からのチタン系エステル化触媒の除去には、通常煩雑な工程を伴うので、生成したエステル系高分子ポリオールは、一般にチタン系エステル化触媒を分離することなく、そのままポリウレタンの製造に使用されることが多い。
したがって、本発明における「チタン系エステル化触媒を使用して製造されたエステル系高分子ポリオール」とは、一般に、反応に使用したチタン系エステル化触媒を分離除去することなくそのまま含有しているエステル系高分子ポリオールをいうが、精製などを行うことによってチタン系エステル化触媒の含有量を低下させたエステル系高分子ポリオールも包含する。
【0020】
240℃で120分間溶融処理した場合に、長鎖ハ−ドセグメントの保持率が90%以上である本発明のポリウレタン弾性繊維を得るには、エステル系高分子ポリオ−ル(a)成分中に含有されているチタン系エステル化触媒の活性を十分に低下させる、すなわち該触媒を失活させることが重要である。かかるエステル系高分子ポリオ−ル(a)中に含有されるチタン系エステル化触媒の活性低下処理は、該チタン系エステル化触媒の触媒活性を完全に喪失させるものであってもよく、また所望の程度に低下させるものであってもよい。チタン系エステル化触媒の活性の低下は、チタン系エステル化触媒含有エステル系高分子ポリオールを加熱条件下に水と接触させる方法により行うのが好ましい。この失活処理は、エステル系高分子ポリオールの形成反応にそのまま引き続いて行っても、または前もって製造されたポリエステルポリオールに対して所定の期間を置いて行ってもよい。
【0021】
水によりチタン系エステル化触媒の活性を低下させる際の水の添加量は、処理に付するエステル系高分子ポリオールの種類、使用したチタン系エステル化触媒の種類、濃度などに応じて適宜選択することができるが、チタン系エステル化触媒の活性を十分に低下させる観点から、エステル系高分子ポリオールの重量に基づいて、1重量%以上が好ましい。一方、水の添加量の上限は特に制限されず、多量の水を添加した場合であっても、その多量の水は、チタン系エステル化触媒の活性を低下させる作用に悪影響を及ぼすものではない。しかしながら、水の添加量が多すぎると添加した水の除去が煩雑になるので、水の添加量はエステル系高分子ポリオールの重量に基づいて7重量%以下に止めるのが好ましい。水と接触する際の加熱温度としては、70〜150℃の範囲内、特に80〜130℃の範囲内が好ましい。加熱温度が70℃よりも低いと、チタン系エステル化触媒の活性低下が不十分となることがあり、一方、150℃よりも高いとエステル系高分子ポリオールの分解を伴うことがある。なお、100℃以上に加熱する場合は、加圧下で行ってもよく、また水を水蒸気の形態で接触させてもよい。この加熱処理時間は特に限定されないが、通常は1〜5時間程度で十分である。水を添加して加熱処理することによりチタン系エステル化触媒の活性を低下させた後は、減圧下での加熱乾燥などの任意の方法により、エステル系高分子ポリオールから水を除去することができる。
【0022】
上述のエステル系高分子ポリオール(a)中に含有されるチタン系エステル化触媒の活性低下の程度は、90℃で測定した、該エステル系高分子ポリオール (a)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とのウレタン化反応速度定数により評価することができる。
このウレタン化反応速度定数が0.20(リットル/モル・分)以下になる程度にチタン系エステル化触媒の活性が低下されており、0.15(リットル/モル・分)以下になる程度にチタン系エステル化触媒の活性が低下されているのが好ましい。かかる程度にチタン系エステル化触媒の活性が低下しているエステル系高分子ポリオ−ル(a)を用いることにより、より耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性、弾性回復性に優れたポリウレタン弾性繊維を得ることができるのである。
【0023】
本発明において、有機ジイソシアネ−ト(b)の種類はとくに限定されず、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用できるが、分子量500以下の芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートのうちの1種または2種以上が好ましく使用される。
有機ジイソシアネートの例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いるのが好ましい。また、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネートを、必要に応じて少量用いることもできる。
【0024】
鎖伸長剤(c)の種類は特に制限されず、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、1,4−ブタンジオールを用いるのがより好ましい。
【0025】
本発明において、熱可塑性ポリウレタン(I)は、上記のエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を反応させることにより得られる。熱可塑性ポリウレタン(I)の製造に当たっては、上記のエステル系高分子ポリオール(a)および鎖伸長剤(c)に含まれる活性水素原子の全モル数と、有機ジイソシアネート(b)に含まれるイソシアネート基のモル比〔b/(a+c)〕が、0.95〜1.2となるような割合で反応させるのが好ましく、1.0〜1.1となるような割合で反応させるのがより好ましい。エステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を、上記の範囲で反応させた熱可塑性ポリウレタン(I)を用いることにより、耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性、弾性回復性などがより優れたポリウレタン弾性繊維を得ることができるのである。
【0026】
上記のエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を用いて熱可塑性ポリウレタン(I)を製造するに当たって、ウレタン化反応に対して触媒活性を有するスズ系ウレタン化触媒(III)を使用することが好ましい。スズ系ウレタン化触媒(III)を使用すると、熱可塑性ポリウレタンの分子量が速やかに増大し、各物性がより良好な熱可塑性ポリウレタンが得られる。スズ系ウレタン化触媒(III)としては、例えば、オクチル酸スズ、モノメチルスズメルカプト酢酸塩、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩、モノブチルスズマレイン酸ベンジルエステル塩、モノオクチルスズマレイン酸塩、モノオクチルスズチオジプロピオン酸塩、モノオクチルスズトリス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、モノフェニルスズトリアセテート、ジメチルスズマレイン酸エステル塩、ジメチルスズビス(エチレングリコールモノチオグリコレート)、ジメチルスズビス(メルカプト酢酸)塩、ジメチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸)塩、ジメチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジブチルスズマレイン酸エステル塩、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸アルキルエステル)塩、ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸アルコキシブチルエステル)塩、ジブチルスズビスオクチルチオグリコールエステル塩、ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸)塩、ジオクチルスズマレイン酸塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジオクチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸)塩等のアシレート化合物、メルカプトカルボン酸塩などを挙げることができる。これらのなかでもジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどのジアルキルスズジアシレート;ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチルエステル)塩などのジアルキルスズビスメルカプトカルボン酸エステル塩などが好ましい。これらのスズ系ウレタン化触媒(III)の使用量は、熱可塑性ポリウレタン(I)〔即ち、熱可塑性ポリウレタン(I)の製造に用いるエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)、鎖伸長剤(c)などの反応性原料化合物の全重量〕に対して、スズ原子換算で0.1〜15ppmであることが好ましい。
【0027】
熱可塑性ポリウレタン(I)の製造方法は特に制限されず、上記したエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を使用して、公知のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法またはワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合することが好ましい。溶融重合温度は特に制限されないが、200〜280℃の範囲内が好ましい。
【0028】
エステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)の反応により得られる熱可塑性ポリウレタンの分子中には、高分子量のエステル系高分子ポリオール(a)に由来するソフトセグメントと、有機ジイソシアネート(b)に由来するハードセグメントが存在する。ハードセグメントの構成成分は、通常、エステル系高分子ポリオール(a)成分、有機ジイソシアネート(b)成分および鎖伸長剤(c)成分のうち、(b)成分と(c)成分である。すなわち、ハードセグメントとは1個の(b)成分と1個の(c)成分とが付加してウレタン結合を形成した形の繰り返し単位の1個以上からなるか、または(b)成分の1個からなる。本発明でいう「長鎖ハードセグメント」とは、上記の繰り返し単位を3個以上含有するハードセグメントを意味するものであり、「長鎖ハードセグメント含有率」は、ハードセグメント断片の全量に対する該長鎖ハードセグメント断片の割合として求められる。熱可塑性ポリウレタン(I)中のハードセグメントの分析は、具体的には、後記する実施例の項で詳細に説明する方法によって求めることができる。
【0029】
熱可塑性ポリウレタン(I)は、長鎖ハードセグメント含有率が54〜90%であるのが好ましく、56〜86%であるのがより好ましい。長鎖ハードセグメント含有率が54%未満の熱可塑性ポリウレタンを用いた場合には、得られるポリウレタン弾性繊維の耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性などが低下する傾向がある。また、長鎖ハードセグメント含有率が90%を超える熱可塑性ポリウレタンを用いた場合には、ポリウレタン弾性繊維の伸度や弾性回復性が低下するとともに、溶融紡糸性が悪くなる。
【0030】
熱可塑性ポリウレタン(I)の対数粘度は、n−ブチルアミンを1重量%含有するN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、熱可塑性ポリウレタン(I)を濃度0.5g/dlになるように溶解し、30℃で測定した時に、0.5dl/g以上であることが好ましく、0.7dl/g以上であることがより好ましい。対数粘度が上記の範囲の熱可塑性ポリウレタンを使用すると、耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性などがより良好なポリウレタン弾性繊維が得られるので好ましい。また、n−ブチルアミンを1重量%含有するN,N−ジメチルホルムアミド溶液に溶解させようとした際に、全く溶解しないか、あるいは一部だけが溶解するような高い重合度を有するような熱可塑性ポリウレタンを使用すると、さらに耐熱性に優れたポリウレタン弾性繊維が得られるのでより好ましい。
また、本発明のポリウレタン弾性繊維は熱可塑性ポリウレタン(I)を一構成成分として繊維化されるため、該弾性繊維の対数粘度は該熱可塑性ポリウレタン(I)の対数粘度よりも若干低下するが、該弾性繊維の対数粘度も上述の範囲にあることが好ましい。
【0031】
本発明においては上述の方法でエステル系高分子ポリオ−ル(a)中のチタン系エステル化触媒を失活させることができるが、より該触媒の失活を促進させるため、下記の一般式で示されるリン化合物のうち少なくとも1種の化合物(II)を、熱可塑性ポリウレタン(I)に対して少なくとも5ppm含有させることが重要である。
【0032】
【化28】
【0033】
【化29】
【0034】
【化30】
【0035】
リン化合物の含有量が5ppm未満の場合には、エステル系高分子ポリオール(a)に含有されるチタン系エステル化触媒の活性失活の促進効果が不十分となり、得られるポリウレタン弾性繊維の耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性が低下する。一方、リン化合物の含有量が非常に多い場合には、得られるポリウレタン弾性繊維の耐加水分解性が低下したり、リン化合物のブリードアウトが起こりやすくなる傾向があり、またコスト的にも高価になるので、リン化合物の含有量の上限は5000ppmであるのが適当である。
【0036】
前記の一般式(1)〜(3)において、R1 〜R9 が表す炭化水素基としては、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソデシル基、オクタデシル基などの脂肪族炭化水素基;シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、ノニルフェニル基、クレジル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基または水酸基などの置換基を芳香環に有していてもよい。
前記の一般式(3)において、R10が表す2価の炭化水素基としては、炭素数1〜50の2価の炭化水素基が好ましく、たとえば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの2価の脂肪族炭化水素基;シクロヘキシレン基などの2価の脂環式炭化水素基;フェニレン基、ビフェニレン基、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)基、4,4’−イソプロピリデンジフェニル基などの2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。2価の芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基または水酸基などの置換基を芳香環に有していてもよい。
【0037】
前記の一般式(1)で示されるリン化合物としては、たとえば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリス(デシル)ホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリス(オクタデシル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイトなどの亜リン酸トリエステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(デシル)ホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリス(オクタデシル)ホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェートなどのリン酸トリエステル;フェニル亜ホスホン酸ジメチル、フェニル亜ホスホン酸ジエチル、フェニル亜ホスホン酸ジブチル、フェニル亜ホスホン酸ジオクチル、フェニル亜ホスホン酸ジドデシル、フェニル亜ホスホン酸ビス(オクタデシル)、フェニル亜ホスホン酸ジシクロヘキシル、フェニル亜ホスホン酸ジフェニルなどの亜ホスホン酸誘導体のジエステル;フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジブチル、フェニルホスホン酸ジオクチル、フェニルホスホン酸ジドデシル、フェニルホスホン酸ビス(オクタデシル)、フェニルホスホン酸ジシクロヘキシル、フェニルホスホン酸ジフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルなどのホスホン酸誘導体のジエステルなどが挙げられる。
【0038】
前記の一般式(2)で示されるリン化合物としては、たとえば、ジドデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどの亜リン酸トリエステル;ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスフェートなどのリン酸トリエステルなどが挙げられる。
【0039】
前記の一般式(3)で示されるリン化合物としては、たとえば、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールテトラキス(トリデシル)ジホスファイトなどの亜リン酸トリエステル;テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトなどの亜ホスホン酸誘導体のジエステルなどが挙げられる。
【0040】
リン化合物(II)はこれらのうち1種または2種以上を用いることができる。上記のリン化合物の中でも、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(デシル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイト、フェニルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルなどが特に好ましい。
かかるリン化合物(II)は上述のように、チタン系エステル化触媒を失活させる働きを主としてするが、酸化防止剤としての働きをもする。
【0041】
リン化合物(II)の添加時期は特に制限されず、たとえば、熱可塑性ポリウレタン(I)の製造後に添加してもよいし、熱可塑性ポリウレタン(I)の製造中に添加してもよいし、あるいは予め熱可塑性ポリウレタン(I)の製造原料であるエステル系高分子ポリオール(a)に添加していてもよい。
【0042】
本発明のポリウレタン弾性繊維の製造方法としては、
たとえば、▲1▼エステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を、リン化合物(II)の存在下に反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて溶融紡糸を行うか、あるいは前記(a)、(b)および(c)を、リン化合物(II)の存在下に反応させて熱可塑性ポリウレタン組成物を形成させながら溶融紡糸を行う方法;
▲2▼前記(a)、(b)および(c)を、リン化合物(II)およびスズ系ウレタン化触媒(III )の存在下に反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて溶融紡糸を行うか、あるいは前記(a)、(b)および(c)を、リン化合物(II)およびスズ系ウレタン化触媒(III )の存在下に反応させて熱可塑性ポリウレタン組成物を形成させながら溶融紡糸を行う方法;
▲3▼前記(a)、(b)および(c)を反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン(I)に、リン化合物(II)を配合して得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて溶融紡糸を行うか、あるいは該熱可塑性ポリウレタン組成物にリン化合物(II)を配合しながら溶融紡糸を行う方法;
▲4▼前記(a)、(b)および(c)をスズ系ウレタン化触媒(III )の存在下に反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン(I)に、リン化合物(II)を配合して得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて溶融紡糸を行うか、あるいは該熱可塑性ポリウレタン(I)にリン化合物(II)を配合しながら溶融紡糸を行う方法;
などを挙げることができるが、これらのなかでも生産性が優れている点から、上記▲2▼、▲4▼の製造方法が好ましい。
【0043】
溶融紡糸法でポリウレタン弾性繊維を製造する際には、得られるポリウレタン弾性繊維の物性および溶融紡糸作業の容易性等の点から、溶融紡糸温度は250℃以下であることが好ましく、190〜240℃の範囲であることがより好ましい。さらに、得られたポリウレタン弾性繊維を50〜120℃の温度で熱熟成処理を施すと、その諸性能が一層向上するので好ましい。溶融紡糸を行う場合の紡糸装置の種類や形式等はとくに制限されず、ポリウレタン弾性繊維の製造に従来より用いられている溶融紡糸装置を使用することができる。
【0044】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、必要に応じて、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防カビ剤、難燃剤、着色剤、滑剤などの添加剤を含んでいてもよい。該弾性繊維へのこれらの添加剤の添加方法はとくに制限されず、たとえば、ポリウレタン重合時、重合により得られたポリウレタンをペレット化する際の溶融混合時、溶融紡糸時等に添加することができる。
【0045】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、240℃で120分間溶融処理した場合における、熱可塑性ポリウレタン(I)の長鎖ハ−ドセグメントの保持率[溶融処理前の熱可塑性ポリウレタン(I)の長鎖ハ−ドセグメント含有量に対する、溶融処理後の熱可塑性ポリウレタン(I)の長鎖ハ−ドセグメント含有量の割合]が90%以上である。溶融処理した場合の長鎖ハ−ドセグメントの保持率は、エステル系高分子ポリオ−ル(a)の製造に用いられたチタン系エステル化触媒の活性低下の程度によって左右される。すなわち、チタン系エステル化触媒の失活が不完全であると、溶融状態において、熱可塑性ポリウレタン(I)を構成するハ−ドセグメントとソフトセグメントのランダム化が生じ、長鎖ハ−ドセグメントの含有率が減少するとともに、一旦失活した該触媒の活性が回復し、加水分解性が増大するため、耐熱性、耐熱水性等の諸性能が低下することになる。
上述のように、本発明のポリウレタン弾性繊維は、特定のリン化合物(II)を特定量含有しているため、チタン系エステル化触媒の活性がほぼ完全に失活されているのみならず、高温状態における該触媒の活性回復を抑制させることができるのである。したがって、耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性、高温染色安定性等の諸性能に優れた弾性繊維となるのである。
【0046】
上述の弾性繊維の単繊維繊度はとくに限定されず、用途に応じて適宜設定することができる。一般に、その単繊維繊度は5〜100デニ−ル程度であることが好ましい。
また、該弾性繊維は、モノフィラメントの形態であってもよく、マルチフィラメントの形態であってもよい。マルチフィラメントの場合には、そのフィラメント数、総デニ−ル数等はとくに限定されず、適宜設定することができる。さらに、該弾性繊維の断面形状もとくに限定されず、丸形、方形、三角形、楕円形、偏平形、多葉形、V字形、T字形、アレイ形等、任意の断面形状にすることができ、中実繊維であっても、中空繊維であってもよい。
また、該弾性繊維を用いて各種の製品を製造するに当たっては、該弾性繊維を単独で使用してもよいし、他の繊維と適宜組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本発明のポリウレタン弾性繊維の用途はとくに限定されず、種々の用途に使用可能である。たとえば、水着、スキ−ウエア、サイクリングウエア、レオタード等のスポ−ツ用品;ランジェリ−、ファンデ−ション、肌着等の衣料品;パンティストッキング、靴下、サポ−タ−、帽子、手袋等の装着品;パワ−ネット、包袋、人工血管等の医療品;テニスラケットのガット、一体成形加工用車両シ−ト地糸、ロボットア−ム用の金属被覆糸等の非衣料品などに有効に使用することができる。そのうちでも、本発明のポリウレタン弾性繊維は、その優れた耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性、弾性回復性、耐光性等の特性を活かして、スポ−ツ用品、衣料品などの用途に極めて有効に使用することができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例において、ウレタン化反応速度定数(k)、長鎖ハードセグメント含有率、長鎖ハードセグメント含有率の溶融加熱保持率、対数粘度、耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性、弾性回復性は以下の方法により測定または評価した。
(1)ウレタン化反応速度定数(k)
反応容器に、エステル系高分子ポリオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを3:1のモル比で仕込み、攪拌しながら温度を90℃に保ち、一定時間毎に反応物の一部をサンプリングした。これに、0.01Nジ−n−ブチルアミンのジメチルホルムアミド溶液の一定量を加えて溶解した後、0.01N塩酸のメタノール溶液でブロムフェノールブルーを指示薬として中和滴定を行うことによって、各サンプリング時間毎のイソシアネート基の残存量を求めて、この残存量から各サンプリング時間毎のウレタン結合[−NHCOO−]の濃度を算出した。ウレタン化反応速度は、水酸基とイソシアネート基の各々の濃度の一次に比例するところから、上記で求めたウレタン結合[−NHCOO−]の濃度を下記の式に代入して、ウレタン化反応速度定数(k)(リットル/モル・分)を算出した。
【0049】
{1/(a−b)}ln{b(a−x)/a(b−x)}=kt
〔式中、kは反応速度定数(リットル/モル・分)、tは反応時間(サンプリング時間)(分)、aは水酸基[−OH]の初濃度(モル/リットル)、bはイソシアネート基[−NCO]の初濃度(モル/リットル)、xはtにおけるウレタン結合[−NHCOO−]の濃度(モル/リットル)を表す。〕
【0050】
(2)長鎖ハードセグメント含有率
ポリウレタン弾性繊維2gを、n−ヘキサン中で10分間超音波洗浄し、乾燥した後、1.5gを精秤し、これにテトラヒドロフラン(THF)5mlを加え、試料を膨潤させた。10分後、0.01Nの水酸化カリウムのメタノール溶液25mlを加え、50℃で2日間攪拌することにより、ポリウレタンを分解(エステル系高分子ポリオールのエステル結合を切断)した。分解後、50℃で1時間溶媒を蒸発除去し、残留物を1000mlの水に入れた後、濾紙でろ過し、析出したハードセグメント由来の化合物を十分に乾燥した後、0.020gを秤取し、N−メチルピロリドン(NMP)2.0mlおよびTHF6.0mlを加えて溶解し、以下の装置および条件でGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)分析を行った。
島津製高速液体クロマトグラフ LC−9A
島津製カラムオーブン CTO−6A(40℃)
島津製高速液体クロマトグラフ用示差屈折計検出器 RID−6A
島津製クロマトパック C−R4A
カラム:昭和電工製 Shodex GPC KF−802
Shodex GPC KF−802.5
試料20μlを注入し、溶媒(THF)の流量を1.0ml/分とした。測定後の解析には、溶出曲線とベースライン間の面積を求め、分離が完全でないピークについては垂直分割して処理した。また、鎖伸長剤または有機ジイソシアネートとして2種類以上の化合物を混合して用いた熱可塑性ポリウレタンでは、各ピークにショルダー部を生じる場合があるが、通常、ピークの分割処理には支障はない。このようにして有機ジイソシアネート成分と鎖伸長剤成分とからなる繰り返し単位が3個以上のハードセグメントを長鎖ハードセグメントと定義し、全ハードセグメントに対する長鎖ハードセグメントのGPC面積分率を長鎖ハードセグメント含有率とした。
【0051】
(3)長鎖ハードセグメント含有率の溶融加熱保持率
ポリウレタン弾性繊維2gを、90℃で24時間真空脱水後、島津製の高架式フローテスターを用いて、窒素雰囲気下に、240℃で120分間、溶融状態で滞留し、滞留前後の熱可塑性ポリウレタンについて、それぞれ前記と同様の方法で長鎖ハードセグメント含有率を求めた。滞留前の熱可塑性ポリウレタンの長鎖ハードセグメント含有率に対する滞留後の熱可塑性ポリウレタンの長鎖ハードセグメント含有率の割合を、長鎖ハードセグメント含有率の溶融加熱保持率とした。
【0052】
(4)対数粘度
ポリウレタン弾性繊維を、n−ブチルアミンを1重量%含有するN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、該弾性繊維の濃度が0.5g/dlになるように溶解し、20℃で24時間放置した後に、ウベローデ型粘度計を用いて、その溶液の30℃における流下時間を測定し、下式により対数粘度を測定した。
【0053】
対数粘度={ln(t/t0 )}/c
〔式中、tは溶液の流下時間(秒)を、to は溶媒の流下時間(秒)を、cはポリウレタン弾性繊維の溶液中の濃度(g/dl)を表す。〕
【0054】
(5)耐熱性
レオロジ社製DVE−V4レオスペクトラーを用いて、ポリウレタン弾性繊維の動的粘弾性を、自動静荷重、周波数11Hz、変位振幅10μ、昇温温度3℃/分の条件で測定し、流動開始温度を耐熱性の指標とした。
【0055】
(6)耐熱水性
ポリウレタン弾性繊維を木枠を使用して200%伸長した状態で固定し、熱風乾燥機を用いて140℃で2分間乾熱処理した後、該繊維をオ−トクレ−ブを用いて130℃の熱水中に30分間浸漬し、ついでオ−トクレ−ブより取り出して、200%伸長したままの状態でその応力をインストロン引張試験機(インストロン社製、「インストロン4501」)を使用して測定し、その時の応力(R)(g/80デニ−ル)を求めて耐熱水性の指標とした。
【0056】
(7)耐加水分解性
ポリウレタン弾性繊維を、70℃、95%RHの相対湿度下に6週間放置し、放置前後での破断強度をJIS L 1013に従って測定し、放置前の破断強度に対する放置後の破断強度の保持率を求め、耐加水分解性の指標とした。
【0057】
(8)弾性回復率
ポリウレタン弾性繊維を300%伸長した状態を室温下に2分間保持した後、張力を除いて2分間放置した後の弾性回復率を下記式により算出した。
弾性回復率(%)={1−(L−L0 )/L0 }×100
[式中、Lは張力除去後2分間放置した後の弾性繊維の長さ(mm)を、L0 は伸長前の弾性繊維の長さ(mm)を表す。]
【0058】
以下、参考例、実施例および比較例で用いた化合物に関する略号を下記の表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
《参考例1》〔ポリエステルジオール(PMAZ−A)の製造〕
3−メチル−1,5−ペンタンジオール3000gおよびアゼライン酸4058gを反応器に仕込み、常圧下、200℃で生成する水を系外に留去しながらエステル化反応を行った。反応物の酸価が20以下になった時点で、チタン系エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート120mg(生成物に対して20ppm)を添加し、200mmHgから100mmHgまで徐々に減圧しながら反応を続けて重縮合させた。反応物の酸価が1.0以下になった時点で真空ポンプにより徐々に真空度を上げて重縮合を完結させた。その結果、数平均分子量2000のポリエステルジオール(以下、PMAZ−Aと称する)を6210g得た。このPMAZ−Aのウレタン化反応速度定数(k)は5.0(リットル/モル・分)であった。
【0061】
《参考例2》〔チタン系エステル化触媒の水による失活〕
参考例1で得られたPMAZ−A1000gを100℃に加熱し、これに水20g(2重量%)を加えて撹拌しながら2時間加熱を継続することにより、チタン系エステル系触媒を失活させた後、減圧下で水を留去した。この処理で得られたポリエステルジオール(以下、PMAZ−Bと称する)のウレタン化反応速度定数(k)は0.10(リットル/モル・分)であった。
【0062】
《参考例3》〔ポリエステルポリオール(PMTAZ)の製造〕
3−メチル−1,5−ペンタンジオール3000gとアゼライン酸4050gおよびトリメチロールプロパン20.7gを反応器に仕込み、常圧下、200℃で生成する水を系外に留去しながらエステル化反応を行った。反応物の酸価が20以下になった時点で、チタン系エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート120mg(生成物に対して20ppm)を添加し、200mmHgから100mmHgまで徐々に減圧しながら反応を続けて重縮合させた。反応物の酸価が1.0以下になった時点で真空ポンプにより徐々に真空度を上げて重縮合を完結させた。その結果、数平均分子量2000、1分子当たりの水酸基の数が2.05個のポリエステルポリオールを6180g得た。さらにこのポリエステルポリオール1000gを100℃に加熱し、これに水20g(2重量%)を加えて撹拌しながら2時間加熱を継続することによりチタン系エステル化触媒を失活させた後、減圧下で水を留去した。この処理で得られたポリエステルポリオール(以下、PMTAZと称する)のウレタン化反応速度定数(k)は0.11(リットル/モル・分)であった。
【0063】
実施例1
参考例2で得られたPMAZ−Bにリン化合物Aを1645ppm加えて撹拌しながら1時間加熱した。このリン化合物Aを添加したPMAZ−B、1,4−ブタンジオールおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを、モル比が1:3.:4.08の割合となるように、直径(φ)=30mm、L/D=36の同軸方向に回転する二軸押出機に定量ポンプで連続的に供給し、押出機のシリンダー温度を260℃に保って連続溶融重合反応を行うことによりポリウレタンを生成させ、ダイからストランド状に水中に押し出し、切断してポリウレタンペレットを製造した。このポリウレタンペレットを80℃で10時間、低露点雰囲気下(露点=−30℃)で乾燥した。得られたポリウレタンペレットを通常の単軸押出機付き紡糸装置に供給して、紡糸温度230〜240℃、冷却風温度10℃、紡糸速度500m/分の条件下に紡糸し、20デニ−ルのモノフィラメントをボビンに巻き取った。ついで該モノフィラメントを100℃の低露点雰囲気下(露点=−30℃)で24時間熟成し、さらに室温、60%の相対湿度下に10日間熟成した。このモノフィラメントを用いて各種の物性を評価し、結果を表2および表3に示す。
【0064】
実施例2〜8
下記の表2に示す種類と量のリン化合物を用いる以外は実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を製造した。この弾性繊維を用いて各種評価を行った。得られた結果を下記の表2および表3に示す。
【0065】
実施例9
参考例2で得られたPMAZ−Bにジブチルスズジアセテートを5ppm、リン化合物Aを1645ppm加えて攪拌しながら1時間加熱した。このジブチルスズジアセテートおよびリン化合物Aを添加したPMAZ−Bを用いる以外は実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を製造した。得られた弾性繊維を用いて各種評価を行った。得られた結果を下記の表2および表3に示す。
【0066】
実施例10
直径(φ)=30mm、L/D=36の同軸方向に回転する二軸押出機に、80℃に加熱した参考例2で得られたPMAZ−B、80℃に加熱した1,4−ブタンジオールおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを、モル比が1:3.00:4.08の割合となるように定量ポンプで連続的に供給し、押出機のシリンダー温度を260℃に保って連続溶融重合反応を行うことによりポリウレタンを生成させながら、リン化合物Bをその含有量が1000ppmとなるように、粉体フィーダーから連続的に供給することにより、ポリウレタンにリン化合物Bを配合した。これをダイからストランド状に水中に押し出し、切断してポリウレタンペレットを製造した。このポリウレタンペレットを80℃で10時間、低露点雰囲気下(露点=−30℃)で乾燥した。
得られたポリウレタンペレットを通常の単軸押出機付き紡糸装置に供給して、紡糸温度230〜240℃、冷却風温度10℃、紡糸速度500m/分の条件下に紡糸し、20デニ−ルのモノフィラメントをボビンに巻き取った。ついで該モノフィラメントを100℃の低露点雰囲気下(露点=−30℃)で24時間熟成し、さらに室温、60%の相対湿度下に10日間熟成した。
このモノフィラメントを用いて各種の物性を評価し、結果を表2および表3に示す。
【0067】
実施例11
参考例3で得られたPMTAZにリン化合物Aを1540ppm加えて撹拌しながら1時間加熱した。このリン化合物Aを添加したPMTAZ、1,4−ブタンジオールおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、モル比が1:2.39:3.46となる割合で用いる以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンモノフィラメントを製造した。このモノフィラメントを用いて各種の物性を評価し、結果を表2および表3に示す。
【0068】
比較例1
リン化合物を用いない以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンモノフィラメントを製造した。このモノフィラメントを用いて各種の物性を評価した。結果を表2および表3に示す。
【0069】
比較例2
参考例1で得られたPMAZ−Aを用いた以外は実施例1と同様にしてポリウレタンモノフィラメントを製造した。このモノフィラメントを用いて各種の物性を評価した。結果を表2および表3に示す。
【0070】
比較例3
参考例2で得られたPMAZ−Bにジブチルスズジアセテートを5ppm加えて攪拌しながら1時間加熱した。このジブチルスズジアセテートを添加したPMAZ−Bを用いた以外は、比較例1と同様にしてポリウレタンモノフィラメントを製造した。このモノフィラメントを用いて各種の物性を評価した。結果を表2および表3に示す。
【0071】
比較例4〜5
表2に示す種類と量のリン化合物を用いた以外は実施例1と同様にしてポリウレタンモノフィラメントを製造した。このモノフィラメントを用いて各種の物性を評価した。結果を表2および表3に示す。
【0072】
比較例6
参考例3で得られたPMTAZ、1,4−ブタンジオールおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、モル比が1:2.39:3.46となる割合で用いた以外は比較例1と同様にしてポリウレタンモノフィラメントを製造した。このモノフィラメントを用いて各種の物性を評価した。結果を表2および表3に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【発明の効果】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、耐熱性、耐熱水性、耐加水分解性、弾性回復性等に優れており、さらには高温での染色性にも優れているため、他の繊維との併用ができ、用途が各段に拡大される。
Claims (10)
- チタン系エステル化触媒を使用して製造されたエステル系高分子ポリオール(a)成分、有機ジイソシアネート(b)成分および鎖伸長剤(c)成分から構成され、長鎖ハ−ドセグメントの含有率が54〜90%である熱可塑性ポリウレタン(I)に対して、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を、少なくとも5ppm含有する熱可塑性ポリウレタン組成物からなる弾性繊維であって、該弾性繊維を240℃で120分間溶融処理した場合における、熱可塑性ポリウレタン(I)の長鎖ハードセグメントの保持率が90%以上であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維。 - スズ系ウレタン化触媒(III)を、熱可塑性ポリウレタン(I)に対して0.1〜15ppm(スズ原子換算)含有する熱可塑性ポリウレタン組成物からなる請求項1記載のポリウレタン弾性繊維。
- チタン系エステル化触媒を使用して重合反応を行った後、該チタン系エステル化触媒の活性を低下させることにより得られたエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン(I)に対して、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を、少なくとも5ppm配合して得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。 - チタン系エステル化触媒を使用して重合反応を行った後、該チタン系エステル化触媒の活性を低下させることにより得られたエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン(I)に対して、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を、少なくとも5ppm配合しながら、熱可塑性ポリウレタン(I)を溶融紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。 - チタン系エステル化触媒を使用して重合反応を行った後、該チタン系エステル化触媒の活性を低下させることにより得られたエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を、少なくとも5ppm存在させながら反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。 - チタン系エステル化触媒を使用して重合反応を行った後、該チタン系エステル化触媒の活性を低下させることにより得られたエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を、少なくとも5ppm存在させながら反応させ、熱可塑性ポリウレタンを形成させながら溶融紡糸を行うことを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。 - チタン系エステル化触媒を使用して重合反応を行った後、該チタン系エステル化触媒の活性を低下させることにより得られたエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を0.1〜15ppm(スズ原子換算)のスズ系ウレタン化触媒(III)の存在下に反応させて得られた熱可塑性ポリウレタンに、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を、少なくとも5ppm配合して得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。 - チタン系エステル化触媒を使用して重合反応を行った後、該チタン系エステル化触媒の活性を低下させることにより得られたエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を0.1〜15ppm(スズ原子換算)のスズ系ウレタン化触媒(III)の存在下に反応させて得られた熱可塑性ポリウレタンに、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を、少なくとも5ppm配合しながら、熱可塑性ポリウレタン(I)を溶融紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。 - チタン系エステル化触媒を使用して重合反応を行った後、該チタン系エステル化触媒の活性を低下させることにより得られたエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を少なくとも5ppm、およびスズ系ウレタン化触媒を0.1〜15ppm(スズ原子換算)存在させながら反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。 - チタン系エステル化触媒を使用して重合反応を行った後、該チタン系エステル化触媒の活性を低下させることにより得られたエステル系高分子ポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)および鎖伸長剤(c)を、下記の一般式(1)〜(3);
で示されるリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(II)を少なくとも5ppm、およびスズ系ウレタン化触媒(III) を0.1〜15ppm(スズ原子換算)存在させながら反応させ、熱可塑性ポリウレタンを形成させながら溶融紡糸を行うことを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
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